少女パルティザンの活躍を歌ったヒルシュ・グリック作の極めて美しい曲Shtil, di nakht iz oysgeshternt(静かに、夜には星が散りばめられ)も、ホロコーストを主題にしたイディッシュ名曲です。Hirsch Glickは、パルティザン活動の末にナチスに捉えられ亡くなった詩人で、何度かかけたSog nischt kejnmolも彼の作った曲です。カタカナ表記するとすれば、シュティル、ディ・ナハト・イズ・オイスゲシュテルントになるでしょうか。番組ではiTunesに出て来ていたShtil, Die Nacht Ist Ojgeshterntで表記していましたが、オイゲシュテルントではなくオイスゲシュテルントでした。「きよしこの夜」のドイツ語タイトル、シュティレ・ナハトの両方が入っているので、ドイツ語が分かる方は類推しやすいと思います。
この曲は90年頃にツプフガイゲンハンゼルで聞いて以来、忘れられない曲でした。今回のペーター・ローラントの歌唱も、そのすぐ後で聞きました。この曲は1942年夏に書かれていますが、ロシア民謡のメロディーに乗せられているそうです。美しい少女パルティザンへの淡い恋心をほのめかしながらも、そのユダヤの少女パルチザンのヴィトカ・ケンプナーがヴィリニュスのドイツ列車を攻撃し、破壊工作を成功させたことを讃えています。1本目がペーター・ローラント、2本目はツプフガイゲンハンゼル、3本目はツプフガイゲンハンゼルのライブ映像です。
Shtil, die nacht ist ojgeshternt
Schtil, die Nachts is ojsgeschternt
Zupfgeigenhansel - Schtil, di nacht is ojsgeschternt (Live 1984 - Volksbühne Berlin)
Shtil, Die Nacht Ist Ojgeshterntは明日に回して、今日は今週かけた曲の残りを入れておきます。静止画像ですが、ペーター・ローラントが出ているトゥンバラライカで始めます。彼のギターは、低弦のハイポジションが斜めにカットされた変わったギターで、目を引きます。昨日の動画を見て、奏法も風変りに見えました。番組で少し解説を入れましたが、2曲目のモルデカイ・ゲビルティグ作のエス・ブレント(燃えている)は、シュテトル焼き討ちを歌ったイディッシュ名曲の一つ。3曲目のロ・ミル・アレ・ズィンゲンは、表面的な明るさの中での突然の転調にドキッとする曲です。3曲とも非常によく聞く曲で、誰が歌っていたか辿れば歌詞内容まで追えると思いますが、番組は毎週の事でなかなかそこまで時間がありません<(_ _*)>
大分前にツプフガイゲンハンゼルでかけましたが、少女パルチザンの活躍を歌ったヒルシュ・グリック作の極めて美しい曲Shtil, Die Nacht Ist Ojgeshternt(静かに、夜には星が散りばめられ)と、モルデカイ・ゲビルティグ作のシュテトル焼き討ちを歌ったs Brent(燃えている)もありますので、続けておかけします。ホロコーストを主題にしたイディッシュ名曲のこの2曲が、アルバムのラストを飾っています。Hirsch Glickは、パルティザン活動の末にナチスに捉えられ亡くなった詩人で、何度かかけたSog nischt kejnmolも彼の作った曲です。
<23 Shtil, Die Nacht Ist Ojgeshternt 2分10秒>
<24 s Brent, Bridderlech, 's Brent 2分32秒>
今日の2曲が番組でかけた最後の曲でしたが、少し時間が余ったので16曲目のSchojn schtil is in geslを15秒ほどかけました。これも大変印象的な曲です。曲順で入れておきます。フライエ・ホルテ・アルカロンドについて、何も手掛かりがないまま終わるのは、大変残念です。何かご存知の方がいらっしゃいましたら、是非お知らせ下さい。(以下放送原稿を再度)
前にジョン・ゾーン・マサダの曲との類似を指摘したDire-geltと、間のSchojn schtil is in gesl、ユダヤ・パルティザンの聖歌として名高いSog nischt kejnmolで、この盤は終わっています。Sog nischt kejnmolはShtil, Die Nacht Ist Ojgeshterntと同じく、パルティザン活動の末にナチスに捉えられ亡くなった詩人Hirsch Glickの曲です。
Freie Horte Alqualondeで検索しても、LP音源の曲別が出て来るだけで、ライブ映像やその他の手掛かりは一切見当たりません。今日は番組でかけた曲の2ブロック目の4曲を上げておきます。イディッシュ・ソングらしい名曲揃いです。Di Mame is gegangenは、ペーター・ローラントに影響を与えたセオドア・ビケルの歌唱にありましたので、再来週取り上げる予定です。Di Mame is gegangenは「母は行ってしまった」と訳せると思いますが、この曲はドイツ語から容易に類推出来るというか、ほとんどそのままです。セオドア・ビケルですが、90年頃から英語風発音のセオドア・バイケルと言い慣らしてきたので、まだ何となくピンときません(笑) (以下放送原稿を再度)
バラード調の長い歌は、時間の都合で今回は全て外しました。続いておかけするのは、ツプフガイゲンハンゼルなどの歌唱を取り上げたDi grine kusineと、何度も登場してきたルスティヒ・ザインの旋律によるJoschke, Joschke、間にDi Mame is gegangenを挟んで、ピート・シーガーなどの歌唱をゼアミブログの方で上げたソ連のイディッシュ民謡、Dshankojeの4曲を続けてどうぞ。
ゼアミdeワールド415回目の放送、日曜夜10時にありました。19日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日は1曲目Mir wern gehast un getribnのみです。
東欧系ユダヤ音楽の53回目になります。今回は1983年にドイツのホーフガイスマーで結成された女性5人組のフライエ・ホルテ・アルカロンデの盤Freie Horte Alqualonde / Lomir sich iberbetn - Wir wollen uns versöhnenをおかけします。ドイツのレーベルThorofonからLPで出ていたのが85年で、長らくLPのみと思っていたら、90年頃にCD化もされていました。哀感溢れるイディッシュの歌ですが、ギター、ヴァイオリン、フルートなどのアコースティック楽器の伴奏で歌われる爽やかな女性のコーラスが心地よく、当時よく聞いた盤の一つです。解説がドイツ語のみですが、今回少しだけ分かる範囲で調べてみました。ドイツ語特有のウムラウトを入れなくても大体正しく翻訳されているようです。アルカロンデという名前は、J.R.R. トールキンのファンタジー小説「シルマリルの物語」に由来しているそうです。彼女らは、同じトロフォンからLPの出ていたペーター・ローラントや、エスペ、ハイ&トプシー・フランクルの影響を受けているようです。
まずは1曲目のMir wern gehast un getribnからおかけしますが、この曲についての解説の対訳を読み上げます。「1897年に、ラトビア、ロシア、ポーランドの一般ユダヤ人労働組合である連盟がビルナで設立され、この労働運動の始まりにいたのは、ロシアで生まれ米国に移住したデヴィッド・エデルシャタード(1866~1892年)でした。彼の曲は純粋な戦闘曲(軍歌?)であり、芸術的な主張はほとんどありません。このタイプの歌は、後に10月革命やスペイン内戦中に国際旅団によって歌われました。ローザ・ルクセンブルクはこの曲の歌いやすい翻訳を書きました。」
<1 Mir wern gehast un getribn 1分55秒>
おそらく他の盤では聞いた事がないこの1曲目が特に鮮烈な印象があったので、特別に訳してみました。その後は2曲目と5曲目6曲目の3曲を続けておかけします。5曲目のLomir sich ibertetnと6曲目のTumbalalaikaは、これまでにも何度か他の演奏家で出てきた曲です。
東欧系ユダヤ音楽の52回目になります。今回は、「Aneinu! アネイヌー エルサレムのスィムハット・トーラーの祭でのハシディック音楽 Hasidic-Orthodox Music from the Festival of the Torah in Jerusalem」を取り上げます。ドイツのヴェルゴからの2008年のリリースで、前回のShalom Comrade! Yiddish Music in the Soviet Union 1928-1961と同じく、リタ・オッテンスとブレイヴ・オールド・ワールドの初代クラリネット奏者のジョエル・ルービンの編集です。407回目の放送でかけたKlezmer Music From Tel Avivと言う独Wergo盤のグループ、Sulamのリーダーでクラリネットの名手 Moshe“Moussa”Berlin (モシェ・ムッサ・バーリン)関連の音源でした。売り切れでしたが、今回の放送に間に合いました。ゼアミHPに書いているコメントをまず読み上げます。
Shalom Comrade! Yiddish Music in the Soviet Union 1928-1961から今週の番組でかけた曲で、他の数曲をジャンル分けしますと、カントールの入った曲と、ヤンケレ(子守歌)などの女性歌手の歌唱になります。番組では時間切れでフェイドアウトしてしまいましたので、今日はまずカントールの方です。カントールが歌っていますが、曲目も歌詞も典礼の言葉ヘブライ語ではなくイディッシュ語です。(以下放送原稿を再度)
Shalom Comrade! Yiddish Music in the Soviet Union 1928-1961の音源は、ナフテュール・ブランドヴァインやデイヴ・タラスなど、帝政時代のロシアからアメリカに移住した名演奏家が抜けた後の、旧ロシア帝国(ソ連)のイディッシュ音楽とクレズマーと言う事になります。クレズマー音楽で一般によく知られているのは、アメリカ移住組ですから、「スターリンによって社会主義体制下のソ連邦に懐柔しようとして、体制向きのユダヤ音楽の展開を図った」後、どういう音楽が奏でられていたか知ることのできる貴重音源であることは間違いないでしょう。月曜の2曲は分かり易い例だと思いますが、クレズマーの場合、どういう部分が体制向きなのかが気になるところです。今日の3曲は、クレズマー曲になります。(以下放送原稿を再度)
クレズマティクスなどが演奏していたガスン・ニグンに似たタイトルのA gas nignと言う曲が13曲目に入っていまして、1937年の録音と言う事で、当時の演奏スタイルを知ることが出来る貴重な録音だと思います。
<13 State Ensemble of Jewish Folk Musicians of the Ukrainian SSR / A gas nign 2分45秒>
1曲目に戻りまして、オーソドックスなクレズマーのフレイレフが入っています。State Ensemble of Jewish Folk Musicians of the Ukrainian SSR & Moscow State Yiddish Theater Orchestraによる演奏で、1937年の録音です。
<1 State Ensemble of Jewish Folk Musicians of the Ukrainian SSR & Moscow State Yiddish Theater Orchestra / Freylekhs 2分30秒>
東欧系ユダヤ音楽の51回目になります。今回から後数回はイディッシュ音楽に戻って、60回前後で東欧系ユダヤ音楽のシリーズを終える予定です。去年の夏にジョン・ゾーン・マサダからクレズマーの方に移りましたが、イディッシュは途中だったので、まだ音源がありました。今回取り上げるのは、2005年に独Wergoから出ていた「Shalom Comrade! Yiddish Music in the Soviet Union 1928-1961」(こんにちわ、同志よ。 1928-1961年のソヴィエトのイディッシュ音楽)と言う盤です。コムラードと聞くと、フランスの音楽家パスカル・コムラードを思い出してしまいますが、ここでは元の「同志」(ロシア語ではタヴァーリッシ)の意味です。
まずこの盤についてのゼアミHPに上げた解説を読み上げます。「スターリンは社会主義体制下のソ連邦に懐柔しようとして、体制向きのユダヤ音楽の展開を図り、国立歌舞団を創立したり、オペラ歌手の育成に取り組んだが、そのモスクワ公認のユダヤ音楽(SP音源)を集成したのがこの記録。ウクライナ、ベラルーシ、バルト3国などでの録音の他に、1928年にシベリアのハバロフスクの西に作られたユダヤ自治区(首都ビロビジャン)での音源も含まれている模様。リタ・オッテンスとブレイヴ・オールド・ワールドの初代クラリネット奏者のジョエル・ルービンの編集。」
1928-1961年ですから、正にスターリン、フルシチョフの時代の音源と言うことになります。時代の雰囲気を感じさせる曲が多く、本物の凄さを痛感する貴重な音源です。私が特に興味を持ったのは合唱曲で、ハシディック・ソングをベースにしながらも、どこか日本の「うたごえ運動」にも通じるように聞こえる曲からおかけしたいと思います。その3曲目を聞いて思い出したのは、1970前後にTVで放送されていた毎日新聞のCMでした。7,8歳頃の記憶ですが、後で思い返すと労働歌のような音楽が聞こえてきたことはよく覚えています。そのDorozhnaia(道の歌)と言う曲は、イディッシュ演劇Hreblyesのために書かれていてMoscow State Yiddish Theatre Orchestraの演奏、1937年の録音です。ユダヤ音楽としてはフレイレフになっているようです。この曲の作曲者でヴァイオリニストのLev Pulverは、クレズマーの家系出身で、ボリショイ歌劇場管弦楽団の首席ヴァイオリニストでしたが、レーニン弦楽四重奏団でチェロのグレゴール・ピアティゴルスキーとも活動していたようです。
<3 Moscow State Yiddish Theatre Orchestra / Dorozhnaia 2分50秒>
クレズマティクスなどが演奏していたガスン・ニグンに似たタイトルのA gas nignと言う曲が13曲目に入っていまして、1937年の録音と言う事で、当時の演奏スタイルを知ることが出来る貴重な録音だと思います。
<13 State Ensemble of Jewish Folk Musicians of the Ukrainian SSR / A gas nign 2分45秒>
1曲目に戻りまして、オーソドックスなクレズマーのフレイレフが入っています。State Ensemble of Jewish Folk Musicians of the Ukrainian SSR & Moscow State Yiddish Theater Orchestraによる演奏で、1937年の録音です。
<1 State Ensemble of Jewish Folk Musicians of the Ukrainian SSR & Moscow State Yiddish Theater Orchestra / Freylekhs 2分30秒>
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