« Mayn Ershte Vals | トップページ | バサラビエ イン・ザ・フィドラーズ・ハウスから »

2023年11月27日 (月)

バサラビエ(ベッサラビア)

ゼアミdeワールド387回目の放送、日曜夜10時にありました。29日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はバサラビエのみです。90年代に聞いたクレズマーで、個人的には一番ガツンと来た曲の筆頭です。

東欧系ユダヤ音楽の27回目になります。3回前の放送でSeth Rogovoyの書いたEssential Klezmerで取り上げている順番が、アンディ・スタットマン、カペリエ、クレズマー・コンセルヴァトリー・バンド、ブレイヴ・オールド・ワールド、クレズマティクスの順になっていて、ブレイヴ・オールド・ワールドとクレズマティクスはルネサンスの扱いになっている旨解説を入れていました。往年のクレズマーの忠実な再現のリヴァイバル組よりは一歩進んだイメージだと思います。
1989年に結成されたブレイヴ・オールド・ワールドのメンバーの4人は、それぞれの楽器の名手であるのと同時に音楽学者でもあり、往年のクレズマーの演奏をそのまま再現するだけでは限界があると最初から考えていたようです。マイケル・アルパートがまだカペリエ在籍中だった1990年リリースのファーストアルバムKlezmer Musicからその傾向が顕著で、往年のクレズマー音楽家が演奏していた東欧の伝統音楽をクローズアップしています。1994年リリースのセカンドアルバムBeyond tha Paleではライナーノーツに解説がありまして、beyond established bordersと出ている通りで、「確立された国境(あるいは制限)を越えた」イメージがはっきりとある、組曲風でコンセプチュアルな作品になっています。the Paleと言うのはここでは「淡い」と言う意味ではなく、ユダヤ人が多く住んでいたロシア帝国西部の「居住区域」を指していますから、ユダヤ音楽をベースに東欧の音楽を掘り下げながら、その枠を越えた音楽を目指した作品になっていて、ラスト辺りではアイリッシュにまで近接してきます。今回はかけませんが、オープニングとエンディングの曲は「ベルリンの壁崩壊」を題材に書かれています。
今回はブレイヴ・オールド・ワールドの初回ですが、取り上げたい曲が時間的にセカンドに多いので、まずセカンドアルバムBeyond tha Paleからおかけしたいと思います。ファーストとサードは、次回組み合わせて取り上げる予定です。メンバーはピアノとアコーディオンのアラン・ベルン(英語圏ではバーン)、歌とヴァイオリンのマイケル・アルパート、クラリネットとその他のクルト・ビョルリンク、コントラバスとツィンバロムなどのステュアート・ブロットマンの4人ですが、ファーストアルバムの頃のクラリネットはJoel Rubinでした。メンバーそれぞれ演奏や研究のエリアを持つ米独混成メンバーで、作風はコンセプチュアルな傾向が強いからでしょうか、1990~2005年の間にCD5枚とKCBと比べると寡作です。しかし、どれも力作で、しばしばクレズマーのスーパーグループと呼ばれていました。

まずはBeyond tha Paleの3曲目のBasarabyeからおかけします。イン・ザ・フィドラーズ・ハウスのビデオのイツァーク・パールマンとのセッションで演奏していた曲で、フリーリズムのルーマニアのドイナのスタイルで演じられます。バサラビエとはユダヤ人が多かったベッサラビア(現在のモルドヴァ共和国)のことです。

<3 Basarabye 6分47秒>

次は4曲目のBig Trainと言う曲ですが、ロシア系ユダヤと思われる旋律を正に列車が走るように、アラン・ベルンのアコーディオンがアレンジして奏でています。

<4 Big Train 6分36秒>

この盤の最大の聞かせどころが12分近い13曲目のDoina Extravaganzaで、アラン・ベルンのアコーディオンに乗って東欧系ユダヤから始まり、遂にはアイルランドまで到達するようなプレイになっています。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<13 Doina Extravaganza 11分47秒>

|

« Mayn Ershte Vals | トップページ | バサラビエ イン・ザ・フィドラーズ・ハウスから »

クレズマー」カテゴリの記事

ゼアミdeワールド」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« Mayn Ershte Vals | トップページ | バサラビエ イン・ザ・フィドラーズ・ハウスから »