ミッキー・カッツのフレンチ・カンカン
ゼアミdeワールド422回目の放送、日曜夜10時にありました。7日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はまずミッキー・カッツのフレンチ・カンカンから。
東欧系ユダヤ音楽の60回目になります。まだまだアシュケナジーム関係は山のように音源はありますが、いよいよ東欧系ユダヤは今回で終える予定です。今回も駆け足で色々な音源をかけますが、まず最初に「泣き笑いのクレズマー音楽」の笑いの方をクローズアップするミッキー・カッツのSimcha Timeと言う盤から、フレンチ・カン・カンを取り入れたCan Can Kazotskiと言う曲をおかけしておきます。歌とクラリネットの両方で、最高の芸達者ぶりを聞かせています。1909生まれ1985年没と言うことですから、かなり昔の人で、卑近な例になりますが私の祖父とほぼ同年齢です。同じくアメリカのコメディアンで、冗談音楽の王様と呼ばれた、スパイク・ジョーンズの楽団に在籍したこともありました。
<13 Mickey Katz and His Orchestra / Simcha Time ~Can Can Kazotski 1分57秒>
次に戦後間もない頃のクレズマー世代ながら、メンバーが長寿で晩年まで現役だったため90年代の録音も残っているエプスタイン・ブラザース・オルケストラのWergoからの2枚組Pattern Of Jewish Lifeの音源から、Chassidic Nigunimをおかけしておきます。ジャッキー・ジュスホルツで前にかけた曲(Tzave)らしき旋律も聞こえます。
<7 Pattern Of Jewish Life, Part 1 ~The Epstein Brothers / Chassidic Nigunim 5分34秒>
次は往年のユダヤ系の大ヴァイオリニスト、ヤッシャ・ハイフェッツが得意にしていたアクロンのヘブライ・メロディと言う曲をおかけします。この曲はアクロンが子供の頃にワルシャワのシナゴーグで聞いた旋律を元に作曲されていて、後半はユダヤ旋法の非常に速く細かい音型のカデンツァに移っていきます。イツァーク・パールマンも「In the Fiddler`s House」のビデオでこの曲を弾いていました。
<7 Shalom: Music Of The Jewish People ~Jascha Heifetz Hebrew Melody 4分55秒>
東欧系ユダヤの最後は、カントールの音源を幾つかおかけしたいと思います。東欧系ユダヤの初回は「ブダペスト ドハーニ街シナゴーグの典礼」でしたから、カントールに始まりカントールに終わることになります。ヴェルゴから出ていたオスマン帝国の名カントール、イサーク・アルガズィも入れようかと思いましたが、この人はセファルディー系カントールですので、またスペインに回ってきたら取り上げたいと思います。
まずはドハーニ街の盤のすぐ後くらいに聞いた「ジャン・ピアース/カントールの芸術」と言う米Vanguard盤から、冒頭のVli Yerusholayim Irchoをおかけします。アシュケナージ系らしくヘブライ語のイディッシュ訛が強い歌は勿論のこと、弦楽器の鳴らし方に、いかにもユダヤ的な響きがあります。ジャン・ピアースは往年のアメリカのカントール兼テノール歌手でした。90年頃に出ていたカントール関係の音源は、他にリチャード・タッカーのものが何枚かありましたが、二人ともオペラの名歌手でもありました。
<1 Jan Peerce / The Art of the Cantor ~Vli Yerusholayim Ircho 5分15秒>
90年頃に勤めていた六本木ウェイブのクラシックのオペラコーナーで偶然見つけた英Pearlからのヒストリカル音源数枚も、その頃に聞いたカントール関係の音源ですが、その中の一枚「ハザニーム・ヴェ・ハザヌート」から、輝かしいボーイ・ソプラノの歌を聞かせるモーゼス・ミルスキーの歌唱でHashkiveinuをおかけします。このシリーズのカントールの多くはホロコーストの犠牲になっていて、モーゼス・ミルスキーも1945年に亡くなっています。
<13 Chazanim & Chazanut(Cantors & Cantorials) ~Moses Mirsky / Hashkiveinu 3分12秒>
では最後に、仏Inedit から出ている「ハザヌート~ユダヤの典礼歌」からアシュケナージ系カントールの歌を時間まで聞きながら今回はお別れです。この盤には、ウズベクのブハラ、モロッコ、エルサレムのスファラディー、サマリア人、アシュケナージ、イラクの各ユダヤ・コミュニティーの音源が収録されています。世界中のユダヤ・コミュニティーの典礼歌を集め、イネディらしくヘブライ原文まで載った先駆的な名盤でした。アシュケナージ系の祈祷歌は、ありがちなクラシックなアレンジが施されたりしているものではなく、実際にシナゴーグで毎週歌われているような無伴奏で小節を利かせた「泣き」の詠唱で実に素晴らしいです。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<10 Hazanout ~Shalom Rakovski / Hazanout askénaze: Ana Aavda Dkudcha en araméen 4分15秒>
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