東欧

2017年5月24日 (水)

「春の祭典」とベラルーシやリトアニアのペイガニズム

ゼアミdeワールド58回目の放送、水曜夜に終りました。21日には前々回の放送(56回目)が流れてしまいましたが、今回はちゃんと58回目が流れました。<>内がかけた音源です。今回もイネディやメロディアの盤と全く同じ音源のyoutubeはおそらくないのではと思いますので、今日は「春の祭典」のみ上げておきます。民謡はもし見つかったら、また取り上げます。

今回はベラルーシと、北側に隣接するバルト三国の一つ、リトアニアの歌を聞いてみたいと思います。ZeAmiブログの方でベラルーシやリトアニアの伝統音楽を見ていると、結構Pagan Songというタイトルが目立つことに気がつきました。キリスト教化する前のペイガン(異教的)な雰囲気を感じさせる映像がありましたが、そこで出てくる民謡は、正に前回かけたユネスコ盤に入っているようなタイプでした。
ここで思い出したのがストラヴィンスキーの「春の祭典」で、この曲の冒頭に出てくる旋律がリトアニア民謡でしたから、今回はベラルーシからリトアニアにかけて、ペイガンな曲を探してみようかと思いました。そうは言いましても、一曲一曲詳細に吟味するのも難しいので、前回一曲かけましたロシアのメロディア盤2枚組の「ベラルーシの民族音楽アンソロジー」の中から、決まったテーマの部分を続けてかけてみます。今回じっくり聞いてみて、ユネスコ盤と音源が数曲ダブっていることにも気がつきました。ここにどうもペイガンな歌が有りそうだと言うことで、「春の祭典」を想起させる「春の歌」4曲を続けてどうぞ。

<ベラルーシの民族音楽アンソロジー~春の歌 56秒、38秒、1分5秒、50秒>

続いて、ストラヴィンスキーの「春の祭典」の冒頭部分をかけてみます。ストラヴィンスキーの自作自演です。リトアニア民謡をベースにしたファゴットから始まる序奏から、弦楽器を中心に同時に力強く鳴らされる同じ和音の連続とアクセントの変化による音楽に始まる乙女達の踊り「春のきざし」の辺りまでです。80年代にピナ・バウシュのバレエで「春の祭典」を見たことがありますが、どうもペイガンなyoutubeの映像と印象がダブります。

<ストラヴィンスキー / 春の祭典 ストラヴィンスキー指揮ニューヨーク・フィル 2分53秒、3分14秒>
Igor Stravinsky Le Sacre du Printemps Vaslav Nijinsky Version 1913 Ballett Mariinski Theater

自作自演はおそらく上がってないので、ニジンスキー・ヴァージョンのマリインスキー劇場管弦楽団とバレエ団の演奏で。何と言ってもあのニジンスキーですから、これが正調なのでしょう。指揮はもちろんヴァレリー・ゲルギエフ

露Melodiyaの2枚組は、春の歌、三位一体の日曜と聖ヨハネの生誕前夜の歌、収穫の歌、秋の収穫の歌、キャロルと祭りの歌、結婚式と出生の歌、非儀礼の叙情歌、器楽と言う風に分れています。異教的という観点で見れば、当然三位一体とかキャロルのようなキリスト教関連の歌は外れるのだろうと思います。
言語的には、ベラルーシはロシアやウクライナと同じ東スラヴ系ですが リトアニアとその北のラトヴィアはバルト語派で、共にインド・ヨーロッパ語族ではありますが、全く系統の異なるグループです。エストニアだけ、フィンランドと兄弟関係に当るウラル系のフィン・ウゴル語派になります。この辺りでベラルーシとリトアニアだけに共通するような異教的なイメージの曲があり、それがストラヴィンスキーにもインスピレーションを与えたのだとすれば、これはとても興味深い事実だと思います。
次にリトアニアの曲をかけてみます。フランスのIneditから出ている「バルトの歌声」には、ラトヴィア、リトアニア、エストニアの順に伝統音楽が入っていますが、その中からリトアニアの収穫の歌、結婚式の哀歌、ホイッスル、2声のカノンでのスタルティネなどの一部古い録音も聞けますが、キリスト教以前の儀礼歌も入っているようです。異教的だとしても、ベラルーシよりは穏やかな印象の曲が多いように思います。

これらの曲を聞きながら今回はお別れです。多分結婚式の歌の辺りで時間切れになると思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Baltic Voices~Lithuania 4分28秒、2分11秒、36秒、46秒、1分28秒、2分30秒>

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2017年5月17日 (水)

ベラルーシとリトアニアのペイガン・ソング

ストラヴィンスキーの「春の祭典」を思い起こさせる、キリスト教化以前のペイガン(異教的)な雰囲気を感じさせる曲と映像が出たところですので、今日の次回番組収録ではベラルーシとリトアニアのペイガン・ソングをテーマにしました。音源はストラヴィンスキーの自作自演と、メロディアのベラルーシ音楽アンソロジー2枚組、イネディ盤のBaltic Voiceです。今日は先回りしてyoutubeをいくつか見てみようかと思います。
「春の祭典」では、冒頭のファゴットのメロディに、リトアニア民謡がモチーフとして使われていました。 太陽神への生贄として一人の乙女が選ばれて生贄の踊りを踊った末に息絶え、長老たちによって捧げられる、という筋の「春の祭典」には、キリスト教化される以前のロシアの原始宗教の世界が根底にあると言われますが、導入のモチーフがロシアではなく、リトアニアだったかと言う驚きがまずあります。旧ソ連内ではありますが、スラヴ系のロシアやベラルーシと、バルト系のリトアニア。同じインド・ヨーロッパ語族ではあっても全く別グループです。その関係について調べてみたくなりました。

Belarusian pagan song

Belarusian traditional pagan song - Lecieli żurauli

Lithuanian pagan folk song | Jurginių liaudies daina - Geras vakaras

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2017年5月15日 (月)

ベラルーシの伝統音楽

ゼアミdeワールド57回目の放送、日曜夕方に終りました。17日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。今回もユネスコ盤の現地録音が中心ですので、youtube捜索は困難、もしくは多分データ自体無いと思いますので、似たイメージの曲をアップしておきます。

今回はベラルーシの音楽を聞いてみたいと思います。
ロシア、ウクライナと東スラヴの一角をなし、昔は「白ロシア」と呼ばれました。昨今はヨーロッパ最後の独裁者の話題が記憶に残り、戦中のパルチザンやチェルノブイリの原発事故など、悲劇的な印象も強い国ですが、地方色豊かな民謡や民話の宝庫として知られています。ベラルーシ語は、言語的にはロシア語とウクライナ語の中間に位置づけられます。
昔から日本ではベロルシアを訳した白ロシアとも呼ばれ、ソ連崩壊から20年以上経った今も、ほぼその名前通りのベラルーシと呼ばれています。国名の由来は、13~16世紀のモンゴルによる支配の、所謂「タタールのくびき」の頃に、モンゴル人が中国から学んだ文化である「方角を色で呼ぶ方法(五行思想)」をルーシ(ロシア)に持ち込んだため、赤ルーシ(南部ルーシすなわち現在のウクライナ西部)、白ルーシ(西部ルーシすなわち現在のベラルーシ)、黒ルーシ(北部ルーシすなわち現在のモスクワ周辺)という名称が生まれ、そのうちの白ルーシ(ベラルーシ)が国名として残った、とされています。ウクライナには小ロシアという一種の蔑称もありました。
ウクライナの北に位置し、東はロシア、西はポーランド、北はバルト三国のリトアニアとラトヴィアに接するこの内陸国で私がまず思い出すのは、第二次大戦中に東進するナチスドイツに相対し、全ベロルシアが一枚のパルチザン部隊となって戦い、国民の4人に1人が命を落としたと言われる、熾烈を極めた対独レジスタンスについてです。タイトルを忘れてしまいましたが、ナチスとの死闘を描いた映画が80年代にありました。
ベラルーシの音源は、ウクライナと同じくフランスのユネスコ・コレクションから一枚ありまして、最近になってロシアのメロディアからソ連時代の1962年~1986年録音の2枚組も登場しました。

GUDA: Belarusian Spring folk song "Oh, you white birch!" (белорусская народная песня)

ストラヴィンスキーの「春の祭典」のような、キリスト教化以前のペイガン(異教的)な雰囲気を感じさせる映像ですが、ここで出てくる民謡は、正にユネスコ盤に入っているようなタイプです。

ユネスコ・コレクションの方には、その第二次大戦中のパルティザンの歌が2曲入っておりますので、まずそれをかけてみます。女性達の合唱は「兵士の帰還の喜び」を歌っていますが、やはりこのトラックがこの盤の白眉のように思います。

<ベラルーシの伝統音楽~第二次大戦中のパルティザンの歌 6分52秒>

ベラルーシのユネスコ・コレクション盤は、南部のポレシエ地方の民謡が集成されていて、この地方はプリピャチ川の流域にあたる森林に覆われた地方で、伝統的な色彩の強い素朴で美しい歌が残っていた所です。ベラルーシ統一以前の古い歌や、コサックの多声歌なども収録されています。この盤の最初を飾っているクリスマス・キャロルと新年の歌を次にかけてみましょう。プリピャチと聞くと、チェルノブイリに近いというイメージがありますが、原発事故以前のこの録音からはその影響は当然感じられず、この長閑さには"伝説・昔話と歌の国"といわれた詩情豊かな国民性が確かに表われているように思います。

<ベラルーシの伝統音楽~クリスマス・キャロルと新年の歌 4分10秒>

バラードと題する歌唱では、コサック歌謡を思わせるポリフォニックな合唱を聞かせています。

<ベラルーシの伝統音楽~バラード 3分58秒>

露Melodiyaの2枚組からも特徴的な重唱を一曲かけておきましょう。ユネスコ盤にも似たタイプのロンドがありますが、近い音程で2つの声を合わせる歌声がとてもインパクト大です。曲名は和訳するなら「谷は深く、霧は広がっている」となると思います。歌唱はAnna KulakovskayaとAnton Makhnachという事ですので、男女の重唱でしょうか。Gomel地方の歌とあります。

<Anthology of folk music. Spirit of folk ~ BELARUS The Valley is wide, the Mist is spreading. 1分55秒>

最後に、スクリプカというヴァイオリンの独奏と、器楽演奏も多い「祭の歌と踊り」5曲をかけてみますが、歌では東スラヴそのものなのに対して、器楽の響きはロシアと言うより、どこかポーランドかスカンジナヴィアの音楽に近いものすら感じさせます。因みに、ロシア語でもヴァイオリンはスクリプカと言います。これらの曲を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<ベラルーシの伝統音楽~スクリプカの小曲 43秒>
<ベラルーシの伝統音楽~祭の歌と踊り 7分46秒>

Belarus Folk Music

器楽も同じ曲はないと思われますので、とりあえずこちらを。途中3分前辺りから打弦のツィンバロムが弾いている耳馴染みの旋律は、ロシアの「行商人」です。他は大体ベラルーシの音楽だと思います。

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2017年5月 2日 (火)

ロシアのヴェスニアンカ?

放送でかけたような女性の地声合唱の民謡原曲を探していたら、ロシア側の合唱のようですが、веснянка(ヴェスニアンカ)の表記が確かにあります。ロシア語で「春」はヴェスナーですから、ヴェスニアンカというウクライナ語も容易に意味が類推できるのですが、ロシアでも春の歌(民謡)のことを、こう呼ぶのでしょうか? 2本目にはрусская народная песня(ルースカヤ・ナロードナヤ・ペスニャ=ロシアの民謡)と、はっきり出ています。2本目は間違いなくロシアの歌だと思います。放送で少しかけたBoheme Musicの音源に似た、非常に素晴らしい歌唱です。マイクなしで鮮烈な歌声を響かせ、こういう風に指揮のように振りが入るのかとか、衣装や歌っている時の凛とした表情などを確認できて、非常に嬉しい映像資料です。しばし、聞き惚れました。

Летела Стрела ☀ Вся Надєжда / весенняя закличка, календарная обрядовая песня веснянка

Черный ворон воду пил ☀ Вся Надєжда / обрядовая свадебная хороводная русская народная песня

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2017年5月 1日 (月)

веснянка ヴェスニアンカ

ゼアミdeワールド55回目の放送、日曜夕方に終りました。3日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。今回はさすがにyoutubeはおそらくほとんど無いだろうと思いますので、見つかった曲だけ今週中に上げられればと思います。ヴェスニアンカも、放送でかけたような民謡原曲ではなく、アレンジが入って耳当りが良くなっています。2本ともアップした曲とは別です。

前々回に西ウクライナの音楽を取り上げましたので、今回はウクライナ音楽の4回目として、東部と北部を中心にクローズアップしてみたいと思っておりましたが、日本の倍近い面積の大きな国ですので、地方によって音楽も少なからず違っていて、その中では前々回のルーマニアやハンガリーの音楽に近い西ウクライナのブコヴィナやイヴァノ・フランキフスケ地方辺りの音楽が特に異彩を放っていました。何度か取り上げましたユネスコ・コレクションの「ウクライナの伝統音楽」では、各地方の音楽が混在していまして、それぞれがどの方面に当るか調べてみましたが、西ウクライナだけでも、他にポーランドに近い音楽があったり、かなり地方色が豊かなことが浮き彫りになってきました。

ユネスコ盤では、季節ごとの歌もまとめられていますので、順に取り上げてみたいと思います。ベラルーシやポーランドに近い北西部のリヴネ地方のヴェニスアンカと呼ばれる「春の歌」を4曲続けてかけてみます。

<ウクライナの伝統音楽~春の歌1 38秒>
<ウクライナの伝統音楽~春の歌2 1分12秒>

Веснянка - Ukrainian Dance


Веснянка - Побреду


次は中西部のジトミール地方の合唱で、南スラヴ系にかけてよく聞かれる独特の叫び声がつきます。

<ウクライナの伝統音楽~あの山の上に 58秒>

次はリヴネ地方のヴェスニアンカの合唱です。

<ウクライナの伝統音楽~牧人 1分35秒>

続きまして、「夏の歌」ですが、中西部のフメルニツキ地方の祭り歌の合唱です。

<ウクライナの伝統音楽~柳の近くの小川で 1分52秒>

次は中西部ジトミール地方の合唱で、聖ペテロの祭日(6月24日)の歌です。男も女もリボンや花で飾り立てて歌う求婚の歌でもあります。

<ウクライナの伝統音楽~今日は聖ペテロの日だ 1分21秒>

次は北部のチェルニヒヴ地方の収穫の歌で、畑で仕事をしながら歌われる昔からの形式を残した合唱です。

<ウクライナの伝統音楽~草を刈る人 1分41秒>

次は中西部ジトミール地方の合唱で、こちらも古風な儀礼的な歌の一つです。各節ごとに独特な裏声が入ります。

<ウクライナの伝統音楽~日没 1分15秒>

続きまして、結婚の歌も数曲入っております。まずは北部チェルニヒヴ地方の合唱で、花で飾られた式用の木を捧げての花嫁の行列のメンバーによって、東北ウクライナに典型的なスタイルで歌われています。

<ウクライナの伝統音楽~花飾りのために 1分22秒>

次は中西部フメルニツキ地方の女性合唱で、花嫁の髪をときほぐしながら歌われる儀式歌です。花嫁は生家を離れる悲しみに泣いていると言う内容で、日本の、金襴緞子の帯締めながら花嫁御寮は何故泣くの、と始まる「花嫁人形」をすぐさま思い出させます。

<ウクライナの伝統音楽~どうして嘆き悲しむの 2分16秒>

コサックの歌も入っておりまして、手回しヴァイオリンのハーディーガーディーを弾き語っています。ふくろうが戦場で死んだ一人のコサックについての知らせを彼の妻子に伝えるという歌です。

<ウクライナの伝統音楽~ふくろうよ、もう不吉を告げないで 3分35秒>

次は東北部のハルキフ地方に伝わる無伴奏の合唱による若い女性の嘆き歌で、コサック起源の旋律のようです。ウクライナ草原地帯の典型的な節回しです。

<ウクライナの伝統音楽~夜明けの母さん 1分31秒>

次はリイイ地方の野外での歌と踊りの曲で、ポーランド系のテンポ・ルバート風なポルカ・リズムが特徴的です。

<ウクライナの伝統音楽~広い流れのドナウで 1分18秒>

では、最後にウクライナ盤のヴェスニアンカを聞きながら今回はお別れです。女性のみの「春の歌」ヴェスニアンカをレパートリーの中心にしている、リヴネ地方のおそらく同名の合唱グループですが、これからかけます「オイ・ナ・ゴーリェ・イ・スーヒー・ドゥーブ」という曲はパブートヴァという別なジャンルになるようです。とても印象的な曲です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<ヴェスニアンカ/オイ・ナ・ゴーリェ・イ・スーヒー・ドゥーブ 3分>

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2017年4月24日 (月)

ハンガリーのチャールダッシュ

ゼアミdeワールド54回目の放送、日曜夕方に終りました。26日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。

前回ウクライナ西部のハンガリー系音楽としてチャールダッシュが出てきましたが、先日ラヂバリのパーソナリティTさんとやりとりしていて、チャールダッシュと言うのは、「モンティのチャールダッシュ」のみを指す固有名詞のように思われていて非常に驚いたことがありました。90年代に葉加瀬太郎さん他のクライズラー&カンパニー辺りが弾いてからでしょうか、日本で非常にポピュラーになりまして、チャールダッシュと言うとこのイタリアの作曲家モンティの書いた曲のみを指すように思われ勝ちのようにも思います。ですので、いつかチャールダッシュだけでやりたいと思っておりました。ハンガリーに回ってきたら、また改めて大きく取り上げたいと思いますが、今回はウクライナ音楽めぐりの途中でちょっと寄り道します。
チャールダッシュと言うのは、前回少しお話しましたが、19世紀前半のハンガリー独立戦争の頃に募兵活動の中で生まれた男性の踊りヴェルブンクが基礎になってヴェルブンコシュが生まれ、更にそれが居酒屋(チャールダ)で洗練されてチャールダッシュが生まれたとされています。ゆったりとした哀愁漂うラッサンの部分と、急速なフリスカの部分からなる舞曲で、ハンガリーのジプシー楽団が盛んに演奏し妙技を披露、19世紀にはヨーロッパ中で大流行し、ウィーン宮廷は一時チャールダーシュ禁止の法律を公布したほどだったそうです。そんなムーヴメントの中でドイツの大作曲家ブラームスのハンガリー舞曲や、サラサーテのツィゴイネルワイゼンが生まれています。ハンガリーから遠く離れたスペインの作曲家サラサーテが、何故チャールダッシュを書いたのか?と長年疑問に思っていましたが、そういう背景があったことを後で知りました。
まずは、ブラームスのハンガリー舞曲から有名な第5番と第1番を続けてかけてみましょう。カラヤン指揮ベルリン・フィルの定番です。個人的にはメランコリックな旋律美を極めている1番が、特にチェリビダッケ指揮の名演を聞いてから一番のお気に入りでした。

<ブラームス / ハンガリー舞曲 第5番 2分35秒>
Maxim Vengerov Brahms:Hungarian Dance No.5

現在のトップヴァイオリニストと言われるマキシム・ヴェンゲーロフの演奏。

<ブラームス / ハンガリー舞曲 第1番 2分52秒>
Khatia Buniatishvili, Yuja Wang - Brahms, Hungarian Dance No. 1

最近ホットな二人の女流ピアニストによるピアノ連弾版

第5番の曲自体はケーレル・ベーラのチャールダーシュ "Bartfai emlek" が原曲とされています。私の所属している弦楽合奏団でも5番は既に何度か舞台で弾きましたし、1番も猛練習しましたが、こちらはかなり難しくまだ舞台にはかけられておりません。
ジプシー楽団が演奏してきたチャールダッシュは、それこそ星の数ほどあるようで、ジプシーは通常楽譜に記録しないので、昔のチャールダッシュは忘れられているのかも知れません。ハンガリー舞曲の原曲もおそらく全ては分らないのではと思います。

次に作者不詳のチャールダッシュハ短調をかけてみましょう。こちらも非常に印象的なメランコリックな名旋律だと思います。演奏はハンガリー国立民族アンサンブルで、彼らは1977年頃来日して、その舞台が当時テレビで放映されました。この作者不詳のチャールダッシュは今でも親しまれているようで、youtubeで結構見ることが出来ます。それらはまたZeAmiブログで取り上げたいと思います。

<エチェル村の結婚式~チャールダッシュハ短調 2分44秒>
c-moll csárdás


モンティのチャールダッシュは、CDでは持ってなかったので、ツィゴイネルワイゼンを次にかけてみましょう。この曲も19世紀ヨーロッパでのチャールダッシュ大流行の中で生まれた一曲です。ロン=ティボー国際コンクールのヴァイオリン部門で日本人として初めて優勝した小林美恵さんのヴァイオリン独奏です。彼女の弾くヴォーン・ウィリアムズの「揚げひばり」目当てで入手した盤ですが、ツィゴイネルワイゼンやイザイの曲なども素晴らしい演奏です。

<サラサーテ / ツィゴイネルワイゼン  小林美恵 8分41秒 抜粋>
Csárdás - Vittorio Monti (Violin & Piano)

ツィゴイネルワイゼンはまた後日にして、放送でかけられなかったモンティのチャールダッシュをどうぞ。

次にライコー・ヤング・ジプシー楽団の演奏で、ハンガリーで一番大きなバラトン湖をテーマにしたイェネー・フバイ作曲の名曲「バラトン湖の波の上で」と言う曲をかけてみましょう。この曲もジプシー楽団がよく取り上げる曲で、チャールダッシュのラッサンの部分に当るような哀愁の名旋律です。ヴァイオリニストとしてのフバイはヴュータンやブラームスから称賛を受け、また彼の室内楽演奏のパートナーであるチェリストのダヴィッド・ポッパーは作曲家としても有名で、チェロの優れた難度の高いエチュードを沢山残していて、私もいくつか取り組んだことがあります。フバイの弟子にはヴァイオリンの巨匠ヨゼフ・シゲティや後に指揮者に転向したユージン・オーマンディがいます。

<チャールダッシュ・ラプソディー~Jeno Hubay / On the wave of the Balaton 6分50秒 抜粋>
Jenö Hubay "Hullámzó Balaton" Scènes de la csárda No.5 - "The waves of Lake Balaton"


では、最後にブラームスのピアノ四重奏曲第1番のラスト、第4楽章を聞きながら今回はお別れです。ジプシー風のロンドとブラームス自身によって銘打たれたこの情熱的な楽章故に、この曲は渋い室内楽の中では人気があります。ピアノがマルタ・アルゲリッチ、ヴァイオリンがギドン・クレーメル、ヴィオラはユーリ・バシュメト、チェロがミッシャ・マイスキーというオールスター級のメンバーが揃った名盤です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<ブラームス / ピアノ四重奏曲第1番 第4楽章 8分10秒 抜粋>
Brahms - piano quartet no 1 g-minor op 25 - Fauré Quartett

ピアノ四重奏専門の若手実力派、フォーレ四重奏団の演奏で、この曲の全曲。32分位からが第4楽章です。

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2017年4月21日 (金)

ムジカーシュの 「トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽」

ウクライナの吟遊詩人が弾いたバンドゥーラとコブザの類似点や、そもそもルーマニアの楽器と思っていたコブザがウクライナ起源のものだったのか、についても興味深い探りどころですが、今週の放送は西ウクライナでしたから、アルカンとタラフ・ドゥ・ハイドゥークスのどの曲が似ていたかについてさかないと、来週はチャールダッシュですので、もう回数がない訳ですが、只今家人の転勤に伴う引越手伝いもあってドタバタの中のため、先回りしてムジカーシュの演奏で、ジューイッシュ・ナンバーを上げておきます。ジューイッシュ・チャールダッシュの4年前の演奏です。(こちらで調べる必要のない)長尺の名演を週末たっぷりお楽しみ下さい。m(_ _)m 90年前後の来日公演は見に行きましたが、最近のムジカーシュを拝める嬉しい影像です。
1本目ですが、ムジカーシュの名盤「トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽」に入っていたハシッド・ダンスを満面の笑みを浮かべて弾くお爺ちゃんが、数々のユダヤの曲を覚えていたジプシー音楽家です。これらを弾いていたユダヤ楽士のほとんどが、ホロコーストで亡くなったそうです。

Muzsikas: Chasid Dances with Cioata

Jewish Csárdás. Muzsikás (Hungary) in Moscow, 17.03.2013

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2017年4月20日 (木)

Бандура演奏の色々

ウクライナの民族楽器バンドゥーラ(Бандура)についてyoutubeを調べたのは初めてでしたので、色々な演奏スタイルがあることにとても驚きました。13日に上げた男性の弾き語り(今日の2本目は同じ人)には、吟遊詩人が語り継いできたドゥーマらしい深さがあり、バンドゥーラの掻き鳴らし方にも独特なものを感じました。もっと簡単にコード弾きをしているような演奏もあったり、男性の弾き語るドゥーマとは違うウクライナ民謡の優美さの一面を聞かせる女性デュエットの一本目など、どれもとても素晴らしいと思います。

KIEV - Khreschatik. Hermanas tocando la bandura ucraniana

«З країни в Україну».

Унікальна бандура

Бандура

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2017年4月17日 (月)

西ウクライナの音楽

ゼアミdeワールド53回目の放送、日曜夕方に終りました。私は16日夜のローゼン先生のクラスコンサートの打ち上げのため聞けておりませんが、いかがでしたでしょうか。19日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。youtubeは、フツルのトレンビータ、フツルカ、アルカンを中心に、カルパチアの方はハンガリー側の映像ですが、いくつか上げておきました。

ウクライナ音楽の3回目ですが、今回は西ウクライナの音楽をクローズアップしてみたいと思います。フランスのQuintanaから出ていた「カルパチアの伝統音楽」はタイトル通りで西ウクライナ音楽そのものですが、ユネスコ・コレクションの「ウクライナの伝統音楽」も、聞き返してみると西ウクライナの音源も多く、その華やかさから目立っています。
前々回にかけました美しい合唱音楽がどこで盛んなのかよく分りませんが、おそらく首都のキエフなどウクライナ中部辺りなのかなと思います。東の方ではコサックの音楽がよく知られますが、ポーランド、スロヴァキア、ハンガリーと接する西ウクライナの、特にブコヴィナ地方では、ハンガリーやルーマニアの音楽との類似が見られ、更にユダヤ音楽も少し出て来たり、とても魅力的な音楽の多い所だと思います。
まずは、ユネスコ・コレクションの「ウクライナの伝統音楽」から、「トレンビータの序曲」という曲をどうぞ。

<ユネスコ・コレクション「ウクライナの伝統音楽」 / トレンビータの序曲 54秒>
Hutsul trembitas (alphorns): greeting the shepherds from the highland


強烈な音でびっくりされた方も多いのではと思いますが、この笛は、カルパチア山脈の夏の牧草地ポロニーナに羊を移動させる時に吹き鳴らされてきた長いトレンビータと言うアルペンホルンの一種でした。家畜集めや村人へのシグナル、祭りなどに使われるようです。

次はトランスカルパチア地方の山人たちの舞曲で、打弦楽器のツィンバロム、ヴァイオリン、ソピルカ、トレンビータ、アコーディオンに鞭の音まで入ります。後半の速い踊りはアルカンとかドロボティアンカと呼ばれるものです。ルーマニアのジプシー楽団タラフ・ドゥ・ハイドゥークスの音楽に近い印象も受けます。

<ユネスコ・コレクション「ウクライナの伝統音楽」 / 羊飼いが出かける 6分32秒>

次はカルパチア山脈のトロイスタ・ムジカによる民族舞曲で、ヴァイオリン、ツィンバロム、バス・ドラムで演じられています。タイトルのフツルカのフツルと言うのは、ウクライナ西部山地のウクライナ系少数民族の名で、地方名でもありまして、フツル人という表記も見かけます。この曲は、フツルに多いルーマニア風のラプソディです。

<ユネスコ・コレクション「ウクライナの伝統音楽」 / フツルカ 4分21秒>
ПЕЧЕНІЖИНСЬКА ГУЦУЛКА. HUTSULKA from PECHENIZHYN.


ユネスコ・コレクション「ウクライナの伝統音楽」の西ウクライナ音源の最後は、アルカンと呼ばれる投げ縄の踊りの曲です。イヴァノ・フランキフスケ地方の民族アンサンブル“ヴェッセルカ”の演奏によるフツル舞曲です。これもルーマニアのジプシー楽団タラフ・ドゥ・ハイドゥークスの音楽を思い出させます。

<ユネスコ・コレクション「ウクライナの伝統音楽」 / アルカン 3分5秒>
Arkan | Hutsul circle dance | Initiation into warriors | Hutsuls | Ukrainian highlanders


次にQuintanaの「カルパチアの伝統音楽」ですが、この盤では西ウクライナのハンガリー系の音楽が中心になっています。前々回に結婚式のチャールダッシュのヴァイオリン独奏はかけましたので、他のチャールダッシュやその前進の舞曲ヴェルブンコシュをかけてみたいと思います。まずは、マジャール・ヴェルブンクという曲をどうぞ。

<Quintana「カルパチアの伝統音楽」 / Magyar Verbunk 2分4秒>
Szólótánc Gála - Magyar verbunk


ヴェルブンクと言うのは、19世紀前半のハンガリー独立戦争の頃に募兵活動の中で生まれた男性の踊りで、これが基礎になってヴェルブンコシュが生まれ、更にそれが居酒屋(チャールダ)で洗練されてチャールダッシュが生まれたという経緯があります。ヴェルブンクにはヴェルブンコシュになる前の、男性の荒削りな踊りの印象が強く残っているように思います。
次にマジャール・ヴェルブンクに続いてこの盤に入っているジプシーのチャールダッシュをかけてみたいと思います。ほとんど同じ旋律に聞こえますが、こちらではチャールダッシュになっています。

<Quintana「カルパチアの伝統音楽」 / Ciganycsardas 3分22秒>
Zurali Banda- Ciganycsardas


この盤にはユダヤの音楽も入っていましたので、次にマゼルトーフやホラなどのダンス曲をかけてみます。ハンガリー音楽のスタイルに乗せて、特徴的な哀感溢れるユダヤ・メロディがメドレーで出てきます。

<Quintana「カルパチアの伝統音楽」 / Mazeltof 2分37秒>

では、最後にQuintanaの「カルパチアの伝統音楽」のラストを飾っているチャールダッシュを聞きながら今回はお別れです。ヴァイオリン2本、アコーディオンとサックスの四重奏ですが、サックスがハンガリーのクラリネット系管楽器タロガトーのような柔らかく不思議な音色を出しています。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Quintana「カルパチアの伝統音楽」 / Csardasok 2分25秒>

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2017年4月13日 (木)

ボフスラフのマルーシャのドゥーマ

バンドゥーラ弾き語りの「ボフスラフのマルーシャのドゥーマ」という曲、あるいはその物語は、ウクライナでは誰でも知っているようなとても有名な話なのでしょうか。1966年に作られた秀逸なアニメーションがありました。「トルコに捕われたコサックの苦悩を歌った古い悲劇的なドゥーマ」という内容でしたが、確かに「タタールのくびき」を想起させるようなアニメに見えます。
一本目にそのアニメ、2本目にもう一度先日アップしたドゥーマ(ユネスコ・コレクション「ウクライナの伝統音楽」に唯一入っていたバンドゥーラ弾き語りと全く同じ)、3本目にはМарусю Богуславкуと格変化したと思しきタイトルが見えますが、同じテーマの別メロディのドゥーマでしょうか、バンドゥーラの演奏をよく確認できるこの弾き語り映像を上げておきます。バンドゥーラという楽器は、とても心に沁み入る音で、実演を見れて感激しました。一度実物を見てみたいものです。

Маруся Богуславка (1966), мульфільм українською

Дума про Марусю Богуславку (Старовинна українська дума, XVIIст.)

Ярослав Крисько Дума про Марусю Богуславку

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