ペルシア音楽

2026年6月12日 (金)

タールの話

タール奏者のオマール・シェリフについて、大体想像していた通りですが、Omar SherifでYouTube検索して出て来るのは、俳優のオマー・シャリフ関連がほとんどでした。私も47年前にユネスコ盤LPを初めて聞いた時に、オマー・シャリフにそっくりの名前だなと思ったものです。映画「アラビアのロレンス」や「ドクトル・ジバゴ」で有名な俳優で、当時は映画を見てから数年でしたからよく覚えていました。更にイランMahoor Institutのコンピレーション盤「タールの一世紀」にはオマール・シェリフの演奏が入っていたと思います、と番組で言いましたが、勘違いで入ってなかったです。ということはオマール・シェリフの演奏を聞いたのは、ユネスコ盤LPのみということになります。仕方ないので、セガー旋法のタール演奏で検索したら、今度はほとんどがアゼルバイジャンのムガームのタール演奏動画でした。ペルシア文字で絞り込めば何かあるかも知れませんが、とりあえずほとんど唯一出てきたセガー旋法のタール独奏を上げておきます。Reza Mazandaraniという人の演奏です。イラン北部カスピ海沿岸のマザンダラン出身でしょうか。「微分音程を含んだセガー旋法らしいこの演奏はとてもエキゾチックで、先ほどと同じでホセイン・テヘラーニのトンバクが入ってくるところに、ぞぞぞっと来るような興奮を覚え、特に耳を惹きつけられました」とオマール・シェリフの演奏を形容しましたが、ここでは独奏のみです。動画ではありませんが、2本目はオコラの「イラン ペルシアの音楽」にも出ていた往年の名人Jalil Shahnazの演奏です。
以下よく知られたことだとは思いますが、タールという弦楽器について一言書いておきます。綴りはTarとなっていて、これはギターGuitarの綴りにも入っています。英語的に容易に想像がつくGuiterと綴らない理由は、ここにあります。ギターのルーツ楽器はイスラム王朝時代の中世スペインに生まれていますが、そのルーツはアラブの弦楽器で、更にそのルーツを辿ればペルシアのTar(「弦」の意味)に行きつきます。反対にシルクロードを東に伝わって、イランのSetar(「3本の弦」の意味ですが現在は4本)がインドのシタールのルーツになり、中国では三弦になり、それが日本に渡って沖縄の三線と日本の三味線になっています。日本の琵琶や西洋のリュートのルーツも、アラブのウードと更にその祖に当たるペルシアのバルバットにあるというのも有名な話です。序にヴァイオリンなど擦弦楽器も、中央アジア~中東がルーツのようです。

Reza Mazandarani . Tar . Segah

Classical music from Iran - Great masters of the tar - Jalil Shahnaz

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2026年6月11日 (木)

アスガール・バハーリーのケマンチェ

アスガール・バハーリーについては、ユネスコ盤と同じ音源はなさそうです。ペルシア語で検索すると色々出てきますが、ちょうどエスファハーン旋法でアーヴァーズの伴奏をしているおそらく晩年の映像と、若い頃のシャジャリアンが出て来るモノクロ映像の2本を上げておきます。出来ればホセイン・テヘラーニとのデュオを聞きたかったですが。(以下放送原稿を再度)

この後は小泉さんのNHKFMの「世界の民族音楽」を夢中に聞いていた頃の1979年に今治のレコード屋さんで見つけたユネスコ・コレクションの一枚「イランの音楽 Iranian Dastgah」から、特に決定的な影響を受けた2曲をそれぞれ途中までおかけしたいと思います。当時日本フォノグラムから出ていたユネスコ・コレクションの原盤はオランダPhilips盤で、90年代にフランスのAuvidisから出ていたユネスコ・コレクションのシリーズとは別で、何故かほとんどCD化されてきていません。最近米Smithsonian FolkwaysからCD化されてなかったアナログ時代の音源が一足飛びにサブスクとカスタムCDRで復活し聞けるようになっていますが、このイランの盤は入っていないので、幻の音源と言えそうです。

特に強く感激したのが、アスガール・バハーリーのバヤーテ・エスファハーンとオマール・シェリフのセガーでした。まずアスガール・バハーリーの方ですが、ケマンチェの巨匠アスガール・バハーリーのエスファハーンらしい哀感を漂わせた枯れた味わいの演奏に、トンバクの神様と称賛されたホセイン・テヘラーニが神業のように当意即妙に伴奏している演奏は、最初聞いた時から鳥肌が立ち、何度繰り返し聞いたか勘定が出来ません。この二人は、ゼアミdeワールドのテーマ曲にしているオコラのマーフールにも名を連ねています。

کمانچه استاد اصغر بهاری - آواز اصفهان بخش اول

محمد رضا شجریان ، علی اصغر بهاری و.... جشن هنر شیراز

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2026年6月10日 (水)

ヴァイオリン独奏のデイラーマン

アボルハサン・サバーは1902年生まれ1957年没のヴァイオリニスト、セタール奏者で、イラン国内外の様々な楽器を演奏できたそうですが、ヴァイオリンとセタールを専門楽器として選びました。彼はミルザー・アブドッラーとダルヴィッシュ・ハーンの弟子で、教え子にはファラマルズ・パイヴァール、パルヴィーズ・ヤハギ、ダリウシュ・サフヴァト、ゴラム=ホセイン・バナン、そしてホセイン・テヘラーニも名を連ねています。これらの名前を見るだけで、ペルシア古典音楽の中枢にいた大巨匠だったのがよく分かります。ヴァイオリンはケマンチェのように膝に立てるのではなく、西洋風な肩に乗せ顎で挟むスタイルですが、調弦は西洋のソレラミではなく、高い2本をそれぞれ1音ずつ下げたソレソレが多いようです。ヴィオラの場合は、同様にドソレラがドソドソになります。(以下放送原稿を再度)

デイラーマンをヴァイオリンの独奏で表現した音源がありまして、これもイランMahoor Institutから出ています。演奏者は往年のセタールとヴァイオリンの名手アボルハサン・サバーです。この演奏の余りにレガートでスムーズは演奏は、ヴァイオリンではなく笛ではないかと言う意見もありましたが、これはヴァイオリンと言うタイトルの盤ですので、あくまでヴァイオリンでの演奏です。私もどうやってこんな声帯模写のような演奏が可能なのか、映像で確認したい衝動にかられた驚異的な演奏です。

<Abolhasan Saba, Violin, Vol. 1 ~Deylaman (Avaz Dashti) 8分56秒>

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2026年6月 8日 (月)

デイラーマンの歌

ゼアミdeワールド517回目の放送、日曜夜10時にありました。10日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。まずはバナーンのデイラーマンから。

今回は予告通り「今週のペルシア音楽」をおかけしますが、予定していた音源で大体収まる感じですので、今回は全てペルシア音楽にして、一旦今回で締めたいと思います。次回からのスイスシリーズではスイスに集中します。

東京藝大教授で世界的な民族音楽学者だった小泉文夫氏の影響で70年代から民族音楽の道に踏み込んだ私としては、小泉さんが「世界で一番美しい歌」と称賛していたペルシア音楽が、以下のユネスコ盤を聞いた1979年頃からずっと気になってきました。「死ぬ前に聞きたい歌の1番がペルシアの歌で、2番が日本の新内節」と言われていたそうで、そのどちらにも足を踏み入れても来ました。どの著書か分からなくなってしまいましたが、「デイラーマンの歌」について書かれていたのをよく覚えていまして、この曲は小泉さんがイメージされていた美しい歌に入るのではと常々思ってきました。デイラーマンは北イランの民謡がルーツとどこかで読んだのですが、これも出典を調べるのに時間がかかりそうです。この曲はダシュティ旋法の伝統的旋律形グーシェの一つに組み込まれていて、マームード・キャリーミーのラディーフ集成の楽譜も手元にあります。グーシェの一つなので、旋律が固定したタスニーフではなく、即興的にパラフレーズされて演奏されることが常のようです。ダシュティらしい穏やかでノスタルジックな雰囲気の大変美しい曲です。小節を細かく回すタハリール唱法もふんだんに盛り込まれています。

小泉さんはこの人の歌唱をイメージしていたのではと常々思ってきたのが往年の名歌手バナーンですが、最近イランMahoor Institutから出たデイラーマンと言う編集盤から、デイラーマンをまずおかけします。ピアノ伴奏はジャヴァッド・マアルフィーです。

<Gholam-Hoseyn Banan & Javad Ma'rufi / Deylaman ~Deylaman (Dashti) 3分31秒>

このデイラーマンをヴァイオリンの独奏で表現した音源がありまして、これもイランMahoor Institutから出ています。演奏者は往年のセタールとヴァイオリンの名手アボルハサン・サバーです。この演奏の余りにレガートでスムーズは演奏は、ヴァイオリンではなく笛ではないかと言う意見もありましたが、これはヴァイオリンと言うタイトルの盤ですので、あくまでヴァイオリンでの演奏です。私もどうやってこんな声帯模写のような演奏が可能なのか、映像で確認したい衝動にかられた驚異的な演奏です。

<Abolhasan Saba, Violin, Vol. 1 ~Deylaman (Avaz Dashti) 8分56秒>

この後は小泉さんのNHKFMの「世界の民族音楽」を夢中に聞いていた頃の1979年に今治のトチギレコードさんで見つけたユネスコ・コレクションの一枚「イランの音楽 Iranian Dastgah」から、特に決定的な影響を受けた2曲をそれぞれ途中までおかけしたいと思います。当時日本フォノグラムから出ていたユネスコ・コレクションの原盤はオランダPhilips盤で、90年代にフランスのAuvidisから出ていたユネスコ・コレクションのシリーズとは別で、何故かほとんどCD化されてきていません。最近米Smithsonian FolkwaysからCD化されてなかったアナログ時代の音源が一足飛びにサブスクとカスタムCDRで復活し聞けるようになっていますが、このイランの盤は入っていないので、幻の音源と言えそうです。

特に強く感激したのが、アスガール・バハーリーのバヤーテ・エスファハーンとオマール・シェリフのセガーでした。まずアスガール・バハーリーの方ですが、ケマンチェの巨匠アスガール・バハーリーのエスファハーンらしい哀感を漂わせた枯れた味わいの演奏に、トンバクの神様と称賛されたホセイン・テヘラーニが神業のように当意即妙に伴奏している演奏は、最初聞いた時から鳥肌が立ち、何度繰り返し聞いたか勘定が出来ません。この二人は、ゼアミdeワールドのテーマ曲にしているオコラのマーフールにも名を連ねています。

<アスガール・バハーリー エスファハーン 12分48秒~6分>

タール奏者のオマール・シェリフについては、詳細が分からないままですが、イランMahoor Institutのコンピレーション盤「タールの一世紀」にはこの人の演奏が入っていたと思います。微分音程を含んだセガー旋法らしいこの演奏はとてもエキゾチックで、先ほどと同じでホセイン・テヘラーニのトンバクが入ってくるところに、ぞぞぞっと来るような興奮を覚え、特に耳を惹きつけられました。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<オマール・シェリフ セガー 15分55秒~6分30秒>

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2026年5月22日 (金)

Hassan Kassa'iのネイ

ハッサン・キャサイのネイを初めて聞いたのも1980年で、小泉文夫氏の弟子筋の柘植元一さんがイランから帰国されて間もない時期に出演されていたNHKFM「世界の民族音楽」の冒頭にかかっていたのが、仏PLAYA SOUNDから出ていたハッサン・キャサイのシュール旋法の演奏でした。ハッサン・キャサイのネイとジャハンギール・ベヘシュティのトンバク共に最高の演奏で、カセットテープがわかめになりそうなほど聞いたものです。これを番組ではかけましたが同じ音源が見当たらないので、同じシュール旋法の演奏で上げておきます。何であんな低音まで出るのか、ネイの実物を見てみたいものだと思い続け、トンバクの師匠のラリさんから一本買ったことがありますが、20年前のUターンの際に荷物の中に埋もれて残念ながら割れが入ってしまいました。ちゃんと音が出る前の崩壊で哀しかったです。柘植先生には2002年と2004年のアリオン音楽財団の<東京の夏音楽祭>でのホセイン・アリザーデ来日公演の際にも色々とお世話になりました。柘植先生の経歴を見ると、ウェズリアン大学助教授、国立音楽大学助教授、教授、東京藝術大学教授、2001年名誉教授とありました。1980年当時は国立音大に関わられていた頃かなと思います。以下は音楽之友社から2002年に出た「世界の民族音楽ディスクガイド」掲載の、ハッサン・キャサイ仏PLAYA SOUND盤のレビュー拙稿です。番組でかけたもう一人のサントゥールのマジッド・キアーニはまたの機会にします。46年前の上記カセットの4回の放送は、デジタル音源にしてあります。

ネイは葦で出来ていて、吹き口は切ったままの状態に真鍮の筒をはめた、極めてシンプルな縦笛。構えは大概髭で見えにくいが、歯の隙間と舌を有効に利用している模様。トルコのネイと似ているが吹き口が違う。丸い筒のままなので、音を出すだけでも至難の技。そしてこのシンプルさが手伝って、イランではとてつもない名人芸が生まれた。この盤はイスファハーンの往年の巨匠ハッサン・キャサイの唯一のまとまった録音。苦悩のパッションを描き出すシュールと、雨後の虹のように美しく晴れやかなマーフールの対照的な組み合わせがまた良い。拍節のある部分では一部トンバク(ザルブ)伴奏が入る。モハンマド・ムーサヴィーのように現代の名手にはハッサン・キャサイの影響を受けた奏者が非常に多い。余りに凄演!

Shur

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2026年5月15日 (金)

モルゲ・サハル(Morghe Sahar)ナイチンゲール

今日でゼアミは開店から30周年ですが、更に今年で私のラジオ番組は10周年、Cafeトークトーク(旧称Talk&Talk)を叔母が始めて40周年、私がこの店を引き継いで10年目です。色々メモリアルな年です。今日5/15に名歌モルゲ・サハルが回って来て、嬉しい気持ちです。叔母が開店祝いで頂いたベンジャミンは、樹齢40年の巨木に育っています。屋根を突き破りそうな勢いです(笑) 以下に書きましたが、今日の映像はイランのバムで起きた大地震の犠牲者を追悼するコンサートでのアンコール演奏の映像です。(以下放送原稿を再度)

「今週のペルシア音楽」も春らしい一曲を選びました。モルゲ・サハル(Morghe Sahar)と言う晴れやかで感動的なタスニーフ(歌曲)です。3拍子系なので先ほどのモーツァルトの8分の6拍子と少し似ているとも言えるかと思います。
Morghe Saharと言えば、ペルシア音楽の名歌手シャジャリアンの歌唱が有名で、2003年末にイランのバムで起きた大地震の犠牲者を追悼するコンサートでアンコール演奏されたのがこの名高いタスニーフです。そのライブはDVDが出ていました。ダストガー・マーフールの晴れやかで威厳に満ちたメロディがとても素晴らしい曲で、アリザーデ一行の2004年の来日の際、ロバ・ハウスでデモ演奏されていました。Morghe Saharは、特にイラン人の琴線に触れるタスニーフの一つのようで、犠牲者への思いとオーヴァーラップするのか、涙を流す聴衆が何人も見えました。
Morghe Saharは、夜明けの鳥、朝の鳥、ナイチンゲールなどと訳され、イランの不正義、独裁、暴政に抗議して歌われる、イランの自由のための闘争の「賛歌」とみなされることが多いそうです。20世紀初頭にモハマド・タキ・バハルによって歌詞が書かれ、モルタザー・ネイダーヴードによって作曲されています。1924年に最初に歌ったのは、カマル・オル・モルク・ヴァジーリとのことです。

Morgh-e Sahar

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2026年5月11日 (月)

Komm lieber Mai

ゼアミdeワールド513回目の放送、日曜夜10時にありました。13日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。「嬉しや五月 あるいは、春へのあこがれ Komm lieber Mai」を聞くと、中学校の時の音楽の先生「こんじい(近藤先生)」をどうしても思い出してしまいます(笑) やっぱりこの歌はウィーン少年合唱団の清澄な声でないとと思います。

オーストリアの音楽の17回目です。今回は5月と言えば思い出すモーツァルトの「嬉しや五月 あるいは、春へのあこがれ Komm lieber Mai」から始めたいと思います。10年前にこの番組を始めた際にもかけましたので、その時の紹介文を入れておきます。

5月なのに雨予報が多いようですので、五月晴れをもっと見れますようにということで、この曲をかけたいと思います。音楽の照る照る坊主とでも言えましょうか。この曲、皆さん中高生の頃に音楽の時間に歌われた記憶もあるのではと思います。邦訳では「うれしや五月、草木は萌え、小川の岸にスミレにおう」となっていました。5月と言えば思い出す曲の筆頭で、中高生の頃を懐かしく思い出す一曲です。ウィーン少年合唱団の独唱者の歌唱です。

<Komm lieber Mai 2分3秒>
ウィーン少年合唱団 モーツァルト 春へのあこがれ  Vienna Boy's Chair Mozart Sehsucht Nach Dem Fruhling K596

10年前には「この曲はモーツァルトが晩年に書いた子供用の歌曲で、彼の最後のピアノ協奏曲27番の3楽章に引用されています。」と入れたのですが、その後調べてみると「このロンド主題は、同年に作曲された歌曲『春への憧れ』(K. 596)に転用された。」とありましたので、勘違いしておりまして、先にピアノ協奏曲があって、後でこの歌曲が作られていました。どちらもモーツァルト最晩年の名曲中の名曲だと思います。子供らしい無邪気さと天上的な美しさの両方を湛えた曲です。クララ・ハスキルのピアノ、オットー・クレンぺラー指揮フィルハーモニア管弦楽団の名演でおかけします。

<Piano Concerto No. 27 in B-Flat Major, K. 595: III. Rondo: Allegro 7分47秒>

「今週のペルシア音楽」も春らしい一曲を選びました。モルゲ・サハル(Morghe Sahar)と言う晴れやかで感動的なタスニーフ(歌曲)です。3拍子系なので先ほどのモーツァルトの8分の6拍子と少し似ているとも言えるかと思います。
Morghe Saharと言えば、ペルシア音楽の名歌手シャジャリアンの歌唱が有名で、2003年末にイランのバムで起きた大地震の犠牲者を追悼するコンサートのライヴでアンコール演奏されたのがこの名高いタスニーフです。そのライブはDVDが出ていました。ダストガー・マーフールの晴れやかで威厳に満ちたメロディがとても素晴らしい曲で、アリザーデ一行の2004年の来日の際、ロバ・ハウスでデモ演奏されていました。Morghe Saharは、特にイラン人の琴線に触れるタスニーフの一つのようで、犠牲者への思いとオーヴァーラップするのか、涙を流す聴衆が何人も見えました。
Morghe Saharは、夜明けの鳥、朝の鳥、ナイチンゲールなどと訳され、イランの不正義、独裁、暴政に抗議して歌われる、イランの自由のための闘争の「賛歌」とみなされることが多いそうです。20世紀初頭にモハマド・タキ・バハルによって歌詞が書かれ、モルタザー・ネイダーヴードによって作曲されています。1924年に最初に歌ったのは、カマル・オル・モルク・ヴァジーリとのことです。

<Morghe Sahar 4分23秒>

考えてみますと、オーストリアに入ってハイドンの曲は弦楽四重奏曲「皇帝」の2楽章をかけただけですので、やはり個人的なお気に入り曲になりますが、チェロ協奏曲1番の終楽章の3楽章をジャクリーヌ・デュプレでおかけしておきます。本当は80年代に最初にLPで聞いたロストロポーヴィチにしようと思いましたが、サブスク音源では余り音質が良くないので、デュプレにしておきます。こちらも大変な名演です。この曲の爽快感は何物にも代えがたいものがあります。チェロのレッスンを受けようかと考えたこともありますが、受けたとしても1楽章で、痛快な曲ながら技術的に非常に高度と思われる終楽章までは難しかったと思います。時間が余りますので、1楽章を途中までおかけします。この曲を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Haydn: Cello Concerto #1 In C, H 7B/1 - 3. Allegro Molto 6分49秒>
<Haydn: Cello Concerto #1 In C, H 7B/1 - 1. Moderato 9分30秒>

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2026年5月 8日 (金)

ゼアミdeワールドのテーマ曲「イラン ペルシアの音楽」のマーフール

番組では全曲かけるのが以下の理由で難しい音源ですが、YouTubeにマーフールの方が全曲上がっていました。この盤は70年代のLPの時からありまして、オコラからCD化が始まったのが1985年くらいでしょうか、その第1号がこの「イラン ペルシアの音楽」でした。民族音楽の名門レーベルであるオコラの意気込みが感じられるエピソードです。当時一番有名だったのはサントゥールのファラマルズ・パイヴァールでしたから、彼のリーダー作のように語られ勝ちだったのが残念ではありました。B面のセガー旋法の演奏も素晴らしく、コロナの頃宅録していた時に第2のテーマ曲として冒頭をかけたことがあります。マーフールの方の曲名はNegah Garm Toで、CALTEXから数年後の別録音がありましたが、明らかにオコラの方が豪華メンバーでした。メンバーは以下の通りです。

アブドルワハブ・シャヒーディー(ウード、歌)
ジャリール・シャーナズ(タール)
アスガール・バハーリー(ケマンチェ)
ファラマルズ・パイヴァール(サントゥール)
ハッサン・ナヒッド(ネイ)
ホセイン・テヘラーニ(トンバク)
(以下放送原稿を再度)

恒例になった「今週のペルシア音楽」ですが、10年前の1回目からずっとゼアミdeワールドのテーマ曲にしている仏オコラの「イラン ペルシアの音楽」のマーフールの導入部分の前奏曲にあたるピシュダルアーマドから、器楽の名人芸を聞かせるチャハールメズラブ辺りまでをおかけします。その後のシャヒーディーの独唱と一つずつの楽器の伴奏の部分までは入らないと思います。その箇所は10年前にかけようとして片チャンネル無音と機材が判断して放送事故になりました。この音源が録音された1970年頃は、片方のパートに音がない時は、その片チャンネルだけ無音になっていたためでした。実はその独唱部分が一番の肝なのですが、なかなか放送で全曲をかけるのは難しい音源です。

<Abdolvahab Shahidi / Iran musique persane ~Dastagh Mahur 23分53秒>

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2026年5月 4日 (月)

夕べの魔力 Abendzauber(アーベントツァウバー)

ゼアミdeワールド512回目の放送、日曜夜10時にありました。6日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。アーベントツァウバー、同じ音源がありました。ツァウバーは「魔笛」のドイツ名ツァウバーフルーテのツァウバーです。

オーストリアの音楽の16回目です。今回はブルックナーの作品で、ヨーデルの影響がある曲を取り上げます。参考にしたのは前回と同じで「大井駿の「楽語にまつわるエトセトラ」その94  ヨーデル:ベートーヴェンやシューベルトも魅了したアルプスのチロル地方の歌唱」https://ontomo-mag.com/article/column/shun-gakugo94/ というサイトです。

後期ロマン派の作曲家で、マーラーと並び称される長大な9曲の交響曲で有名なブルックナーですが、ヨーデルのパートが入ったこの曲の存在については全く知りませんでした。「夕べの魔力 Abendzauber(アーベントツァウバー)」と言うタイトルが付いているこの曲は1878年に作曲されていて、テノールまたはバリトンの独唱と男声4部の合唱、3人の女声ヨーデルと4本のホルンと言う、大変ユニークな編成です。ホルン、独唱、男声合唱、3声のヨーデルのための曲という表記もありました。楽譜の上から3段目に"Ferngesang(遠くからの声)"とありまして、その下に"Jodler(ヨーデル)"と記してあります。演奏はCamerata Musica Limburg, Jan Schumacher, Samuel Seidenberg, クリストフ・プレガルディエン, Thomas Sonnen, Zia Richter-Sonnen & Michael Armbrusterです。

<Abendzauber, WAB 57 11分18秒>

ブルックナーの交響曲は1曲が1時間は越えますので、一番有名な4番と7番のそれぞれの1楽章の冒頭から4分弱をカラヤン指揮ベルリン・フィルでおかけしておきます。私がこの2曲の冒頭にイメージしていたのは、ずばり「森林浴」ですが、AIに聞いてみると、ほとんど同じイメージで返事が返って来て驚きました。先ほどの曲と同じで、何とホルンと言う楽器がぴったり来るのだろうかと改めて思います。そのAI回答から抜粋します。

ブルックナーの交響曲第4番『ロマンティック』は、その神秘的で雄大な旋律から「深い森」「森林浴」のような癒やしや情景を感じさせる名曲として知られています。
第1楽章の冒頭(ブルックナー開始): 深い森の中に迷い込んだような、弦楽器の微かなトレモロから始まり、やがてホルンが響き渡る冒頭部分は、まさに朝霧の立つ森の景色を想起させます。
「ロマンティック」な情景: ブルックナー自身がこの曲を「ロマンティック」と呼び、中世の物語や深いドイツの森の情景を描写したと言われています。
自然との調和: 音楽全体が人為を感じさせない、超自然的な世界(自然の広大さ)を表現しており、聴く人に森林浴のようなリラックス効果や、雄大な自然の中にいるような気分をもたらします。深い森の静寂と、その中で響くホルンの美しさを楽しみたい時に最適な作品です。

一つだけ付け加えておきますと、カラヤンのこの演奏は冒頭少し経ってからのファーストヴァイオリンの音程をすり上げるポルタメントが絶妙だと思います。他の4番の演奏では聞いたことがない技です。

<Symphony No. 4 in E-Flat Major "Romantic": I. Bewegt, nicht zu schnell 18分14秒~4分位>

7番の方もAI回答から抜粋します。
ブルックナーの交響曲第7番は、その美しく流麗な旋律と豊かな響きから、「森林浴」のような癒やしや、壮大な自然の中に身を置くような体験をもたらす名曲として知られています。この交響曲は、ワーグナー・チューバを用いた温かみのある中低音や、ワーグナーの追悼曲になった第2楽章の美しい弦の響きが特徴であり、心穏やかな時間や、深い森の中で木漏れ日を浴びるような感覚を求める聴衆に親しまれています。

<Symphony No. 7 in E Major: I. Allegro moderato 20分6秒~4分位>

恒例になった「今週のペルシア音楽」ですが、1回目からずっとゼアミdeワールドのテーマ曲にしている仏オコラの「イラン ペルシアの音楽」のマーフールの導入部分の前奏曲にあたるピシュダルアーマドから、器楽の名人芸を聞かせるチャハールメズラブ辺りまでをおかけします。この曲を時間まで聞きながら今回はお別れです。その後のシャヒーディーの独唱と一つずつの楽器の伴奏の部分までは入らないと思います。その箇所は10年前にかけようとして片チャンネル無音と機材が判断して放送事故になり他の曲が流れました。この音源が録音された1970年頃は、片方のパートに音がない時は、その片チャンネルだけ無音になっていたためでした。実はその独唱部分が一番の肝なのですが、なかなか放送で全曲をかけるのは難しい音源です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Abdolvahab Shahidi / Iran musique persane ~Dastagh Mahur 23分53秒>

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2026年5月 1日 (金)

マーフールのタスニーフ

「ペルシア絶唱」のマーフールの演奏で最後に出てきたタスニーフの映像がありますが、これは20年近く前にこのブログを始めた頃にも上げました。サントゥールのメシュカティアン、タールのダリウーシュ・タライーだけ映像から分かりました。演奏者は以下の通りです。パリサーの若い頃の瑞々しい歌が素晴らしいことこの上なしです。2本目がビクターJVCのワールド・サウンズ・シリーズの一枚「ペルシア絶唱/イスラム神秘主義の歌声」の音源です。

歌唱:パリサー
ダリウシュ・サフヴァット博士の指導の下、イラン音楽保存振興グループのメンバーの伴奏:
タール:ダリウシュ・タライ
サントゥール:パルヴィズ・メシュカティアン
トンバク:ナセル・ファルハングファル
カマンチェ:ダヴード・ガンジャエイ
カマンチェ:アルデシール・カムカル
カーヌーン:シミン・アガレジ
イラン、シーラーズでの演奏
(以下放送原稿を再度)

پریسا و گروه نوازندگان مرکز حفظ و اشاعه موسیقی ایرانی - ماهور

先週も言いましたが、世界的な民族音楽学者だった藝大教授の小泉文夫さんが「世界で一番美しい歌」と称賛したのには、彼が晩年近くになって聞いたパリサーの歌がかなり念頭にあったのではと思います。
1978年東京国立劇場でのライヴを収めたこの音源は、ビクターJVCのワールド・サウンズ・シリーズの一枚で、「ペルシア絶唱/イスラム神秘主義の歌声」です。演奏者は、アーヴァーズ(歌)が、ファーテメ・パリサー、S.N.ラザヴィー、セタール、タールのジャラール・ゾルフォヌーン、ネイのモハンマド・ムーサヴィー、トンバクのモルタザー・ハージェアリー・アーヤンです。
マーフール旋法は、先週かけたホマーユンとは対照的に明るく威厳があり、ここでもパリサーはタハリールの装飾技巧を華やかに聞かせています。

<Fatemer Vaezi Parisa  Mahur: Poems Of Sheykh Bahai And Hafez 10分47秒>

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