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2023年9月 4日 (月)

クレズマー後半のズマーあるいはゼメル(歌)

ゼアミdeワールド375回目の放送、日曜夜10時にありました。6日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はマサダ7枚目ザインのZemerのみです。Hobahは見当たりませんでした。

東欧系ユダヤ音楽の15回目になります。前々回にジョン・ゾーン・マサダの1枚目アレフ、前回は同じくマサダの2、3、4枚目のベイト、ギメル、ダレドからおかけしました。今回は続きの5~10枚目、ヘイ、ヴァヴ、ザイン、ヘット、テット、ユド(ヨド)から抜粋したいと思います。ユダヤ的な旋律だけでなく、ヘブライ語タイトルが気になる曲も幾つか選びました。ライナーノーツを担当した1枚目には、2、3、4枚目の曲のカタカナ表記と和訳も載りました。5枚目以降もディスクユニオンから曲名のカタカナ表記については聞かれたように思いますが、10枚目のルーアフがルーアクになっているところを見ると、終わりの辺りは違ったかも知れません。今回もライナーノーツから抜粋して少し読み上げます。

 ユダヤ人の言語であるヘブライ語はセム語族に属し、アラビア語、アラム語、エチオピア語等と兄弟言語である。西アジアの言語であるこれらの中でも、ヘブライ語は特異な歴史を持っている。古代においてはパレスチナから、中世においてはスペインからExile(追放)されたユダヤ人は、ユダヤ教と共にこのヘブライ語を離散先に携え、各々の地でこの言葉は少なからず変化してきた。今日、モスクワでもパリでもニューヨークでも、ユダヤ人コミュニティーのある所では何処でも、多少の発音の違いはあっても、例えば「こんにちわ」という意味の「シャローム」という西アジア起源の言葉が聞こえてくるのが、考えてみるとこれはなかなか不思議な光景だと思う。(対応するアラビア語は「アッサラーム」で、共に“平和”という意味の語根、S-L-Mの3子音から成っている。因みにエルサレム、イスラームも同語源である。)
 ユダヤ人は大きく3つのグループに分けられ、離散地ごとに音楽も変わってきたが、ヘブライ語によって結ばれる、何か共通したユダヤの“音調”が聞き取れる。クレッツマーはユダヤ教の祭日や結婚式などに演奏された音楽で、東欧の民族音楽や今世紀のアメリカではジャズを取り入れながらも、強烈に“ユダヤ”でしかありえないのは、クレッツマーの基本に、神への愛や戒律の喜びを調べに乗せて歌うハシディック・ソングの魂があるからだろう。ゾーンはアシュケナジーム(東欧系、ドイツ~ロシア出身)に属する人だが、クレッツマーと言うユダヤ音楽の一スタイルを彼独自の語法で展開する「マサダ」に聞かれる音楽も、限りなくユダヤ的でありながら、ユダヤの枠を越えたエネルギーを噴出させたものとなっている。クレッツマー音楽はクラリネットやヴァイオリンがソロを取ることが多いが、ここではアルト・サックスとトランペットがフロント楽器というのも新鮮だ。この二人の演奏はハシディック・ニーグン(東欧系の黒ずくめ髭面の正統派ユダヤ教徒の歌う母音唱法による賛歌)や、シナゴーグでの礼拝の祈りのようにヘテロ・フォニックに競い歌う。Dire Geld等の有名なイディッシュ・チューンも登場するが、ジャズ~ニーグン色の濃いスリリングなものになっている。

ではマサダ5枚目ヘイから、ホーンセクションの「叫び」が鮮烈なHobahからおかけします。この曲など聞くと、オーネット・コールマンだけでなくアルバート・アイラーやエリック・ドルフィーの演奏も近く感じます。実は私はエリック・ドルフィーの方が好きなのですが(笑)

<5 Hobah 11分38秒>

次は7枚目ザインのZemerと言う曲で、その名の通り、クレズマーの後半のズマーあるいはゼメルと同じで、「歌」の意味です。クレズマー(あるいはクレゼメル)は、「道具」の意味のクレと、「歌」の意味のゼメルから成っている言葉ですので、この曲は取り上げないとと思いました。クレズマーらしさ溢れる一曲です。

<9 Zemer 2分14秒>

次は先ほど表記の間違いを指摘した10枚目ユドのRuachです。ルーアフとは、空気や風を意味しますが、旧約聖書の中では魂や霊魂、精神を意味することが多く、非常に重要な単語です。「神の霊」の意味のルーアフ・エロヒームと言う形で出て来る箇所が沢山あったと思います。

<1 Ruach 4分7秒>

他にも「死後」の意味の9枚目テットのAcharei Motなど、タイトルで気になる曲もありますが、時間的に入らないので、今回は外します。聖書によく出て来る地名のベエル・シェバと言う曲も6枚目ヴァヴにありますが、これも外しました。では最後に10枚目ユドのラストを飾るZevulをおかけします。リズムのユニークな曲で、哀愁の旋律も耳に残ります。時間が余りましたら、同じく10枚目ユドからKilayimまで時間まで聞きながら今回はお別れです。これもクレズマーらしい旋律から始まり、フリージャズらしい流れに移る曲です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<11 Zevul 2分16秒>
<2 Kilayim 3分22秒>

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