インド

2019年7月29日 (月)

パリからカルカッタへ バッタチャリアの旅

ゼアミdeワールド171回目の放送、日曜夜にありました。31日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。

今回もインドの世界的な民族音楽学者のデベン・バッタチャリアのフィールド・レコーディングをかけながら、当番組でその地域に回っていく大体の予測をして行きます。1953年から、彼が80歳で亡くなる2001年までに録り溜めてていた未発表音源からなるSUBLIME FREQUENCIESの「Paris to Calcutta: Men and Music on the Desert Road」の4枚組から気になる音源を選んで、30分に入るだけご紹介します。現物は手元にないので、今回もアップルミュージックからの音出しです。youtubeはベドウィンとシーク教の2本のみのようです。

ギリシア北部のサロニカの教会音楽に始まり、トルコのチフテテリとスーフィーを含む宗教歌、吟遊詩人の歌が6曲続き、その後に砂漠の遊牧民ベドウィンの音楽が入っています。ヨルダンかサウジアラビアかどちらかではと思います。ベドウィンらしい擦弦楽器ラバーバの弾き語りの音源は、VDE盤くらいしかなかったので、まずこちらをおかけします。当番組でサウジ辺りに回るのは、5年後くらいになりそうです。

<1-8 Performer unknown - Folksong from Outebeh, vocals and rababa (one stringed fiddle) 4分29秒>

もう一曲ベドウィンの音楽から、女性の歌の入った踊りの音楽です。

<1-10 Performer unknown - Bedouin dance from Katana 2分31秒>


その後は、おそらくシリアの古都アレッポ辺りのイスラム神秘主義の音楽と、アンダルシア系の古典音楽ムワッシャハの長尺の演奏が聴けます。これらシリアの音楽は2年ほど前に取り上げました。

2枚目はイラクと思われる音源から始まりますが、音の動きが小さく不思議な4曲目をおかけします。擦弦楽器レバーブの伴奏で男性が掛け合うように歌っていますが、馬に乗って歌うラブソングだそうです。この後サントゥールや擦弦楽器ジョザの入ったイラキ・マカーム系の音源が入っています。イラクも2年ほど前に取り上げました。

<2-4 Suleiman and friends, accompanied by rebab - Hijeni (A love song often sung while riding away on a horse) 6分17秒 抜粋>

イラクの後にイランのタール独奏が入っていて、演奏者がザッリンパンジェとあるので、録音時期も考慮すると、もしかしたら小泉文夫氏の弟子筋で東京芸大名誉教授の柘植元一氏が教わったタール奏者かも知れません。10分余りありますので、冒頭の辺りだけおかけします。ペルシア音楽はこの番組の始まった頃にごくごくかいつまんでですが、取り上げました。

<2-9 Ostad Zareen Panje Bel - Tar solo in humayun dastgah 10分45秒 抜粋>

3枚目もペルシア音楽で、トンバクの独奏から始まりますが、3曲目にアボルハサン・サバーのセタール独奏が入っていますので、そちらをおかけします。よく聞くダルヴィーシュ・ハーンの曲です。

<3-2 Ostad Abol-Hassan Saba - Setar improvisation in mahour dastgah 2分40秒>

その後はシャーナーメの勇壮なトンバク、ダリウシュ・サフヴァトの美しいサントゥール演奏など、ペルシアの音楽で終わりますが、ラストのホマーユン旋法のEskandare Ebrahimi and Orchestraの演奏がライトクラシカルな感じでも、かなり異色で面白いので、16分の中から少しだけおかけしておきます。

<3-7 Eskandare Ebrahimi and Orchestra - Humayun 16分7秒 抜粋>

4枚目もEskandare EbrahimiのSetar演奏から始まりますので、イランの音源が続いています。

2曲目からアフガニスタンの音楽になりますが、ここも当番組では終わったばかりですので、予告にはなりません(笑) 4曲目のヘーラートの愛の歌は、アーゴ盤と同じ音源のように思いました。5曲目の謎の鼻笛がアフガンなのかインドなのかは現物がないので不明です。

4枚目の6曲目から終わりの14曲目までがバッタチャリアの故郷であるインドの音楽になりますが、まず最初に入っているのが、北西部のパンジャブ地方に多いシーク教の音楽です。ヒンドゥー教とイスラム教の融合した宗教で、インドの人口のわずか2パーセント程なのに、シーク教徒の男性のきっちり巻いたターバンと髭のイメージは、印僑の活躍もあって広く知られています。冒頭だけおかけします。当番組でインドに回ってくるのは、6年後くらいになるかも知れません。

<4-6 Performers unknown, harmonium, tabla - Sikh song on Hindu/Moslem unity 11分45秒 抜粋>


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今回はライブ情報を十分に入れる時間がなくなりましたが、7月31日(水)の加藤吉樹さんの「アラブ音楽ライブ ~ウードソロ~」のご予約受付は、再放送では当日になってしまいますが、本放送の時はまだ継続中です。開場 18時00分   開演 19時00分  会場 Cafeトーク・トーク 今治市北高下町2-1-7ハイツ近藤2の1階  です。

*駐車場は限定5台ですので、出来るだけ公共交通機関等をご利用下さい。

定員:25名限定      珈琲か紅茶のワンドリンク付き 2000円


ご予約:メール VYG06251@nifty.ne.jp

   
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この盤は「パリからカルカッタへ」というタイトル通り、ギリシアの1曲だけですがバッタチャリアの活動拠点だったヨーロッパから始まり、彼の故郷であるインドの音楽が終点になっています。シーク教の次は、北部のヒマーチャル・プラデーシュ州の州都シムラーの女性の民謡歌唱、Jyotish CH. Choudhury, sitarのRaga zilaなどが続きますが、バッタチャリアの故郷であるインド東部ベンガル地方のカルカッタ(コルカタ)辺りの音楽は、演奏者の名前から推測するにBhona, sitar; Mangal Mukerjee, ghara (claypot drum) - Raga kafi位かも知れません。もう少しバウル辺りの音源を聞きたかった気もします。

最後はヒンドゥー教の宗教歌バジャンとヒンドゥー寺院の鐘と太鼓で締められています。12曲目のJai Chand Bhagat and Babu, vocals, cymbals, ektara - Bhajan (devotional song)を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<4-12 Jai Chand Bhagat and Babu, vocals, cymbals, ektara - Bhajan (devotional song) 4分15秒>

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2014年5月 1日 (木)

口琴の超絶技巧 トラン・カン・ハイ、ラジャスタン

トラン・カン・ハイの口琴演奏を更に見ている内に、インド西部ラジャスタンの超絶技巧を見つけました。両面太鼓ドーラクとのデュオでのリズムの饗宴は凄まじいものがあります。おそらくランガだと思いますが、リズムにはモダンな前半(ロック風?)に対して後半では北インドのターラの複雑な展開を強く感じさせます。
ヴェトナムのトラン・カン・ハイも三つの弁のあるヴェトナムの竹製口琴で凄い技を披露しています。こちらはやはりヴェトナムの少数民族の大らかな一面が垣間見えるようです。同じ口琴を使っても音楽文化の違いでこれ程音楽性の違いが出るとは、改めて驚きました。民族音楽学者として、音楽家として活躍する彼のフランス語の上手さにもびっくりです。

Guimbarde (morchang) du Rajasthan

TRAN QUANG HAI plays a Vietnamese 3 tongue Jew's harp

TRAN QUANG HAI dans MAP: la guimbarde

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2013年12月19日 (木)

インド系ユダヤ人

リンクにムンバイ(ボンベイ)や南インドのケララのユダヤ・コミュニティー関連の映像もありました。特にケララのコーチンのユダヤ・コミュニティーは有名で、シナゴーグの中の十戒の板は、しっかりとヘブライ語で書かれていますが、女性はサリーを着ているし、色も黒くほとんどすっかりインド化していて驚いたことがあります。彼らはミズラヒーム(東方系ユダヤ人)の一派で、古い時期に古代イスラエルから離散してインドに辿り着いたグループと言われています。一本目は音無しのモノクロ映像ですが、1937年のケララのコーチン・ユダヤ・コミュニティーでの貴重な映像だろうと思います。トーラーの巻物を持って練り歩く姿が見えますが、ユダヤ新年のシムハット・トーラーかも知れません。2本目の最近のドキュメンタリーも興味深い内容ですが、BGMは何故か「五木の子守唄」から始まります。3本目はムンバイのコミュニティーでのドキュメント。彼らもミズラヒームになるのでしょうか?

Scenes of Jewish Life in Kerala, India (1937)

The Jews of Jew Town, Mattencherry, Kerala, India.mpg

Bene Israel: Jews of Mumbai (Bombay)

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2013年12月18日 (水)

Indian Diversity Zoroastrians

パールシーの宗教儀礼自体の映像もありました。日本では古くから拝火教と言われた通り、火を神聖なものとして祀っている様子がよく分ります。英語のナレーションに隠れて儀礼歌はよく聞こえませんが、色々な儀礼の模様が映っているようです。少年が映っているのは、パールシーの元服のようなものでしょうか? イラン側の映像よりもはるかに多いのは、今ではゾロアスター教の中心がインド西部に移っているからでしょう。Indian Diversity(インドの多様性)のシリーズには、前に取り上げたSiddiもありました。

Indian Diversity Zoroastrians The People Of Iran

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2013年12月17日 (火)

パールシーの結婚式

インドのゾロアスター教徒、パールシーの結婚式の映像がありました。ここで歌われているのは、パールシーの祈祷歌の一種でしょう。宗教儀礼自体の映像はさすがに見当たらないようですが、どの宗教でも結婚式にはその片鱗が窺えるものだろうと思います。バルバッド盤で聞いた印象とそう違わないようにも思える、厳粛な宗教歌です。1968年と結構古い映像で、撮影は何とフランスの映画監督ルイ・マルのようです。

Parsi wedding, Bombay, 1968 from Louis Malle's documentary

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2013年12月16日 (月)

ボンベイのゾロアスター教徒

3週間ほど新譜関連が続きましたが、インドに戻ります。西インドの沿岸部のマイノリティーを見ていましたが、前から気になっていたのが、ボンベイ(ムンバイ)のゾロアスター教徒(パールシー)でした。7世紀のササン朝の滅亡後、イスラーム勢力の侵攻から西インドに逃げてきたゾロアスター教徒が今も住んでいます。ボンベイのパールシーで最も有名な一人は、指揮者のズービン・メータだと思います。彼がR.シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」を指揮したりするのは、非常にぴったりなのだろうと思います。もう一人上げるとすれば、クイーンのヴォーカリスト、故フレディ・マーキュリーでしょう。
ゾロアスター教はもちろん古代ペルシアの宗教で、ササン朝では国教でした。現在もヤズドなど中部イラン中心にゾロアスター教徒が残っていて、録音も若干ですが出ています。ムンバイの方の伝統音楽のようなものは残っているのかが気になる点です。まずはいくつか関連動画を上げておきます。

Parsis; 'poor' at Rs 90,000 a month

India's Zoroastrian community in downward spiral (News report - Press TV)

Iranian Peoples of India

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2013年11月21日 (木)

スィッディのマルンガ

インドの黒人スィディと、弓琴のような楽器マルンガについての、9本に渡るドキュメンタリーがありました。アフリカからの彼らの祖先の移動ルートなども出ています。じっくり見れば、奏法などまでかなり色々なことが分りそうです。取り合えず最初の3本をあげておきますので、ご興味のある方はリンクから続きをご覧下さい。弓琴系の楽器は、おそらくインドの他地域では見られないと思います。しかし弾き語られる言葉の響きはインド的で、音楽も東インドの放浪芸人バウルなどを連想させる部分があるのが面白いです。この楽器がビリンバウに似ていることからでしょう、番組自体は英語ですがポルトガル語字幕が入っているので、ブラジルの放送局で放映された際の映像ではないかと思われます。

Projeto Sidi Malunga (1/9)

Projeto Sidi Malunga (2/9)

Projeto Sidi Malunga (3/9)

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2013年11月20日 (水)

インドの黒人音楽の色々

5日の一本目と同じ動画ですが、このアラブ風な太鼓叩き語りを聞いてとても驚き、ピンと来てタアラブをここ数日見てきました。インド洋交易によってなのか、アラブ方面から直接伝わったのか不明ですが、これは非常に興味深いサンプルです。この歌の節と枠太鼓の奏法が、元からインドにあるとは到底思えませんので。
一方、二本目のインド西部グジャラートのスィッディの映像は、スーダン系黒人の伝承のようです。こちらは明らかに一本目とは別系統です。同じインドの黒人の音楽文化において、このように大きな差が生じているのが面白いところです。一本目はタアラブ系音楽がインドに流れ着いたのか、黒人が散在している南西アジアの海岸沿いにイスラームと共にインドまで伝わったのか、どちらかではないかと思いますが。

Music of the Sidis Part 1: Africans in India

Siddhis of Gujarat (originally from Sudan)

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2013年11月11日 (月)

culture musical club zanzibar

木曜に上げたような端整過ぎるアラブ音楽でも、金曜に上げたようなクレオール的な感じでもなく、ちょうどその中間のような、アラブ、インド、アフリカの音楽が入り混じった雑種性があったように思って更に探したところ、Network Medien盤やBuda盤のタアラブのシリーズで聞いたようなタイプがありました。ウードはしばしば装飾部分が壊れていたりするのも、タアラブらしいラフさを演出しているように見えたりもします。ヴァイオリン連の、ぴったり音程があってない感じもタアラブらしく聞こえる点でしょうか。とにかく、こういうラフな方がタアラブのイメージとしてしっくり来ます。1965年に結成され、現在も第一線で活動を続けているカルチャー・ミュージカル・クラブの演奏。

culture musical club zanzibar

Culture Musical Club Studio Performance

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2013年11月 6日 (水)

ビリンバウと弓琴

昨日の2本目に、ブラジルのビリンバウに酷似した楽器が出てきたので、ちょっとビリンバウとアフリカの同種の楽器を見てみましょうか。
ビリンバウは、ブラジルのダンスのような格闘技カポエイラに使われる弓琴の一種で、ボサノバ名曲などにも詠み込まれていたと思います。4本目のようにアフリカにも弓琴がありますが、瓢箪ではなく口腔で共鳴させることが多いようで、弓の形ではあっても、こちらは口琴と言った方が良いのかも知れません。(ガーナのこのタイプの弓琴はカンカラマと言った様に思いますが・・。故カクラバ・ロビさんの実演を見たような記憶があります) 口の形で倍音をコントロールし、間に語りや歌も交えた見事な演奏です。撥を持つ右手の動きも美しいです。
インドに弓琴が入ったのは、インドにおけるポルトガルの拠点だったゴアが近かったからでしょうか? カルナータカ州はすぐ傍です。

Como tocar berimbau com Contramestre Baiano Caxixi

Naná Vasconcelos - Africadeus (live Rome '83)

ナナ・ヴァスコンセロスの凄演

Berimbau africano

南アフリカのビリンバウ。南アではビリンバウとは言わないのかも知れませんが、ほとんど同じです。

EBANDO Mougongo Bwiti Music Video !Mambwiti!

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