ロマン派

2025年10月27日 (月)

カザルス・トリオのメントリ

ゼアミdeワールド485回目の放送、日曜夜10時にありました。29日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はメントリで、4楽章までの全曲です。

ドイツの12回目になります。前回はマルシュナーのオペラ「吸血鬼」で始めて、メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲1番2楽章などで終えました。マルシュナーの曲については、何と中身がファリャの曲だったということについては、ゼアミブログの方で指摘しておきました。今回もメンデルスゾーンで始めて、彼が復活演奏したバッハのマタイ受難曲の数曲に移ります。メンデルスゾーンの有名なヴァイオリン協奏曲については、時間の都合で割愛します。
これまでおかけした曲でお気づきかと思いますが、学生時代は大学のオーケストラに在籍してヴァイオリンを弾いていましたが、交響曲や管弦楽曲よりも、個人的に室内楽や器楽をずっと40年以上好んで来ました。今回もメンデルスゾーンの室内楽曲ですが、ピアノ・トリオ1番の第1楽章をおかけします。哀愁のある甘美な旋律で広く知られていて、愛好家の間では「メントリ」の愛称で呼ばれることも多いです。大学の頃には腕に自信のある先輩方が団内演奏でたまに披露していました。編成はヴァイオリン、チェロ、ピアノです。
ジャック・ティボーのヴァイオリン, アルフレッド・コルトーのピアノ、 パブロ・カザルスのチェロによる、いわゆるカザルス・トリオの歴史的名演でおかけします。

Mendelssohn Piano Trio No.1 in D minor,Op.49(Casals,Thibaud,Cortot 1927)

バッハのマタイ受難曲ですが、バッハの最高傑作と現在では言われていますが、1750年のバッハの死後は長く忘れられていました。1829年にわずか20歳のメンデルスゾーンによって歴史的な復活上演がなされ、バッハの再評価に繋がっています。新約聖書「マタイによる福音書」の26、27章のキリストの受難を題材にした受難曲で、CD3枚組の長さがある大曲です。とても全曲はかけられませんので、3曲だけ選びました。冒頭と最後のコラールと、47番のアルトのアリア「憐れみ給え、わが神よ」を考えていましたが、時間の都合で冒頭のコラールを半分ほどかけてから47番のアリアをおかけして、その後に終わりのコラールをかけますが、8分近くありますので途中までになります。
47番のアリアですが、タルコフスキーが最後に製作した映画「サクリファイス」の中で、このアルトによるアリアを使用しています。メンゲルベルク指揮アムステルダム・コンセルトヘボウのこの第二次世界大戦前夜の演奏は、迫りくる人類の悲劇を予感したかのように、この独奏ヴァイオリンのメロディにのって歌われるアリアの歌唱では、会場のあちらこちらから啜り泣きが聞こえることで有名でした。80年頃にミュンヒンガーで初めて聞いた後、カール・リヒターの名演の方に惹かれていた40年ほど前は、このテンポを揺らす演奏が少し苦手でしたが、最近になってこの演奏の「時代の証言」としての重要性と素晴らしさを再確認するようになりました。
では冒頭のコラールを少しだけかけた後で、アルトのアリアは全曲おかけします。

<St. Matthew Passion, BWV 244 - Pt. One: No. 1 Chorus I/II: "Kommt, ihr Töchter, helft mir klagen" 10分54秒~5分10秒>
<St. Matthew Passion, BWV 244 - Pt. Two: No. 39 Aria (Alto): "Erbarme dich" 8分27秒>

実は私も聞いていてどうにも涙がこらえられない曲で、90年代にヴィンシャーマン指揮ドイツ・バッハ・ゾリステンの抜粋演奏をサントリーホールで聞いた時も、47番のアリア辺りから始まって、終わりのコラールを聞いた後は、どうやって会場から出ようかと困ったほどです(笑)感動の坩堝に入ってしまうことは、日本のお能でも何度かありましたが、西洋音楽では他にはワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」くらいです。それではマタイ受難曲終わりのコラールを時間まで聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<St. Matthew Passion, BWV 244 - Pt. Two: No. 68 Chorus I/II: "Wir setzen uns mit Tränen nieder" 7分52秒>

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2025年10月24日 (金)

弦楽四重奏曲第1番第2楽章Canzonetta

今週の番組では有名曲まで色々かけましたが、後はメンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第1番の第2楽章Canzonettaだけにしておきます。この曲の旋律がユダヤ風だと知ったのが水野信男先生の本だったのか他だったのか、記憶が定かではありません。水野先生からの依頼で私がディスコグラフィ作成を担当した2冊を久々に引っ張り出しましたが、「メンデルスゾーンはユダヤ系だがユダヤ的な曲は特に書いてない」と書かれていた箇所だけだったように思います。冒頭の旋律はクレズマー風にも聞こえるメロディと、この旋律後半のユダヤ旋法的な動きが確かにありますが、これはメンデルスゾーンがシナゴーグで耳にした旋律が、ふと出てきたのでしょうか。若い頃の作品なので、近い過去の幼年時代の記憶がふと蘇ったのかもと思いますが。演奏はSchumann Quartettです。(以下放送原稿を再度)

メンデルスゾーンはヴァイオリン協奏曲や劇付随音楽「真夏の夜の夢」の結婚行進曲が特に有名だと思います。バッハのマタイ受難曲を復活演奏させた功績も非常に大きいですが、同時に彼はドイツのユダヤ系の人で、作品にその痕跡が現れていると言われる曲がありますので、その弦楽四重奏曲第1番の第2楽章Canzonettaをおかけします。確かに旋律にユダヤ旋法風な側面が感じられますが、これは彼の作品で例外的な曲のようです。

Schumann Quartett - Intermezzo - Mendelssohn: String Quartet op 12 - II Canzonetta

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2025年10月23日 (木)

Zigeunerleben (Gypsy life)

流浪の民(Zigeunerleben ツィゴイナーレーベン 「ロマの生活」の意)は、20代の内はピアノ曲を固めて書いていたシューマンが、30代に入ると打って変わって歌曲や合唱曲を量産しだした頃に書かれた曲で、1840年作曲の重唱曲『3つの詩 作品29』 の第3曲です。日本では合唱曲のイメージが強いように思いますが、今日の動画のように本来はピアノ伴奏の四重唱曲だそうです。合唱と違ってソリスト4人(ソプラノ、アルト、テノール、バス)を集めないと出来ないので、余り聞く機会もないのではと思います。シューマンの一般によく知られた曲は、先日かけた「子供の情景」のトロイメライと、ジプシーの生活を歌ったこの「流浪の民」が双璧ではないかと思います。ブラームスがジプシー音楽風の終楽章を書いたピアノ協奏曲第1番 ニ短調は1859年作曲ですから、それに20年近く先立っています。多少なりとも影響はあったでしょうか。

Schumann - Zigeunerleben (Gypsy life)

Soprano: Isabelle Fabre, Alto: Catherine L'Eplattenier, Tenor: Nicolas Desroziers, Bass: Jean-Michel Azon, Piano: Antonin Flavigny. Aussillon (France) 09/06/2012

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2025年10月20日 (月)

オペラ「吸血鬼」

ゼアミdeワールド484回目の放送、日曜夜10時にありました。22日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。番組でかけたMemorie盤では「吸血鬼」の序曲となっていた曲ですが、YouTubeでは違う曲が出てきました。これは一体どういうことでしょうか? 番組でかけた曲は、遥かに100倍くらい恐い曲ですが、取り合えずクルト・テネルの演奏で出てきた「吸血鬼」の序曲を上げておきます。

ドイツの11回目になります。前回の予告通り、ハインリヒ・マルシュナーのオペラ「吸血鬼」の序曲から始めたいと思います。この曲は、50、60年代のドラキュラ映画やその後のオカルト映画の音楽そのものではないかと思うほどの恐さがあります。この曲の影響があったのではと推測していますが。Kurt Tenner指揮ウィーン放送交響楽団他の演奏です。

<Heinrich Marschner / Der Vampyr ~Ouverture 8分41秒>
Der Vampyr: Ouverture

マルシュナーは1795年生まれ1861年没の、ドイツ・ロマン派の作曲家ですが、後輩のメンデルスゾーンやシューマン、ワーグナーらの中で、高い評価を受けていたそうです。マルシュナーにおいて劇的に導かれたシュプレヒゲザングを、自作の中で完成させたのがワーグナーですが、後世においては余りに大きな存在になったワーグナーの影に隠れてしまいました。
前回は最後にシューマンの交響的練習曲の冒頭をかけましたが、このピアノ曲の終曲が、ハインリヒ・マルシュナーのオペラ「聖堂騎士とユダヤの女 Der Templer und die Jüdin」の中のロマンス「誇らしきイギリスよ、歓喜せよ Du stolzes England freue dich!」の主題を元とした変奏曲だったことを今回調べていて知りました。このアリアについては音源を探し出せなかったので、シューマンの交響的練習曲の終曲を、再度アルフレッド・コルトーの演奏でおかけしておきます。

<Etudes symphoniques (Symphonic Etudes), Op. 13 17:20~6分>

シューマンの一般によく知られた曲は、先日かけた「子供の情景」のトロイメライと、ジプシーの生活を歌った合唱曲「流浪の民」が双璧ではないかと思います。Richter Helmut指揮ウィーンの森少年合唱団の歌唱です。

<流浪の民 ウィーンの森少年合唱団 & Richter Helmut 3分3秒>

メンデルスゾーンはヴァイオリン協奏曲や劇付随音楽「真夏の夜の夢」の結婚行進曲が特に有名だと思います。バッハのマタイ受難曲を復活演奏させた功績も非常に大きいですが、同時に彼はドイツのユダヤ系の人で、作品にその痕跡が現れていると言われる曲がありますので、その弦楽四重奏曲第1番の第2楽章Canzonettaをおかけします。確かに旋律にユダヤ旋法風な側面が感じられますが、これは彼の作品で例外的な曲のようです。演奏はメロス弦楽四重奏団です。

<String Quartett No.1 in E flat major, op.12-2 Canzonetta 4分1秒>

今回は陰鬱な曲が多めなので、最後は明るく、メンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」の結婚行進曲と、ヴァイオリン協奏曲の第1楽章を時間まで聞きながら今回はお別れです。結婚行進曲は小澤征爾指揮ボストン交響楽団、ヴァイオリン協奏曲はヤッシャ・ハイフェッツのヴァイオリン, シャルル・ミュンシュ 指揮ボストン交響楽団の演奏です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<劇付随音楽《真夏の夜の夢》作品61 第9番 結婚行進曲 5分7秒>
<Mendelssohn & Bruch: Violin Concertos 10分57秒>

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2025年10月17日 (金)

ラフマニノフとコルトーのシューマン

今週の締めに、ラフマニノフの謝肉祭とコルトーの子供の情景を上げておきます。ラフマニノフの方は、CD等では聞いたことのなかった1929年の音源で、大変に鮮烈な演奏でした。コルトーも番組でかけたのが1930年代の録音だったと思うので、1954年ということは晩年の音源のようですが、しっかりしたタッチでとても晩年とは思えません。音質がクリアなのが嬉しいところです。
コルトーは戦時中ナチスの傀儡政権だったヴィシー政権と関わりを持ち、フランスの未曽有の国難に対処しようとしたが、戦後はナチスの前で演奏したことなどの責を問われ、フランス国内での演奏の機会を完全に奪われるなど不遇だったそうです。コルトーと言えば、昔はショパンとシューマンばかり聞いていましたが、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」の愛の死 も入れていたようです。これは聞かねばと思っているところです。ピアニストとして楽壇にデビューするも、ワーグナーの作品に傾倒し、1896年から1897年までバイロイト音楽祭の助手を務めたとのことです。
「トリスタンとイゾルデ」の愛の死は、1902年コルトーの初録音のうちの1つで、フランス語で歌うフェリア・リトヴィーヌのピアノ伴奏を担当しているということですが、冒頭のミルト・ウント・ライゼの歌詞をドルチェ・エ・カルモと歌いだすイタリア語版はマリア・カラスで聞いたことがありますが、フランス語では全く未聴です。

Sergei Rachmaninov plays Schumann Carnaval Op.9

Alfred Cortot plays Schumann Kinderszenen (1954 German radio recording)

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2025年10月16日 (木)

交響的練習曲

交響的練習曲も番組では最後にかけたので冒頭だけで、これから変奏されて面白くなるところで切れましたが、ブログでは全曲上げられます。この曲も「子供の情景」も、やはりコルトーは素晴らしいです。その秘密の一つは、ルバートと絶妙な間の取り方でしょうか。昔の人なので、動画がないのが本当に残念です。来週はマルシュナーの「吸血鬼」で始めます。(以下放送原稿を再度)

1837年に書かれた交響的練習曲は、後に夫人となるクララ・シューマンの前にシューマンと交際関係にあった、謝肉祭で名前の出てきたエルネスティーネ・フォン・フリッケンの父フリッケン男爵の「フルートとピアノのための『主題と変奏』」の旋律を主題としていますが、最後の1曲「終曲」はハインリヒ・マルシュナーのオペラ「聖堂騎士とユダヤの女 Der Templer und die Jüdin」の中のロマンス「誇らしきイギリスよ、歓喜せよ Du stolzes England freue dich!」の主題を元とした変奏曲だったり、チャイコフスキーが、第11、12曲を管弦楽用に編曲していたり、他のピアノ曲より日本では知名度が低いように思いますが、なかなか話題の豊富な曲です。マルシュナーと言えば、「吸血鬼」と言う傑作オペラがありますので、次回シューマンの「流浪の民」などとかいつまんで取り上げたいと思います。

Schumann - Etudes symphoniques - Cortot


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2025年10月15日 (水)

ホロヴィッツの「子供の情景」

40年余り前にシューマンのピアノ曲を聞いていた頃は、クライスレリアーナと謝肉祭が強烈すぎて、「子供の情景」は少し印象が薄く感じたものです。7曲目のトロイメライと1曲目の「見知らぬ国と人々について」が飛び抜けて有名ですが、他はよく知らないと言う人が多いかも知れません。10曲目の「むきになって」と言う曲も旋律の美しさが引っ掛かりましたので、番組では3曲続けてかけました。思えば、この曲があったからドビュッシーの「子供の領分」も生まれたのかも知れません。だとすれば、どちらも子供の世界の捉えどころのなさを表現したという点で、後の音楽に繋がる部分があったと言えるようにも思います。リストの以下のエピソードは、今回初めて知りました。あのリストが!とびっくりしました。

この曲はフランツ・リストを感動させた。彼は「この曲のおかげで私は生涯最大の喜びを味わうことができた」とシューマンへの手紙に書き、週に2、3回は娘のために弾いていると明かしている。「この曲は娘を夢中にさせますし、またそれ以上に私もこの曲に夢中なのです。というわけで私は、しばしば第1曲を20回も弾かされて、ちっとも先に進みません。」

演奏は晩年のホロヴィッツです。例の吉田秀和さんのコメントの後だったと思いますが、この曲については素晴らしいと言う他なしです。

Schumann - Kinderszenen Op.15, "Scenes from Childhood" | Vladimir Horowitz

Robert Schumann - Kinderszenen Op. 15, "Scenes From Childhood", 1838.
00:38 Scene No.1 | Von fremden Ländern und Menschen (Of Foreign Lands and Peoples) • Schumann - "Kinderszenen" No. 1, Scenes fr...
02:09 Scene No.2 | Kuriose Geschichte (A Curious Story)
03:15 Scene No.3 | Hasche-Mann (Blind Man's Bluff)
03:48 Scene No.4 | Bittendes Kind (Pleading Child)
04:38 Scene No.5 | Glückes genug (Happy Enough)
05:17 Scene No.6 | Wichtige Begebenheit (An Important Event)
06:09 Scene No.7 | Träumerei (Dreaming) • Schumann - Träumerei, "Kinderszenen" No. 7...
08:43 Scene No.8 | Am Kamin (At the Fireside)
10:02 Scene No.9 | Ritter vom Steckenpferd (Knight of the Hobbyhorse)
10:43 Scene No.10 | Fast zu ernst (Almost Too Serious)
12:12 Scene No.11 | Fürchtenmachen (Frightening)
13:52 Scene No.12 | Kind im Einschlummern (Child Falling Asleep)
15:31 Scene No.13 | Der Dichter spricht (The Poet Speaks)
Vladimir Horowitz in Vienna, 1987.

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2025年10月13日 (月)

シューマンの謝肉祭

ゼアミdeワールド483回目の放送、日曜夜10時にありました。15日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。番組でかけた9曲だけ抜き出すのは難しいので全曲です。コルトーでありましたが、他にラフマニノフやルービンシュタインにも惹かれました。

ドイツの10回目になります。前回シューマンの子供の情景と謝肉祭を取り上げると予告していましたが、40年ほど前に前回のクライスレリアーナと並んではまっていた曲、謝肉祭(カルナヴァル)から始めたいと思います。全部で20曲の小曲から成る16分ほどの曲で、「4つの音符による面白い情景」と言う副題があります。個性的で謎めいた小曲が並んでいるところが、シューマンらしさと言えると思います。シューマンは短い期間に同じジャンルを固めて書く傾向があり、1834年から1838年までの20代の内に、謝肉祭、ダヴィッド同盟舞曲集、交響的練習曲、子供の情景、クライスレリアーナなどのピアノ曲の名作を次々書いています。30代に入ると、歌曲が急に多くなります。
謝肉祭では、実らなかった恋の相手エルネスティーネ・フォン・フリッケン (Ernestine von Fricken) の出身地アッシュ(Aš)のドイツ語表記「ASCH」を音名で表記した、《 As - C - H 》「ラ♭ - ド - シ」か《 A - Es - C - H 》「ラ - ミ♭ - ド - シ」)の音列に基づいており、「前口上」、「ショパン」を除く全ての曲に、これらの音列のいずれかが使用されています。
1837年に書かれたダヴィッド同盟舞曲集では主役が二人いて、「フロレスタン」は行動的な情熱家、「オイゼビウス」は優しい夢想家であり、シューマン自身の性格の二つの側面を表しています。シューマンの言う「ダヴィッド同盟」とは、保守的な考えにしがみついた古い芸術に対して新しいものを創作するために戦っていく人達を指しています。フロレスタンとオイゼビウスの二人が、先に作曲された謝肉祭にも登場します。
選んだ曲は、前口上、ピエロ、道化師、高貴なワルツ、オイゼビウス、フロレスタン、キアリーナ、めぐり逢い、フィリシテ人と闘う「ダヴィッド同盟」の行進の9曲です。終曲は行進曲ですが、3/4拍子になっています。「フィリシテ人」とは『旧約聖書』に登場するペリシテ人のことであり、シューマンは音楽上の「俗物」「守旧派」の意味で用いていて、一方「ダヴィッド」同盟は、ペリシテ人の巨人ゴリアテを倒した「ダヴィデ王」に因んでいます。2曲目のピエロは、3曲目のアルルカン、15曲目のパンタロンとコロンビーヌとともに、イタリア発の仮面を使用する即興演劇コメディア・デラルテの中心的存在です。前半の数曲がこの曲にカルナヴァルらしい「軽み」を与えていると思います。
ホロヴィッツよりもミスは目立ちますが、より詩的に聞こえるアルフレッド・コルトーの演奏でおかけします。

Schumann - Carnaval - Cortot 1923

<シューマン: 謝肉祭 Op. 9: 第1曲 前口上 2分29秒
<シューマン: 謝肉祭 Op. 9: 第2曲 ピエロ 1分8秒>
<シューマン: 謝肉祭 Op. 9: 第3曲 道化師 43秒>
<シューマン: 謝肉祭 Op. 9: 第4曲 高貴なワルツ 1分19秒>
<シューマン: 謝肉祭 Op. 9: 第5曲 オイゼビウス 1分30秒>
<シューマン: 謝肉祭 Op. 9: 第6曲 フロレスタン 54秒>
<シューマン: 謝肉祭 Op. 9: 第11曲 キアリーナ 49秒>
<シューマン: 謝肉祭 Op. 9: 第14曲 回り逢い 1分56秒>
<シューマン: 謝肉祭 Op. 9: 第21曲 フィリシテ人と闘う「ダヴィッド同盟」の行進 3分36秒>

子供の情景も13曲の小曲から成っていますが、特に7曲目のトロイメライと1曲目の「見知らぬ国と人々について」が飛び抜けて有名だと思います。私は10曲目の「むきになって」と言う曲も旋律の美しさが引っ掛かりますので、3曲続けておかけします。

<シューマン: 子供の情景 Op. 15: 第1曲 見知らぬ国と人々について 1分31秒>
<シューマン: 子供の情景 Op. 15: 第7曲 トロイメライ 2分29秒>
<シューマン: 子供の情景 Op. 15: 第10曲 むきになって 1分31秒>

最後にかけます1837年に書かれた交響的練習曲は、後に夫人となるクララ・シューマンの前にシューマンと交際関係にあった、先ほど名前の出てきたエルネスティーネ・フォン・フリッケンの父フリッケン男爵の「フルートとピアノのための『主題と変奏』」の旋律を主題としていますが、最後の1曲「終曲」はハインリヒ・マルシュナーのオペラ「聖堂騎士とユダヤの女 Der Templer und die Jüdin」の中のロマンス「誇らしきイギリスよ、歓喜せよ Du stolzes England freue dich!」の主題を元とした変奏曲だったり、チャイコフスキーが、第11・12曲を管弦楽用に編曲していたり、他のピアノ曲より日本では知名度が低いように思いますが、なかなか話題の豊富な曲です。マルシュナーと言えば、「吸血鬼」と言う傑作オペラがありますので、次回シューマンの「流浪の民」などとかいつまんで取り上げたいと思います。
それではアルフレッド・コルトーの演奏で交響的練習曲を時間まで聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Etudes symphoniques (Symphonic Etudes), Op. 13 23分30秒>

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2025年10月10日 (金)

コルトーのクライスレリアーナ

クライスレリアーナ週間の締めはアルフレッド・コルトーです。この曲は、他にもアルゲリッチの人気盤などでも80年代に聞きましたが、コルトーやホロヴィッツの演奏には(コルトーはミスタッチも目立ちますが)、現代のピアニストにはない「何か」があると思います。多分絶対に越えられない「何か」でしょう。シューマンは1810年生まれ1856年没、コルトーは1877年生まれ1962年没です。シューマンが長生きしていれば、会うことがあったかも知れないほど昔の人です。カザルスとトリオを組んでいたくらいですから。ホロヴィッツは1903年生まれで、ぎりぎり20世紀生まれです。昔の名手の録音を聞くと、現代の演奏家に本当のロマン派の音色は出せないのではと、ヴァイオリンでは強く感じますが、コルトーを聞くとピアノでもそう思います。これは各国の民族音楽(特に古典音楽)でも言えることだと思います。長くなるので、今回は書きませんが。

Schumann - Kreisleriana - Cortot 1935

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2025年10月 9日 (木)

Kreisleriana Vladimir Horowitz (Live 1968)

クライスレリアーナには「ピアノのための幻想曲集」という副題がありました。シューマンが僅か28歳の年に作曲し、ショパンに献呈されています。ショパンがどう思ったのか、弾いてみたのか、大変気になります。前後数年の内に書かれた謝肉祭などと違って、各曲に謎めいた個性的な名前はなく、一曲目の「Äußerst bewegt  激しく躍動して」のように、速度と表情の指示があるだけです。最近楽譜PDFをネットで手に入れて、最初の3連譜の連続と不規則に入る左手の動きを確認しました。ショパンのマズルカは、弦楽メンバーと弦楽三重奏で2曲少し試してみました。一曲はクライスラーがよく弾いていた曲です。クライスレリアーナは無謀だとは思いつつ、ヴァイオリンで少し音を取ってみました。今日のホロヴィッツのライヴ演奏は、例のカーネギーホールでの録音集成ボックスからのようです。やはり68年頃は全盛期だと思います。86年の晩年の録音も上がっていますが、まだ聞く勇気がありません(笑) 吉田秀和さんがあの有名なコメントをした頃です。以下もう少し曲についての解説をウィキペディアから引いておきます。

題名のクライスレリアーナとは、作家でありすぐれた画家でもあり、また音楽家でもあったE.T.A.ホフマンの書いた音楽評論集の題名(1814年 - 1815年刊)から引用されている。この作品はそれに霊感を得て作曲された。シューマンはその中に登場する、クライスラーという人物(ホフマンその人)を自分自身、さらに恋人(後の妻)クララの姿にも重ね合わせた。

Schumann | Kreisleriana, Op.16 | Vladimir Horowitz (Live 1968) Part 1/2

Schumann | Kreisleriana, Op.16 | Vladimir Horowitz (Live 1968) Part 2/2

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