ビザンツ音楽

2021年12月27日 (月)

コンタキオン

ゼアミdeワールド291回目の放送、日曜夜10時にありました。29日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。動画は最後のAxionとキリエしか見つかってないので、今日はAxionのみです。

ルーマニアの5回目になります。今回の放送は流れるのが26日と29日と言うことで、年の瀬ですので、ルーマニア正教の清澄な音楽を取り上げたいと思います。ミハイル・ディアコネスク指揮KontakionのMysteries of Byzantine Chantと言う盤に入っているのは、クリスマスではなくイースターの曲も多いようです。イースターは大体3月から4月に来ることが多く、日本語では復活祭と言われます。
リリースは1996年でこのタイトルですので、大ヒットしたブルガリアン・ヴォイスに続けと言うメーカーの意図があったのかも知れません。持続低音ドローンなどにギリシア正教の系統らしい重厚感がありますが、ロマンス語による正教会の典礼と言うのはルーマニアだけで行われています。この盤に関しては曲名を見る限りでは、ギリシア語が多い様に見受けられます。
ギリシア正教の聖地アトス山の音源で聞いたシマンドラに似た木製の神聖な法具を打つ音から始まります。Toacaと言う楽器のようです。作曲者不詳の冒頭からの4曲を続けます。タイトルから推測すると、歌詞はおそらく全てギリシア語だと思います。

<1 Toaca and Bells 1分43秒>
<2 Doxa 1分38秒>
<3 Tis metanias 3分9秒>
<4 Devte idomen tin zoin 3分43秒>

グループ名のコンタキオンについてですが、正教会と東方典礼カトリックの典礼で行われる賛美歌の一形態で、6世紀頃にビザンツ帝国で生まれています。前回アントン・パンの曲に正教会とカトリックらしき曲が混じっているのを不思議に思いましたが、ルーマニア人口の5.1%を占めるというカトリックは、ローマカトリックではなく、おそらく日本ではほとんど知られていない東方典礼カトリックだったのではと思います。
次にルーマニア人作曲家の曲の中から、前回「ルーマニアのクリスマス・キャロル」にも出てきたゲオルゲ・ククとパウル・コンスタンティネスクの曲を3曲続けます。男声合唱によるゲオルゲ・ククの短い2曲はルーマニア語で歌われているようです。ルーマニア音楽らしい哀感が感じられる曲です。混声合唱で始まるコンスタンティネスクの曲はイースター・オラトリオからの抜粋で、歌詞はギリシア語のようですが、曲調はルーマニア風に聞こえます。

<19 Gheorghe Cucu / Aghios o Theos 1分40秒>
<20 Gheorghe Cucu / I zoi en tapho 44秒>
<21 Paul Constantinescu / Easter Oratorio: "Proskinumen sou ta pathi Khriste" 3分20秒>

ゲオルゲ・ポペスク・ブラネスティのキリエを次におかけします。クラシック音楽ではキリエ・エレイソン(主よ、憐れみたまえ)の文句でミサ曲などに登場し、お馴染みのギリシア語起源の祈祷文です。

<13 Gheorghe Popescu Branesti / Kyrie 1分37秒>

ルーマニア人作曲家かどうかは不明ですが、鮮烈な印象のあったMacarie IeromonahulのKyrie EkekraxaとNectarie VlahulのAxionの2曲を聞きながら今回はお別れです。どちらもビザンツ典礼の重厚感とルーマニア音楽のエキゾチックさがミックスされた名曲だと思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。
年明け初の当番組の放送は、1月9日になります。
それでは皆様どうぞよいお年をお迎えください。

<5 Macarie Ieromonahul / Kyrie Ekekraxa 3分34秒>
<7 Nectarie Vlahul / Axion 5分34秒>

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2020年10月30日 (金)

Christodoulos Halaris

この人の名前は1990年にOrataのビザンティン世俗音楽の盤で見て以来「クリストドゥーロス・ハラリス」と読んで来ましたが、Χριστόδουλος Χάλαρηςですからギリシア語の発音としては、フリストドゥーロス・ハラリスの方が近いでしょう。1946年生まれで2019年に亡くなったギリシアの作曲家・音楽学者で、去年亡くなっていたことは今回初めて知りました。先日の繰り返しになりますが、ギリシア中世のビザンツ音楽や古代ギリシアの音楽の解釈で広く知られ、まだ五線譜がなかった頃のネウマ譜から考証・復元されたビザンツ時代の世俗音楽には、トルコの場所が11世紀に「トルコ化」する前のアナトリアの音楽も入っていたのだろうと思います。何か生映像はないかと探してみましたが、どうやらなさそうです。このガドゥルカやリラ、ケメンチェの大型のような、おそらく擦弦楽器を弾いている映像で初めて写真を見ました。
昨日の疑問について、黒田先生から情報を頂きました。Manuel Chrysaphesは、15世紀ビザンツ帝国の著名な音楽家で、300を越える曲を残しているそうです。ハラリスのオラータからの第一作は、この人の曲から始まっていたということです。ランパダリオスについては、元はローマ帝国時代に、執政官、皇帝の前で松明を運んだ奴隷のような存在だったようですが、マヌエル・クリサフィスの生きたビザンチン時代のランパダリオスは、東方正教会の合唱団のリーダーを指しているようです。西洋ならカントールに当たるでしょうか。

Christodoulos Halaris - Akritika (1995)

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2016年12月12日 (月)

正教の典礼歌 ギリシア、ロシア、ルーマニア、レバノン

ラジオの36回目の報告をする曜日ですが、立て込み作業や忘年会等でブログが飛んだり、短くなったりしがちなので、正教関係をもう少しアップしておきます。絶美の映像を拾ってみました。東方教会の音楽では、ドローンの上に響き渡る男声の荘厳さからギリシア正教の男声合唱が一番と思っていましたが、深遠なロシア正教の混声合唱も素晴らしく美しくて、多少ロシア語が分かるので、テキストとつき合わせてみたくなりました。ドストエフスキーやタルコフスキーの作品の秘密もこんな中にもあるのかも知れません。ルーマニア正教の典礼も礼拝の風景からして非常に美しく驚きました。レバノンは、ファイルーズやケイルーズで聞いたのと似ていて、やはりアラビア語で歌われています。アルメニアやグルジアの正教音楽までは今回追えませんでしたので、またいつか取り上げたいと思います。

ΑΣΜΑΤΙΚΟΝ - GREEK ORTHODOX CHANT

Russian Orthodox Choir Chanting Choral Vocal Top 10 Collection

Beautiful Romanian Orthodox Divine Liturgy.

Byzantine Christmas Hymns in Arabic: Mount Lebanon Choir (Lebanon)

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2016年12月 8日 (木)

ギリシア正教の典礼歌

ギリシア正教会については、余りちゃんと取り上げてなかったと思いますが、youtubeが相当ありそうです。さすがに聖域アトス山の映像などはないのではと思いますが。2本目は修道女の合唱で、ギリシア正教と言うと男声が多いので、おそらく珍しい録音ではと思います。ロシア正教、ルーマニア正教などまで広げると、更に東方教会の荘厳で美しい礼拝の様子が身近に感じられます。グルジアやアルメニアも正教系ですから、このドローンが重厚に響き渡る荘厳で幽玄な美しさに満ち溢れた合唱は、遍く東方各地に見られます。

BEAUTIFUL Greek Orthodox Christian CHANT Ασματικον YouTube

Ormylia Greek Orthodox Nuns - Hymns of St. Mary Magdalene

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2016年7月19日 (火)

シリア正教会のマリア賛歌

ムニール・バシールとレバノンの歌姫ファイルーズに共通の、シリア正教の音楽について少し調べてみようと思います。パレスチナの古代キリスト教にまで溯る訳ではないようですが、東ローマ帝国(ビザンツ帝国)が東地中海一帯を版図にしていた頃からのキリスト教と考えて良いようです。今日の一本は、シリア正教会のマリア賛歌になるようです。キリスト教の聖歌ですが、歌声はメリスマティックでコブシのようなものもあり、伴奏はネイ、カーヌーン、ウードなどの中東の楽器が使われることが多いです。字幕はシリア語のローマ字表記と英訳だと思いますが、同じセム系のヘブライ語やアラビア語にかなり似ているなと思いました。

Syriac Orthodox Hymn "Shlom Lekh"

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