筝曲

2024年1月10日 (水)

ヴァイオリンによる「春の海」

元旦の朝には、4日の弾き初めで「春の海」をやってみようと合奏団のメンバーにLINEしましたが、4時過ぎの能登の地震で正月気分は吹き飛びまして、すっかりそんな気は無くなっていました。しかしメンバーの一人が「FGでずっとかかっていました。やってみましょう」との返事。重い腰を上げて、まぁ一回やってみましょうかと言う事になりました。楽譜は全音から出ているヴァイオリン名曲集第1集のピアノ伴奏版で、ピアノパートの音をセカンドヴァイオリンとチェロで拾ってと言う実験でした。弾いてみて改めて思ったのは、冒頭は筝曲の名曲「六段」のような雅さと厳かさがあり、続いて出て来るソロパートは民謡音階なのに、途中で出て来る走句には長唄風な都節音階もあり、普通に考えれば合わない部品が巧みに組み合わされてできている、本当に奇跡的なワン&オンリーの正月名曲だという事でした。ルネ・シュメーがピチカートで弾いている部分とフラジオ(1と4の指で4度の音程の位置を4で軽く触れて出すハーモニクス)の部分は、今日の2本目のようにアルコ(弓)で弾いているものも結構ありました。伴奏との音量バランスもあるのだろうと思います。私もフラジオは上手く鳴らないので、実音で弾きました。
考えてみれば、この曲が生まれた1930年は、関東大震災から7年目かつ大恐慌の翌年で、軍靴の音が近づきつつある頃。今より大変に違いない時期に生まれたことを思い出し、新年を寿ぐこの曲について改めて考え直した年明けでした。やはり何よりも宮城道雄の琴の音の素晴らしさを味わいたいものです。(以下放送原稿を再度)

宮城道雄の父の出身地である広島県鞆の浦を訪れた際の、瀬戸内海の印象を三部形式に乗せて標題音楽風に作曲したこの曲は、今では彼の代表作として親しまれていますが、吉田晴風との1930年の初演の評判は芳しくなかったそうです。
この曲が一躍有名になったのは、1932年に演奏旅行で来日していたフランスの女流ヴァイオリニスト、ルネ・シュメーと共演してからと言われています。日本音楽に触れるために宮城道雄を訪ねた彼女が一番感動したのが、この「春の海」で、早速尺八パートをヴァイオリン用に編曲して宮城道雄とコンサートで演奏したら、大喝采を受けたそうです。会場で聞いていた小説家の川端康成が、その感動の光景を小説「化粧と口笛」に記しています。その宮城道雄とルネ・シュメーの演奏を次にどうぞ。

<2 春の海(箏とヴァイオリンによる) 6分13秒>
宮城道雄 Michio Miyagi(Koto), Renée Chemet ルネ・シュメー(Vn) - "春の海 Haru no Umi" (1932)電気再生

春の海 バイオリン 宮城道雄

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2024年1月 8日 (月)

春の海 宮城道雄自作自演

ゼアミdeワールド392回目の放送、日曜夜10時にありました。10日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。2曲目からは水曜以降に。

明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い致します。東欧系ユダヤ音楽シリーズの途中ですが、ちょうど本放送が1月7日に当たっていますので、お正月の音楽特集です。去年は喪中でしたので、2年ぶりです。
お正月と言えば、どこに行っても宮城道雄の「春の海」が聞こえてきますが、自作自演を聞く機会は割と少ないかと思います。この曲だけの色々な編成の録音を集めた「春の海 大響演」という2枚組から何度かご紹介してきました。今回も宮城道雄の自作自演をまずおかけしたいと思います。尺八は初演を勤めた吉田晴風です。

<春の海 宮城道雄自作自演 6分25秒>

宮城道雄の父の出身地である広島県鞆の浦を訪れた際の、瀬戸内海の印象を三部形式に乗せて標題音楽風に作曲したこの曲は、今では彼の代表作として親しまれていますが、吉田晴風との1930年の初演の評判は芳しくなかったそうです。
この曲が一躍有名になったのは、1932年に演奏旅行で来日していたフランスの女流ヴァイオリニスト、ルネ・シュメーと共演してからと言われています。日本音楽に触れるために宮城道雄を訪ねた彼女が一番感動したのが、この「春の海」で、早速尺八パートをヴァイオリン用に編曲して宮城道雄とコンサートで演奏したら、大喝采を受けたそうです。会場で聞いていた小説家の川端康成が、その感動の光景を小説「化粧と口笛」に記しています。その宮城道雄とルネ・シュメーの演奏を次にどうぞ。

<2 春の海(箏とヴァイオリンによる) 6分13秒>

次は、江戸の浄瑠璃の一つ、新内の曲で「廓七草」という曲をおかけします。新内も謡曲の後で私が東京にいる頃に習っていた音曲で、ちょうど放送されるのが七草がゆの頃ですので、この曲を選びました。廓(遊里)で流行った新内らしい哀切な曲調は、最も有名な蘭蝶や明烏以来のもので、艶美な節回しは古賀メロディなど、昔のナツメロ演歌のルーツにもなっているようです。歌っているのは、新内志寿さんで、往年の名人・新内志賀大掾中心のカセット「新内名曲選 子宝三番叟、広重八景」に入っていました。おそらく90年前後の録音で、新内志寿さんはその後、三味線弾き語りで重森三果のお名前で活動されていたと思います。

<新内 廓七草 9分34秒>

最後に民謡になりますが、新潟や日本海側中心に盲目の女性だけで組織を作り、唄をうたい歩いた芸能集団、瞽女(ごぜ)の杉本キクイさん他の三味線で、金毘羅船々をおかけしたいと思います。四国では正月に参ることも多い金毘羅山の有名な民謡で、キングの「名人による日本の伝統芸」シリーズの瞽女編に三味線練習曲として入っています。長調と短調が入り混じるのが、面白いところです。
時間が余りましたら、同じく瞽女の盤から祝い唄「春駒」までおかけします。春駒と言えば、今治の寿太鼓の定番曲としても知られていますが、瞽女の曲も正月にふさわしい祝言的な内容です。初春に訪れる養蚕祝言の門付芸で、高田瞽女は木製の春駒を手に持って唄うそうです。この2曲を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。

<4 瞽女歌 杉本キクイ 金毘羅船々 1分35秒>
<6 瞽女歌 杉本キクイ 祝い唄 春駒 6分29秒>

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2022年1月 7日 (金)

沢井忠夫、沢井一恵、山本邦山の「春の海」

今日までは松の内ですので、もう一度「春の海」です。沢井忠夫、沢井一恵、山本邦山の演奏は初めて聞きました。これはLPだけだったのでしょうか。端正で瑞々しく大変美しい演奏です。ゴールドブレンドのCMにも出ていた沢井忠夫さん、亡くなられたのはもう25年も前になりました。こないだのようですが、1997年が25年前と言うこと自体、驚きです(笑) 沢井一恵さんは、前にいた会社でフォーラムに出て頂いたように思います。宮城道雄に師事されていたのは、今回初めて知りました。おそらく晩年でしょう。この盤の曲目は以下の通りです。名曲・六段もあります。八段も聞きものです。

決定版 琴名曲撰   沢井忠夫、沢井一恵

春の海 宮城道雄作曲 0:00
君が代変奏曲 沢井忠夫編曲 7:05
八段 八橋検校作曲 12:01
六段 八橋検校作曲 20:55
数え唄変奏曲 沢井忠夫編曲 27:50
箏と尺八の二重奏“壱越” 31:52
越天楽変奏曲 沢井忠夫 42:12
瀬音 宮城道雄作曲 49:24
春の曲 吉沢検校作曲 55:00
さくらさくら変奏曲 沢井忠夫編曲 1:02:45
みだれ 八橋検校作曲 1:08:43
千鳥の曲 吉沢検校作曲 1:17:32

琴   沢井忠夫・沢井一恵
尺八  山本邦山
十七弦 宮本幸子

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2021年1月 7日 (木)

「春の海」自作自演、謡曲「高砂」、民謡、瞽女唄、新内

ゼアミdeワールド241回目の放送、水曜夜8時半にありました。今回の放送は6日のみです。
明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い致します。

お正月と言えば、どこに行っても宮城道雄の「春の海」が聞こえてきますが、この曲だけの色々な編成の録音を集めた「春の海 大響演」という2枚組から4年連続でご紹介してきました。今年はさすがにまだかけてない音源は減ってきましたが、今回も宮城道雄の自作自演をまずおかけしたいと思います。尺八は初演を勤めた吉田晴風です。(放送では、瞽女唄まで入らないので、後半の再現部分をカットしフェイドアウトしました。分かった方は、「春の海」の通だと思います(笑))

<春の海 宮城道雄自作自演 6分25秒>
春の海 宮城道雄自作自演

今回の「春の海」は宮城道雄の自作自演だけにしておきまして、後は他の邦楽曲をご紹介します。
正月がテーマではありませんが、結婚式でよく歌われる世阿弥作のお能「高砂」の、高砂やこの浦船に帆を上げて、の部分と、四海波静かにて、千秋楽は民を撫で、の3か所は祝言の謡いとして非常に有名ですので、今回取り上げておきます。この番組を始めた時にお話ししましたが、謡曲を26年前に少し習ったことが大きな転機になりまして、25年前の開店時にゼアミと言う店名にしました。私が習っていた喜多流の往年の大名人・喜多実の独吟です。能の5流それぞれの小謡集も手元にありますが、今年はこちらをおかけしておきます。

<2 喜多流 祝言小謡集 喜多実  高砂 四海波静かにて 1分13秒>
<4 喜多流 祝言小謡集 喜多実  高砂 高砂やこの浦船に 1分27秒>
<30 喜多流 祝言小謡集 喜多実  高砂 千秋楽は民を撫で 30秒>
大島輝久_小謡「高砂や」

民謡でも何か正月らしい曲はないかなと探していましたが、個人的にとても好きな秋田民謡の喜代節を今回おかけしてみます。歌、三味線共に憂いのある美しい旋律ですが、祝言的な内容の民謡です。(川崎千恵子さんではないようですが、唄、三味線共に素晴らしく、踊りも見れます)

<16 秋田民謡 喜代節 川崎千恵子 3分18秒>
喜代節(秋田県民謡)

次は、江戸の浄瑠璃の一つ、新内の曲で「廓七草」という曲をおかけします。新内も謡曲の後で私が東京にいる頃に習っていた音曲で、ちょうど放送されるのが七草がゆの頃ですので、この曲を選びました。廓(遊里)で流行った新内らしい哀切な曲調は、最も有名な蘭蝶や明烏以来のもので、艶美な節回しは古賀メロディなど、昔のナツメロ演歌のルーツにもなっているようです。歌っているのは、新内志寿さんで、往年の名人・新内志賀大掾中心のカセット「新内名曲選 子宝三番叟、広重八景」に入っていました。おそらく90年前後の録音で、新内志寿さんはその後、三味線弾き語りで重森三果のお名前で活動されていたと思います。(「新内 廓七草」は見当たらないので、新内流しの二挺三味線を上げておきます。私も昔色々な所で弾きました)

<新内 廓七草 9分34秒>
新内流し.mp4

最後に民謡に戻りますが、新潟や日本海側中心に盲目の女性だけで組織を作り、唄をうたい歩いた芸能集団、瞽女(ごぜ)の杉本キクイさん他の三味線で、金毘羅船々です。四国では正月に参ることも多い金毘羅山の有名な民謡で、キングの「名人による日本の伝統芸」シリーズの瞽女編に三味線練習曲として入っています。長調と短調が入り混じるのが、面白いところです。

時間が余りましたら、同じくキングの「名人による日本の伝統芸」シリーズの瞽女編から祝い唄「春駒」までおかけします。春駒と言えば、今治の寿太鼓の定番曲としても知られていますが、瞽女の曲も正月にふさわしい祝言的な内容です。初春に訪れる養蚕祝言の門付芸で、高田瞽女は木製の春駒を手に持って唄うそうです。この曲を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<4 瞽女歌 杉本キクイ 金毘羅船々 1分35秒>
<6 瞽女歌 杉本キクイ 祝い唄 春駒 6分29秒 ~2,3分>
杉本キクエ - 金毘羅船々

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2020年1月 9日 (木)

都山流尺八の「春の海」

ゼアミdeワールド194回目の放送、水曜夜にありました。宮城道雄の自作自演の動画は何度も上げていますので、これまでに上げたことのなかった山本邦山の音源のみにしておきます。虚無僧尺八のカラーが強い古風な琴古流に対し、都山流は明治以降確立された関西ベースの新しい流派なので、早くから新日本音楽と提携し、新様式を積極的に開拓して演目を広げて来ました。「春の海」も、新日本音楽に入るでしょうから、都山流尺八はぴったりなのでは。山本邦山さんは、80年代にジャズやインド音楽との共演などもされていたように記憶しています。

明けましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い致します。

8日の再放送枠のみありますので、正月関連の特番に致します。これまで3回「春の海 大響演」という2枚組からご紹介していましたが、今年は3年前の最もオーソドックスな音源に戻ってご紹介します。

お正月と言えば、宮城道雄の「春の海」を思い出す方が多いのではと思います。正月中はどこに行っても耳にする曲ですが、この曲だけの色々な編成の録音を集めた「春の海 大響演」という2枚組が出ておりますので、こちらからご紹介して行きます。

まずは、宮城道雄の自作自演で、尺八は初演を勤めた吉田晴風です。

<1 春の海(オリジナル) 6分30秒>

宮城道雄の父の出身地である広島県鞆の浦を訪れた際の、瀬戸内海の印象を三部形式に乗せて標題音楽風に作曲したこの曲は、今では彼の代表作として親しまれていますが、吉田晴風との1930年の初演の評判は芳しくなかったそうです。

この曲が一躍有名になったのは、1932年に演奏旅行で来日していたフランスの女流ヴァイオリニスト、ルネ・シュメーと共演してからと言われています。日本音楽に触れるために宮城道雄を訪ねた彼女が一番感動したのが、この「春の海」で、早速尺八パートをヴァイオリン用に編曲して宮城道雄とコンサートで演奏したら、大喝采を受けたそうです。会場で聞いていた小説家の川端康成が、その感動の光景を小説「化粧と口笛」に記しています。その宮城道雄とルネ・シュメーの演奏を次にどうぞ。

<2 春の海(箏とヴァイオリンによる) 6分13秒>

次にフルートのガッゼローニと三代目宗家の宮城数江の1972年録音をかけてみましょう。1956年の宮城道雄の没後では、最初のこの曲の録音です。ガッゼローニと言えば、ジャズの鬼才エリック・ドルフィーのフルートの師匠としても知られ、ドルフィーのアルバムOut to LunchにGazzelloniと言うオマージュ曲が入っていました。

<7 春の海(箏とフルートによる) 7分1秒>

では、最後に宮城道雄にも師事した作曲家でもある唯是震一と都山流尺八の山本邦山の録音でおかけします。去年の正月に予告していた音源です。琴古流と都山流の尺八の芸風の違いが感じられて興味深いものがあります。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<8 春の海 唯是震一と山本邦山 6分39秒>

『春の海』

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2020年1月 6日 (月)

宮城道雄&ルネ・シュメー

もうお屠蘇気分も抜けた頃だと思いますが、まだ辛うじて松の内ですので、やはりこの曲です。名演は何度聞いても良いものです。

遅ればせながら、明けましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い致します。今日からCafeトーク・トークも営業しております。

今週の水曜20時半からの放送用にかけた音源です。今回は日曜にはなかったので、8日水曜のみです。(以下ほぼ放送原稿の転載です)

宮城道雄の父の出身地である広島県鞆の浦を訪れた際の、瀬戸内海の印象を三部形式に乗せて標題音楽風に作曲したこの曲は、今では彼の代表作として親しまれていますが、吉田晴風との1930年の初演の評判は芳しくなかったそうです。

この曲が一躍有名になったのは、1932年に演奏旅行で来日していたフランスの女流ヴァイオリニスト、ルネ・シュメーと共演してからと言われています。日本音楽に触れるために宮城道雄を訪ねた彼女が一番感動したのが、この「春の海」で、早速尺八パートをヴァイオリン用に編曲して宮城道雄とコンサートで演奏したら、大喝采を受けたそうです。会場で聞いていた小説家の川端康成が、その感動の光景を小説「化粧と口笛」に記しています。

宮城道雄 Michio Miyagi(Koto),Renée Chemet(Vn)_"春の海 Haru no Umi"


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2019年1月 9日 (水)

松竹梅

月曜のラストに上げました生田流二代目宗家の宮城喜代子と琴古流尺八の青木鈴慕の「春の海」も非常に素晴らしかったのですが、そのリンクに松竹梅という曲がありまして、オールスターキャストのような演奏者の豪華さにまず驚きました。米川敏子、藤井久仁江、川瀬白秋、矢崎明子、深海さとみ(以上・三弦)米川文子、中島靖子、後藤すみ子、野坂恵子、吉村七重、米川文清(以上・箏)尺八・青木鈴慕と、大御所が揃っています。筝、三味線、尺八という編成ですので、三曲かと思ったら、筝曲と出ています。どちらでしょうか? (皆さん暗譜というのにも驚いてしまいますが)

『松竹梅』

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2019年1月 7日 (月)

今年も春の海と六段から

遅ればせながら、明けましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い致します。結局ブログアップは大晦日以来になりました。ゼアミdeワールド142回目の放送、日曜夕方に終りました。9日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。放送されるのは本放送が6日と言うことで、辛うじて松の内です。

お正月と言えば、宮城道雄の「春の海」を思い出す方が多いのでは、と言う風に一昨年と去年も始めましたが、これまでにかけてない音源を中心に選んでご紹介します。1930年の宮中歌会始の勅題として公示されていた「海辺巌(かいへんのいわお)」に因んで、前年の暮れに作曲した筝と尺八の二重奏曲で、宮城道雄の父の出身地である広島県の鞆の浦を訪れた際の、瀬戸内海の印象を三部形式に乗せて標題音楽風に作曲したこの曲は、今では彼の代表作として親しまれています。正月中はどこに行っても耳にする曲ですが、この曲だけの色々な編成の録音を集めた「春の海 大響演」という2枚組が出ておりまして、その盤からのご紹介です。

一昨年もかけましたが、まずは宮城道雄の自作自演でどうぞ。正月中はどこでもかかっている曲ですが、意外に自作自演を耳にする機会はほとんどないと思います。尺八は初演を勤めた吉田晴風です。
<1 春の海(オリジナル) 6分30秒>
春の海 宮城道雄自作自演


一昨年の正月は、宮城道雄の演奏で、筝の代表的名曲として有名な六段もかけましたが、今回はこの曲を米川文子さんの演奏で聞きたいと思います。初代米川文子さんは著名なロシア文学者の米川正夫氏の妹で、1894年生まれ1995年没の生田流箏曲家です。初代の録音はなかなか珍しいのではと思います。この侘び寂感溢れる美しい曲を書いたのは、江戸時代前期の近世筝曲の祖、八橋検校とされています。

<米川文子 / 六段 6分33秒>
OTAKARA発見隊 筝曲家 米川文子さん

こちらは二代目米川文子さんの紹介番組

「春の海」に戻りまして、1898年生まれの往年の名テノール歌手、藤原義江の管弦楽伴奏歌曲版もありますので、こちらをどうぞ。山田耕筰の歌曲の名唱などで知られるスコットランド人とのハーフの歌手です。

<4 春の海 藤原義江 3分16秒>
藤原義江 Yoshie Fujiwara(Ten.) - 春の海 Haru no Umi (1933)


「春の海」の琴と尺八の組み合わせは他に、宮城道雄の後を継いだ生田流二代目宗家の宮城喜代子と琴古流尺八の青木鈴慕の79年の録音と、宮城道雄にも師事した作曲家でもある唯是震一と都山流尺八の山本邦山の録音などが入っておりまして、特に尺八に芸風の違いが聞こえて興味深いのですが、今回は2018年8月21日に亡くなった二代目青木鈴慕氏の方をおかけしたいと思います。唯是震一と山本邦山の方は、また来年にでもおかけします。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<6 春の海 宮城喜代子と二世青木鈴慕 6分44秒>
”Haru no Umi” 「春の海」

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2018年1月 8日 (月)

今年も「春の海」から

ゼアミdeワールド90回目の放送、日曜夕方に終りました。10日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。今回の放送はFMでは無事流れましたが、サイマルラジオとTuneinのネットラジオ環境では、ネットワークトラブルのため流れませんでした。時々こういうことがありますが、新年の一回目がネットで流れなかったのは残念です。原因を聞いておきます。黒柳さんの父と天満さんのヴァイオリン版は、さすがにyoutubeにはないと思いますので、去年も上げましたが、ルネ・シュメーのヴァイオリンに宮城道雄の自作自演の定番演奏を上げておきます。

宮城道雄:春の海 シュメー Chemet


明けましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い致します。と新年のご挨拶をしましたが、ラヂオバリバリが30日から5日までお正月休みですので、実は12月27日に収録しております。選曲のために一足早いお正月気分を味わっておりました(笑) 放送されるのは本放送が7日と言うことで、辛うじて松の内です。

お正月と言えば、宮城道雄の「春の海」を思い出す方が多いのでは、と去年も始めましたが、去年かけてない音源を選んでご紹介します。1930年の宮中歌会始の勅題として公示されていた「海辺巌(かいへんのいわお)」に因んで、前年の暮れに作曲した筝と尺八の二重奏曲で、宮城道雄の父の出身地である広島県の鞆の浦を訪れた際の、瀬戸内海の印象を三部形式に乗せて標題音楽風に作曲したこの曲は、今では彼の代表作として親しまれています。正月中はどこに行っても耳にする曲ですが、この曲だけの色々な編成の録音を集めた「春の海 大響演」という2枚組が出ておりまして、その盤からのご紹介です。

まず宮城道雄の自作自演ですが、尺八は広門伶風(ひろかどれいふう)という人で、宮城道雄の肉声と、奈良岡朋子による宮城道雄の随筆からの朗読、更に露木茂の解説が入ります。尺八の広門伶風は、この曲の初演を勤めた吉田晴風の弟子とのことです。

<2-6 春の海(朗読入り) 9分14秒>

宮城道雄の筝とヴァイオリンでの演奏は、喝采を博したルネ・シュメーとの録音の他に、黒柳徹子の父である黒柳守綱との演奏も入っておりまして、この方はN響などでコンサートマスターを勤めた人です。ルネ・シュメーのような時代がかった派手さはないですが、堅実な演奏をされる方です。

<1-5 春の海(箏とヴァイオリンによる) 6分53秒>

変り種として、南米のフォルクローレに使われる縦笛ケーナと琴による演奏も入っております。アルゼンチンのケーナの名手ウニャ・ラモスが1978年に来日した際の録音で、琴は当時宮城合奏団のプリマ奏者だった砂崎知子です。少しフォルクローレ風になっている部分もありますが、元々この曲とフォルクローレの音階は結構近いと思います。

<2-1 春の海(箏とケーナによる) 4分13秒>
春の海 ケーナ演奏 Haru No Umi (The Sea In Spring)

やはりウニャ・ラモスでは無いので、他のケーナ奏者の演奏ですが。

ここで、少し宣伝を入れたいと思います。
2月4日に今治中央公民館で第11回今治総合芸能祭がありまして、今年はヴァイオリンで出ます。時間は1時からで3番目です。琴と尺八の葉風会とヴァイオリン、ダンスのコラボで、編成は似ていますが、「春の海」が邦楽の枠内だったのに対して、森岡章作曲の「月に寄する三章」という曲は、昭和40年代の雰囲気が色濃く感じられるナツメロのような、昔のラジオドラマの音楽のような曲調です。2曲目はペルシアの舞曲レングに似た感じにも聞こえます。宜しければ是非お越し下さい。

では、最後にポルンベスクのバラーダ(「望郷のバラード」のタイトルで日本では知られます)の名演で知られる天満敦子のヴァイオリンと、砂崎知子門下の遠藤千晶の2011年10月のライブ録音を聞きながら今回はお別れです。天満さんの1993年発売のアルバム『望郷のバラード』は、クラシックとしては異例の5万枚を超える大ヒットとなり、東欧革命前夜のルーマニアを舞台に、この曲をめぐる謎とヴァイオリニストの恋愛を描いた高樹のぶ子の小説『百年の預言』のヒロインは、天満さんをモデルとしています。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<2-4 春の海(箏とヴァイオリンによる) 7分38秒>

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2017年1月11日 (水)

春の海 (箏とヴァイオリンによる)

9日にはオリジナルの筝とヴァイオリン版がすぐに見当たりませんでしたが、ありました。フランスの女流ヴァイオリニスト、ルネ・シュメーと宮城道雄のこの1932年の共演から、「春の海」が広く知られるようになりました。会場で聞いていた小説家の川端康成が、初演の感動の光景を記したと言う小説「化粧と口笛」も非常に気になりますが、文庫には入っていないようです。シュメーのヴァイオリンの音は、今ではオールドスタイルのようにも思いますが、それが返ってこの曲にはあっているようにも思います。ヴァイオリンでは広く弾かれている曲で、実は手元に楽譜がありまして、去年はこの曲でヴァイオリンの弾き初めをしました。筝曲関連にしては、音階が地唄と違って民謡的なところ、それなのに泥臭くはならず、雅びさが溢れている点がユニークな曲だと思います。

宮城道雄:春の海 シュメー Chemet

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