やはりツァディクのZahava Seewald & Psamim / Kovedの方はYouTubeでは見当たりませんので、今日は彼女の動画を貼っておきます。1本目はSong based on a text from Samuel Hanagid. Melody by John Zornとありますので、ジョン・ゾーン関連です。2本目はセファルディ(スペイン系ユダヤ)関係ですが、1本目はどちらでしょうか。リズムはオリエンタルな感じですし、2本目のようにセファルディ関係では伴奏にウードが入ることが多いので、その方向性の作品ではと思います。2本目で弾かれているのは、一見ウードのように見えますが、リュートに似た細い音でフレットがあるのでラウートでしょうか。
Zahava Seewald & Zohara I would lay down
A la Puerta del Rio by Zahava Seewald & Michaël Grébil
Voice of the Turtle / Music of the Spanish Jewsの第3集、ブルガリアとユーゴスラヴィア編では、Durme durmeとかChichi bunichiのように他のセファルディ音楽の盤でもよく聞く曲がありますが、前者は旋律違いだと思いますし、やはり個人的に一曲選ぶとすればLa Sirenaです。IneditのLoretta《Dora》Gerassiなどの名唱も多いので、聞き比べるのも一興です。(以下放送原稿を再度)
トルコの音楽巡りの際に、Voice of the Turtle / Music of the Spanish Jews of Turkeyと言うタイタニックのセファルディ音楽の盤を取り上げましたが、このシリーズには「ブルガリアとユーゴスラヴィア編」もありまして、バルカン巡りのどこかに入れてようと思っていました。コソヴォの後に少し余りましたので、今回入れておきます。
15世紀のレコンキスタで、スペインのユダヤ教徒はイスラム教徒と共に追放され、北アフリカやバルカン半島など多くは旧オスマン帝国内に離散しました。スペイン系ユダヤ人は、セファルディとも呼ばれます。
211回目の放送でもかけた曲ですが、Voice of the Turtleの第3集ブルガリアと旧ユーゴスラヴィアのバルカン編から、La Sirenaという曲をおかけします。バルカンのセファルディーの間に広まったよく知られている叙情歌です。
211回目でも解説を入れましたが、セイレーンとは「サイレン」の語源ですが、ギリシア神話では、海の航路上の岩礁から美しい歌声で航行中の人を惑わし、遭難や難破に遭わせる、上半身が人間の美しい女性で、下半身は鳥の姿の海の怪物を指しますが、Voice of the Turtleの対訳歌詞では「もし海がミルクで出来ていて、私が漁師だったら、私は愛の言葉で不幸を釣るだろう」と匂わせる所で終わっています。この歌のルーツはボスニアのサライェヴォにあるそうです。
<5 Savina Yannatou / Primavera En Salonico ~Tres Hermanicas Eran 3分42秒>
Σαβίνα Γιαννάτου - Tres Hermanicas Eran Τρείς αδελ | Official Audio Release
<2 Judy Frankel / Sephardic Songs of Love and Hope ~Tres Hermanicas 4分50秒>
Tres Hermanicas
Tres hermanicas eran
There were three little sisters.
Whites of pink, Ay, branches of rose.
There were three little sisters, there are three little sisters.
Two of them were married, one of them went astray.
Her father, with shame, sent her to Rhodes.
In the middle of the way, he built her a castle with small stones and with little pebbles all around it.
A man found out and he went to sea.
Swimming and sailing he reached the castle.
Let down your tresses so I can climb up.
She let down her tresses and he climbed up.
She brought out food for him and he asked her for water.
There was no water in the house. She went out to the fountain.
In the middle of the road the girl fell asleep.
The nobleman passed that way. He gave her three kisses.
One on each cheek and one on her heart.
If may beloved finds out, I deserve to die.
Don`t destroy yourself, may darling, for I am your beloved.
David Saltielについては、オリエンテ・ムジーク盤の英文ライナーを丹念に読むしかないのでしょうが、余りに字が小さいもので追いついていません(笑) この人の歌唱とバックの演奏は、とてもオスマン音楽色を強く感じます。なお、放送では「6月頃にビエンベニーダ・ベルタ・アグアド他の歌唱でかけた曲」と言ってしまいましたが、正しくはInedit盤のもう一人の女性歌手Loretta《Dora》Gerassiでした。低音で唸る声が、何ともこの曲にピッタリでした。この曲はジュディ・フランケルの盤ではEn la Mar (海の中で)となっていました。これもしっくりくるタイトルです。今日の2本目はそのLoretta《Dora》Gerassiの歌唱で、左の大柄な女性がロレッタさんです。(以下放送原稿を再度)
ギリシア北東部のサロニカ(テッサロニキ)のセファルディの歌ですが、ドイツのOriente MusikからDavid Saltielの盤が98年に出ていますので、こちらからLa serenaをおかけします。6月頃にビエンベニーダ・ベルタ・アグアド(正しくはLoretta《Dora》Gerassi)とVoice of the Turtleの歌唱でかけた曲です。
アテネが古代ギリシアを象徴する街なのに対して、中世の東ローマ帝国時代のギリシアを象徴する街で、初期キリスト教とビザンチン様式の建造物が点在するテッサロニキは、首都アテネに次いでギリシアで2番目に大きな都市です。使徒パウロが書いたとされる、新約聖書の「テサロニケの信徒への手紙」にその名が見えるように、キリスト教の拡大の中心として重要で、古くからユダヤ人のコミュニティーがありました。テッサロニキは近世以降セファルディ系ユダヤ人の最大の中心となり、「バルカンのエルサレム」と言う愛称が町に付けられていた程だそうです。
La serena(セイレーン)とは「サイレン」の語源ですが、ホメロスのオデュッセイアやギリシア神話では、海の航路上の岩礁から美しい歌声で航行中の人を惑わし、遭難や難破に遭わせる、上半身が人間の美しい女性で、下半身は鳥の姿の海の怪物を指しますが、Voice of the Turtleの対訳歌詞では「もし海がミルクで出来ていて、私が漁師だったら、私は愛の言葉で不幸を釣るだろう」と、匂わせる所で終わっていました。この歌のルーツはボスニアのサライェヴォにあるそうですが、ここではギリシアのセファルディがセイレーンを歌ったと言うことで、最もルーツの地に近いということになるでしょうか。他の歌唱では短調でしたが、ここでは部分的に長調の旋律になっていて、オスマン風な伴奏が付いています。
<2 David Saltiel / Canciones Judeo Espanoles de Tesalonica ~La serena 7分11秒>
David Saltiel - La Serena
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