クレズマー

2022年6月 2日 (木)

ドイナについて

VDE-Galloの「ルーマニアの農村音楽」3枚組のオルテニア編は、ゴルジ村とルンクと言う2つの場所での録音が半分ずつになっています。今週の放送でかけたのは前半のゴルジの方で、ルンクは次週に回そうかとも思いましたが、ルーマニアのシリーズが更に長くなるので、来週のモルダヴィア編の前に特徴的な3曲だけかけました。
ドイナと言うのは、70年代にザンフィルの演奏で聞いて以来「フリーリズムの哀歌」と言うイメージでしたが、「詩的でメランコリックであり、そのためときとしてブルースと対比される。ドイナはゆっくりしたテンポで、自由なリズムで演奏される。同じメロディが異なる歌でリピートされることもある。」とウィキペディアにはありました。ここまでなら、日本で言えば民謡の追分とかが幾分近いでしょうか。追分も日本中にありますし。
しかし、更には 以下もドイナに分類されるようで、クレズマーまで入っているのには驚きましたが、これはクレズマーのレパートリーにドイナも入っているという事だと思います。とにかく、ドイナは哀歌の枠を越えて、もっと広い音楽的概念のようです。

地域別のドイナ
Ca pe luncă - ドナウ川周辺のドイナ。「luncă」とは氾濫原または川岸の森のこと。
De codru - 「codru」は「森」を意味する
Haiduceşti - 「haiduc(ハイドゥク)」は「盗人」「盗賊」を意味する。
Hora lungă - 「長い踊り」を意味するマラムレシュ、トランシルヴァニア地方のドイナ。
Klezmer - ベッサラビア・モルダヴィア地方のユダヤ人によって演奏されてきた。
Oltului - オルト川流域で見られる

その他のドイナ
Ca din tulnic - メロディがトゥルニク(ブチュムBuciumともいう、アルプホルンの一種)を模倣する独特のスタイル
Ciobanul - 羊飼い(チョバン)のドイナ
De dragoste - よくある形式。「dragoste」とは「愛」のことで、通常は愛の歌である。より限定的には、ワラキア南部のドナウ平原地方に特有な種類の歌を指す。
De jale - 柔らかく落ち着いた、悲しげなドイナ。jaleは「悲しみ」の意
De leagăn - 子守唄。「leagăn」とは「揺りかご」の意
De pahar - 飲酒歌。「pahar」とは「グラス」
Foaie verde - 典型的な形式。「緑の葉」を意味する。

今日はオルテニア編の7曲目イオアナ・ピペルのギター弾き語りのDoina, La Fîntîna De Faget 2を探ってみていところでしたが、何も手掛かりがなさそうなので、元の6曲目のマリツァ・グラマによるDoina, La Fîntîna De Fagetを再度上げておきます。この曲は現在の哀歌風のドイナにそっくりに聞こえますが、この曲はオルテニアのゴルジ地方のドイナの典型で、ゴルジではこのタイプが広まったそうです。このタイプがクレズマーにも繋がって行くように思います。3本目は来週の放送には入れなかったルンクのドイナ"Citi pe lume-si petrecura"です。
東欧系ユダヤのクレズマーのドイナと言えば、個人的に真っ先に思い出すのが、リヴァイヴァル・クレズマーの代表的なグループ、ブレイヴ・オールド・ワールドの演奏するバサラビエ(ベッサラビア)と言う曲です。イツァーク・パールマンとのこの映像は、VHSで95年頃ワクワク感一杯で楽しく見ました。これを一本目に入れておきます。

Basarabye

Itzhak Perlman with "Brave Old World" klezmer-band plays classic doyna (Romanian-Jewish style melody) composition "Basarabye" by Moyshe Pinchevski and Bella Gottesman

<6 Doina, La Fîntîna De Faget 2分4秒>

Doina: "Citi pe lume-si petrecura"

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2022年4月27日 (水)

Chasid lakodalmi táncok

Chasid lakodalmi táncokは、1本目のチオアタとのセッションが何より貴重ですが、2013年のライブもありました。ムジカーシュのリーダーのMihály Siposは、セッションの時で40代半ばくらいでしょうか、ライブの時は60代半ばだと思います。ムジカーシュは、90年頃の来日公演を聞きに行きましたが、ミハーイ氏を見ると、いつも大泉滉を思い出してしまいます(笑)(以下放送原稿を再度)

まずは1曲目のChasid lakodalmi táncokですが、英語ではKhosid Wedding Dancesですので、ハシッド派ユダヤ教徒の結婚式のダンスと訳せると思います。ハシディック・ダンスのマラムレシュ版と言うことになりますが、一般のハシディックの音楽とは少し違うと思います。ムジカーシュの面々が現地取材の際にジプシーの老楽士Gheorghe Covaci(愛称Cioata)とセッションしているYouTubeもありました。満面の笑みを浮かべて弾いていたのを思い出しますが、この録音にもゲスト参加しています。

<1 Chasid lakodalmi táncok 4分33秒>
Muzsikas: Chasid Dances with Cioata

Muzsikás Együttes: Haszid lakodalmi táncok

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2022年4月25日 (月)

トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽

ゼアミdeワールド306回目の放送、日曜夜10時にありました。27日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。重要盤だと思いますが、2000年前後に執筆参加したディスクガイドでは、何故か漏れていたThe Lost Jewish Music of Transylvania。93年のリリース頃、六本木の店で随分売った記憶があります。今日は3本目までにしておきますが、このジャケットはハンニバル盤ではなく、ハンガリーからの再発盤です。

ルーマニアの音楽の18回目になります。今回は米Hannibalから1993年に出た「ムジカーシュ/トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽」(Muzsikás / Maramoros - The Lost Jewish Music of Transylvania)を特集します。ハンガリー・トラッド界の雄、ムジカーシュの代表作の一つで、名歌手マルタ・セバスチャンが歌で参加して華を添えています。ホロコーストでユダヤ人楽士の全てが亡くなり、忘れ去られていたトランシルヴァニアのユダヤ人の音楽を、ハンガリーのユダヤ人音楽学者のZoltan Simonとムジカーシュが協力して再現した盤です。戦前にユダヤ人の結婚式で演奏していたジプシーの老フィドラーGheorghe Covaciが記憶していて、取材したムジカーシュによって現代に蘇った曲も収録されています。音楽の印象は、一般的なクレズマーではなく、ムジカーシュが普段演奏するハンガリーのヴィレッジ音楽とも少し違っていて、当時のハンガリーのユダヤ音楽を忠実に再現しているという評価が高い演奏です。基本編成は、リーダーのMihály Siposのヴァイオリンと、伴奏は3弦のヴィオラ奏者が二人、コントラバスが一人です。
タイトルに「トランシルヴァニア」とありますが、本題はマラマロシュと言いまして、ルーマニア北部のマラムレシュ地方のハンガリー語読みですので、トランシルヴァニアでも最北部になります。狭義ではマラムレシュはトランシルヴァニアに入れない場合もあります。

まずは1曲目のChasid lakodalmi táncokですが、英語ではKhosid Wedding Dancesですので、ハシッド派ユダヤ教徒の結婚式のダンスと訳せると思います。ハシディック・ダンスのマラムレシュ版と言うことになりますが、一般のハシディックの音楽とは少し違うと思います。ムジカーシュの面々が現地取材の際にジプシーの老楽士Gheorghe Covaci(愛称Cioata)とセッションしているYouTubeもありました。満面の笑みを浮かべて弾いていたのを思い出しますが、この録音にもゲスト参加しています。

<1 Chasid lakodalmi táncok 4分33秒>
01 Chaszid lakodalmi táncok Khosid Wedding Dances

2曲目の物悲しく凄絶な程に美しい旋律のSzól A Kakas Márは、この盤の白眉でしょう。英訳ではThe Rooster is crowingですから、「雄鶏は鳴く」となるでしょうか。ハンガリー系ユダヤ人のみならず一般のハンガリー人の間でも有名な旋律で、ハンガリー語の歌詞ですがユダヤの歌らしくヘブライ語の行が挿入されています。言い伝えでは、ある羊飼いが歌っていた旋律をハシディズムの指導者ツァディク(義人)のReib Eizikがいたく気に入って覚えていた旋律だそうで、後には宗教や民族を分け隔てなく寛容に統治した17世紀のトランシルヴァニア公Gabor Bethlenのお気に入りの歌だったという記録もあるそうです。

<2 Szól A Kakas Már 3分7秒>

3曲目のMáramarosszigeti tánc(マラマロシュシゲティの踊り)は、ゾルタン・シモンの採譜で知られていて、ツィンバロム奏者のアルパド・トニをフィーチャーした、これもトランシルヴァニアとハシディックが入り混じった感じの曲です。Máramarosszigetiの地名は、マラマロシュとシゲティに分離できると思いますが、ヴァイオリニストのヨーゼフ・シゲティを思い出す曲名だと思ったら、この国境の町でシゲティは少年時代を過ごしたそうです。因みにハンガリー語のszigetiは「小島」の意味でした。

<3 Máramarosszigeti tánc 3分36秒>

次は1曲飛びまして、5曲目のアニ・マアミンです。アニ・マアミンとは、ヘブライ語で"私は信じる" を意味する一節ですが、それを元とする楽曲でもあります。ここで聞かれるのは、東欧系ユダヤでは最も有名なアニ・マアミンの旋律です。Gheorghe Covaciは、アウシュヴィッツから生き残って帰ったユダヤ人たちは、この歌をいつも泣きながら歌っていたと回想しています。出典は中世スペインのユダヤ教徒の哲学者、マイモニデス(モーシェ・ベン=マイモーン)が記した『ミシュネー・トーラー』に出てくるユダヤ教の信仰箇条の中の一節です。歌詞がある曲ですが、ムジカーシュの演奏はインストのみです。

<5 Áni Máámin 2分56秒>

7曲目はZoltan Simonがマルタ・セバスチャンに見せて歌うように勧めたユダヤ教の安息日(シャバト)の祈りの独唱で、シナゴーグでは男性が唱えるアハヴォ・ラボ旋法の曲を女性に歌わせているのがユニークです。

<7 Szombateste Búcsúztató 3分15秒>

8曲目はツィンバロム奏者のアルパド・トニが覚えていた曲で、トランシルヴァニアのSzaszregenのユダヤ・コミュニティで好まれていて、男女入り混じったジューイッシュ・ダンス・パーティーでは、いつもこの曲から始まるそうです。有名なイディッシュ民謡のBelzが元になっているようです。

<8 Szászrégeni szidó tánc 3分7秒>

では最後に年末の重要なユダヤ人の祭り、ハヌカーのための13曲目Chanukka gyertyagyújtásを時間まで聞きながら今回はお別れです。ヘブライ語ではHaneros Haleluとなっているこの曲は、ムジカーシュのメンバーがKlezmer Music; Early Yiddish Instrumental Musicと言う1910年のヒストリカル音源を聞いていて知ったそうです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<13 Chanukka gyertyagyújtás 3分11秒>

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2022年3月24日 (木)

イスラエル・ゾハル、テオドラ・ウングレアヌの床、Anne Nicolas

イスラエル・ゾハルのクレズマー・クラリネットでのJohnny is the Boy for Me(原曲サニエ・ク・ズルガライ)も、メドレーですが、ありました。50秒辺りからです。この人のクラリネット演奏をYouTubeで見るのは初めてですが、改めて凄い奏者だと思います。90年代にはギオラ・ファイドマンがKing of Klezmer Clarinetと呼ばれることが多かったですが、イスラエル・ゾハルの方が凄いのではと、90年頃から常々思っていました。

KLEZMER CLASSIC CLARINET VIRTUOSO ISRAEL ZOHAR klezmer classic clarinet

コマネチのチームメイトだったテオドラ・ウングレアヌの床運動にサニエ・ク・ズルガライが使われている映像と言うのは、こちらの11分頃からです。もう一曲のカルシュル共々、コマネチの演技でもあったように思いますが、YouTubeは今の所発見できておりません。

1976 Romania Gymnastics Display Comaneci Ungureanu

番組で「民謡的な味わいの歌唱をもう一曲」としておかけしたのは、こちらです。ルーマニア人の名前に見えないAnne Nicolasが、どういう歌い手なのかは残念ながら不明でした。Paul Toscanoのヴァイオリンも素晴らしいです。他にIonela Prodanの歌唱も考えていましたが、時間が足りず放送ではかけられませんでした。

<Anne Nicolas / Sanie Cu Zurgalai (feat. Paul Toscano et son orchestre) 2分8秒>

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2021年10月28日 (木)

フレイレフとチョチェク

Freylekhs - Cocek # 5と言う曲は、ほとんどクレズマー音楽のフレイレフ寄りに聞こえます。どこかにチョチェクの部分があるのか、もう少し耳を澄ませる必要を感じます。FreylekhだけでYouTube検索すると、それこそ無限に出てくると思いますので、Freylekhs - Cocek # 5と検索してたまたま出てきた動画が、ジューイッシュ・ウェディングの雰囲気を伝えていてなかなか良いので、こちらを一本目に入れました。Shtetl Neukölln & Tantshoysですが、ベルリン南東部のノイケルンのシュテトル(ユダヤ人集落あるいはコミュニティー)と言う意味のクレズマー・バンドのようです。日本では90年代のようには盛り上がってない感があるクレズマーですが、欧米のユダヤ社会では脈々と受け継がれているのでしょう。(以下放送原稿を再度)

Shtetl Neukölln & Tantshoys #5 - freylekhs

東欧系ユダヤのクレズマー音楽のグループの作品にボバンが客演している音源もありまして、フランク・ロンドン&クレズマー・ブラス・オールスターズ/Brotherhood of Brassと言う同じピラニアのドイツ盤ですが、これはリヴァイヴァル・クレズマーの中心的なグループ、クレズマティクスのトランぺッター、フランク・ロンドンとボバン・マルコヴィッチの両トランぺッターの夢の共演と思われます。祭礼音楽の一種である東欧系ユダヤのフレイレフとロマのチョチェクを合わせる試みでもあるようです。

<Frank London's Klezmer Brass Allstars / Brotherhood of Brass ~Freylekhs - Cocek # 5 (feat. Boban Markovic) 5分22秒>

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2021年10月25日 (月)

Boban Marković Orkestar

ゼアミdeワールド282回目の放送、日曜夜10時にありました。27日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。クレズマー絡みの曲は水曜以降に。

セルビアの音楽の4回目です。今回は映画「アンダーグラウンド」から注目されるようになったボバン・マルコヴィチ・オーケスターの何枚かの音源からご紹介します。グチャ村のブラス・コンテストで2000年度最優秀バンドに選出され、リーダーのボバンは上記コンテストで2001年に最優秀トランペッターに選出されています。

まずは独Piranhaから2002年に出たライヴ・イン・ベオグラードから、クストリッツァ監督、ボバン・マルコヴィッチ音楽のお馴染みの2曲、「アンダーグラウンド」からメセチナと「ジプシーのとき」からエデルレジを続けておかけします。

<Boban Marković Orkestar / Live in Belgrade ~Mesecina 4分59秒>

<Boban Marković Orkestar / Live in Belgrade ~Ederlezi 5分43秒>

このライヴ・イン・ベオグラードには、ユダヤの名曲「ハヴァ・ナギラ」も入っています。東欧系ユダヤのハシディック・ソング由来の高揚感をどう表現しているかが聞きものです。

<Boban Marković Orkestar / Live in Belgrade ~Hava Naguila 3分33秒>

東欧系ユダヤのクレズマー音楽のグループの作品にボバンが客演している音源もありまして、フランク・ロンドン&クレズマー・ブラス・オールスターズ/Brotherhood of Brassと言う同じピラニアのドイツ盤ですが、これはリヴァイヴァル・クレズマーの中心的なグループ、クレズマティクスのトランぺッター、フランク・ロンドンとボバン・マルコヴィッチの両トランぺッターの夢の共演と思われます。祭礼音楽の一種である東欧系ユダヤのフレイレフとロマのチョチェクを合わせる試みでもあるようです。

<Frank London's Klezmer Brass Allstars / Brotherhood of Brass ~Freylekhs - Cocek # 5 (feat. Boban Markovic) 5分22秒>

セルビア北部ヴォイヴォディナ出身のハンガリー系超絶ヴァイオリニスト、ライコー・フェリックスとの共演盤もありますが、時間が超過しますので、次回に回します。
では最後に2009年のDevlaから、タイトル曲のデヴラとマルーシュカを時間まで聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Boban I Marko Marković Orkestar / Devla ~Devla 3分23秒>
<Boban I Marko Marković Orkestar / Devla ~Maruska ~3分6秒>

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2021年1月29日 (金)

ブルガールとクレズマー

もう一つブルガールと聞いて思い出すのが、東欧系ユダヤのクレズマー音楽のダンス・レパートリーとしてのブルガールで、ベッサラビア(東ルーマニア、現在のモルドヴァ共和国)のブルガリア系少数民族にちなんで名付けられたか、ベッサラビアのジプシーミュージシャンの北ブルガリアとの接触にちなんで名付けられた説があるようです。グループ名にも入ったりして、とにかくクレズマーではよく聞く言葉です。ビザンツ帝国、サラセン帝国、ササン朝、西突厥が向かい合っていた7世紀、ブルガール人はまだブルガリアに侵入する前で黒海の北部(現在のウクライナ)辺りにいたようですが、その頃にまでクレズマー音楽のルーツを探すのは、歴史のロマンではありますが、日本なら聖徳太子の時代、無理がありそうです。ただベッサラビアと黒海北部がほとんど同じ場所であるのも確かです。なお、クレズマー音楽は私の番組での東欧音楽巡りの中で随時入れていく予定です。今日の動画は、有名なオデッサ・ブルガールを、二つのクレズマーバンドの演奏で。

Odessa Bulgar - Yxalag Klezmer Band

Odessa Bulgar - Klezmer Kollectiv

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2018年12月31日 (月)

大晦日のベートーヴェンSQとクレズマー

ゼアミdeワールド141回目の放送、日曜夕方に終りました。放送されるのは30日の夕方のみで再放送は無しと言うことですので、去年と同じく、今日おかけするのは、交響曲第九番に近い時期に作曲されて、似た感じのテーマ性を感じさせる後期の弦楽四重奏曲から第15番の第3楽章と第5楽章です。民族音楽を中心に聞きながらも、バッハの音楽やベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲などは、昔から変わらず聞き続けている西洋のクラシック音楽です。ヌーヴェルヴァーグの監督J.L.ゴダールの映画にも絶妙に引用されていたことは、好事家の方はよくご存知だと思います。
正月の間はブログアップは飛び飛びになるか、出来ないかも知れません。放送原稿の末にも書いておりますが、皆様どうぞ良いお年をお迎え下さい。来年も宜しくお願い致します。

この15番のカルテットは、全部で5楽章から成っていますが、その中でゆったりとした第3楽章は白眉の部分とされています。第九のラストを飾る歓喜の合唱と共通するものを感じる、ベートーヴェン晩年の深い音楽です。

以下ウィキペディアの解説を読み上げてみます。

第3楽章 "Heiliger Dankgesang eines Genesenen an die Gottheit, in der lydischen Tonart" Molto Adagio - Andante
ヘ調のリディア旋法、五部形式
「リディア旋法による、病より癒えたる者の神への聖なる感謝の歌」と題された、最も長い楽章。全体のクライマックスに位置している。ゆっくりとしたヘ調の教会旋法による部分と、より速めの「新しい力を得た」ニ長調の部分の交替で構成される。この楽章は、ベートーヴェンが恐れていた重病から快復した後に作曲されたため、上記のような題名が付された。

<3 Beethoven String Quartet No.15 In A Minor, Op.132 - 3. Molto Adagio 16分18秒>
Beethoven: String Quartet No.15 in A minor, Op.132 - 3. Canzona di ringraziamento offerta alla...


続きまして4楽章を飛ばして終楽章の第5楽章ですが、「失われた時を求めて」で知られるフランスの小説家マルセル・プルーストが、「ベートーヴェンでは、後期のピアノソナタや弦楽四重奏曲第15番の最終楽章を好み、真夜中に自室に楽団を呼んで演奏させたこともある」というエピソードを読んだことがあります。当時の有名なカペー弦楽四重奏団だったのかも知れません。この楽章の主題にはもの凄い秘話がありまして、実は第九の終楽章の主題として予定されていたそうです。それがあの合唱付に差し替えられました。もしこの曲が採用されていたら、憂いを含みながら素晴らしく情熱的で力動感溢れる名旋律ではあっても、器楽曲ですから、年末に第九が恒例になるようなことはなかったのではと思います。去年はブダペストSQでしたが、今年はハーゲン弦楽四重奏団の演奏でおかけします。古風で芳醇なブダペストSQとは一味違って、現在の弦楽四重奏団の最高峰とも言われるカルテットの名演です。

<5 Beethoven String Quartet No.15 In A Minor, Op.132 - 5. Allegro Appassionato 6分33秒>
Beethoven: String Quartet No.15 in A minor, Op.132 - 5. Allegro appassionato


では、最後に前回かけられなかったクレズマー・コンサーヴァトリー・バンドの87年に出たOy Chanukah!から、冒頭のA Freylekhe Nakht in Gan Eydnから始めて、時間までこの盤から続けたいと思います。今年のハヌカーは、12月2日から10日まででしたから、先週には既に終わっていました。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。皆様どうぞ良いお年をお迎え下さい。

<1 Klezmer Coservatory Band / Oy Chanukah! ~A Freylekhe Nakht in Gan Eydn 1分48秒>
A Freylekhe Nakht In Gan Eydn

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2018年12月27日 (木)

Itzhak Perlman plays Klezmer

このIn the Fiddler's Houseの映像をVHSで見たのは95年頃で、当時は東欧系ユダヤのクレズマーが非常に熱かったです。正にビデオが擦り切れる程見た懐かしい映像です。イスラエルの名ヴァイオリニスト、イツァーク・パールマンがリヴァイヴァル・クレズマーの代表的グループと次々セッションしています。私は特に最初のブレイヴ・オールド・ワールドのメンバーの妙技にも大変驚いたものです。パールマンもIn the Fiddler's Houseに先立って1987年に「playsユダヤ・メロディー」を同じEMIから出していたとは言え、こんなに合わせられるものだろうかとびっくり仰天でした。最初がブレイヴ・オールド・ワールド、4分位からがクレズマー・コンサーヴァトリー・バンド、6分前からがクレズマティクスです。クレズマティクスは、その後各メンバーのソロ・ワークでも大変話題になりました。先日の放送でかけたのは、クレズマー・コンサーヴァトリー・バンド(KCB)のオイ・ハヌカーでしたが、解説にもあるように、KCBの演奏はまだ20世紀初頭の東欧にクレズマー楽師達がいた頃の古録音の演奏に近いと思います。例えば、30日の放送用にかけた曲A Freylekhe Nakht in Gan Eydnは、1926年のHarry Kandel楽団の録音をそっくり再現している感じです。

Itzhak Perlman plays Klezmer

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2016年12月 2日 (金)

Lutz Elias & Massel Klezmorim

28日の放送原稿に書きましたが、90年前後に日本でも一部でクレズマー・ブームが始まりまして、その頃入っていた英ARCのLutz Elias & Massel Klezmorimの2枚は、クレズマー、イディッシュ民謡、ハシディック・ソングを中心に、セファルディーの曲までも入っていて、長らく棚を賑わせたものです。その後、彼らのリリースを見た記憶がなく、なかなか良い演奏をしていたので残念です。特にLutz Eliasの渋い歌声は今でもよく覚えています。と思っていたら、ハヌキヤ(7本のメノラーより2本多いハヌカー用の燭台)の写真は、どうやら見たことのないDVD&SACD盤のジャケットのようです。youtubeは3本ほどありました。Draj Techterleは英ARC盤に入っていたイディッシュの歌、A Yiddishe Mommeはこの2枚には入ってなかったイディッシュ・ソング、Durme Durmeも2枚に入ってなかったセファルディーの歌です。

Draj Techterle - Massel Klezmorim - Klezmer

A Yiddishe Momme - Massel Klezmorim -

Durme Durme ( Jewish lullaby in Ladino ) - Massel Klezmorim - lyrics

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