キリスト教

2018年12月24日 (月)

クリスマスとハヌカーの音楽

ゼアミdeワールド140回目の放送、日曜夕方に終りました。26日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今日は取り合えず、ウィーン少年合唱団とジャン・ピアースのマ・オズ・ツールのみ上げました。

ウズベキスタンの音楽巡りの途中ですが、放送されるのが23日と26日ということで、今回はクリスマス特集、その次の30日は2日の再放送枠が無しですので、第九に類似の締めくくりの音楽、新年の最初は6日と9日ですから、正月関連の純邦楽を予定しております。このパターンが、この番組を始めてから年末年始の恒例になっております。

2年前にもかけましたが、ドイツ・グラモフォンから出ていた「聖地のクリスマス音楽」から、「ベツレヘム生誕教会の鐘」をおかけします。キリスト生誕の地とされるベツレヘムのギリシア正教会での録音で、東方的な渋みや深みを感じさせる音です。

<22 聖地のクリスマス音楽 ~ ベツレヘム生誕教会の鐘 1分15秒>

2~4曲目はローマ・カトリック教会の聖歌で、女声によって歌われるグレゴリオ聖歌の一種でラテン語で歌われています。この盤の中では唯一の西方教会の音楽で、異色の音源になっていると思います。その中から夜中のミサ:アレルヤ唱をどうぞ。

<3 聖地のクリスマス音楽 ~ ローマ・カトリック教会の聖歌 夜中のミサ:アレルヤ唱 2分>

この盤からもう一曲、古シリア教会の聖歌で、最も早くからキリスト教化された地方ですから、ユダヤ教の流れも汲む古い典礼のスタイルが残っているようです。言葉はイエス・キリスト自身が話したと伝えられる古いシリア語の一種のアラム語が現在も主に使われています。

<18 聖地のクリスマス音楽 ~古シリア教会の聖歌 アレルヤ、アレルヤ 2分20秒>

このアルバムに収録されているのは、イスラエルのエルサレムやベツレヘムでの東方諸教会の音源で、この地で2000年前にキリスト教が生まれた頃に近い響きを持っていると思われる音楽が中心です。2年前には、この盤からキリスト教の東方的ルーツを訪ねた、ギリシア正教会、エチオピア教会、エジプトのコプト教会、シリア教会、アルメニア教会、レバノンのマロン派の音源を中心にご紹介しました。今回は一般にもよく知られているクリスマス・キャロルもおかけして、その後でユダヤで同じ時期に祝われるハヌカー関連の音源もご紹介します。

よく知られるクリスマス・ソング2曲をウィーン少年合唱団の歌唱でどうぞ。最初がドイツ民謡「もみの木」で、2曲目は1818年にフランツ・グルーバーが作曲した「きよしこの夜」です。

<22 ウィーン少年合唱団ベスト もみの木 1分38秒>
O Tannenbaum by the Vienna Choir Boys


<23 ウィーン少年合唱団ベスト きよしこの夜 2分40秒>
Stille Nacht (Silent Night )


次にユダヤのハヌカーですが、ユダヤの世界にはキリストの生誕を祝うクリスマスというのは無いのですが、まるで対抗するかのようにほぼ同時期にハヌカーという祭りがあります。ハヌカーはユダヤ教の年中行事の一つで、紀元前168年~紀元前141年のマカバイ戦争時のエルサレム神殿の奪回を記念する「宮清めの祭り」です。

9本の燭台ハヌキヤーに一日一つずつ点灯した後、マーオーズ・ツール ma‘oz tzur (『砦の岩よ』)という、13世紀ドイツに起源を持つ賛歌などが歌われます。そのマーオーズ・ツールを、往年の名テノール歌手ジャン・ピアースの歌唱と合唱団でおかけします。彼はユダヤ教の会堂、シナゴーグの合唱長カントールでもありました。

<15 Jan Peerce / The Art of the Cantor ~Mo Os Tzur 6分22秒>
Jan Peerce - Mo'os Tzur and Blessings for Chanukah


15世紀のレコンキスタでスペインから追放され、北アフリカやバルカン半島など多くは旧オスマン帝国内に離散したスペイン系ユダヤ人は、セファルディーと呼ばれますが、彼らの民謡を演奏するグループVoice of the Turtleは「ハヌカー・コンサート」という盤が最初に出ました。その中からハヌカーという曲をどうぞ。

<10 Voice of the Turtle / Circle of Fire ~Hanuka 3分10秒>

ハヌカーの歌には、東欧系ユダヤのイディッシュ語ではドレイドル、ヘブライ語でスヴィヴォンという木製の独楽(コマ)についての歌がよく知られていますが、有名な旋律の入った盤がすぐに見当たりませんでした。このコマには四面に反時計回りに、ヘブライ文字のヌン、ギメル、ヘー、シンの文字が描かれていて、イディッシュ語の「nisht(ドイツ語: nichts 何もない)、gants(ganz 全部)、halb(halb 半分)、shtel(einstellen 置く)」の頭文字ですが、しばしばヘブライ語で「ネス・ガドール・ハヤ・シャム、そこで偉大な奇跡が起こった」の頭文字と解釈されています。

このドレイドルについては、東欧系ユダヤの祝祭音楽の一種であるクレズマーでよく演奏されています。クレズマー・リヴァイヴァルの中心的グループであるクレズマー・コンサーヴァトリー・バンドの87年に出たOy Chanukah!から、ドレイドル・ソングをおかけして、その後は時間までこの盤の冒頭から続けたいと思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<19 Klezmer Coservatory Band / Oy Chanukah!  ~Dreydl Song 3分25秒>
<1 Klezmer Coservatory Band / Oy Chanukah!  ~A Freylekhe Nakht in Gan Eydn 1分48秒>

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2016年12月30日 (金)

アルメニア教会の音楽 コミタス

ローマ帝国に先駆け西暦301年に世界で初めてキリスト教を国教にしながらも、宗教の異なる大国の狭間で孤立し、度重なる迫害や弾圧に耐えながら1700年余りに亘って信仰を守り続け、100年前の大虐殺の危機も乗り越えたアルメニアの強さの秘密は何なのでしょうか。
9世紀頃には、東ローマ帝国からの度重なる宗教的統合の要求があったにもかかわらず、アルメニアは独自の宗派であるアルメニア使徒教会の信仰を貫き、これにより、隣国東ローマ帝国とその国教である東方正教会からの離別は決定的となったそうで、このように正教会の中でも他宗派と融和してきた訳ではないようです。
この孤立にも絶えた秘密は何なのでしょうか。いつもそう思います。
悲しく深いアルメニアの宗教歌を色々聞いていて、やはり幽玄美に満ちたコミタスの曲には、その回答が一番よく聞こえるような気がします。
今年の投稿はこれが最後です。皆様どうぞ良いお年をお迎え下さい。

Komitas Vardapet: Armenian Divine Liturgy

Komitas Vardapet: Armenian liturgical chants

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2016年12月27日 (火)

エチオピア正教会の音楽

おそらく昨日アップした中で一番の驚きの音源は、エチオピア教会ではと思います。5音音階のメロディは、日本の民謡や御詠歌、場合によっては木遣りにすら似て聞こえます。youtubeの多さにも驚きました。その中に、何と3時間にも及ぶ宗教儀礼の映像がありました。もちろんゴスペルに似て聞こえたり、サハラの遊牧民トゥアレグの歌にも似ていたり、ダビデの竪琴の系譜に連なるハープがあったり、それは東アフリカはタンザニア辺りの確かリトゥングなどの竪琴にも似ていたり、色々な類似性が見えてくる音楽でもあります。女声の甲高いユーユーの声も随所に入ります。

YANTEN LANTE ETHIOPIAN ORTHODOX MAZMUR FROM LONDON

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2016年12月26日 (月)

聖地のクリスマス音楽

ゼアミdeワールド38回目の放送、日曜夕方に終りました。28日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。今回は96年リリースの国内盤を参照していて各曲の原題が分らないので、youtubeを探し出すのは不可能に近いと思います。おそらくyoutube自体無い曲がほとんどだろうと思います。

4日の放送で、ドイツ・グラモフォンから出ていた「聖地のクリスマス音楽」を、またちゃんと取り上げると予告しておりましたので、今回はこのアルバムを中心にご紹介します。収録は21日にしておりますが、放送されるのは本放送が25日で、ちょうどクリスマスの夕方に当ります。再放送は28日になりますが、日本と違って現地では25日過ぎたから完全に終わりという催しではありませんので、是非再放送もお楽しみ下さい。

4日にはベツレヘム生誕教会の鐘の音で締めました。キリスト生誕の地とされるベツレヘムのギリシア正教会での録音で、東方的な渋みや深みを感じさせる音でした。今日もこの鐘の別トラックからどうぞ。

<聖地のクリスマス音楽 ~ ベツレヘム生誕教会の鐘 1分15秒>
The Holy Sepulcher Ring Bells - Jerusalem


このアルバムに収録されているのは、イスラエルのエルサレムやベツレヘムでの東方教会の音源で、この地で2000年前にキリスト教が生まれた頃に近い響きを持っていると思われる音楽が中心です。日本でクリスマスの音楽と言うと、欧米的なクリスマス・ソングや、賛美歌を思い浮かべる人がほとんどだと思いますが、古代のキリスト教の音楽に西洋的な要素は本来無かったはずですから、この番組ではキリスト教本来の東方的ルーツを訪ねて、この音源を中心にご紹介しようと思います。

次にかけますのは、ローマ・カトリック教会の聖歌で、女声によって歌われるグレゴリオ聖歌の一種でラテン語で歌われています。この盤の中では西洋にもある音楽で、異色の音源になっていると思います。この中ではクリスマスの一般的イメージに近いかも知れません。

<聖地のクリスマス音楽 ~ ローマ・カトリック教会の聖歌 夜中のミサ:入祭唱 2分8秒>

続いて、ギリシア正教会の聖歌が出てきますが、男声のいぶし銀のような力強い歌声が、カトリックの線の細い感じの聖歌とは対照的です。バスの持続低音(ドローン)の上で朗々と歌われます。

<ギリシャ正教会の聖歌 救い主、われらの中に来たまえり 1分28秒>

次に、エチオピア教会の聖歌ですが、まるで日本仏教の御詠歌か火消しの木遣りを聞くような、音階や発声などにおいて、とてもキリスト教音楽とは思えないような雰囲気があります。エチオピア教会は、古代教会から西洋を介さずに伝わっていた古い教会の一つです。2曲続けてどうぞ。

<エチオピア教会の聖歌 今日、主はわれらの中に生まれ給えり 2分15秒>
<朗読;ルカ福音書 第二章第2節~第10節 2分21秒 抜粋>
Ethiopian Orthodox Tewahedo church spiritual song by Meneday

これも同じ曲ではありませんが。

ギリシア・カトリック教会という少数派のプロテスタント的一派の音源も入っています。アラビア語で歌われ、アラビア音楽の影響を受けていると思われる節回しを聞かせます。

<ギリシャ・カトリック教会の聖歌 讃えよ、わが魂 1分56秒>

その次はエルサレムのアルメニア教会です。南コーカサスにあるアルメニアは、ローマ帝国より先に世界で初めてキリスト教を国教にしたことで有名です。ギリシアやシリアのキリスト教伝統だけでなく、長く支配下になっていたトルコ系の影響を強く感じさせる東方的(東洋的と、西ローマの滅亡後も1000年に亘って栄えた東ローマ帝国のビザンツ的の入り混じったような形容)な旋律美を聞かせます。

<聖母マリアの賛歌 2分39秒>

次に出てくるのは、エジプトのキリスト教会として有名なコプト教会の聖歌です。コプトの名は、エジプト人を意味するギリシア語(古代の東地中海の公用語)の「アイギュプトス」がアラビア語化して出来ています。アラビア語で「エジプト」は、ミスルという別の名称があります。典礼で使われる言葉は、2世紀から10世紀頃まで日常的に使われていたコプト語が主に使われているようですが、現在はアラビア語も用いられるようになってきているそうです。音楽の印象は、現在のエジプトの民族音楽に近い感じです。

<コプト教会の聖歌 聖三位一体の賛歌 1分59秒>
لحن الليلويا فاي بي بي

仏Institut du monde arabe盤のあったコプト教会の音楽を奏するダヴィッド・アンサンブルのようです。

لحن طاي شوري


次は、古シリア教会の聖歌で、最も早くからキリスト教化された地方ですから、ユダヤ教の流れも汲む応唱形式などの古い典礼のスタイルが残っているようです。言葉はイエス・キリスト自身が話したと伝えられる古いシリア語の一種のアラム語が現在も主に使われています。

<古シリア教会の聖歌 アレルヤ、アレルヤ 2分26秒>

「聖地のクリスマス音楽」の最後は、前にレバノンのファイルーズやケイルーズの歌唱でご紹介しましたマロン派の聖歌です。シリア教会から派生した一派で、別名マロナイト教会とも言います。カドーシュ(聖なるかな)、カドーシュ、カドーシュと冒頭3回繰り返しています。カドーシュと言うのはヘブライ語の場合もほとんど同じ発音です。

<マロナイト教会の聖歌 聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな 3分30秒>

では、最後に一般的なクリスマスの歌のイメージに近い、ルーマニアのクリスマス・キャロルを聞きながら、今回はお別れです。
新年は1日から5日までラヂオバリバリがお正月休みですので、この番組の新年初放送は8日と11日になります。まだ辛うじて松の内で、新年ですから、あの曲!を予定しております。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来年お耳にかかりましょう。少し早いですが、皆様良いお年をお迎え下さい。

<Romanian Christmas Carols ~Here Come The Carol Singers (Tiberiu Brediceanu) 56秒>
Tiberiu BREDICEANU - Triptic de colinde

同じ曲がありました!

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2016年12月12日 (月)

正教の典礼歌 ギリシア、ロシア、ルーマニア、レバノン

ラジオの36回目の報告をする曜日ですが、立て込み作業や忘年会等でブログが飛んだり、短くなったりしがちなので、正教関係をもう少しアップしておきます。絶美の映像を拾ってみました。東方教会の音楽では、ドローンの上に響き渡る男声の荘厳さからギリシア正教の男声合唱が一番と思っていましたが、深遠なロシア正教の混声合唱も素晴らしく美しくて、多少ロシア語が分かるので、テキストとつき合わせてみたくなりました。ドストエフスキーやタルコフスキーの作品の秘密もこんな中にもあるのかも知れません。ルーマニア正教の典礼も礼拝の風景からして非常に美しく驚きました。レバノンは、ファイルーズやケイルーズで聞いたのと似ていて、やはりアラビア語で歌われています。アルメニアやグルジアの正教音楽までは今回追えませんでしたので、またいつか取り上げたいと思います。

ΑΣΜΑΤΙΚΟΝ - GREEK ORTHODOX CHANT

Russian Orthodox Choir Chanting Choral Vocal Top 10 Collection

Beautiful Romanian Orthodox Divine Liturgy.

Byzantine Christmas Hymns in Arabic: Mount Lebanon Choir (Lebanon)

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2016年12月 8日 (木)

ギリシア正教の典礼歌

ギリシア正教会については、余りちゃんと取り上げてなかったと思いますが、youtubeが相当ありそうです。さすがに聖域アトス山の映像などはないのではと思いますが。2本目は修道女の合唱で、ギリシア正教と言うと男声が多いので、おそらく珍しい録音ではと思います。ロシア正教、ルーマニア正教などまで広げると、更に東方教会の荘厳で美しい礼拝の様子が身近に感じられます。グルジアやアルメニアも正教系ですから、このドローンが重厚に響き渡る荘厳で幽玄な美しさに満ち溢れた合唱は、遍く東方各地に見られます。

BEAUTIFUL Greek Orthodox Christian CHANT Ασματικον YouTube

Ormylia Greek Orthodox Nuns - Hymns of St. Mary Magdalene

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2016年12月 6日 (火)

Coptic Nazareth

ナザレのコプト教会の鐘は、持続して鳴り続けるタイプで、ベツレヘム生誕教会の鐘とは随分違った感じでした。イスラエル北部に位置するナザレは、イエス・キリストが幼少期から長く過ごした土地と言われています。西アジア最大のカトリック聖堂の受胎告知教会や、聖ヨセフ教会、イエスがイザヤ書を朗読し自らがメシアだと語ったと新約聖書に記述があるシナゴーグ、イスラームの白いモスクなど、名所旧跡が沢山ありますが、エジプトにイスラームが伝わる前から存在したキリスト教会であるコプト教会もナザレにあり、バッタチャリアの録音は、そこでの録音でした。youtubeを調べると、非常に見事な朗唱を聞かせる映像がありました。

لحن طا شوري + الهيتنيات

انجيل الرعي الصالح-من كنيسة البشاره للاقباط الارثوذكس بالناصره

لحن الليلويا فاي بيبي

قداس اول سبت من الصوم الكبير - كنيسة البشاره للاقباط الارثوذكس

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2016年12月 5日 (月)

セム一神教3兄弟の音楽

ゼアミdeワールド35回目の放送、日曜夕方に終りました。(私は今回忘年会で聞けませんでしたが)7日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。

アラブ音楽巡りの途中で、最近の3回はイスラエルとユダヤ教の音楽について少し聞いてきましたが、今日はユダヤ教に始まりキリスト教、イスラム教と続く、3つのセム一神教の音楽を比較しながら、クリスマスが近いので、聖地のクリスマス音楽も交えながら進めたいと思っております。セムというのは、聞き慣れない方もいらっしゃるかと思いますが、中東や北アフリカ一帯に住んでいるセム・ハム語族のセムを指していて、3つの宗教がいずれもヨーロッパではなく、セム系民族の世界から生まれたことを表しています。ユダヤ教の中からキリスト教が生まれ、その二つの先輩宗教の影響も受けた上でイスラム教が生まれました。
言葉で言えば、セム系にはアラビア語、ヘブライ語、アラム語(シリア語)などが入りまして、その類似性も多く、例えばアラビア語とヘブライ語は文字を置き換えただけのような単語も多く見られます。ヨーロッパやインド、イランのいわゆるインド・ヨーロッパ語族とは全く異なる文法体系を持っています。元々この3つの宗教は同じ「アブラハムの宗教」として生まれた兄弟、親子のような関係ですから、欧米がからんでこじれると言うのが大体のパターンなのですが、世界中を巻き込むような「兄弟喧嘩」も、何とか収まってくれないものかと常々思っています。

3つのセム一神教の宗教音楽を概観したCDも、少ないですが出ておりまして、インド出身の世界的な民族音楽学者デベン・バッタチャリアが1950年代中心に録音した「西アジアの宗教」という盤がアーゴ民族音楽シリーズの一枚としてポリグラムから出ていました。今では変ってしまった音楽もあると思います。50年余り前の貴重な記録です。今日はこの盤を中心に取り上げます。

Jerusalem - Three Religions, Three Families | Faith Matters

今回はそれぞれのyoutubeを探すのは非常に困難、もしくは無いと思いますので、この一本を貼っておきます。ベツレヘム生誕教会の鐘は、ありました。

まずイスラエルのナザレの鐘の音からどうぞ。
<西アジアの宗教~ナザレの鐘>

イスラエルのナザレでの日曜の礼拝前の朝に鳴るコプト教会の鐘でした。コプト教会とは、エジプトにイスラム教が入る前からある古いキリスト教の一派で、正教会の一つです。現在もエジプトの人口の1割ほどがコプト教徒との調査結果もあります。

次にコプト教会の朝の祈りという曲をどうぞ。
<西アジアの宗教~コプト教会の朝の祈り>

やはりイスラエルのナザレでの1957年の録音でした。エジプト出身の僧侶の指揮で、信徒の2人の少年によって応答され、僧侶の手にした香炉が鳴る音が聞こえます。

続いてギリシア正教会の音楽です。エルサレム聖墳墓教会の十字架聖堂における夕べの祈りからの抜粋で、1960年のヨルダン側のエルサレムでの録音です。
<西アジアの宗教~ギリシア正教会>

次にユダヤ教の音楽で、ベレシートです。ヘブライ語で書かれた創世記の冒頭部分が、エルサレム・ヘブライ大学・ヘブライ文学科のイエメン人学生シャリル・ジオンによってイエメン式で朗唱されます。こちらも1957年イスラエルのエルサレムでの録音です。
<西アジアの宗教~ベレシート>

次は東欧系ユダヤ人のイディッシュ語による宗教歌で「救世主が来られるとき」という曲で、アブラハム・アイゼンバッハという人とコーラスの歌唱です。おそらくハシディック・ソングの一種ではと思います。こちらも1957年エルサレムでの録音です。
<西アジアの宗教~救世主が来られるとき>

ハシディズムの歌として、歌謡化した曲を前回かけましたが、アレンジされないそのままのハシディック・ソングの実況録音をご紹介します。アラブ音楽やユダヤ音楽の研究をされている兵庫教育大学の水野信男先生の著書「ユダヤ音楽の旅」(ミルトス)の付録CDの一曲です。クファル・ハバドの敬虔派ユダヤ教徒の歌で、くじの祭り(プーリム)の夜に歌われたハシディック・ニグンのライブ録音です。余談ですが、この著書のディスコグラフィの作成依頼を受けて私がリストの作成をしました。
<ユダヤ音楽の旅 付録CD ~ 敬虔派ユダヤ教徒の歌>

バッタチャリアの「西アジアの宗教」に戻りまして、次はイスラム教の音楽です。まずはトルコでの1955年の録音で、一日5回の礼拝の時間を告げるアザーンです。モスクの尖塔からのムアッジンによる礼拝の召喚(呼びかけ)の声は、イスラム圏に旅した人の記憶にはっきり残るようです。トルコですが、勿論アラビア語で唱えられます。
<西アジアの宗教~アザーン>

次に、イスラム教の聖典であるコーランの朗唱です。1955年のイラン、テヘランでの録音ですが、ここでも勿論ペルシア語ではなく、アラビア語で唱えられます。イラン独自の装飾的な歌唱法も見られると解説にありますが、ほぼアラブ圏と同じに聞こえます。
<西アジアの宗教~コーラン>

イスラム音楽の最後に、イスラム神秘主義のデルヴィーシュ派(元はイスラム托鉢僧の意)の音楽です。葦笛のネイと枠太鼓ダフなどによる旋回舞踏の音楽ですが、最も有名なトルコのメヴレヴィー教団ではなく、シリアのダマスカスの旋回舞踏音楽で、マカームはベヤートです。1955年録音ですから、やはり貴重な古い録音です。
<西アジアの宗教~デルヴィーシュ ベヤート旋法>

では、最後にドイツ・グラモフォンから出ていた「聖地のクリスマス音楽」から、ベツレヘム生誕教会の鐘の音で今回はお別れです。キリスト生誕の地とされるベツレヘムのギリシア正教会のもので、東方的な渋みや深みを感じさせる音です。ヨーロッパの教会ではなく、東方諸教会中心のこのアルバムは、クリスマスまでにもう一度ちゃんと取り上げる予定です。鐘の音は短いので繰り返しかけるかも知れません。それでは、時間までどうぞ。
ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<聖地のクリスマス音楽 ~ ベツレヘム生誕教会の鐘>
The sound of the Church of the Nativity bells, Bethlehem. Tour Guide: Zahi Shaked. October 25, 2013

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2016年11月 4日 (金)

シリア正教会のミサ アラム語聖歌

今日はシリア正教会関係を幾つかアップしておきます。CDを聞いているだけでは分らないリアルな映像の数々。驚きです。アンティオキアのシリア正教会のミサと思しき一本目、エルサレムのシリア正教会を紹介する2本目、アラム語の宗教歌も聞けるインタビューの3本目、まだまだ他にも色々ありますが、今日はこの辺で。

Patriarch Zakka I. Iwas - Syriac Orthodox Church - Qurobo alohoyo - Leimen (Part 3) Oromoyo HD

Syrian Orthodox Church in Jerusalem

Aramaic Interview with Fr Brutos Bethlehem, Syrian Orthodox Church Virgin Mary

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2016年10月28日 (金)

Fairouz - Wa Habibi

甘美極まりないファイルーズのワ・ハビービの動画がありました! マロン派かシリア正教か不明ですが、どちらかと思われる教会での歌唱です。この曲の入ったファイルーズのアルバム「聖金曜日 東方教会の聖歌」の初出は、1962年のようですから、かなり前です。余りに美しいこの旋律は、このアルバムで異彩を放っています。しかしこのメロディ、どこかで聞いたような気もするのですが?
水曜の収録ではシリアの音楽を特集しました。アラブ・アンダルシア系のアラブ古典音楽ワスラ、サバー・ファクリ、アンティオキアのシリア正教会の聖歌、アレッポのスーフィー音楽などかけております。日曜18時の放送です。

Fairouz - Wa Habibi

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