デイラーマンの歌
ゼアミdeワールド517回目の放送、日曜夜10時にありました。10日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。まずはバナーンのデイラーマンから。
今回は予告通り「今週のペルシア音楽」をおかけしますが、予定していた音源で大体収まる感じですので、今回は全てペルシア音楽にして、一旦今回で締めたいと思います。次回からのスイスシリーズではスイスに集中します。
東京藝大教授で世界的な民族音楽学者だった小泉文夫氏の影響で70年代から民族音楽の道に踏み込んだ私としては、小泉さんが「世界で一番美しい歌」と称賛していたペルシア音楽が、以下のユネスコ盤を聞いた1979年頃からずっと気になってきました。「死ぬ前に聞きたい歌の1番がペルシアの歌で、2番が日本の新内節」と言われていたそうで、そのどちらにも足を踏み入れても来ました。どの著書か分からなくなってしまいましたが、「デイラーマンの歌」について書かれていたのをよく覚えていまして、この曲は小泉さんがイメージされていた美しい歌に入るのではと常々思ってきました。デイラーマンは北イランの民謡がルーツとどこかで読んだのですが、これも出典を調べるのに時間がかかりそうです。この曲はダシュティ旋法の伝統的旋律形グーシェの一つに組み込まれていて、マームード・キャリーミーのラディーフ集成の楽譜も手元にあります。グーシェの一つなので、旋律が固定したタスニーフではなく、即興的にパラフレーズされて演奏されることが常のようです。ダシュティらしい穏やかでノスタルジックな雰囲気の大変美しい曲です。小節を細かく回すタハリール唱法もふんだんに盛り込まれています。
小泉さんはこの人の歌唱をイメージしていたのではと常々思ってきたのが往年の名歌手バナーンですが、最近イランMahoor Institutから出たデイラーマンと言う編集盤から、デイラーマンをまずおかけします。ピアノ伴奏はジャヴァッド・マアルフィーです。
<Gholam-Hoseyn Banan & Javad Ma'rufi / Deylaman ~Deylaman (Dashti) 3分31秒>
このデイラーマンをヴァイオリンの独奏で表現した音源がありまして、これもイランMahoor Institutから出ています。演奏者は往年のセタールとヴァイオリンの名手アボルハサン・サバーです。この演奏の余りにレガートでスムーズは演奏は、ヴァイオリンではなく笛ではないかと言う意見もありましたが、これはヴァイオリンと言うタイトルの盤ですので、あくまでヴァイオリンでの演奏です。私もどうやってこんな声帯模写のような演奏が可能なのか、映像で確認したい衝動にかられた驚異的な演奏です。
<Abolhasan Saba, Violin, Vol. 1 ~Deylaman (Avaz Dashti) 8分56秒>
この後は小泉さんのNHKFMの「世界の民族音楽」を夢中に聞いていた頃の1979年に今治のトチギレコードさんで見つけたユネスコ・コレクションの一枚「イランの音楽 Iranian Dastgah」から、特に決定的な影響を受けた2曲をそれぞれ途中までおかけしたいと思います。当時日本フォノグラムから出ていたユネスコ・コレクションの原盤はオランダPhilips盤で、90年代にフランスのAuvidisから出ていたユネスコ・コレクションのシリーズとは別で、何故かほとんどCD化されてきていません。最近米Smithsonian FolkwaysからCD化されてなかったアナログ時代の音源が一足飛びにサブスクとカスタムCDRで復活し聞けるようになっていますが、このイランの盤は入っていないので、幻の音源と言えそうです。
特に強く感激したのが、アスガール・バハーリーのバヤーテ・エスファハーンとオマール・シェリフのセガーでした。まずアスガール・バハーリーの方ですが、ケマンチェの巨匠アスガール・バハーリーのエスファハーンらしい哀感を漂わせた枯れた味わいの演奏に、トンバクの神様と称賛されたホセイン・テヘラーニが神業のように当意即妙に伴奏している演奏は、最初聞いた時から鳥肌が立ち、何度繰り返し聞いたか勘定が出来ません。この二人は、ゼアミdeワールドのテーマ曲にしているオコラのマーフールにも名を連ねています。
<アスガール・バハーリー エスファハーン 12分48秒~6分>
タール奏者のオマール・シェリフについては、詳細が分からないままですが、イランMahoor Institutのコンピレーション盤「タールの一世紀」にはこの人の演奏が入っていたと思います。微分音程を含んだセガー旋法らしいこの演奏はとてもエキゾチックで、先ほどと同じでホセイン・テヘラーニのトンバクが入ってくるところに、ぞぞぞっと来るような興奮を覚え、特に耳を惹きつけられました。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<オマール・シェリフ セガー 15分55秒~6分30秒>
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