イスラエル

2023年10月18日 (水)

Adon Olam

Adon Olam(アドン・オラム)を最初に広尾のシナゴーグで聞いたのは、93年前後だったと思います。確かユダヤ人の知人(当時勤務していた店、ストアデイズのお客さん)と一緒にシャバトの夕方に訪れた際でしたが、その場にたまたま居合わせたユダヤ人男性の独唱で聞いて、強い感銘を受けました。その時は、他にも交唱で歌われる歌も素晴らしく、忘れない内に帰ってから記譜しました。(この曲は未だ何の曲かは分からないままですが)アドン・オラムも楽譜に書き留めましたが、当時はCDに入っている音源を聞くことはなく(通常はクレズマーで演奏する曲ではないので)、それをアンディ・スタットマンのこの盤で95年に聞けたので、感慨もひとしおでした。
1本目はAndy Statman & David Grisman / Songs Of Our Fathersから。6人のカントールによる2本目は最初このメロディで歌い始めますが、すぐ3本目の旋律に移ります。後半でまた最初のメロディに戻ります。更に、この2つ以外にもアドン・オラムの別メロが出て来ます。3本目はイスラエルの女性歌手サリット・ハダッドの歌唱。どうも、このメロディの方がイスラエルでは一般的なようです。(以下放送原稿を再度)

アドン・オラムと言うヘブライ語タイトルは、「主は永遠に」と言う意味です。中世スペイン時代以来歌われてきたソロモン・イブン・ガビロールの詩に付けられたアシュケナジーム系のこのメロディは、個人的に90年代前半に広尾のシナゴーグで初めて聞いて感動した旋律そのものです。
<10 Andy Statman & David Grisman / Songs Of Our Fathers ~Adon Olam 3分23秒>

ADON OLAM - Hampton Synagogue - Thanksgiving Concert 2017

Sarit Hadad - Adon Olam

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2023年10月12日 (木)

Ele Chomdo Libi

今週の番組で取り上げた音源は、他にはミルトスの「ユダヤ音楽の旅」の付属CDのハシディームのニグンの現地録音と、ギオラ・ファイドマンのエレー・ハムダー・リビー等、デュオ・ペイレ・キュニオがありますが、水野先生の著書の付録CD音源は、もちろんそのものがYouTubeにあるはずないので、今日はエレー・ハムダー・リビーを上げておきます。デュオ・ペイレ・キュニオは、東欧音楽のグループ、ブラッチがらみと言うことで今後も何度か登場すると思いますが、明日に取っておきます。
「キング・オブ・クレズマー」と称賛される名クラリネット奏者ギオラ・ファイドマンの独プレーネ盤「The Magic of the Klezmer」の、1曲目のSongs of Rejoicingに、そのラビ・シュロモ・カルリバッハが書いたハシディックなEle Chomdo Libiが入っています。Yismech Hashamayim,Yossel Yosselと続くメドレーですが、何と言っても悠揚迫らぬテンポで歌い出されるEle Chomdo Libiのインパクトが大きいです。73年のファーストアルバムを聞いたすぐ後、同じく91年頃にこの盤を聞いたので、非常に鮮烈に記憶に残っています。ラビ・シュロモ・カルリバッハのハシディック・ソングは、当時通った銀座教文館のヘブライ語教室で度々歌ったので、何曲も覚えて親しみました。今でも歌えると思います。先生からカルリバッハのエピソードも色々お聞きしました。アルファベット検索では、残念ながらカルリバッハのこの曲の歌唱は見当たりませんでした。代わりにクレズマー・ヴァイオリンと弦楽四重奏の演奏を上げておきます。

<1 Songs of Rejoicing 3分56秒>
Ele Chomdo Libi - Yismechu Hashamayim (May the Heavens Rejoice) - Yossel Yossel

Ele Chomdo Libi

Eileh Chamda Libi

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2023年10月 6日 (金)

ギオラ・ファイドマンのライブとエリ・エリ

今日はギオラ・ファイドマンのライブ演奏を2本上げておきます。今年で87歳と言うご高齢ですが、まだまだ現役で活動しているようで、1本目のクレズマー音楽の方は2018年の映像ですから、この時すでに82歳という事になります。アラブのウード、東欧のツィンバル、西洋のハープを取り入れたユニークな編成です。2本目は解説にEl Choclo (A.Villoldo) and New Freilekh (Trad.)とある通り、アルゼンチン出身らしく、タンゴのエル・チョクロで始まりクレズマーに移ります。タンゴとクレズマーが実に自然に繋がります。何とこちらは更に最近で、2019年の映像です。
今週かけた曲ではWalking To Caesariaと題する曲が放送では尻切れになって非常に残念でした。この曲は「ユダヤのジャンヌ・ダルク」とも形容されるハンナ・セネシュのEli Eli(我が神、我が神)に付けられた有名な旋律でした。ギオラ・ファイドマンの演奏では見当たらないので、他の人の演奏ですが、クラリネット独奏を3本目に上げておきます。アクセスは少ないようですが、歌を上手くアレンジした良い演奏だと思います。

Giora Feidman Sextett - Klezmer for Peace

Gitanes Blondes & Giora Feidman Regensburg 2019

Eli Eli

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2023年10月 5日 (木)

シャローム・アレイヘムとスィム・シャローム

今日はシャバトの歌、シャローム・アレイヘムとスィム・シャローム(Give Us Peace)を探してみました。どちらも色々別メロディがありまして、シャローム・アレイヘムは番組でかけた音源そのものがありましたが、Give Us Peaceがなかなか見つからず、諦めました。スィム・シャロームは別メロディが非常に多いことが改めてよく分かりました。別メロですが、祈祷歌らしい雰囲気の映像を代わりに上げておきます。(以下放送原稿を再度)

13曲目のShalom Aleichemもシャバトの歌で、前にも書いたと思いますが、「こんにちわ」の意味であるのと共に、「あなたの上に平安を」の意味もある言葉です。参考までに、モスクワのシナゴーグの男性合唱によるシャローム・アレイヘムも続けておかけします。ロシアのメジドゥナロドナヤクニーガ(略してメジクニーガ)の音源です。

<13 Shalom Aleichem 1分59秒>

<1 The Male Choir of Moscow Choral Synagogue / Jewish Sacred Music ~Shalom Aleichem 2分14秒 >

6曲目の英題がGive Us Peaceとなっている曲は、スィム・シャロームと言うルツ・アドラー作曲のヘブライ語の歌の旋律で、これも安息日シャバトの有名な歌です。個人的にヘブライ語教室で歌った懐かしい旋律です。

<6 Give Us Peace 2分25秒>
Sim Shalom

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2023年10月 4日 (水)

ヤリボン

今週はヘブライ・ソングの名曲が多く、一日一曲では消化できませんが、ヤリボン(あるいはヤー・リボン)だけは単独にしたいと思います。しみじみと感動的なシャバトの歌Yah Ribonは、「永遠の主よ」の意味のアラム語の祈祷歌で、シャバトの始まる金曜夜の食事の後で歌われる歌です。ギオラ・ファイドマンの名演を聞いたこともありますが、やはり30年余り前にヘブライ語の授業で歌ったからでしょうか。広尾のシナゴーグのシャバトの際にも、ユダヤ人の方々と一緒に歌いました。歌詞の意味を知らない、また初めて聞く人が同じ様に共感できるかどうかは不明です。ヤリボンは、キリスト教で言えば、テーマ的に頌栄に近いのではと個人的には思って来ましたが、どうでしょうか。ギオラ・ファイドマンの音源、YouTubeにありましたが、残念なことに最初のフレーズが切れています。実はこの曲だけは吹いてみたいと思い、入門の安いクラリネットを所持しております(笑)

<5 Giora Feidman / Jewish Soul Music ~Yah Ribon 1分56秒>
Yah Ribon Olam Vealmaya

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2023年9月20日 (水)

アニム・ズミロット

ザハヴァ・ズィーヴァルトのSub Rosa盤のラストに入っているシャバト(安息日)のヘブライ語の歌「アニム・ズミロット」ですが、いくつか旋律を知っていますが、これはこの盤だけで聞くメロディでした。彼女の両親がモロッコ系のセファルディとポーランド系のアシュケナジームなので、そのどちらかの旋律でしょうか。他に聞いた旋律は、CDではドイツのCalig(カーリヒ)から出ていた「シャローム イスラエルの歌」と言う盤に入っていたシュリ・ナタンの歌唱だけだったかも知れません。YouTubeにありましたので、そちらを一本目に、二本目はザハヴァ・ズィーヴァルトの歌唱です。この盤を締め括るに相応しい名旋律です。
ズミロットと言う言葉は「賛歌」のような意味ですが、これはクレズマーの後半のズマー(あるいはゼメル)と同語根で、3語根のZMR(ザイン、メム、レーシュ)が両方の単語に入っています。ズミロットの最後のTをSの音に替えるのは、イディッシュ語の特徴でしょう。
アニム・ズミロットですが、広尾のシナゴーグを知人とシャバトに訪問した際、93年前後に聞いたかも知れません。その時は、アドン・オラムなど、シャバトの名曲をたまたま日本に来られているユダヤ人の歌唱で聞き、何度も聞き惚れました。30年経っても忘れられない、素晴らしいバリトンヴォイスを何度か聞きました。ヤー・リボンなど、知っている曲は一緒に歌いました。

Shuly Nathan - An'im Zmirot (Israeli Song)

<21 Amim Zemiros 1分45秒>

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2023年9月11日 (月)

バハラフからバカラックへ

ゼアミdeワールド376回目の放送、日曜夜10時にありました。13日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。マサダのバハラフを聞いて、バカラックだ!と気づいた人は、どのくらいいるでしょうか? バカラックは水曜以降に。

東欧系ユダヤ音楽の16回目になります。ジョン・ゾーン・マサダの死海文書をジャケットにあしらった10枚シリーズで1曲もかけてないのは、6枚目ヴァヴ、8枚目ヘット、9枚目テットの3枚です。前回の最後に言いました通り、9枚目テットに入っている「死後」の意味のAcharei Motや、6枚目ヴァヴに入っている聖書によく出て来る地名のベエル・シェバと言う曲がタイトルで気になります。他には8枚目ヘットに入っているミシュナーとタルムードにも表れるコダシームとトホロットなどがあります。ミシュナーの中では、コダシームが生贄の儀式に関する、神殿と食事の法、トホロットは祭儀的な潔・不潔等の法に関係する部分ですが、死海文書の頃は違う意味で使われていたのかも知れません。ジョン・ゾーンの英訳を参照したと思われる例の10枚完結後のライナーノーツ集によると、コダシームが「神聖な場」、トホロットは「清浄」「純粋」となっていました。6枚目ヴァヴのMiktavは現代ヘブライ語なら「手紙」ですが何の手紙なのかとか、10枚目ユドのAbrakalaはアブラカダブラと関係があるのかとかも気になります。これらの曲については、長くなりますので今回は省略して、ゼアミブログの方で取り上げられればと思います。

今回聞き直して非常に驚いた一曲で、マサダのシリーズは一旦締めたいと思います。それは前回ゼメルと言う曲をかけた7枚目ザインに入っているバハラフと言う曲で、ジョン・ゾーンの英訳を参照したと思われる10枚完結後のライナーノーツ集によると、「長子相続権」「優先権」「長女」となっていますが、Bacharachと言う綴りを見れば一目瞭然で、英語読みすればバカラックと読めます。10枚完結後のライナーノーツ集では触れられていませんでしたが、軽快な曲調は明らかにバート・バカラックを意識して作られているように聞こえます。これは7枚目が出た96年頃には私も気が付きませんでした。
バハラフと読むと、最初はタルムードの大部分を占めているユダヤ教の法律の意味の「ハラハー」の頭に、「~に」の意味のバが付いたのかと思いましたが、動詞の「歩く」の意味のハラフに由来するハラハーの3語根はH・L・Chですから、バハラフのB・Ch・R・Chとは子音が食い違うことに気が付きました。加えて同じ綴りのバッハラッハと言う地名がドイツにあることを知ったので、ドイツ系ユダヤ人のバカラックの名前は、死海文書以来の古いヘブライ語もしくは、このドイツの地名から来ているのではと思いました。バッハラッハの地名はケルト語に由来すると思われているようですが、何を意味しているかは不明だそうで、ユダヤ人の多い時代もあったそうなので、もしかしてヘブライ語起源の可能性もありでしょうか? 
ジョン・ゾーンは曲名とバカラックの名が同じ綴りであることに気が付いて、このバカラック風の曲を書いたのではないかと思います。ではその7枚目ザインのバハラフと言う曲をまずおかけして、その後はジョン・ゾーンのプロデュースのTzadikのラディカル・ジューイッシュ・カルチャーのシリーズから出ていたバカラックの2枚組から抜粋していきます。ラディカル・ジューイッシュ・カルチャーのシリーズもディスクユニオンからサンプルをかなり頂きまして、まだじっくり聞けてない盤も多いのですが、バカラックの盤は特に注目の一枚だったと思います。

<5 John Zorn Masada / 7 ~Bacharach 1分25秒>

ラディカル・ジューイッシュ・カルチャー盤に移る前に、一曲だけバカラック自身の楽団の演奏で、I Say a Little Prayer(小さな願い)をおかけしておきます。ディオンヌ・ワーウィックやアレサ・フランクリンの歌唱で有名ですが、ブラックミュージックのイメージは最近まで余りなくて、このしゃれた曲調から多分バカラック作品で個人的に一番好きな曲です。変な喩えですが、放課後の誰もいない校庭を長年勝手に連想していました(笑) 脱力感のあるトランペット(あるいはフリューゲルホーン?)の音が最高です。

<8 Burt Bacharach / Reach Out ~I Say a Little Prayer 2分27秒>

では同じI Say A Little Prayerをラディカル・ジューイッシュ・カルチャーのGreat Jewish Music: Burt Bacharachに入っているMarie Mcauliffeの演奏でおかけします。この盤ではバカラック・ナンバーをジョン・ゾーン周辺の先鋭的な演奏家が、様々な実験的アレンジで披露しています。

<2-3 Great Jewish Music: Burt Bacharach ~Marie Mcauliffe / I Say A Little Prayer 6分12秒>

おそらくバカラックの曲で、「雨にぬれても」と並んで最も有名な曲と思われるClose To Youを次におかけします。カーペンターズの歌唱の邦題は「遙かなる影」となっていました。演奏はWayne Horvitzです。ジョン・ゾーンのネイキッド・シティに参加したことで有名な人です。

<1-1 Great Jewish Music: Burt Bacharach ~Wayne Horvitz / Close To You 2分24秒>

アルフィーも大好きな曲ですが、この盤では何とマサダのJoey Baronのドラム・ソロで入っています。さすがに旋律が分りかねますので(笑)、再度バカラックの自作自演を続けておかけしておきます。

<1-7 Great Jewish Music: Burt Bacharach ~Joey Baron / Alfie 3分28秒>
<2 Burt Bacharach / Reach Out ~/ Alfie 3分5秒>

では最後にMarc Ribotのギター中心の演奏でDon't Go Breaking My Heartを時間まで聞きながら今回はお別れです。マーク・リボーもジョン・ゾーン周辺の最重要ミュージシャンの一人です。面白いことに、この曲はマーク・リボーで1枚目に2回入っています。1回目はマカロニ・ウェスタンの曲のような軽快な調子ですが、2回目はスロー・テンポに落として、ギターで韓国の琴、カヤグムのような音を出しています。2回目まで入ると思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<1-2 Great Jewish Music: Burt Bacharach ~Marc Ribot / Don't Go Breaking My Heart 2分52秒>
<1-9 Great Jewish Music: Burt Bacharach ~Marc Ribot / Don't Go Breaking My Heart 3分29秒>

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2023年9月 8日 (金)

カライーム

ジョン・ゾーン・マサダの10枚で他にタイトルから気になるのは、来週の番組用に話した内容ですが、9枚目テットに入っている「死後」の意味のAcharei Motや、6枚目ヴァヴに入っている聖書によく出て来る地名のベエル・シェバ、8枚目ヘットに入っているミシュナーとタルムードにも表れるコダシームとトホロットなどがあります。ミシュナーの中では、コダシームが生贄の儀式に関する、神殿と食事の法、トホロットは祭儀的な潔・不潔等の法に関係する部分ですが、死海文書の頃は違う意味で使われていたのかも知れません。ジョン・ゾーンの英訳を参照したと思われる例の10枚完結後のライナーノーツ集によると、コダシームが「神聖な場」、トホロットは「清浄」「純粋」となっていました。6枚目ヴァヴのMiktavは現代ヘブライ語なら「手紙」ですが、何の手紙なのかも気になります。
更にカライームと言う曲も目立ちました。カライームと言えば、モーセ五書(トーラー)のみを権威と認めるユダヤ教の一派[で、口伝律法のミシュナーやタルムードの権威は一切認めないカライ派を一般には指しますが、ミシュナーやタルムード成立前の死海文書の頃は違う意味だったのかも知れません。カライ派は、イスラエル、カイロ、イスタンブール、クリミア、ポーランド、リトアニアにコミュニティーが残っているようです。10年前後前だったか、確かハザンの動画が見つかったクリミアのカライームについて、テュルク系の言葉を話すことから、コーカサス北部からヴォルガ中流域にかけて存在したハザール帝国の遺民ではないかと言う話題を上げたことがありました。ハザールは支配層がユダヤ教に改宗していた事で有名です。
今日の動画ですが、1本目の演奏は別ユニットのバル・コフバでしょうか。2本目がマサダのカライームです。カライームは動画がいくつもありました。この曲で一応マサダ・シリーズを締めます。

John Zorn - Karaim

Masada - karaim

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2023年9月 7日 (木)

アブラカラとアブラカダブラ

来週はバカラックと同じ綴りの7枚目ザインに入っているBacharachをもってマサダの10枚シリーズを終え、ラディカル・ジューイッシュ・カルチャーのバカラック作品集に移りますので、番組でかけてないマサダの曲に触れられるのは、一応今週までとなります。昨日のゼヴルの前に入っているのが今日のアブラカラですが、静謐で神秘的なアブラカラとの組み合わせはシリーズ最大の聴きどころの一つだと思います。
最初この曲名を聞いた時、(ジョン・ゾーンが94年にお会いした時に着ていたTシャツにプリントされていた)カバラーの文句アブラカダブラの関連の言葉かと思いましたが、どうなのでしょうか。後半の、カは「のように」、ダブラはヘブライ語ならダヴァル(話す)で、後半はヘブライ語から容易に推測が効きます。前半のアブラはアラム語(シリア語)では「物事をなす」のようですから、近い言葉のヘブライ語に訳せば、I will create as I speak(私が話すように物事が創造する)と取れるようです。キリスト教の異端であるグノーシス派の内のバシリデス派 (2~4世紀) に端を発し、中世にユダヤ神秘主義のカバラーを通して、おそらくイスラム世界にも広まり、60年代にはハクション大魔王でも聞いたように思いますから(笑)、すっかり「おまじない」や手品の文句として日本でも知られた言葉になりました。日本ではイスラム圏がルーツの言葉と勘違いされているように思います。
アブラカラだと、「~のように創造する」と、動詞の部分が隠れた形になっているようにも見えます。死海文書にアブラカラと出て来るのか、ジョン・ゾーンが後半の動詞の部分を隠したのか、どちらなのでしょうか。

Abrakala by John Zorn

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2023年9月 6日 (水)

マサダ10枚目ユドのフィナーレ ゼヴル

今回久々にマサダの死海写本ジャケットの10枚を聞き返して、10枚目ユド、7枚目ザイン、5枚目ヘイが特に素晴らしく、選曲以外でも聞き返しています。特に最後の10枚目ユドのアブラカダブラを思わせるタイトルの静謐なドラミングが聞きもののアブラカラと、その後のフィナーレ、ゼヴルの組み合わせが最高で、月曜に上げたゼメルと今日のゼヴルは、今ではマサダのベストと思っています。ゼヴルを聞いて思うのは拍子の不思議さで、8分の6のようにも聞こえながら、数えると10拍のようですから、5拍子と取れるかも知れません。これはオスマン音楽くらいにしかない拍子だと思いますが、決してとっつきにくくはならず、旋律はヘブライ的で極めて美しいです。10枚目ユドは曲名の英訳を聞いてないので、アブラカラとゼヴルの意味が分からないのが残念です。
10枚目ユドの冒頭はRuachでしたが、この曲だけのYouTubeは見当たりません。全ての曲が上がっている訳ではないようです。放送でも言いましたが、ルーアフとは空気や風を意味し、旧約聖書の中では魂や霊魂、精神を意味することが多く、非常に重要な単語です。「神の霊」の意味のルーアフ・エロヒームと言う形で出て来る箇所が沢山あったと思います。この曲も映像があって欲しかったのですが、曲自体はアブストラクトでフリーなエナジー溢れる演奏なので、耳に残る哀愁の名旋律と言う点では、ゼメルやゼヴルに軍配が上がると思います。

Masada - zevul

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