イディッシュ

2023年9月29日 (金)

Jiddischer TanzとOsse Schalom

フランソワ・リリエンフェルトについては、これ以上YouTubeには手掛かりがないので、今週かけた曲を他の人の演奏ですが、2曲上げておきます。主に母音唱法で歌われるハシディック・ニグンの中で、最もよく知られている旋律の一つ、イディッシュ・タンツ(A Jiddischer Tanz イディッシュの踊り、あるいはユダヤ人の踊り)ですが、ルスティヒ・ザイン(イディッシュ語Lustik zein?、英語be cheerful)と言う名称でも知られている名旋律です。クレズマー譜にも載っていたり有名なはずですが、意外にリヴァイヴァル・クレズマーのグループなどの演奏で聞いた記憶が、そう言えばほとんどないです。似た綴りのLustig zeinで検索すると、出てくるのはドイツの歌ばかりでした。クラリネット独奏で唯一ありましたので、上げておきました。
ヌリート・ヒルシュが書いたヘブライ語の名曲「オーセー・シャローム」については、シャンソン歌手として有名なエンリコ・マシアスの歌唱がありました。そう言えば、この人はアルジェリア生まれのセファルディ(スペイン系ユダヤ)の家系でした。彼の父はアンダルシア古典音楽のグループのバイオリン奏者だったそうです。立てて構えるスタイルだと思います。オーセー・シャロームは「平安を作り給うた方」と訳せます。

Gabriela Kaufmann | Jiddischer Tanz | Improvisation für Klarinette solo

Enrico Macias - Ose chalom

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2023年9月27日 (水)

カントールのフランソワ・リリエンフェルト

ハシディック・ソングとイディッシュ・ソングの、ラフな演奏ながら味わい深い歌声をRelief盤で聞かせたフランソワ・リリエンフェルトが、カントールに転身していた(あるいは元々カントールでもあったのかも)のは、今回調べて初めて知りました。Relief盤には曲の解説だけで、プロフィールは載っていなかったので。映像の撮影年は2002年頃と言うことなので、1989年のRelief盤から13年経っています。名前もおそらく珍しい苗字でしょうし、テノールの声質を聞く限り、間違いなくフランソワ・リリエンフェルトだと思います。バンド名にガリツィアナーと付けていたくらいですから、おそらくポーランド南部~ウクライナ西部のガリツィア辺りから、スイスに逃れてきた家系ではないかと思います。来週取り上げるギオラ・ファイドマンは、ベッサラビア(現在のモルドヴァ共和国の辺り)系ユダヤ人の両親が迫害から逃れ移住したアルゼンチンのブエノスアイレスで1936年に生まれています。ガリツィアとベッサラビア(バサラビエ)は共に、戦前にユダヤ文化が花開いた地方です。
カントールの詠唱を2本と、3本目はクレズマティクスのロリン・スクランベルクの感動的な名唱が耳に残るShnirele perele(真珠の弦)です。この映像のように指揮者としても活動しているようです。

Kantor François Lilienfeld, France Part 1

Kantor François Lilienfeld, Narbonne, France Part 2

Shnirele perele

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2023年9月25日 (月)

Francois Lilienfeld und Galizianer / Dayne Oygn

ゼアミdeワールド378回目の放送、日曜夜10時にありました。27日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。予想通りRelief盤のYouTubeは見当たらず、おそらく一本だけ93年の音源がありました。PCに読み込ましてもジャケットが出てこないので、ストリーミングにも上がってないと思われます。Francois Lilienfeldはカントールに転身?したようで、映像が幾つかありましたので、水曜以降にまた見てみます。

東欧系ユダヤ音楽の18回目になります。今回も90年代によく聞いたハシディック・ソングとイディッシュ・ソングの89年に出ていた盤で、Francois Lilienfeld und Galizianer / Dayne Oygnと言うスイス盤です。メーカーはReliefと言うマイナー・レーベルで、ここから出ていたのはほとんどがクラシックですので、ワールドミュージックのリスナーにはほとんど知られてなかったのではと思います。90年代前半は、ワールドやエスニックのコーナーだけでなく、クレズマーはポピュラーやジャズ、カントールはオペラ、セファルディは古楽のコーナーにも紛れ込んでいて、ユダヤの音楽全てを見渡そうとすると、それらのジャンルとコーナーを全てチェックしないといけない時期でした。出ている盤も、特に東欧系ユダヤ宗教歌のカントール関係などは一般のオペラ・アリア盤とほとんど見分けがつかず、アルファベット表記のヘブライ語の曲名で見分けるしかないような盤が多かったように思います。今回のRelief盤も、確かクラシックのリストの中で偶然見つけたと思います。
フランソワ・リリエンフェルトは、見た目からしてハシディックそのもののような人で、彼の緩急自在なアコーディオン弾き語りに、女性のみの伴奏陣が上手く合わせています。バンド名のガリツィアナーは、戦前にポーランド~ウクライナ系ユダヤ人の中心地だったガリツィア地方の名から来ています。現在のウクライナ西部からポーランド南東部にかけてあった地方です。編成はフランソワ・リリエンフェルトのアコーディオンあるいはギターの弾き語りと、チェロ、ヴァイオリン、フルートです。

東欧系ユダヤ音楽の特徴について、99年に音楽之友社から出たユーロルーツポップサーフィンに書いた拙稿の一部を読み上げます。「ショスタコーヴィチの証言」から引用している部分です。内容の真偽について議論を呼んで以来、この本は賛否両論ありますが、少なくともこの部分はショスタコーヴィチの本音がそのまま綴られていると思います。

今世紀ソヴィエトの大作曲家ショスタコーヴィチは次のように語っている。「ユダヤの民族音楽を聞く度に、私はいつでも感動を覚えるが、それは非常に多様性を帯び、見た目には陽気でも、実際は悲劇的なのである。ほとんど常に、泣き笑いに他ならない。ユダヤの民族音楽のこの特性は、音楽がいかにあるべきかという私の観念に近い。音楽には常に二つの層がなければならない。ユダヤ人は非常に長い間苦しんできたので、自分の絶望を隠すすべを身につけていた。ユダヤ人は自分の絶望を舞踊音楽の中に表現している。」ソロモン・ヴォルコフ編/水野忠夫訳「ショスタコーヴィチの証言」(中公文庫)より
まさに慧眼だと思う。きっと彼は後にホロコーストでその大多数が亡くなるクレズマーやハシディームの歌や踊りを目の当たりにしたのだろう。

Francoise Lilienfeld - Her nor Du scheyn Meydele

それでは主に母音唱法で歌われるハシディック・ニグンの中で、最もよく知られている旋律の一つ、9曲目のイディッシュ・タンツ(イディッシュの踊り、あるいはユダヤ人の踊り)からおかけします。ルスティヒ・ザイン(イディッシュ語Lustik zein?、英語be cheerful)と言う名称でも知られている名旋律です。後半歌詞が出てきて、最初どきっとしました。その後、アルバムタイトルになっているイディッシュの隠れた名曲ダイネ・オイグンまで2曲続けておかけします。

<9 A Jiddischer Tanz 4分33秒>
<10 Dayne Oygn 2分14秒>

11曲目にイスマッフ・モイシェと言うハシディックな曲が入っていて、これは個人的にこの盤で一番気に入っている曲です。シナイ山で十戒を授かったモーセの喜びを表現している曲で、他では聞かない曲です。

<11 Jissmach Moische 2分53秒>

12曲目にはヌリート・ヒルシュが書いたヘブライ語の名曲「オーセー・シャローム」が来て、その後はイディッシュ名曲のオイフン・プリペチクと続きます。オイフン・プリペチクは、確か映画「シンドラーのリスト」に出てきたと思います。オーセー・シャロームは「平安を作り給うた方」と訳せますが、ここでは平安を得る対象がイスラエルだけでなく、世界の民まで歌詞に読み込まれています。アル・コール・ハオラムの部分です。

<12 Osse Schalom 2分35秒>
<13 Oyfn Pripitschik 2分51秒>

15曲目にはエイブ・シュヴァルツの演奏で有名なキシニョフ・バルガーが入っていて、戦前のエイブ・シュヴァルツやリヴァイヴァル・クレズマーの各グループの演奏との比較でも興味深い演奏です。

<15 Der Kischinever Bulgar 2分47秒>

この後は1,2曲目に戻りまして、ニグン・スィムホーとロミール・ズィッヒ・イーベルベトゥンと続けます。どちらもハシディック・スピリットたっぷりの演奏です。2曲目は何度か他の演奏家でかけましたが、「喜びのニグン」と訳せる1曲目は他では聞かない曲です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<1 Niggun Simcho 2分49秒>
<2 Lomir sich Iberbeitn 3分16秒>

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2023年9月22日 (金)

ザハヴァ・ズィーヴァルトのその後

ザハヴァ・ズィーヴァルトのその後の活動を追ってみると、2003年のラディカル・ジューイッシュ・カルチャー盤から、ちょうど10年後の2013年(ストリーミングではそう表示されていますが)にリリースされたFrom My Mother`s Houseでは、このタイトル通り内容的にはセファルディ関連のはずですが、音的にはアシュケナジームはもちろんセファルディからも離れて、コンセプチュアルなコンテンポラリーミュージックに近づいているように聞こえました。その中からNiemand (Psalm)=詩篇と題する曲と、1999年にリリースされていてCDを入れられてなかったイディッシュの盤の2枚目からも一曲In Kamf、3本目Hamisha Asarは昨日のセファルディ関係のライブ映像のようですが、出てくる楽器が両方不明で、特に奇妙奇天烈な管楽器に目が行きます。クルムホルンの一種でしょうか? おそらく4コース8弦の弦楽器は、キテラでしょうか? 終わりまで見ると、弦楽器はリュート、管楽器はSerpent(蛇の意味)と出て来ました。セルペント(サーペント)と言うのは聞いたことがありましたが、この弦楽器がリュートと言うのは少々納得が行きません(笑)

Antiphona / Niemand (Psalm)

Zahava Seewald & Psamim — In Kamf

Hamisha Asar by Zahava Seewald, Michaël Grébil & Christophe Morisset

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2023年9月18日 (月)

Zahava Seewald & Psamim

ゼアミdeワールド377回目の放送、日曜夜10時にありました。20日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。Amim Zemirosは、別メロと併せて水曜以降に。Zahava Seewaldは、英語風に読めばザハヴァ・スィーワルドかも知れませんが、イディッシュですからドイツ語風に読んでズィーヴァルトが近いと思います。ザハヴァは、「黄金のエルサレム」のヘブライ語タイトル、イェルシャライム・シェル・ザハヴのザハヴ(金)の女性形です。

東欧系ユダヤ音楽の17回目になります。今回は90年代前半によく聞いたイディッシュ・ソングの盤で、ザハヴァ・ズィーヴァルトと言う女性歌手のベルギーSub Rosa盤(Zahava Seewald & Psamim / Ashkenaz Songs)中心におかけしたいと思いますが、2003年にジョン・ゾーンのプロデュースするツァディク・レーベルのラディカル・ジューイッシュ・カルチャーからも彼女のCDが出ていますので、こちらからもかけたいと思います。サブローザ盤については、99年に音楽之友社から出たユーロルーツポップサーフィンにレビューを書いていましたので、読み上げてから、文中の数曲をまずおかけします。

この盤は演奏の鮮烈さ、選曲の妙で光る。彼女はベルギーのアントワープの正統派ユダヤ教徒の家に生まれた。鮮やかな印象を残すゲットーの歌やハシディームのユダヤ神秘主義の歌の数々だが、あまり採り上げられない佳曲が多い。ベツニ・ナンモ・クレズマーの演奏で日本でも知られる「アレ・ブリデル」「パピロシュン(煙草)」、アハヴォ・ラボ旋法の結婚式の歌、最後のシャバトのヘブライ語の歌「アニム・ズミロット」の独唱も良い。モダン・ミュージックの良質なレーベルとして知られるサブローザ盤なので、パッケージもなかなかアーティスティック。

<8 Ale Brider 1分28秒>

<19 Papirosn 4分56秒>

<21 Amim Zemiros 1分45秒>

シャバトのヘブライ語の歌「アニム・ズミロット」は、いくつか旋律を知っていますが、これはこの盤だけで聞くメロディでした。1曲目の結婚式の歌は特に素晴らしいのでおかけしておきます。

<1 In Rod Arayn 2分28秒>

ザハヴァ・ズィーヴァルトが生まれたのはアントワープの正統派ユダヤ教徒の家と言うことですが、オランダPanのPlanet Flandersの解説によると、両親はモロッコ系の母とポーランド系の父とのことですから、モロッコ系のセファルディとポーランド系のアシュケナジームと言うことだと思います。ラディカル・ジューイッシュ・カルチャーから出ている盤(Zahava Seewald & Psamim / Koved)には、イディッシュだけでなくセファルディも16曲中2曲入っているのは、おそらくどちらにも馴染んできたからではと思います。ドイツ語に似たイディッシュ語とスペイン語に似たラディノ語の両方が、一人の歌い手によって一枚のCDから聞こえる不思議があります。今は東欧系ユダヤの特集ですので、今回はイディッシュ語の歌のみ取り上げます。まずは、ブレイヴ・オールド・ワールドの名演でも有名なルーマニアのドイナのスタイルによるバサラビエ(ベッサラビア)からおかけします。Sarah GorbyのLPを参考にしたという事で、他の演奏とは少し違っています。伴奏のサミームの編成はアコーディオン、ヴァイオリン、コントラバスです。

<1 Besarabye 4分31秒>

9曲目のヴェタヘル・リベイヌはヘブライ語の宗教歌、7曲目のHad Gadyaはアラム語の過ぎ越しの祭りの歌で、Vetaher Libeynuの旋律は東欧系ユダヤの有名なメロディです。ヴェタヘル・リベイヌに続いて、「ルーマニアのバルガー」は典型的なクレズマー・レパートリーで、その後はイディッシュの歌が続きます。12曲目のA Yidish Klarineteleと、16曲目のVesomahto Behogekhoを時間まで聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<9 Vetaher Libeynu 2分48秒>
<10 Roumenian Bulgar 3分13秒>
<12 A Yidish Klarinetele 3分17秒>
<16 Vesomahto Behogekho 2分56秒>

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2023年8月24日 (木)

Tahahとディレ・ゲルト

前にツプフガイゲンハンゼルを取り上げた時に、イディッシュ・ソングのディレ・ゲルトとTahahの類似を指摘しましたが、ライナーノーツにもその件が載ったTahahは、ジョン・ゾーン・マサダの1枚目アレフに入っていましたので今回の番組でかけました。訳は「混乱した」としていました。この単語の意味はヘブライ語では分からなかったので、ジョン・ゾーンから頂いた英訳からの和訳ですが、ヘブライ語本来のニュアンスが英語と同じかどうかは不明です。
イディッシュ・ソングのディレ・ゲルトではゲットー暮らしの劣悪さを歌っていましたが、マサダで出て来る場合、死海文書のフィルターが入るからでしょうか、ほとんど同じ旋律でも、どうしても違う風に聞こえます。ライナーノーツを書いた際の編集者とのやり取りで分かりましたが、ジョン・ゾーンはディレ・ゲルトを知らなかったようなので(どこかで耳にはしていたと思いますが)、どういうイメージでこの曲を書き、演奏していたのでしょうか。2本目に再度ツプフガイゲンハンゼルのディレ・ゲルトを上げておきます。

Masada / Tahah [HQ]

Dire-gelt

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2023年8月18日 (金)

黒い瞳 トレブリンカ シェデマティ

多作のカルステン・トロイケの歌は実にヴァラエティに富んでいて、イディッシュ・タンゴも第2集がありますし、まだまだ傾聴していたい気分ですが、東欧系ユダヤ音楽の道程は長いので、この辺で切り上げます。奥さんのスザンヌさんはロシア系だそうで、ロシアのジプシーロマンスの「黒い瞳」が上がっています。確かに彼女のロシア語は自然に聞こえます。二人で歌っている映像もかなりありますので、まず「黒い瞳」を一本目に、二本目は夫婦のもう少し若い頃の映像です。三本目はJidische Vergessene Lieder(イディッシュの忘れられた歌)の締めに入っているサラ・テネンベルクの独唱で、強制収容所トレブリンカでの悲劇を歌ったTreblinkaです。歌詞の和訳を添えておきました。淡々とした歌声からは、悲劇の恐ろしさがよりリアルに伝わるように思います。四本目は、先日見かけたのに行方不明になっていたヘブライ・ソング、シェデマティの動画です。ふとしたことから見つかりました。

Troyke & Suzanna - Otchii Tschornoye (Russian Song)

Schnucki, ach Schnucki

Treblinka

早朝、小さな町で半裸のユダヤ人たちがベッドから追い出される。
トレブリンカに向かう途中で、
貨車の車輪がどのように回転するのかを説明できる人は誰もいない。
海の向こうから来た私たちの兄弟たちは、
おそらくここで何が起こっているのか分からないだろう。
いつかこの戦争にも終わりが来る。
世界は大変な衝撃を受けるだろう。
トレブリンカには百万の墓があることを理解しなければならない。

Karsten Troyke & El Aleman - Sh'demati

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2023年8月17日 (木)

締めはJidische Vergessene Lieder(イディッシュの忘れられた歌)から

カルステン・トロイケについては、最初に聞いたのがJidische Vergessene Lieder(イディッシュの忘れられた歌)だったので、今日明日の締めはやはりこの盤から取り上げたいと思います。前々回にかけたMayn Vaybl Klareの愉快な調子が最初お気に入りでしたが、しっとりした曲ではピアノ伴奏の2曲が忘れられません。Bettina Wegnerの応唱が、また素晴らしいことこの上なしで。ですので、曲順を放送とは逆にしました。(以下放送原稿を再度)

ピアノ伴奏の物悲しくリリカルな2曲と言うのは、年老いた父を子供たちが匿うのは難しく(おそらく戦地に)一人残ることになるという7曲目のZet Nor Dem Altenと、「お休み、月や星がどんな風に輝くか見てね、でもお母さんの涙は見ないで。あなたのお父さんは帰ってこないの。」と出征した夫について子供に切々と語る13曲目のShluf Shoyn Kind Maynです。デュエットしている女性歌手はBettina Wegnerです。

<13 Karsten Troyke / Jidische Vergessene Lieder ~Shluf Shoyn Kind Mayn 2分6秒>

<7 Karsten Troyke / Jidische Vergessene Lieder ~Zet Nor Dem Alten 2分56秒>

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2023年8月16日 (水)

ハティクヴァとエリ・エリ

ヘブライ語の歌では、ハティクヴァとエリ・エリが残りました。どちらも特別な曲で、他の大衆歌謡とは一緒に出来ません。ハンナ・セネシュのエリ・エリのこともここでは指しますが、番組でかけたカルステン・トロイケの曲は、そのハンナ・セネシュの有名なエリ・エリとは別の歌で、キリスト教側の聖書の言葉として有名な「エリ・エリ・ラマ・アザヴタニ」の文句が出て来たことにおいて、これは一体どういう歌だろうと一人驚いていました。この秘密を解き明かしたいものですが。カルステン・トロイケのハティクヴァは、YouTubeには見当たらないので、2本目に珍しいインド系ユダヤ人の歌唱で。
ハティクヴァで個人的に強く印象に残っているのは、1978年のTVドラマ「ホロコースト 戦争と家族」で、パルティザンの数人が捕まって銃殺される寸前までこの曲を歌っていたこと、女教師がガス室に送られる直前に子供たちが歌うハティクヴァのピアノ伴奏をしていたシーンです。モルダヴィア民謡「Cucuruz cu frunza-n sus」を基に、サミュエル・コーエンが編曲し、更に1897年に作曲家パウル・ベン=ハイムによって管弦楽曲に編曲されたという事で、そのモルダヴィア民謡を聞いてみましたが、ハティクヴァとはかなり違って聞こえました。(以下放送原稿を再度)

Karsten Troyke, Daniel Weltlinger & Daniel Pliner名義の2018年のThe World and Iと言う音源の最後には、Eli Eliと言う曲が入っていまして、これは有名なハンナ・セネシュの歌ではなく、歌詞の冒頭に「エリ・エリ・ラマ・アザヴタニ」と出て来る通り、イエス・キリストが処刑される際に言ったとされる言葉、「神よ、何故私を見捨てたもう」のヘブライ語ですから、聖書をテーマにしているのではと思いますが、新約聖書の福音書以外にこの文句が出てきたか、また調べてみます。Eli Eliは、どちらの場合も「わが神、わが神」の意味です。冒頭の文句とシェマー・イスラエルなどヘブライ語の定例文以外は、ほとんどがイディッシュ語のようです。新約聖書の福音書やバッハのマタイ受難曲などでは、「エリ・エリ・ラマ(レマ)・サバクタニ」と、元のヘブライ語から離れた発音がされています。

<Karsten Troyke / The World and I ~Eli Eli 3分11秒>

Yiddish Berlinは、イディッシュ名曲のAbi Gezintで始まりますが、イディッシュ語とヘブライ語だけでなく、ロシア語の歌や、歌詞はイディッシュ語でもシャンソンのパダンパダンやアメリカのポピュラーソング、ケセラセラまであります。最後にイスラエル国歌のハティクヴァが入っていますので、次におかけします。元は19世紀末以来のシオニスト・アンセムですが、戦時中は対独レジスタンスの歌でもありました。スメタナのモルダウに似ているとも言われる悲愴感溢れる極めて美しい旋律です。

<Karsten Troyke / Yiddish Berlin ~HaTikva (Die Hoffnung) 2分30秒>

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2023年8月14日 (月)

カルステン・トロイケのヘブライ・ソング

ゼアミdeワールド372回目の放送、日曜夜10時にありました。16日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。http://www.baribari789.com/なら、世界中どこででもお聞き頂けます。今日はヘブライ・ソングの2曲だけ上げておきます。「バラの夕べ」は、Sharon Braunerとの演奏は見当たらず、ベッティナ・ウェーグナーとのデュオのライブ映像です。この曲はヘブライ語のラブソングで、このメロディーは、ユダヤ人の結婚式の音楽としてよく使われます。イスラエルやユダヤの音楽界だけでなく、中東全体でよく知られており、ベリーダンサーが踊る曲としてもよく使われるそうです。ハティクヴァとエリ・エリは水曜、イディッシュ・ソングは木金に。

東欧系ユダヤ音楽の12回目になります。前回、演劇的な、またキャバレー・ソングのようなイディッシュ・ソングとしてカルステン・トロイケを特集ましたが、ヘブライ語の歌が一曲入らなかったので、その曲と他のヘブライ語の歌から始めたいと思います。2008年のStiller Abend(静かな夕べ)の、Shedematy (Mein Feld)と言う曲ですが、イスラエルの名フォーク・デュオ、ドゥダイームが歌っていた名曲です。古いユダヤ旋法を髣髴とさせる旋律と和声で知られる曲です。どちらもイスラエルの時にかけたと思います。

<Karsten Troyke / Stiller Abend ~Shedematy (Mein Feld) 3分36秒>

同じくドゥダイームがよく歌っていた「バラの夕べ」がYiddish Berlin (feat. Daniel Weltlinger & Harry Ermer)に入っていますので、続けておかけしておきます。とても美しい曲で、ヘブライ語タイトルはErev Shel Shoshanimと言います。Sharon Brauner & Karsten TroykeのYiddish Berlinと言う2018年の音源に入っています。二人のイディッシュ・ソング歌手のこの音源はCDがあるのか、ストリーミングだけかは不明です。

<Karsten Troyke / Yiddish Berlin ~Erev Shel Shoshanim 3分20秒>

Yiddish Berlinは、イディッシュ名曲のAbi Gezintで始まりますが、イディッシュ語とヘブライ語だけでなく、ロシア語の歌や、歌詞はイディッシュ語でもシャンソンのパダンパダンやアメリカのケセラセラまであります。最後にイスラエル国歌のハティクヴァが入っていますので、次におかけします。元はシオニスト・アンセムですが、戦時中は対独レジスタンスの歌でもありました。スメタナのモルダウに似ているとも言われる悲愴感溢れる極めて美しい旋律です。

<Karsten Troyke / Yiddish Berlin ~HaTikva (Die Hoffnung) 2分30秒>

Karsten Troyke, Daniel Weltlinger & Daniel Pliner名義の2018年のThe World and Iと言う音源の最後には、Eli Eliと言う曲が入っていまして、これは有名なハンナ・セネシュの歌ではなく、歌詞の冒頭に「エリ・エリ・ラマ・アザヴタニ」と出て来る通り、イエス・キリストが処刑される際に言ったとされる言葉、「神よ、何故私を見捨てたもう」のヘブライ語ですから、聖書をテーマにしているのではと思いますが、新約聖書の福音書以外にこの文句が出てきたか、また調べてみます。Eli Eliは、どちらの場合も「わが神、わが神」の意味です。冒頭の文句とシェマー・イスラエルなどヘブライ語の定例文以外は、ほとんどがイディッシュ語のようです。新約聖書の福音書やバッハのマタイ受難曲などでは、「エリ・エリ・ラマ(レマ)・サバクタニ」と、元のヘブライ語から離れた発音がされています。

<Karsten Troyke / The World and I ~Eli Eli 3分11秒>

先日書いたゼアミブログと以下の解説は重複しますが、Jidische Vergessene Lieder(イディッシュの忘れられた歌)から、ピアノ伴奏の物悲しくリリカルな2曲と、サラ・テネンベルクの独唱でアルバム最後の曲、Treblinkaの3曲を、カルステン・トロイケ特集の最後におかけしておきます。

カルステン・トロイケの本格的な活動は90年頃に始まっているようですが、97年に出たJidische Vergessene Lieder(イディッシュの忘れられた歌)は、彼のライブでその歌声に感銘を受けながらも、イディッシュ語の発音や歌い回しに気になる部分も感じたサラ・テネンベルクを迎えての盤でした。ジャケットの左に写っている老婦人がサラ・テネンベルクで、彼女は13歳の時にドイツの軍人に連れ去られてしまった経験を持ち、戦前からのイディッシュの歌を記憶していた当時の生き証人でもありました。コラボの結果出来上がったJidische Vergessene Liederは、それまで公式に発表されていないイディッシュの歌が集められた一枚でした。ダメ出しの連続だったようで、トロイケの歌になかなか首を縦に振らなかったそうです。

ピアノ伴奏の物悲しくリリカルな2曲と言うのは、年老いた父を子供たちが匿うのは難しく(おそらく戦地に)一人残ることになるという7曲目のZet Nor Dem Altenと、「お休み、月や星がどんな風に輝くか見てね、でもお母さんの涙は見ないで、あなたのお父さんは帰ってこないの。」と出征した夫について子供に切々と語る13曲目のShluf Shoyn Kind Maynです。デュエットしている女性歌手はBettina Wegnerです。その後は、サラ・テネンベルクの独唱でアルバム最後の23曲目、強制収容所トレブリンカでの悲劇を歌ったTreblinkaですが、時間が余りましたら、19曲目のイディッシュ・タンゴまでおかけします。タンゴまで全てサラ・テネンベルクが記憶していた曲です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<7 Karsten Troyke / Jidische Vergessene Lieder ~Zet Nor Dem Alten 2分56秒>
<13 Karsten Troyke / Jidische Vergessene Lieder ~Shluf Shoyn Kind Mayn 2分6秒>
<23 Karsten Troyke / Jidische Vergessene Lieder ~Treblinka 2分>
<19 Karsten Troyke / Jidische Vergessene Lieder ~Yiddish Tango (Akh Nem Mikh Liber) 4分13秒>

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