ユダヤ音楽

2018年12月24日 (月)

クリスマスとハヌカーの音楽

ゼアミdeワールド140回目の放送、日曜夕方に終りました。26日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今日は取り合えず、ウィーン少年合唱団とジャン・ピアースのマ・オズ・ツールのみ上げました。

ウズベキスタンの音楽巡りの途中ですが、放送されるのが23日と26日ということで、今回はクリスマス特集、その次の30日は2日の再放送枠が無しですので、第九に類似の締めくくりの音楽、新年の最初は6日と9日ですから、正月関連の純邦楽を予定しております。このパターンが、この番組を始めてから年末年始の恒例になっております。

2年前にもかけましたが、ドイツ・グラモフォンから出ていた「聖地のクリスマス音楽」から、「ベツレヘム生誕教会の鐘」をおかけします。キリスト生誕の地とされるベツレヘムのギリシア正教会での録音で、東方的な渋みや深みを感じさせる音です。

<22 聖地のクリスマス音楽 ~ ベツレヘム生誕教会の鐘 1分15秒>

2~4曲目はローマ・カトリック教会の聖歌で、女声によって歌われるグレゴリオ聖歌の一種でラテン語で歌われています。この盤の中では唯一の西方教会の音楽で、異色の音源になっていると思います。その中から夜中のミサ:アレルヤ唱をどうぞ。

<3 聖地のクリスマス音楽 ~ ローマ・カトリック教会の聖歌 夜中のミサ:アレルヤ唱 2分>

この盤からもう一曲、古シリア教会の聖歌で、最も早くからキリスト教化された地方ですから、ユダヤ教の流れも汲む古い典礼のスタイルが残っているようです。言葉はイエス・キリスト自身が話したと伝えられる古いシリア語の一種のアラム語が現在も主に使われています。

<18 聖地のクリスマス音楽 ~古シリア教会の聖歌 アレルヤ、アレルヤ 2分20秒>

このアルバムに収録されているのは、イスラエルのエルサレムやベツレヘムでの東方諸教会の音源で、この地で2000年前にキリスト教が生まれた頃に近い響きを持っていると思われる音楽が中心です。2年前には、この盤からキリスト教の東方的ルーツを訪ねた、ギリシア正教会、エチオピア教会、エジプトのコプト教会、シリア教会、アルメニア教会、レバノンのマロン派の音源を中心にご紹介しました。今回は一般にもよく知られているクリスマス・キャロルもおかけして、その後でユダヤで同じ時期に祝われるハヌカー関連の音源もご紹介します。

よく知られるクリスマス・ソング2曲をウィーン少年合唱団の歌唱でどうぞ。最初がドイツ民謡「もみの木」で、2曲目は1818年にフランツ・グルーバーが作曲した「きよしこの夜」です。

<22 ウィーン少年合唱団ベスト もみの木 1分38秒>
O Tannenbaum by the Vienna Choir Boys


<23 ウィーン少年合唱団ベスト きよしこの夜 2分40秒>
Stille Nacht (Silent Night )


次にユダヤのハヌカーですが、ユダヤの世界にはキリストの生誕を祝うクリスマスというのは無いのですが、まるで対抗するかのようにほぼ同時期にハヌカーという祭りがあります。ハヌカーはユダヤ教の年中行事の一つで、紀元前168年~紀元前141年のマカバイ戦争時のエルサレム神殿の奪回を記念する「宮清めの祭り」です。

9本の燭台ハヌキヤーに一日一つずつ点灯した後、マーオーズ・ツール ma‘oz tzur (『砦の岩よ』)という、13世紀ドイツに起源を持つ賛歌などが歌われます。そのマーオーズ・ツールを、往年の名テノール歌手ジャン・ピアースの歌唱と合唱団でおかけします。彼はユダヤ教の会堂、シナゴーグの合唱長カントールでもありました。

<15 Jan Peerce / The Art of the Cantor ~Mo Os Tzur 6分22秒>
Jan Peerce - Mo'os Tzur and Blessings for Chanukah


15世紀のレコンキスタでスペインから追放され、北アフリカやバルカン半島など多くは旧オスマン帝国内に離散したスペイン系ユダヤ人は、セファルディーと呼ばれますが、彼らの民謡を演奏するグループVoice of the Turtleは「ハヌカー・コンサート」という盤が最初に出ました。その中からハヌカーという曲をどうぞ。

<10 Voice of the Turtle / Circle of Fire ~Hanuka 3分10秒>

ハヌカーの歌には、東欧系ユダヤのイディッシュ語ではドレイドル、ヘブライ語でスヴィヴォンという木製の独楽(コマ)についての歌がよく知られていますが、有名な旋律の入った盤がすぐに見当たりませんでした。このコマには四面に反時計回りに、ヘブライ文字のヌン、ギメル、ヘー、シンの文字が描かれていて、イディッシュ語の「nisht(ドイツ語: nichts 何もない)、gants(ganz 全部)、halb(halb 半分)、shtel(einstellen 置く)」の頭文字ですが、しばしばヘブライ語で「ネス・ガドール・ハヤ・シャム、そこで偉大な奇跡が起こった」の頭文字と解釈されています。

このドレイドルについては、東欧系ユダヤの祝祭音楽の一種であるクレズマーでよく演奏されています。クレズマー・リヴァイヴァルの中心的グループであるクレズマー・コンサーヴァトリー・バンドの87年に出たOy Chanukah!から、ドレイドル・ソングをおかけして、その後は時間までこの盤の冒頭から続けたいと思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<19 Klezmer Coservatory Band / Oy Chanukah!  ~Dreydl Song 3分25秒>
<1 Klezmer Coservatory Band / Oy Chanukah!  ~A Freylekhe Nakht in Gan Eydn 1分48秒>

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2017年4月21日 (金)

ムジカーシュの 「トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽」

ウクライナの吟遊詩人が弾いたバンドゥーラとコブザの類似点や、そもそもルーマニアの楽器と思っていたコブザがウクライナ起源のものだったのか、についても興味深い探りどころですが、今週の放送は西ウクライナでしたから、アルカンとタラフ・ドゥ・ハイドゥークスのどの曲が似ていたかについてさかないと、来週はチャールダッシュですので、もう回数がない訳ですが、只今家人の転勤に伴う引越手伝いもあってドタバタの中のため、先回りしてムジカーシュの演奏で、ジューイッシュ・ナンバーを上げておきます。ジューイッシュ・チャールダッシュの4年前の演奏です。(こちらで調べる必要のない)長尺の名演を週末たっぷりお楽しみ下さい。m(_ _)m 90年前後の来日公演は見に行きましたが、最近のムジカーシュを拝める嬉しい影像です。
1本目ですが、ムジカーシュの名盤「トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽」に入っていたハシッド・ダンスを満面の笑みを浮かべて弾くお爺ちゃんが、数々のユダヤの曲を覚えていたジプシー音楽家です。これらを弾いていたユダヤ楽士のほとんどが、ホロコーストで亡くなったそうです。

Muzsikas: Chasid Dances with Cioata

Jewish Csárdás. Muzsikás (Hungary) in Moscow, 17.03.2013

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2016年12月 5日 (月)

セム一神教3兄弟の音楽

ゼアミdeワールド35回目の放送、日曜夕方に終りました。(私は今回忘年会で聞けませんでしたが)7日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。

アラブ音楽巡りの途中で、最近の3回はイスラエルとユダヤ教の音楽について少し聞いてきましたが、今日はユダヤ教に始まりキリスト教、イスラム教と続く、3つのセム一神教の音楽を比較しながら、クリスマスが近いので、聖地のクリスマス音楽も交えながら進めたいと思っております。セムというのは、聞き慣れない方もいらっしゃるかと思いますが、中東や北アフリカ一帯に住んでいるセム・ハム語族のセムを指していて、3つの宗教がいずれもヨーロッパではなく、セム系民族の世界から生まれたことを表しています。ユダヤ教の中からキリスト教が生まれ、その二つの先輩宗教の影響も受けた上でイスラム教が生まれました。
言葉で言えば、セム系にはアラビア語、ヘブライ語、アラム語(シリア語)などが入りまして、その類似性も多く、例えばアラビア語とヘブライ語は文字を置き換えただけのような単語も多く見られます。ヨーロッパやインド、イランのいわゆるインド・ヨーロッパ語族とは全く異なる文法体系を持っています。元々この3つの宗教は同じ「アブラハムの宗教」として生まれた兄弟、親子のような関係ですから、欧米がからんでこじれると言うのが大体のパターンなのですが、世界中を巻き込むような「兄弟喧嘩」も、何とか収まってくれないものかと常々思っています。

3つのセム一神教の宗教音楽を概観したCDも、少ないですが出ておりまして、インド出身の世界的な民族音楽学者デベン・バッタチャリアが1950年代中心に録音した「西アジアの宗教」という盤がアーゴ民族音楽シリーズの一枚としてポリグラムから出ていました。今では変ってしまった音楽もあると思います。50年余り前の貴重な記録です。今日はこの盤を中心に取り上げます。

Jerusalem - Three Religions, Three Families | Faith Matters

今回はそれぞれのyoutubeを探すのは非常に困難、もしくは無いと思いますので、この一本を貼っておきます。ベツレヘム生誕教会の鐘は、ありました。

まずイスラエルのナザレの鐘の音からどうぞ。
<西アジアの宗教~ナザレの鐘>

イスラエルのナザレでの日曜の礼拝前の朝に鳴るコプト教会の鐘でした。コプト教会とは、エジプトにイスラム教が入る前からある古いキリスト教の一派で、正教会の一つです。現在もエジプトの人口の1割ほどがコプト教徒との調査結果もあります。

次にコプト教会の朝の祈りという曲をどうぞ。
<西アジアの宗教~コプト教会の朝の祈り>

やはりイスラエルのナザレでの1957年の録音でした。エジプト出身の僧侶の指揮で、信徒の2人の少年によって応答され、僧侶の手にした香炉が鳴る音が聞こえます。

続いてギリシア正教会の音楽です。エルサレム聖墳墓教会の十字架聖堂における夕べの祈りからの抜粋で、1960年のヨルダン側のエルサレムでの録音です。
<西アジアの宗教~ギリシア正教会>

次にユダヤ教の音楽で、ベレシートです。ヘブライ語で書かれた創世記の冒頭部分が、エルサレム・ヘブライ大学・ヘブライ文学科のイエメン人学生シャリル・ジオンによってイエメン式で朗唱されます。こちらも1957年イスラエルのエルサレムでの録音です。
<西アジアの宗教~ベレシート>

次は東欧系ユダヤ人のイディッシュ語による宗教歌で「救世主が来られるとき」という曲で、アブラハム・アイゼンバッハという人とコーラスの歌唱です。おそらくハシディック・ソングの一種ではと思います。こちらも1957年エルサレムでの録音です。
<西アジアの宗教~救世主が来られるとき>

ハシディズムの歌として、歌謡化した曲を前回かけましたが、アレンジされないそのままのハシディック・ソングの実況録音をご紹介します。アラブ音楽やユダヤ音楽の研究をされている兵庫教育大学の水野信男先生の著書「ユダヤ音楽の旅」(ミルトス)の付録CDの一曲です。クファル・ハバドの敬虔派ユダヤ教徒の歌で、くじの祭り(プーリム)の夜に歌われたハシディック・ニグンのライブ録音です。余談ですが、この著書のディスコグラフィの作成依頼を受けて私がリストの作成をしました。
<ユダヤ音楽の旅 付録CD ~ 敬虔派ユダヤ教徒の歌>

バッタチャリアの「西アジアの宗教」に戻りまして、次はイスラム教の音楽です。まずはトルコでの1955年の録音で、一日5回の礼拝の時間を告げるアザーンです。モスクの尖塔からのムアッジンによる礼拝の召喚(呼びかけ)の声は、イスラム圏に旅した人の記憶にはっきり残るようです。トルコですが、勿論アラビア語で唱えられます。
<西アジアの宗教~アザーン>

次に、イスラム教の聖典であるコーランの朗唱です。1955年のイラン、テヘランでの録音ですが、ここでも勿論ペルシア語ではなく、アラビア語で唱えられます。イラン独自の装飾的な歌唱法も見られると解説にありますが、ほぼアラブ圏と同じに聞こえます。
<西アジアの宗教~コーラン>

イスラム音楽の最後に、イスラム神秘主義のデルヴィーシュ派(元はイスラム托鉢僧の意)の音楽です。葦笛のネイと枠太鼓ダフなどによる旋回舞踏の音楽ですが、最も有名なトルコのメヴレヴィー教団ではなく、シリアのダマスカスの旋回舞踏音楽で、マカームはベヤートです。1955年録音ですから、やはり貴重な古い録音です。
<西アジアの宗教~デルヴィーシュ ベヤート旋法>

では、最後にドイツ・グラモフォンから出ていた「聖地のクリスマス音楽」から、ベツレヘム生誕教会の鐘の音で今回はお別れです。キリスト生誕の地とされるベツレヘムのギリシア正教会のもので、東方的な渋みや深みを感じさせる音です。ヨーロッパの教会ではなく、東方諸教会中心のこのアルバムは、クリスマスまでにもう一度ちゃんと取り上げる予定です。鐘の音は短いので繰り返しかけるかも知れません。それでは、時間までどうぞ。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<聖地のクリスマス音楽 ~ ベツレヘム生誕教会の鐘>
The sound of the Church of the Nativity bells, Bethlehem. Tour Guide: Zahi Shaked. October 25, 2013

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2016年12月 2日 (金)

Lutz Elias & Massel Klezmorim

28日の放送原稿に書きましたが、90年前後に日本でも一部でクレズマー・ブームが始まりまして、その頃入っていた英ARCのLutz Elias & Massel Klezmorimの2枚は、クレズマー、イディッシュ民謡、ハシディック・ソングを中心に、セファルディーの曲までも入っていて、長らく棚を賑わせたものです。その後、彼らのリリースを見た記憶がなく、なかなか良い演奏をしていたので残念です。特にLutz Eliasの渋い歌声は今でもよく覚えています。と思っていたら、ハヌキヤ(7本のメノラーより2本多いハヌカー用の燭台)の写真は、どうやら見たことのないDVD&SACD盤のジャケットのようです。youtubeは3本ほどありました。Draj Techterleは英ARC盤に入っていたイディッシュの歌、A Yiddishe Mommeはこの2枚には入ってなかったイディッシュ・ソング、Durme Durmeも2枚に入ってなかったセファルディーの歌です。

Draj Techterle - Massel Klezmorim - Klezmer

A Yiddishe Momme - Massel Klezmorim -

Durme Durme ( Jewish lullaby in Ladino ) - Massel Klezmorim - lyrics

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2016年12月 1日 (木)

Tzave Yechouois Yaakov

今日のタイトルは、28日にアップしましたジャッキー・ジュスホルツの歌っていたTzaveの歌詞で、これが全てです。イディッシュ訛りのヘブライ語のようですが、ベルギーの歌手と言うことで更にフランス語風な綴りになっていて、いよいよ不思議なスペルになっています(笑) 一本目は先日と同じでジュスホルツの歌唱、二本目は実際にハシディの集まりでこの歌が歌われている時の映像。ユダヤ神秘主義カバラーの流れを汲むハシディック・ソングの法悦感がみなぎっている、と見て良いのでしょうか。かなり盛り上がっていることは確かです。三本目では大分変容していて、しかもアシュケナジームには見えない女性が歌っていて、謎が深まりました。この歌詞が詩篇44篇4節らしいことが、解説から分りました。

16 Tzave

Tzavei?

Tzave Yeshuot Yaakov

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2016年11月30日 (水)

レマアン・アハイ 詩篇122篇

ラビ・シュロモ・カルリバッハの動画は非常に多くて、今回久しぶりに彼の映像を調べてみて、本当に嬉しい悲鳴状態です。今日のレマアン・アハイも、90年代前半に銀座の教文館ヘブライ語講座で歌った懐かしい一曲。旧約聖書の詩篇122篇8~9節にカルリバッハが曲を付けました。121篇に作曲したエサー・エイナイなどと並んで、ハシディックな曲調というより、この詩篇に合ったしみじみと心に沁み入るメロディです。

私は言おう、私の兄弟、友のために。
「あなたのうちに平和があるように。」
私は願おう。私達の神、主の家のために。
「あなたに幸いがあるように。」
詩篇122篇8~9節(新共同訳)

Rabbi Shlomo Carlebach - Le'ma'an Achay Ve're'ay - live in France 1970 - video 2 -
https://www.youtube.com/watch?v=Lma21mlCHKQ
埋め込み禁止でした。

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2016年11月29日 (火)

カルリバッハのハヴァ・ナギラとコル・ニドレイ

「歌うラビ」のニックネームを持つカルリバッハの歌ったハヴァ・ナギラとコル・ニドレイがありました。自作のハシディック・ソング以外の有名曲は比較的珍しいように思います。ハヴァ・ナギラはイスラエルのフォークダンスでも有名ですが、元はハシディック・ソング。東欧系ユダヤの典型的な旋法であるアハヴォ・ラボ旋法のメロディで、リズムはルーマニア起源のホラですが、南ロシアのブコヴィナからユダヤ移民によってエルサレムにもたらされたハシディック・ダンスの曲です。一方コル・ニドレイは、ユダヤ新年のヨム・キプールにだけ歌われる神聖な歌。マックス・ブルッフのチェロとオーケストラ編曲でも一般に有名になりましたが、ドイツ語風に「コル・ニドライ」と読まれていました。

Hava Nagila - Rabbi Shlomo Carlebach

Kol Nidre - Rabbi Shlomo Carlebach

Carlebach Kol Nidrei

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2016年11月28日 (月)

ハシディック・ソング

ゼアミdeワールド34回目の放送、日曜夕方に終りました。30日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。

今回で34回目の放送になりました。アラブ音楽巡りの途中なので、余り深入りしない予定でしたが、どうしてもハシディック・ソングだけは少し取り上げておきたいと思いましたので、イスラエルの音楽3回目、番外編ということで、ユダヤ教敬虔派の宗教歌ハシディック・ソングを少し聞いておきたいと思います。ユダヤ音楽の「本丸」の一つと言っても過言ではない、重要な音楽です。特に90年代から日本でも一部で人気を集めたクレズマー音楽においては、そのスピリット的な部分にハシディック・ソングがあります。ロックやジャズのルーツにブルースがあるように、クレズマーのルーツにはハシディック・ソングがあると思います。またジャズの曲名に「スイングしなけりゃ意味がない」というのがありますが、これになぞらえれば、ハシディックのグルーヴ感がなければクレズマーじゃないとなるでしょうか。クレズマーにはルーマニアを始めとする東欧各地の伝統音楽が豊富に入っていますが、ハシディックの芯が一本通ってないと、ジプシー音楽や東欧音楽とユダヤ音楽の差がなくなってしまいます。ブルースの根幹にある黒人霊歌(ゴスペル)=ニグロ・スピリチュアルになぞらえれば、ジューイシュ・スピリチュアルと言えましょうか。

シンギング・ラバイ(歌うラビ)と呼ばれたラビ・シュロモ・カルリバッハは、聖書の文句などに作曲した、哀愁のある親しみやすいハシディック・ソングの名曲を沢山残しました。まずヴェハエル・エイネイヌという曲からどうぞ。

<ラビ・シュロモ・カルリバッハ / ヴェハエル・エイネイヌ>
Veha'er Eineinu - Rabbi Shlomo Carlebach


ヴェハエル・エイネイヌはヘブライ語ですが、和訳すると「我らの瞳を照らせ」となります。歌詞は聖書ではなく、以下のような内容になります。「我らの瞳を汝の律法に照らせ。そして汝の戒律に我らの心を密着せよ。そして我らの心を愛と汝の名を畏れることにおいて一つとせよ。恥じることも、うろたえることもない。そして永遠につまづくことはない。」 こういう熱い信仰の歌です。

次にかける曲も同じベスト盤からで、「これはその日」と訳せるタイトルですが、曲の詳細は不明です。なかなか好きな曲なので、かけてみます。

<ラビ・シュロモ・カルリバッハ / ゼー・ハヨム>
Ze Hayom - Rabbi Shlomo Carlebach


イスラエルのHed Arziから出ている彼のベスト盤から、もう一曲「オッド・イシャマー」をどうぞ。聖書のエレミア書33章10~11節のヘブライ原文が歌詞になっている結婚式の歌です。

<ラビ・シュロモ・カルリバッハ / オッド・イシャマー>
Od Ishama 2 - Rabbi Shlomo Carlebach


曲の後半は歌詞が消えてメロディだけをアイ・ディ・ディなどと歌っていますが、これはハシディック・ソングのニグンという「ことばのない歌」に当り、これぞ黒ずくめの衣装に髭を蓄えたハシディームたちの歌の真髄という部分です。ニグンは昔は記譜されることなく口伝で伝わったそうです。
ニグンのバリエーションに当るようにも思いますが、同じ文句を繰り返して段々早くなることも有り、ユダヤ神秘主義カバラーの流れを汲むハシディック・ソングの法悦感を醸し出しています。ユダヤ魂の奥底から湧き上がる旋律と言えるでしょうか。そういうタイプの例としてベルギー在住のユダヤ人歌手ジャッキー・ジュスホルツのTzaveという曲をどうぞ。

<ジャッキー・ジュスホルツ / Tzave(ユダヤ人に自由を)>
16 Tzave


解説では、ルーマニア起源の舞曲ホラ調のハシディズムの民謡で、女声コーラスをバックにユダヤ人の解放の喜びが歌われる、とあります。短い文句は一応ヘブライ語のようですが、東欧系ユダヤのイディッシュ語訛りの強い綴りに見えます。

ラビ・シュロモ・カルリバッハの歌に戻りまして、聖書の詩篇118編14節につけられたPischu Li(Open the Gate)という曲をどうぞ。1963年にVanguardから出たまだ40歳前くらいの活動初期のアルバムの一曲目です。カルリバッハの若々しい歌声と聴衆の熱い反応がとても良いです。

<Rabbi Shlomo Carlebach / Pischu Li>
Pischu Li - Rabbi Shlomo Carlebach

この曲は上記ヴァンガード盤とは別録音。

Rav Shlomo Carlebach - Pe'er Vekavod Notnim Lishmo - 1973

最高のライブ映像も併せて

次に、90年前後に日本でもクレズマー・ブームが始まりましたが、その頃入っていた英ARCのLutz Elias & Massel Klezmorimの演奏にもハシディック・ソングがそのまま入っていてヘブライ語で歌われていますので、その曲をかけてみます。歌詞は聖書の雅歌2章8節から取られています。イディッシュ語の民謡とクレズマー音楽中心の2枚シリーズでしたが、ヘブライ語の歌が何曲かありました。

<Lutz Elias & Massel Klezmorim / Kol Dodi>
Kol Dodi - Shoshana Damari

ルッツ・エリアスではなかったので、イエメン系の名歌手ショシャナ・ダマリの歌唱で

では、最後にカルリバッハ作曲のハシディック・ソングで、エレー・ハムダー・リビーという曲ですが、前回取り上げましたキング・オブ・クレズマー・クラリネットと称されたクラリネットの名手ギオラ・ファイドマンの演奏で締めたいと思います。それでは、時間までどうぞ。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<ギオラ・ファイドマン / エレー・ハムダー・リビー>
Ele chamda libi - Klezneytral live@Alsergrund[08]

ギオラ・ファイドマンの演奏でこの曲は見当たらないので、Klezneytralの演奏で。

Ele Chomdo Libi

放送ではちょっとしかかけられなかったので、他のクレズマーグループの演奏も。Klezmeraniansというグループのようです。

Klezmer Techter Hassidic Song

女性のクレズマー・トリオKlezmer Techterの間で、演奏を見守るギオラ・ファイドマンの姿が見えます。

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2016年11月25日 (金)

ヤリボン

ユダヤ音楽の中で一曲だけ選べと言われたら、20年前ならこのヤリボンを選んだと思います。ユダヤ教のシャバト(安息日)に歌われるアラム語の歌で、最初に聞いたのは1本目のギオラ・ファイドマンのクラリネット演奏でした。これは典型的なアシュケナジームの哀愁の名旋律。これが好きで好きで、死ぬ前に一曲だけ聞けると言われたら、この曲を選ぶだろうと思ったほどです。この曲、キリスト教の賛美歌なら、頌栄に当たるような重要な歌だと思います。
ヤー・リボンはユダヤ・コミュニティーによって色々な旋律があり、2本目のヤイール・ダラルのアラブ的なウード演奏では、同じ祈祷文でも全く違う印象です。こちらもとても良い感じです。彼はイラク出身なので、イラク系だと思っていましたが、ここで歌われているのはセファルディーの節になるのでしょうか?

Yah Ribon Olam Vealmaya - Giora Feidman

Yair Dalal Ya Ribon Alam Live @ Sephardic Music Festival 2009

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2016年11月24日 (木)

エステル・オファリームのAdama Adamati とShedemati

いよいよ先週予告しておりましたエステル・オファリームのAdama Adamati(わが大地)です。何とShedemati(私の畑)もありましたので、一緒に。ドゥダイームの十八番の2曲を、元夫のアビ・オファリームと演奏しています。歌声も容姿も美しい! キブツやモシャヴで歌われた名曲の見事な演奏です。前者はバルカン系のホラのリズムに乗って軽快に歌われ、後者は古代ユダヤ的な朗唱旋律を感じさせるヘブライ的な歌です。
「わが大地よ、私の生ある限りの安らぎよ。大いなる幻影が、この荒れ果てた地に湧き上がったのだ。さあ踊ろう。輪になって廻ろう。」(江波戸先生の1975年のLP「イスラエル~さすらいの大地にうたう憂愁の歌」の解説より)

Esther & Abi Ofarim - Adama adamati (live, 1963)

Esther & Abi Ofarim - Shdematy

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