純邦楽

2017年1月11日 (水)

春の海 (箏とヴァイオリンによる)

9日にはオリジナルの筝とヴァイオリン版がすぐに見当たりませんでしたが、ありました。フランスの女流ヴァイオリニスト、ルネ・シュメーと宮城道雄のこの1932年の共演から、「春の海」が広く知られるようになりました。会場で聞いていた小説家の川端康成が、初演の感動の光景を記したと言う小説「化粧と口笛」も非常に気になりますが、文庫には入っていないようです。シュメーのヴァイオリンの音は、今ではオールドスタイルのようにも思いますが、それが返ってこの曲にはあっているようにも思います。ヴァイオリンでは広く弾かれている曲で、実は手元に楽譜がありまして、去年はこの曲でヴァイオリンの弾き初めをしました。筝曲関連にしては、音階が地唄と違って民謡的なところ、それなのに泥臭くはならず、雅びさが溢れている点がユニークな曲だと思います。

宮城道雄:春の海 シュメー Chemet

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2017年1月 9日 (月)

春の海 自作自演

ゼアミdeワールド39回目の放送、日曜夕方に終りました。11日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。

明けましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い致します。と新年のご挨拶をしましたが、ラヂオバリバリが元旦から5日までお正月休みですので、実は12月28日に収録しております。選曲のために一足早いお正月気分を味わっておりました(笑)

お正月と言えば、宮城道雄の「春の海」を思い出す方が多いのではと思います。正月中はどこに行っても耳にする曲ですが、この曲だけの色々な編成の録音を集めた「春の海 大響演」という2枚組が出ておりますので、こちらからご紹介して行きます。筝と尺八のオリジナルに始まり、筝とヴァイオリン、筝とフルート、筝と南米のケーナ、筝と二胡、スコットランド人とのハーフの往年の名テノール歌手藤原義江のオーケストラ伴奏など、様々な演奏が入っております。

まず宮城道雄の自作自演でどうぞ。尺八は初演を勤めた吉田晴風です。
<春の海(オリジナル) 6分30秒>
春の海 宮城道雄自作自演


宮城道雄の父の出身地である広島県福山市鞆の浦を訪れた際の、瀬戸内海の印象を三部形式に乗せて標題音楽風に作曲したこの曲は、今では彼の代表作として親しまれていますが、吉田晴風との1930年の初演の評判は芳しくなかったそうです。
この曲が一躍有名になったのは、1932年に演奏旅行で来日していたフランスの女流ヴァイオリニスト、ルネ・シュメーと共演してからと言われています。日本音楽に触れるために宮城道雄を訪ねた彼女が一番感動したのが、この「春の海」で、早速尺八パートをヴァイオリン用に編曲して宮城道雄とコンサートで演奏したら、大喝采を受けたそうです。会場で聞いていた小説家の川端康成が、その感動の光景を小説「化粧と口笛」に記しています。その宮城道雄とルネ・シュメーの演奏を次にどうぞ。

<春の海(箏とヴァイオリンによる) 6分13秒>

宮城道雄の筝とヴァイオリンでの演奏は、他に黒柳徹子の父である黒柳守綱などとの演奏も入っておりまして、この方はN響などでコンサートマスターを勤めた人です。一曲が6分余りずつありますので、余りかけられませんが、次にフルートのガッゼローニと三代目宗家の宮城数江の1972年録音をかけてみましょう。1956年の宮城道雄の没後では、最初のこの曲の録音です。ガッゼローニと言えば、ジャズの鬼才エリック・ドルフィーのフルートの師匠としても知られ、ドルフィーのアルバムOut to LunchにGazzelloniと言うオマージュ曲が入っていました。

<春の海(箏とフルートによる) 7分1秒>

ここで、少し宣伝を入れたいと思います。
2月5日に今治中央公民館で第10回今治総合芸能祭がありまして、私もチェロで出ます。時間は1時からですが、開演前のウェルカム演奏を私が担当することになりました。緞帳前でのウェルカム演奏が12時半からで、1演目目が1時過ぎからの予定です。1演目目の「序の舞」にもチェロで出ます。お能の橙黄会、未来演劇Kプロジェクトジュニア、山田逸朗さんの写真に、私のチェロのコラボです。宜しければ是非お越し下さい。ウェルカムでハイドンの皇帝第2楽章のチェロパート、エルネスト・ブロッホの祈り、J.S.バッハ無伴奏チェロ組曲3番サラバンド、5番ジーグ、「序の舞」では、春をイメージさせる序の舞の能管をベースに、J.S.バッハの無伴奏チェロ組曲1番からサラバンド、アルマンド、プレリュードをこの順に弾く予定です。

では、最後に宮城道雄の演奏で、筝の代表的名曲として有名な六段を聞きながら、今回はお別れです。この侘び寂感溢れる美しい曲を書いたのは、江戸時代前期の近世筝曲の祖、八橋検校とされています。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。また来週

<宮城道雄 / 六段 5分52秒 抜粋>

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2017年1月 6日 (金)

三味線での六段

地唄筝曲の三味線による六段もありました。三味線独奏と、三味線二重奏と尺八の2種類ありますが、筝の奏法を模しているような部分もかいまみえます。2本目の尺八は当店でCDの扱いがある善養寺惠介さんです。14年ほど前にトッパンホールでの独奏を聞きに伺ったことがあります。虚無僧尺八の枯淡の世界でした。
三曲の合奏になるのでしょうか、筝、三味線、尺八の合奏もありましたが、元の筝曲の深い味わいが薄まるようにも思いました。

地唄箏曲美緒野会 - 六段の調  MIONOKAI - Rokudan-no-Shirabe

地唄箏曲美緒野会 - 六段の調  Mionokai - Rokudan no Shirabe 2016/04/10

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2017年1月 5日 (木)

尺八での六段

「春の海」なら、編成は筝と尺八と分っていますが、六段でも結構尺八との二重奏があって、更には尺八だけでの六段というスタイルもyoutubeがかなり上がっています。名人山口五郎の二重奏や、山口籟盟の独奏、何とロシア人の演奏などもありました。尺八ですから、雅びさは控えめで、侘び寂感が前面に出るようにも聞こえます。

Goro Yamaguchi et al - Rokudan

六段(Rokudan)山口籟盟

сякухати , shakuhachi , 尺八 Рокудан 六段 ( Rokudan ) in Moskow

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2017年1月 4日 (水)

六段

明けましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い致します。ゼアミdeワールドの初放送は8日で、辛うじて松の内なので(15日まで取る場合もあるようですので)、あの曲を取り上げています。非常にベタなので、これだけですぐにお分かりかと思います(笑) 正月に因んだ曲ではないですが、最も有名な筝曲ということで、八橋検校作曲とされている六段の宮城道雄の演奏を最後にかけました。去年も確か松の内邦楽として取り上げましたので、違う演奏で上げておきます。優しく美しく優雅な演奏です。

この和の美しさの極致のように聞こえる名曲が、江戸時代初期の17世紀にキリシタン音楽との出会いによって生まれたと言う説があり、箏曲『六段』とグレゴリオ聖歌『クレド』という盤が出て、結構話題になりました。真偽がどちらか気にはなりますが、そんなことは忘れてしまうような、日本人の心に直に響く、侘び寂の美をよく味わいたい曲です。

筝曲「六段の調」Atsuko Yoshida 2012.1.3

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2016年7月 5日 (火)

富士松加賀太夫の新内 (ドーコレキーコヒ)

SPの新内もいくつか上がっていますが、この演奏の富士松加賀太夫は、何と1856年生まれ1930年没の太夫で、1925年の録音とのこと。幕末生まれです! 落ち着いた格調高い歌声ですが、割と平坦にも聞こえます。歌舞伎の雰囲気が少し感じられるようにも思いました。節や三味線の手も少し違うようで、とても興味深い記録です。先日ラジオで拙演をかけました四谷の段の部分で、「今更言うも過ぎし秋」は、その直前の文句です。

Vintage Japanese Music-RANCHOU (imasara iumo) 蘭蝶(今更言うも過ぎし秋) 富士松加賀太夫

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2016年7月 4日 (月)

古賀政男の三味線

05年にお会いしたことのある柳家小春さんの新内などの動画を見ていたら、リンクに美空ひばりの都々逸の伴奏を、古賀政男が三味線でしている映像を発見しまして、非常にびっくりしました。いわゆる古賀メロディのギター演奏では有名ですが、三味線の演奏を見るのは初です。とても正確な勘所に味のある演奏。アンコはもちろん「酒は泪か溜息か」です。
2本目では、蘭蝶と並ぶ新内名曲の明烏を、小春さんの弾き語りで聞けるのが何より嬉しいのですが、現代的な面白い試みを重ね合わせています。

「都々逸」 美空ひばり / 古賀政男

柳家小春+テニスコーツ 新内『明烏夢泡雪』(抜粋・エンディングカット)

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2016年7月 1日 (金)

岡本文弥さん

そして、何と新内界の至宝、岡本文弥さんの映像もありました。101歳まで現役で活動された現代最高の新内名人でした。私は亡くなる少し前の96年夏、谷中のご自宅を訪ねたことがあります。私家版カセットを頂くためでしたが、その年の夏はとても暑くて、応対して下さった奥様の宮染さんの向こうの奥の方にいらっしゃった文弥さんは、ご高齢ですから堪え難いご様子と拝察しました。最近90年代に出ていた晩年の録音集成のテイチク盤が再発されましたが、やはり昔のはりのある歌声は特に最高でした。この映像から聞こえてくる歌声、三味線の音、どちらも最高です!

至芸の時 岡本文弥(1)

至芸の時 岡本文弥(2)

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2016年6月30日 (木)

遊女供養の新内流し

しばらく見ない間に、色々と新内やお能関係のyoutubeも増えていて、びっくりしました。岡本紋弥さんと杉浦千弥さんの新内流しもありました。艶っぽい歌声と、粋な二挺三味線。粋な着流しに、吉原被り。良いですねぇ。昔はよく時代劇で見かけたものです。(杉浦さんには邦楽ジャーナルの催しでお会いしたことがあります)
2007年の当ブログに、昨日と同じ「謡曲と新内」という題の記事がありました。(ダブったような気はしていました(^^;) こちらも是非ご参照下さい。96年刊の雑誌「Etcetera」に書いた拙稿です。当時の熱い気持ちが入っています。荷風忌に「生まれては苦界、死しては浄閑寺」の川柳で有名な浄閑寺にも行きました。

http://zeami-cd.cocolog-nifty.com/blog/2007/10/post_ba6c.html

ビデオの解説から
東京大空襲から68年を迎えた3月10日、かつて遊郭があった吉原で三味線の音が鳴り響いた。遊女供養のため、古典芸能・新内浄瑠璃の太夫と三味線方が供養の意味を込めて町を練り歩いた。

吉原で遊女供養の新内浄瑠璃流し

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2016年6月29日 (水)

謡曲と新内

ゼアミdeワールド14回目の収録に行ってきました。
6月末からラヂオバリバリが新スタジオ、ハーバリーに移動しまして、今度から放送の3日前までに収録しないといけなくなりましたので、スケジュールの都合上22日に2回分収録しました。30日と来月3日に放送されるのは13回目の収録分です。今日は私のウード・ソロで新内流し(ちろりん出演時の録音)、加藤さんのウード・タクシーム、「ジャリラのラクス・シャルキVol.3」からアリフ・ライラ・ワ・ライラ(千夜一夜)をかけました。14回目の本放送は、7月7日七夕です。

フライヤーではチェロやヴァイオリンの生演奏もたまにはと書きましたし、純邦楽もかけると言いながら、これまでかけていませんでしたので、13回目は私の歌唱と演奏を拙演でお恥ずかしいですが、かけてみました。収録は一人で全て行っていますので、実際チェロなどの楽器を弾きながらというのはまだ余裕がない状態です。ミキサー操作に慣れてきたらトライしてみたいと思います。PCのソフトで録っていますが、若干デジタルノイズが入っております。また少しミスしている部分もあります。どうか、その点はご了承下さい。

去年の12月10日に木曜夜8時からの西川さんの番組「ぽれぽれちろりんごーるど」に呼んで頂いた際の録音ですが、ウードの新内流しを入れて3曲流しました。西川さんとの対話になっている部分もあります。youtube2本は歌った箇所とは違いますが、参考まで。

まず、能楽の詩の部分の謡曲からです。私が喜多流の謡曲を習ったのは、95年でもう20年以上経ちます。お能には昔からとても関心はありましたが、謡曲(謡い)に関しては、習うまでは「お爺さんのやる芸」というイメージが強かったのですが、やってみるとこれが大違いで、大和魂が呼び覚まされたとでも言えましょうか。古典文学のパッチワークのような美しい文句は、意外な程に頭にすっと入ってきて、無本(暗記)でやらせる先生でしたから、それがまた良かったと思います。小中学校で邦楽器を学ばせているそうですが、是非謡曲も取り入れたら、言葉の乱れも正せるし、精神修養にもなり、大きな声を出すので健康に良いです。

まず謡曲「経正」(つねまさ)からです。
平家の若き武将の経正は琵琶の名手でもありましたが、一の谷の合戦で討ち死にします。僧都行慶が彼の琵琶の名器「青山(せいざん)」を仏前に供えて管弦講(かげんこう)をしていると、経正の霊が現われ、弔いの有り難さを述べるシーンです。能の合唱にあたるような地謡で歌われる同音の部分です。「生をこそ隔つれども、我は人を見るものを」の辺り、とても切なく泣ける箇所です。

幻の常無き世とて経正の、常無き世とて経正の、もとの浮世に帰り来て、それとは名のれども其の主の、形は見えぬ妄執の、生をこそ隔つれども、我は人を見るものを、げにや呉竹の、筧の水はかわれども、住み飽かざりし宮の中に、幻に参りたり、夢幻に参りたり

金剛流 能「経正」 Noh performance TSUNEMASA


新内節については、民族音楽研究の大御所・小泉文夫さんが「死ぬ前に2曲聞けるなら、まずペルシアの歌、次に新内を聞きたい」と言っていましたので、ずっと気になっていました。謡曲をやったことで邦楽に目が向いていた時期でしたから、家元(富士松鶴千代さん)の音源を聞いて非常にはまりまして98年に入門しました。歌、三味線、上調子の3つとも教わりましたが、「あなたは三味線の音締め(ねじめ)も良いけど、笛(喉)が良いから歌を頑張んなさい」と宗家に言って頂いて、富士松千嘉太夫(ちよしだゆう)の名を頂きました。ZeAmiの業務の合間を縫って、よく広尾の料亭などの宴席でも新内流しをさせて頂いたものです。歌っている部分は新内一の有名曲「蘭蝶」の虫尽くし~四谷の段の部分で、一番のサワリの箇所四谷の部分は最近ほとんど歌ってないので、無理と思い、その前までです。江戸の庶民に愛された新内節は、吉原の遊女の悲恋、心中話が多く、正に江戸の粋の芸の極致です。

[Shin-nai]人間国宝・鶴賀若狭掾師 『蘭蝶』[Ranchou]


放送局 FMラヂオバリバリ
番組名 ゼアミdeワールド
パーソナリティ名 ほまーゆん
毎週木曜 17:15~17:30
再放送 毎週日曜 15:00~15:15

今治以外でも、スマホのアプリTuneinや、PCのサイマルラジオを使えば、世界中どこででも聞けます。よろしければ是非お聞き下さい。民族音楽、クラシック、純邦楽など、色々かけております。
サイマルラジオは以下になります。
http://www.jcbasimul.com/

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