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2023年10月

2023年10月30日 (月)

アンディ・スタットマンのクラリネットとマンドリン

ゼアミdeワールド383回目の放送、日曜夜10時にありました。11月1日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。The Andy Statman Klezmer OrchestraのShanachie盤そのものの音源は、少し探した限りではYouTubeに見当たりませんので、1978年のAndy Statman and Zev Feldman, Klezmer Music - Dave Tarras Tribute Concertを代わりに上げておきます。師匠のデイヴ・タラスへのトリビュート演奏です。

Andy Statman and Zev Feldman, Klezmer Music - Dave Tarras Tribute Concert 1978

東欧系ユダヤ音楽の23回目になります。今回はまず前回最後にかけて途中で終わって非常に残念でしたから、ラビ・シュロモ・カルリバッハのV'zocher (Live)を全曲かけたいと思います。これは絶唱と呼ぶにふさわしい歌唱で、CDでは聞いたことのなかった曲のライブ音源です。裏声にまで上がって行くカントール的な細かい装飾技巧も入ったハシディック・ソングと言うのは、他にそうないかも知れません。ヴェゾヘルの部分のそのままの訳は「そして覚えている」ですが、「祖先の忠実な行為を覚えている」と言う辺りのシャバトの祈りの文句が歌詞になっているようです。

<V'zocher (Live) 7分42秒>

この後は、前々回に聞いたアンディ・スタットマンの、オーソドックスなクレズマーバンドの盤The Andy Statman Klezmer Orchestraと、98年のヒドゥン・ライトから抜粋していきます。
まずThe Andy Statman Klezmer Orchestraですが、Shanachieから92年に出ている盤で、自身のルーツ回帰的な方向性の強いSongs of Our Fathersに比べて、往年のクレズマーを忠実に再現している印象が強いです。クラリネットとマンドリン共に披露しています。この盤から、1曲目のJewish Danceとラストの12曲目Galitzianer Chusid (Hassidic Dance From Galicia)の2曲を続けておかけします。

<1 The Andy Statman Klezmer Orchestra / Jewish Dance 3分8秒>
<12 The Andy Statman Klezmer Orchestra / Galitzianer Chusid (Hassidic Dance From Galicia) 3分46秒>

98年にソニーから出たAndy Statman Bruce Barth, Scott Lee, Bob Weiner / The Hidden Lightは、おそらくアンディ・スタットマンのターニングポイントになったと思われる95年のAcoustic DiscのSongs of Our Fathersの後で出た盤ですから、同じようなルーツ回帰的なジューイッシュ・ソウルフルな演奏が目立っているように思います。これは明らかに往年のクレズマーのほとんどそのままの再現からは遠く離れた音楽です。
この盤から、シャバトの祈祷文として有名なレハー・ドディに曲を付けた1曲目と、アンディ・スタットマンのコンサートで人気の曲だったと言う大変美しいロシアン・ワルツの2曲を続けます。これらの曲を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<1 Come, My Beloved (Lecha Dodi) [Instrumental] 4分44秒>
<5 Russian Waltz [Instrumental] 6分38秒>

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2023年10月27日 (金)

ヴェゾヘル V'zocher

2曲のカルリバッハ作と思われるシャローム・アレイヘムも気になりますが、今回のカルリバッハ特集はV'zocher (Live)で締めたいと思います。CDでは聞いたことのなかったというのは間違いで、YouTubeを見ていて、この曲はヴァンガードのAt The Village Gateに入っていたことを思い出しました。大分前に入れた盤ですので、資料を後で見てみます。今週の放送では、ラストにかけて尻切れになって非常に残念なので、10/29分の最初にノーカットでかけました。
これは絶唱と呼ぶにふさわしい歌唱のライブ音源です。裏声にまで上がって行くカントール的な細かい装飾技巧も入ったハシディック・ソングと言うのは、他にそうないかも知れません。ヴェゾヘルの部分のそのままの訳は「そして覚えている」ですが、「祖先の忠実な行為を覚えている」と言う辺りのシャバトの祈りの文句が歌詞になっているようです。以下のサイトに出ていた英訳を添えておきます。歌詞の該当箇所の英訳はwho remembers the loyal acts of the ancestors and will send a redeemer to their children’s children in love, for such is his way.の部分です。ヘブライ語歌詞のローマ字表記はv-zocher chas-dei avot, u-mei-vee go’eyl liv-nei v’nei-hem l’ma’an shemo b’ahavah.の部分で、ヘブライ原文もこのサイトにあります。2本目はSojourn Recordsと言うレーベルから出ていたこの曲の別音源です。

https://www.betheldurham.org/docs/First_Berachah_Shabbat_Amidah.pdf

Blessed are You, Adonai, our God and God of our ancestors—God of Abraham, God of Isaac, and God of Jacob [God of Sarah, Rebecca, Rachel and Leah].
The God who is great, mighty and awesome, most high God, who bestows loving kindness, Creator of all, who remembers the loyal acts of the ancestors and will send a redeemer to their children’s children in love, for such is his way.
Sovereign, Support, Redeemer and Shield! Blessed are you, Adonai, shield of Abraham [and provider to Sarah].

<V'zocher (Live) 7分42秒>

V'zocher

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2023年10月26日 (木)

カルリバッハ晩年のライブ オッド・イシャマー

カルリバッハの生演奏を見たいと思いますが、思ったより少なく、1本目の長いものは大変貴重だと思います。解説にShlomo Carlebach, live at Temple Chai in Phoenix, Arizona February 5th, 1994とあります。彼は1925年1月14日ベルリン生まれで、1994年10月20日に亡くなっているので、2月のこの映像は、飛行機でカナダに移動する直前に心臓発作で急逝する8か月前です。レマアン・アハイ・ヴェレアイで始まりますが、途中まで見た限りでは、ニグン的な歌唱が多く曲名が不明の曲がほとんどでした。
今週の番組でかけたオッド・イシャマーは、静止画像ですが、ライブ演奏のものを貼っておきます。30年ほど前のヘブライ語授業に中年のユダヤ人女性が来られたことがあって(お名前は忘れてしまいましたが)、オッド・イシャマーなどカルリバッハの曲が好きだと言ったら、とても喜んで下さったようです。(以下放送原稿を再度)

Shlomo Carlebach, live at Temple Chai in Phoenix, Arizona

イスラエルのHed Arziから出ている彼のベスト盤から、もう一曲「オッド・イシャマー」は、聖書のエレミア書33章10~11節のヘブライ原文が歌詞になっていて結婚式でよく歌われる歌です。曲の後半は歌詞が消えてメロディだけをアイ・ディ・ディなどと歌っていますが、これはハシディック・ソングのニグンという「ことばのない歌」に当ります。ニグンは昔は記譜されることなく口伝で伝わったそうです。同じ文句を繰り返して段々早くなることも有り、ユダヤ神秘主義カバラーの流れを汲むハシディック・ソングの法悦感を醸し出しています。

Od Yishama (Live)

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2023年10月25日 (水)

ヴェハエル・エイネイヌ

カルリバッハでどの曲が一番印象に残っているかと言うと、92年頃に聞いたヘッド・アルツィのベスト盤のトップに入っていたヴェハエル・エイネイヌです。オッド・イシャマーとかエッサー・エイナイ(詩篇121編)とか、ヘブライ語の授業で当時色々彼の歌を歌いましたが、この曲は歌わなかったような気がするのに、一番印象が強いのは何故だろうと思います。バックの音楽の印象もこの音源では少しクールファイブっぽいなとも思いますが(笑)、何より「歌うラビ」のイメージと同一化したかのような、この曲の静かなインパクトは絶大です。
この曲は和訳すると「我らの瞳を照らせ」となります。歌詞は聖書ではなく、以下のような内容になります。「我らの瞳を汝の律法に照らせ。そして汝の戒律に我らの心を密着せよ。そして我らの心を愛と汝の名を畏れることにおいて一つとせよ。恥じることも、うろたえることもない。そして永遠につまづくことはない。」こういう熱い信仰の歌です。
1本目が番組でかけたベスト盤の音源、2本目はイスラエル兵とのライブ映像、3本目はギオラ・ファイドマンの演奏です。

Veha'er Eineinu - Rabbi Shlomo Carlebach

Shlomo Carlebach - Veha'er Eineinu (live in Israel, 1973)

Giora Feidman - Vehaeir Eineinu

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2023年10月23日 (月)

シンギング・ラバイ(歌うラビ) ラビ・シュロモ・カルリバッハ

ゼアミdeワールド382回目の放送、日曜夜10時にありました。25日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。レマアン・アハイ・ヴェレアイのらいぶ映像がありましたので、今日はこれだけ貼っておきます。

東欧系ユダヤ音楽の22回目になります。最近度々ラビ・シュロモ・カルリバッハの曲をかけていますので、今回は7年前に放送されたカルリバッハの自作自演の内容にプラスしてお送りしたいと思います。2016年11月27日のゼアミdeワールド34回目の放送分がベースになっています。
ハシディック・ソングはユダヤ音楽の「本丸」の一つと言っても過言ではない、重要な音楽です。特に90年代から日本でも一部で人気を集めたクレズマー音楽においては、そのスピリット的な部分にハシディック・ソングがあります。ロックやジャズのルーツにブルースがあるように、クレズマーのルーツにはハシディック・ソングがあると思います。またジャズの曲名に「スイングしなけりゃ意味がない」というのがありますが、これになぞらえれば、ハシディックのグルーヴ感がなければクレズマーじゃないとなるでしょうか。クレズマーにはルーマニアを始めとする東欧各地の伝統音楽が豊富に入っていますが、ハシディックの芯が一本通ってないと、ジプシー音楽や東欧音楽とユダヤ音楽の差がなくなってしまいます。ブルースの根幹にある黒人霊歌(ゴスペル)=ニグロ・スピリチュアルになぞらえれば、ジューイシュ・スピリチュアルと言えましょうか。

シンギング・ラバイ(歌うラビ)と呼ばれたラビ・シュロモ・カルリバッハは、聖書の文句などに作曲した、哀愁のある親しみやすいハシディック・ソングの名曲を沢山残しました。最近のイスラエルとパレスチナの戦争について、草葉の陰から悲しまれていると思います。一日も早く平和が戻ることを願って、まず前回アンディ・スタットマンの演奏でかけた詩篇122編によるレマアン・アハイ・ヴェレアイと、過ぎ越しの祭りの歌アディール・フーの2曲を続けます。レマアン・アハイ・ヴェレアイは詩篇122編の8から9節が歌詞の該当箇所で、その部分の新共同訳を読み上げます。

私は言おう、私の兄弟、友のために。
「あなたのうちに平和があるように。」
私は願おう。私達の神、主の家のために。
「あなたに幸いがあるように。」

<2 Lema' an Achi Vereai (Live) 4分55秒>
Rabbi Shlomo Carlebach - Le'ma'an Achay Ve're'ay - live in France 1970 - video 2 -

<11 Adir Hu 3分11秒>

イスラエルのHed Arziから出ている彼のベスト盤の1曲目のヴェハエル・エイネイヌを次におかけしますが、この曲は和訳すると「我らの瞳を照らせ」となります。歌詞は聖書ではなく、以下のような内容になります。「我らの瞳を汝の律法に照らせ。そして汝の戒律に我らの心を密着せよ。そして我らの心を愛と汝の名を畏れることにおいて一つとせよ。恥じることも、うろたえることもない。そして永遠につまづくことはない。」こういう熱い信仰の歌です。

<1 ラビ・シュロモ・カルリバッハ / ヴェハエル・エイネイヌ 3分37秒>

イスラエルのHed Arziから出ている彼のベスト盤から、もう一曲「オッド・イシャマー」をおかけしますが、この曲は聖書のエレミア書33章10~11節のヘブライ原文が歌詞になっている結婚式の歌です。
曲の後半は歌詞が消えてメロディだけをアイ・ディ・ディなどと歌っていますが、これはハシディック・ソングのニグンという「ことばのない歌」に当ります。ニグンは昔は記譜されることなく口伝で伝わったそうです。同じ文句を繰り返して段々早くなることも有り、ユダヤ神秘主義カバラーの流れを汲むハシディック・ソングの法悦感を醸し出しています。

<8 ラビ・シュロモ・カルリバッハ / オッド・イシャマー 4分27秒>

最近ストリーミングの中に見つけたカルリバッハの歌唱に、シャバトの歌シャローム・アレイヘムが2種類ありましたが、これは最近何種類かかけたシャローム・アレイヘムの旋律とは別のもので、カルリバッハが作ったメロディと思われます。「あなたの上に平安を」と言うタイトルは、今正に痛切に感じます。2曲続けます。

<Shalom Aleichem 1 2分3秒>
<Shalom Aleichem 11 3分27秒>

では最後に、最近ストリーミングで見つけた歌、V'zocher (Live)を時間まで聞きながら今回はお別れです。これは絶唱と呼ぶにふさわしい歌唱で、CDでは聞いたことのなかった曲のライブ音源です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<V'zocher (Live) 7分42秒>

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2023年10月20日 (金)

For The Sake Of My Brothers And Friends

曲名が英語でFor The Sake Of My Brothers And Friends(兄弟と友達のために)と出て来ると、最初何のことか分からなかったのですが、ラビ・シュロモ・カルリバッハのレマアン・アハイ・ヴェレアイのことでした。この歌も30年前にヘブライ語教室で歌って親しんだ一曲です。彼の曲はこの盤、Songs Of Our Fathersに4曲ありますが、過ぎ越しの祭りの歌アディール・フーと、詩篇122編によるレマアン・アハイ・ヴェレアイを番組でかけました。Moshe Emes(おそらく「モーセの真実」の意味)がどの部分かよく分かりませんが、これはアディール・フーに巧みに組み込まれているように思います。今日は曲順を番組とは逆にしました。なお、来週は7年前の34回目の放送分に足してカルリバッハ特集にしました。(以下放送原稿を再度)

Songs of Our Fathersについても、99年に音楽之友社から出たユーロルーツポップサーフィンに拙稿を書いていますので、抜粋して少し読み上げます。

クレズマー・リヴァイヴァルの立役者の一人スタットマンがマンドリン奏者グリスマンと共演。普通クレズマーでは余り採り上げないアシュケナジーム系のシャバトで実際に歌われている哀切なヘブライ語の祈祷歌などが選ばれている。カルリバッハのアディール・フーの高揚感も素晴らしい。近年は黒いキパを被り、ジャズのスタイルを取りながらも東欧舞踏音楽系中心ではなく、ソウルフルなユダヤ宗教歌を好んで演奏し、孤高のクラリネット奏者と言う風情。

<8 Andy Statman & David Grisman / Songs Of Our Fathers ~L'Ma'an Achai V'Re'ei 5分56秒>
For The Sake Of My Brothers And Friends

<2 Andy Statman & David Grisman / Songs Of Our Fathers ~Chassidic Medley: Adir Hu / Moshe Emes 4分12秒>
Chassidic Medley: Adir Hu/ Moshe Emes

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2023年10月19日 (木)

マンドリン・デュオのシャローム・アレイヘム

Songs of Our Fathersの頃のライブ映像を見てみたいと思いましたが、今の所見つかったのは、アンディ・スタットマンとデヴィッド・グリスマンのマンドリン・デュオによるシャローム・アレイヘムのみでした。2012年のようですから、95年のCDリリースからは17年経っています。2本目もSongs of Our Fathersとタイトルに入っていますが、ヴァイオリンも入った、このマヌーシュ・スイングのような曲は、あの盤にはなかった曲だと思います。3分半過ぎて、アンディ・スタットマンがクラリネットで登場します。
アンディ・スタットマンとデヴィッド・グリスマンが弾いているマンドリンは、イタリアのリュートの小型のような形の方ではなく、南インド古典音楽のU.シュリーニヴァースも弾いているエレキ・マンドリンとほとんど同じだと思います。マンドリンと言う楽器は、ヴァイオリンと調弦が一緒で、フレットがあるだけと聞いた事があります。4コース復弦のようなので、ペグは8本見えます。撥弦楽器ですからギターのような速弾きだけでなく、ヴァイオリンのような超絶技巧も可能な楽器と言うことになるのでしょうか。

Andy Statman and David Grisman: Shalom Aleichem

David Grisman and Andy Statman Songs Of Our Fathers

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2023年10月18日 (水)

Adon Olam

Adon Olam(アドン・オラム)を最初に広尾のシナゴーグで聞いたのは、93年前後だったと思います。確かユダヤ人の知人(当時勤務していた店、ストアデイズのお客さん)と一緒にシャバトの夕方に訪れた際でしたが、その場にたまたま居合わせたユダヤ人男性の独唱で聞いて、強い感銘を受けました。その時は、他にも交唱で歌われる歌も素晴らしく、忘れない内に帰ってから記譜しました。(この曲は未だ何の曲かは分からないままですが)アドン・オラムも楽譜に書き留めましたが、当時はCDに入っている音源を聞くことはなく(通常はクレズマーで演奏する曲ではないので)、それをアンディ・スタットマンのこの盤で95年に聞けたので、感慨もひとしおでした。
1本目はAndy Statman & David Grisman / Songs Of Our Fathersから。6人のカントールによる2本目は最初このメロディで歌い始めますが、すぐ3本目の旋律に移ります。後半でまた最初のメロディに戻ります。更に、この2つ以外にもアドン・オラムの別メロが出て来ます。3本目はイスラエルの女性歌手サリット・ハダッドの歌唱。どうも、このメロディの方がイスラエルでは一般的なようです。(以下放送原稿を再度)

アドン・オラムと言うヘブライ語タイトルは、「主は永遠に」と言う意味です。中世スペイン時代以来歌われてきたソロモン・イブン・ガビロールの詩に付けられたアシュケナジーム系のこのメロディは、個人的に90年代前半に広尾のシナゴーグで初めて聞いて感動した旋律そのものです。
<10 Andy Statman & David Grisman / Songs Of Our Fathers ~Adon Olam 3分23秒>

ADON OLAM - Hampton Synagogue - Thanksgiving Concert 2017

Sarit Hadad - Adon Olam

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2023年10月16日 (月)

Andy Statman & David Grisman / Songs Of Our Fathers

ゼアミdeワールド381回目の放送、日曜夜10時にありました。18日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日は1曲目と12曲目のシャローム・アレイヘムのみです。

東欧系ユダヤ音楽の21回目になります。今回はリヴァイヴァル・クレズマーの初期から活動しているアンディ・スタットマンのSongs of Our Fathersを聞いていきたいと思います。アンディ・スタットマンは、元々ブルーグラスのマンドリン奏者でしたが、70年代から東欧や自身のルーツであるユダヤの音楽を演奏し始め、Songs of Our Fathersで共演しているデヴィッド・グリスマンに若い頃マンドリンを教わり、更にクラリネットは何と往年の名手デイヴ・タラスに師事したという経歴を持ちます。自身のグループでのクレズマー盤もありましたが、95年にリリースされたSongs of Our Fathers以降、ブルーグラスやジャズと融合させながらジューイッシュ・ソウルフルな演奏が多くなっているように見受けられます。これはハシディック・ソングの影響が大きいのではと思います。
Songs of Our Fathersは、私も95年当時かなりの愛聴盤で、その理由は、前回もかけたシャローム・アレイヘムや、同じくシャバトの歌、アドン・オラムが入っているのと、更にはハシディック・ソングの大家ラビ・シュロモ・カルリバッハの曲などを演奏しているからでした。まずは1曲目のシャローム・アレイヘムと10曲目のアドン・オラムを続けておかけします。何度か言っていますが、Shalom Aleichemは、「こんにちわ」の意味であるのと共に、この歌では「あなたの上に平安を」の意味です。アドン・オラムと言うヘブライ語タイトルは、「主は永遠に」と言う意味です。中世スペイン時代以来歌われてきた詩に付けられたアシュケナジーム系のこのメロディは、個人的に90年代前半に広尾のシナゴーグで初めて聞いて感動した旋律そのものです。

<1 Andy Statman & David Grisman / Songs Of Our Fathers ~Shalom Aleichem 1分45秒>

<10 Andy Statman & David Grisman / Songs Of Our Fathers ~Adon Olam 3分23秒>

次に数年前にイスラエルの時にも取り上げたラビ・シュロモ・カルリバッハの曲はこの盤に4曲ありますが、その中から2曲続けておかけします。過ぎ越しの祭りの歌アディール・フーと、詩篇122編によるレマアン・アハイ・ヴェレアイです。

<2 Andy Statman & David Grisman / Songs Of Our Fathers ~Chassidic Medley: Adir Hu / Moshe Emes 4分12秒>
<8 Andy Statman & David Grisman / Songs Of Our Fathers ~L'Ma'an Achai V'Re'ei 5分56秒>

Songs of Our Fathersについても、99年に音楽之友社から出たユーロルーツポップサーフィンに拙稿を書いていますので、抜粋して少し読み上げます。

クレズマー・リヴァイヴァルの立役者の一人スタットマンがマンドリン奏者グリスマンと共演。普通クレズマーでは余り採り上げないアシュケナジーム系のシャバトで実際に歌われている哀切なヘブライ語の祈祷歌などが選ばれている。カルリバッハのアディール・フーの高揚感も素晴らしい。近年は黒いキパを被り、ジャズのスタイルを取りながらも東欧舞踏音楽系中心ではなく、ソウルフルなユダヤ宗教歌を好んで演奏し、孤高のクラリネット奏者と言う風情。

この盤は、再度シャローム・アレイヘムが最後の12曲目に登場して、締め括られています。この曲を時間まで聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<12 Andy Statman & David Grisman / Songs Of Our Fathers ~Shalom Aleichem 7分16秒>

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2023年10月13日 (金)

Duo Peylet-Cuniotのヤリボンとギオラ・ファイドマンへのオマージュ

ブラッチとはドイツ語でヴィオラのことですが(ヴァイオリンはガイゲ)、このフランスの東欧音楽のスーパーグループが何故この名を冠しているのかは不明です。1972年にギタリストのダン・ガリビアン(アルメニア系では?)とヴァイオリニストのブルーノ・ジラールによって結成され、1976年に最初のアルバムをリリース。これまでに10枚以上のアルバムをリリースし、グループは 2015 年に解散したそうです。10年以上前の話ですが、都はるみさんが絶賛していたと言う話を聞いたように思います。メンバーはDan Gharibian: guitar, bouzouki, vocals、Bruno Girard: violin, vocals、Théo Girard: double bass、Nano Peylet: clarinet、François Castiello: accordion, vocalsの5人です。
ユダヤ系フランス人ピアニスト、ドニ・キュニオは、1989年以降の仏Budaからのナノ・ペイレ(クラリネット)とのデュオ数枚で、迸るハシディック魂を聞かせました。彼は1953年生まれで、フランス・クレズマー・シーンの先鋒として知られる人ですが、若い頃はアルバート・アイラーやアーチー・シェップなどの先鋭的なジャズに心酔していたようです。その後、自身のルーツであるユダヤ音楽やクレズマーに段々目を向けるようになったようです。
今回かけた曲ですが、かなりの超絶技巧に聞こえるGiora, Mon Amour(ギオラ・モナムール ギオラ、我が愛)に対して、Yah Ribonのシンプルさの対比が、大変面白く思います。やはりギオラ・ファイドマンの名演を意識してでしょうか、シャバトの名旋律はそのままにと言うことでしょう。(以下放送原稿を再度)

この後はフランスの東欧音楽のスーパーグループ、ブラッチの中心メンバーであるクラリネット奏者のナノ・ペイレがピアノのドゥニ・キュニオと組んだフランスBudaからの1枚目Musique des Klezmorimから2曲続けますが、前回ギオラ・ファイドマンの演奏でおかけした、しみじみと感動的なシャバトの歌Yah Ribonの演奏が8曲目に入っていますので、こちらをおかけします。「永遠の主よ」の意味のアラム語の祈祷歌で、シャバトの始まる金曜夜の食事の後で歌われる歌です。

<8 Duo Peylet-Cuniot / Musique des Klezmorim ~Yah Ribon 2分41秒>

ギオラ・ファイドマンのレパートリーは、東欧~イディッシュものより、ヘブライ語の祈祷歌やハシディック・ニグンの系統が多く、その「ユダヤ・スピリット」の塊のような深い音色は、他の追随を許さないと前回読み上げた拙稿にも書いていましたが、その音色に惚れ込んででしょう、ナノ・ペイレが彼へのオマージュ曲を演奏していると前回解説を入れていましたので、その曲Giora, Mon Amour(ギオラ・モナムール ギオラ、我が愛)を次におかけします。

<2 Duo Peylet-Cuniot / Musique des Klezmorim ~Giora, Mon Amour 3分31秒>

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2023年10月12日 (木)

Ele Chomdo Libi

今週の番組で取り上げた音源は、他にはミルトスの「ユダヤ音楽の旅」の付属CDのハシディームのニグンの現地録音と、ギオラ・ファイドマンのエレー・ハムダー・リビー等、デュオ・ペイレ・キュニオがありますが、水野先生の著書の付録CD音源は、もちろんそのものがYouTubeにあるはずないので、今日はエレー・ハムダー・リビーを上げておきます。デュオ・ペイレ・キュニオは、東欧音楽のグループ、ブラッチがらみと言うことで今後も何度か登場すると思いますが、明日に取っておきます。
「キング・オブ・クレズマー」と称賛される名クラリネット奏者ギオラ・ファイドマンの独プレーネ盤「The Magic of the Klezmer」の、1曲目のSongs of Rejoicingに、そのラビ・シュロモ・カルリバッハが書いたハシディックなEle Chomdo Libiが入っています。Yismech Hashamayim,Yossel Yosselと続くメドレーですが、何と言っても悠揚迫らぬテンポで歌い出されるEle Chomdo Libiのインパクトが大きいです。73年のファーストアルバムを聞いたすぐ後、同じく91年頃にこの盤を聞いたので、非常に鮮烈に記憶に残っています。ラビ・シュロモ・カルリバッハのハシディック・ソングは、当時通った銀座教文館のヘブライ語教室で度々歌ったので、何曲も覚えて親しみました。今でも歌えると思います。先生からカルリバッハのエピソードも色々お聞きしました。アルファベット検索では、残念ながらカルリバッハのこの曲の歌唱は見当たりませんでした。代わりにクレズマー・ヴァイオリンと弦楽四重奏の演奏を上げておきます。

<1 Songs of Rejoicing 3分56秒>
Ele Chomdo Libi - Yismechu Hashamayim (May the Heavens Rejoice) - Yossel Yossel

Ele Chomdo Libi

Eileh Chamda Libi

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2023年10月11日 (水)

モスクワのシナゴーグの男性合唱によるハヴァ・ナギラ

前回一曲シャローム・アレイヘムをかけたモスクワのシナゴーグの男性合唱によるロシアのメジドゥナロドナヤクニーガ(略してメジクニーガ)盤には、イスラエルのフォークダンス曲としても有名なハヴァ・ナギラが入っていますが、この曲本来のハシディズム系のホラの舞曲らしさが強く出た歌唱です。冒頭低い音からゆっくりと「ハヴァ・ナギラ」と歌い出される部分を聞いた時、これが本来のハヴァ・ナギラだと思いました。このメジクニーガ盤は、フンガロトンの「ドハーニ街シナゴーグの典礼」を89年に聞いて衝撃を受けて、少し後に聞いた盤です。典礼をそのまま録ったドハーニ街の音源と違って、ハティクヴァやシャローム・アレイヘム、ハヴァ・ナギラのようなポピュラーなジューイッシュ・メロディが色々と入っていますが、合間に本格的なカントールの技を聞かせる曲もあって、当時よく聞いた一枚です。
2本目は2016年の2時間近いライブ映像。90年前後リリースのメジクニーガ盤の頃とは、メンバーがかなり変わっていると思います。ラビの話しも全て入っています。12月なのでユダヤ新年ではないと思いますがKol Nidreyがあり、イディッシュ民謡のTum Balalaykaがあり、最後は長調のAdon Olamが出て来ます。

<12 The Male Choir of Moscow Choral Synagogue / Jewish Sacred Music ~Hava Nagila 2分20秒>

Concert at the Moscow Grand Choral Synagogue, 15.12.2016

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2023年10月 9日 (月)

ハシディック・ソング特集 ジャッキー・ジュスホルツ

ゼアミdeワールド380回目の放送、日曜夜10時にありました。11日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はジャッキー・ジュスホルツの2曲のみにしておきます。今回のように一回に音源数枚のペースが多くなると思いますが、それでも東欧系ユダヤは枚数が多いので、後20回はかかると思います。ジャッキー・ジュスホルツの盤、2011年に再発されていたことを今回初めて知りました。アメリカーナ盤の帯はジャッキー・スショルツと言う表記になっていましたが、ドイツ語風に言えばジュスホルツだと思います。フランス語読みすればスショルツもありかなとは思いますが、この盤のライナーノーツではジュスホルツでした。3本目はベルギーでの2時間を越えるライブ映像。

380回目の放送になりました。東欧系ユダヤ音楽の20回目になります。今回は、まずハシディック・ソングのポピュラーな例として、ベルギー在住のユダヤ人歌手ジャッキー・ジュスホルツの音源から始めたいと思います。90年代初め頃に現地盤がアメリカーナから国内仕様盤「ユダヤよ永遠なれ」として出ていました。1曲目のTzaveと言う曲が特に強いインパクトがありましたが、「ユダヤ人に自由を」と言うメッセージを繰り返し、段々早くなる典型的なハシディック・ソングのスタイルです。6曲目のSeou Cheorimもアップテンポに乗せて歌われるメロディが、いかにもハシディックらしく大変印象的だった曲です。曲名の訳は「天の扉を開け、万能の神を迎えん」となっています。

<1 Jacqui Sussholz / Yiddish Is Forever ~Tzave 4分7秒>

<6 Jacqui Sussholz / Yiddish Is Forever ~Seou Cheorim 2分40秒>

Spectacle Yiddish Is Forever Théatre Arenberg Anvers Belgique

次にミルトスから2000年に出た兵庫教育大学名誉教授の水野信男氏の著書「ユダヤ音楽の旅」の付属CDから、クファル・ハバドでの現地録音の生のままのハシディック・ソングを一曲かけておきます。曲名は「敬虔派ユダヤ教徒の歌」となっていて、プーリム(くじの祭り)の夜に歌われたハシディック・ニグンです。因みに、この本のディスコグラフィーは、水野先生から依頼頂きまして私が担当しました。

<10 敬虔派ユダヤ教徒の歌 3分9秒>

前回一曲シャローム・アレイヘムをかけたモスクワのシナゴーグの男性合唱によるロシアのメジクニーガ盤には、イスラエルのフォークダンス曲としても有名なハヴァ・ナギラが入っていますが、この曲本来のハシディズム系のホラの舞曲らしさが強く出た歌唱ですので、ここでおかけしておきます。

<12 The Male Choir of Moscow Choral Synagogue / Jewish Sacred Music ~Hava Nagila 2分20秒>

次に前回かけた「キング・オブ・クレズマー」と称賛される名クラリネット奏者ギオラ・ファイドマンの独プレーネ盤「The Magic of the Klezmer」から、1曲目のSongs of Rejoicingをおかけします。ラビ・シュロモ・カルリバッハが書いたハシディックなEle Chomdo Libiに始まり、Yismech Hashamayim,Yossel Yosselと続くメドレーです。

<1 Songs of Rejoicing 3分56秒>

この後はフランスの東欧音楽のスーパーグループ、ブラッチの中心メンバーであるクラリネット奏者のナノ・ペイレがピアノのドゥニ・キュニオと組んだフランスBudaからの1枚目Musique des Klezmorimから2曲続けますが、前回ギオラ・ファイドマンの演奏でおかけした、しみじみと感動的なシャバトの歌Yah Ribonの演奏が8曲目に入っていますので、こちらをおかけします。「永遠の主よ」の意味のアラム語の祈祷歌で、シャバトの始まる金曜夜の食事の後で歌われる歌です。

<8 Duo Peylet-Cuniot / Musique des Klezmorim ~Yah Ribon 2分41秒>

ギオラ・ファイドマンのレパートリーは、東欧~イディッシュものより、ヘブライ語の祈祷歌やハシディック・ニグンの系統が多く、その「ユダヤ・スピリット」の塊のような深い音色は、他の追随を許さないと前回読み上げた拙稿にも書いていましたが、その音色に惚れ込んででしょう、ナノ・ペイレが彼へのオマージュ曲を演奏していると前回解説を入れていましたので、その曲Giora, Mon Amour(ギオラ・モナムール ギオラ、我が愛)を次におかけします。その後時間が余りましたら、1曲目のメドレーを時間まで聞きながら今回はお別れです。即興、オデッサ・バルガー、Firen Di Mekhutonim Aheymの3曲から成っています。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<2 Duo Peylet-Cuniot / Musique des Klezmorim ~Giora, Mon Amour 3分31秒>
<1 Duo Peylet-Cuniot / Musique des Klezmorim ~Medley 6分8秒>

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2023年10月 6日 (金)

ギオラ・ファイドマンのライブとエリ・エリ

今日はギオラ・ファイドマンのライブ演奏を2本上げておきます。今年で87歳と言うご高齢ですが、まだまだ現役で活動しているようで、1本目のクレズマー音楽の方は2018年の映像ですから、この時すでに82歳という事になります。アラブのウード、東欧のツィンバル、西洋のハープを取り入れたユニークな編成です。2本目は解説にEl Choclo (A.Villoldo) and New Freilekh (Trad.)とある通り、アルゼンチン出身らしく、タンゴのエル・チョクロで始まりクレズマーに移ります。タンゴとクレズマーが実に自然に繋がります。何とこちらは更に最近で、2019年の映像です。
今週かけた曲ではWalking To Caesariaと題する曲が放送では尻切れになって非常に残念でした。この曲は「ユダヤのジャンヌ・ダルク」とも形容されるハンナ・セネシュのEli Eli(我が神、我が神)に付けられた有名な旋律でした。ギオラ・ファイドマンの演奏では見当たらないので、他の人の演奏ですが、クラリネット独奏を3本目に上げておきます。アクセスは少ないようですが、歌を上手くアレンジした良い演奏だと思います。

Giora Feidman Sextett - Klezmer for Peace

Gitanes Blondes & Giora Feidman Regensburg 2019

Eli Eli

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2023年10月 5日 (木)

シャローム・アレイヘムとスィム・シャローム

今日はシャバトの歌、シャローム・アレイヘムとスィム・シャローム(Give Us Peace)を探してみました。どちらも色々別メロディがありまして、シャローム・アレイヘムは番組でかけた音源そのものがありましたが、Give Us Peaceがなかなか見つからず、諦めました。スィム・シャロームは別メロディが非常に多いことが改めてよく分かりました。別メロですが、祈祷歌らしい雰囲気の映像を代わりに上げておきます。(以下放送原稿を再度)

13曲目のShalom Aleichemもシャバトの歌で、前にも書いたと思いますが、「こんにちわ」の意味であるのと共に、「あなたの上に平安を」の意味もある言葉です。参考までに、モスクワのシナゴーグの男性合唱によるシャローム・アレイヘムも続けておかけします。ロシアのメジドゥナロドナヤクニーガ(略してメジクニーガ)の音源です。

<13 Shalom Aleichem 1分59秒>

<1 The Male Choir of Moscow Choral Synagogue / Jewish Sacred Music ~Shalom Aleichem 2分14秒 >

6曲目の英題がGive Us Peaceとなっている曲は、スィム・シャロームと言うルツ・アドラー作曲のヘブライ語の歌の旋律で、これも安息日シャバトの有名な歌です。個人的にヘブライ語教室で歌った懐かしい旋律です。

<6 Give Us Peace 2分25秒>
Sim Shalom

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2023年10月 4日 (水)

ヤリボン

今週はヘブライ・ソングの名曲が多く、一日一曲では消化できませんが、ヤリボン(あるいはヤー・リボン)だけは単独にしたいと思います。しみじみと感動的なシャバトの歌Yah Ribonは、「永遠の主よ」の意味のアラム語の祈祷歌で、シャバトの始まる金曜夜の食事の後で歌われる歌です。ギオラ・ファイドマンの名演を聞いたこともありますが、やはり30年余り前にヘブライ語の授業で歌ったからでしょうか。広尾のシナゴーグのシャバトの際にも、ユダヤ人の方々と一緒に歌いました。歌詞の意味を知らない、また初めて聞く人が同じ様に共感できるかどうかは不明です。ヤリボンは、キリスト教で言えば、テーマ的に頌栄に近いのではと個人的には思って来ましたが、どうでしょうか。ギオラ・ファイドマンの音源、YouTubeにありましたが、残念なことに最初のフレーズが切れています。実はこの曲だけは吹いてみたいと思い、入門の安いクラリネットを所持しております(笑)

<5 Giora Feidman / Jewish Soul Music ~Yah Ribon 1分56秒>
Yah Ribon Olam Vealmaya

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2023年10月 2日 (月)

ギオラ・ファイドマンのHappy Nigun

ゼアミdeワールド379回目の放送、日曜夜10時にありました。4日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はHappy Nigunのみにしておきますが、これはおそらく80年代に入ってからの録音です。放送でかけたJewish Soul Musicでの演奏は、もっと凄かったのですが、YouTubeはなさそうです。今回調べて1973年のこのJewish Soul Musicが、クレズマー奏者としてのファーストアルバムだったことを知りました。ヘッド・アルツィ盤なので、入っていた所は限られていたと思います。

東欧系ユダヤ音楽の19回目になります。今回は1994年6月4日に「ユダヤの音楽」と題して、FM東京の長寿番組「トランスワールド・ミュージックウェイズ」に出演した時に、オープニングにかけたギオラ・ファイドマンのクラリネットの音源を取り上げます。個人的に非常に懐かしい音源です。ラヂバリで番組を持ったのよりも22年早い初めてのラジオ出演でした。当時は、ちょうど映画「シンドラーのリスト」が話題になっていた頃でした。度々引用していますが、ギオラ・ファイドマンについても、99年に音楽之友社から出た「ユーロルーツポップサーフィン」に記事を書いておりまして、その拙稿をまず読み上げます。

ベッサラビア(現在のモルドヴァ共和国の辺り)系ユダヤ人の両親が迫害から逃れるために移住したアルゼンチンのブエノスアイレスで、代々のクレズマーの家系に1936年に生まれたクラリネット奏者で、イスラエル・フィルハーモニーに21歳から18年間在籍し首席奏者を務めて後、この職を投げうってクレズマーを紹介する旅に出る。後には彼独特の音色とフレージングを確立して喝采を浴び「キング・オブ・クレズマー」と称賛される。CDは独プレーネから沢山出ているほか、イスラエルのヘッド・アルツィから数枚等。なお彼のイスラエル・フィルの後輩イスラエル・ゾハルもクラシックだけには収まらず、ハシディック・チューンを収めたCDを何枚か出していて、ハシディーム集会でも演奏しているようだ。彼の演奏もすさまじい。
ファイドマンの最近のCDは重苦しい雰囲気に包まれ、なかなか近寄りがたい感じもあったが、98年に日本で公開されて話題になった映画「ビヨンド・サイレンス」に使われた曲「エロヒーム・エリ・アター」を含む「Silence and Beyond」では、イスラエルの女流作曲家オラ・バット・ハイームの親しみやすい佳曲を好演していた。
このように彼のレパートリーは、東欧~イディッシュものより、ヘブライ語の祈祷歌やハシディック・ニグンの系統が多く、その「ユダヤ・スピリット」の塊のような深い音色は、他の追随を許さない。ナノ・ペイレのように彼へのオマージュ曲を演奏する人もいて、クレズマー・クラリネットのカリスマ的存在と言えるかも知れない。
「主義とか民族とか言うと、それだけで人々は心を閉ざして対立が起こるけれども、ニグンには一切の垣根を越えて人の心に入り込む力がある。心の底から自由になって、歌い踊りたいという願いを否定する人間はいないよ。私はニグンを通して人と人の心を結び付けたい。やがてそれは民族と民族の結びつきとなって、世界に新しい時代が来るだろう。自分にはそんな使命があると思っているんだ。(77年来日時の談話)

それではJewish Soul Musicと言うヘッド・アルツィ盤から、1994年の番組でオープニングにかけた曲、The Happy Nigunからおかけします。

<1 Giora Feidman / Jewish Soul Music ~The Happy Nigun 3分25秒>
Happy Nigun

次に、しみじみと感動的なシャバトの歌Yah Ribonの演奏をおかけします。「永遠の主よ」の意味のアラム語の祈祷歌で、シャバトの始まる金曜夜の食事の後で歌われる歌です。

<5 Giora Feidman / Jewish Soul Music ~Yah Ribon 1分56秒>

13曲目のShalom Aleichemもシャバトの歌で、前にも書いたと思いますが、「こんにちわ」の意味であるのと共に、「あなたの上に平安を」の意味もある言葉です。参考までに、モスクワのシナゴーグの男性合唱によるシャローム・アレイヘムも続けておかけします。ロシアのメジクニーガの音源です。

<13 Shalom Aleichem 1分59秒>
<1 The Male Choir of Moscow Choral Synagogue / Jewish Sacred Music ~Shalom Aleichem 2分14秒 >

ギオラ・ファイドマンの演奏に戻りまして、クレズマー曲のAzoy Tanztmen In Odessa ....と言う曲を次におかけします。静かなヘブライソングのソウルフルな演奏だけでなく、こういうクレズマー演奏においても最高の演奏を聞かせます。

<18 Azoy Tanztmen In Odessa .... 3分33秒>

独プレーネの方はIncredible Clarinetと言う盤から、3曲目のアヴィーヌ・マルケイヌと言う曲は、「我らの父、我らの王」と言う意味の有名なユダヤ教の宗教歌で、これは東欧系ユダヤの有名な旋律です。
 
<3 Avinu Malkeinu 3分1秒>

6曲目の英題がGive Us Peaceとなっている曲は、スィム・シャロームと言うルツ・アドラー作曲のヘブライ語の歌の旋律で、これも安息日シャバトの有名な歌です。個人的にヘブライ語教室で歌った懐かしい旋律です。

<6 Give Us Peace 2分25秒>

10曲目の英題がLet's Be Cheerful, Said The Rabbiとなっている曲は、前回イディッシュ・タンツ(イディッシュの踊り、あるいはユダヤ人の踊り)と言うタイトルでかけた曲です。ルスティヒ・ザイン(イディッシュ語Lustik zein?、英語be cheerful)と言う名称でも知られているハシディック・ニグンの名旋律です。

<10 Let's Be Cheerful, Said The Rabbi 2分34秒>

前にKarsten TroykeでEli Eliと言う曲をかけましたが、有名なハンナ・セネシュの歌とは別の曲で同名異曲でした。14曲目でギオラ・ファイドマンが演奏しているWalking To Caesariaと題する曲は、そのハンナ・セネシュのEli Eliの有名な旋律です。この曲を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<14 Walking To Caesaria 2分35秒>

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