ウイグルのロックバンド、ケティックの「タクラマカン砂漠からのロック Rock from Taklamakan Desert」は、もちろん沁みる曲だけでなく、ストレートなロックの方が多いのですが、それだけに奇数番号に入った例の3曲の哀愁が際立ちます。リーダーのぺルハト・ハリクの作曲のTughulghan kunum(私の誕生日)はケティックでは見当たらず他の歌手でありましたが、Tarim(労働者の歌)はケティックの演奏でありました。Iskender Seypullaの作曲、Malike Ziyavudun作詞で、タリム川に沿って出稼ぎに出た世代の、故郷を思う歌とのことでした。カザフ族のアック・バヤンも良かったですが、このタリムとTughulghan kunumも堪らないものがあります。タリムは放送ではフェイドアウトになってしまいましたので、今回はフルで。
ゼアミブログにも書きましたが、4回目にかけました「ウイグルの音楽 イリとカシュガルの伝統」に出てきた女性歌手Ayshamgul Mamatで検索したら、イネディの音源以外にウズベキスタンのタシケントでの割と最近のコンサート映像がありました。この人の名前はAyshigul Mamat (aka Ayshamgul Muhammad)など、色々綴りがあるようで、ドイツのDreyer Gaidoから出ていた「女声によるウイグルのムカームと民謡/エィシングル・メメット The female voice of Uyghur muqams and folk songs/Ayshemgul Memet」と同一人物でした。イネディ盤では解説をよく読まないと出てこない名前だったので、今回検索して初めて気が付きました。
<1 Sigah-Muqam 8分44秒>
Ayshemgul Memet (traditional Uyghur folk songs)
Dreyer Gaidoからのもう一枚は、「タクラマカン砂漠からのロック/ケティック Rock from Taklamakan Desert/Qetiq」という盤です。ケティックはウイグルを中心に活動するロックバンドで、カリスマ的リーダーのぺルハト・ハリクは北ドイツ放送の老舗ビッグバンド、NDRビッグバンドやオスナブリュック交響楽団との共演も行っていて、今作では民族音楽とロックのクロスオーヴァーを見事に成し遂げています。
先日の動画では、現代最高の語り部であるサヌバルの歌声に耳を傾けるウイグルの人々の姿にも胸を打たれるものがありました。彼女は常に用心深く、当局によって設定された制限を超えないようにしたそうですが、彼女の歌が聴衆に語りかけることは望んだので、その結果「拘束」という事態になってしまったのでしょうか。名前の表記ですが、アラビア文字でも先日の動画のロシア語表記でも「トゥルスン」ですので、以後サヌバル・トゥルスンとします。
今日の動画ですが、スミソニアン・フォークウェーズのコンピ盤『MUSIC OF CENTRAL ASIA, VOL. 10: BORDERLANDS』で共演していた中国の琵琶(ピパ)奏者、ウー・マンとの映像で、もしかしたらこの盤のメイキング映像でしょうか。まだこのDVDは見てないもので。わずか6年後のこの事態、ウー・マンさんも悲しんでいるのでは。
テュルク(トルコ)系のウイグル族の音楽の7回目です。今回はイタリアのFelmayから2013年に出ていた「サヌバール・トゥルサン / ウイグルの歌 SANUBAR TURSUN / Arzu - Songs Of The Uyghurs」をご紹介したいと思います。米国スミソニアン・フォークウェーズのコンピ盤『MUSIC OF CENTRAL ASIA, VOL. 10: BORDERLANDS』でも取り上げられていた女性歌手です。
ドタールやタンブール中心の小編成の伴奏で、たっぷりと独唱を聞かせる盤で、売り切れで現物が残ってないので解説は参照できませんが、おそらく12ムカームのレパートリーを中心に歌っているのではと思います。動画を見てみると、弾き語りもかなりありますので、もしかしたら弾き語りの曲もありそうです。
まずは1曲目のYar Ishigide Tursaという曲からおかけします。英題がIf My Love stood at the Door[feat. Nur Muhemmet Tursun]となっています。伴奏はタンブールとギジャクでしょう。
<1 Yar Ishigide Tursa (If My Love stood at the Door) [feat. Nur Muhemmet Tursun] 3分7秒>
ウィキペディアには、「彼女はウイグルの女性シンガーソングライターであり、有名なドタール奏者でもあり、ウイグルムカームの研究者です。トゥルスンは2000年に最初のアルバムをリリースしました。10年以上にわたり、彼女の声は町のバザールを満たし、新疆ウイグル自治区の地元のタクシーや長距離バスから鳴り響きました。」とありますので、ドタールやタンブールを弾き語っているのかも知れません。それと、ウイグル語のアラビア文字をそのまま読めば、トゥルサンではなくトゥルスンになると思います。気になるのが2018年11月に中国当局に拘束され、5年の刑を宣告されたという情報で、それ以来音楽活動が出来なくなっているようです。この歌姫の無事を祈るばかりです。
2曲目はKurd Nakhshisi (Song of the Kurds) [feat. Nur Muhemmet Tursun]となっていて、訳すと「クルドの歌」になりまして、トルコには多いですがウイグルにクルド人はいないと思うので、おや?と思いました。旋法名にはバヤーテ・コルド(クルドの詩または歌の意味)の形でペルシア音楽に入っているので、そういう意味かも知れません。
<2 Kurd Nakhshisi (Song of the Kurds) [feat. Nur Muhemmet Tursun] 4分19秒>
次は7曲目に飛びまして、ドタールの素晴らしい導入で始まるAdemler Ulughという曲です。英題はPeople Are Gloriousになっています。
<7 Ademler Ulugh (People Are Glorious) 4分47秒>
Sanubar Tursun:-Adamlar ulug'
全11曲の中に14分と22分近い長尺の曲がありまして、4曲目の14分を越えるIshchan Yigityurushi: IshchanYigit / Koydum Diding / Yerket / Gul Bolsam (Hard-working Lad Suite) [feat. Nur Muhemmet Tursun]という曲が、12ムカームの壮大さを思わせる素晴らしい演奏ですので、この曲を聴きながら今回はお別れです。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<4 Ishchan Yigityurushi: IshchanYigit / Koydum Diding / Yerket / Gul Bolsam (Hard-working Lad Suite) [feat. Nur Muhemmet Tursun] 14分4秒>
明るいラーク・ムカームは、ペルシア音楽で言えば、イメージ的にはマーフール旋法でしょうか。12ムカームの第一のムカームとして、まず最初に出てきます。イランのMahoor Institutから、Muqam Rak (Tradition of Uyghur 12 Muqams) Yarkend Dance and Song Ensemble& Sanam Ensembleが出ていましたが、おそらく抜粋だったのだろうと思います。この映像の45分過ぎには、例の女性の群舞、ボウルダンスのラーク版が出てきますが、あのエキゾチックな曲調とは一味違って、また面白いです。
以下、萩田麗子さん翻訳・解説の「ウイグル十二ムカーム」のラークから、チョンナグマの冒頭のサタールが出てくる詩の一節です。擦弦のサタールが正に映像にも出てきます。アラビア文字が分かる方は、是非ウイグル語字幕も追ってみて下さい。音楽と一緒に詩を味読することで、よりムカームが分かると思います。この労作は、全てのムカームの演奏に対応しているので、超お薦めです。
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