尺八

2026年1月 9日 (金)

「春の海」髙木凜々子 宮城喜代子

瞽女・杉本キクイさんの金毘羅船々はありましたが来週に回して、祝言の謡曲は前に上げたことがありますし、新内の廓七草はYouTubeが見当たらないので、今週は「春の海」にこだわっておきます。1本目の髙木凜々子さんの動画を見てまず気が付いたのが、ピチカートとフラジオを外して弾いている点です。これはストラディヴァリウスの美音を最大限に生かすためでしょうか。フラジオはもちろん中間のE音だけは入れていますが、その他の音を4度間隔(1の指で弦を押さえ4で弦に触れてフラジオ音を出す)で取る奏法のことです。ヴァイオリンでの初演を果たしたルネ・シュメーさんの演奏ではピチカートが頻繁に、しかもびっくりするような大きな強い音で入りますし、フラジオも楽譜通り入れています。伴奏パートがピアノ用に編曲された楽譜が全音から出ていて、私もいじって何年かになります。更にこの映像を見て、吉越大誠さんが箏の弦をどう弾いているのか、手に取るように分かって大変面白かったです。2本目の宮城道雄の直弟子の宮城喜代子さんの演奏も手元がよく見えますが、やはり新しい映像ほどよく確認できます。言うまでもなく、青木鈴慕さんの尺八共々、宮城道雄直伝の名演です。この動画のタイトルに「新日本音楽」とありますが、これは古い筝曲にはなかったアルペジオ奏法や和声を取り入れた曲ということだろうと思います。有名な古曲「六段」と聞き比べるだけでも、相違点はすぐ分かるかと思います。

【謹賀新年】【春の海】宮城道雄(Haru No Umi) SEA IN THE SPRING ,Michio Miyagi

”Haru no Umi” 「春の海」

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2025年8月29日 (金)

霧海じ、義太夫三味線の鶴澤津賀寿、地唄の石堂翠子との共演

今日は虚無僧尺八の3曲の古傳曲の一つ「霧海じ」と、義太夫三味線の鶴澤津賀寿さんとの二重奏、地唄の石堂翠子さんとの三重奏を上げておきます。「つがじゅ」さんは、私も前々から注目の女流義太夫三味線奏者で、大分前に第4回ビクター伝統文化振興財団賞「奨励賞」の盤がリリースされていました。善養寺さんも第6回ビクター伝統文化振興財団賞「奨励賞」で盤が出ています。いずれも20年は前だったと思います。石堂翠子さんは知らなかったので、これから色々聞いてみようと思います。
「霧海じ」の「じ」は竹冠に虎と書きますが、おそらくどのPCでも出てこないので入力不能の文字です。この曲を冠した善養寺さんの盤のジャケットは、摩周湖でした。これは「霧の摩周湖」をすぐ連想できるジャケットでした。(その点「鶴の巣籠」のウイグル?は何だったのか?)
昨日の「西洋尺八」の件ですが、通常の五孔ではなくオクターブ12の音を出しやすい様に孔を増やした六孔か七孔の尺八を指すのか、五孔でも三つ目の位置が少しずらして開けられたものか、そのいずれかの結果から平均律で演奏できるものだろうと思いますが、今の所詳細不明です。この件はもっと調べてみようと思います。その動画で出てきた方は知ってる人で面識もありました。いずれにしても、幽玄な善養寺さんの演奏の価値が下がるものではないと思うのですが。

霧海ぢ / 善養寺恵介

波濤ー善養寺惠介 尺八演奏会

八重衣

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2025年8月28日 (木)

虚空

今週の番組の最後には、最も古い伝承曲の一つと言われる「虚空」を取り上げました。古傳は三曲あるそうです。恋慕(後の鈴慕あるいは霧海じ)、虚鈴、虚空の3曲ですが、江戸中期までには「鶴の巣籠」も吹かれていたそうですから、それより前の曲なのでしょう。音数が少なく比較的模倣しやすそうにも聞こえますが、「間」の取り方が絶妙でこれまた譜面化することは難しいでしょう。それと強弱の変化を含む詫び寂びの音色自体が、虚無僧尺八曲を復興した神如道直系の証しなのだろうと思います。一方で西洋調律の尺八を使っていると批判する声も聞こえてきました。しばらく静観してみようかと思います。

<善養寺恵介 / 虚空 ―虚無僧尺八ー ~「虚空」12分30秒>

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2025年8月27日 (水)

善養寺さんの「鶴の巣籠」ライブ

善養寺さんの3年前の「鶴の巣籠」のライブ映像がありました。鶴の鳴き声、羽ばたき、舞い、巣作り、出産、子別れ、回想まで、節回しと技法などの大筋は決まっていると思いますが、こういう曲は100回演奏すれば、100回とも違うものになるのではと思います。こういう曲を暗譜で演奏するわけですが、知れば知るほど神技としか思えません。何人かの「鶴の巣籠」を聞いてみましたが、それぞれ特徴があって実に面白いです。この曲などの尺八本曲の尺八譜を確認したいと思って琴古流教本を見てみましたが、初学者向けにはリズムの明確な洋の東西の愛唱歌のような曲がほとんどで、ほとんどがフリーリズムの本曲は全く見当たらずでした。邦楽ジャーナルで扱っていたようにも思いますが、見たとしてもおそらく「何だこれは」と言うつかみどころのない、容易に理解し辛い譜面ではと思います。確か2002年にも同じトッパンホールで善養寺さんのライブを聞いていますが、どんな曲をやっていたかはっきりと記憶がありません。しかし、虚飾を排したこの人の透徹した音は、虚無僧尺八の音楽の理想像として、20年以上念頭にありました。

鶴の巣籠ー善養寺惠介 尺八演奏会 Tsuru no Sugomori - Keisuke Zenyoji Shakuhachi Concert

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2025年8月25日 (月)

鶴の巣籠

ゼアミdeワールド476回目の放送、日曜夜10時にありました。27日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。弱音と「間」の多いこの素晴らしい2曲が無事かかってホッとしています(笑) 不思議なのは虚無僧尺八で、何故ジャケットがウイグル?と言うことでした。そう言えばリリースは98年でゼアミは2年目、善養寺さんもまだ若手でした。

盆と正月は日本に帰ろうという事で、大体いつも日本の音楽を取り上げております。一回増やして今回は4回目です。前回の最後に先日人間国宝に認定された善養寺恵介さんの虚無僧尺八をかけましたが、ラジオを通して聞いてみて、改めてその素晴らしさに感銘を受けました。根笹派錦風流「松風」をかけましたが、7分の曲が何とか全曲入りました。
更に弱音と「間」が多い曲ですが、今回は有名な「鶴の巣籠」を思い切って入れてみたいと思います。間は10秒以内に収まっているようですが、弱音部分が多いので多少心配ではあります。鶴の鳴き声、羽ばたき、舞い、巣作り、出産、子別れ、回想までを、様々な技巧を駆使して表現しています。自分でいじってみてよく分かりましたが、この容易に鳴らせない難しい笛で、ここまでの表現が可能なのだろうかと言う信じられない気持ちです。更には微細で生々しい鶴の描写を通して表現するものは何か、そこが気になります。

<善養寺恵介 / 鶴の巣籠 ―虚無僧尺八ー ~蓮芳軒・喜染軒「鶴の巣籠」 17分31秒>

善養寺さんのプロフィールをウィキペディアから少し引用しておきます。
根笹派錦風流の神如道(じんにょどう 1891-1966、絶滅の危機に瀕していた数々の虚無僧尺八曲を、積極的に収集し伝承した古典尺八界の草分け的存在と言われる)のもとで尺八を学んでいた父昭三と岡崎自修より虚無僧尺八の手ほどきを受け、神如道の息子の神如正(じんにょしょう)に師事。東京芸術大学に進み学部、大学院を通して山口五郎(人間国宝)に師事。

尺八の音楽は、ゼアミでは海童道祖が飛び抜けて人気がありました。その大きな理由に、タルコフスキーの遺作になった映画「サクリファイス」に使われたことと、武満徹の代表作を初演した横山勝也氏の師匠であったことがあるように思いました。色々な尺八奏者の同名曲の聞き比べもしてみたいものですが、またの機会にします。

では最後に最も古い伝承曲の一つ「虚空」を時間まで聞きながら今回はお別れです。善養寺さんの端正な音に耳が吸い寄せられました。音数は少ないのですが、深淵な表現には絶大な魅力があります。その表現するものは何か、次回尺八を取り上げるまでに少しでも近づけたらと思っています。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<善養寺恵介 / 虚空 ―虚無僧尺八ー ~「虚空」12分30秒>

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