ウラル・アルタイ

2008年4月15日 (火)

ズルヤ

イランに入る前に、アップ漏れしていたユニークな歌手Zulyaのクリップを上げておきます。11月3日にヴォルガ中流域のウラル系の共和国、ウドムルト(旧称ヴォチャーク)の音楽を見ましたが、この国に少数民族としてタタール人もいると書きました。今日のズルヤは、そのウドムルト出身のタタール人女性歌手で、現在はオーストラリアで活動している人。youtubeを探したら何本か見つかりました。アルバムの静止画像ビデオの他に、ライヴもありました。CD情報はこちらで。ロシアの歌や洋楽、ワールドミュージックの様々な要素が感じられますが、その中にタタールらしい5音音階(の長音階)が時折出てきます(今日の3本にはありませんが)。それはモンゴルや中国、更には日本の民謡にも近い印象の旋律です。

Tatar Song Zulya Ay bılbılım! Nightingale

ルーマニア東部ドブロジャ地方のタタールの歌だそうです。どこか日本の「四季の歌」に似て聞こえます。

zulya - insomnia

Zulya and The Children of the Underground

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2008年1月11日 (金)

クリミア・タタールの舞踊

クリミア・タタール関係はビデオが山のようにありますので、もう一日追ってみましょう。
非常に踊りの盛んな民族のようです。コサック・ダンスやユダヤのクレズマーとの類似性もありますが、同じトルコ系だからでしょうか、ウズベクやウイグルの胡旋舞にも似て見えます(特に2本目3本目)。北コーカサスがごく近い割りに、ダゲスタンのチュルク系民族以外とはほとんど類似点がないように思います。
これらの映像は、ロシアのヴォルガ中流域だけでなく、ウクライナ南部もヨーロッパ離れした「アジア性」を内包した土地であることを証明しています。

Ağır Ava ve Qaytarma

変拍子になっていますが、冒頭部分のメロディ、どこかで聞いた覚えがありますが・・・。思い出しましたw  東欧系ユダヤの典礼歌「コル・ニドレ」の一節に似ています。ユダヤ新年のヨム・キプールの時にだけ歌われる歌で、ヨーロッパのクラシック(マックス・ブルッフのチェロ曲「コル・ニドライ」。ドイツ語風にKol Nidreiのeiはアイと発音されます。)にも取り入れられてよく知られています。空似の可能性が高いとは思いますが、面白い類似です。

Tım Tım

kırımtatar milli dansı

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2008年1月10日 (木)

クリミア・タタールの追加

11月6日のタタール特集の時に、クリミア・タタールについても少し触れました。その後色々興味深い映像が見つかりましたので、今日はそれをアップしましょう。昨日のカライムについては、余りに興味深いテーマですので、何か良いサンプルが見つかりましたら、またアップする予定です。11月からバッハとナツメロを除いて、ロシア・マイナーばかり巡っていますが、公平にロシア・メジャーの秀逸ビデオも紹介する予定です。(以下11月の記事のペーストで済みません^^)

Photoクリミア汗国はモンゴルの後継王朝にしてオスマン朝の保護国で、黒海の北部に突き出たクリミア半島(現在はウクライナ領)が中心でした。クリミアについては、前にトルコ音楽の軍人作曲家ガジ・ギレイ・ハーンの時に少し触れました。
首都だったバフチサライ(半島南部にあり、「ヤルタ会談」で有名なヤルタBlack_sea_17cにも近い)にあるハーン宮殿(写真)は、アルハンブラ宮殿(現スペイン)、トプカ プ宮殿(現トルコ)と並ぶ、三大イスラーム建築の一つにも数えられるそうです。踊る女性たちの衣装も煌びやかで優美ですね。音楽はクレズマーとかジャズ風 なアレンジが入っているように聞こえます。第2次大戦中 にナチスに協力した懲罰として、15万人ものクリミア・タタール人が、ウズベクやシベリアに移住させられたそうですが、今でも少数民族としているとか。(左の黒海の地図はWikipediaより)

Kırım Tatar

クリミア・タタールの伝統音楽アンサンブルでしょうか? バルカンのブラス・バンドや、ユダヤのクレズマーに、何と似ていることでしょうか。

Crimean tatar music-5

クリミアのレストランでの観光客向けの演奏か。女性でも朗々とした歌を聞かせる伝統があるのでしょうか。

KIRIM BAHÇESARAY

映像で巡るバフチサライ。美しいイスラーム建築とクリミアの絶景にため息。流れているのは、この地のタタール歌謡か?

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2008年1月 9日 (水)

リトアニアのチュルク系 カライム

ロシアのウラル・アルタイ大シリーズの中のチュルク(トルコ)系シリーズの続編で、今日は5回目です。リトアニアの古都トラカイに多くが住むというカライム人は、その名の通りカライ派のユダヤ教を奉じるチュルク系少数民族。現在の正確な数字は不明ですが、1980年頃でカライム語の話し手が700人ほどしかいなかったようです。そして97年で257人ですから、更に減っていっているようですね。謎に満ちたハザールとからんでくるので、観光の目玉の一つになっているようです。
彼らの起源は、8世紀頃ペルシアに生まれた、タルムードを捨て、旧約聖書のみを取った、特別なユダヤ教団に発しているようです。しかし彼らが話すのは、バシキール語、タタール語、チュヴァシ語などと同じキプチャク系チュルク語で、中世のハザールの言語にも近いそうです。ユダヤ教徒、トルコ系というキーワードが揃っていますので、彼らこそ謎のハザール帝国の生き残りなのかも知れませんが、ペルシア出身なのに何でペルシア系の言葉じゃないのだろうとか謎が謎を呼びます。ハザールには西突厥の末裔(彼らもおそらくトルコ系)も流れ込んだだろうと考えられるので、もしかしたらカライムが彼らを教化し、多数派のチュルク系の言葉を採用した、ということなのでしょうか。カライム語はチュルク系言語ですがヘブライ文字で右から左に書かれるようです。とにかく謎だらけの大変に興味深い少数民族です。
14世紀まではクリミア半島辺りにいたからでしょうか、ビデオで見られる女性の舞踊の衣装は、現在のクリミア・タタールのものに酷似しています。

リンク
http://litabi.com/karaimai.html

Karay Türkleri / Bölüm - 1

Karay Türkleri / Bölüm - 2

John Zorn / MASADA - Karaim

ニューヨークのアヴァンギャルド音楽シーンの中心的存在、ジョン・ゾーンのクレズマー・グループ、マサダの演奏で「カライム」のライヴ演奏。この頃からカライムを入れていたなんて、JZさんやっぱり目を付けるのが早いですねw  DIWからのマサダ10枚シリーズの3枚目(ギメル)に収録されていました。因みに1枚目(アレフ)のライナーノーツは、私Homayunが担当いたしました。94年にジョン・ゾーン本人から依頼を受けての執筆でした。まだ六本木の某店にいた頃のことです。

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2008年1月 8日 (火)

黒海北岸のチュルク系4

11月8日の記事に続いて、黒海北岸のチュルク系4~ガガウズ。大分間に別なシリーズが入りましたので、私自身記憶が薄れましたが、頑張って行きましょう^^
ガウガズと前に書いてしまいましたが、誤りで、Gagauzでした。

ガガウズ人は、主にモルドヴァ共和国(ルーマニアと兄弟民族のラテン系)やウクライナの港町オデッサ辺りに住んでいるチュルク(トルコ)系の少数民族で、イスラームではなくギリシア正教を奉じているため、言葉がトルコ系だと認識されるのが遅れたそうです。人口は30万人ほどとのこと。ルーマニアやブルガリア、カザフスタンにも散らばって住んでいるようです。
民族の起源については諸説あり、キプチャク系の中央アジアから来たチュルク系民族にルーツを求める説もあるようですが、彼らが話す言葉はアナトリアのトルコ語に近く、クリミア・タタールやリトアニア・タタール(カライム)の言葉とは系統が違うようです。

アコーディオンが前面に出た所からは、ロシアに近い印象を持ちますが、バックにはウードやタール、サズなどのイスラーム圏の弦楽器が並び、枠太鼓などの打楽器も西アジア伝来のものです。何よりお聞きの通り、リズムに変拍子が多い所がトルコ系そのものと言っていいように思います。

Gagauz Türküsü - Şefo'nun evi

Gagauz türkücü 'Maria Kısa' : Kalk Mari kız' türküsü

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2007年11月10日 (土)

倍音唱法~モンゴル系

倍音唱法(喉歌)の世界、二日目はモンゴル系のモンゴル、ブリヤート、カルムイク。ついでに韓国もありましたので一緒に載せました。
大揺れの大相撲では、モンゴルやロシア周辺諸国の力士が大活躍。何でこんなに多いのでしょうか。グルジア、ロシア、ウラジカフカス(多分北オセチア?)、ブルガリア、と壮観です。次はカルムイク辺り?w
把瑠都と朝青龍(白鵬でもOKですが)は、国で言えばエストニア対モンゴルですが、これはウラル対アルタイですねww  エストニアはフィン系(ウラル諸語の一つ)ですから。

Mongolian Incredible Throat Singing 呼麦

「草原のチェロ」と形容されたりもした馬頭琴(モリンホール)弾き語りでのモンゴルのホーミー。Humaiという人の演奏ですが、モンゴルらしい大らかで雄大な演奏を聞かせてくれる名手です。

buryat song featuring throat singing

ロシアのバイカル湖周辺(イルクーツクの近く)に住むモンゴル系少数民族のブリヤート族の男性歌手と、モンゴルの馬頭琴奏者のデュオ。ブリヤートといえばInedit盤のようなもっとプリミティヴな歌唱もありますが、それはさすがに見当たりません。

O. Tsahan Zam

ヨーロッパ・ロシア内に存在する唯一のモンゴル系の国カルムイク。カスピ海の北、ヴォルガ河の下流域にあり、カルムイク人は明らかにモンゴル帝国の末裔です。モンゴルから遠く離れたこの地でも、チベット仏教が信奉されているようです。カルムイクの喉歌歌手と言えばまずこの人、オクナ・ツァハン・ザム。欧米盤ではInedit盤に入っていたのが初めてだと思いますが、近年は単独盤が色々出ています。しかし見事な倍音唱法ですね。

판소리 (Throat Singing)

昨日書いたようにシャーマニズムは喉歌のルーツのようですが、韓国でも国楽(日本の雅楽のルーツ)、農楽(サムルノリは有名)と並んで巫楽(ふがく)というジャンルがあって、そこでは現在でもエネルギッシュなシャーマニズムが息づいています。確かに浪曲のような喉を絞るような歌い方からは、倍音が豊富に出てくると思います。しかし、このビデオどこに喉声が出ているか、よく分かりませんね。

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2007年11月 9日 (金)

倍音唱法~チベットとアルタイ系

長期化してきましたウラル・アルタイ・シリーズの一環として、昨日はバシキールのビデオをアップしたのに、肝心のウズリャウが聞けませんでした。
これじゃ不完全燃焼だなぁと思いまして、今日と明日は倍音の世界を巡ってみましょう。
まずは、チベットとロシア連邦のアルタイ系(正確にはその中のチュルク系ですが)のトゥヴァ、アルタイ、シベリア。アルタイは、語族の名前そのものの国名。
超自然的とも思われる超絶技巧の倍音唱法が見られるのは、シャーマニズム、チベット仏教(ラマ教)の広まった所が多く、民族で言えばチュルク系とモンゴル系がほとんどではないかと思われます。

Tibetan Throat Singing

倍音唱法のルーツはチベットだったりするのでしょうか。謎です。モンゴル、トゥヴァ、カルムイクはチベット仏教を受け入れている国ですし。チベットの亡命政府がある南インドはダラムサラでの演奏。この低音の世界は、いずれまた再訪すると思います。蛇足ながらチベットはアルタイ系ではありませんので。数日前の語族地図を参照下さい。

Tuvan Throat Singing

既にビッグネームのHuun Huur-Tu他沢山ありますが、現地の雄大な大自然の中で演じられるこのビデオを選んでみました。トゥヴァのホーメイはモンゴルのホーミーより野性味に溢れ、テクニックも多彩。

Altai Kai Throat Singing

Amyr Akchinがアコーディオンを弾き語り。アルタイ共和国の倍音唱法はカイと言います。どこかロシア的なフレーヴァーが感じられる気がします。

Bolot Bairyshev

既に何度も来日公演しているアルタイ共和国の名手ボロット・バイルシェフ。この人の声はCDでしか聞いていませんが、一聴してぶっ飛びました。 トゥヴァやモンゴルにない哀愁味があって良いですね。本人の動画がなくて残念です。

Throat Singing Siberians

これはサハ辺りか? 後ろの流氷から察するに、トゥヴァではないような気がします。素朴な普通の青年がこんな声を出すと、たまげ(驚き)ますw  いてつく環境の厳しさと無縁ではないのでしょう。

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2007年11月 8日 (木)

ロシアのチュルク系3~バシキール

ロシアのチュルク系、3日目はバシキール(国名はバシュコルトスタン)の音楽。タタールスタンの東に位置し、ウラル山脈の中部にあります。タタールよりも言葉、音楽ともモンゴルの影響が色濃いようです。youtubeには馬とカラオケが何故か多く(やはり元騎馬民族のチュルク系ゆえ?)、伝統音楽はほとんどありません。今ではバシキール人は住民の中で少数派になっているようです。

バシキールといえば、倍音唱法のウズリャウ(Uzlyau)が何といっても有名。モンゴルのホーミーやトゥヴァのホーメイとも少し味わいの異なる歌唱です。オランダのPanからCDも2枚出ていました。以下のビデオ、一本目は笛を吹きながらのUzlyauか。笛と声の一人2重唱?には倍音が豊かに感じられます。倍音唱法がある所は大体口琴も盛んなようです。(逆は違うように思いますが) 2本目はバシキールだけではありませんが、ロシア連邦中心に世界中の口琴の映像が出てきます。

Marsel Gutiyev Performansı

Varganautica #1. About Vargan (Jew's Harp). Weird facts

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2007年11月 7日 (水)

ロシアのチュルク系2~チュヴァシ

今日はアルタイ系2の予定でしたが、ブランチで表記した方が系統がはっきりするので、チュルク(トルコ)系2、としました。
チュヴァシ人の祖先は、中世にヴォルガ・ブルガール国を築いたトルコ系の遊牧民ブルガール人と考えられています。その名の通り、ブルガリアの国名の由来にもなっていますし、ユダヤのクレズマー音楽の形式の一つにこの名が見えるのは興味深いです(Odessa Bulgar等)。
ブルガール人の一派は7世紀に現在のブルガリアに侵攻し、スラヴ系の人々を支配下に置きましたが、少数派のブルガールは混血・同化し、ブルガリアが形成されて行きました。ヴォルガ・ブルガール国は、7~13世紀にヴォルガ河とカマ川の合流点に存在し、現在も大体その辺りにあります。タタールスタン、モルドヴィン、マリの間くらいです。
ヴォルガ・ブルガールは、支配者層がユダヤ教に改宗したことで有名なハザール国(7~10世紀)に一度滅ぼされた国ですが、ハザールの滅亡後、また勢力を盛り返したようです。トルコ系のハザール人は、アシュケナージ(東欧)系ユダヤ人の祖先説もあったりしますが、ハザールでユダヤ教に改宗したのは支配者層が中心で、一般住民はムスリムが多かったこと、ポーランド~リトアニアでのユダヤ人増加まで何世紀も開いていることなどから、懐疑論の見方が多いようです。私もそちらの意見です。若干はハザール遺民から東欧系ユダヤ人へも流れ込んだでしょうが。

さて前置きが長くなりましたが、そんなチュヴァシの踊りのビデオを2本。一本目は伝統的ですがロシア的、2本目はポップアレンジですがチュルク的です。

Chuvash dance / Căvash tasshi

Çuvaşça şarkı: Çiçek verecektim - Cecek parăttăm

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2007年11月 6日 (火)

アルタイ系1~タタール2

タタールの2回目は、ビデオを中心に。チュルク系とタタールについての概説は昨日の記事をご覧下さい。
1本目はクリミア・タタールの伝統舞踊の映像。クリミア汗国はモンゴルの後継王朝にしてオスマン朝の保護国で、黒海の北部に突き出たクリミア半島(現在はウクライナ領)が中心でした。クリミアについては、前にトルコ音楽の軍人作曲家ガジ・ギレイ・ハーンの時に少し触れました。
Photo 首都だったバフチサライ(半島南部にあり、「ヤルタ会談」で有名なヤルタにも近い)にあるハーン宮殿(写真)は、アルハンブラ宮殿(現スペイン)、トプカプ宮殿(現トルコ)と並ぶ、三大イスラーム建築の一つにも数えられるそうです。踊る女性たちの衣装も煌びやかで優美ですね。音楽はクレズマーとかジャズ風なアレンジが入っているように聞こえます。第2次大戦中Black_sea_17c にナチスに協力した懲罰として、15万人ものクリミア・タタール人が、ウズベクやシベリアに移住させられたそうですが、今でも少数民族としているとか。クリミアは、とても行ってみたい所の一つです。(左の黒海の地図はWikipediaより)

Crimean Tatar Dance

2本目は今年の5月に横浜で開かれたタタール音楽コンサートの模様。歌あり踊りありの華やかなステージです。ウイグル伝統音楽のコンサートが前に横浜でありましたが、もしかしたらその繋がりかも。中国西部のウイグルに似た所(同じチュルク系だから当然ですが)、ロシア化した所、色々見えて興味深いです。

"Saidash" Tatar Dance Theatre-Yokohama-Japan,2007

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2007年11月 5日 (月)

アルタイ系1~タタール1

今日からロシア連邦のアルタイ系民族の世界を巡ります。初回はチュルク(トルコ)系のタタールスタン。
バルトークとコダーイの音楽から入って、ハンガリー民謡のルーツを求めてヴォルガ河を巡っていましたので、その周辺のタタール、バシキール、チュヴァシだけにする予定でしたが、アゼルバイジャンとトゥヴァなどにも寄り道してみようと思います。中央アジアのトルコ系(ウズベク、カザフ、キルギス、トルクメン)まで入れるときりがないので、またの機会にします^^
2 青=アルタイ系、薄黄色=ウラル系、緑=インド・ヨーロッパ系、黄色=シナ・チベット系、オレンジ=セム・ハム系、赤=コーカサス諸語、ベージュ=古アジア諸語、臙脂=ドラヴィダ諸語
 「世界の言語」(大修館書店)より

アルタイ諸語の民族がいる所は地図の通り、ユーラシア大陸の北東部からトルコ共和国にかけて斜めに横断しています。現在のモンゴル以外はほとんど9割がトルコ系で、ツングースはバイカル湖周辺(ブリヤート族)と満州、シベリア(エヴェンキ族等)の一部位の少数派。
元々トルコ系の人たちはモンゴル高原にいたようです。トルコ系、モンゴル系、ツングース系のアルタイ系3本柱の諸族がモンゴル高原を舞台に離合・集散を繰り返していたそうです。トルコ人は現在では西洋人のような顔立ちの人が多いように思いますが、これはトルコ人が西進する過程で中東の各民族やビザンツ帝国(小アジア)のギリシア人、バルカン半島の民族等と混血した結果でしょう。元々はトゥヴァやサハ辺りの人々の身体的特徴に近かったのかも知れません。言葉の均質性が高く、現在のトルコ人と中国西部のウイグル人、ロシアのタタール人は、それぞれの言葉で話して通じるそうです。これは驚くべきことだと思います。
余談ですが、日本語や朝鮮語もアルタイ系に分類する説が昔は根強かったですが、結論は出ていないようです。その後、日本語のタミル語起源説などというのも出てきています。

参考文献:昨日上げた2冊以外では「アルタイ語のはなし」(池田哲郎著 大学書林)が、「ウラル語のはなし」と姉妹編でお薦め。

ロシアのタタールスタンは、モンゴル帝国の征西の結果できたキプチャク汗国の末裔が住む国。「タタール(韃靼)」という言葉は、元々はロシアから中国にかけてのトルコとモンゴル系諸族の総称でしたが、20世紀に入ってからはカザン・タタール(タタールスタンはカザンが首都)を指すようになりました。カザン方言から成立したタタール文語はカザン汗国だけでなく、クリミア汗国、アストラハン汗国、シベリア汗国の官庁語として使用され、超地域共通語として機能していましたが、ソ連成立後はアゼルバイジャン語、カザフ語、ウズベク語等に分断されたそうです。文字もアラビア文字からキリル(ロシア)文字に切り替わりました。

TNV Tatar Garmunçısı-01

タタールスタンのガルモン奏者の独奏。ガルモンはハルモニウムと同語源だと思います。ロシアの大型ボタン・アコーディオンのバヤンが小型になったような楽器で、音階は東洋的な5音音階。音楽といいアナウンサーのトルコ語(タタール語)といい、ここがロシアとは信じられません。再生後のリンクに出てくると思いますが、タタールはポップスもかなり盛り上がっているようです。日本人と見紛うアイドル?歌手もいました。

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2007年11月 4日 (日)

ウラル系4~コミ

ウラル系の最終回は、コミ自治共和国。
スウェーデンに匹敵する広大な土地に、30万人余りしか住んでいない寒冷地。さいはての島、ノヴァヤ・ゼムリヤ(ロシア語で「新しい土地」の意)もすぐそこ。
ここの伝統音楽らしきファイルは余り見当たりませんでした。ウラル系他民族含めポップスなら結構ありますが。唯一見つかったKomi song "Zil´-Z´ol´"というのも、コミと言うよりロシア的ですが、この地の美しい景色が満喫できます。
映像に出てくる特殊な文字は、14~16世紀まで使われたアプールという文字のようです。コミ語を理解したロシア正教の司祭が考案したとのこと。

Photo ウラル系民族の地図を載せておきます。彼らの移動経路がよく分かります。昨日のウドムルト(旧称ヴォチャーク)の辺りがウラル民族の故地のようです。チュルク系やモンゴル系民族などに追われ、四方に散らばったようです。ジリアンと書いてある所が、コミです。

地図は、「ウラル語のはなし」(小泉保著 大学書林)より
参考図書は、他に「現代ヨーロッパの言語」(田中克彦訳 岩波新書)等

明日からは、アルタイ系の方に行きます。ヴォルガ~ウラル地域のタタール、バシキール、チュヴァシだけでなく、トゥヴァやアルタイ、独立しているアゼルバイジャンなども予定しています。

Komi song "Zil´-Z´ol´"

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2007年11月 3日 (土)

ウラル系3~ウドムルト

ロシアのウラル系、3日目はウドムルト。
タタールスタンの北に接するロシア連邦内の自治共和国で、旧称はヴォチャーク。
昨日ヴォルガ・フィン系と書きましたが、これは間違いで、北のコミと共にペルム語群というのに入ります。作曲家のチャイコフスキーは、ここウドムルトの出身。ウドムルト人ではなくロシア人のようですが。
言葉はタタール語の影響も強いようですが、以下のウドムルトの女性達の歌う民謡は、音階はロシアの歌のようです。誕生パーティーでしょうか、楽しそうですね。
次の春の祭りの方は完全にロシアそのもの。

Udmurtide laul - Udmurt song

Udmurtian Spring Fest 1

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2007年11月 2日 (金)

ウラル系2~モルドヴィン

ロシアのウラル系諸族、2回目はモルドヴィン。
ウラル系のブランチ、フィン・ウゴル語族のそのまたブランチの一つ、ヴォルガ・フィン語族に属します。東北部に繋がるマリ、その北のウドムルトやコミの各自治共和国も同じ語派。
民謡はロシアの地声コーラス(歌謡化した「ロシア民謡」ではない本当の民謡)にも似たポリフォニックなもので、広大で荒涼としたロシア平原が目に浮かびます。東部のエルジャ地方とそれ以外のモクシャ地方では言葉もかなり異なり、民謡も少なからず違ってくるようです。CDなどで知られるのはエルジャの方が多いですが、古風な特徴をとどめているのはモクシャの方らしいです。
Toorama(トオラマと発音するのだと思います)は、おそらくモルドヴィンのエルジャで最も有名な男声合唱のグループ。2曲目は同じメンバーによる器楽演奏です。左の女性は囃子係りでしょうか?w  
3本目は女性のコーラスグループの歌と踊り。かなりロシアの地声コーラスに似ています。ブルガリアン・ヴォイスをシンプルにした感じと言えば近いかもしれませんね。
TooramaのCDは96年にフィンランドのMipu Musicから出ていました。(おそらく今では入手困難) フィンランドのルーツを探るシリーズの一枚でした。

TOORAMA 1

TOORAMA 2

Erzyan folk song, Baevo

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2007年11月 1日 (木)

ウラル系1~マリ(チェレミス)

ウラル系の諸族、よく調べてみるとyoutubeも結構見つかりました。
今日は、まずマリ(旧称チェレミス)から。
バルトークとコダーイは、有名なチャールダッシュとかのジプシー音楽ではない、古い伝承のハンガリー(マジャール)の民謡と、チェレミスの民謡の類似(5音音階のメロディと5度構成の展開)から、「ハンガリー音楽のヴォルガ河流域起源説」の仮説を立てましたが、コダーイの弟子であるValogatas Vikar他の60年代の現地調査で、直接には関係がないだろうと結論付けられました。(その時の録音がハンガリーHungaroton↓から出ています。貴重な資料であることには違いありません)

ヴォルガ-カーマ地域のフィン・ウゴルとトルコ系諸族の伝統歌
http://homepage1.nifty.com/zeami/m-tor-slav.html#%83%8D%83V%83A%98A%96M

結論はどうあれ、ハンガリーもマリも、同じウラル系民族であることは確か。youtubeをお聞きいただければ分かりますが、5音音階のメロディは東洋的で、スラヴ系やヨーロッパの音楽とはかなり異なります。人々の顔立ちもヨーロッパ系ともモンゴル系ともつかない感じで、とても不思議な印象を覚えます。
マリでは、トルコ系やモンゴル系(ロシアから見れば共に韃靼人)、ロシアからも影響を受けて今のような音楽になっているのでしょうね。マリと環境の異なるハンガリーでは、ウラル系の古層を保っている面もあるのかも知れません。

以下は参考サイトです。

多言語社会としてのロシア
http://www.kmatsum.info/mari/980926/index.html
10年ほど前に代々木のロシア語教室に通っていましたが、クラスメイトから「知り合いにマリ語の研究している人がいてね。マリって言ってもアフリカのマリじゃなくて、ロシアのマリなんだよw」、と聞いたことがありました。このページはその方の発表ではないかと思われます。ヴォルガ中流域の地図や写真も出ています。マリはロシア正教化が完了しないうちにロシア革命を迎えたため,固有の土着宗教を保っているそうで、聖職者の写真もアップされています。

多民族国家ロシア 民族一覧
http://dvor.jp/nationalities.htm
ここは一覧になっていてとても便利。

 youtubeは両方とも埋め込み禁止でした。

Mari (Volga-Finnic) Dances and Music from Yoshkar-Ola 1of2
http://www.youtube.com/watch?v=McNl027LeZk

Mari (Volga-Finnic) Dances and Music from Yoshkar-Ola 2of2
http://www.youtube.com/watch?v=pqcPjg_0W6k

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