純邦楽

2024年1月11日 (木)

新内志寿(重森三果)さんのその後

番組でかけた新内志寿さんの「廓七草」はカセット音源ですから、さすがにYouTubeには見当たりませんでした。その後どんな活動をされているのか気になったので調べてみましたら、新内志賀の名前で(師匠の志賀大掾に因んで改名されたのでしょうか)何と隠れキリシタン絡みの新作を発表されていました。他にも個性的な活動を展開されていて驚きました。今回は隠れキリシタン絡みの新作のみ上げておきます。

「新内志賀は、過去に五島列島の潜伏キリシタンのオラショを研究・演奏、映画「沈黙」にも参加、かねてより潜伏キリシタンをテーマとして新内の新作を作りたいと考えていた。~ 」<長いので続きはYouTubeの解説をご参照下さい>
(以下放送原稿を再度)

新内の楽しみ「茨木のマリア」

次は、江戸の浄瑠璃の一つ、新内の曲で「廓七草」という曲をおかけします。新内も謡曲の後で私が東京にいる頃に習っていた音曲で、ちょうど放送されるのが七草がゆの頃ですので、この曲を選びました。廓(遊里)で流行った新内らしい哀切な曲調は、最も有名な蘭蝶や明烏以来のもので、艶美な節回しは古賀メロディなど、昔のナツメロ演歌のルーツにもなっているようです。歌っているのは、新内志寿さんで、往年の名人・新内志賀大掾中心のカセット「新内名曲選 子宝三番叟、広重八景」に入っていました。おそらく90年前後の録音で、新内志寿さんはその後、三味線弾き語りで重森三果のお名前で活動されていたと思います。

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2024年1月 8日 (月)

春の海 宮城道雄自作自演

ゼアミdeワールド392回目の放送、日曜夜10時にありました。10日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。2曲目からは水曜以降に。

明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い致します。東欧系ユダヤ音楽シリーズの途中ですが、ちょうど本放送が1月7日に当たっていますので、お正月の音楽特集です。去年は喪中でしたので、2年ぶりです。
お正月と言えば、どこに行っても宮城道雄の「春の海」が聞こえてきますが、自作自演を聞く機会は割と少ないかと思います。この曲だけの色々な編成の録音を集めた「春の海 大響演」という2枚組から何度かご紹介してきました。今回も宮城道雄の自作自演をまずおかけしたいと思います。尺八は初演を勤めた吉田晴風です。

<春の海 宮城道雄自作自演 6分25秒>

宮城道雄の父の出身地である広島県鞆の浦を訪れた際の、瀬戸内海の印象を三部形式に乗せて標題音楽風に作曲したこの曲は、今では彼の代表作として親しまれていますが、吉田晴風との1930年の初演の評判は芳しくなかったそうです。
この曲が一躍有名になったのは、1932年に演奏旅行で来日していたフランスの女流ヴァイオリニスト、ルネ・シュメーと共演してからと言われています。日本音楽に触れるために宮城道雄を訪ねた彼女が一番感動したのが、この「春の海」で、早速尺八パートをヴァイオリン用に編曲して宮城道雄とコンサートで演奏したら、大喝采を受けたそうです。会場で聞いていた小説家の川端康成が、その感動の光景を小説「化粧と口笛」に記しています。その宮城道雄とルネ・シュメーの演奏を次にどうぞ。

<2 春の海(箏とヴァイオリンによる) 6分13秒>

次は、江戸の浄瑠璃の一つ、新内の曲で「廓七草」という曲をおかけします。新内も謡曲の後で私が東京にいる頃に習っていた音曲で、ちょうど放送されるのが七草がゆの頃ですので、この曲を選びました。廓(遊里)で流行った新内らしい哀切な曲調は、最も有名な蘭蝶や明烏以来のもので、艶美な節回しは古賀メロディなど、昔のナツメロ演歌のルーツにもなっているようです。歌っているのは、新内志寿さんで、往年の名人・新内志賀大掾中心のカセット「新内名曲選 子宝三番叟、広重八景」に入っていました。おそらく90年前後の録音で、新内志寿さんはその後、三味線弾き語りで重森三果のお名前で活動されていたと思います。

<新内 廓七草 9分34秒>

最後に民謡になりますが、新潟や日本海側中心に盲目の女性だけで組織を作り、唄をうたい歩いた芸能集団、瞽女(ごぜ)の杉本キクイさん他の三味線で、金毘羅船々をおかけしたいと思います。四国では正月に参ることも多い金毘羅山の有名な民謡で、キングの「名人による日本の伝統芸」シリーズの瞽女編に三味線練習曲として入っています。長調と短調が入り混じるのが、面白いところです。
時間が余りましたら、同じく瞽女の盤から祝い唄「春駒」までおかけします。春駒と言えば、今治の寿太鼓の定番曲としても知られていますが、瞽女の曲も正月にふさわしい祝言的な内容です。初春に訪れる養蚕祝言の門付芸で、高田瞽女は木製の春駒を手に持って唄うそうです。この2曲を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。

<4 瞽女歌 杉本キクイ 金毘羅船々 1分35秒>
<6 瞽女歌 杉本キクイ 祝い唄 春駒 6分29秒>

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2023年6月23日 (金)

6月10日と11日

関係者の撮影でしょうか、今日の動画が一番近くから撮れているようです。所々明るすぎてねぷたはきれいに見えませんが、音はしっかり聞こえますし、囃子の編成がよく確認できます。来場者数は推定5万人だったそうですが、うちのカフェのお客さんや弦楽のメンバー、ラヂバリ関係者には余り行った人がいないようで、非常に意外に思いました。市外からの観客も多かったのでしょう。
11日日曜のみなとマルシェにも行きました。今回来られていたのは、弘前市役所のねぷた保存会の方々だったようです。囃子の種類も分かり易く解説して頂きました。幕間に今治の寿太鼓もありまして、お馴染みの春駒を披露されました。しかしメンバーの約半分が外国の方で、非常にびっくりしました。日本の文化に興味を持つ外国人が増える反面、日本の若い方には、太鼓を叩く人が減ってきているのだとしたら、寂しいことです。

青森県弘前ねぷた in 今治2023 ねぷた運行

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2023年6月22日 (木)

今治でのねぷた

昨日も書きましたが、笛と太鼓の鳴り初めを聞けなかったのが残念至極です。今日の動画は、縦の細長い映像ですが、ハーバリー前の動き出しから、市役所前までの往路を後ろからずっと追えています。(撮った方、有難うございます。腕が疲れたでしょう)映像は遠いですが、笛と太鼓の音はしっかり聞こえるので、嬉しい一本です。こういうシンプルで力強い祭囃子を聞くと、何とも言えない郷愁に誘われて、「てなもんや三度笠」の一節を思い出す世代です(笑) 山車が通り過ぎた後の寂しさは、サンバの場合も同じで、それもサウダーヂでしょう。サンバも関東にいる頃はよく見に行きました。(グループに入ってバスドラを叩きたい衝動に何度も駆られました(笑))
私はハーバリーへの復路もしっかり見て、南海放送のTV取材も傍で見て、ほぼ誰もいなくなったハーバリーの軒下で、ねぷたの電気がパチッと消えるまで見守って帰りました。消えた途端に雨が降り出しました。

ねぷた祭りin今治#ねぷた祭り#青森#お祭り

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2023年6月21日 (水)

青森の話

青森と言えば、ねぷたとねぶただけでなく、文学では太宰治と寺山修司、音楽面では民謡が盛んで津軽三味線と尺八も最高(特に高橋竹山の伴奏で成田雲竹の歌う民謡とか)、下北には寺山の映画「田園に死す」の舞台にもなった恐山もあって、食の方も大間のマグロ、ニンニク、リンゴ、流行歌の出身地としては奈良光枝さんだけでなく、ナツメロ歌手が他にもいたと思います。東北はどの県も民謡と祭り文化の宝庫ですし、酒は旨いし、中でも青森は好きなものが多いなと改めて思いました。最近の歌手では、吉幾三さんですが、彼の節回しを好むインド人を何人か知っています。ねぷたやねぶたの絵を見て常々思うのは、青森出身の版画家、棟方志功の絵との類似ですが、彼は大のねぶた好きで作品の題材としても描いていて、跳人(はねと)として参加している映像や写真も現存するそうです。
25年前に弘前に行って思ったことですが、道路の道幅が広い印象が今もあります。あれは、冬場に除雪車が通るからでしょうか? あのくらいあれば、ねぷたやねぶたも楽に通れるだろうと思います。今治の広小路の道幅では、脇に出店も出しにくいでしょうね。広小路では、ねぷたはギリギリですし、更に大きいのではと思われるねぶたは無理でしょう。
月曜に気が付きましたが、6/10の今治での映像がかなり上がっていました。1本上げておきます。もしかしたら映り込んでしまっているかもと思います(笑) 何とか夕飯を食べられる店を見つけて食事していたので、動き初めの笛と太鼓の音を聞けなかったのを非常に悔やんでいます。

【今治ねぷた初開催!】6/10、30分ノーカット観戦映像記録です。愛媛の濃い〜ラーメンおじさん(2023.6.10県内742店舗訪問完了)

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2023年6月19日 (月)

ねぷたとねぶた

ゼアミdeワールド364回目の放送、日曜夜10時にありました。21日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。番組でかけたクラウン盤と同じ音源はYouTubeにはないと思いますので、去年の4K高画質の長尺映像を上げておきます。

【弘前ねぷたまつり】2022 青森県弘前市【駅前運行】4K60P

364回目の放送になりました。東欧系ユダヤ音楽シリーズの途中ですが、弘前ねぷたが10日11日と今治にやってきまして、いつも放送原稿を書いている日曜の時点で、ねぷたの笛と太鼓の音が頭の中でこだまし、ユダヤ音楽について考える余地がありませんので(笑)、今回は二足程早い夏祭り特集として、弘前のねぷたと青森のねぶたの音源をおかけしたいと思います。実際に見る大灯篭の美しさと迫力、お囃子の音色が呼び起こす感動が冷めやらぬ中、今回の放送原稿をまとめました。これまでお盆には、阿波踊り、越中富山のおわら「風の盆」、郡上八幡の民謡などをかけました。
クラウンのねぶたとねぷたの音源は、去年の8月14日にも流しましたが、その時は阿波踊りの苔作と78年徳島での現地録音をかけた後で、東北三大祭りの一つ、青森市のねぶたと弘前市のねぷたの、この実況録音盤(昭和60年録音)をかけました。去年はねぶたを5分、ねぷたも5分だけでしたが、今回はねぷた30分の音源から20分余りをまずおかけします。今治に来たねぷたは一台でしたが、現地録音を聞くと何台もねぷたが次々登場しているのが分かります。

<2 弘前ねぷた 29分58秒 ~20分余り>

青森ねぶたの起源としてよく知られていたのは「のちに征夷大将軍となる坂上田村麻呂が陸奥国の蝦夷征伐の戦場において、敵を油断させておびき寄せるために大燈籠・笛・太鼓ではやし立てたことを由来とする」とあります。ねぶたとねぷたで、燈籠だけでなく音色や雰囲気が少し違うことも音から分かるかと思います。
余談ですが、千葉にいた20年ほど前のヤマトの担当ドライバーにねぶた好きの人がいまして、このクラウン盤を買って頂いたことがありました。夏場は配達の時も聞かれていたようです。ねぶたマニアの中には、彼のように毎年本場に行って「ラッセラー、ラッセラー」という掛け声をかけて踊り歩く「跳人(ハネト)」をする人も多いようです。
もう一つ個人的な話になりますが、「悲しき竹笛」の71年の映像を見てから弘前出身の歌姫、奈良光枝さんの大ファンだったので、千葉にいた1998年に、ご家族に連絡を取ってから奈良光枝さんの二十一周忌に参列するため、弘前に夜行バスで行ったことがあります。もう25年も前になります。墓前では、奈良さんの同級生の方々と「青い山脈」も歌ってきました。「青い山脈」を最初に歌ったのは、奈良さんと藤山一郎さんですが、奈良さんが若くして亡くなったので、藤山さんだけの歌と思われている傾向があるようです。今回の放送原稿を推敲し印刷した6/13は、ご存命なら奈良さん100歳のお誕生日です。奈良さんの命日は5/14ですので、ねぷたも弘前城の桜も見れずですが、津軽民謡酒場の山唄で本場の津軽三味線は聞いてきました。山唄は名人の故・山田千里さん経営の店でした。
では最後に青森ねぶたを時間まで聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<1 青森ねぶた 28分57秒>

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2022年1月14日 (金)

岡本文弥さんと岡本宮之助さん

90年代に岡本文弥さんのバックで三味線伴奏していたのは、奥さんの宮染さんと岡本宮之助さんでした。詳しく家系に付いては知らなかったのですが、今回調べて、三味線を弾いていた奥さんは五世・岡本宮染(平成17年に92歳で死去)、上調子の宮之助さんは三世・岡本宮之助(三世・岡本宮古太夫)で、彼は四世・岡本宮染の孫で、岡本文弥さん(平成8年に101歳で死去)は大叔父に当たることが分かりました。 あの男前の宮之助さんも還暦近いようですが、新内節岡本派の後継者として膨大な文弥さんの作品を継承されているそうです。いつか東京に聞きに行きたいものです。
動画の蘭蝶は、文弥さんの私家版カセットに入っていた古風蘭蝶です。通常はカットする部分を全て語っています。2本目は文弥さんの90年代の映像で宮染さんと宮之助さんも出てきますが、ここでは宮之助さんが三味線、宮染さんが上調子です。

『若木仇名草(蘭蝶)』より抜粋 ー 新内節・岡本宮之助「文・藝・会」

至芸の時 岡本文弥(2)

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2022年1月13日 (木)

新内流し

今回久々に新内のYouTubeを検索したら、色々出て来て驚きました。数年前はほとんどなかったのですが。時代劇でも有名な新内流しですが、吉原の遊女供養の新内浄瑠璃流しと、新内仲三郎さんと息子の剛士さんの演奏が、二挺三味線の演奏風景も分かって特に素晴らしく思いました。
吉原の遊女供養の方で上調子(枷と言うカポタストのようなものを付けて4度上げた三味線)を弾いている杉浦さんには、99年の邦ジャの和音のオープニングでお会いしたことがあります。胡弓の演奏家としても有名な方です。新内所縁の地として、吉原神社も行きましたが、遊女の投げ込み寺として有名な三ノ輪の浄閑寺にも、96年の4/29の荷風忌に行きました。「生まれては苦界 死しては浄閑寺」の川柳でよく知られる浄土宗の寺です。新吉原総霊塔だけでなく有名な筆塚も見てきましたが、永井荷風は新内は好まなかったようです。
2本目の新内仲三郎さんは人間国宝で、現在の新内三味線と新内語りの最高峰でしょう。息子の新内剛士さんと娘の新内仲優莉さんの新内流しを96年に江戸東京博物館で聞く機会がありまして、大変に魅了されました。あれから早25年、びっくりです。

吉原で遊女供養の新内浄瑠璃流し

六代目新内仲三郎/新内剛士

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2022年1月12日 (水)

ペルシアの歌と新内

「あと十分で死ぬと言う時に、何か二曲だけ音楽が聞けるとしたら、まず私が世界中で一番好きなイランの歌、その次に新内を聴きたい。」と言う故・小泉文夫氏のコメントで気になり続けていたのは、それぞれ具体的に誰かの歌唱のイメージがあったのではと言う点です。
イラン(ペルシア)なら、1978年の東京国立劇場でのファーテメ・パリサーが歌った艶美の極みのホマーユンか、晴朗なマーフールの歌唱が念頭にあったのかも知れません。ビクターJVCの「ペルシア絶唱」と言うCDのタイトルそのものの絶美の歌唱でした。両録音は、1980年に柘植元一氏のNHKFM「世界の民族音楽」で流れました。因みにゼアミブログでのHNと、ラヂバリでの私のパーソナリティ名「ほまーゆん」も、ここから取っています。パリサーでないとしたら、小泉さんの著書の中で触れられていたダシュティ旋法のデイラーマンかも知れません。揺蕩うような旋律が極めて美しい曲です。デイラーマンなら、おそらく往年の男性歌手バナーンの歌唱でしょう。
そして新内の方ですが、例の岡本文弥さんのテイチクの7枚シリーズ(2014年に再発されています)の故・江波戸昭先生の解説に「小泉さんが好きだった新内」についての一文がありましたので、更に気になるところです。このシリーズは文弥さん晩年の90代の録音でした。1996年に谷中のお宅まで私家版のカセットを頂きに伺ったことがありまして、奥様の宮染さんに応対して頂きました。奥の方に文弥さんもいらっしゃいましたが、96年は暑い夏で大変そうでした。カセットの録音はおそらく60、70年代くらいでしょうか。これら昔の録音は凛とした歌声で更に素晴らしいのですが、一般に市販されていないのが残念です。女流なら70、80年代頃に一番脂が乗っていただろう花園一声さんとか鶴賀須磨寿々さん辺り、小泉さんも生で聞く機会があったのではと思います。私も昔コロムビア盤を愛聴した女流新内語りのお二人です。花園一声さんは、昔「蘭蝶」のLPを手に入れましたが、これもCD化はされていません。
今日の動画は、富士松加賀太夫 (1856-1930) の歌う四谷の段で、文弥さんより更に上の世代の江戸時代末期生まれの名人の貴重な記録です。今の新内と、かなり節が違います。ペルシアの歌については、今日は動画は上げませんが、前にブログに色々書いていますので、宜しければカテゴリーから辿ってみて下さい。

Vintage Japanese Music-RANCHOU (imasara iumo) 蘭蝶(今更言うも過ぎし秋) 富士松加賀太夫

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2022年1月10日 (月)

新内節「蘭蝶」

ゼアミdeワールド292回目の放送、日曜夜10時にありました。12日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。YouTubeですが鶴千代師匠の70年代のビクター音源はありませんが、数年前の「縁でこ」がありました! 皆さんお元気そうで何よりです。

新年の一回目ですので、まずは新年のご挨拶からになります。あけましておめでとうございます。本年もお聞き頂けましたら嬉しい限りです。どうぞよろしくお願い致します。

ルーマニア音楽巡りの途中ですが、これまで新年には「春の海」を中心に純邦楽をかけてきました。今年は初回が9日ですが、ほぼ正月とお盆にしか日本の音楽を入れられてないので、今年も日本の音楽を取り上げておきます。世界中の音楽を回ってからでは30年後位になるかも知れませんので(笑) 
今年はお正月らしくない音楽ですが、自己紹介も兼ねて新内節の有名な曲「蘭蝶」をおかけします。まだ東京の方に住んでいた98年頃に新内に入門していた件は、6年前にこの番組が始まった頃に少しお話したことがあります。太夫の付いた名前も頂いて、三味線の上調子では何度も日本橋三越や宴席などでの出番がありました。その経緯などが分かる一文として、95年に某雑誌に書いた拙稿から抜粋して読み上げてみます。

 「あと十分で死ぬと言う時に、なにか二曲だけ音楽が聞けるとしたら、まず私が世界中で一番好きなイランの歌、その次に新内を聴きたい。」これはあの世界的な民族音楽学者、故・小泉文夫氏の言葉である。世界中の音楽を訪ね、聴きつくした小泉さんが語った言葉だけに重い。
 14年ほど前にテイチクから、故・岡本文弥さんの自作曲の素晴らしい7枚シリーズが出ていた。文弥さんの淡々とした語りで「情」の音曲が演じられる時、「粋(いき)」の極致を聞く思いであった。文弥さんが101歳で亡くなったのは96年。テイチク盤も廃盤になって久しく、「新内(しんない)」と言うジャンルを耳にする機会がすっかり減ったと思うのは筆者だけだろうか。
 新内はリズミカルな音楽ではない。これが現代人に今ひとつ受けない理由だろうか。「間」が伸びたり縮んだりする音楽と言う点では、ペルシアの声楽とも通じる部分がある。節回しも表の声と裏声を交錯させる非常にテクニカルな歌唱で、小泉さんも新内と義太夫は、専門的訓練を積まなければ面白さの片鱗も表せない難しい音楽だと語っていた。
 歌舞伎の伴奏音楽として発達した同じ江戸系浄瑠璃の常磐津、清元、河東などと違い、吉原を中心とした遊廓の座敷芸、あるいは吉原被りに着流し姿の二挺三味線の新内流しが時代劇でお馴染みの流しの音楽として伝承されてきた新内は、テーマとしては遊女の悲恋物語、心中物が多い。
小泉さんの言葉がずっと頭にあって、謡曲で邦楽に目覚めた後、ちょうど文弥さんが亡くなった1996年、筆者は新内に入門した。師匠は富士松鶴千代さんという女流名人で、ビクター邦楽名曲選に入っている「蘭蝶」のサワリの部分に完全にはまっての入門だった。多少でも興味を持たれた方は、論より証拠、一度耳にされてみてはいかがだろうか。色々音楽をかじった人こそ、日本人のDNAが騒ぐことは請け合いである。

特に有名な部分が「四谷で初めて逢うた時~」と始まる遊女・此糸から男芸者・蘭蝶へのクドキ「四谷の段」と、蘭蝶の女房・お宮から此糸へ切々と縁切りを頼む「縁でこそ」の2か所ですので、「縁でこそ」(通称・縁でこ)の部分まで続けておかけします。最初の「名にし負う 隅田に添いし流れの身~」の節から好きなもので、最初からおかけします。サワリのほとんどは富士松鶴千代さんが歌っていますが、語りの部分では富士松鶴千代さんが此糸、富士松小照さんがお宮の役です。

<新内名曲集  蘭蝶 若木の仇名草 最初~21分35秒>

では「縁でこそ」の続きを時間まで聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<新内名曲集  蘭蝶 若木の仇名草 21分35秒~>

富士松鶴千代 の世界「蘭蝶」

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