新ウィーン楽派

2026年6月 4日 (木)

ケルンテン州の民謡 ベルクのヴァイオリン協奏曲

シュタイアーマルク州の西に位置するケルンテン州は、アルプスの東の端と言っていい場所でしょう。ケルンテンの民謡で思い出す曲がありました。アルバン・ベルク作曲のヴァイオリン協奏曲で、1楽章の終わりの方でケルンテンの民謡「スモモの木で一羽の鳥が」(Ein Vogel auf'm Zwetschenbaum) が引用され、2楽章の終わりにもこの曲が回想されています。歌劇のヴォツェックやルルなどは曲の長大さもありますし、シェーンベルク以上にハードかなと思ってベルク作品は外していましたが、ヴァイオリンの開放弦の4音から始まるヴァイオリン協奏曲は、一番一般的な人気があると思います。この曲はマーラー未亡人のアルマ・マーラーの夭逝した娘マノン・グロピウスを追悼して書かれています。18歳で亡くなったマノンを偲んで「ある天使の想い出に」の献辞が付けられています。ケルンテンの民謡音源の後に、ベルクに作曲を委嘱し初演したヴァイオリニストのルイス・クラスナーの演奏で入れておきます。指揮はアントン・ウェーベルンです。なおケルンテンの民謡音源のジャケットの湖ですが、ブラームスが交響曲2番を作曲した場所がこの湖の北側のようです。(以下放送原稿を再度)

アルプスが近く風光明媚な所なのが窺えるジャケットのケルンテンの音源からは、3、7、15曲目の3曲を続けておかけしますが、時間が少し余りそうなので、「Chrysanthemenwalzer 菊のワルツ」という曲をその後に入れておきます。菊というのが気になりました。Gradtaktiger Landlerは、ストレートペース・レントラーと訳文が出てきましたが、それがどういう意味なのかは解説がないので不明でした。何よりもケルンテンのレントラーというのが一番のポイントです。

So Klingt's Bei Uns - Echte Volksmusik Aus Kärnten, Folge 1
<3 Zitherquartett Manfred Schuler / Hüttenberger Reiftanz ヒュッテンベルガー・ライフタンツ 2分50秒>

<7 Zitherquartett Manfred Schuler / Drum Leich I's Neama Her だから私はここに魂を捧げる 2分16秒>

<15 Zitherquartett Manfred Schuler / Gradtaktiger Landler ストレートペース・レントラー 1分28秒>

<19 Klagenfurter Volksmusik / Chrysanthemenwalzer 菊のワルツ 2分49秒>

Berg: Violin Concerto (1936) Krasner/Webern

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2026年5月29日 (金)

コパチンスカヤの皇帝円舞曲

今週と来週でオーストリアシリーズを終えますので、今週は皇帝円舞曲、来週は「インスブルックよ、さらば」にしました。ラストに相応しい2曲だと思います。やっぱりピエロで締めるのはどうかと思いますので(笑) ジャケットのコパチンスカヤは、同じピエロの格好はしていますが。2本目に番組でかけた「青ざめた洗濯女」も入れておきます。(以下放送原稿を再度)

このコパチンスカヤの「月に憑かれたピエロ」の盤は、シェーンベルクとウェーベルンの作品の間に入っているのが、ヨハン・シュトラウスの皇帝円舞曲です。「美しく青きドナウ」と並び称されるウィンナワルツの名曲中の名曲です。こういう新旧のウィーンの音楽を並べる試みは、現代音楽専門のアルディッティ弦楽四重奏団の音源にもあったと思います。オーストリアシリーズも終わりに近づきましたので、今回と次回は「今週のペルシア音楽」はお休みにして、今回は皇帝円舞曲をおかけすることにします。演奏はパトリツィア・コパチンスカヤ, Meesun Hong, Julia Gallego, レト・ビエリ, Marko Milenkovic, トーマス・カウフマン & Joonas Ahonenです。ピエロとは対称的なこの曲で、コパチンスカヤはファーストヴァイオリンを弾いているようです。

Emperor's Waltz, Op. 437

Pierrot Lunaire, Op. 21: IV. Eine blasse Wäscherin

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2026年5月28日 (木)

コパチンスカヤのピエロ・リュネール

コパチンスカヤについては、数年前のルーマニアの時にエネスコのヴァイオリン・ソナタ3番を上げたように思いますが、モルドヴァ出身ということもあって東欧寄りの独特なレパートリーにいつも強い関心を覚えます。その彼女が長年シェーンベルクの「月に憑かれたピエロ」に関心を持ち続けていたそうで、CDまで出ているのを割と最近知って驚きました。しかも、ヴァイオリンではなくシュプレッヒシュティンメ(最近はシュプレッヒゲザンクと言うことが増えているようです)を担当して、ピエロの格好をしてフラッシュ・モブのように方々でやっているのではと思われる写真が彼女のサイトに沢山上がっています。オフィシャルサイトのトップには「月に憑かれたピエロ」のフランス語表記であるピエロ・リュネール(Pierrot Lunaire)のボタンまであります。番組では個人的に46年前から特にお気に入りの「蒼ざめた洗濯女」だけかけましたが、今日の動画は全曲の舞台演奏の抜粋です。
オットー・フリースランダー作曲のピアノ伴奏版の「月に憑かれたピエロ」が気に入らず、シェーンベルクに新たに作曲を依頼した女優アルベルティーネ・ツェーメが歌い語って1912年に初演しています。100年余り経ってコパチンスカヤが演じていますが、彼女らを見ているとサティと加藤和彦でお馴染みの、ベル・エキセントリック(風変わりな美女) という言葉を思い出します。以下はコパチンスカヤのオフィシャルサイト(https://www.patriciakopatchinskaja.com/)にあった英文解説の翻訳です。

Schoenberg: Pierrot Lunaire with Patricia Kopatchinskaja (excerpt)

ピエロ・リュネール

アルノルト・シェーンベルクの『ピエロ・リュネール』は、1912年にベルリンで初演された、アルベール・ジローの詩をドイツ語に翻訳した詩に基づく、声楽と5つの楽器のための21の短いメロドラマからなる作品です。作曲家はここで、朗読に革命をもたらしたシュプレッヒゲザング(語り歌)という技法を初めて導入しました。シェーンベルクはこの作品を、キャバレーソングのように、皮肉でありながらも優しさとグロテスクさを併せ持つものにしようとしました。

ヴァイオリニストであり、時折女優としても活動するパトリシア・コパチンスカヤは、長年この独特な作品を演奏し、朗読することを夢見ていました。ある日、腕の痛みのためにヴァイオリンを弾けなくなったことがきっかけで、彼女はナレーター役を演じることになったのです。「私はずっと、自分がピエロだと感じてきました。」学生時代、この曲をヴァイオリンで弾くたびに、心の中で歌詞を口ずさんでいました。彼女は現在、ベルリン・フィルハーモニーをはじめ、アメリカのいくつかの都市、オランダ、スイス、スウェーデンなど、世界中の多くの場所で「ピエロ」を演奏しています。彼女は多くの音楽家仲間を集め、後世に残すために録音することにしました。プログラムには、シェーンベルクの幻想曲 作品47と6つの小品 作品19、ウェーベルンの作品(ヴァイオリンとピアノのための4つの小品 作品7)、そしてシェーンベルク編曲によるヨハン・シュトラウスの「皇帝円舞曲」作品437が収録されています。

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2026年5月27日 (水)

弦楽四重奏のための《5つの断章》

再度書きますが、浄夜など初期作品以外の新ウィーン楽派の曲目が一般の聴衆に受け入れられる日は来るのでしょうか。新ウィーン楽派の3人の同時代のバルトークやストラヴィンスキーなどは、70年代よりは大分一般的なコンサートに乗るようになったと思いますが、彼らのような新古典派や民族音楽を取り入れた作曲家の作品は、十二音技法の曲よりはるかに受け入れやすいというのはあると思います。ウェーベルン作品の中では、パッサカリアや弦楽四重奏のための《5つの断章》はキャッチーな方だと思います。今日の動画のように生演奏で見れた方がいいと思いますので、番組では1楽章だけでしたが、全曲演奏で上げておきます。Leonkoro Quartetの演奏です。ヴィオラだけ日本人奏者です。この曲は80年代に数住岸子さん他の演奏で確かTVで見た記憶があります。ポリーニの名盤「ブーレーズのピアノ・ソナタ2番」の前に入っていたのも短いウェーベルン作品で、ハードな曲の前のいい導入になっていたと思います。(以下放送原稿を再度)

パッサカリアを書いた翌年の1909年にウェーベルンが無調の世界に足を踏み入れたのが作品5番の弦楽四重奏のための《5つの断章》作品5です。1曲目の激しい動きで(Heftig bewegt)だけですが、ジュリアード弦楽四重奏団の演奏でおかけします。後期の十二音技法の作品よりも、パッサカリアとこの《5つの断章》が、聞く機会が多いように思います。他にウェーベルン作品で有名なのは、バッハの『音楽の捧げもの』の「6声のリチェルカーレ」のオーケストラ編曲ではないかと思います。1980年前後だったと思いますが、NHKFMの「現代の音楽」のテーマ曲に使われていました。

Webern: Fünf Sätze für Streichquartett op. 5

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2026年5月26日 (火)

浄夜を暗譜で立奏

火曜は通常ブログアップはしてないのですが、余りに凄い演奏を見つけましたので特別に上げておきます。今週は火曜も入れないと枠が足りないのもあります。今日の動画は、シェーンベルクの浄夜を、何と全楽団員が暗譜で弾いていて目が飛び出るほど驚きました。あの複雑な難曲を全員が薄暗がりの中で暗譜で弾いています。チェロとコントラバスは座らないと弾けませんが、ヴァイオリンとヴィオラは全員立奏しています。暗譜で立奏というのは理想の演奏形態ですが、よりによって浄夜でそれを行っているのにはびっくり仰天です。Norwegian Chamber Orchestraのメンバーにはアジア系の人も見えます。このような成熟した演奏のコンサートが可能で、それを聴く聴衆が大勢いる国ということでしょう。ノルウェーに行きたくなりました(笑)

Arnold Schoenberg: Verklärte Nacht

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2026年5月25日 (月)

ウェーベルンのパッサカリア

ゼアミdeワールド515回目の放送、日曜夜10時にありました。27日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。ブーレーズのパッサカリアはもちろん上がっていますが、ライブ演奏でいいものがありましたので、そのケルンWDR交響楽団の映像で上げておきます。浄夜やこの曲も、欧米ではようやく一般的なクラシックのプログラムになった感じでしょうか。日本ではまだまだそこまで行ってないように思いますが。

オーストリアの音楽の19回目です。今回は予告通り、ウェーベルンのパッサカリアから始めます。新ウィーン楽派は今回までで、次回をオーストリアのラストにしたいと思います。最後に再度民謡的な歌に触れる予定です。

まずウェーベルンの読みですが、90年代か2000年代に入ってからか不明ですが、「ヴェーベルン」となっていることが多いようです。確かにドイツ語に忠実に発音すればそうなると思いますが、70年代から「ウェーベルン」と読み慣らして来たので、かなり違和感があります(笑) 

シェーンベルクの弟子にアルバン・ベルクとアントン・ウェーベルンがいますが、ベルクは長大な十二音技法のオペラが多く、短く切り取って紹介するのが難しいので、今回はウェーベルンの作品のみにしておきます。彼の初期の作品パッサカリアはシェーンベルクの許での修行を終えた卒業作品として1908年に作曲されまして、この作品を「作品1」としています。ブラームスの交響曲4番の終楽章のシャコンヌを意識した古いパッサカリアの形式に則って、シェーンベルクの浄夜などの影響を強く受けた後期ロマン派の延長にありながら、調性感が薄くなっていく辺りが、ウェーベルンらしく壮絶に美しい作品だと思います。

作風を世紀末の絵画に喩えますと、シェーンベルク初期はクリムト、「月に憑かれたピエロ」はムンク、アルバン・ベルクはエゴン・シーレやココシュカ、ウェーベルンはカンディンスキーを思い浮かべると、イメージしやすいようにも思います。1980年のレコード芸術の現代音楽部門の大賞がブーレーズのウェーベルン全集でしたが、ジャケットはカンディンスキーの抽象画でした。

それではウェーベルン全集のブーレーズ指揮ロンドン交響楽団の演奏でおかけします。
<Passacaglia for Orchestra, Op. 1 10分9秒>

アントン・ヴェーベルン:パッサカリア|WDR交響楽団|ユッカ=ペッカ・サラステ

パッサカリアを書いた翌年の1909年にウェーベルンが無調の世界に足を踏み入れたのが作品5番の弦楽四重奏のための《5つの断章》作品5です。1曲目の激しい動きで(Heftig bewegt)だけですが、ジュリアード弦楽四重奏団の演奏でおかけします。後期の十二音技法の作品よりも、パッサカリアとこの《5つの断章》が、聞く機会が多いように思います。他にウェーベルン作品で有名なのは、バッハの『音楽の捧げもの』の「6声のリチェルカーレ」のオーケストラ編曲ではないかと思います。1980年前後だったと思いますが、NHKFMの「現代の音楽」のテーマ曲に使われていました。

<Fünf Sätze für Streichquartett, Op. 5: I. Heftig bewegt 2分40秒>

前回「月に憑かれたピエロ」の変わり種として紹介しましたが、モルドヴァ共和国出身のヴァイオリニスト、パトリツィア・コパチンスカヤもシュプレッヒシュティンメを歌い語って「月に憑かれたピエロ」を録音しています。第1部のフルート中心の伴奏の「蒼ざめた洗濯女」だけおかけしておきます。Patricia Kopatchinskaja, Meesun Hong, Julia Gallego, Reto Bieri, Thomas Kaufmann & Joonas Ahonenの演奏です。

<Pierrot Lunaire, Op. 21  Eine blasse Wäscherin 1分36秒>

このコパチンスカヤの「月に憑かれたピエロ」の盤は、シェーンベルクとウェーベルンの作品の間に入っているのが、ヨハン・シュトラウスの皇帝円舞曲です。「美しく青きドナウ」と並び称されるウィンナワルツの名曲中の名曲です。こういう新旧のウィーンの音楽を並べる試みは、現代音楽専門のアルディッティ弦楽四重奏団の音源にもあったと思います。オーストリアシリーズも終わりに近づきましたので、今回と次回は「今週のペルシア音楽」はお休みにして、今回は皇帝円舞曲をおかけすることにします。演奏はパトリツィア・コパチンスカヤ, Meesun Hong, Julia Gallego, レト・ビエリ, Marko Milenkovic, トーマス・カウフマン & Joonas Ahonenです。ピエロとは対称的なこの曲で、コパチンスカヤはファーストヴァイオリンを弾いているようです。この曲を時間まで聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Emperor’s Waltz, Op. 437 12分39秒>

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2026年5月21日 (木)

浄夜(浄められた夜)

ヴァイオリンとチェロを弾いて弦楽四重奏や弦楽合奏をやっていて、最終的な目標、最も弾きたい曲は、シェーンベルクの浄夜やリヒャルト・シュトラウスの変容(メタモルフォーゼ)、ブラームスの弦楽六重奏曲1番ですが、そこまで辿り着けるかどうかの難曲です。浄夜はN響でも聞いたことはないのですが、TVでやってないだけで、コンサートでは取り上げられることもあるのでしょうか。シェーンベルクや新ウィーン楽派の作品がクラシックのコンサートのプログラムに乗るのは、数えるほどのように思います。弾く側の技術面の困難さもあるでしょうが、聞く側の耳も、114年前に書かれた「月に憑かれたピエロ」にもまだ追いついてないということかも知れません。浄夜は、カラヤン、ブーレーズ、六重奏では巌本真理など色々聞きましたが、やはり最初に聞いたネヴィル・マリナーの甘美な演奏が忘れられません。彼自身がヴァイオリニストだったこともあるのでしょうか。LPが長らく行方不明で、YouTubeのようなジャケットではなく、ほとんど白一色だったように記憶しています。(以下放送原稿を再度)

浄夜(浄められた夜)に移ります。「月に憑かれたピエロ」は1912年作曲でしたが、シェーンベルク初期の重要作「浄夜」は1899年に作曲されていて、原曲は弦楽六重奏曲ですが、後に弦楽合奏編曲されています。この曲はリヒャルト・デーメルの同名の詩「浄夜」に基づき、月下の男女の語らいが題材となっています。他の男の子供を身籠ってしまった女の懺悔の告白と、それを男が許し和解するまでの葛藤が音楽になっている曲です。シェーンベルクの「ペレアスとメリザンド」と「グレの歌」や、後期のリヒャルト・シュトラウスの作品などと並んで、ワーグナーのトリスタン以来の後期ロマン派の極みの音楽だと思います。この曲もブルックナーの4番のように、弦の濃厚な響きとポルタメントに惹かれたネヴィル・マリナー指揮アカデミー室内管弦楽団の演奏で5分ほどおかけします。これも1980年の春、木の芽時の夜に何故か惹かれ、耳に付いて離れなかった演奏でした。全曲は単一楽章で30分近くあります。

<Verklärte Nacht, Op. 4 29分19秒>

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2026年5月20日 (水)

グレン・グールドと「月に憑かれたピエロ」

グレン・グールドが「月に憑かれたピエロ」を録音していたのを知ったのは、割と最近で20年くらい前です。しかも第1部の7曲のみなのが興味深いところです。グールドがシェーンベルクのピアノ独奏曲や歌曲などを入れているのは知っていましたが、ピエロもあったとは!と欣喜雀躍した覚えがあります(笑) グールドが好んだのは、バッハ、モーツァルト(グールドの演奏には賛否ありますが)、ベートーヴェン、グリーク、シベリウスが特に多い訳ですが、シェーンベルクがその次に来るのではと思うくらい録音があります。逆に前期ロマン派のショパン、シューマン、シューベルト、リストにはほとんど見向きもしなかったようで、録音は数曲だけです。シューマンとショパンは、確かジュリアード弦楽四重奏団とのシューマンのピアノ四重奏曲 とショパンのピアノソナタ第3番だけだったと思います。「月に憑かれたピエロ」はヴァイオリニストのコパチンスカヤがシュプレッヒシュティンメ(あるいはシュプレッヒゲザング)を歌い演じた音源1曲「蒼ざめた洗濯女」 だけ来週の番組でかける予定です。ピエロは好き嫌いがはっきり分かれるようで、絶対無理という人も多いようですが、この曲で現代音楽への扉が開いたと見ていいのではとさえ思います。グールドのピエロ、個人的な愛好曲ですが、第1曲「月に酔い」 Mondestrunken、第4曲「蒼ざめた洗濯女」 Eine blasse Wäscherin、第7曲「病める月」 Der kranke Mondの3曲を上げておきます。ピアノが出て来るのは1曲目だけですが、逆にフルートの魅力が満点の3曲だと思います。

Pierrot Lunaire, Op. 21, Pt. 1: No. 1, Mondestrunken

Pierrot Lunaire, Op. 21, Pt. 1: No. 4, Eine blasse Wäscherin

Pierrot Lunaire, Op. 21, Pt. 1: No. 7, Der kranke Mond

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2026年5月18日 (月)

月に憑かれたピエロ

ゼアミdeワールド514回目の放送、日曜夜10時にありました。20日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。70年代に怪奇趣味なジャケットで輸入LPが出ていたブーレーズ初回の「月に憑かれたピエロ」。Helga Pilarczykのシュプレッヒシュティンメが、とにかく最高です。80年代にフランスのAdesからCDが出まして私が持っているのはこの盤ですが、今日の動画にあるようにドイツの現代音楽の名門レーベルWergoからも2014年にCDが出たようです。上記の怪奇趣味なジャケットのLPは発掘作業が必要なため(笑)、今のところレーベル名が不明です。シェーンベルクの自作自演は、ソニーのヒストリカルシリーズから80年代にLPがありました。この曲の委嘱者である女優アルベルティーネ・ツェーメの録音もあれば嬉しいですが、さすがになさそうです。

オーストリアの音楽の18回目です。今回はオーストリアシリーズでかけたいと思っていた作曲家の内、シェーンベルクが残りましたので、やはり懐かしい曲を2曲かいつまんでおかけします。それは、浄夜(浄められた夜)と「月に憑かれたピエロ」ですが、どちらも1980年の高3の春に聞いてその妖しい魅力に衝撃を受けた曲です。初めて聞いて46年になります。浄夜やその後の「ペレアスとメリザンド」は後期ロマン派の極致の濃密な音楽ですが、「月に憑かれたピエロ」は後期ロマン派を越えて、現代音楽の十二音技法に辿り着く前に、無調の世界に足を踏み入れた記念碑的な曲です。

まず「月に憑かれたピエロ」ですが、1980年当時にTVでパントマイムのヨネヤマママコさんが話題にしていて興味を持ったのがきっかけでした。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、フルート、ピッコロ、クラリネット、バスクラリネット、ピアノだけの室内楽編成をバックに、ソプラノ歌手がシュプレッヒシュティンメという語りと歌の中間のような歌唱スタイルで演じる曲で、原作はベルギーの詩人アルベール・ジローが1884年に発表したフランス語の詩集ですが、白昼夢のような衝撃の内容になっています。ピエロ、コロンビーナ、カッサンドロといったイタリアの古典演劇(コメディア・デラルテ)の登場人物が、グロテスクで幻想的な世界を繰り広げるメロドラマという紹介文をウィキペディアで見かけました。

「月に憑かれたピエロ(ピエロ・リュネール)」は何種類も聞きましたが、最初に聞いたピエール・ブーレーズ指揮の70年代の2回目の録音よりも、60年代の最初の録音が衝撃的で、シェーンベルクの自作自演と共に一番ターンテーブルに乗ったと思います。シュプレッヒシュティンメが、2回目の方はイヴォンヌ・ミントンでクラシックの範囲の割と大人しい感じでしたが、初回のヘルガ・ピラルツィクの表現主義的と言えそうなちょっと恐い位の歌唱を聞いたら、もう他の歌手は考えられなくなりました。最近の演奏はクラシック的な割と大人しい歌唱が増えているようにも思います。変わり種ではジャズ歌手のクレオ・レーンや、アイスランドのポップスターのビョーク、ヴァイオリニストのパトリツィア・コパチンスカヤもシュプレッヒシュティンメで録音を残しています。また原題のピエロ・リュネールを名乗るイタリアのプログレッシブロックのグループがいました。

全体が3部に分かれていますが、後半のドロドロしてくる前の幻想的な範囲で留まっている第1部が昔から特に好きで、中でもフルート中心の伴奏の「蒼ざめた洗濯女」に大学時分一番はまりました。ピエロは80年代からスコアも持っています。それでは第1部だけブーレーズの初回の録音でおかけします。

Pierrot Lunaire. Dreimal sieben Gedichte nach Albert Giraud, Op. 21: I.

<Pierrot lunaire, Op. 21, pt. 1: Mondestrunken 1分46秒>
<Pierrot lunaire, Op. 21, pt. 1: Columbine 1分32秒>
<Pierrot lunaire, Op. 21, pt. 1: Der Dandy 1分9秒>
<Pierrot lunaire, Op. 21, pt. 1: Eine blasse Wäscherin 1分27秒>
<Pierrot lunaire, Op. 21, pt. 1: Valse de Chopin 1分10秒>
<Pierrot lunaire, Op. 21, pt. 1: Madonna 1分46秒>
<Pierrot lunaire, Op. 21, pt. 1: Der kranke Mond 2分10秒>

第1部は、第1曲「月に酔い」 Mondestrunken、第2曲「コロンビーナ」 Colombine、第3曲「伊達男(ダンディ)」 Der Dandy、第4曲「蒼ざめた洗濯女」 Eine blasse Wäscherin、第5曲「ショパンのワルツ」 Valse de Chopin、第6曲「聖母(マドンナ)」 Madonna、第7曲「病める月」 Der kranke Mondの7曲でした。ヘルガ・ピラルツィクとブーレーズ指揮の演奏でした。

浄夜(浄められた夜)に移ります。「月に憑かれたピエロ」は1912年作曲でしたが、シェーンベルク初期の重要作「浄夜」は1899年に作曲されていて、原曲は弦楽六重奏曲ですが、後に弦楽合奏編曲されています。この曲はリヒャルト・デーメルの同名の詩「浄夜」に基づき、月下の男女の語らいが題材となっています。他の男の子を身籠ってしまった女の懺悔の告白と、それを男が許すまでの葛藤が音楽になっている曲です。シェーンベルクの「ペレアスとメリザンド」と「グレの歌」や、後期のリヒャルト・シュトラウスの作品などと並んで、ワーグナーのトリスタン以来の後期ロマン派の極みの音楽だと思います。この曲もブルックナーの4番のように、弦の濃厚な響きとポルタメントに惹かれたネヴィル・マリナー指揮アカデミー室内管弦楽団の演奏で5分ほどおかけします。これも1980年の春、木の芽時の夜に何故か惹かれ、耳に付いて離れなかった演奏でした。全曲は単一楽章で30分近くあります。

<Verklärte Nacht, Op. 4 29分19秒>

20世紀初めのシェーンベルクと彼の弟子のアルバン・ベルクとウェーベルンの3人を新ウィーン楽派と言いますが、ラジオで流して良いのだろうかと思うほど更にヘヴィーなベルクのオペラや、短い十二音技法の名作を残したウェーベルンの音楽までは触れずに置こうかと思いましたが、次回ウェーベルンのパッサカリアだけ少しかけたいと思います。

「今週のペルシア音楽」に移ります。「月に憑かれたピエロ」「浄夜」と夜のムードの曲が続きましたので、ペルシア音楽なら何だろうかと考えてみました。夜の音楽と言えば、やはりシュール旋法とホマーユン旋法辺りだと思いますので、シュールの方をハッサン・キャサイのネイとジャハンギール・ベヘシュティのトンバク、ホマーユンをマジッド・キアーニのサントゥールでおかけします。二人とも往年の名人です。これらの曲を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Hassan Kassa'i / Le ney ~Pishdaramad-shahnaz tshahamezrab 3分3秒>
<Majid Kiani / L'art du santur : Iran ~Dastgâh Homâyun 17分33秒>

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2012年9月19日 (水)

ブラームスとウェーベルンのパッサカリア

他のパッサカリアを少し見てみます。今日は、ブラームスの交響曲第4番の終楽章、ウェーベルンのパッサカリアを上げておきましょう。ブラームスは4曲交響曲を書いていて、最後の交響曲第4番は冒頭からしてブラームスらしい晩秋のムード溢れる名曲で、私も中学頃にバルビローリ指揮ウイーン・フィルの演奏に随分はまりました。4楽章にはロマン派らしからぬ古めかしいパッサカリアが採用され異彩を放っていますが、注意して聞いてないと分らないかも知れません。ブラームスに秋味(こんな形容が似合いそうで)の作品は枚挙に暇なく、昨今はピアノ独奏の間奏曲(グレン・グールドの名演)なども人気のようです。

ウェーベルンはシェーンベルク、ベルクと並んで20世紀の新ウイーン楽派の作曲家で、無調から十二音技法に進んだ師匠シェーンベルクの技法を更に押し進め、その短く凝縮された抽象的な作品群の最初には、今日のパッサカリア作品1があります。シェーンベルクの浄夜の路線を更に深化させたような、後期ロマン派の極致の音楽と言えましょうか。無調~十二音に突入する前の、爛熟した世紀末の響きが感じられます。絵画に喩えるなら、浄夜や「ペレアスとメリザンド」の頃の初期シェーンベルクは、クリムトかエゴン・シーレ、ウェーベルンはカンディンスキーでしょうか。(そう言えば、ブーレーズのウェーベルン全集のジャケットはカンディンスキーでした) しかし、パッサカリアの頃のウェーベルンは、やはりクリムトでしょう。

おまけで、昨日のハルヴォルセン~ヘンデルのパッサカリアの、ヴァイオリンとチェロ版の素晴らしいライヴ映像を入れておきます。

Carlos Kleiber - Brahms Symphony No.4 (4th mov,)



Carlos Kleiber conducts Brahms Symphony No.4 (4th mov), with the Bavarian State Orchestra

Webern - Passacaglia for Orchestra, Op. 1

Han Na Chang-Passacaglia for Violin and Cello

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