バート・バカラックの曲を聞いて思う事は、金管楽器やストリングスの印象的な使い方で、I Say A Little PrayerやAlfieはその代表曲でしょう。すかすかのトランペット(あるいはフリューゲルホルン?)の爽やかな音を聞いて「晴れた午後(放課後)の誰もいない校庭」を長年勝手に連想していました(笑) 究極のリラックス・サウンドと言えるでしょうか。独特なストリングスも、後のアメリカのTVドラマ(チャーリーズエンジェルとか)などで類似の音楽をよく耳にしたように思います。
彼はアカデミックな作曲技法をダリウス・ミヨー、ヘンリー・カウエルに師事したそうですが、そう言えば、ミヨーも金管を上手く使った作品がありました。ヘンリー・カウエルにも確か金管の曲がありました。今回調べて興味深かったのが、50年代に多くの曲を書きためながら不遇だった時期に大女優のマレーネ・ディートリヒがバカラックの才能を見抜いてバックに起用したことで、一緒に写っている写真も見かけました。余談ですが、マレーネ・ディートリヒは大阪万博にも来てコンサートを行ったそうです。これは聞きたかったです! リリアーナ・カヴァーニの映画「愛の嵐」の挿入歌も歌ったかも知れません。当時8歳ですから何も分からないでしょうが(笑)
今日の2本は、トロンボーンによるジャズ風のアルフィーと、カーメン・マクレエによるClose To Youです。カーペンターズの歌唱の邦題は「遙かなる影」でした。明日Don't Go Breaking My Heartの動画が見つかって、上げる時間があれば良いのですが。
ラディカル・ジューイッシュ・カルチャー盤に移る前に、一曲だけバカラック自身の楽団の演奏で、I Say a Little Prayer(小さな願い)をおかけしておきます。ディオンヌ・ワーウィックやアレサ・フランクリンの歌唱で有名ですが、ブラックミュージックのイメージは最近まで余りなくて、このしゃれた曲調から多分バカラック作品で個人的に一番好きな曲です。変な喩えですが、放課後の誰もいない校庭を長年勝手に連想していました(笑) 脱力感のあるトランペット(あるいはフリューゲルホーン?)の音が最高です。
<8 Burt Bacharach / Reach Out ~I Say a Little Prayer 2分27秒>
では同じI Say A Little Prayerをラディカル・ジューイッシュ・カルチャーのGreat Jewish Music: Burt Bacharachに入っているMarie Mcauliffeの演奏でおかけします。この盤ではバカラック・ナンバーをジョン・ゾーン周辺の先鋭的な演奏家が、様々な実験的アレンジで披露しています。
<2-3 Great Jewish Music: Burt Bacharach ~Marie Mcauliffe / I Say A Little Prayer 6分12秒>
おそらくバカラックの曲で、「雨にぬれても」と並んで最も有名な曲と思われるClose To Youを次におかけします。カーペンターズの歌唱の邦題は「遙かなる影」となっていました。演奏はWayne Horvitzです。ジョン・ゾーンのネイキッド・シティに参加したことで有名な人です。
<1-1 Great Jewish Music: Burt Bacharach ~Wayne Horvitz / Close To You 2分24秒>
<1-7 Great Jewish Music: Burt Bacharach ~Joey Baron / Alfie 3分28秒>
<2 Burt Bacharach / Reach Out ~/ Alfie 3分5秒>
では最後にMarc Ribotのギター中心の演奏でDon't Go Breaking My Heartを時間まで聞きながら今回はお別れです。マーク・リボーもジョン・ゾーン周辺の最重要ミュージシャンの一人です。面白いことに、この曲はマーク・リボーで1枚目に2回入っています。1回目はマカロニ・ウェスタンの曲のような軽快な調子ですが、2回目はスロー・テンポに落として、ギターで韓国の琴、カヤグムのような音を出しています。2回目まで入ると思います。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週
<1-2 Great Jewish Music: Burt Bacharach ~Marc Ribot / Don't Go Breaking My Heart 2分52秒>
<1-9 Great Jewish Music: Burt Bacharach ~Marc Ribot / Don't Go Breaking My Heart 3分29秒>
来週はバカラックと同じ綴りの7枚目ザインに入っているBacharachをもってマサダの10枚シリーズを終え、ラディカル・ジューイッシュ・カルチャーのバカラック作品集に移りますので、番組でかけてないマサダの曲に触れられるのは、一応今週までとなります。昨日のゼヴルの前に入っているのが今日のアブラカラですが、静謐で神秘的なアブラカラとの組み合わせはシリーズ最大の聴きどころの一つだと思います。
最初この曲名を聞いた時、(ジョン・ゾーンが94年にお会いした時に着ていたTシャツにプリントされていた)カバラーの文句アブラカダブラの関連の言葉かと思いましたが、どうなのでしょうか。後半の、カは「のように」、ダブラはヘブライ語ならダヴァル(話す)で、後半はヘブライ語から容易に推測が効きます。前半のアブラはアラム語(シリア語)では「物事をなす」のようですから、近い言葉のヘブライ語に訳せば、I will create as I speak(私が話すように物事が創造する)と取れるようです。キリスト教の異端であるグノーシス派の内のバシリデス派 (2~4世紀) に端を発し、中世にユダヤ神秘主義のカバラーを通して、おそらくイスラム世界にも広まり、60年代にはハクション大魔王でも聞いたように思いますから(笑)、すっかり「おまじない」や手品の文句として日本でも知られた言葉になりました。日本ではイスラム圏がルーツの言葉と勘違いされているように思います。
アブラカラだと、「~のように創造する」と、動詞の部分が隠れた形になっているようにも見えます。死海文書にアブラカラと出て来るのか、ジョン・ゾーンが後半の動詞の部分を隠したのか、どちらなのでしょうか。
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