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2024年3月 8日 (金)

Alicia Svigalsのヴァイオリン

Alicia Svigalsは、「アリシア」と言う名前やお顔立ちからセファルディ(スペイン系ユダヤ)かもと、ずっと思っていましたが、どうなのでしょうか。クレズマティクスのヴァイオリニストのイメージが日本では強いと思いますが、2001年で退団しているようですから、既に23年も経ちます。最近の写真では、すっかり白髪でした。失われかけていたクレズマーヴァイオリンの伝統のスタイルとテクニックを、年長のクレズマーヴァイオリニストLeon Schwartzに師事することなどで復活させ、イツァーク・パールマンを含む世界中の何百人もの生徒にクレズマーを教えて来たそうです。
クレズマティクスの活動以外に、クロノス・カルテット、劇作家のトニー・クシュナーとイブ・エンスラー、詩人のアレン・ギンズバーグ、レッド・ツェッペリンのロバート・プラントとジミー・ペイジ、デビー・フリードマン、ジョン・ゾーン、ハヴァ・アルベルシュテインらと仕事をしてきたそうです。彼女の演奏スタイルについては「古いフィドルスタイル、クラリネットのテクニック、そしてギリシャ・トルコ風の音色を組み合わせたものである」と自己分析しているようですが、確かにケメンチェの音色に似ているとも言えるように思います。
クロノス・カルテットからは作曲を依頼されているほか、テレビシリーズ「Lの世界」の録音も担当、1918 年のポーラ ・ネグリのサイレント映画『イエロー チケット』のオリジナル音楽で2013 年ユダヤ文化財団のニュー ユダヤ文化ネットワーク委員会を受賞、アブラハム・フリードやリパ・シュメルツァーなどのハシディズム派アーティストのレコーディングに参加、「第二世代」作家セイン・ローゼンバウムと協力し彼の小説『ゴッサムのゴーレム』の一部はスヴィガルズに基づいているとか、ハーブ・アルパートが2008年に録音したイディッシュ語の演劇歌「ベルズ」にフィーチャーされている等々、クレズマティクスの枠に収まらなくなったということかも知れません。名前の表記はスヴィガルズが近いのではと思いますが、英語式ならスヴァイガルズだろうという事で、ずっとそう書いて来ました。(以下放送原稿を再度)

もう一枚の女性ヴァイオリニストが出ている盤ですが、アリシア・スヴァイガルズのFidlと言うTraditional Crossroads盤です。クレズマティクスの紅一点ヴァイオリニストの初ソロ作でしたが、彼女は2000年代に入ってからクレズマティクスを脱退したようです。この盤については音楽之友社から99年に出た「ユーロルーツポップサーフィン」にレビューを書いていましたので、その拙稿の一部を読み上げます。
カントールの「泣き」の裏声を模すように、弓を早く動かしてフラジオ(?)の甲高い倍音を混ぜる奏法は独特で、めくるめくようなフレージングと相まって、ニューヨークのストリートの喧噪も思い起こさせるような、ユダヤを超えて同時代性も強く感じる演奏だった。この盤では彼女のオリジナル曲を含む伝統曲を演奏している。19世紀に盛んに使われたツィンブル(ツィンバロム系打弦楽器)を得意とするジョシュア・ホロヴィッツや、同じクレズマティクスのメンバー、ロリン・スクラムベルク他の好サポートを得て、特にオリジナル曲では情感たっぷりに歌い上げていて素晴らしい。
アリシア・スヴァイガルズは、何とイツァーク・パールマンにもクレズマーのフィドリングを教えたそうです。これからおかけする曲は他の人の演奏でもよく聞く曲ですが、久々に聞き返して、彼女の表現力と音色の素晴らしさに改めて驚かされました。選んだ4曲全ては番組には入らないと思いますが、ゼアミブログの方では取り上げたいと思います。

<2 Alicia Svigals / Fidl - Klezmer Violin ~Baym Rebns Sude 4分7秒>

<6 Alicia Svigals / Fidl - Klezmer Violin ~Dem Trisker Rebns Khosid 3分4秒>

<7 Alicia Svigals / Fidl - Klezmer Violin ~Kale-Kale Mazl Tov 6分57秒>

<11 Alicia Svigals / Fidl - Klezmer Violin ~Ternovker Sher 3分51秒>

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