ユダヤ音楽

2022年5月20日 (金)

Ami Flammerのヴァイオリン

アミ・フラメールのYouTubeは、イディッシュ関係はすぐに出てきましたが、クラシックはセザール・フランクのヴァイオリン・ソナタがほとんどで、残念ながらエネスコのヴァイオリン・ソナタ3番はなさそうです。カタカナ表記は、アミ・フラマーと言うのも見かけますが、フランス語圏ですからフラメールとする方が近いと思います。
アミ・フラメールはルイ・マル監督の映画「さよなら子供たち」の中で、お道化た調子でサン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」を弾いていたのを、たまたま見かけたこともありました。番組でかけたThesis盤は、エネスコの他にチェコのヤナーチェクと、新ウィーン楽派のウェーベルンとシェーンベルクのヴァイオリン作品も演奏しています。アミ・フラメールは1985年にOcoraから出ていたイディッシュ民謡のCDでも演奏していまして、それで名前を覚えていてThesis盤を購入しました。

この人のプロフィールを調べると、以下のようにありました。現代音楽寄りの活動にユダヤ音楽まで入るユニークな経歴です。(おそらく、まず間違いなくユダヤ系でしょう)
パリ音楽院でローラン・シャルミーのクラスで学び、1969年にヴァイオリンで1等賞を受賞。その後、J.ギンゴールド、H.セリグ、C.フェラスに師事。 マリア・カナルス国際コンクール(バルセロナ)で第1位を獲得し、イヴァン・ガラミアン(ニューヨーク・ジュリアード音楽院)、ナタン・ミルシテインに師事。現代音楽のアンサンブル「2e2m」のメンバーであり、1983年にはSACEMのジョルジュ・エネスコ賞を受賞している。ジョン・ケージの「フリーマン・エチュード」をフランスで初演。J.-C.ペネティエとのデュオでヴァイオリンを演奏し、フランク、ドビュッシー、シマノフスキ、エネスコ、ウェーベルン、シェーンベルク、ヤナーチェクなどの作品を一緒に録音している。1999年にカルテット "Carre-Le Partage des Voix "を設立し、現代的なレパートリーを提供している。シャロン=シュル=ソーヌ音楽院とジャンヌヴィリエ音楽院で教鞭をとり、パリCNSMDではヴァイオリンと室内楽の教師を務めている。2017年には、ジャン・ジャック・カントロフ指揮によるベートーヴェンの協奏曲を録音している。

フランクは今回は外して、イディッシュのみにしておきます。1985年にOcoraから出ていたイディッシュ民謡のCD「Chansons Yiddish - Tendresses et Rage」から、Avremlとパピロシュンを上げておきます。編成は、Ami Flammerのヴァイオリン、Moshe Leiserのギターと歌、Gerard Barreauxのアコーディオンです。東欧系ユダヤ人のイディッシュ語の哀感溢れる歌を聞かせるCDは沢山ありますが、この盤はCDでは最も早い時期に出た一枚だったと思います。2本目を見て、LPの頃から出ていたことを知りました。またポーランドの時に東欧系ユダヤの音楽は集中的に取り上げる予定です。

Avreml

Ami Flammer, Moshe Leiser, Gérard Barreaux - A kalte Nakht (Papirosn) (Yiddish Song)

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2022年4月29日 (金)

ハンガリーのユダヤ人の民謡(Magyar zsidó népzene)

アニ・マアミンについては、ハンニバル盤のジャケット入りで出て来ました。インストで演じられるのが、ムジカーシュの場合は、かえって哀感を強めるように思います。2本目はジプシー(ロマ)の老楽士Gheorghe Covaci(愛称Cioata)とのセッションのフル映像になるのでしょうか。マルタ・セバスチャンが歌うユダヤ教の安息日(シャバト)の祈りの独唱Szombateste Búcsúztatóで始まり、Áni Mááminが5分過ぎ、タイトル通りSzól a kakas márも26分過ぎから出て来ますし、Chasid lakodalmi táncokも23分前に出て来ます。カラー版映像はここから取られていたのでしょうか。とにかく全編素晴らしい映像の連続ですが、ロマの楽士がしばしば「紅茶」と呼ぶコニャック?の回し飲みは、兄弟の盃を交わしているかのようです(笑)(以下放送原稿を再度)

アニ・マアミンとは、ヘブライ語で"私は信じる" を意味する一節ですが、それを元とする楽曲でもあります。ここで聞かれるのは、東欧系ユダヤでは最も有名なアニ・マアミンの旋律です。Gheorghe Covaciは、アウシュヴィッツから生き残って帰ったユダヤ人たちは、この歌をいつも泣きながら歌っていたと回想しています。出典は中世スペインのユダヤ教徒の哲学者、マイモニデス(モーシェ・ベン=マイモーン)が記した『ミシュネー・トーラー』に出てくるユダヤ教の信仰箇条の中の一節です。歌詞がある曲ですが、ムジカーシュの演奏はインストのみです。

<5 Áni Máámin 2分56秒>

Szól a kakas már - Magyar zsidó népzene

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2022年4月28日 (木)

ドハーニ街シナゴーグのSzol a kakas mar

今週の番組で2曲目にかけた名曲Szol a kakas mar (Rooster is Crowing)については、2010年にZeAmiブログに書いていました。下の方にペーストしておきます。2010年の時点でも沢山動画がありましたが、最近調べたら、ブダペストのドハーニ街シナゴーグでのカントールの独唱もありまして、これは見たことのなかった映像です。初めて見る会堂内です。1989年の映像のようで、カントールの熱唱に聞き惚れ、辛い戦時中を思い出すのか、涙を流す老婦人を何人も見かけます。方々で書いているように、ドハーニ街シナゴーグのカントールと合唱のフンガロトン盤を1989年に聞いて民族音楽に舞い戻ったので、その点でも見過ごせない映像です。Szol a kakas marは、YouTubeで上位に上がっているように、2000年代に入ってからは、Palya Beaの歌唱でも有名になりました。

Sol o Kokosh

ハンガリアン・ジューの名曲Szol a kakas marは、まず何よりMuzsikasの名盤「Maramaros - Lost Jewish Music of Transylvania」(Hannibalから初出 後にハンガリーのMuzsikasからもリリース)の2曲目の、マルタ・セバスチャンの歌唱で有名になったと思います。その悲愴美は筆舌に尽くせないほど印象的で、きーんと冷えたトランシルヴァニアの空気感も運んでくるかのような、更には匂いも感じさせるような曲でした。これぞハンガリー系ユダヤの秘曲と唸らせるものがありました。90年頃来日を果たしたムジカーシュの演奏も非常に素晴らしいものでしたが、この盤の出る前だったようで、このアルバムからは聞いた記憶がありません。ハンニバル盤が出たのは93年と、もう大分経ってしまいましたので、そちらでは最近入り難くなっているのが残念です。ハンガリー現地盤(ムジカーシュ自身のレーベル)は生きていたと思います。
この曲名、和訳すれば「雄鶏が鳴いている」となりますが、そのメロディ・ラインで思い出すのは、ユダヤ宗教歌で最も名高いKol Nidreでしょうか。コル・ニドレ(ドイツ語風に読むとコル・ニドライ)は、典型的なユダヤ旋法の一つ、Ahavo Rabo(「大いなる愛」の意味)旋法の歌。エキゾチックな増二度音程が悲しみを最大限に醸し出しています。いずれもユダヤ民族の運命を歌ったような悲劇的な調子ですが、そんなSzol a kakas marがハンガリーのユダヤ人の間では最も人気があったようです。この透徹した悲しみの歌については、まだ分らないことが多いです。また何か分ったら書いてみたいと思います。そう言えば、往年のシャンソン歌手ダミアが歌った「暗い日曜日」の原曲は、ハンガリーの歌でした。この歌のムードに似たものがあるようにも思います。

更にソル・ア・カカス・マール
29日にアップしたソル・ア・カカス・マールは、チャールダッシュのラッサンの部分から生まれた曲なのでしょうか。その深い憂愁のメロディには、「極北のジューイッシュ・メロディ」の印象を勝手に持っていました。あのムジカーシュの盤以降、いつの間にかクレズマー・シーンでもメジャーになったのか、youtubeはまだまだ見つかります。何とマイケル・アルパートの弾き語りもありました。今日は幾つかまとめて上げておきます。ムジカーシュ&マルタ・セバスチャンとは異なる趣向を色々楽しめます。ルーマニアでドイナと結合したように、ハンガリーの農村ジプシー音楽のスタイルとの見事な融合例として、この曲は上げられるかも知れません。個人的には最も好きなジューイッシュ~ハンガリアン・メロディの一つです。

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2022年4月27日 (水)

Chasid lakodalmi táncok

Chasid lakodalmi táncokは、1本目のチオアタとのセッションが何より貴重ですが、2013年のライブもありました。ムジカーシュのリーダーのMihály Siposは、セッションの時で40代半ばくらいでしょうか、ライブの時は60代半ばだと思います。ムジカーシュは、90年頃の来日公演を聞きに行きましたが、ミハーイ氏を見ると、いつも大泉滉を思い出してしまいます(笑)(以下放送原稿を再度)

まずは1曲目のChasid lakodalmi táncokですが、英語ではKhosid Wedding Dancesですので、ハシッド派ユダヤ教徒の結婚式のダンスと訳せると思います。ハシディック・ダンスのマラムレシュ版と言うことになりますが、一般のハシディックの音楽とは少し違うと思います。ムジカーシュの面々が現地取材の際にジプシーの老楽士Gheorghe Covaci(愛称Cioata)とセッションしているYouTubeもありました。満面の笑みを浮かべて弾いていたのを思い出しますが、この録音にもゲスト参加しています。

<1 Chasid lakodalmi táncok 4分33秒>
Muzsikas: Chasid Dances with Cioata

Muzsikás Együttes: Haszid lakodalmi táncok

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2022年4月25日 (月)

トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽

ゼアミdeワールド306回目の放送、日曜夜10時にありました。27日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。重要盤だと思いますが、2000年前後に執筆参加したディスクガイドでは、何故か漏れていたThe Lost Jewish Music of Transylvania。93年のリリース頃、六本木の店で随分売った記憶があります。今日は3本目までにしておきますが、このジャケットはハンニバル盤ではなく、ハンガリーからの再発盤です。

ルーマニアの音楽の18回目になります。今回は米Hannibalから1993年に出た「ムジカーシュ/トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽」(Muzsikás / Maramoros - The Lost Jewish Music of Transylvania)を特集します。ハンガリー・トラッド界の雄、ムジカーシュの代表作の一つで、名歌手マルタ・セバスチャンが歌で参加して華を添えています。ホロコーストでユダヤ人楽士の全てが亡くなり、忘れ去られていたトランシルヴァニアのユダヤ人の音楽を、ハンガリーのユダヤ人音楽学者のZoltan Simonとムジカーシュが協力して再現した盤です。戦前にユダヤ人の結婚式で演奏していたジプシーの老フィドラーGheorghe Covaciが記憶していて、取材したムジカーシュによって現代に蘇った曲も収録されています。音楽の印象は、一般的なクレズマーではなく、ムジカーシュが普段演奏するハンガリーのヴィレッジ音楽とも少し違っていて、当時のハンガリーのユダヤ音楽を忠実に再現しているという評価が高い演奏です。基本編成は、リーダーのMihály Siposのヴァイオリンと、伴奏は3弦のヴィオラ奏者が二人、コントラバスが一人です。
タイトルに「トランシルヴァニア」とありますが、本題はマラマロシュと言いまして、ルーマニア北部のマラムレシュ地方のハンガリー語読みですので、トランシルヴァニアでも最北部になります。狭義ではマラムレシュはトランシルヴァニアに入れない場合もあります。

まずは1曲目のChasid lakodalmi táncokですが、英語ではKhosid Wedding Dancesですので、ハシッド派ユダヤ教徒の結婚式のダンスと訳せると思います。ハシディック・ダンスのマラムレシュ版と言うことになりますが、一般のハシディックの音楽とは少し違うと思います。ムジカーシュの面々が現地取材の際にジプシーの老楽士Gheorghe Covaci(愛称Cioata)とセッションしているYouTubeもありました。満面の笑みを浮かべて弾いていたのを思い出しますが、この録音にもゲスト参加しています。

<1 Chasid lakodalmi táncok 4分33秒>
01 Chaszid lakodalmi táncok Khosid Wedding Dances

2曲目の物悲しく凄絶な程に美しい旋律のSzól A Kakas Márは、この盤の白眉でしょう。英訳ではThe Rooster is crowingですから、「雄鶏は鳴く」となるでしょうか。ハンガリー系ユダヤ人のみならず一般のハンガリー人の間でも有名な旋律で、ハンガリー語の歌詞ですがユダヤの歌らしくヘブライ語の行が挿入されています。言い伝えでは、ある羊飼いが歌っていた旋律をハシディズムの指導者ツァディク(義人)のReib Eizikがいたく気に入って覚えていた旋律だそうで、後には宗教や民族を分け隔てなく寛容に統治した17世紀のトランシルヴァニア公Gabor Bethlenのお気に入りの歌だったという記録もあるそうです。

<2 Szól A Kakas Már 3分7秒>

3曲目のMáramarosszigeti tánc(マラマロシュシゲティの踊り)は、ゾルタン・シモンの採譜で知られていて、ツィンバロム奏者のアルパド・トニをフィーチャーした、これもトランシルヴァニアとハシディックが入り混じった感じの曲です。Máramarosszigetiの地名は、マラマロシュとシゲティに分離できると思いますが、ヴァイオリニストのヨーゼフ・シゲティを思い出す曲名だと思ったら、この国境の町でシゲティは少年時代を過ごしたそうです。因みにハンガリー語のszigetiは「小島」の意味でした。

<3 Máramarosszigeti tánc 3分36秒>

次は1曲飛びまして、5曲目のアニ・マアミンです。アニ・マアミンとは、ヘブライ語で"私は信じる" を意味する一節ですが、それを元とする楽曲でもあります。ここで聞かれるのは、東欧系ユダヤでは最も有名なアニ・マアミンの旋律です。Gheorghe Covaciは、アウシュヴィッツから生き残って帰ったユダヤ人たちは、この歌をいつも泣きながら歌っていたと回想しています。出典は中世スペインのユダヤ教徒の哲学者、マイモニデス(モーシェ・ベン=マイモーン)が記した『ミシュネー・トーラー』に出てくるユダヤ教の信仰箇条の中の一節です。歌詞がある曲ですが、ムジカーシュの演奏はインストのみです。

<5 Áni Máámin 2分56秒>

7曲目はZoltan Simonがマルタ・セバスチャンに見せて歌うように勧めたユダヤ教の安息日(シャバト)の祈りの独唱で、シナゴーグでは男性が唱えるアハヴォ・ラボ旋法の曲を女性に歌わせているのがユニークです。

<7 Szombateste Búcsúztató 3分15秒>

8曲目はツィンバロム奏者のアルパド・トニが覚えていた曲で、トランシルヴァニアのSzaszregenのユダヤ・コミュニティで好まれていて、男女入り混じったジューイッシュ・ダンス・パーティーでは、いつもこの曲から始まるそうです。有名なイディッシュ民謡のBelzが元になっているようです。

<8 Szászrégeni szidó tánc 3分7秒>

では最後に年末の重要なユダヤ人の祭り、ハヌカーのための13曲目Chanukka gyertyagyújtásを時間まで聞きながら今回はお別れです。ヘブライ語ではHaneros Haleluとなっているこの曲は、ムジカーシュのメンバーがKlezmer Music; Early Yiddish Instrumental Musicと言う1910年のヒストリカル音源を聞いていて知ったそうです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<13 Chanukka gyertyagyújtás 3分11秒>

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2021年10月27日 (水)

ハヴァ・ナギラ

90年代から雑誌やムックなど方々に、ハヴァ・ナギラはアハヴォ・ラボ旋法の典型、マイム・マイムはイエメン系ユダヤの古風な旋法の典型と書いてきましたが(この情報はディスコグラフィ作成で協力させて頂いた水野信男先生の著書を参考にしています)、久しぶりにハヴァ・ナギラを聞きました。この曲については、90年頃に聞いたロシアのメジクニーガ盤のモスクワ・シナゴーグの男声合唱のインパクトが強く、いまだにハシディックの髭をたくわえ黒ずくめの男性の歌声が念頭にあります。イスラエルの民族音楽にもなっていますが、その曲をセルビアのロマ楽師が演奏するというのは、この盤が出た頃は不思議な気もしました。フランク・ロンドンがレパートリーを持ち込んだのか、ユダヤとロマの楽師間でレパートリーの交換が元からあったのか、その辺に関心があります。バラライカ・アンサンブルとダンスの演奏を一本目に、2本目が2002年に出たライヴ・イン・ベオグラードのボバン・マルコヴィッチの音源です。日本のチャランポランタンもやっていたので、3本目に。(以下放送原稿を再度)

HAVA NAGILA DANCE

このライヴ・イン・ベオグラードには、ユダヤの名曲「ハヴァ・ナギラ」も入っています。東欧系ユダヤのハシディック・ソング由来の高揚感をどう表現しているかが聞きものです。

<Boban Marković Orkestar / Live in Belgrade ~Hava Naguila 3分33秒>

Hava Nagila - Japanese Style

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2020年7月20日 (月)

ハッカリ、木遣り、イエメン系ユダヤ

ゼアミdeワールド217回目の放送、日曜夜10時にありました。22日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今日の動画は、ハッカリの1枚目と木遣りのみにしておきます。

クルドの音楽の6回目です。今回はハッカリとクルドのスーフィーの音源をご紹介したいと思います。クルドは少し延びまして一応後3回の予定です。まずは土Kalan Muzik Yapimから出ている"EYHOK"Traditional Music of Hakkariですが、この盤についてのゼアミHPの紹介文を読み上げます。

トルコ南東部ヴァン湖の南の高地に位置するハッカリ地方は、クルド系遊牧民が多く住む所。この地の民謡フィールド・レコーディング2枚組で04年リリース盤。日本の東北辺りの民謡に似て聞こえる歌があったり、他には意外に似ているのがイエメン系ユダヤ人の宗教詩ディワン。つまり、故オフラ・ハザの歌のルーツとどこかイメージがダブってくるから不思議。古代のイラン系メディア王国の末裔とも言われる高地クルドの逞しく凛とした歌声は実に素晴らしいです。歌詞にはシリア系文字も見えますが、これはアッシリア由来のネストリウス派キリスト教の伝統も入っているからでしょう。

この盤から何曲か続けておかけします。よく売れるもので、現物が手元に残ってないので、アップルミュージックからの音出しになります。解説を参照できないので曲の詳細は不明ですが、1枚目の最初の方に入っている男性の掛け合いの歌は、日本の民謡の中でもとりわけ、火消しなどで鳶職が歌った仕事歌の「江戸木遣り」にも似ているように思います。3,6曲目を続けておかけします。

<1-3 Serşo 2 2分26秒>

Piyanisili Erkekler - Serşo 2 [ Eyhok © 2004 Kalan Müzik ]



<1-6 Narink 3 1分20秒>

Piyanisili Erkekler - Narink 3 [ Eyhok © 2004 Kalan Müzik ]


少し飛んで20曲目も、どう聞いても日本の民謡にそっくりです。
 

<1-20 Zeynel Beg/Bedirxan Beg 2分47秒>

Abdülkerim Kaçar - Zeynel Beg & Bedirxan Beg [ Eyhok © 2004 Kalan Müzik ]


2枚目の1曲目でも、追分か馬子唄のような細かいコブシを聞かせていますが、この曲はエチオピアの民謡にも似ているように思いました。

<2-1 Rave 52秒>

前回「長い歌」系のラウクをかけましたが、同じラウクに当たる曲が2枚目4曲目に入っています。これも日本の民謡に瓜二つに聞こえます。

<2-4 Lawkê Tuxûbî 3分8秒>

引き合いに出したイエメン系ユダヤ人の伝承歌謡ディワンも、ユネスコ・コレクションの音源からかけておきます。2曲目のTsur Menati(神は我が居場所)は、オフラ・ハザも歌っていた曲で、これが原曲になります。

<2 The Yemenite Jews  Tsadoq Tsubeiri / Tsur Menati 3分46秒>

ハッカリの1枚目で引き合いに出した江戸木遣りも一曲おかけしておきます。曲は、真鶴・手古です。ハッカリのクルドの歌が、ユダヤコミュニティーの中でも特に古い伝承を残すと言われるイエメン系ユダヤの歌や、日本の木遣りや追分にも似ているという興味深い例をご紹介しました。ナーゼリーさんの曲にも、タンブールの音使いが津軽三味線にそっくりな曲もあったのを思い出しました。

<1-1 真鶴 手古 4分33秒>

木遣り、真鶴/手古


最後に1994年にフランスのOcoraから出ていたクルドのスーフィー儀礼音楽の2枚組から、唱念儀礼ジクルを聞きながら今回はお別れです。イラン西部クルディスタンにあるコルデスターン州の州都サナンダージの神秘主義教団、カーディリー教団の儀礼の93年現地録音で、枠太鼓のダフを叩きながら唱えられます。2枚組に120分以上入ったディープな世界の中から、極々一部ですが、多少は雰囲気が感じられると思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<2-1 Zikr-E Allâh Et Percussions 9分38秒>

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2020年6月 5日 (金)

Lost Jewish Music of Transylvania再び

これ程こだわるのも、余りにSzol a kakas marのインパクトが強かったからですが、そのMuzsikasの名盤「Maramaros - Lost Jewish Music of Transylvania」(米Hannibalから初出 後にハンガリーのMuzsikasからもリリース)で共演していたハンガリーの歌姫マルタ・セバスチャンの2010年の歌唱がありましたので、1本目に入れておきます。2000年代のクレズマーグループの雄、ディ・ナイェ・カペリエの伴奏です。やはりこの歌は彼女の歌声と不可分に思えてしまう程、素晴らしい歌唱です。エキゾチックな増二度音程ではセファルディの歌と共通しますが、こちらが割と他愛のない恋歌なのに対し、ハンガリーのユダヤ人の間で最も人気があったというこの透徹した悲しみの歌は、「雄鶏が鳴いている」のタイトルに象徴的な意味が隠されているように思えてなりません。
2本目は上記のマラマロシュの1曲目に入っていたハシッド・ダンスで、ムジカーシュの2013年のライブ映像です。聴衆の盛り上がりが凄いです。ムジカーシュのメンバーがロマの古老からこの曲を教わるシーンの映像を、大分前にブログに上げたことがありました。これも大好きな曲で、どちらもヴァイオリンで真似してみました。

Sebestyén Márta és a Di Naye Kapelye - Szól a kakas már


Muzsikás Együttes: Haszid lakodalmi táncok

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2020年6月 4日 (木)

A la una yo nasiとSzól a kakas márの類似

Voice of the Turtle / Music of the Spanish Jews of Turkeyのラストの19曲目を飾っているA la una yo nasi(第一に、私は生まれた)という曲は、バルカン諸国のセファルディーの歌として広く知られている曲とのことですが、ハンガリーのSzól a kakas márという曲にかなり似ています。こちらは東欧系ユダヤの歌ですので、旋律がバルカンのセファルディーに流れたのか、単なる空似か、どちらでしょうか?

<19 Voice of the Turtle / Music of the Spanish Jews of Turkey ~A la una yo nasi 4分40秒>

A la una yo nací. Música Sefardí. Emilio Villalba & Sephardica


A la una yo nasi


ちょうど10年前と9年前にSzól a kakas márについて書いたブログを振り返ります。今日は取り合えず2曲を並べて、また探ってみたいと思います。今日の動画はベアタ・パヤの歌唱で。

名曲Szol a kakas mar (Rooster is Crowing)

一昨日予告したハンガリアン・ジューの名曲Szol a kakas marにいってみます。この曲は、まず何よりMuzsikasの名盤「Maramaros - Lost Jewish Music of Transylvania」(Hannibalから初出 後にハンガリーのMuzsikasからもリリース)の2曲目の、マルタ・セバスチャンの歌唱で有名になったと思います。その悲愴美は筆舌に尽くせないほど印象的で、きーんと冷えたトランシルヴァニアの空気感も運んでくるかのような、更には匂いも感じさせるような曲でした。これぞハンガリー系ユダヤの秘曲と唸らせるものがありました。90年頃来日を果たしたムジカーシュの演奏も非常に素晴らしいものでしたが、この盤の出る前だったようで、このアルバムからは聞いた記憶がありません。ハンニバル盤が出たのは93年と、もう大分経ってしまいましたので、そちらでは最近入り難くなっているのが残念です。ハンガリー現地盤(ムジカーシュ自身のレーベル)は生きていたと思います。
この曲名、和訳すれば「雄鶏が鳴いている」となりますが、そのメロディ・ラインで思い出すのは、ユダヤ宗教歌で最も名高いKol Nidreでしょうか。コル・ニドレ(ドイツ語風に読むとコル・ニドライ)は、典型的なユダヤ旋法の一つ、Ahavo Rabo(「大いなる愛」の意味)旋法の歌。エキゾチックな増二度音程が悲しみを最大限に醸し出しています。いずれもユダヤ民族の運命を歌ったような悲劇的な調子ですが、そんなSzol a kakas marがハンガリーのユダヤ人の間では最も人気があったようです。この透徹した悲しみの歌については、まだ分らないことが多いです。また何か分ったら書いてみたいと思います。そう言えば、往年のシャンソン歌手ダミアが歌った「暗い日曜日」の原曲は、ハンガリーの歌でした。この歌のムードに似たものがあるようにも思います。

サトゥマールのフィドルとSzól a kakas már

サトゥマールの音楽と言えば、フンガロトンの「サトゥマール地方のハンガリー音楽 Szatmari Bandak」(残念ながら廃盤のようです)をどうしても思い出しますが、その中には一昨日の一本目のヴェルブンク(チャールダーシュとも言えるようです)が2曲目に入っていて、更にはムジカーシュ&マルタ・セバスチャンのハンニバルからの名盤「マラマロシュ(トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽)」の白眉ソール・ア・カカシュ・マールも入っています。マラマロシュ(現在のルーマニア北部のマラムレシュ辺りのようです)に伝わっていたユダヤの哀歌は、迫害によって歌そのものの主を失ったようですが、この地のロマの音楽家によって記憶されていたというもの。この余りに印象的なメロディは、西に隣接するサトゥマールでも伝承されたのでしょう。一昨日見た舞踊も古いスタイルを保っているように思いました。
この地方、ハンガリーの民族音楽学者の間では「Hungary`s Transylvania」と形容もされるようです。その位この地方には古いハンガリー音楽の伝統が残っている所として知られています。
Szól a kakas márについては、ちょうど一年程前にもユダヤ音楽枠で取り上げました。「サトゥマール地方のハンガリー音楽 Szatmari Bandak」のライナーノーツは、Brave Old Worldのマイケル・アルパートも書いています。これは見逃せないポイントでしょう。
一昨日書いた「ウクライナのカルパチア西麓の地方名」とは、ルテニアでした。2008年2月12日にブログにも書いていました。

Palya Bea Szefárd Trió - Szól a kakas már

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2020年3月11日 (水)

イサーク・アルガズィの歌うユダヤ教宗教歌

オスマン帝国の名カントール、イサーク・アルガズィの音源は独Wergoと土Kalan Muzik Yapimからありました。前者では ユダヤ教新年祭の聖歌:Kamti be-ashmoret, Anna ke'av zedoni, Im afes rova'ha-ken, Avinu Malkenu, Yedei rashim, Le-britekha shokhen zevul u-shevu'a, Adonay sham'ati shim'akha yareti, Ochila la-el, Ha-yom harat 'olam, Yetzav ha-el、シャバト(安息日)の歌:Kiddush, Be-motza'ei yom menuchah、ユダヤ教祭日の歌:Kiddush le-Shavu'ot, Teromem bat ramah&Tzame'a nafshi、マフティリームの歌:Ahallelah shem elohim, Yshlach mi-shamayyim、スペイン系ユダヤ人の宗教歌:Al Dio alto, Es razon de alabar、スペイン系ユダヤ人の民謡:Ay mancebo,ay mancebo, Quien conocio mi mancevez, Malana tripa de madre, Cantica de ajugar, Reina de la gracia、シオニスト・ソング:Hatikvahが入っていました。マフティリームの歌まで入っていて、締めがハティクヴァという、話題性豊富な一枚でした。彼が亡くなった1950年はイスラエルが独立して間もない頃で、ハティクヴァが国歌に制定されて2年目でした。
今日はオスマン音楽のガゼルとシャルク以外の、ユダヤ教宗教歌を探してみました。シャヴオートのキドゥーシュは、カラン盤の方にも入っていた音源だと思います。2本目も有名なヘブライ語の祈祷歌アヴィーヌ・マルケイヌ(「我らの父、我らの王」の意)で、アシュケナジームのアヴィーヌ・マルケイヌなど、他のユダヤ・コミュニティの歌と音楽は変われど、ヘブライ語の歌詞は同じです。

zak Algazi Efendi - Kiddush le-Shavu'ot [ Arşiv Serisi © 2004 Kalan Müzik ]


Avinu malkenu Isaac Algazi Efendi

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