「男と女」とサンバ、ボサノヴァ
ゼアミdeワールド20回目の収録に行ってきました。今日はブラジル音楽特集の3回目でした。11日と14日に放送されるのは、以下の19回目収録分です。<>内がかけた音源です。 ブラジル特集2回目ですが、サンバやボサノヴァを一躍有名にした映画に、1966年のクロード・ルルーシュ監督のフランス映画「男と女」がありました。知らぬ人はいないのではと思われるアンニュイな感じの映画音楽の名曲ですが、まずはそのピエール・バルーとフランシス・レイの共作のテーマ曲を少しかけてみます。ピエール・バルーが関わっているので、テーマ曲からして、どこかにブラジル音楽の要素が入り込んでいるのかも知れません。 <映画「男と女」テーマ 抜粋> Un Homme Et Une Femme(1966) - ThemeMusic この映画を見た方はお気づきだと思いますが、サンバ、ボサノヴァが重要なモティーフになっていて、その後のフレンチ・ボサのお洒落なイメージは、この映画がルーツなのでは?と思いました。 2曲目にこの映画の中の「男と女のサンバ」をかけますが、この歌は主演もつとめたピエール・バルーの歌唱で、作曲はブラジル音楽のギターの巨匠、バーデン・パウエル、作詞はヴィニシウス・ヂ・モラエスです。ピエール・バルーは後にブリジット・フォンテーヌのような前衛的な歌手の作品もリリースするサラヴァ・レーベルを起こしています。「男と女のサンバ」の原題は、サンバ・サラヴァ(Samba Saravah)です。 <映画「男と女」から 「男と女のサンバ」 抜粋> Samba Saravah - Un homme et une femme ゆったりほのぼのしたサンバ・カンソンですが、歌詞が味わい深く、以下のようになっています。 「誰でも多かれ少なかれ幸せを求めている。僕は笑ったり歌ったりするのが好きだし、楽しけりゃいいって人達をどうこう言うつもりはない。ただ、もし悲しみのないサンバがあるとするなら、それは酔わせてくれないワインのようなもので。酔わせてくれないワイン。そう、そんなものは僕が求めているサンバじゃない」 同じく朗読部分にある「悲しみのないサンバとは、美しいだけの女を愛することに似ている」とは作詞者のヴィニシウス・ヂ・モラエスの言葉だそうです。その「悲しみ」というのは、郷愁、憧憬、思慕、切なさを表現するサウダーヂのことではないかと思われます。 続いて大変有名な曲ですが、50年代に生まれたボサノヴァのブームに火をつけた曲「イパネマの娘」です。原詩は上記「男と女のサンバ」と同じヴィニシウス・ヂ・モラエスです。ジャズのテナーサックス奏者スタン・ゲッツとのコンビで大ヒットしました。 <アストラッド・ジルベルト、ジョアン・ジルベルト&スタン・ゲッツ / イパネマの娘 抜粋> The Girl From Ipanema(イパネマの娘) Astrud Gilberto(アストラッド・ジルベルト) 何とアストラッド・ジルベルトの動画がありました! そして何と若き日のゲーリー・バートン(ヴァイブラフォン)がスタン・ゲッツの楽団員として参加しているようです。チック・コリアとのデュエットが80年代初め頃に大変話題になりました。 この曲は、バーデン・パウエル作曲のビリンバウ(アフリカから伝わった弓琴ビリンバウの演奏から始まる)や、おいしい水(同じくアントニオ・カルロス・ジョビン作曲、ヴィニシウス・ヂ・モラエス作詞)と並ぶアストラッド・ジルベルトの代表曲です。 Bossa Nova の Nova とはポルトガル語で「新しい」、Bossa とは「隆起、こぶ」を意味するので、Bossa Nova とは「新しい傾向」「新しい感覚」などという意味になります。 50年代中頃リオに生まれたボサノヴァの誕生秘話として、ウィキペディアに以下のように出ていました。 ジョアンが幾日もバスルームに閉じこもってギターを鳴らす試行錯誤の末、それまでにないスタイルのギター奏法を編み出すことに成功したという逸話が残っているが、その際、変奏的なジャズや抑制された曲調のサンバであるサンバ・カンサゥン(1950年前後に発展した)、バイーア州周辺で発展したバチーダというギター奏法の影響は無視できない。彼を中心とするミュージシャンらの間で、1952年から1957年頃、ボサ・ノヴァの原型が形作られ、発展したものと見られている。 サンバとボサノヴァの違いは、ジャズ由来ではと思われる意外性のある転調もその一つかと思いましたが、それは「イパネマの娘」に顕著なのかも知れません。ゆったりしたサンバ・カンソンがボサノヴァのベースになっていると取れば分りやすいでしょうか? (終わりにアストラッド・ジルベルトで「トリステーザ」をかけようかと思いましたが、残念ながら時間切れでした)
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