コーカサス (カフカス)

2018年5月 7日 (月)

コーカサスのラストにチェチェン、グルジア、イスラメイを再び

ゼアミdeワールド107回目の放送、日曜夕方に終りました。9日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。コーカサスの最後はサーカシアのイスラメイで締めましたが、時間切れで放送では解説を入れられませんでした。内容は以下の通りです。名残惜しいですが、次回からは中央アジアに向かいます。バタバタしていて、2日には収録速報をツイッターにアップするのを忘れておりましたm(. .)m

今回は予告しておりました通りコーカサスの番外編を考えております。あるいは総集編のように出来ればとも思いましたが、30分という限られた時間ですので、やはり個人的に思い入れの強い音楽になるかと思います。既にお気づきの方も多いかと思いますが、コーカサスからヴォルガ中流域は、個人的に一番調べてみたかったエリアで、そのまま中世のハザール帝国の版図と重なる辺りになります。ハザールは、支配層がユダヤ教に改宗したことで知られる「謎の国家」で、その遺民が東欧系ユダヤ人に多数流れ込んだとの説がありますが、その真偽はともかく、この地域で東西の民族や文化が複雑に入り混じっている様は、非常に興味深いものがあります。バルトークやコダーイは、自国ハンガリーやルーマニア周辺で盛んにフィールドワークを行い、東欧各地で収集した民謡を彼らの作品に反映させましたが、アジア系とも言われたりしたハンガリー民族のルーツを探ってヴォルガ中流域からウラル地方に行き着いた辺りから民族音楽研究が本格的に始まったように、ハンガリーは民族音楽研究において常に世界をリードする国でした。ソ連崩壊後、情報が溢れるように出てきた旧ソ連各地やコーカサスの辺りは、今でも民族音楽研究の豊富な素材を見出せるエリアだと思います。

前置きはこの位にしまして、まずはチェチェンの歌姫マッカ・サガイーポヴァの最近作Возьми мое сердце(ヴァズミ・マヨー・セルツェ 「私の心を奪う」)から、メロディの美しいサン・ドグ・ドゥ・ホと、レズギンカのリズムが漲るファン・バールガシュという2曲を続けてどうぞ。

<5 Макка Сагаипова / Сан дог ду хьо 3分40秒>
Макка Сагаипова - Сан са ду Хьо


<6 Макка Сагаипова / Хьан б1аьргаш 4分>
Макка Сагаипова - Хьан б1аьргаш ЧЕЧЕНСКИЕ ХИТЫ 2017!


チェチェンのマッカ・サガイーポヴァの代表曲の一つPretty Boyが、グルジアの女性3人組トリオ・マンディリの2015年のアルバムWith Loveのチェチヌリ・ポップリと題するチェチェンの曲メドレーの1分50秒辺りに出てきましたので、再度おかけしたいと思います。何だ、総集編はチェチェンとグルジアのアイドルばかりじゃないかと言われそうですが(笑)、チャーミングさだけでなく、彼女らのポリフォニーの歌声は本物です。YouTubeもその後何本か出ていました。

<9 Trio Mandili / With Love - Cechnuri Poppuri 3分12秒>
カルトゥリ・ポップリの方はありますが、チェチヌリ・ポップリはYouTubeがなさそうです。もしかしたら、マッカさんの歌が入っているからでしょうか?

トリオ・マンディリは2枚のアルバムを出していますが、両方の冒頭を飾っている曲はどちらも素晴らしいので再度おかけしたいと思います。2014年にyoutubeでいきなり300万件を越えるアクセスがあって大注目を浴びたグルジア民謡のAparekaからです。何気なく歩きながら3人で撮ったこの演奏の映像が、彼女らの生活を劇的に変えました。この曲が2015年のファースト・アルバムWith Loveの一曲目を飾っています。

<1 Trio Mandili / With Love - Apareka 2分38秒>
Trio Mandili Apareka


2017年リリースのEnguroからは、一曲目のErti Nakhvitと言う曲を12月3日の85回目で時間が足りず、かけられずでしたので、再度おかけします。コーカサス音楽らしい旋律美と躍動的なリズムが溢れた曲です。

<1 Trio Mandili / Enguro - Erti Nakhvit 1分56秒>
Trio Mandili - Erti nakhvit - CD-album ENGURO


続いて、最近まで聞いていたアゼルバイジャンの民謡ですが、キングの「カスピ海の旋律」にマメードヴァ・スムルード・モブルード・キジという女性歌手が歌うAzerbaijianという曲が入っておりますので、おかけしておきます。チェチェンやグルジアはコーカサス系ですから、並べて聞くとかなり印象が異なり、アゼルバイジャンの方はペルシア音楽に近く、コブシが豊かなことがはっきり聞き取れると思います。詩の内容は「幾多の山を越えてきた。鶴の眼のように澄み、美味な水をたたえた川を渡ってきた。遠近いろいろな所から聞こえてくる。アラス河のことが、アゼルバイジャンのことが。おお、アゼルバイジャンよ。私は友人。愛しい人の思い出に浸っている。~」このように叙事詩のような内容です。

<7 カスピ海の旋律~Azerbaijian 4分49秒>
また後日探してみます。

最後に、去年の7月に北コーカサスに入った際の最初にかけたサーカシアの音源ですが、メロディアの「サーカシアの伝統音楽アンソロジー」収録のオーソドックスなイスラメイの1965年の録音を再度かけてみたいと思います。バラキレフの超絶技巧ピアノ曲で一般に広く知られている曲名です。
レズギンカと類似の8分の6拍子のリズムがついていることもありますが、イスラメイ特有のノーブルなメロディラインが確かにあります。よくレズギンカで男性の踊りが鷲、女性の踊りが白鳥に喩えられますが、正にコーカサスの高い山を舞い降りてくる鷲のような雄々しく颯爽としたイメージの曲です。
このように7月に解説しておりました。
この曲を聴きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Ислъамый (Исламей) 3分16秒>
Нальмэс - Исламей (2016)

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2018年5月 2日 (水)

カシモフ父娘の歌うオスマン古典音楽

今日の一本では、とても興味深い音楽が聞けます。名高い中東の悲恋物語「ライラとマジュヌーン」がテーマになっていたり、それを歌うのはアリム・カシモフ父娘というだけで話題性が大きい訳ですが、音楽がオスマン・トルコ古典音楽になっている所が最大の特徴だと思います。このゆったりと雅びで大らかな流れは、紛れもないオスマン音楽。Segah旋法の微妙な陰影も素晴らしいです。アゼルバイジャンがオスマン帝国に入っていた時代にはこういう歌が歌われていたのでしょうか。明らかにムガームとは別物に聞こえますし、カシモフ父娘の歌唱では、このタイプは初めて聞くような気がしますが、どうでしょうか? もしかしたら、一般の日本人が江戸時代の長唄を歌うような感覚でしょうか?
解説にFrom the Album "Spirit Of the East - Vocal music by Piris Elyahu"  A Collaboration between the Israeli composer Piris Elyahu and the Azeri Vocalists Alim Qasimov & Ferqane Qasimova.とあります。この盤は未確認でした。イスラエルのPiris Elyahuが関わっているということで、オスマン的なのかも知れません。イスラエルも昔はオスマン領。ユダヤ系の作曲家もかなりいたようですから。

Duet Of Leili and Majnunzabol Segah Piris Elyahu Alim & Fergane Qasimov

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2018年4月30日 (月)

フォークウェイズのAlim Qasimov & Fargana Qasimova

ゼアミdeワールド106回目の放送、日曜夕方に終りました。2日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。youtubeが見つかったのは、Getme,GetmeとJeyranのみでした。

アゼルバイジャンの音楽も7回目になりますので、そろそろ次に行こうと思いますが、最後にアリム・カシモフのSmithsonian Folkways盤等の割と最近のリリース作の中から聞いておきたいと思います。前に言いましたように、完売していて現物が手元にないため、Apple Musicから音出ししております。そのため多少音質は落ちるかと思います。まずは娘のファルガナ・カシモヴァとの鮮烈なデュオが聞ける「アゼルバイジャンのスピリチュアル・ミュージック」から、艶美な二人の歌唱と転調の妙が聞けるミュハーリフ・タルキブという8分ほどの曲をどうぞ。

<6 Alim Qasimov & Fargana Qasimova / Spiritual Music of Azerbaijan ~Mukhalif Tarkib 8分36秒>

4月8日の回にインパクトの強いハイトーンヴォイスの歌手Zabiollah Kulievとハビル・アリエフのケマンチェ伴奏で聞きましたムガーム・チャハールガーの系統のマンスーリも入っておりますので、途中までになりますが続けておかけします。

<7 Alim Qasimov & Fargana Qasimova / Spiritual Music of Azerbaijan ~Mansuriyya 7分21秒 抜粋>

続いておかけしますのは、同じSmithsonian Folkwaysから2010年に出ましたクロノス・カルテットとの共演盤です。現代音楽を中心にこれまで多方面の音楽家と共演を重ねてきたアメリカのクロノス・クァルテットが、アゼルバイジャンの古典音楽ムガームの現代化を進めるアリム&ファルガーナ・カシモフ親子と、アフガニスタンの伝統弦楽器ルバーブの演奏家ホマユン・サキを加えた異色のコラボレイション作でした。西洋音楽とコーカサス音楽の意外な出会いに心底驚いた一枚でした。この中から和訳が「行くな、行くな」となっているGetme,Getmeという曲は旋律が非常に美しいので選んでみました。

<4 Alim Qasimov & Fargana Qasimova with Kronos Quartet / Rainbow ~Getme,Getme 12分30秒>
Kronos Quartet & Alim Qasimov Ensemble - Getme, Getme (Said Rustamov, Azerbaijan)


コーカサスに入ったのは去年の7月でしたから、何と10ヶ月になります。アゼルバイジャンは、後はアゼリ民謡や女性歌手Sevdaなどがあれば良かったのですが、現物もApple Musicにも見当たらないので、とりあえず今回で終わりと言うことにします。次回はコーカサスの番外編として色々取り上げて、改めてゴールデンウィーク後にトルクメニスタンから中央アジア方面に向かいたいと思います。
最後にAlim Qasimov & Fargana QasimovaのSpiritual Music of Azerbaijanに入っている「鹿」という曲を聴きながら今回はお別れです。娘のファルガナ・カシモヴァの歌うこの優美な旋律は、どこか他で聞き覚えがありますが、思い出せませんでした。ブログでまた探ってみたいと思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<10 Alim Qasimov & Fargana Qasimova / Spiritual Music of Azerbaijan ~Jeyran (Deer) 6分32秒 抜粋>
Fargana Qasimov - Jeyran

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2018年4月27日 (金)

器楽版のモルゲ・サハル

器楽版のモルゲ・サハルは、サフバ・モタッレビのタール独奏がありました。何年か前にも上げたと思いますが、もう一度上げておきます。数年前に華やかなテクニックでyoutubeで話題だった女流タール奏者で、若手のタール名手たちを特集したMahoor Institutの「Tar navazi」に彼女の録音がありました。ホセイン・アリザーデ、ダリウーシュ・タライなど、現代の巨匠たちに学んだ人です。作曲者とされるモルタザー・ネイダーヴードの演奏は聞いた記憶がないように思いますので、またMahoor Institutの名演集やコンピレーションの「タールの一世紀」を聞き直してみます。
2本目は前に上げたように思いますが、この曲が出てきたところでもう一度上げておきます。シャジャリアンの伴奏を務めるのは、アゼルバイジャンのケマンチェ名人ハビル・アリエフ。二人の年齢から考えて、まだソ連時代の共演では。

Sahba Motallebi Morghe Sahar

Morghe Sahar By Top Masters: Kamancheh - Habil Aliyev (Azerbaijan) & Shajarian (Iran) Morghe Sahar.

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2018年4月25日 (水)

アリム・カシモフのモルゲ・サハル

モルゲ・サハルですが、アリム・カシモフの昔の映像もありました。おそらく20台の頃の歌唱ではと思います。2本目は、イランBarbadのTabriz ConcertでのMorqe Saharと同じ音源と思われます。カシモフが20台の頃は、アゼルバイジャンはまだソ連の一部。20世紀前半中心に活躍したイランのタール奏者モルタザー・ネイダーヴード作曲とされるのこの曲を、アゼルバイジャンの誰かが輸入したのでしょうか? あるいは、当時イランとの音楽の交流自体があったのでしょうか? バルバッドの最近の音源に比べて、イランの原曲にかなり近い演奏で、非常に興味深いです。ウードの横に見える月琴のような弦楽器は、トルコのタンブールかロシアのドムラの変種でしょうか? 謎の多い映像です。

Alim Qasimov - Murgi Seher

Alim Qasimov - Morq-E Sahar - 2014

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2018年4月23日 (月)

モルゲ・サハルの聞き比べ シャジャリアンとカシモフ

ゼアミdeワールド105回目の放送、日曜夕方に終りました。25日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今日はシャジャリアンの歌唱を目立たせたいので、彼のモルゲ・サハルだけ上げておきます。

アゼルバイジャンの音楽の6回目になります。今回はペルシア音楽の名曲モルゲ・サハルの聞き比べを中心に予定しております。まずアゼルバイジャンの大歌手アリム・カシモフがこの曲を取り上げた2枚組とDVDのセットからおかけします。モルゲ・サハルとは、シャジャリアンがバムの地震の追悼ライブのラストに歌っていた感動的なマーフール旋法のタスニーフです。元の歌詞はペルシア語ですが、カシモフはアゼルバイジャン語でアゼルバイジャン風な迸る激情型で歌っております。曲名の英訳はDawn Birdですから、直訳すれば「夜明けの鳥」です。

<2-1 Alim Qasimov / Morqe Sahar - Tabriz Concert   ~Morqe Sahar 7分38秒>

続きまして、原曲のシャジャリアンの歌うモルゲ・サハルを比較で聞いてみたいと思います。2003年末にイラン南東部のバムで起きた大地震の犠牲者を追悼するコンサートのライヴDVDに収録されている演奏です。被災者の救援と、バムの町を再建するためのチャリティー・コンサートでもあったようです。シャジャリアンの提案で、救援物資だけでなく、失われた文化遺産の保存にも尽くすべきとの思いから、コンサートの全ての利益は「バム庭園」というカルチャーセンターを構築するために、バムの都市に捧げられたとのことでした。シャジャリアンの次世代の名歌手と言われる人もこの地震で亡くなったらしく、後継の歌手の一人を失ったシャジャリアン自身の悲しみも歌唱から感じられます。
演奏は、ペルシア古典声楽界の大物歌手シャジャリアンと、2度来日歴もあるタール&セタールの巨匠ホセイン・アリザーデ、数年前に来日した弓奏楽器キャマンチェのカイハン・キャルホール、シャジャリアンの息子のトンバク奏者(随所で歌も担当)ホマーユン・シャジャリアンの4人です。
アンコールで演奏される名高いタスニーフの「モルゲ・サハル」ですが、大分前からyoutubeにアップされています。このタスニーフはダストガー・マーフールの晴れやかで威厳に満ちたメロディがとても素晴らしい曲で、アリザーデ一行の2004年の来日の際、玉川上水のロバ・ハウスでデモ演奏されていました。このマーフール旋法の一曲は、特にイラン人の琴線に触れるタスニーフの一つのようで、犠牲者への思いとオーヴァーラップするのか、涙を流す聴衆が何人も見えます。

<Shajarian / Hamnava ba Bam ~Morghe Sahar 5分15秒>
Shajarian Morgh-e Sahar


アゼルバイジャン版とイランの原曲でモルゲ・サハルを聞いて頂きました。この曲は20世紀前半のイランのタール名人モルタザー・ネイダーヴード(Morteza Neydavoud)が書いた曲ですが、両国に共通のレパートリーになっていたのか、アリム・カシモフが何かのきっかけで取り上げたのかは、不明です。ソ連時代には交流は難しかったと思うので、おそらく後者だと思いますが、どういうきっかけがあったのかが気になります。アゼルバイジャンは中世のアル・ファーラービーに次ぐようなペルシア・アラブ・トルコ共通の中東音楽の哲学者兼音楽理論家のサフィー・ウッディーン・アル・ウルマウィを排出した国で、元々繋がりが深い訳ですから、モルゲ・サハルも現代の交流の一つのサンプルと考えていいのでしょう。

古い時期の録音には、ペルシアとの繋がりの強さがよりはっきり現われていますので、Mahoor Institutの「アゼルバイジャン共和国の偉大な歌手達」Great Singers of The Republic of Azerbaijanから3曲おかけしたいと思います。この2枚組の録音は1915-1960で、最高のムガーム名人と言われたジャッバール・カリャークディ=オグル(1861-1944)初め10人の歌手による35曲が収録されています。05年にアゼルバイジャンで非営利目的で出版された16枚組CDブックをもとに、マーフールが2枚組に再編集したという盤です。
おかけするのは、日本なら江戸時代生まれのジャッバール・カリャークディ=オグルの歌唱です。彼の時代には実際にペルシアの宮廷で歌っていた歌手もいたようです。歴史的録音のためノイズがありますが、タハリール唱法の凄さはよく聞き取れると思います。曲名は順に、ダシュティ、オルタ・マーフール、バヤート・カージャールです。ペルシアのダシュティと共通するノスタルジックなダシュティ、やはりモルゲ・サハルと似た明るい雰囲気のマーフール、ペルシアのカージャール朝時代の詩の吟唱を彷彿とさせるバヤート・カージャールと続きます。

<1 Jabbar Qaryaghdi-oghlu / Dashti 3分2秒>
<5 Jabbar Qaryaghdi-oghlu / Orta Mahur 3分8秒>
<7 Jabbar Qaryaghdi-oghlu / Bayat Qajar 3分23秒>

では最後に再度シャジャリアンの歌唱でボテ・チンというエキゾチックで親しみやすいタスニーフを聞きながら今回はお別れです。訳は「中国の美女」となるようです。シルクロードによる東西の交流を連想させる曲名です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<1 シャジャリアン ボテ・チン 8分7秒 抜粋>

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2018年4月19日 (木)

アリ・サリミとアゼルバイジャン史

アゼルバイジャンの歴史と、アリ・サリミのアイリリクについてのドキュメンタリーがありました。秀逸な番組のようです。グーグーシュやこの曲の楽譜も出てきます。この曲と「分断」の歴史について感心のある人には、必見のように思います。2本目は、声楽とオーケストラによるアイリリクの演奏です。カナダのNiagara Silk Road Chamber Orchestraによる洋楽アプローチですが、アゼリ系の人が多いのでしょうか、現地らしさが随所に出ています。

Bir mahnının tarixçəsi - Ayrılıq (Əli Səlimi)

Ali Salimi - Ayriliq

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2018年4月16日 (月)

アシュクとアイリリク

ゼアミdeワールド104回目の放送、日曜夕方に終りました。18日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。

アゼルバイジャンの音楽の5回目になります。前回アリム・カシモフの歌唱をかけましたスイスVDE盤の前半に入っているイラン北西部タブリーズのアゼルバイジャン系アシュクの演奏から、まず聞いてみたいと思います。長棹リュート系弦楽器のサズ(アゼルバイジャンではチョグールと呼ばれることが多い)の弾き語りに、枠太鼓ダフとダブルリード管楽器のバラバンやメイの伴奏が付くのが典型的なスタイルです。
一曲目のDoyma chayaを歌っているアーシュク・ハサンと2曲目のエムラーン・ヘイダリは、いずれもイラン北西部のタブリーズ出身で、ハッサンは1980年まで地元のチャイハナ(茶店)で流しをやっていた正真正銘のアシュクです。その2曲を続けておかけします。リズミカルなハッサンの演奏と、もっぱらチョグールを巧みに操るヘイダリのスタイルは対照的です。ストイックなヘイダリのチョグール独奏は、どこかイラン西部のクルド系のタンブール名人オスタッド・エラーヒを思わせる所もあります。この番組は2年前にイランの音楽巡りから始めましたが、クルドの音楽はまだだったと思いますので、またトルコ東部のクルド音楽と一緒にエラーヒも取り上げたいと思っております。

<1 Ashiq Hasan / Doyma chaya 5分1秒>
<2 Emran Heydari / Yaniq Karami 5分16秒>
Ashigh Imran Heydari, Qopuz,Saz

二人とも幾つかありましたが、動画はヘイダリの方だけのようです。違う曲ですが一本上げておきます。アシュク・ハッサンはまた探してみます。

アゼルバイジャンの非常に印象的な歌に「アイリリク」という曲がありまして、私が最初に聞いたのは、タール奏者のアリ・サリミのMahoor Institut盤の演奏でした。この人は、往年のアゼルバイジャンのタール名人(1922-97)で、首都バクーに生まれ、少年時代にスターリンの圧政から逃れ家族ごとイランに移住し、イラン北西部アザルバイジャン地方のタブリーズで、亡くなるまで活躍しました。同時代タブリーズのアゼリ系タール名人ビグジェーハーニ(1918-87)などとも親交があり、アゼルバイジャンとペルシア古典の折衷的なユニークな演奏を披露している人です。アリ・サリミが作曲したAiriliqは、Tasnif-E Bayat-E Shirazと解説があるように、バヤーテ・シーラーズのタスニーフ(歌曲の一種)の一つになるようです。彼のプロフィールから推測しますと、再び帰ることが叶わなくなってしまった故郷への望郷の哀切な調べのように聞こえまして、何年か前にゼアミブログで特集したことがありました。カザルスのチェロ演奏で有名なカタロニアの「鳥の歌」や、アルメニアのサリ・ゲリンなどと並ぶような、肺腑を衝く望郷の哀歌と言っていいのではと常々思っておりました。アイリリクを訳すと「分断」となりますが、正に南北に分断されたアゼルバイジャン民族の悲しみを表現した曲です。まずは、そのアリ・サリミのタール独奏でどうぞ。

<6 Ostad Ali Salimi / Airiliq (Tasnif-E Bayat-E Shiraz) Reng-E Bayat-E Shiraz 4分20秒>
Flora Kərimova - "Ayrılıq". mus: Ali Salimi söz: Fərhad İbrahimi.

アゼルバイジャン文字入りでƏli Səlimiと検索すれば色々出てきますが、アリ・サリミがアイリリクを弾いているのは、この女性歌手の伴奏のみのようです。

この曲をイランのアゼルバイジャン系女性歌手グーグーシュもアゼルバイジャン語で歌っておりますので、併せておかけしたいと思います。アメリカ西部のイラン人コミュニティーの間で主に出回っていたタラネーというレーベルからの一枚に入っております。グーグーシュは1979年のイラン革命前から活躍するペルシアン・ポップスの歌姫として有名ですが、実は父方はイラン側のアザルバイジャン州出身で、母方はアゼルバイジャン共和国の家系であることは、ほとんど知られていないことかも知れません。グーグーシュの歌うアイリリクは、祖国への思いの深さが伝わってくる歌唱です。更には、イラン国内の人口に占めるアゼルバイジャン人の割合は25%を占め、アゼルバイジャン共和国内のアゼルバイジャン人の人口をはるかに上回ることも、ほとんど知られていないと思います。あのペルシア音楽の巨匠ホセイン・アリザーデも、父方はイラン北西部のアゼリ人です。

<10 Googoosh / Ayriligh 5分36秒>
Googoosh, Ayrılıq

グーグーシュの先日とは別音源。これは放送でかけたものと同じかも知れません。この人の表記で「ググーシュ」と言うのもよく見かけますが、گوگوشとあるようにGの後にそれぞれ長母音が入っているので、グーグーシュの方が近いと思いますが。

では最後にアリ・サリミのタール独奏でBayate-E Shirazを時間まで聞きながら今回はお別れです。このムガームは放送やブログで度々取り上げましたので、ハビル・アリエフのケマンチェ演奏などで既にお馴染みになったかと思いますが、アイリリクをこの旋法で書いたアリ・サリミの演奏は、また一味違う深い味わいがあります。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<9 Ostad Ali Salimi / Bayate-E Shiraz 19分31秒 途中まで>
Əli Səlimi -Təbrizim

タブリズィームというのが曲名のようですが、旋法はおそらくバヤーテ・シーラーズでしょう。彼の弾き語りは初めて聞くような気がします。

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2018年4月11日 (水)

グーグーシュの歌うアイリリク

今日(11日)の収録でアイリリクという曲を取り上げました。往年のアゼルバイジャン(イラン側のタブリーズ)のタール奏者アリ・サリミが書いたバヤーテ・シーラーズのタスニーフで、悲しくも非常に美しい曲です。この曲を日本でも昔一部で大人気だった往年のペルシアン・ポップスの歌姫グーグーシュが歌っておりますので、15日の放送の予告編として今日上げておきます。かけたのはTaranehの音源で、このyoutubeとは別です。11年前にも当ブログに書きましたが、彼女は父方がイラン北西部アザルバイジャンから、母方はアゼルバイジャン共和国の出身。テヘラン生まれの彼女も当然アゼルバイジャン系です。南北に分断(アイリリク)された祖国を思う哀歌です。原曲のアリ・サリミのタールの名演も併せて取り上げました。本放送をお楽しみに!

Googoosh . Ayriligh [HQ]

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2018年4月 9日 (月)

ハビル・アリエフ、エルカン・マンスロフ、VDEのカシモフ

ゼアミdeワールド103回目の放送、日曜夕方に終りました。日曜は松山に出ていてラヂバリは聞けず、更にiPhoneが絶不調でネットラジオでも聞けず(今日は復旧しました)、私は未確認ですが無事聞けたでしょうか? 11日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。カシモフのVDE録音とマンスーリは上がっていないようです。

アゼルバイジャンの音楽も4回目になりました。前回もし時間が余ったらと思って考えていたシャン・デュ・モンド盤の器楽演奏の方を少しかけておきたいと思います。まず、ハビル・アリエフのケマンチェ独奏で8曲目のディルキャシュという曲ですが、まるで人が歌っているかのような、熟練の極みの哀切な演奏を聞かせています。

<8 Azerbayjan Traditional Music - Habil Aliev / Dilkash 4分15秒>
Habil Aliyev: Dilkesh

同じ旋法ですが、こちらは太鼓伴奏付き

バーラム・マンスロフの息子のエルカン・マンスロフのタール独奏の音源も2曲入っておりまして、いかにもペルシア風に聞こえるけど、出てくる音が異なるエスファハーンと、明るく美しい旋法のマーフール・エ・ヒンディの2曲ですが、その名からインド風を連想させる後者を聞いてみたいと思います。インド風というのは名前だけのようで、ペルシアやコーカサスのエキゾチックな微分音もありませんが、とにかく美しい旋律が爽やかに流れる旋法です。10分近くありますので、抜粋でおかけします。

<3 Elkhan Mansurov / Mahur-e Hindi 9分38秒 から5分ほど>
Elkhan Mansurov - "Mahur-hindi" (1991)


次にスイスのVDE-Galloの「アシュクの音楽と歌」からもアリム・カシモフの1989年の歌声をまとめて聞いておきたいと思います。95年に日本のクラウンからVDEの民族音楽シリーズのライセンス国内盤が出まして、その内の一枚です。この盤は前半のアシュクのイメージが強く、後半でカシモフの歌が20分余り聞けることは余り知られていないかも知れません。イラン北西部タブリーズのアシュクでは、長棹リュート系弦楽器のサズ(アゼルバイジャンではチョグールと呼ばれることが多い)の弾き語りに、枠太鼓ダフとダブルリード管楽器のバラバンやメイの伴奏が付きますが、ムガームではタールとケマンチェ、ダフの伴奏になっているのが最大の違いで、アゼリのアシュクはトルコのアシュクとも繋がるいかにも吟遊詩人的な演奏スタイルです。一方ムガームの方は、古典音楽のスタイルと言って良いのだろうと思います。カシモフがここで取り上げているのは、2,3分の色々な小曲の寄せ集めのように聞こえますが、非常に魅力的な曲が並んでいて、個人的には一番好きな演奏です。4曲続けてお聞き下さい。クラウン盤では原題が出てこないので、カタカナ表記とその訳文になりますが、以下のようになっております。

<12 アリム・カシモフ / カスマーシカステシ(愛するバラバンよ) 3分25秒>
<13 アリム・カシモフ / ナーズリ・ヤーリム・カーラー・ギョズ(黒き瞳の我が恋人よ) 2分15秒>
<14 アリム・カシモフ / カーラー・ギラ(私は君を目覚めさせるために君の部屋にやって来た) 2分59秒>
<15 アリム・カシモフ / カーラー・クズ(若い娘よ、君に話をしよう) 3分35秒>

VDE盤の前半に入っているイラン北西部タブリーズのアゼルバイジャン系アシュクの演奏は次回以降に取り上げることにしまして、再度Chant du monde盤から、甲高いハイトーンが印象的なザビオッラー・クリエフの歌唱がもう一曲入っておりますので、この曲を聞きながら今回はお別れです。もう一曲と同じく「カスピ海の旋律」のバヤーテ・シーラーズの名演が素晴らしかったハビル・アリエフのケマンチェ伴奏で、マンスーリという曲です。カシモフの最初におかけしましたムガーム・チャハールガーの系統になるようです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<7 Azerbayjan Traditional Music - Zabiollah Kuliev / Mansuri 4分16秒>

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