フランス

2016年8月10日 (水)

「男と女」とサンバ、ボサノヴァ

ゼアミdeワールド20回目の収録に行ってきました。今日はブラジル音楽特集の3回目でした。11日と14日に放送されるのは、以下の19回目収録分です。<>内がかけた音源です。

ブラジル特集2回目ですが、サンバやボサノヴァを一躍有名にした映画に、1966年のクロード・ルルーシュ監督のフランス映画「男と女」がありました。知らぬ人はいないのではと思われるアンニュイな感じの映画音楽の名曲ですが、まずはそのピエール・バルーとフランシス・レイの共作のテーマ曲を少しかけてみます。ピエール・バルーが関わっているので、テーマ曲からして、どこかにブラジル音楽の要素が入り込んでいるのかも知れません。
<映画「男と女」テーマ  抜粋>
Un Homme Et Une Femme(1966) - ThemeMusic


この映画を見た方はお気づきだと思いますが、サンバ、ボサノヴァが重要なモティーフになっていて、その後のフレンチ・ボサのお洒落なイメージは、この映画がルーツなのでは?と思いました。
2曲目にこの映画の中の「男と女のサンバ」をかけますが、この歌は主演もつとめたピエール・バルーの歌唱で、作曲はブラジル音楽のギターの巨匠、バーデン・パウエル、作詞はヴィニシウス・ヂ・モラエスです。ピエール・バルーは後にブリジット・フォンテーヌのような前衛的な歌手の作品もリリースするサラヴァ・レーベルを起こしています。「男と女のサンバ」の原題は、サンバ・サラヴァ(Samba Saravah)です。
<映画「男と女」から 「男と女のサンバ」 抜粋>
Samba Saravah - Un homme et une femme


ゆったりほのぼのしたサンバ・カンソンですが、歌詞が味わい深く、以下のようになっています。
「誰でも多かれ少なかれ幸せを求めている。僕は笑ったり歌ったりするのが好きだし、楽しけりゃいいって人達をどうこう言うつもりはない。ただ、もし悲しみのないサンバがあるとするなら、それは酔わせてくれないワインのようなもので。酔わせてくれないワイン。そう、そんなものは僕が求めているサンバじゃない」
同じく朗読部分にある「悲しみのないサンバとは、美しいだけの女を愛することに似ている」とは作詞者のヴィニシウス・ヂ・モラエスの言葉だそうです。その「悲しみ」というのは、郷愁、憧憬、思慕、切なさを表現するサウダーヂのことではないかと思われます。

続いて大変有名な曲ですが、50年代に生まれたボサノヴァのブームに火をつけた曲「イパネマの娘」です。原詩は上記「男と女のサンバ」と同じヴィニシウス・ヂ・モラエスです。ジャズのテナーサックス奏者スタン・ゲッツとのコンビで大ヒットしました。
<アストラッド・ジルベルト、ジョアン・ジルベルト&スタン・ゲッツ / イパネマの娘 抜粋>
The Girl From Ipanema(イパネマの娘) Astrud Gilberto(アストラッド・ジルベルト)

何とアストラッド・ジルベルトの動画がありました! そして何と若き日のゲーリー・バートン(ヴァイブラフォン)がスタン・ゲッツの楽団員として参加しているようです。チック・コリアとのデュエットが80年代初め頃に大変話題になりました。

この曲は、バーデン・パウエル作曲のビリンバウ(アフリカから伝わった弓琴ビリンバウの演奏から始まる)や、おいしい水(同じくアントニオ・カルロス・ジョビン作曲、ヴィニシウス・ヂ・モラエス作詞)と並ぶアストラッド・ジルベルトの代表曲です。
Bossa Nova の Nova とはポルトガル語で「新しい」、Bossa とは「隆起、こぶ」を意味するので、Bossa Nova とは「新しい傾向」「新しい感覚」などという意味になります。
50年代中頃リオに生まれたボサノヴァの誕生秘話として、ウィキペディアに以下のように出ていました。
ジョアンが幾日もバスルームに閉じこもってギターを鳴らす試行錯誤の末、それまでにないスタイルのギター奏法を編み出すことに成功したという逸話が残っているが、その際、変奏的なジャズや抑制された曲調のサンバであるサンバ・カンサゥン(1950年前後に発展した)、バイーア州周辺で発展したバチーダというギター奏法の影響は無視できない。彼を中心とするミュージシャンらの間で、1952年から1957年頃、ボサ・ノヴァの原型が形作られ、発展したものと見られている。

サンバとボサノヴァの違いは、ジャズ由来ではと思われる意外性のある転調もその一つかと思いましたが、それは「イパネマの娘」に顕著なのかも知れません。ゆったりしたサンバ・カンソンがボサノヴァのベースになっていると取れば分りやすいでしょうか?
(終わりにアストラッド・ジルベルトで「トリステーザ」をかけようかと思いましたが、残念ながら時間切れでした)

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2016年4月12日 (火)

フォーレとプルースト、ヴェルレーヌなど

20世紀フランス文学の大作「失われた時を求めて」を残した小説家プルーストは音楽にも造詣が深く、ベートーヴェン、シューマン、ワーグナーや、同じフランスのドビュッシー、フォーレを愛好していたそうですが、ベートーヴェンでは「後期の弦楽四重奏曲第15番の最終楽章を好み、真夜中に自室に楽団を呼んで演奏させたこともある」という逸話もあるほど。(カペーSQだったのでしょうか?) フォーレでは何を好んでいたのか、よく分りませんが、とても気になります。室内楽はまず入っていたのではと思います。
ヴェルレーヌの詩では上田敏訳の「秋の日のヴィオロンの~」の一節が特によく知られていますが、このヴィオロン(ヴァイオリン)曲は何だったのかも、とても気になるところ。同世代のフォーレの曲だった可能性もありかなと思いますが。
と言う訳で、昨日に引き続き、フォーレのピアノ四重奏曲の映像から2番を、作曲家ジャン・フランセのピアノとトリオ・パスキエの演奏で。1番は近年大活躍のマルク・アンドレ・アムランのピアノと、女流奏者3人のレオポルド・トリオの演奏です。1番の方が演奏される機会が多いようで、youtubeも多いです。

Jean Francaix and Trio Pasquier plays Fauré Piano Quartet No. 2 in G minor Op. 45

Hamelin plays Fauré - Piano Quartet No. 1 in C minor, op. 15 (with Leopold Trio)

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2016年4月 7日 (木)

ダリウス・ミヨーのアニ・マアミン

フランス6人組の一人、ダリウス・ミヨーのアニ・マアミンは、晩年の1972年に書かれたようです。あらためてバイオグラフィを見て、1974年に亡くなっているので、意外に最近までご存命だったことを知りました。この曲の作曲年も、割と最近のことです。彼のユダヤ教の宗教曲は「土曜朝(シャバト)の典礼」の録音がミヨー自身の指揮で1958年に(フランスのAccordからCD有り)、アニ・マアミン(「我は信ず」の意)はポール・メファノ指揮Ens.2e2mの演奏と、ノーベル賞作家のエリ・ヴィーゼルの朗読で録音されています(こちらはフランスのArionからCD有り)。今日のyoutubeは後者の抜粋。数々のフォーク・ソングやフォーク・ダンスにもなっているアニ・マアミンが、ミヨーらしい地中海的で明晰な叙情で表現されています。アシュケナジームのアニ・マアミンのような重苦しさは感じさせない音楽です。

Darius Milhaud et Elie Wiesel - Ani maamin

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2016年4月 5日 (火)

ミヨーとセヴラック

とても南仏(オクシタン)を感じさせるフランス近代の作曲家に、ダリウス・ミヨーデオダ・ド・セヴラックがいます。ミヨーはマルセイユの北に位置するエクス=アン=プロヴァンス、セヴラックはオクシタン西部のラングドック出身です。
ミヨーはエクス=アン=プロヴァンスのカルナヴァル(謝肉祭)を描写した軽妙洒脱な作品の中に、南仏の叙情性を盛り込んでいます。時折顔を覗かせる独特な歌心は、彼のユダヤ系出自ゆえでしょうか。アニ・マアミンのような、ユダヤ教の典礼文による典礼音楽も作曲しています。
セヴラックは、ピアノだけでなくオルガン曲も多いですが、どの曲を聞いても、ドビュッシーが「土の薫りのする素敵な音楽」と形容した通り、オクシタンの鄙びた叙情性を強く感じさせます。とりわけ今日のセルダーニャは、ラングドックの郷里色が豊かです。

Darius Milhaud : Carnaval d'Aix op. 83 b pour piano et orchestre ( 1926 )

Déodat de Séverac - Aldo Ciccolini (1974) Cerdaña 5 Études Pittoresques

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2016年4月 1日 (金)

ブラッサンス「オーヴェルニュ人に捧げる歌」

フラメンコ・ギターの巨匠マニタス・デ・プラタが1921年セート生まれ(カマルグではなく)だったと言うことで、思い出しました。同じ1921年にセートに生まれた名歌手に、ジョルジュ・ブラッサンスがいました。後に「フランス人の〈生まれ変わったらなりたい人〉のベスト1」に選ばれたと言うブラッサンスも、南仏の地中海岸の町セートからパリに出てきた頃は、まだ世に認められてなくて、飢えや渇きの心配なく詩の勉強にいそしむことが出来たのは、下宿先のオーヴェルニュ人夫婦のくれた僅かな薪とパン、「悲しげな微笑」の有り難さだったことを、しみじみと歌っています。

Georges Brassens - Chanson Pour L'Auvergnat

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2016年3月31日 (木)

Di Provenza il mar, il suol

プロヴァンスと聞くと、まず思い出すのは、実はこの曲だったりします。ヴェルディの歌劇「椿姫」の中で、ヴィオレッタに裏切られたと思い込んだアルフレードを、彼の父ジェルモンが「故郷のプロヴァンスに帰ろう」となだめるアリア「プロヴァンスの海と陸」(Di Provenza il mar, il suol)です。バリトンの深々とした美声は、プロヴァンスの美しい風光をよく表しているように思います。(行ったことはないのですが(^^;(笑))
高校時分に最初に聞いたのが、マリア・カラスのヴィオレッタ、ジュゼッペ・ディ・ステファノのアルフレード、エットーレ・バスティアニーニのジェルモンで、指揮は若き日のカルロ・マリア・ジュリーニ、ミラノ・スカラ座管弦楽団の1955年のライブ録音でした。モノラル録音ですが、今でもこれ以上のトラヴィアータ(椿姫)は聞いたことがありません。youtubeは、正にこの録音の中のバスティアニーニの名唱。

Traviata - Di Provenza il mar, il suol - Ettore Bastianini

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2016年3月29日 (火)

カマルグのフラメンコと闘牛

木曜の放送の後で久々に強烈な風邪を引きまして、花粉症とのダブルパンチに悩まされております。何とかラジオ初収録までには治したいと思っております。
金曜に見ましたアレスキーは、どうやらアルジェリアのカビール地方の歌手で、マルセイユでのライブ映像のようでした。移民なのか来仏しているのか、とても分りにくいです。同じプロヴァンスにカマルグという地方がありますが、ここも「ジプシーとピンクフラミンゴと野生の白馬がいる湿地帯」というユニークな土地柄で、映画「フレンズ/ポールとミシェル」の舞台にもなりました。フラメンコ・ギターの名手マニタス・デ・プラタがカマルグに住んでいたのかどうかは不明ですが、確かに南仏の出身で、彼の出てくる素晴らしいカマルグ・ジプシーのドキュメンタリー映像がありました。(あのジプシー・キングスも、プロヴァンスのアルル出身でした。スペインと思い込んでいる人は多いかも)

Musics-dances from Camargue with Manitas de Plata 1974 - RARE

La Course Camarguaise (Bullfighting in Camargue style), Camargue, France [HD] (videoturysta)

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2016年3月25日 (金)

マルセイユのアレスキー

南仏最大の港湾都市マルセイユの音楽状況はどんな感じなのかも、気になっていました。アルジェリア系移民と思われる歌手arezki moussaouiがラウート?(フレットのあるウード)を弾き語っていて、ダラブッカの伴奏に、ダンスが入ります。ジャンルとしてはシャアビになるでしょうか。arezkiと聞くと、真っ先に思い出すのは、前衛シャンソン歌手ブリジット・フォンテーヌの共演者アレスキーで、彼もアルジェリア系でした。

xu38c9 arezki moussaoui avrid d marseille music

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2016年3月18日 (金)

Starymonettiのブーレとブルターニュ

リムーザンを少し離れて、舞曲のブーレで検索していたら、ベルギー人アコーディオン奏者Marinette Bonnertとオーストリアのフィドル奏者Stephan "Stoney" Steinerのデュエット、Starymonettiが出てきまして、なかなか良かったので今日は彼らの演奏を2本。ブーレはフランス起源の舞曲と言われますが、このブーレを作曲したのはBlowzabellaのメンバーの一人でイギリス人のJo Freya。とてもモダンで洒落たブーレです。2本目のSuite An Droは、フランス北西部のケルトの地、ブルターニュの舞曲とのこと。こういう欧州内の国や地方を越えた楽士による色々な舞曲の交流は、昔から行われてきたことなのでしょう。

Starymonetti: Bourrée "De Montford" (Jo Freya)

Starymonetti: Suite An Dro

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2016年3月17日 (木)

ロレーヌのトゥルバドゥール

今日のLes Troubadours des Bruyères(ブルイエールのトゥルバドゥール)は、曲名が Parade Limousine(リムーザンのパレード)となっていますが、Bruyèresはフランス北東部のロレーヌ地方の町のようです。何故リムーザンの名が出ているのか、ドイツ風な面が強い東北部から見てオクシタンはどう見えているのか、気になるところです。
使われている楽器は、手回しヴァイオリンのハーディーガーディーと、ボタン・アコーディオン。ハーディーガーディーは西ヨーロッパではメジャーな楽器ですが、そう言えば当ブログに登場するのは初かも知れません。やはりオクシタンの音楽とは大分異なる感じですが、北東部の音楽のサンプルがアルザス地方以外なかなか見つからなかったので、これはこれで面白い演奏ですし、良かったと思っています。アルプスやドイツの音楽と、古い時代のシャンソン的な面が入り混じって聞こえます。

先日告知しました4月7日からのラジオ番組の名前が決まりました。
 
ベタで、どストレートです(笑)
やすきよのパンチdeデートとか、なるほどtheワールドのもじりですが、アラフォー以下の人は知らないかも(^^;(笑)

  番組名 ゼアミdeワールド
  パーソナリティ名  ほまーゆん

  毎週木曜 17:15~17:30
  再放送 毎週日曜 15:00~15:15

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

6回目のちろりん出演は、3月24日20時で、今度は五輪の近いブラジル関係(サンバ、ボサノバだけでなく、ヴィラ=ロボスのブラジル風バッハ5番、映画「男と女」の音楽とかも)をかける予定です。こちらも宜しければ是非お聞き下さい。

Les Troubadours des Bruyères - Parade Limousine

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