ハンガリー音楽の18回目になります。前回前々回に続きまして、「Listen, My Hungarians: A Survey of Hungarian Folk Music」と言うハンガリー民謡を概観する2枚組からまだ取り上げてなかった音源をおかけします。今回は2枚目のエルデーイ~ブコヴィナとジメシュ~モルドヴァ編です。
音源は仏Chant du mondeの「トランシルヴァニアの弦楽四重奏」、仏Ocoraの「トランシルヴァニアの真の伝統(La Vraie Tradition de Transylvanie)」、仏Addaの「トランシルヴァニア(ハンガリー語でエルデーイ)のフォーク・ミュージック」、英ARCの「Ana Hossu & Friends / トランシルヴァニアの歌と踊り」の4枚です。
アッダのErdélyi népzeneと言う盤ですが、この盤の正式なタイトルは、Traditions of the Hungarian minorities of Romaniaです。まず1曲目のモルダヴィアのチャンゴーの独唱をおかけします。Fabian Evaの歌唱で、ルーマニア東部モルダヴィアのハンガリー系少数民族チャンゴーの哀歌です。モルダヴィアですから場所は違いますが、ハンガリー系と言うことで一緒に入っているようです。インパクトの強い極めて印象的な歌唱です。
<3 Joc de-nceput din Berinta (Dance from Berinta) 1分31秒>
<22 Dealu' de la Baiut (The hills of Baiut) 2分>
Ocoraから1989年に出た「トランシルヴァニアの真の伝統」は、地味な音源ではありますが、「真の伝統」と言う名の通り、最も泥臭い音楽が集められています。録音場所はマラムレシュが目立つようですが、クルージュの音源もあります。曲名から見てルーマニア系がほとんどのようです。
1曲目のJoc Batrinescの演奏者はIon Covaci, Neculai Covaci, Gheorghe Covaciとありますので、前に取り上げたムジカーシュの「トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽」に出ていたロマ・フィドラーのゲオルゲ・コヴァチではと思います。ハンニバル盤だけではなかったという事で、これは貴重な録音だと思います。
<1 Joc Batrinesc 2分3秒>
続いて不思議な装飾の入る女性と男性の独唱2曲が注目の音源ですが、その間に声とのダブルトーンになっている縦笛ティリンカの吹奏が入ります。このタイプの独唱はバルトークによってHora Lungaと記述され、マラムレシュではCintec cu noduriと呼ばれるそうです。3曲続けてどうぞ。
<2 Cinta, Cuce,Cind Ti-Id Duce 2分19秒>
<3 Din Zori De Zi Si Joc Bárbatesc 1分51秒>
<4 In Virfutu Nucului 2分4秒>
では最後に「トランシルヴァニアの弦楽四重奏」から、4曲目のSuite De Danses De La Vallee Du Chioarを時間まで聞きながら今回はお別れです。弦楽四重奏と言っても、西洋クラシックのヴァイオリン2本、ヴィオラ、チェロの編成ではなく、通常のヴァイオリンと3弦ヴァイオリンとヴィオラ、コントラバスがほとんどで、伴奏のヴァイオリンとヴィオラは変則調弦だと思います。
1曲目は、ハンガリーで取り上げる予定のHungarotonの「エチェル村の結婚式」と同じ曲がありますので併せてかけたいと思います。
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