ルーマニア

2007年9月22日 (土)

ホラ・スタッカートとチョカリーア

ヤッシャ・ハイフェッツは、ロシア出身のユダヤ系のヴァイオリン名人で、不世出の巨匠。
曲は、ハイフェッツがアンコール・ピースでよく弾いていた「ホラ・スタッカート」です。
19日にアップした「ベスト・オブ・ルーマニアン・フォーク・ミュージック」の最初を飾っていた曲です。おそらく「ひばり(チョカリーア)」に次ぐルーマニアの有名曲だと思います。

ルーマニアのフィドラー、ディニクが演奏していた曲をハイフェッツがアレンジ。
曲名はルーマニアの民俗舞曲ホラをスタッカートで、というニュアンス。
一弓で音をたくさん飛ばす超絶技巧の「ワンボウ・スタッカート」で聴衆をあっと驚かせた曲です。多いのでは32の音を一弓で弾いています!!  
下げ弓の時はハイフェッツでもさすがに難しいのか、ボウイングが曲がっていますが。

ハイフェッツのアレンジが入って有名になった曲ですが、ディニク自身の演奏がどんなだったのか、それが聞いてみたいという声もありました。ハイフェッツはディニクのことを、私がかつて聞いた中で最も素晴らしいヴァイオリニストだと賞賛していたそうです。
グリゴラーシュ・ディニク (Grigoraş Dinicu(April 3, 1889 -- March 28, 1949)

Jascha Heifetz plays Hora Staccato

George Enescu,Ciocarlia

ルーマニアの大作曲家兼ヴァイオリニスト、ジョルジュ・エネスコによる「ひばり」の演奏。この曲もディニクの作った曲でした。これは意外に知られていない事実かも。エネスコは、彼の代表作「ルーマニア狂詩曲第1番」のラストにチョカリーアを引用しています。タラフ・ドゥ・ハイドゥークスやファンファーレ・チョカリーアだけでなく、ラウタールならこの曲をやらない者はいないと思われる程の有名曲です。鳥の鳴きまねのアドリブが聞かせ所。

(本稿は、地元のSNS、イマソウにアップしていた記事に補筆したもの)

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2007年9月21日 (金)

タラフ・ドゥ・ハイドゥークス

今日は昨日上げたタラフの別なものを3本。
タラフ・ドゥ・ハイドゥークスは、2000年の初来日以来、カリスマ的な人気を呼んでいるスーパー・ジプシー・バンド。静かだった昨日のビデオとは打って変わって、超絶技巧の嵐。特にプリマ・ヴァイオリンのカリウ(色の浅黒い人)の超絶技巧には口があんぐりです(笑)。 生きたツィゴイネルワイゼン伝説と言っても良いのでは。
コチャニとのセッションは音が大きいので気を付けて下さいね。
では、ボナペティ!!

Latcho Drom - Taraf de Haidouks

映画「ラッチョ・ドロム」は、ジプシーの故地インド西部のラジャスターンから始まり、エジプト、トルコ、ルーマニア、スロヴァキア、フランス、スペインのフラメンコまで、果てしない流浪の旅路を各地のジプシー音楽の映像で綴ったトニ・ガトリフ監督の映像詩。
タラフ・ドゥ・ハイドゥークスの所は、メンバーが住むブカレストの南方、クレジャニ村での現地収録。村人の間で何気なく始まるセッションも凄いです。

Taraf de Haidouks & Kocani Orchestar

マケドニアのジプシー・ブラス・バンド、コチャニ・オルケスタルとデルブッカ奏者Tarik Tuxsiszogluとの共演。2001年に同じメンバーで東京でもライヴがありましたが、すさまじいパワーに圧倒されました。会場はロック・コンサートと見紛う興奮の坩堝。

Latcho Drom - Balada Conducatorolui

トニ・ガトリフの93年の映画「ラッチョ・ドロム」から。
グループの長老ニコラエ・ネアクシュの必殺技、糸弾きヴァイオリン!
この糸弾き、ライヴではユーモアたっぷりで演じられ、年老いてしわがれてはいるけど、燻し銀の歌声に皆しみじみ聞き入っていました。
ルーマニアのブルースか、吟遊詩人のエレジーか、そんなイメージの弾き語り。
ニコラエ翁は2002年9月4日永眠。
2度の来日で彼の元気な舞台姿を見れたのは、一生忘れられない宝物の一つです。

そういえば、2000年の初来日はデザイナーのヨウジヤマモトの黒衣をまとってのステージでした。確かパリ・コレのモデル&キャラクターにタラフが選ばれたそうな。めちゃカッコよかったです。

(本稿は、地元のSNS、イマソウにアップしていた記事の転載)

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2007年9月20日 (木)

6つのルーマニア民族舞曲から

昨日の記事を受けて今日はルーマニア(ロメーニャ)。
※民謡の番組Tezaur folcloricのビデオ・ページは移動してましたので、新しいリンクを昨日の記事にも入れておきました。こちらです。→ http://www.tvr.ro/emisiune.php?id=669
さて、ロメーニャです。数回繰り返すと「ニャロメ」になります(笑
(ユダヤの歌に実際にあります。ニャロメと連呼しているのがw)
そんなことはどうでも良いのですが(笑

Bartok: Romanian Dances
Janine Jansen(Violin)

Prinsengrachtconcert Amsterdam 2005 (Amsterdam Princes Canal Concert).
昨日の記事で触れた20世紀ハンガリーの大作曲家ベラ・バルトークの有名なピアノ曲「6つのルーマニア民族舞曲」をヴァイオリンとピアノで。この人初めて見ますが、確かなテクニックの持ち主。

Taraf de Haidouks at Flagey
Danses roumaines - Bela Bartok

同じ曲をルーマニアのジプシー楽団、タラフ・ドゥ・ハイドゥークスが演奏。
4、5回来日もしていて、私は4回見に行きました。これは最近の映像で、勢い一番の演奏から少し芸風が変わってきたように思えます。

哀愁味溢れるルーマニア音楽、お楽しみいただけたら幸いです。
ボナペティ!

(本稿は、地元のSNS、イマソウにアップしていた記事を一部改編し転載)

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2007年9月19日 (水)

ベスト・オブ・ルーマニアン・フォーク・ミュージック

Bestelectromania
 ルーマニアの音楽では、質、量共に他の追随を許さない本場エレクトレコード(Electrecord)の器楽版コンピレーション。エレクトの豊富な音源からラウタールの器楽による踊りの音楽がバラエティ豊かにまとめられている。
 ルーマニアといえば何をイメージするだろうか。多くの人が思い浮かべるのは、ドラキュラ伯爵と吸血鬼伝説、そのモデルになったヴラド・ツェペシュ侯、体操の名選手ナディア・コマネチ、衝撃的なチャウシェスク政権の崩壊の映像(大統領夫妻の公開処刑)辺りだろうか。音楽ファンには、近年大人気のタラフ・ドゥ・ハイドゥークスやファンファーレ・チョカリーアなど、ロマのラウタール達の快演が最大のトピックだろう。伝統音楽では70年代から国内LPも発売されていたゲオルゲ・ザンフィルが最も有名だったと思われるが、エレクトに残されていた彼の音源は、80年代位から「ゲオルゲ」を改め「ジョルジュ」と名乗るようになったザンフィル本人が権利を買い取ったのか、現在のリストにはないようだ。今回のコンピレーションには70年代にLPで聞き覚えのあるザンフィルの演奏が一曲だけ含まれている。「ひばり」や葬送歌「ボチェッツ」のような名演が目白押しだったので、単独盤がないのは惜しまれる。フランスのArionからも彼のアルバムが出ているが、曲目やテイクは異なる。

※ラウタール=プロまたはセミプロの楽士を指し、勿論ロマだけではなくルーマニア人も多い。結婚式など宴会に雇われ、宴を盛り上げる。複数形はラウター リ。語源的には リュート系弦楽器のラウタ等に由来。この系統のルーマニアの弦楽器ではコブザが有名で、ウードやマンドリンは親戚楽器にあたる。

 エリック・サティのピアノ曲「グノシェンヌ」にはルーマニア音楽からの影響があることは有名だが、あの曲のようにエキゾチックで独特な音階は多い。この地でも盛んにフィールドワークを行ったハンガリーの大作曲家バルトークのピアノ曲「6つのルーマニア民族舞曲」の中の数曲は、80年代京都のインディーズ・バンド、アフター・ディナーのHACOが詩を付けて歌っていた。これは一度聞けば忘れられない、哀愁に彩られた名旋律である。
 ルーマニア音楽の猛スピード振りは昔からつとに有名だが、タラフ・ド・ハイドゥークスの初来日の時などは、それを目の当たりで確認できた。ロック・コンサートと見紛う大興奮状態に日本の聴衆を陥れたが、これもあの高速のなせる業だ。ルーマニア音楽でこんなに盛り上がるなんて一昔前では考えられない、というのが私の第一印象だった。それにルーマニア音楽独特の歌心の素晴らしさ。これで日本の聴衆も参ってしまったのではないだろうか。
 タラフ・ドゥ・ハイドゥークスはルーマニア南部ワラキアはクレジャニ村のグループ。Ocoraに故ニコラエ・ネアクシュ他、タラフ以前のオールド世代の妙技を捉えた素晴らしい録音があって、タラフ以前から抜きん出た存在であったことを証明している。しかし、それぞれの地方には郷土色豊かなラウタールたちが五万といる。それぞれの異なる趣きを味わってみるには、エレクトレコードの豊富な音源はまたとない宝だ。併せてお薦めしたいのは、ルーマニアのネットテレビで、様々なラウタールたちが入れ替わり立ち代り登場する番組がある。文末をご参照の上、是非ご覧いただければと思う。

 吸血鬼伝説で有名な山岳地帯のトランシルヴァニアは、長らくハンガリー領だったこともあってハンガリー系住民も多く、音源としてはハンガリー盤の方が多いのではと思われる。演奏もベース・ラインの進行など、ハンガリー色が濃くなってくる。モルドヴァにもチャンゴーというハンガリー系少数民族がいるし、黒海沿岸のドブロジャ地方にはバルカン半島南部(マケドニアやアルバニアなど)からの移民アルマニアンがいて、やはり独自の音楽文化を伝承している。ブカレストには今でもユダヤ劇場(イディッシュ演劇)があるらしい。豊かなフォークロアが残る北トランシルヴァニアのマラムレシュ地方、西部のティミショアラからはハンガリー風の音が聞こえることが多かったように思う。このように、各社レーベルのルーマニア各地の音源も豊富になってきている。音楽においても複雑なモザイク状態をなしていて、とにかく音楽のヴァラエティー豊かな国なのである。上記のようなマイノリティの音源は、エレクトにもあるのではないかと思うのだが。今後のリリースを見守りたい。

 そう言えば、1976年のモントリオール・オリンピック前後にコマネチが床運動で使っていた曲も、ラウタールの演奏や、セルビアのロマ・グループ、ユダヤのクレズマー演奏で聞いたことがある。発見した喜びは今でもありありと覚えているが、まだタラフ達の演奏では聞いたことがない。名手カリウのヴァイオリン演奏などで是非聞いてみたいものだ。また、ファンファーレ・チョカリーアの拠点は、コマネチの故郷、ルーマニア東部のモルドヴァ地方なので、もしかしたらチョカリーアは件の曲もやったのではないかと常々思っている。

 高樹のぶ子の小説「百年の預言」で一躍日本でも有名になった、ポルンベスク(Porumbescu)作曲のバラーダもこのレーベルの音源に存在する。 ヴァイオリンとオーケストラの一種の哀歌で、ルーマニアの愛国歌のような位置にある曲。その哀切極まりない美しさは忘れられない。ヴァイオリニスト天満敦 子の演奏で日本では知られているが、70年代にルーマニアの女流ヴァイオリニスト、シルヴィア・マルコヴィッチが来日した際、TVで演奏していた。89年 のルーマニア革命の頃、この曲が入った盤がエレクトから出ていたが、最近また手に入るようになっている。

 さて、ネットTVのTELEVIZIUNEA ROMANA(略してTVR)だが、ライヴ放送もあるが、その中のTezaur Folcloric(民謡の宝石)やPatrimoniu Etno Folcloric(終了した模様)のような伝統音楽番組が録画されていて、ストリーミングで一週間見られるようになっている。1時間から1時間半の番組が、毎週2つくらいアップされている。ブロードバンド環境なら視聴可能なので、ご興味のある方には是非お薦めしたい。かなり興味がある人でも、お腹一杯になりそうなヴォリュームではあるが。往年の名歌手マリア・タナセの貴重映像を見かけたこともあった。

TELEVIZIUNEA ROMANA - TVR トップページ
http://www.tvr.ro/
ビデオ・アーカイヴのページ → ライヴ・テレビのページに変っていました。
http://www.tvr.ro/webcast/inregistrari.php

Tezaur Folcloricの新しいビデオ・アーカイヴ・ページ
http://www.tvr.ro/emisiune.php?id=669

以上は「ベスト・オブ・ルーマニアン・フォーク・ミュージック」(ビーンズ)の拙稿ライナーノーツからの抜粋

その他のCDは以下をご参照下さい。
http://homepage1.nifty.com/zeami/m-tor-hunrom.html

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