ゼアミdeワールド431回目の放送、日曜夜10時にありました。9日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はパッサカリアの方ですが、番組でかけた宮本さんの音源はYouTubeには見当たらないので、高松あいさんの映像で。若手の素晴らしいヴァイオリニストです。
いきなり超絶技巧アンサンブル!【パッサカリア:ヘンデル-ハルヴォルセン(HANDEL・HALVORSEN:Passacaglia)】
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クラシックをまとめて取り上げるのは今回までにして、次回からは東欧の西スラヴから地域別のシリーズに戻る予定です。その中でもスメタナやショパンの曲などクラシックもかけますが。
今回は「死ぬまでに弾きたい曲」として2曲選んでみました。所属している弦楽合奏団では70歳位で引退するメンバーが多いので、そう考えるとあと8年ですから、その間に弾けるかどうかの難曲です。
まずはヘンデル作曲ハルヴォルセン編曲のパッサカリアです。ヘンデルの原曲を作曲家でヴァイオリニストのハルヴォルセンが編曲していますが、ヴァイオリンとヴィオラまたはチェロの技巧を凝らした素晴らしいアレンジの唯一無二の二重奏曲になっています。ヨハン・ハルヴォルセン(Johan Halvorsen, 1864 - 1935)は、ノルウェーの19世紀の作曲家で、ほとんどこの曲の編曲だけがよく知られているようです。元々ヴァイオリンとヴィオラのために書かれていますが、どちらかと言えばヴァイオリンとチェロの編曲の方で広く弾かれていると思います。最初に誰で聞いたか覚えていませんが、これほど美しくかっこいい曲があるのかと衝撃を受けました。古くはハイフェッツとピアティゴルスキーの二重奏もありました。
まずは宮本笑里の音源でおかけしますが、CDは持ってないので、チェロが誰なのか不明でした。艶っぽいヴァイオリンの音色がこの曲にぴったりで、とても気に入っています。
<宮本笑里 / birth ~パッサカリア 6分29秒>
パッサカリアは木曜のチェロメンバーと出来る部分だけ少し合わせてみましたし、簡略版の弦楽四重奏編曲なら何とかなりそうです。難関は後半の速い4オクターブ近いスケールの部分と、フラジオの部分、激烈なエンディング辺りです。パッサカリアはチェロパートも少しさらっています。パッサカリアと言えば、バッハもオルガン曲に名曲「パッサカリアとフーガ ハ短調」を書いていますが、ルーツを辿るとシャコンヌと類似のスペインあるいは南米起源の遅い3拍子の舞曲で、バロック時代に純器楽曲として様式化されています。ウィキペディアには「パッサカリアとチャッコーナ(シャコンヌ)は芸術音楽の領域に取り込まれるようになって、共にオスティナート・バスに基づく3拍子の変奏曲となり、関係が深くなっていった。主にパッサカリアは短調、チャッコーナは長調の定型が用いられた。」とありますから、バッハやヴィタリのシャコンヌは例外と言う事になります。現代音楽ではシェーンベルクの浄夜などと並んで後期ロマン派音楽の最後を飾る、ウェーベルンが書いた名曲パッサカリアがあります。因みに、南米のパサカージェについては、大分前に南米の音楽をゼアミブログで探っている時に取り上げたことがあります。
次に同じパッサカリアを今治でもコンサートがあった男性のデュオ、ツケメンの演奏でおかけします。ヴァイオリンとヴィオラの二重奏です。
<TAIRIKU(TSUKEMEN) / MIZUTANI×TAIRIKU ~パッサカリア (ハルヴォルセン編曲) 6分41秒>
もう一曲はポーランドの名ヴァイオリニスト兼作曲家だったヴィエニャフスキ(1835-1880)が書いたスケルツォ・タランテラと言うピアノ伴奏のヴァイオリン独奏曲です。70年代頃からパールマンがよく弾いていたイメージがありまして、華やかなヴァイオリン技巧を披露する類似のヴィルトゥオーゾ・ピースには前から余り興味はないのですが、この曲については名人芸の中に高い音楽性と歌心が感じられまして、数年前から猛烈に弾きたい曲になりました。D線で朗々と歌うように弾く旋律が最高に美しく、これを弾きたいからと言うのもあります。後半ではその旋律がタランテラの速い部分と絡んでますます面白い展開になります。先で触れる予定の南イタリアの舞曲タランテラもそうですが、この数回で出てきた色々な舞曲が、現代のヨーロッパで継承されているか否かも、今後探ってみようと思っているポイントです。
それではスケルツォ・タランテラを一番有名にしたのではと思われる往年の名手ヤッシャ・ハイフェッツの古い録音でおかけしてから、クラシックに留まらず東欧やアイルランド等の民族音楽の領域にも越境している現代のヴァイオリンの鬼才ジル・アパップの演奏を続けます。ジル・アパップの伴奏は、ピアノではなくアコーディオンです。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<ヤッシャ・ハイフェッツ & Arpád Sándor / The Heifetz Collection (1925 - 1934) - The First Electrical Recordings ~Scherzo - Tarantelle, Op. 16 4分20秒>
<Gilles Apap & The Colors of Invention / No Piano On That One ~Scherzo-Tarantelle 4分52秒>
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