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2023年12月

2023年12月29日 (金)

カントールの芸術 ジャン・ピアース

ユダヤ教の会堂の合唱長、カントール(ヘブライ語ではハザン)の音源は、90年頃に聞いたジャン・ピアースが最初で、その次にリチャード・タッカーだったでしょうか。二人ともオペラの世界の名テノール歌手でもありますが、カントールの曲では、ユダヤ的なエキゾチックな細かい節回しに驚いたものです。やはりコル・ニドレイやアヴィーヌ・マルケイヌなど、アハヴォ・ラボ旋法の部分で顕著です。
この二人を聞いた後で、オペラコーナーの中でアリア集の棚にカントールの歴史的録音が紛れ込んでいることを発見しました。分類困難のためアリア集に入れられていたのでしょう、Pearlなどヒストリカル専門のレーベルでGershon SirotaやJoseph Rosenblattなどの往年の名カントール音源がありまして、見つけた時は一人小躍りするように喜んだものです(笑) ジャン・ピアースも生没年は1904年 - 1984年なので、既に相当昔の人ですが、ヒストリカル録音の方は更に20年ほど年長のカントールで、何人もホロコーストの犠牲になっています。
今日の一本は、私が90年頃最初に聞いたジャン・ピアースの「カントールの芸術」と言う米Vanguardの盤です。今週の番組でかけたハヌカーの歌、マーオーズ・ツール ma‘oz tzur (『砦の岩よ』)は、15曲目に出てきます。この曲はハヌカー向きの明るい歌なので、ユダヤ的コブシは控えめです。
東方教会の方は余りに謎が多いので、またの機会にしたいと思います。今年は今日のアップが最後です。皆様、どうぞ良いお年をお迎え下さい。

Jan Peerce - The art of the Cantor

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2023年12月28日 (木)

トリオ・マンディリによる詩篇唱

昨日上げた「アラム語による詩篇唱」を歌っていたFather Seraphim は、ジョージア(グルジア)に住むアッシリア系キリスト教徒だそうです。だから族際語とも言えるロシア語で話していたのでしょう。今日は同じ詩篇50編をトリオ・マンディリが歌った映像がありましたので、上げておきます。アラム語歌詞からグルジア語に訳された詩で歌っているようです。年内は明日までアップする予定ですが、今週の番組の後半で取り上げたユダヤのハヌカー関連にするか、このまま東方教会で終えるか考え中です。
シリアのキリスト教は大変複雑で、西シリア典礼はカルケドンか非カルケドンかで分れ、シリア正教会は非カルケドン、アンティオキア総主教庁(あるいはアンティオキア正教会)はカルケドンに入り、別の一派でした。西シリア典礼の中には更に、カトリックの教義を受け入れた教会もあって、シリア典礼カトリック教会などがあります。
昨日のアッシリア東方教会は、別グループの東シリア典礼の方になり、古代のネストリウス派(431年のエフェソス公会議において異端とされ、唐代の中国においては「景教」と呼ばれた)の流れを継承しているそうです。Father Seraphim がグルジアにいることで、トリオ・マンディリのメンバーも影響を受けることがあるのでしょうか。彼女らは先日はユダヤの宗教歌をヘブライ語で歌っていましたし、グルジアはやはり多民族・多文化が混交する大変に興味深い場所に思えます。

Trio Mandili - Psalm 50


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2023年12月27日 (水)

アラム語による詩篇唱

今週の番組で、古シリア教会の聖歌の「アレルヤ、アレルヤ」をかけました。そのグラモフォン盤「聖地のクリスマス音楽」と同じ音源はなさそうですので、アラム語による詩篇唱を上げておきます。大分前にも上げたと思います。シリアの東方教会には、シリア正教会(あるいはアンティオキア総主教庁)とアッシリア東方教会がありますが、この動画にはAssyrianEasternOrthodoxとYouTubeアカウント名がありますので、この歌唱は後者のようです。最初ロシア語で話しているので、ロシア語圏に亡命した人かも知れません。
シリアやパレスチナは最も早くからキリスト教化された地方ですから、ユダヤ教の流れも汲む古い典礼のスタイルが残っているようです。言葉はイエス・キリスト自身が話したと伝えられる古いシリア語の一種のアラム語が現在も主に使われています。AIによるとパレスチナの宗教は、イスラム教が92%、キリスト教が7%と出ました。シリアでは、イスラム教諸派が87%、キリスト教諸派が12%とありました。レバノンではもっとキリスト教比率が高いと思います。この辺りはイスラム一色ではないかと思っている人が日本には多いかも知れません。70年代から、ユネスココレクションのシリア正教会典礼(録音はトルコのアンティオキアだったと思います)など、何枚か音源がありましたが、すっかりその辺りの情報が得難くなってしまいました。

Father Serafim Chants Psalm 50 In Aramaic

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2023年12月25日 (月)

ベツレヘム生誕教会の鐘、もみの木、きよしこの夜

ゼアミdeワールド391回目の放送、日曜夜10時にありました。27日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。番組でかけたのと同じクリスマス音源はYouTubeにはなさそうですので、ベツレヘム生誕教会の鐘、もみの木、きよしこの夜のみ、見つかった音源で上げておきます。

東欧系ユダヤ音楽シリーズの途中ですが、本放送がちょうどクリスマスイヴですので、今回はクリスマス特集にしたいと思います。2年ほど前とほぼ同じ内容です。

これまでに何度かかけましたが、ドイツ・グラモフォンから出ていた「聖地のクリスマス音楽」から、「ベツレヘム生誕教会の鐘」をおかけします。キリスト生誕の地とされるベツレヘムのギリシア正教会での録音で、東方的な渋みや深みを感じさせる音です。

<22 聖地のクリスマス音楽 ~ ベツレヘム生誕教会の鐘 1分15秒>
イエスが生まれた聖地、生誕教会(3) in ベツレヘム

2~4曲目はローマ・カトリック教会の聖歌で、女声によって歌われるグレゴリオ聖歌の一種でラテン語で歌われています。この盤の中では唯一の西方教会の音楽で、異色の音源になっていると思います。その中から夜中のミサ:アレルヤ唱をどうぞ。

<3 聖地のクリスマス音楽 ~ ローマ・カトリック教会の聖歌 夜中のミサ:アレルヤ唱 2分>

この盤からもう一曲、古シリア教会の聖歌で、アレルヤ、アレルヤをおかけします。最も早くからキリスト教化された地方ですから、ユダヤ教の流れも汲む古い典礼のスタイルが残っているようです。言葉はイエス・キリスト自身が話したと伝えられる古いシリア語の一種のアラム語が現在も主に使われています。

<18 聖地のクリスマス音楽 ~古シリア教会の聖歌 アレルヤ、アレルヤ 2分20秒>

このアルバムに収録されているのは、イスラエルのエルサレムやベツレヘムでの東方諸教会の音源で、この地で2000年前にキリスト教が生まれた頃に近い響きを持っていると思われる音楽が中心です。この後は一般にもよく知られているクリスマス・キャロルもおかけして、その後でユダヤで同じ時期に祝われるハヌカー関連の音源もご紹介します。

よく知られるクリスマス・ソング2曲をウィーン少年合唱団の歌唱でおかけしますが、最初がドイツ民謡「もみの木」で、2曲目は1818年にフランツ・グルーバーが作曲した「きよしこの夜」です。(ウィーン少年合唱団は80年代頃の音源です)

<22 ウィーン少年合唱団ベスト もみの木 1分38秒>
ウィーン少年合唱団 ドイツ民謡 もみの木

<23 ウィーン少年合唱団ベスト きよしこの夜 2分40秒>
Vienna Boys Choir - Stille Nacht (Silent Night)

次にユダヤのハヌカーですが、ユダヤの世界にはキリストの生誕を祝うクリスマスというのは無いのですが、まるで対抗するかのようにほぼ同時期にハヌカーという祭りがあります。ハヌカーはユダヤ教の年中行事の一つで、紀元前168年~紀元前141年のマカバイ戦争時のエルサレム神殿の奪還を記念する「宮清めの祭り」です。

9本の燭台ハヌキヤーに一日一つずつ点灯した後、マーオーズ・ツール ma‘oz tzur (『砦の岩よ』)という、13世紀ドイツに起源を持つ賛歌などが歌われます。そのマーオーズ・ツールを、往年の名テノール歌手ジャン・ピアースの歌唱と合唱団でおかけします。彼はユダヤ教の会堂、シナゴーグの合唱長カントールでもありました。

<15 Jan Peerce / The Art of the Cantor ~Mo Os Tzur 6分22秒>

15世紀のレコンキスタでスペインから追放され、北アフリカやバルカン半島など多くは旧オスマン帝国内に離散したスペイン系ユダヤ人はセファルディーと呼ばれますが、彼らの民謡を演奏するグループVoice of the Turtleは「ハヌカー・コンサート」という盤が最初に出ました。その中からハヌカーという曲をどうぞ。

<10 Voice of the Turtle / Circle of Fire ~Hanuka 3分10秒>

ハヌカーの歌には、東欧系ユダヤのイディッシュ語ではドレイドル、ヘブライ語でスヴィヴォンという木製の独楽(コマ)についての歌がよく知られていますが、有名な旋律の入った盤がすぐに見当たりませんでした。このコマには四面に反時計回りに、ヘブライ文字のヌン、ギメル、ヘー、シンの文字が描かれていて、イディッシュ語の「nisht(ドイツ語: nichts 何もない)、gants(ganz 全部)、halb(halb 半分)、shtel(einstellen 置く)」の頭文字ですが、しばしばヘブライ語で「ネス・ガドール・ハヤ・シャム、そこで偉大な奇跡が起こった」の頭文字と解釈されています。

このドレイドルについては、東欧系ユダヤの祝祭音楽の一種であるクレズマーでよく演奏されています。クレズマー・コンサーヴァトリー・バンドの87年に出たOy Chanukah!から、ドレイドル・ソングをおかけして、その後は時間までこの盤の冒頭から続けたいと思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<19 Klezmer Coservatory Band / Oy Chanukah! ~Dreydl Song 3分25秒>

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2023年12月22日 (金)

We are all brothers and sing happy songs

とは言っても、やはりアレ・ブリダー(We are all brothers)はクレズマーの一番有名な曲だと思いますから、クレズマティクスのファーストShvaygn=Toyt&セカンドRhythm+Jewsの週のラストは、アレ・ブリダーとセカンドの全曲を上げておきます。昨日は「Winchevskyによる1890年の詩に付けられていて、Jewish Socialist Celebration(ユダヤ人社会主義者の祝典)で人気があった」と言うアレ・ブリダーの解説がセカンドにあったと書いていましたが、正しくはファーストでした。この曲はイン・ザ・フィドラーズ・ハウスの最後に全員で歌われていましたが、何故か意外にクレズマティクス自体のライブ映像は少ないようです。この盤に載っている歌詞の英訳の一部は以下の通りです。オリジナル歌詞のReligious and leftists united, like bride and groom, like kugl and kasheの部分は、クレズマティクスの歌詞では外されています。(stickだけ馴染みの薄い言葉でしたが、「団結する」の意味です)
We are all brothers and sing happy songs. We stick together like nobody else, whether we`re few or many. We love each other like groom and bride.
セカンドのリズム+ジューのオープニングのFun Tashlikhを最初聞いた時は、神聖な曲であるはずのタシュリーフとオリエンタルなリズムの組み合わせの意外性に驚きました。タシュリーフは、ユダヤ新年に行われる伝統的な贖罪の儀式ですが、それをナフテュール・ブランドヴァインが曲に仕立て上げ、ここではアラブの打楽器奏者マフムード・ファドルが参加してオリエンタルカラーを盛り上げています。番組でかけたHonikzaftは9曲目で、ハニージュース(蜂蜜、あるいは蜂蜜と乳?)の意味で、出典は旧約聖書の雅歌です。昨日取り上げたShnirele, Pereleは11曲目です。

Ale Brider

The Klezmatics - Rhythm + Jews (1991)

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2023年12月21日 (木)

Shnirele Perele(真珠の弦)

雨後の虹のように美しいシュニーレレ・ペレレ(真珠の弦)は、ハシディック・ソングのレパートリーという事なので、是非ハシディームの歌う映像も見てみたいものですが、なかなか見当たりませんでした。辛うじてトリオでの演奏がありましたので、4本目に入れておきます。この曲はクレズマティクスのセカンドに入って以来、他の盤(ゴスペル歌手ジョシュア・ネルソンとキャスリン・ファーマーを迎えてのBrother Moses Smote the Waterで、今日の2本目はそのライブ)にも登場しますし、合唱入りなど含めライブ映像は何本も見つかりました。他の演奏家の映像も非常に多いですし、クレズマティクスの曲の中でも演奏回数の多さでは筆頭なのではと思います。この曲では、ロリン・スクランベルク(英語的にはスクラムバーグ?)の歌が不可欠なので、彼が弾き語りしない場合は、トランペットのフランク・ロンドンがピアノを弾いていることが多いようです。お、フランク・ロンドンがピアノ弾いてる!と、最初二度見してしまいました(笑)
ベツニ・ナンモ・クレズマーも演奏していたAle Briderの方が人気では上位かと思いましたが、クレズマティクスのセカンドの解説によると、Winchevskyによる1890年の詩に付けられていて、Jewish Socialist Celebration(ユダヤ人社会主義者の祝典)で人気があった、と言うことで、こちらはインターナショナルのようなスタンスの歌という事でしょうか。ですので、抵抗のある方もいらっしゃるかと推測されます。

The Klezmatics -- Shnirele Perele

The Klezmatics with Joshua Nelson - Shnirele, Perele

Shnirele Perele

Shnirele perele by lazer storch

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2023年12月20日 (水)

Pete Seeger - ''Dzhankoy'' (in Yiddish)

クレズマティクスのファーストに入っていたDzhankoyeは、「ソビエトの社会主義革命によりユダヤ人が初めて土地所有を認められた1920年代の短期間のクリミア地方の歌」という事ですが、アメリカのフォーク歌手のピート・シーガー(1919- 2014)の素晴らしい歌唱がありました。バンジョー弾き語りのこの演奏が余りに素晴らしく、他は耳に入らないので(笑)、今日はこちらを上げておきます。アメリカのフォークシンガーが、クリミアが舞台のイディッシュ・ソングを歌うという意外性を感じますが、当時のアメリカでは珍しくなかったのかも知れません。
ピート・シーガーは20世紀半ばのフォーク・リバイバル運動の中心人物の一人。彼の父チャールズ・シーガーは作曲家であり、民族音楽学の先駆者として、アメリカのフォーク音楽や非西洋圏の音楽について研究。ピート・シーガーは、父の友人であったアラン・ローマックスの助手として、アメリカ議会図書館の民衆(フォーク)文化アーカイブで働くことになります。
あのアラン・ローマックスの助手です! 先日ブルーグラスの古い録音にはまったSmithsonian Folkwaysなどで彼の音源を聞いてみようと思いました。

Pete Seeger - ''Dzhankoy'' (in Yiddish)

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2023年12月18日 (月)

クレズマティクス Shvaygn=Toyt

ゼアミdeワールド390回目の放送、日曜夜10時にありました。20日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はShvaygn=Toytから、番組でかけた3曲です。

東欧系ユダヤ音楽の30回目になります。アメリカのリヴァイヴァル・クレズマーの代表的グループを順に聞いてきましたが、Seth Rogovoyの書いたEssential Klezmerによると、アンディ・スタットマン、カペリエ、クレズマー・コンセルヴァトリー・バンド、ブレイヴ・オールド・ワールド、クレズマティクスの順になっていましたので、最後のクレズマティクスまで来ました。この中では一番ロック~アヴァン・ポップスに近いスタンスで、一般人気も一番高かったと思います。ジョン・ゾーンのレーベル、ツァディクにもクレズマティクスのメンバーが何枚も参加しています。特にトランペットのフランク・ロンドンとクラリネットのデヴィッド・クラカウアーの二人です。独特なエフェクトを使うアリシア・スヴァイガルズのヴァイオリンも目立っていました。私は個人的にはロリン・スクランベルクのイディッシュ語の歌唱が一番と思っていまして、前にも言ったと思いますが、特にお気に入りの曲「真珠の弦」が入っているのは、2枚目のリズム+ジューです。クレズマティクスの盤は、おそらく11枚出ていますが、手元に資料があるのは全てではないので、2枚ずつ6枚程を3回に分けて取り上げたいと思います。
ただし、来週はちょうど放送日がクリスマスに当たっていますので、各国のクリスマス音源を久々に取り上げたいと思います。その次は大晦日で放送がお休みで、新年の初回は7日ですので、お正月特集を予定しています。クレズマティクスの2回目はその次の14日になります。

早速89年リリースの1枚目、シュヴァイグン・イズ・トイト(Shvaygn=Toyt 沈黙は死?)からおかけしていきますが、この中から前にクレズマー・コンサーヴァトリー・バンドでかけたErshter Valsと、Dzhankoye、前にベツニ・ナンモ・クレズマーでかけたAle Brider (feat. Les Miserables Brass Band)の3曲を続けます。この盤はCDの前にLPも買って持っていました。ちょうど両方が出回っていた時期です。初めて聞いてから33年ほど経った今の耳で選んだ3曲です。このファーストでは、後にブレイヴ・オールド・ワールドのメンバーになるクラリネットのクルト・ビョルリンクが参加しています。
Ershter Valsは「最初のワルツ」の意味です。Dzhankoyeについては、ソビエトの社会主義革命によりユダヤ人が初めて土地所有を認められた1920年代の短期間のクリミア地方の歌、と解説にありました。Ale Briderについては説明不要と思いますが、この盤の解説によると、Winchevskyによる1890年の詩に付けられていて、Jewish Socialist Celebration(ユダヤ人社会主義者の祝典)で人気があったとありました。

<1 Ershter Vals 4分8秒>

<6 Dzhankoye 2分57秒>

<7 Ale Brider 3分26秒>

90年リリースの2枚目、リズム+ジューからは、HonikzaftとShnirele, Perele (Klezmatic Fantasy: A Suite Mostly In D)「真珠の弦」の2曲を選びました。Honikzaftは、ハニージュース(蜂蜜、あるいは蜂蜜と乳?)の意味で、旧約聖書の雅歌が出典です。シュニーレレ・ペレレ(真珠の弦)は、ハシディック・ソングのレパートリーで、私には雨後の虹のように美しい曲に聞こえます。2曲続けておかけします。

<9 Honikzaft 4分18秒>
<11 Shnirele, Perele 6分12秒>

では最後に2枚目、リズム+ジューから、オープニングのFun Tashlikhを時間まで聞きながら今回はお別れです。タシュリーフは、ユダヤ新年に行われる伝統的な贖罪の儀式ですが、それをナフテュール・ブランドヴァインが曲に仕立て上げ、ここではアラブの打楽器奏者マフムード・ファドルが参加してオリエンタルカラーを盛り上げています。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<1 Fun Tashlikh 5分48秒>

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2023年12月15日 (金)

「ウッジのゲットーの歌」のライブ映像2本

Brave Old WorldとYouTube検索して上位に出て来る Song of the Lodz Ghetto(ウッジのゲットーの歌)の映像は、今日の長尺2本です。1本目は1999年のようですので、この盤が出る6年前で、3枚目のロイテ・ポマランツンが出た同じ99年頃には、既に5枚目のレパートリーを温めていたということでしょうか。あのイン・ザ・フィドラーズ・ハウスの映像からも4年ほどしか経ってない頃です。1本目の最初に、例のアラン・ベルンのモーダル(旋法音楽風)なピアノ演奏が出て来ます。
2本目の映像がアップされたのは2018年とありますので、CDが2005年に出て10年後くらいでしょうか。2005年直後ではないと思います。99年の頃と比べると、2本目ではすっかりメンバーが年取ったという印象で、特にアラン・ベルンはすっかりニッカウヰスキーのCMのオーソン・ウェルズのようになっていて、びっくりしました。2005年以降作品がないのは寂しい限りですが、もう今では70歳目前ですから。

Brave Old World's "Song of the Lodz Ghetto" @ the 1999 Ashkenaz Festival

Song of the Lodz Ghetto with Brave Old World: Concert and Discussion

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2023年12月14日 (木)

ウッジのゲットーの歌 Song of the Lodz Ghetto

Brave Old WorldでYouTube検索すると、ライブ映像が上がっているのは「ウッジのゲットーの歌」関連が多いようです。これはリリースが2005年と、比較的最近なのもあるでしょうが、一般に評価が高いということなのかも知れません。ストリーミングでは聞けますが、解説を参照したいので、4枚目5枚目のドイツ盤を中古盤で手に入れました。どちらも現在は入手難のようで、4枚目はドイツからでした。今日は「ウッジのゲットーの歌」の番組でかけた音源を上げ、明日はライブ映像を見てみたいと思います。番組には入らなかったウッジ序曲も入れておきます。(以下放送原稿を再度)

5枚目のSong of the Lodz Ghettoは、「ウッジのゲットーの歌」と言う意味ですが、Lに斜線を入れてwのような音で読むポーランド語特有の文字が入っていて、母音もそのまま読まない記号が付いているので、ロッジではなくウッジと読みます。ウッジはウッチとも言われるポーランド中央部の都市で、第二次大戦中にはウッチ・ゲットーが建設され30万人以上のポーランド系ユダヤ人が市内から強制的に集められ住まわされ、ポーランド人約12万人、ユダヤ人約30万人など、あわせて42万人以上の住民が犠牲になったそうです。この盤はウッジ・ゲットーの生還者の録音を基に、ブレイヴ・オールド・ワールドがCDの内容を構成しています。生還者の一人、Yaakov Rotenbergの独唱から始まる1曲目Rumkovski Khayim / Lodzh-fidlと、8曲目Yikhes / Vinter 1942を続けておかけします。

<1 Rumkovski Khayim / Lodzh-fidl 2分43秒>

<8 Yikhes / Vinter 1942 5分58秒>

曲名で目に留まったのがクヤヴィアクですので、そのアコーディオン独奏の14曲目Kuyavyakをおかけしておきます。クヤヴィアク(ポーランド語: kujawiak)は、オベレク、クラコヴィアク、ポロネーズ、マズルカとともにポーランドの5大民族舞曲の一つです。ポーランド中部のクヤヴィ地方の発祥ですから、ウッジの近くになるのかと思います。シンコペーションが入る3拍子の緩やかな舞曲で、マズルカに近い感じです。東欧系ユダヤの後は、スロヴァキア、モラヴィア、チェコ、ポーランドと進みますので、またショパンの曲との比較でも取り上げる予定です。2曲目のアラン・ベルンのピアノを中心としたLodzh-Overtur(ウッジ序曲)を後に続けます。

<14 Kuyavyak 2分23秒>

<2 Lodzh-Overtur 4分3秒>

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2023年12月13日 (水)

MarmaroshとムジカーシュのSzol a kakas mar

ブレイヴ・オールド・ワールドの4枚目Bless the Fireでの中東音楽風でモーダルな(旋法音楽的な)ピアノ演奏は他の曲でも聞けました。中東のピアノと言えば直ちに思い出すはイランのモルタザー・マハジュビーですが、ペルシア音楽と言うよりは、アルジェリア辺りのアラブ・アンダルシア音楽系(モリス・エル・メディオニなど)に近く聞こえるので、おそらくセファルディ音楽経由でアラン・ベルンが取り入れたのではと推測します。マハジュビーのように、旋法ごとの微分音までは使っていません。
Bless the Fireを聞いて、それに次いで驚いたのが3曲目のMarmaroshでした。放送で言いましたが、タイトル通りムジカーシュの「トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽」=本題「マラマロシュ」(ルーマニア北部のマラムレシュのこと)を強く意識した演奏のように思います。ムジカーシュの盤での曲名はSzol a kakas marでした。ムジカーシュのこの盤が出たのが1993年、Bless the Fireは2003年で、ちょうど10年後です。ヴァイオリンはマイケル・アルパートだと思いますが、それまではほとんどがリズム・ヴァイオリン的な演奏だったので、これほど本格的な彼の独奏は余り聞き覚えがありませんでした。
この盤には歌詞のある曲以外の解説がありませんので詳細は不明ですが、ムジカーシュによって蘇ったトランシルヴァニアの往年のユダヤの秘曲から受けたインスピレーションを、マイケル・アルパートなりに10年間温めていたのではと思いました。と言うことで、ブレイヴ・オールド・ワールドのMarmaroshとムジカーシュ&マルタ・セバスチャンのSzol a kakas marを並べて上げておきます。

<3 Marmarosh 3分54秒>

Szól a kakas már - Muzsikás együttes, Sebestyén Márta

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2023年12月11日 (月)

The Ladder

ゼアミdeワールド389回目の放送、日曜夜10時にありました。13日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日は特に衝撃を受けたThe Ladderのみです。

東欧系ユダヤ音楽の29回目になります。アメリカのリヴァイヴァル・クレズマーの代表的グループの一つ、ブレイヴ・オールド・ワールドの3回目です。セカンドアルバムBeyond the Paleは前々回、ファーストとサードアルバムは前回取り上げましたので、今回は4枚目のBless the Fireと5枚目のSong of the Lodz Ghettoを取り上げます。4枚目は3枚目のBlood Orangesと同じく2003年にPinnorekkから、5枚目は2005年にWinter &Winterから出ていましたが、当時ドイツのマイナーレーベルは取り難くなっていたようで、未入荷アイテムでした。20年も経って、もう今更なので入れませんが、ピノレックの方はURLを入れてもHPが出ないので、辞めてしまったのかも知れません。音楽的に、どちらもクレズマーの枠を越えていると思います。
メンバーはピアノとアコーディオンのアラン・ベルン(英語圏ではバーン)、歌とヴァイオリンのマイケル・アルパート、クラリネットとその他のクルト・ビョルリンク、コントラバスとツィンバロムなどのステュアート・ブロットマンの4人です。

聞き逃していて特にショックだったのが4枚目のBless the Fireで、アラン・ベルンのピアノがイランやアルジェリアなどで弾かれるような旋法音楽特有のスタイルに似た奏法で、特に驚きました。中東音楽の流れを感じるという点で、少しグルジェフのピアノ曲にも似て聞こえます。こういうモーダルな(旋法音楽風な)ピアノ演奏は、実は3枚目のRoyte Pomarantsn (Blood Oranges)のThe Heretic (Hebre Libre)の後半に少し顔を覗かせていました。前回の最後にかけた中間部がラテン調になる曲ですが、その後で出て来ます。Bless the Fireと言うタイトルは「火を祝福せよ」と訳せると思いますが、これも意味深です。ピアノが特に目立つ一曲目からおかけします。The Ladderと言うタイトルが創世記の「ヤコブの梯子」を連想させますが、この歌詞はカバラー文書を17世紀東欧のハシディズムの人々が解釈した内容のようです。マイケル・アルパートが強烈なイディッシュ訛りのヘブライ語で歌っています。

<1 The Ladder 5分48秒>

3曲目のMarmaroshは、タイトル通りで、おそらくムジカーシュが「トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽」で取り上げたマラマロシュ(マラムレシュのこと)を強く意識した演奏のように思います。ヴァイオリンはマイケル・アルパートだと思いますが、それまではほとんどがリズム・ヴァイオリン的な演奏だったので、これほど本格的な彼の独奏は余り聞き覚えがありませんでした。

<3 Marmarosh 3分54秒>

5枚目のSong of the Lodz Ghettoは、「ウッジのゲットーの歌」と言う意味ですが、Lに斜線を入れてwのような音で読むポーランド語特有の文字が入っていて、母音もそのまま読まない記号が付いているので、ロッジではなくウッジと読みます。ウッジはウッチとも言われるポーランド中央部の都市で、第二次大戦中にはウッチ・ゲットーが建設され30万人以上のポーランド系ユダヤ人が市内から強制的に集められ住まわされ、ポーランド人約12万人、ユダヤ人約30万人など、あわせて42万人以上の住民が犠牲になったそうです。この盤はウッジ・ゲットーの生還者の録音を基に、ブレイヴ・オールド・ワールドがCDの内容を構成しています。生還者の一人、Yaakov Rotenbergの独唱から始まる1曲目Rumkovski Khayim / Lodzh-fidlと、8曲目Yikhes / Vinter 1942を続けておかけします。

<1 Rumkovski Khayim / Lodzh-fidl 2分43秒>
<8 Yikhes / Vinter 1942 5分58秒>

曲名で目に留まったのがクヤヴィアクですので、そのアコーディオン独奏の14曲目Kuyavyakをおかけしておきます。クヤヴィアク(ポーランド語: kujawiak)は、オベレク、クラコヴィアク、ポロネーズ、マズルカとともにポーランドの5大民族舞曲の一つです。ポーランド中部のクヤヴィ地方の発祥ですから、ウッジの近くになるのかと思います。シンコペーションが入る3拍子の緩やかな舞曲で、マズルカに近い感じです。東欧系ユダヤの後は、スロヴァキア、モラヴィア、チェコ、ポーランドと進みますので、またショパンの曲との比較でも取り上げる予定です。

<14 Kuyavyak 2分23秒>

では最後に2曲目のアラン・ベルンのピアノを中心としたLodzh-Overtur(ウッジ序曲)を時間まで聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<2 Lodzh-Overtur 4分3秒>

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2023年12月 8日 (金)

Blood Oranges(ロイテ・ポマランツン)

そして今週の最後は、ブレイヴ・オールド・ワールドの99年リリースのサードアルバムBlood Orangesです。イディッシュ語ではロイテ・ポマランツンです。放送でも言いましたが、この盤では前半に有名なユダヤメロディが匿名のように名を伏せて出て来ますが、ジャズだけでなく、7曲目のThe Heretic (Hebre Libre)と言う曲では5分過ぎからラテン音楽のサルサまで登場して、驚きました。まさかマイケル・アルパートの歌唱でサルサを聞くことになるとは!と言う驚きです。解説によると、言葉はスペイン語に聞こえても、ラディノ語(ユダヤ・スペイン語)だそうです。番組には入りませんでしたが、この曲の後半(8分前後)は、2003年の4枚目のBless the Fireに登場するモーダルな(旋法音楽風な)アラン・ベルンのピアノ演奏が出て来ます。グルジェフのピアノ曲にも似た感じで、これは注目の演奏スタイルだと思います。イランのサントゥールを聞いているようなピアノと言えば、イメージ的に近いです。ペルシアン・ピアノの巨匠モルタザー・マハジュビーのように微分音は入れていませんが。
7曲目のThe Heretic (Hebre Libre)を訳せば「異端者(ヘブライの書)」になると思います。歌詞にMy soul darkens, suffering from loveとか、My soul and my fate are in your powerとあるように、サルサにも出て来るだろう「愛の苦しみ」を歌う内容は、古今東西、また洋の東西を問わないということでしょう。古いスタイルのそのままの復元を拒み、「新しいクレズマー」を目指すブレイヴ・オールド・ワールドの面目躍如の曲かも知れません。「異端者(ヘブライの書)」と言うタイトルが非常に気になりますが、手掛かりはありませんでした。
アシュケナジーム(東欧系ユダヤ)とセファルディ(スペイン系ユダヤ)を繋げる試みは他にもありましたが、これはブレイヴ・オールド・ワールドなりの回答と言う事でしょう。キーになる曲ではという事で、番組では先にかけたロイテ・ポマランツンと題する彼らのオリジナル・イディッシュ・ソングの12曲目を後に上げておきます。

<7 The Heretic (Hebre Libre) 10分10秒>

<12 Royte Pomarantsn (Blood Oranges) 4分34秒>

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2023年12月 7日 (木)

ウクライナ西部の踊りコロメイカ

コロメイカと言えば、バルトークの44のヴァイオリン二重奏の35曲目に「ルテニアのコロメイカ」がありまして、それが一般にはクラシック作品では一番有名でしょうか。77年に聞いた谷本一之さんのNHKのFM番組「世界の民族音楽」では、「タンタンタンタン・タンタンタンタン・タンタンタンタン・ターンタン」とリズムの特徴を説明されていたように記憶しています。このように4拍子でも特徴があります。当時ルテニアとかブコヴィナのような、ルーマニア北部とハンガリー東部とウクライナ西部の、あの辺りの地名を聞くと、心ときめいたものです。変な中学生です(笑) 90年代になって、クレズマーで聞くことになるとは思わなかったです。コロメイケ、コロメケとか表記は色々見かけました。(以下放送原稿を再度)

この盤で個人的に一番好きな器楽曲は8曲目のコロメイカですが、コロメイカと言えば西ウクライナのポピュラーな民族舞曲です。彼らの演奏は往年のクレズマー・クラリネットの巨匠ナフテュール・ブランドヴァインの演奏からインスパイアされているそうです。

<8 Kolomeykes 3分11秒>

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2023年12月 6日 (水)

BOWのチェルノブイリ

チェルノブイリと言う曲名には、最初びっくりしました。しかもハシディズムの文化があったとは、おそらく全く知られてないのでは。ウクライナ系ユダヤのメロディーとありますが、途中ロシア歌謡のカチューシャが一瞬出て来ます。これまでに何度も書いていますが、カチューシャはロシアの民謡ではなく戦時歌謡です。訳は余り自信がないので、下の方にライナーノーツの原文を添えておきました。(以下放送原稿を再度)

ブレイヴ・オールド・ワールドのファーストアルバムKlezmer Musicの2曲目のタイトルはチェルノブイリですが、あの重大な原発事故からわずか4年後のリリースでしたから、まだ記憶が生々しかった頃です。ライナーノーツによると「この曲はポピュラーなウクライナ系ユダヤのメロディーで、パロディ的な社会批評の手段としてしばしば使われてきたため、かつて繁栄したユダヤ人居住区シュテトルであり、重要なハシディズムの本拠地であったチェルノブイリでの出来事を扱うには、痛烈に適格であるように思われ、特に皮肉なのは、チェルノブイリのハシディズムの伝統と、ユダヤの神秘主義や民間伝承における高潔な人々や安らぐ場所に輝きを放つと言われている女性的で神聖な存在の火のイメージとの親和性である」という風な意味深な解説がありました。マイケル・アルパートの歌声に、そういうアイロニーを感じながら聞くのは、音楽からは難しいと思いますが。

<2 Chernobyl 5分8秒>

This popular Ukrainian-Jewish melody has often been a vehicle for parodic social commentary, and as such seems poignantly appropriate for our contemporary version dealing with recent events in Charnobyl, once a thriving shtetl and seat of an important Hasidic dynasty. Particularly ironic is the affinity of the Chernobyl Hasidic tradition for images of fire and of the shkhine- in Jewish mysticism and folklore, the feminine, divine presence which is said to cast a glow over virtuous people and places upon which it comes to rest.

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2023年12月 4日 (月)

Brave Old Sirbas

ゼアミdeワールド388回目の放送、日曜夜10時にありました。6日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はBrave Old Sirbasだけにしておきます。

東欧系ユダヤ音楽の28回目になります。アメリカのリヴァイヴァル・クレズマーの代表的グループの一つ、ブレイヴ・オールド・ワールドの2回目です。1994年リリースのセカンドアルバムBeyond the Paleは前回取り上げましたので、今回はファーストとサードアルバムからおかけします。
1989年に結成されたブレイヴ・オールド・ワールドのは、マイケル・アルパートがまだカペリエ在籍中だった1990年にファーストアルバムKlezmer Musicをリリースしまして、こちらでは往年のクレズマー音楽家が演奏していた東欧の伝統音楽をクローズアップしています。
メンバーはピアノとアコーディオンのアラン・ベルン(英語圏ではバーン)、歌とヴァイオリンのマイケル・アルパート、クラリネットとその他のクルト・ビョルリンク、コントラバスとツィンバロムなどのステュアート・ブロットマンの4人ですが、ファーストアルバムの頃のクラリネットはJoel Rubinでした。

まず1曲目ですが、この曲は古い時期の2つのルーマニア系ユダヤのスルバの旋律で、往年のクレズマー・クラリネットの名人デイヴ・タラスの演奏にインスパイアされて作った曲とのことです。

<1 Brave Old Sirbas 2分50秒>

2曲目のタイトルはチェルノブイリですが、あの重大な原発事故からわずか4年後のリリースでしたから、まだ記憶が生々しかった頃です。ライナーノーツによると「この曲はポピュラーなウクライナ系ユダヤのメロディーで、パロディ的な社会批評の手段としてしばしば使われてきたため、かつて繁栄したユダヤ人居住区シュテトルであり、重要なハシディズムの本拠地であったチェルノブイリでの出来事を扱うには、痛烈に適格であるように思われ、特に皮肉なのは、チェルノブイリのハシディズムの伝統と、ユダヤの神秘主義や民間伝承における高潔な人々や安らぐ場所に輝きを放つと言われている女性的で神聖な存在の火のイメージとの親和性である」という風な意味深な解説がありました。マイケル・アルパートの歌声に、そういうアイロニーを感じながら聞くのは、音楽からは難しいと思いますが。

<2 Chernobyl 5分8秒>

この盤で個人的に一番好きな器楽曲は8曲目のコロメイカですが、コロメイカと言えば西ウクライナのポピュラーな民族舞曲です。彼らの演奏は往年のクレズマー・クラリネットの巨匠ナフテュール・ブランドヴァインの演奏からインスパイアされているそうです。

<8 Kolomeykes 3分11秒>

ブレイヴ・オールド・ワールドのサードアルバムBlood Orangesは、イディッシュ語ではロイテ・ポマランツンで、そのタイトルの彼らのオリジナル曲の12曲目をまずおかけしておきます。キーになる曲なのだろうと思います。

<12 Royte Pomarantsn (Blood Oranges) 4分34秒>

この盤では前半に有名なユダヤメロディが匿名のように名を伏せて出て来ますが、ジャズだけでなく、7曲目のThe Heretic (Hebre Libre)と言う曲ではラテン音楽のサルサまで登場して、驚きました。このタイトルを訳せば「異端者(ヘブライの書)」になると思います。歌詞にMy soul darkens, suffering from loveとか、My soul and my fate are in your powerとあるように、サルサにも出て来るだろう「愛の苦しみ」を歌う内容は、古今東西、また洋の東西を問わないということでしょう。古いスタイルのそのままの復元を拒み、「新しいクレズマー」を目指すブレイヴ・オールド・ワールドの面目躍如の曲かも知れません。その7曲目を時間まで聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<7 The Heretic (Hebre Libre) 10分10秒~7分>

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2023年12月 1日 (金)

「ベルリンの壁崩壊」を題材に書かれた2曲

ブレイヴ・オールド・ワールドの94年のセカンドアルバムBeyond tha Paleの頃のライブ映像があればと思いましたが、Beyond tha Paleと名乗る後発の別グループの映像がほとんどで、おそらく2本だけあったのは、2005年リリースの「ウッジのゲットーの歌(Song of the Lodz Ghetto)」関連の映像でした。この盤は再来週取り上げる予定ですので、今日は今週の番組でかけなかったBeyond tha Paleのオープニングとエンディングの曲を上げておきます。この2曲は「ベルリンの壁崩壊」を題材に書かれています。オリジナルのイディッシュ語の歌です。この盤がリリースされた1994年は、1989年の壁崩壊からわずか5年後。ファーストアルバムKlezmer Musicに入っていたチェルノブイリと言う曲も、1986年の原発事故から4年後でした。彼らはこういう重大な時事問題を、しばしば敏感に曲に反映しています。

Berlin Ouverture

Berlin 1990 (Sing, My Fiddle, Pt. II)

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