セファルディー

2020年3月11日 (水)

イサーク・アルガズィの歌うユダヤ教宗教歌

オスマン帝国の名カントール、イサーク・アルガズィの音源は独Wergoと土Kalan Muzik Yapimからありました。前者では ユダヤ教新年祭の聖歌:Kamti be-ashmoret, Anna ke'av zedoni, Im afes rova'ha-ken, Avinu Malkenu, Yedei rashim, Le-britekha shokhen zevul u-shevu'a, Adonay sham'ati shim'akha yareti, Ochila la-el, Ha-yom harat 'olam, Yetzav ha-el、シャバト(安息日)の歌:Kiddush, Be-motza'ei yom menuchah、ユダヤ教祭日の歌:Kiddush le-Shavu'ot, Teromem bat ramah&Tzame'a nafshi、マフティリームの歌:Ahallelah shem elohim, Yshlach mi-shamayyim、スペイン系ユダヤ人の宗教歌:Al Dio alto, Es razon de alabar、スペイン系ユダヤ人の民謡:Ay mancebo,ay mancebo, Quien conocio mi mancevez, Malana tripa de madre, Cantica de ajugar, Reina de la gracia、シオニスト・ソング:Hatikvahが入っていました。マフティリームの歌まで入っていて、締めがハティクヴァという、話題性豊富な一枚でした。彼が亡くなった1950年はイスラエルが独立して間もない頃で、ハティクヴァが国歌に制定されて2年目でした。
今日はオスマン音楽のガゼルとシャルク以外の、ユダヤ教宗教歌を探してみました。シャヴオートのキドゥーシュは、カラン盤の方にも入っていた音源だと思います。2本目も有名なヘブライ語の祈祷歌アヴィーヌ・マルケイヌ(「我らの父、我らの王」の意)で、アシュケナジームのアヴィーヌ・マルケイヌなど、他のユダヤ・コミュニティの歌と音楽は変われど、ヘブライ語の歌詞は同じです。

zak Algazi Efendi - Kiddush le-Shavu'ot [ Arşiv Serisi © 2004 Kalan Müzik ]


Avinu malkenu Isaac Algazi Efendi

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2020年3月 9日 (月)

オスマン・トルコのセファルディー系カントール

ゼアミdeワールド203回目の放送、日曜夜にありました。11日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今日はイサーク・アルガズィのみにします。シュクリュ・トゥナルはまた後日。放送でガザルのことを「恋愛を主題にしたペルシアの定型抒情詩」と原稿を書いてあったのに、間違えて叙事詩と読んでいました。お詫びして訂正いたします。

トルコの20回目になります。今回もトルコの古い録音ですが、まず米Rounderの「トルコ音楽の巨匠たち」の1枚目から抜粋しておかけします。
まずは、ZeAmiブログで予告しておりましたトルコのスペイン系ユダヤ人のカントールの録音からおかけします。1枚目に2曲収録されているイサーク・アルガズィ・エフェンディは、1889年トルコのイズミールで生まれ、1950年ウルグアイで客死したラビでありカントール(ユダヤ教の礼拝堂シナゴーグでの合唱長)でした。オスマン帝国崩壊の1920年代にはセファルディー系カントールとして右に出る者がないと言われていた存在で、ヘブライ語でネイーム・ズミロット・イスラエル(Sweet Singer of Israel)と呼ばれた人です。独Wergoと土Kalan Muzik Yapimの音源に入っているユダヤ教の歌でもウードやカーヌーン伴奏のいかにもオスマン・トルコ的なマカームに則った見事な歌唱を聞かせますが、ラウンダーの1枚目に入っている曲はオスマン音楽のガゼルとシャルクになるようです。ガゼルとは、恋愛を主題にしたペルシアの定型抒情詩ガザルから来ています。トルコ語の曲名は長くて読みが難しいので省きますが、ガゼルとシャルクを続けておかけします。

<4 Isak el-Gazi / Bî-karar olmaktı sevmekten murâdı gönlümün (gazel) 2分50秒>

Isak El-Gazi - Bî-karâr olmaktı sevmekten murâdı gönlümün (Hicâz Gazel)


<10 Isak el-Gazi / Bir katre içen çeşme-i pür-hün-i fenâdan (şarkı) 3分48秒>

この盤には、他にサフィイェ・アイラの歌唱が2曲、ミュニール・ヌーレッティン・セルチュクの歌唱が1曲、ギュリスタン・ハヌムの歌唱が1曲、Hafız Burhan Sesyilmazもクルドの山歌ではないオスマン古典曲が1曲、タンブーリ・ジェミル・ベイのヤイリ・タンブールのタクシームやウーディ・マルコ・メルコンのタクシームなどが入っていますが、いずれも今回は省きまして、前回のラストにかけましたシュクリュ・トゥナルのクラリネットをフィーチャーしたチフテテリもありますので、こちらをおかけしたいと思います。まず前回10秒ほどしかかけられなかった第2集の素晴らしいTaksim: Makam Rastを全てかけてから、1枚目のチフテテリまで続けておかけします。

クラリネットはベリーダンスやトルコのジプシー音楽などに盛んに用いられますが、微分音をコントロールした驚異的な超絶技巧を披露していると思います。

<23 Şükrü Tunar / Taksim: Makam Rast 3分16秒>

<11 Şükrü Tunar / Klarnet Çiftetelli 2分43秒>

もう一枚予定しておりました米Traditional Crossroadsからの「イスタンブール1925」もシュクリュ・トゥナルのクラリネットで始まります。この人の生没年は1907-62年で、ジプシーの出身とのことです。サナートの有名な歌手ゼキ・ミュレンのバンドリーダーをしていたそうです。一曲目のヒュッザム旋法のタクシームをおかけします。

<1 Şükrü Tunar / Huzzam Taksim 3分20秒>

主にジプシーの踊りのリズムであるチフテテリを、前に取り上げました盲目のアルメニア系ウード名人ウーディ・フラントが弾いているトラックがありますので、そちらをどうぞ。

<4 Udi Hrant / Cifte Telli 3分11秒>
 

米Rounderの「トルコ音楽の巨匠たち」の1枚目は、歌ものに比重が置かれていますが、Traditional Crossroadsからの「イスタンブール1925」は、器楽が多く収録されていて、とりわけシュクリュ・トゥナルのクラリネットが最初と最後を飾った上に、合計4曲も入っています。Suzinak旋法のタクシームとKarslamaを時間まで聞きながら今回はお別れです。
カルシラマは2+2+2+3の9拍子ですが、ゼイベクやゼイベキコとは別で、トラキアの土地と関係が深い舞踊のリズムです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<10 Şükrü Tunar / Suzinak taksim 3分18秒>

<11 Şükrü Tunar / Karslama 3分9秒>

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2020年2月28日 (金)

トルコのスペイン系ユダヤ人のカントール

スペイン系ユダヤ人(セファルディー)が15世紀のレコンキスタ前後にスペインで迫害を受け離散して、主に移住した先はオスマン帝国内でした。対岸のモロッコ、アルジェリア、チュニジア、もちろんトルコ本国、ギリシア、ブルガリア、旧ユーゴスラヴィアなど、全て当時はオスマントルコの版図でした。これらの国から、スペイン語(実際はユダヤ・スペイン語のラディノ語)が聞こえてくるのは何とも不思議です。(「柔らかい専制」のおかげ)
トルコなどのセファルディー音源はまたいずれ取り上げますが、23日の放送でAbraham Caracach Efendiと言う歌い手が出てきたので、調べてみました。この1本目の歌唱がユダヤ宗教歌のカントールになるかどうかは不明ですが、ユダヤ系であることはOcoraの「トルコ音楽の記録」に明記されています。Abraham Caracach Efendiで検索して出てきた中には、次回Rounderの「トルコ音楽の巨匠たち」第1集でSP音源をかける予定のイサーク・アルガズィがありました。この人の音源は、ドイツのWergoやトルコのKalanからCDがありました。
イブラヒームではなくアブラハム、ユースフではなくヨセフとヘブライ名で書かれていたら、ほぼ間違いなくユダヤ系で、イサーク(イツハーク)はアラビア語名は思い出せませんが、あったでしょうか。3本目のSP盤が映っているものは、葡萄酒を聖別するユダヤ教の祈祷歌キドゥーシュで、そのトルコ・セファルディー版です。カーヌーンの伴奏ですが、オスマン風こぶしの中で確かにヘブライ語が聞こえます。

Abraham Caracach Efendi - Kanto


Izak Algazi Efendi-Bayati gazel Sana Dil Verdimse....


Ladino (Judeo Spanish) KIDOUSCHE by Haim Effendi

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2019年12月27日 (金)

Ladino Music: Voice Of The Turtle

セファルディー音楽のグループ、Voice of the Turtleのハヌカー・コンサートのCDを聞いたのは、もう30年ほど前になります。メンバーはもうかなりいい歳になっていることでしょう。この30分ほどの動画も6年前ですから、今では更に経っていますし。このグループ名の邦訳は、確か「山鳩の声」でした。最初に聞いたセファルディー音楽で、とても強く印象に残っています。CDはアメリカのTitanicから確か5枚出ていて、トルコ、モロッコ、ブルガリアとユーゴ編などがありました。いずれも旧オスマン帝国内です。このシリーズは、おそらく現在は入手不可です。セファルディーの言葉、ラディノ語(ユダヤ・スペイン語)は、本当にスペイン語にそっくり。時折ヘブライ語の語彙が入ってきて、ユダヤの言葉と分かります。2本目が放送でかけたハヌカーです。

Ladino Music: Voice Of The Turtle

Hanuka (Live)

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2019年12月26日 (木)

Maftirim Judeo-Sufi Connection トルコのセファルディー音楽

マフティリームは、そのまま上がっていました。Hag Amakabimは、一番最後の曲です。マフティリームで検索して出てきた他の盤で、I Maftirîm e le opere degli ebrei sefarditi nella musica classica ottomana (The Maftirîm and the Works of Sephardic Jews in Ottoman Classical Music)というイタリア盤にはクドゥシ・エルグネルが参加していて、大変に素晴らしい内容でした。また来年に放送でかける予定です。ユダヤとスーフィー(イスラム神秘主義)という組み合わせは、最初意外に思いましたが、歌舞音曲を表向き忌避するイスラムの中でも、音楽によって神に近づくスーフィーの世界は、元から音楽に溢れたユダヤの宗教音楽とよく合うのかも知れません。中でもカバラーの影響のあるセファルディーの音楽や、東欧系になりますがハシディズムなどのユダヤ神秘主義系統なら尚更でしょう。トルコでの場合は、何よりもトルコ古典音楽が両者に共通しているので、強力な繋ぎになると思います。(以下放送原稿を再度上げておきます)

Kalan Muzik Yapimから2001年に出ているMaftirim Judeo-Sufi Connectionという盤は、トルコ音楽のスタイルでユダヤ教神秘主義詩を聞かせる内容です。演奏はHazan Aaron Kohen Yasakとマフティリーム合唱団で、器楽伴奏はネイとタンブールを中心に打楽器のベンディール、クデュムという編成です。トルコには15世紀のスペインからの離散のグループとは別に、古代パレスティナから古くは紀元前4世紀頃から流入した古い集団もあるようです。この盤の演奏者がどちらになるのかは不明ですが、ハヌカーの曲を演奏しているということは、セファルディーだろうと思います。では、そのHag Amakabimという曲をどうぞ。

<19 Maftirim Judeo-Sufi Connection ~Hag Amakabim 5分14秒>

Maftirim Judeo-Sufi Connectionには、ユダヤ教の安息日(シャバト)の歌が多数入っていますので、3曲目のイスマー・アル・ツィヨンと言う曲を、時間まで聞きながら今回はお別れです。キリスト教の安息日は日曜ですが、ユダヤ教では土曜になります。

<3 Maftirim Judeo-Sufi Connection ~Yismah Ar Tsiyon 2分36秒>

Maftirim: Unutulan Yahudi-Sufi Geleneği

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2013年12月 6日 (金)

アスランの歌うセファルディー

チーデム・アスランは苗字から見てユダヤ系ではという説もあるようです。確かにセファルディー(スペイン系ユダヤ)の歌手として有名なフランソワーズ・アトランとも少し苗字が似ています。TとSの違いくらいで、これは些細な違いでしょう。
youtubeを見ていると、セファルディーの曲もありました。旧オスマン帝国内には多くのセファルディーがスペインから離散してきていたので、彼女がやはりクルドであったとしても、耳にする機会はあったのでしょう。そして伴奏はやはりShe'Koyokh(シコヨフ)でした。(ヘブライ文字の綴りが気になるところ)東欧系ユダヤのクレズマーとスペイン系ユダヤのセファルディーの曲を同時に演奏するグループも数多いので、特に驚くことでもありませんが、やはりラディノ語でも歌っているアスランのポリグロットと豊かな表現力に驚かされます。

She'Koyokh performs 'Los Bilbilicos' at the Purcell Room , London

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2009年9月29日 (火)

エステル・ラマンディエの竪琴

古代パレスティナの周辺諸国に広まった竪琴(キノール)は現在のユダヤ人の間では使われなくなったと数日前に書きましたが、これは周知の通り紀元後70年のエルサレム第二神殿の崩壊後、都の消滅を悼んでシナゴーグ(ユダヤ教の会堂)ではショファル(雄羊の角笛)以外の楽器の使用が禁じられたためとされています。ユダヤ人がディアスポラ(離散)する前の古代イスラエルの神殿時代に、シナゴーグの典礼でキノールが使われていたことは詩篇など旧約聖書の方々に記述が残っています。興味深いことに、現代ではキノールはヴァイオリンを指す言葉にもなっているようです。
竪琴で思い出す歌手が、1984年頃に来日したフランスの女性歌手エステル・ラマンディエです。もっとも彼女の弾く楽器はハープ系で、キノールとは少し系統が違うのかも知れませんが。彼女は、まずセファルディー(スペイン系ユダヤ人)の民謡集のLPで登場したこと、聖書にも出てくるユダヤ人女性に多い「エステル」という名前、どこか東方的でエキゾチックな容姿などから、ユダヤ人説が有力なようです。私も長らくそのように想像していましたが、その後彼女がリリースする録音を見ると、古いキリスト教の伝統を色濃く残すシリア教会やアラム語(ヘブライ語の後に広まり、イエス・キリストも話していたと推測されるセム系の言語)の聖歌を歌ったり、セファルディーの歌との関係も深い聖母マリアのカンティガを歌ったりと、ユダヤ音楽の枠に捕らわれない活動を繰り広げていました。その録音は彼女の母国フランスのAlienorなどから数点CDでも出ましたが、今ではいずれもほとんど廃盤状態で入手困難になって久しくなっています。TVで憂いに満ちたセファルディーの歌を弾き語るこの佳人の姿を見たのも、もう25年程前のことになりました。彼女が弾いていた竪琴、自身では「ダヴィデの竪琴」を意識していたのかどうか、可能ならば聞いてみたいものですが、最近は名前を聞くことすら皆無に近くなっています。

Esther Lamandier La Rosa enflorece circa 1492



おそらく彼女のセファルディーの歌の歌唱の中で一番有名な曲でしょう。増2度音程が入るところがユダヤ的に聞こえます。84年頃NHKでこの歌唱が放送されていたのをはっきり覚えています。邦訳すれば「バラの花開く」で、1492年後にスペインからイスタンブールかブルガリアのソフィアに離散したセファルディーが伝承したロマンセ(恋歌)。数多くのヴァージョンがあるそうですが、このメロディはソフィア説が有力なようです。

Esther Lamandier Noches buenas



ここで弾いているのはオルガンですが、竪琴を構えた図が良いので。歌はセファルディーの民謡です。

Cantiga de Santa Maria



これは中世スペインの「聖母マリアのカンティガ」集から。

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