チェロ

2022年9月29日 (木)

オーヤン・ナナのポッパー / ハンガリー狂詩曲

ナナさんのCD&DVDは2016年リリースですが、YouTubeもありました。ライブ映像もありましたので、一本目に入れておきます。この曲も19世紀に沢山書かれたチャールダーシュの一つ。まだ楽譜を見たことがないので、見てみたいものです。(以下放送原稿を再度)

イェネー・フバイの室内楽演奏のパートナーであるチェリストのダヴィッド・ポッパー(1843-1913)は作曲家としても有名で、チェロの優れた難度の高いエチュードを沢山残していて、私もいくつか取り組んだことがあります。彼の一番有名な作品と言えば、リストの曲と同じ曲名ですが、やはりハンガリー狂詩曲でしょう。彼はユダヤ系チェコ人のオーストリア=ハンガリー二重帝国のチェロ奏者・作曲家で、このプロフィール自体が当時の複雑な国際情勢を表していると思います。演奏は日本の歌手、欧陽菲菲(オーヤン・フィーフィー)の姪に当たる欧陽娜娜(Nana)のチェロと、ピアノ伴奏はティエンリン・チャンです。

歐陽娜娜 Nana Ou Yang(12) Popper:Hungarian Rhapsody op.68 Concerto with Orchestra Feb.3,2013

<11 Nana & T.L 藍子庭 / ハンガリー狂詩曲 作品68 8分23秒>

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2022年9月26日 (月)

イェネー・フバイとダヴィッド・ポッパー

ゼアミdeワールド328回目の放送、日曜夜10時にありました。28日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日の動画はフバイの「バラトン湖の波の上で」の自作自演とジェルジ・ラカトシュ&ジプシー楽団の2本です。記憶違いでロビー・ラカトシュの叔父はシャーンドル・ラカトシュだったので、ジェルジとロビーの続柄を調べておきます。

ハンガリー音楽の9回目になります。今回はハンガリーのクラシック音楽のヴァイオリニストのイェネー・フバイ(1858-1937)とチェリストのダヴィッド・ポッパーの曲を取り上げます。

イェネー・フバイと言えば、ブラームスとの関係が深かった19世紀の大ヴァイオリニスト、ヨーゼフ・ヨアヒムから教えを受けたこととか、20世紀前半の大ヴァイオリニスト、ヨゼフ・シゲティや、後に指揮者に転向したユージン・オーマンディにヴァイオリンを教えたこと、チェリストのダヴィッド・ポッパーが室内楽演奏のパートナーだったことなどが有名です。ヴァイオリニストとしてのフバイは、ブラームスやフランコ・ベルギー派ヴァイオリンの巨匠ヴュータンから称賛を受けていました。
このようにクラシック音楽の中心にいながらも、フバイの作品にはハンガリーの民族色を出した曲もありまして、6年ほど前にライコー・ヤング・ジプシー楽団の演奏で、ハンガリーで一番大きなバラトン湖をテーマにした「バラトン湖の波の上で」と言う曲をかけました。この曲もジプシー楽団がよく取り上げる曲で、ラッサンの部分に当る哀愁の名旋律に始まり、後半はフリスカの急速な部分に当たりますから、これもチャールダーシュ的な作品と見て良いと思います。
今回はこの曲をクラシックの演奏とジプシー楽団の演奏の2つを続けておかけします。最初はイェネー・フバイの自作自演でピアノ伴奏はオットー・ヘルツ、2曲目はロビー・ラカトシュの叔父に当たるジェルジ・ラカトシュと彼のジプシー楽団による演奏です。Souvenir from the Hortobágyに入っています。

<イェネー・フバイ & Otto Herz  Scènes de la csárda No. 5 "Hullámzó Balaton", Op. 33 (Version for Violin & Piano) 5分41秒>

<György Lakatos and His Gipsy Band / Souvenir from the Hortobágy ~On the waves of lake Balaton 6分12秒>

フバイの室内楽演奏のパートナーであるチェリストのダヴィッド・ポッパー(1843-1913)は作曲家としても有名で、チェロの優れた難度の高いエチュードを沢山残していて、私もいくつか取り組んだことがあります。彼の一番有名な作品と言えば、リストの曲と同じ曲名ですが、やはりハンガリー狂詩曲でしょう。彼はユダヤ系チェコ人のオーストリア=ハンガリー二重帝国のチェロ奏者・作曲家で、このプロフィール自体が当時の複雑な国際情勢を表していると思います。演奏は日本の歌手、欧陽菲菲の姪に当たる欧陽娜娜(Nana)のチェロと、ピアノ伴奏はティエンリン・チャンです。

<11 Nana & T.L 藍子庭 / ハンガリー狂詩曲 作品68 8分23秒>

SymposiumのGreat Violinists, Vol. 1と言う1903-1944年の歴史的録音の中に、ヨーゼフ・ヨアヒム, サラサーテ, レオポルド・アウアー, ウジェーヌ・イザイ, イェネー・フバイ, カール・フレッシュ, フリッツ・クライスラーなど19世紀のヴァイオリンの巨匠達の演奏が入っていまして、その中に先ほどの「バラトン湖の波の上で」と組曲を成しているScenes de la Csarda(酒場の情景) No. 12, Op. 83, "Pici tubiczam" (My Little Pigeon 私の小さな鳩) (version for violin and orchestra)と言う曲が入っています。「バラトン湖の波の上で」がこの組曲の5番です。Symposium Recordsの現物が手元にないため、確かではありませんが、おそらくイェネー・フバイ自身の録音のようです。この曲を時間まで聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Scenes de la Csarda No. 12, Op. 83, "Pici tubiczam" (My Little Pigeon) (version for violin and orchestra) 8分14秒>

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2021年11月 4日 (木)

イムレ・カールマンのコダーイ無伴奏チェロ

コダーイの無伴奏チェロ・ソナタは、何故か1楽章だけ見られるのが少ないようで、この曲を一躍有名にしたヤーノシュ・シュタルケルの1楽章もないようですし、イムレ・カールマンさんの映像も3楽章のみのようです。仕方ないのでイムレさんの3楽章を一本目に、2本目は現代フランスの名手ゴーティエ・カプソンの1楽章冒頭、3本目は例のイムレ・カールマンさんのバッハのシャコンヌです。ジャンルは違いますが、旧ユーゴのハンガリー系弦楽器名人、イムレさんとライコー・フェリックスに共通するのは、心を打つ激しさと悲しみでしょうか。それはディアスポラのハンガリー人だからなのでしょうか?(以下放送原稿を再度)

では最後に先ほど名前が出たユーゴ側のハンガリー系音楽家、チェリストのイムレ・カールマンが演奏するハンガリーの大作曲家ゾルタン・コダーイの無伴奏チェロソナタを時間まで聞きながら今回はお別れです。ハンガリーの民族舞曲ヴェルブンコシュなどの様式を踏まえた30分を越える大曲ですので、おかけできるのは冒頭の一部です。ヨーヨー・マによる演奏で、第1楽章がサントリーローヤルのCM曲として使用されたので、聞き覚えのある方もいらっしゃるのではと思います。
10年以上前にイムレ・カールマンがチェロで弾くJ.S.バッハの無伴奏ヴァイオリンのパルティータ2番のシャコンヌのYouTubeをゼアミブログで特集したことがありますが、その記事を見た沖縄のイムレさんのお知り合いの方からこのハンガリー盤を頂きました。シャコンヌを元の調で弾く程の名手ですから、コダーイのこの難曲も楽々弾いているように聞こえます。

Imre Kalman - Kodály Cello Solo Sonata op. 8, III Mvt

Gautier Capuçon plays Kodaly: Sonata for Solo Cello, Op. 8: I. Allegro maestoso ma appassionato

Kalman Imre Cello Johann Sebastian Bach: Chaconne part 1

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2021年11月 1日 (月)

ボバン・マルコヴィチとライコー・フェリックスの共演 他

ゼアミdeワールド283回目の放送、日曜夜10時にありました。3日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はボバン・マルコヴィチ・オーケスターとライコー・フェリックスの共演のみにしておきます。放送でかけたCrni Vozと、46分の共演映像も。生映像を一本目に入れておきます。

セルビアの音楽の5回目です。まずは前回予告していたボバン・マルコヴィチ・オーケスターのSrce Cigansko(ジプシーの心)から、セルビア北部ヴォイヴォディナ出身のハンガリー系超絶ヴァイオリニスト、ライコー・フェリックスと共演したCrni Voz (feat. Lajkó Félix)からおかけします。ライコー・フェリックスはハンガリー盤が多いので、てっきりハンガリー在住だと思っていて、今回初めてヴォイヴォディナのハンガリー系の人と知りました。ユーゴ側のハンガリー系音楽家と言えば、チェリストのイムレ・カールマンもそうで、弦楽器名人が目立つように思います。ブラスの強烈な音に負けないヴァイオリンを聞かせるのは、彼くらいかも知れません。タイトルのCrni Vozの意味は、「黒い電車」だと思います。2+2+2+3の9拍子ですから、チョチェクの一種ではと思います。

Boban Marković Orkestar feat. Lajkó Félix

<Boban Marković Orkestar / Srce Cigansko (feat. Lajkó Félix) ~Crni Voz 8分51秒>

ここ数回セルビアのロマ音楽を中心に聞いてきましたが、一般のセルビアの民族音楽の音源からも探してみました。旧ユーゴに入って何度か出てきたフランスのプラヤサウンドの「Chants & Danses De Yougoslavie (Yugoslavian Songs & Dances)」から、アンサンブル・ラキアの演奏で2曲続けます。ユーゴスラヴィアが一つの国だった頃の音源で、Ljiljanino KoloとSestorkaの2曲です。アコーディオンと裏打ちリズムを刻むギターによるコロは典型的なユーゴの旋律を奏でていますが、ユダヤの速いホラにもそっくりです。Sestorkaもテンポは速いですが、ヴァイオリンと笛のメロディはバルカンど真ん中のイメージです。

<Ensemble "Rakija" / Ljiljanino Kolo (Servia) 2分24秒>
<Ensemble "Rakija" / Sestorka (Servia) 1分53秒>

次の「ブランコ・クルスマノヴィッチ・グループ/セルビア&モンテネグロの音楽」と言うイギリスARC盤は、この二つの国が一つだった2005年に出たので、一緒に入っています。現物が手元に残ってないので、どの曲がセルビアとモンテネグロのどちらになるのか不明ですが、一曲目は一番華やかですし、おそらくセルビアだろうと思って取り上げました。1950年代からメンバーチェンジをしながら活動を続けている現地のトップグループだそうです。
タイトルのVlaske igreは、セルビア語の翻訳にかけると、「ヴラフ人のゲームあるいは演奏」と出てきました。「演奏する」や「遊ぶ」はロシア語でもイグラーチなので、またもやそっくりです。吸血鬼伝説だけでなく諸々のセルビアとルーマニアの文化を繋ぐ民族として、ラテン系の少数民族ヴラフ人は捉えられているのではと思いますが、この音楽もどちらにも似ています。

<Branko Krsmanovic Group / Music of Serbia & Montenegro ~Vlaske igre 5分28秒>

では最後に先ほど名前が出たユーゴ側のハンガリー系音楽家、チェリストのイムレ・カールマンが演奏するハンガリーの大作曲家ゾルタン・コダーイの無伴奏チェロソナタを時間まで聞きながら今回はお別れです。ハンガリーの民族舞曲ヴェルブンコシュなどの様式を踏まえた30分を越える大曲ですので、おかけできるのは冒頭の一部です。ヨーヨー・マによる演奏で、第1楽章がサントリーローヤルのCM曲として使用されたので、聞き覚えのある方もいらっしゃるのではと思います。
10年以上前にイムレ・カールマンがチェロで弾くJ.S.バッハの無伴奏ヴァイオリンのパルティータ2番のシャコンヌのYouTubeをゼアミブログで特集したことがありますが、その記事を見た沖縄のイムレさんのお知り合いの方からこのハンガリー盤を頂きました。シャコンヌを元の調で弾く程の名手ですから、コダーイのこの難曲も楽々弾いているように聞こえます。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Imre Kalman / Music for Solo Cello ~Kodaly / Solo Sonata for Cello 30分10秒>

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2021年10月14日 (木)

ホラ・スタッカートとワン・ボウ・スタッカート

ルーマニア・ロマのパンフルート名人アンゲルシュ・ディニクが19世紀に作ったとされる「ひばり」の話が出たので、彼の孫グリゴラシュ・ディニクが作ったホラ・スタッカートについて少し見ておきます。ひばりが出たらホラ・スタッカートも取り上げないと片手落ちでしょう。(前にも何度か書いたかも知れません)
ひばり(Ciocârlia)はロマなどのラウタルの演奏以外に、ルーマニアの大作曲家エネスコ(ジョルジェ・エネスク)がルーマニア狂詩曲第1番に引用されて広く知られるようになったと思いますが、ホラ・スタッカートは往年の名ヴァイオリニスト、ヤッシャ・ハイフェッツの編曲でヴァイオリンのピースとしてよく知られています。ハイフェッツの編曲で特筆されるのは、一弓で多くは32個ほどの音をスタッカートで鳴らすワン・ボウ・スタッカートの指定があることで、アップ(上げ弓)でもダウン(下げ弓)でも出てくるので、ヴァイオリン奏者を悩ませるところかと思います。かくいう私も80年代から楽譜は持っていますが、ワン・ボウでうまく飛んだことはありません。この曲をチェロで弾いたのがアメリカの名手、故リン・ハーレルで、1984年頃TVで見て度肝を抜かれたものです。アップでもダウンでもニコニコしながら弾いていました。 
ホラ・スタッカートは現在のラウタル(ルーマニアの職業楽師)もよく弾いているようで、持っているルーマニアElectrecordのLPに入っていますが、ワン・ボウで弾いているかどうかは、音だけですので確認できていません。合奏の場合、ワン・ボウでは合わないのではと推測します。一方、ひばりですが、エネスコの曲以外ではクラシックの演奏家が弾いているのは、ほとんど聞いた記憶がありません。即興性が重視される曲なので、困難なのでしょうか。
1本目がハイフェッツの有名な動画。2本目は何とディニクの演奏ですが、ワン・ボウではなく1つずつ切って弾いています。3本目は往年の名女流ジネット・ヌヴーで、これもおそらくワン・ボウでしょう。4本目は現代の名手ジェームス・エーネス。さすが完璧なワン・ボウ・スタッカートを披露しています。リン・ハーレルもありました! 5本目です。

Jascha Heifetz plays Hora Staccato

Grigoras Dinicu - Recital

Ginette Neveu / Dinicu:Hora Staccato

Hora staccato Antonio Stradivari, 1713 'Baron d'Assgnies'

Hora Staccato: Lynn Harrell & Brooks Smith

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2021年8月 4日 (水)

2CELLOSのリパ・モヤ

旧ユーゴ出身の2CELLOSと、クロアチアの歌手Oliver Dragojevicが共演し、リパ・モヤを演奏している映像がありました。改めてこの曲が彼の地でどういう位置にある歌か気になります。スーパーチェロデュオとして人気の2CELLOSは、ルカ・スーリッチ(Luka Šulić)がスロヴェニア出身、ステファン・ハウザー(Stjepan Hauser)はクロアチア出身です。
月曜にリパ・モヤのおそらく最も有名な歌唱と思われるクラパ・ツァンビの歌唱を上げました。前後して旧マイ・チェロの画像をFBに上げたので、クラパ・ツァンビの動画を入れた270回目の放送原稿を見た方がFBでは少なかったかも知れませんので、再度2本目に入れておきます。クラパ歌謡とこの歌については、月曜の投稿をご覧下さい。

Oliver Dragojevic & 2CELLOS - Lipa Moja

Lipa moja - klapa Cambi - Proglašenje pobjednika FDK 2000

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2020年2月21日 (金)

「トラキアの音楽」プロジェクト

カルシラマもあればと思いましたが、youtubeはないようですので、ハサピコのライブバージョンと、おそらくその同じ時のライブの全映像を上げておきます。日本にも2016年に「トラキアの音楽」プロジェクトで来日して大好評だったようですが、地方にいると全く疎くなっていて知りませんでした。チェロもトンバクもいじる者としては、大変に残念です。特にケラスの妙技を見てみたかったです。
昨日のブログに一つ訂正があります。ハサピコのルーツが11世紀以前に辿れると書きましたが、コンスタンティノープルだけは15世紀にオスマン帝国によって征服されるまではビザンツ帝国(東ローマ帝国)が死守していたので、15世紀まで可能性はありました。が、ハサピコのルーツとしては「中世」と明記されているので、やはり11世紀以前だろうと思われます。

Música mediterrânica - Socrates Sinopoulos, com Jean-Guihen Queyras


28/09/2012: ARTE Concert (Jean-Guihen Queyras, Σωκράτης Σινόπουλος, Bijan & Keyvan Chemirani)

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2020年2月17日 (月)

トラキアの伝統音楽(THRACE - Sunday Morning Sessions)

ゼアミdeワールド200回目の放送、日曜夜にありました。19日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今日はとりあえずプロモーション映像(だと思います)だけ上げておきます。

トルコの17回目になります。記念すべき200回目と言うことで、今回はトルコ周辺の音楽で最近特に驚いた一枚をご紹介したいと思います。
世界的名チェリスト、ジャン=ギアン・ケラスがイランやギリシアの音楽家と共演した「トラキアの伝統音楽(THRACE - Sunday Morning Sessions)」と言う盤ですが、似たようなアプローチで思い出すのは、NHKの新シルクロードでお馴染みのヨーヨー・マとシルクロード・アンサンブルで、クラシックの音楽家で非西洋の音楽に目を向けるのは、今回もチェリストだったという印象を強く持ちました。

ジャン=ギアン・ケラス(Jean-Guihen Queyras)は、カナダのモントリオール出身でフランスのチェリストです。フランスの現代作曲家ピエール・ブーレーズが創設したアンサンブル・アンテルコンタンポランの首席チェロ奏者を1990年から2001年まで務め、バッハなどバロックの作品から現代作品までの名演を数多く残しています。

共演しているのは、ペルシア音楽だけでなく東地中海諸国の伝統音楽とコラボを重ねている、イランのトンバクとダフの奏者ケイヴァン・シェミラーニ、ビジャン・シェミラーニの兄弟と、偶然にも前回取り上げたギリシアのリラ奏者ソクラテス・シノプーロスも参加しています。

まずは、チェロとトンバクの重厚な音色がよくマッチしている2曲目のNihavent Semaiをおかけします。旋法名になっているニハーヴェントは、ササン朝ペルシアがアラブに敗れた古代イランの地名として名高く、それがオスマン古典音楽の楽曲形式サズ・セマーイと結びついた、悲しくも美しい旋律を聞かせる曲です。

<2 Nihavent Semai 7分9秒>

Thrace - Sunday Morning Sessions inaugura temporada musical 2016/17 na Gulbenkian


トラキアと言うのは、バルカン半島南東部の歴史的地域名で、現在は3か国に分断され、西トラキアがブルガリアの南東部とギリシア北東部の一部に、東トラキアがトルコのヨーロッパ部分になっています。いずれもオスマン帝国の版図に入っていましたから、今回取り上げるのはとてもタイムリーなように思います。

ユダヤのクレズマーに似ているギリシアの舞踊ハサピコは今回初登場ですが、ギリシアのカルシラマースと関係のあるトルコのカルシラーマの話は先週出たばかりです。こういう舞曲がトラキアの土地ととても関係が深いため、アルバムタイトルが「トラキア」になったようです。その2曲ハサピコとカルシラーマという曲がありますので、続けておかけします。

<10 Hasapiko 5分57秒>

<11 Karsilama 3分15秒>

トラキア周辺は古代においてはギリシアとペルシアが争っていた辺りで、現在もヨーロッパとアジアの接点に位置します。世界でも稀なほど複雑で洗練された奏法と重厚な音色が特徴のトンバクは、現代トンバク奏法の父、ホセイン・テヘラーニの意思を継ぐ一人、ジャムシド・シェミラーニとその息子ケイヴァン・シェミラーニ、ビジャン・シェミラーニの二人がメインストリームにいると言っていいと思います。少し和太鼓にも似て聞こえるこの片面太鼓の音は、東地中海諸国の様々な伝統音楽に上手く溶け込み、この盤以外にも注目作を連発してきました。

余談ですが、ゼアミdeワールドのテーマ曲として最初にかけているアブドルワハブ・シャヒーディーの曲の冒頭に出てくるのが、ホセイン・テヘラーニのトンバクです。実は95年にイラン人の先生から少し教わったことがあるので、トンバクの難しさと素晴らしさはよく知っているつもりです。

4曲目のZarbi é Shustariではトンバクが華々しく古典的フレーズで伴奏しますが、サントゥールとセタールの名人のモハマド・レザ・ロトフィが書いたと思しきこの曲は、往年のセタールとヴァイオリンの名人アボルハサン・サバーの音楽を思わせるものがあり、ヴァイオリン(ここではリラですが)の演奏は、イランと言うよりトラキア風に聞こえる、と解説にはあります。

<4 Zarbi é Shustari 6分14秒>

では最後にトンバク(あるいはザルブとも)の妙技をじっくり聞ける8曲目のDast é Kyanを時間まで聞きながら、今回はお別れです。「トンバクの神様」ホセイン・テヘラーニの意思を受け継ぐシェミラーニ兄弟による超絶のトンバク・デュオです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<8 Dast é Kyan 7分7秒>

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2020年2月 5日 (水)

チェロ、ヴィオラ、ケメンチェのオスマン・トリオ

メスード・ジェミルのカランからの2枚組は、2枚目では長尺の演奏が並んでいて、その中でサウンド的に一番驚いたのが、放送でラストにかけたタンブーリ・ジェミル・ベイのこのイスファハン旋法のペシュレヴです。メスード・ジェミルのチェロに、ヴィオラ奏者ジェヴデト・チャーラ、ケメンチェ奏者ファヒレ・フェルサンが加わったトリオの演奏は、チェロとヴィオラに高音のケメンチェが合わさることで、冒頭で特に女性が歌っているかのような不思議な音響が生まれています。トルコ音楽特有のメリスマをチェロでどうやって弾いているのか、映像で確認したくなる演奏ですが、さすがに1963年に亡くなっているメスード・ジェミルの生映像はないのでしょう。この1952年の演奏、中間部はチェロのタクシームのようです。(映像はチェロではなくタンブールを構えるメスード・ジェミルです)

Mesut Cemil - İsfahan Peşrev [ Mesut Cemil Arşiv © 2004 Kalan Müzik ]

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2020年1月30日 (木)

チェロのタクシーム

100年前のタンブーリ・ジェミル・ベイやその息子メスード・ジェミルのチェロ演奏を見ることは不可能ですが、現代のトルコのチェリストの映像は結構あります。まず思うのは、「歌の模倣」の面が大きいのだろうということです。メリスマ(こぶし)は、明らかに歌の節を真似ていると思います。器楽奏者の腕前を披露するタクシーム(即興)でも同じでしょう。ポルタメントの多様など西洋の奏法にない柔軟なフィンガリングが見られます。トルコの現代作曲家サイグンなどにもチェロの独奏曲がありますが、こういうオスマン音楽の伝統を踏まえて書かれた曲なのでは。(1枚あるので再確認してみます)
2本目はヒジャーズ旋法に則ったウードとチェロの二重奏で、チェリストはドイツ人のようです。凄腕ですが、現地の演奏家の「歌の模倣」の側面は薄い様に思います。チェロは演奏弦の下に共鳴弦を付けているのが気になります。

mükhemmel çalıyor çello taksim


Hijaz - Maria Magdalena Wiesmaier (cello) and Nabil Hilaneh (oud)

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