セファルディー

2020年6月12日 (金)

Bienvenida《Berta》Aguadoと Loretta《Dora》Gerassi

今回のセファルディ・シリーズの締めは、やはりイネディ盤のお二人、ビエンベニーダ・ベルタ・アグアドとロレッタ・ドーラ・ゲラッスィです。イネディ盤に写真が一枚ありましたが、小柄なお祖母ちゃんのアグアドさんのリリカルな歌声と、いかにもアルトの低い声が出そうな大柄なゲラッスィさんのエモーショナルな歌唱。とても対照的なお二人です。先日取り上げたセイレーンの歌は番組ではフェイドアウトしましたので、最初に持ってきました。アグアドさんのプンチャ・プンチャは見当たらないので、ライブ映像を代わりに上げておきました。オスマン音楽の微細な節が感じられます。(以下放送原稿を再度)

セファルディーの歌と言えば、まず筆頭に出てくる名盤で、「東地中海のスペイン系ユダヤ人の歌」というフランスIneditの盤から、Bienvenida《Berta》Aguadoと Loretta《Dora》Gerassiの独唱を少し聞きたいと思いますが、この盤について、2002年の音楽之友社「世界の民族音楽ディスクガイド」に書いた拙稿を読み上げます。

イスラエル在住のスファラディー系2婦人による東方に伝わっていたセファルディー(スペイン系ユダヤ)民謡集で、それぞれの出身地(トルコとブルガリア)に伝承されていた曲が選ばれている。この様な無伴奏の詠唱は他ではスペインのSaga盤位でしか聞けない。磨きあげられた二人の歌の節には、それぞれにトルコ古典声楽のデリケートな節回しとバルカン風旋律が現れている。細かい節回しの妙味は絶大で、よくある古楽からのアプローチの演奏には余りない「土の香り」が強烈に感じられる素晴らしい歌唱。特にゲラッスィの男声のような低い声で歌われるバルカン的な節は、マケドニアのジプシー女性歌手エスマに唸った人にも是非聞いて欲しい。

La serena(セイレーン)とは「サイレン」の語源ですが、ギリシア神話では、海の航路上の岩礁から美しい歌声で航行中の人を惑わし、遭難や難破に遭わせる、上半身が人間の美しい女性で、下半身は鳥の姿の海の怪物を指しますが、Voice of the Turtleの対訳歌詞では「もし海がミルクで出来ていて、私が漁師だったら、私は愛の言葉で不幸を釣るだろう」と、匂わせる所で終わっています。この歌のルーツはボスニアのサライェヴォにあるそうです。

<14 Loretta《Dora》Gerassi / La serena 2分44秒>

La serena..wmv


Loretta《Dora》Gerassiの低い美声をたっぷり堪能できる3曲目のタイトルを訳すと「呪われた兄弟」となるようです。

<3 Loretta《Dora》Gerassi / El Hermano Maldito 2分48秒>

El hermano maldito


Bienvenida《Berta》Aguadoの方は、El Punchon y la Rosaをおかけしますが、この曲は一般にプンチャ・プンチャと言う曲名で知られています。「チク、チク、薔薇は香り、恋はひどく苦しめる」と歌いだされるロマンセ(四行詩の物語り歌)です。

<16 Bienvenida《Berta》Aguado / El Punchon y la Rosa 2分7秒>

Romancero Sefardi -Coleccion Susana Weich-Shahak- BIENVENIDA AGUADO

| | コメント (0)

2020年6月11日 (木)

ホアキン・ディアスのセファルディの歌

40年前にスペイン語講座で聞いたホアキン・ディアスの曲が何だったか、よく覚えていませんが、講師は東谷穎人さんでした。マドゥルガーダと言う詩の朗読もホアキン・ディアスだったかも。「フリオ・ヌエボ、カンタ・ウン・ガージョ~」と言う最初の詩句をまだ覚えていました。彼の動画を調べてみると、1986年のテクノサガ盤は丸々上がっています。2本目の1974年の方では、セファルディの歌で特に有名な「クアンド・エル・レイ・ニムロド(ニムロデ王の頃)」も演奏しています。3本目は嬉しいライブ映像。前にも出ましたが、ドゥルメ・ドゥルメも有名なセファルディの歌です。随分若い頃からセファルディの歌も歌われていたようです。(以下放送原稿を再度)

ホアキン・ディアスによるギター弾き語りですが、この人はスペイン民謡の大御所として知られ、私が最初に見たのは1980年頃のTVスペイン語講座での演奏でした。素朴で古雅な趣きの歌をギターで弾き語る人ですが、スペイン音楽のルーツの一つとしてセファルディーの歌を捉えてリリースされたと思しき2枚組がスペインのTecnosagaから出ています。多くのセファルディー音源と同じく、トルコ出身でユダヤ系のラジオ・ディレクター兼歌手のイサーク・レヴィが採譜・出版した「ユダヤ・スペインの歌」の楽譜に則っての歌唱ですが、スペイン人のホアキン・ディアスがラディーノ語をどの位理解しながら歌っているのかが気になるところです。

1枚目の最初の2曲ですが、Las Tres Hermanicasと、一般にはアディオ・ケリーダ(さようなら、愛しい人)の曲名で知られるCuando Tu Madre Te Parioの2曲を続けてどうぞ。1曲目が「三姉妹」、2曲目は「あなたのお母さんがあなたを産んだ時」と訳せると思います。
<1 Joaquín Díaz / Kantes Djudeo-Espanyoles ~Las Tres Hermanicas 2分33秒>
<2 Joaquín Díaz / Kantes Djudeo-Espanyoles ~Cuando Tu Madre Te Pario 2分41秒>

Joaquín Díaz 1986 - Kantes Djudeo Espanyoles


Joaquín Díaz 1974 - En Este Mundo, temas sefardíes 2


Durme, durme

| | コメント (0)

2020年6月10日 (水)

セファルディの歌でのセイレーン Hélène Engelのその後

3人の歌手で聞き比べたLa Sirena(セイレーン)は、魔女あるいはファム・ファタールの類でしょうが、セファルディのあの名旋律が「男を誘惑し破滅させる悪女」の魅惑と危険性をよく表していたと思います。それを女性が歌うというのは不思議な気もしますが、そう言えばヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「宿命の女 (Femme Fatale)」も、女性のニコが歌っていたなと思い出しました(笑) 
ギリシア神話のセイレーンが、ボスニアのセファルディの歌に入った経緯と言うのが、とても気になるところです。この歌の4行詩と哀愁のメロディのブレンドの妙を強く感じます。

この曲をアルバムのトップに持って来たHélène Engelでyoutube検索したら、最近の映像が色々出てきました。CDが出たのは91年ですから、大分お年をめされた感じですが、最近はギター弾き語りされているようです。ヘレーネ・エンゲル(フランス語式ではエレーヌ・ウンゲル?)の名からは、セファルディと言うよりアシュケナジー(東欧系ユダヤ)の人のように見えます。その通りイディッシュの歌を歌っている映像もありました。残念ながらLa Sirenaはないようですので、ユダヤの8本の燭台(ハヌカーに用いられる8枝のハヌキヤー)を歌ったオチョ・カンデリーカを上げておきます。これはよく知られたセファルディの歌の一つです。2本目はお馴染みのクレズマー曲から始まり、途中フランス語で歌っている部分などありますが、バイ・ミール・ビスト・ドゥ・シェーンなど、イディッシュ・ソングが目立ちます。

Ocho Candelicas


Hélène Engel: A Jewish Musical Medley Montage

| | コメント (0)

2020年6月 8日 (月)

セファルディ音源の数々 La Sirenaの聞き比べも

ゼアミdeワールド211回目の放送、日曜夜10時にありました。10日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。Voice of the Turtle以外の動画は、また水曜以降に。

トルコのシリーズは一応前々回で終わりになりました。アシュクではムハッレム・エルタシ親子やエルダール・エルジンジャンなどの注目盤も多いですが、売り切れで手持ちにはないのと、トルコはポップスも層が厚い国ですが、私はそちらには不案内ですので、若干音源もありますが外しておきます。
前回トルコのスペイン系ユダヤ人(セファルディー)の音楽を取り上げまして、色々個人的に懐かしい音源を引っ張り出していました。セファルディー関連の資料も50枚以上はあると思いますので、大体はスペインに回った際になりますが、今回もう一回だけ取り上げたいと思います。

まずは、Voice of the Turtleの第3集ブルガリアと旧ユーゴスラヴィアのバルカン編から、La Sirenaという曲をおかけします。バルカンのセファルディーの間に広まったよく知られている叙情歌です。

<14 La Sirena 4分34秒>

La Sirena


同じ曲をHélène EngelのChansons Judéo-Espagnolesでもやっていますので、併せてかけておきます。例の「スペインからのセファルディー追放から500年」と言うコメントのあった91年のフランス盤です。

<1 Hélène Engel / Chansons Judéo-Espagnoles ~La Serena (Orient) 3分59秒>

次に、セファルディーの歌と言えば、まず筆頭に出てくる名盤で、「東地中海のスペイン系ユダヤ人の歌」というフランスIneditの盤から、Bienvenida《Berta》Aguado,と Loretta《Dora》Gerassiの独唱を少し聞きたいと思いますが、この盤について、2002年の音楽之友社「世界の民族音楽ディスクガイド」に書いた拙稿を読み上げます。

イスラエル在住のスファラディー系2婦人による東方に伝わっていたセファルディー(スペイン系ユダヤ)民謡集で、それぞれの出身地(トルコとブルガリア)に伝承されていた曲が選ばれている。この様な無伴奏の詠唱は他ではスペインのSaga盤位でしか聞けない。磨きあげられた二人の歌の節には、それぞれにトルコ古典声楽のデリケートな節回しとバルカン風旋律が現れている。細かい節回しの妙味は絶大で、よくある古楽からのアプローチの演奏には余りない「土の香り」が強烈に感じられる素晴らしい歌唱。特にゲラッスィの男声のような低い声で歌われるバルカン的な節は、マケドニアのジプシー女性歌手エスマに唸った人にも是非聞いて欲しい。

まずは、Loretta《Dora》Gerassiの低い美声をたっぷり堪能できる3曲目からどうぞ。タイトルを訳すと「呪われた兄弟」となるようです。

<3 Loretta《Dora》Gerassi / El Hermano Maldito 2分48秒>

Bienvenida《Berta》Aguadoの方は、El Punchon y la Rosaをおかけしますが、この曲は一般にプンチャ・プンチャと言う曲名で知られています。「チク、チク、薔薇は香り、恋はひどく苦しめる」と歌いだされるロマンセ(四行詩の物語り歌)です。

<16 Bienvenida《Berta》Aguado / El Punchon y la Rosa 2分7秒>

次はホアキン・ディアスによるギター弾き語りですが、この人はスペイン民謡の大御所として知られ、私が最初に見たのは1980年頃のTVスペイン語講座での演奏でした。素朴で古雅な趣きの歌をギターで弾き語る人ですが、スペイン音楽のルーツの一つとしてセファルディーの歌を捉えてリリースされたと思しき2枚組がスペインのTecnosagaから出ています。多くのセファルディー音源と同じく、トルコ出身でユダヤ系のラジオ・ディレクター兼歌手のイサーク・レヴィが採譜・出版した「ユダヤ・スペインの歌」の楽譜に則っての歌唱ですが、スペイン人のホアキン・ディアスがラディーノ語をどの位理解しながら歌っているのかが気になるところです。

1枚目の最初の2曲ですが、Las Tres Hermanicasと、一般にはアディオ・ケリーダ(さようなら、愛しい人)の曲名で知られるCuando Tu Madre Te Parioの2曲を続けてどうぞ。1曲目が「三姉妹」、2曲目は「あなたのお母さんがあなたを産んだ時」と訳せると思います。

<1 Joaquín Díaz / Kantes Djudeo-Espanyoles ~Las Tres Hermanicas 2分33秒>

<2 Joaquín Díaz / Kantes Djudeo-Espanyoles ~Cuando Tu Madre Te Pario 2分41秒>

では最初にかけましたLa Sirena(ここではLa serena)を、Loretta《Dora》Gerassiの歌唱で聞きながら今回はお別れです。セイレーンとは「サイレン」の語源ですが、ギリシア神話では、海の航路上の岩礁から美しい歌声で航行中の人を惑わし、遭難や難破に遭わせる、上半身が人間の美しい女性で、下半身は鳥の姿の海の怪物を指しますが、Voice of the Turtleの対訳歌詞では「もし海がミルクで出来ていて、私が漁師だったら、私は愛の言葉で不幸を釣るだろう」と匂わせる所で終わっています。この歌のルーツはボスニアのサライェヴォにあるそうです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<14 Loretta《Dora》Gerassi / La serena 2分44秒>

| | コメント (0)

2020年6月 4日 (木)

A la una yo nasiとSzól a kakas márの類似

Voice of the Turtle / Music of the Spanish Jews of Turkeyのラストの19曲目を飾っているA la una yo nasi(第一に、私は生まれた)という曲は、バルカン諸国のセファルディーの歌として広く知られている曲とのことですが、ハンガリーのSzól a kakas márという曲にかなり似ています。こちらは東欧系ユダヤの歌ですので、旋律がバルカンのセファルディーに流れたのか、単なる空似か、どちらでしょうか?

<19 Voice of the Turtle / Music of the Spanish Jews of Turkey ~A la una yo nasi 4分40秒>

A la una yo nací. Música Sefardí. Emilio Villalba & Sephardica


A la una yo nasi


ちょうど10年前と9年前にSzól a kakas márについて書いたブログを振り返ります。今日は取り合えず2曲を並べて、また探ってみたいと思います。今日の動画はベアタ・パヤの歌唱で。

名曲Szol a kakas mar (Rooster is Crowing)

一昨日予告したハンガリアン・ジューの名曲Szol a kakas marにいってみます。この曲は、まず何よりMuzsikasの名盤「Maramaros - Lost Jewish Music of Transylvania」(Hannibalから初出 後にハンガリーのMuzsikasからもリリース)の2曲目の、マルタ・セバスチャンの歌唱で有名になったと思います。その悲愴美は筆舌に尽くせないほど印象的で、きーんと冷えたトランシルヴァニアの空気感も運んでくるかのような、更には匂いも感じさせるような曲でした。これぞハンガリー系ユダヤの秘曲と唸らせるものがありました。90年頃来日を果たしたムジカーシュの演奏も非常に素晴らしいものでしたが、この盤の出る前だったようで、このアルバムからは聞いた記憶がありません。ハンニバル盤が出たのは93年と、もう大分経ってしまいましたので、そちらでは最近入り難くなっているのが残念です。ハンガリー現地盤(ムジカーシュ自身のレーベル)は生きていたと思います。
この曲名、和訳すれば「雄鶏が鳴いている」となりますが、そのメロディ・ラインで思い出すのは、ユダヤ宗教歌で最も名高いKol Nidreでしょうか。コル・ニドレ(ドイツ語風に読むとコル・ニドライ)は、典型的なユダヤ旋法の一つ、Ahavo Rabo(「大いなる愛」の意味)旋法の歌。エキゾチックな増二度音程が悲しみを最大限に醸し出しています。いずれもユダヤ民族の運命を歌ったような悲劇的な調子ですが、そんなSzol a kakas marがハンガリーのユダヤ人の間では最も人気があったようです。この透徹した悲しみの歌については、まだ分らないことが多いです。また何か分ったら書いてみたいと思います。そう言えば、往年のシャンソン歌手ダミアが歌った「暗い日曜日」の原曲は、ハンガリーの歌でした。この歌のムードに似たものがあるようにも思います。

サトゥマールのフィドルとSzól a kakas már

サトゥマールの音楽と言えば、フンガロトンの「サトゥマール地方のハンガリー音楽 Szatmari Bandak」(残念ながら廃盤のようです)をどうしても思い出しますが、その中には一昨日の一本目のヴェルブンク(チャールダーシュとも言えるようです)が2曲目に入っていて、更にはムジカーシュ&マルタ・セバスチャンのハンニバルからの名盤「マラマロシュ(トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽)」の白眉ソール・ア・カカシュ・マールも入っています。マラマロシュ(現在のルーマニア北部のマラムレシュ辺りのようです)に伝わっていたユダヤの哀歌は、迫害によって歌そのものの主を失ったようですが、この地のロマの音楽家によって記憶されていたというもの。この余りに印象的なメロディは、西に隣接するサトゥマールでも伝承されたのでしょう。一昨日見た舞踊も古いスタイルを保っているように思いました。
この地方、ハンガリーの民族音楽学者の間では「Hungary`s Transylvania」と形容もされるようです。その位この地方には古いハンガリー音楽の伝統が残っている所として知られています。
Szól a kakas márについては、ちょうど一年程前にもユダヤ音楽枠で取り上げました。「サトゥマール地方のハンガリー音楽 Szatmari Bandak」のライナーノーツは、Brave Old Worldのマイケル・アルパートも書いています。これは見逃せないポイントでしょう。
一昨日書いた「ウクライナのカルパチア西麓の地方名」とは、ルテニアでした。2008年2月12日にブログにも書いていました。

Palya Bea Szefárd Trió - Szól a kakas már

| | コメント (0)

2020年6月 1日 (月)

トルコのスペイン系ユダヤ人の音楽

ゼアミdeワールド210回目の放送、水曜夜8時半と日曜夜10時にありました。3日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。動画はA la una yo nasiだけ、また後日。

トルコの27回目、トルコ民謡の4回目になります。宅録の際に、マイクの音がほとんど出ないトラブルがありましたので、再開されたラヂバリスタジオで再度収録しております。位相の問題だったようです。
今回はトルコの民謡と言う訳ではないのですが、「トルコのスペイン系ユダヤ人の音楽」と言う盤が1989年にアメリカのTitanicから出ていましたので、この枠で入れておきたいと思います。昨年末に放送で取り上げましたVoice of the Turtleのスペイン系ユダヤ人音楽シリーズの第1集になります。

15世紀のレコンキスタで、スペインのユダヤ教徒はイスラム教徒と共に追放され、北アフリカやバルカン半島など多くは旧オスマン帝国内に離散しました。スペイン系ユダヤ人は、セファルディーとも呼ばれます。セファルディは、ヘブライ語に忠実に言えばスファラディ、複数形はスファラディームになります。

セファルディーの民謡を演奏するグループVoice of the Turtle(山鳩の声)のCDですが、第1集トルコ編の他には、第2集がモロッコ編、第3集はブルガリアと旧ユーゴスラヴィアのバルカン編と、第4集ロードス島とサロニカ編もありますが、第4集だけ入手出来ておりません。第5集が年末にクリスマス音楽と一緒にかけました「ハヌカー・コンサート」になります。いずれも旧オスマン帝国内になりますので、今回取り上げても良いのですが、長くなりますので、またそれぞれの時に入れようかと思います。

楽器編成は、ギター、ヴァイオリン、バーラマ、マンドリン、ウード、ダンベク、ナッカーラなどで、スペイン古楽や中東の楽器が多く見えます。セファルディーが暮らした頃のスペインは、後ウマイヤ朝以来800年近く続いたイスラーム諸王朝でしたから、音楽にもアラブ的な面は多分に入っています。
前置きはこれ位にしまして、第1集トルコ編から、1曲目のLa prima vez(初めて、あなたを見た時)という曲をどうぞ。

<1 Voice of the Turtle / Music of the Spanish Jews of Turkey ~La prima vez 3分11秒>

La Prima Vez


セファルディーがスペインから追放されたのは、1492年が中心と言うことで、500年経った1992年に出たセファルディー音楽の盤には、一般によく知られる「コロンブスのアメリカ大陸発見から500年」ではなく、「スペインからのセファルディー追放から500年」と言うシニカルなコメントが付いていた盤がありました。

セファルディーが話すのは、中世までスペインにいた頃のユダヤ訛りのスペイン語で、ラディーノ語と呼ばれます。ユダヤの宗教語であるヘブライ語の語彙は入っていても、音としてはスペイン語としか聞こえない言葉が、イスタンブールやブルガリアなどで聞こえることの不思議を強く感じます。

「ドナ・ドナ」に代表される東欧系ユダヤのイディッシュ民謡も悲しい音楽が多いですが、セファルディー音楽の方もイディッシュやクレズマーとは異なる風合いの哀切さがあります。スペインらしい乾いた感じの美しいメロディが多く、古くは1980年代にエステル・ラマンディエがハープ弾き語りをしていたイメージと重なる人もいらっしゃるかと思います。

7曲目のDurme, durme mi linda donzeyaは、恋人の女性へのララバイで、これも哀切なメロディです。

<7 Voice of the Turtle / Music of the Spanish Jews of Turkey ~Durme, durme mi linda donzeya 3分40秒>

Voice of the Turtle - "Durme, durme mi linda donzeya" - (Sephardic Jewish Music from Turkey)


10曲目のDe edad de kinzay ányoz(15歳から)という曲は、キュルディ旋法のリズミカルな曲で、7曲目のようによく知られてないけど、私は最初から強く印象に残った曲です。

<10 Voice of the Turtle / Music of the Spanish Jews of Turkey ~De edad de kinzay ányoz 3分47秒>

Voice of the Turtle - "De Edad de Kinzay Anyoz" - (Sephardic Jewish Music from Turkey)


ラストの19曲目を飾っているA la una yo nasi(第一に、私は生まれた)という曲は、バルカン諸国のセファルディーの歌として広く知られている曲とのことですが、ハンガリーのSzól a kakas márという曲にかなり似ています。こちらは東欧系ユダヤの歌ですので、旋律がバルカンのセファルディーに流れたのか、単なる空似か、どちらでしょうか?

<19 Voice of the Turtle / Music of the Spanish Jews of Turkey ~A la una yo nasi 4分40秒>

では最後に5曲目のO madre mia(おお、私の母よ)を聞きながら今回はお別れです。トルコとブルガリアの戦争の悲劇を反映した歌で、スペインを離れてからバルカンで生まれた曲も多いことが分かります。とてもセファルディーらしい哀感の溢れた一曲です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<5 Voice of the Turtle / Music of the Spanish Jews of Turkey ~O madre mia 5分>

Voice of the Turtle - "O madre mia" (Sephardic Jewish Music from Turkey)

| | コメント (0)

2020年3月11日 (水)

イサーク・アルガズィの歌うユダヤ教宗教歌

オスマン帝国の名カントール、イサーク・アルガズィの音源は独Wergoと土Kalan Muzik Yapimからありました。前者では ユダヤ教新年祭の聖歌:Kamti be-ashmoret, Anna ke'av zedoni, Im afes rova'ha-ken, Avinu Malkenu, Yedei rashim, Le-britekha shokhen zevul u-shevu'a, Adonay sham'ati shim'akha yareti, Ochila la-el, Ha-yom harat 'olam, Yetzav ha-el、シャバト(安息日)の歌:Kiddush, Be-motza'ei yom menuchah、ユダヤ教祭日の歌:Kiddush le-Shavu'ot, Teromem bat ramah&Tzame'a nafshi、マフティリームの歌:Ahallelah shem elohim, Yshlach mi-shamayyim、スペイン系ユダヤ人の宗教歌:Al Dio alto, Es razon de alabar、スペイン系ユダヤ人の民謡:Ay mancebo,ay mancebo, Quien conocio mi mancevez, Malana tripa de madre, Cantica de ajugar, Reina de la gracia、シオニスト・ソング:Hatikvahが入っていました。マフティリームの歌まで入っていて、締めがハティクヴァという、話題性豊富な一枚でした。彼が亡くなった1950年はイスラエルが独立して間もない頃で、ハティクヴァが国歌に制定されて2年目でした。
今日はオスマン音楽のガゼルとシャルク以外の、ユダヤ教宗教歌を探してみました。シャヴオートのキドゥーシュは、カラン盤の方にも入っていた音源だと思います。2本目も有名なヘブライ語の祈祷歌アヴィーヌ・マルケイヌ(「我らの父、我らの王」の意)で、アシュケナジームのアヴィーヌ・マルケイヌなど、他のユダヤ・コミュニティの歌と音楽は変われど、ヘブライ語の歌詞は同じです。

zak Algazi Efendi - Kiddush le-Shavu'ot [ Arşiv Serisi © 2004 Kalan Müzik ]


Avinu malkenu Isaac Algazi Efendi

| | コメント (0)

2020年3月 9日 (月)

オスマン・トルコのセファルディー系カントール

ゼアミdeワールド203回目の放送、日曜夜にありました。11日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今日はイサーク・アルガズィのみにします。シュクリュ・トゥナルはまた後日。放送でガザルのことを「恋愛を主題にしたペルシアの定型抒情詩」と原稿を書いてあったのに、間違えて叙事詩と読んでいました。お詫びして訂正いたします。

トルコの20回目になります。今回もトルコの古い録音ですが、まず米Rounderの「トルコ音楽の巨匠たち」の1枚目から抜粋しておかけします。
まずは、ZeAmiブログで予告しておりましたトルコのスペイン系ユダヤ人のカントールの録音からおかけします。1枚目に2曲収録されているイサーク・アルガズィ・エフェンディは、1889年トルコのイズミールで生まれ、1950年ウルグアイで客死したラビでありカントール(ユダヤ教の礼拝堂シナゴーグでの合唱長)でした。オスマン帝国崩壊の1920年代にはセファルディー系カントールとして右に出る者がないと言われていた存在で、ヘブライ語でネイーム・ズミロット・イスラエル(Sweet Singer of Israel)と呼ばれた人です。独Wergoと土Kalan Muzik Yapimの音源に入っているユダヤ教の歌でもウードやカーヌーン伴奏のいかにもオスマン・トルコ的なマカームに則った見事な歌唱を聞かせますが、ラウンダーの1枚目に入っている曲はオスマン音楽のガゼルとシャルクになるようです。ガゼルとは、恋愛を主題にしたペルシアの定型抒情詩ガザルから来ています。トルコ語の曲名は長くて読みが難しいので省きますが、ガゼルとシャルクを続けておかけします。

<4 Isak el-Gazi / Bî-karar olmaktı sevmekten murâdı gönlümün (gazel) 2分50秒>

Isak El-Gazi - Bî-karâr olmaktı sevmekten murâdı gönlümün (Hicâz Gazel)


<10 Isak el-Gazi / Bir katre içen çeşme-i pür-hün-i fenâdan (şarkı) 3分48秒>

この盤には、他にサフィイェ・アイラの歌唱が2曲、ミュニール・ヌーレッティン・セルチュクの歌唱が1曲、ギュリスタン・ハヌムの歌唱が1曲、Hafız Burhan Sesyilmazもクルドの山歌ではないオスマン古典曲が1曲、タンブーリ・ジェミル・ベイのヤイリ・タンブールのタクシームやウーディ・マルコ・メルコンのタクシームなどが入っていますが、いずれも今回は省きまして、前回のラストにかけましたシュクリュ・トゥナルのクラリネットをフィーチャーしたチフテテリもありますので、こちらをおかけしたいと思います。まず前回10秒ほどしかかけられなかった第2集の素晴らしいTaksim: Makam Rastを全てかけてから、1枚目のチフテテリまで続けておかけします。

クラリネットはベリーダンスやトルコのジプシー音楽などに盛んに用いられますが、微分音をコントロールした驚異的な超絶技巧を披露していると思います。

<23 Şükrü Tunar / Taksim: Makam Rast 3分16秒>

<11 Şükrü Tunar / Klarnet Çiftetelli 2分43秒>

もう一枚予定しておりました米Traditional Crossroadsからの「イスタンブール1925」もシュクリュ・トゥナルのクラリネットで始まります。この人の生没年は1907-62年で、ジプシーの出身とのことです。サナートの有名な歌手ゼキ・ミュレンのバンドリーダーをしていたそうです。一曲目のヒュッザム旋法のタクシームをおかけします。

<1 Şükrü Tunar / Huzzam Taksim 3分20秒>

主にジプシーの踊りのリズムであるチフテテリを、前に取り上げました盲目のアルメニア系ウード名人ウーディ・フラントが弾いているトラックがありますので、そちらをどうぞ。

<4 Udi Hrant / Cifte Telli 3分11秒>
 

米Rounderの「トルコ音楽の巨匠たち」の1枚目は、歌ものに比重が置かれていますが、Traditional Crossroadsからの「イスタンブール1925」は、器楽が多く収録されていて、とりわけシュクリュ・トゥナルのクラリネットが最初と最後を飾った上に、合計4曲も入っています。Suzinak旋法のタクシームとKarslamaを時間まで聞きながら今回はお別れです。
カルシラマは2+2+2+3の9拍子ですが、ゼイベクやゼイベキコとは別で、トラキアの土地と関係が深い舞踊のリズムです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<10 Şükrü Tunar / Suzinak taksim 3分18秒>

<11 Şükrü Tunar / Karslama 3分9秒>

| | コメント (0)

2020年2月28日 (金)

トルコのスペイン系ユダヤ人のカントール

スペイン系ユダヤ人(セファルディー)が15世紀のレコンキスタ前後にスペインで迫害を受け離散して、主に移住した先はオスマン帝国内でした。対岸のモロッコ、アルジェリア、チュニジア、もちろんトルコ本国、ギリシア、ブルガリア、旧ユーゴスラヴィアなど、全て当時はオスマントルコの版図でした。これらの国から、スペイン語(実際はユダヤ・スペイン語のラディノ語)が聞こえてくるのは何とも不思議です。(「柔らかい専制」のおかげ)
トルコなどのセファルディー音源はまたいずれ取り上げますが、23日の放送でAbraham Caracach Efendiと言う歌い手が出てきたので、調べてみました。この1本目の歌唱がユダヤ宗教歌のカントールになるかどうかは不明ですが、ユダヤ系であることはOcoraの「トルコ音楽の記録」に明記されています。Abraham Caracach Efendiで検索して出てきた中には、次回Rounderの「トルコ音楽の巨匠たち」第1集でSP音源をかける予定のイサーク・アルガズィがありました。この人の音源は、ドイツのWergoやトルコのKalanからCDがありました。
イブラヒームではなくアブラハム、ユースフではなくヨセフとヘブライ名で書かれていたら、ほぼ間違いなくユダヤ系で、イサーク(イツハーク)はアラビア語名は思い出せませんが、あったでしょうか。3本目のSP盤が映っているものは、葡萄酒を聖別するユダヤ教の祈祷歌キドゥーシュで、そのトルコ・セファルディー版です。カーヌーンの伴奏ですが、オスマン風こぶしの中で確かにヘブライ語が聞こえます。

Abraham Caracach Efendi - Kanto


Izak Algazi Efendi-Bayati gazel Sana Dil Verdimse....


Ladino (Judeo Spanish) KIDOUSCHE by Haim Effendi

| | コメント (0)

2019年12月27日 (金)

Ladino Music: Voice Of The Turtle

セファルディー音楽のグループ、Voice of the Turtleのハヌカー・コンサートのCDを聞いたのは、もう30年ほど前になります。メンバーはもうかなりいい歳になっていることでしょう。この30分ほどの動画も6年前ですから、今では更に経っていますし。このグループ名の邦訳は、確か「山鳩の声」でした。最初に聞いたセファルディー音楽で、とても強く印象に残っています。CDはアメリカのTitanicから確か5枚出ていて、トルコ、モロッコ、ブルガリアとユーゴ編などがありました。いずれも旧オスマン帝国内です。このシリーズは、おそらく現在は入手不可です。セファルディーの言葉、ラディノ語(ユダヤ・スペイン語)は、本当にスペイン語にそっくり。時折ヘブライ語の語彙が入ってきて、ユダヤの言葉と分かります。2本目が放送でかけたハヌカーです。

Ladino Music: Voice Of The Turtle

Hanuka (Live)

| | コメント (0)

その他のカテゴリー

J.S.バッハ New Wave-Indies アイヌ アメリカ アラブ アラブ・マグレブ アルゼンチン イギリス イスラエル イスラム教 イタリア イディッシュ イラン地方音楽 インディアン、インディオ インド インドネシア インド音楽 ウイグル ウラル・アルタイ エジプト エチオピア オペラ オーストラリア オーストリア キリスト教 ギリシア クルド クレズマー ケルト コンサート情報 コーカサス (カフカス) サハラ シベリア シャンソン ジャズ スイス スペイン スポーツ スーダン セファルディー ゼアミdeワールド チェロ チベット トルコ音楽 ドイツ ナイル・サハラ ナツメロ ニュース ハシディック ハンガリー バルカン バルト語派 バロック パキスタン ビザンツ音楽 フランス フランス近代 ブラジル ペルシア音楽 ペルシア音楽 トンバク ユダヤ ユダヤ音楽 ライブ情報 ルーマニア レビュー ロシア ロシア・マイナー ロマン派 ヴァイオリン 中南米 中国 中央アジア 仏教 仏教音楽 北アジア 北コーカサス(カフカス) 北欧 南アジア 南インド古典音楽 古楽 地中海 室内楽 弦楽合奏 弦楽四重奏 後期ロマン派 文化・芸術 新ウィーン楽派 旅行・地域 日記・コラム・つぶやき 映画・テレビ 東アフリカ 東南アジア 東方教会 東欧 歌謡曲・演歌 民謡 沖縄 独墺 猫・犬 現代音楽 童謡、わらべうた 筝曲 純邦楽 西アフリカ 西スラヴ 韓国