ゼアミdeワールド

2022年5月23日 (月)

VDE-Gallo「ルーマニアの農村音楽」トランシルヴァニア編

ゼアミdeワールド310回目の放送、日曜夜10時にありました。25日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日のYouTubeは4曲目まで入れました。

ルーマニアの音楽の22回目になります。今回はスイスのVDE-Galloから出ている名盤「ルーマニアの農村音楽」の3枚組の、トランシルヴァニア編からご紹介します。他にモルダヴィア編とワラキア西部のオルテニア編がありまして、90年代にはLPサイズのケースに入って英仏の豪華解説が付いていました。国内では、この3枚からの抜粋盤がクラウンから出ていました。
ルーマニアの民謡研究の先駆者であるハンガリーのバルトークを受け継いだ、ルーマニアの作曲家で民族音楽学者のコンスタンティン・ブライロイウの貴重な記録で、現在は消滅してしまった伝承歌も多いと言われています。録音は1933~1943年の間にされています。
VDE-Galloは、ブライロイウが1944 年にジュネーヴに設立したフィールド・レコーディング音源のアーカイブ機関=AIMP(Les Archives internationales de musique populaire)が所有する音源を中心にリリースしてきたレーベルですが、最近の新録も登場していました。
ブライロイウは1893生まれ、1958年にスイスのジュネーヴで亡くなっていますので、生没年はバルトークのほぼ10年ずつ後ですから、相当昔の人です。録音は蝋管録音になるでしょうか、各1~3分の曲がほとんどです。

曲名の最初にクンテク(歌)と付いている7曲の内、4曲目までを続けておかけします。2曲目の笛の演奏は、南トランシルヴァニアの1曲目の歌の変奏です。3曲目はトランシルヴァニア南部のオルト地方起源でトランシルヴァニア中に広まったという民謡です。4曲目もオルトの古い民謡で、ドイナ風のフリーリズムの歌です。大きなヴィブラートのかかった声が特徴的です。

<1 Cintec: "Nino, bade, serile" 1分9秒>

<2 Cintec 1分19秒>

<3 Cintec: "Du-te, dor, cu dorurile" 1分45秒>

<4 Cintec: "Ian asculta cum mai cinta" 1分50秒>

8曲目はルーマニアに入ってからタラフなどの演奏で度々出てきたブルウですが、縦笛を吹きながら声も入るダブルトーン奏法です。8曲目から11曲目まではジョク(舞踊曲)が続きますが、いかにもトランシルヴァニアのハンガリー系音楽らしい伴奏ヴァイオリンが3弦の10曲目までの3曲をおかけします。

<8 Joc: Briul 1分3秒>
<9 Joc: Invirtia 1分16秒>
<10 Joc: Ardeleana cu strigaturi 3分12秒>

20曲目にドイナが入っていますが、この歌はワラキア西部のオルテニアのスタイルのドイナで、このタイプはトランシルヴァニアのオルト地方では珍しいようです。おそらくカルパチア山脈を越えて移牧してきた羊飼いが伝えたのだろうと推測されています。

<20 Doina: "In padure duce-m-oi" 1分29秒>

12曲目と32曲目に入っているボチェッツも、ルーマニア初回のゲオルゲ・ザンフィルの時以来これまで何度か出て来ました。ザンフィルの演奏では「セルビア東部ヴラフ人の葬儀の音楽とイメージが重なるBocet(ボチェッツ)は、会葬者の慟哭の声まで生々しく描写した音楽」と言うことでしたが、ここでは意外に淡々と歌われています。2曲続けておかけします。

<12 Bocet: "La sot" (I) 1分35秒>
<32 Bocet: "La sot" (II) 1分13秒>

31曲目のRitual funebru: Cocosdaiulは「葬儀:雄鶏」と訳せるようで、これは数回前にムジカーシュでかけたSzól A Kakas Márを思い出させます。厳粛な雰囲気が女声合唱から伝わってきます。

<31 Ritual funebru: Cocosdaiul 1分51秒>

22~25曲目は結婚式の音楽で、24曲目と25曲目辺りの女性のコーラスと管楽器の演奏は、裏声を巧みに使った結婚式の儀礼歌です。アグネス・ヘルツクなど現代ハンガリーのトラッド界の女性歌手が、類似の歌唱を披露していたと思います。

<22 Ritual de nunta. Joc: "Pe drum" 53秒>
<23 Ritual de nunta. Cintec: Cintecul miresei 1分18秒>
<24 Ritual de nunta. Joc: "Cind pleaca mireasa la cununie" 35秒>
<25 Ritual de nunta: Strigaturi 31秒>

13、14曲目にはコリンドとありますので、クリスマス関連の歌になります。カウベルらしき音も入ったほのぼのとした14曲目を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<14 Ritual de Craciun. Colinde si urari 3分38秒>

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2022年5月16日 (月)

エネスコのヴァイオリン・ソナタ第3番 コパチンスカヤ

ゼアミdeワールド309回目の放送、日曜夜10時にありました。18日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。エネスコの3番ですが、アミ・フラメールでは見当たらなかったので、モルドヴァのヴァイオリニスト、コパチンスカヤの全曲演奏で上げました。アミ・フラメール他のイディッシュはまた後日。

ルーマニアの音楽の21回目になります。ゼアミ26周年に当たる5/15の回は、スイスのVDE-Galloから出ている名盤「ルーマニアの農村音楽」の3枚組を予定していましたが、エネスコでもう一回!とリクエストがありましたので、前に予告していたエネスコのヴァイオリン・ソナタ第3番からおかけします。1926年に完成したこの曲には「ルーマニア民族音楽の性格によって」(dans le caractère populaire roumain)と言う副題が付いていて、エネスコの最高傑作の一つとの呼び声高い曲ですが、バルトークのヴァイオリン・ソナタ第2番から影響を受けたとされる難解な曲ですので、どうしようか迷っていました。エネスコの弟子の一人である、イダ・ヘンデルの得意のレパートリーだったそうです。エネスコ自身のヴァイオリンと、若くして亡くなった同郷の名手ディヌ・リパッティのピアノによる自作自演もあるそうですが、残念ながらどちらも未聴です。
手持ちのCD音源は、1989年にフランスのThesisから出たアミ・フラメールのヴァイオリンとジャン・クロード・ペネティエのピアノによる全曲演奏と、伊東信宏氏の「中東欧音楽の回路」付録CDのコパチンスカヤによる第1楽章のみですが、データで聞いた音源はAzoitei Remus & Eduard Stanのものもあります。アミ・フラメールは1985年にOcoraから出ていたイディッシュ民謡のCDでも演奏していまして、それで名前を覚えていて購入した盤でした。ジプシーのラウタルやユダヤの影響が濃厚なエネスコの曲と、イディッシュと言うのは、ベストマッチの感があります。後でそのオコラ盤からも一曲かけようかと思います。
アミ・フラメールはルイ・マル監督の映画「さよなら子供たち」の中で、お道化た調子でサン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」を弾いていたのを、たまたま見かけたこともありました。このテシス盤は、エネスコの他にチェコのヤナーチェクと、新ウィーン楽派のウェーベルンとシェーンベルクのヴァイオリン作品も演奏しています。
では第1楽章からおかけします。

<1 Pennetier - Flammer / Enesco 3e Sonate Op 25 1 10分19秒>

即興性が重視される面があるためか、違う曲かと思う程に聞こえますので、コパチンスカヤと、Azoitei Remus & Eduard Stanの演奏の第1楽章の最初だけ少しおかけしてみます。

<パトリツィア・コパチンスカヤ / エネスコ ヴァイオリン・ソナタ第3番 第1楽章>
Patricia Kopatchinskaja / Polina Leschenko - Enescu Violin Sonata no. 3 - live 2015

<1 Azoitei Remus & Eduard Stan / Enescu, G.: Violin Music, Vol. 2 1分程>

第2楽章も大変に素晴らしいのですが、最弱音から始まりまして、その部分で無音と判断されて放送事故になるかも知れませんので、外しまして、かなり民族色が濃く出ているフィナーレの第3楽章を次におかけします。第1楽章と第2楽章が10分余り、第3楽章は8分49秒です。

<3 Pennetier - Flammer / Enesco 3e Sonate Op 25 3 8分49秒>

では最後に、先ほどの1985年にOcoraから出ていたイディッシュ民謡のCDの1曲目Avremlを時間まで聞きながら今回はお別れです。編成は、Ami Flammerのヴァイオリン、Moshe Leiserのギターと歌、Gerard Barreauxのアコーディオンです。東欧系ユダヤ人のイディッシュ語の哀感溢れる歌を聞かせるCDは沢山ありますが、この盤はCDでは最も早い時期に出た一枚だったと思います。またポーランドの時に東欧系ユダヤの音楽は集中的に取り上げる予定です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<1 Chansons Yiddish - Tendresses et Rage ~Avreml 3分43秒>

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2022年5月 9日 (月)

マラムレシュの結婚式の音楽

ゼアミdeワールド308回目の放送、日曜夜10時にありました。11日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日の一本には放送でかけてない曲も全て入っています。

ルーマニアの音楽の20回目になります。今回は1993年にフランスOcoraから出た「マラムレシュの結婚式の音楽」からご紹介します。前々回の「ムジカーシュ/マラマロシュ トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽」と同じく、トランシルヴァニア北部のマラムレシュ地方での1973年の音源です。

まずは1曲目と3曲目からおかけしますが、1曲目の途中から「ひばり(チョカリア)」が登場します。マラムレシュ版のチョカリアです。編成は旋律を奏でるヴァイオリン、リズム担当の3弦のギター、ベース担当のコントラバスが基本のようです。マラムレシュでは戦前はユダヤ人楽士も多かったそうですが、今はジプシーのヴァイオリン奏者が多いように聞きました。

<1 Musiques De Mariage De Maramureș ~Four Dances 5分>
<3 Musiques De Mariage De Maramureș ~Four Dances 4分53秒>
Roumanie - Musiques de mariage du Maramureș

マラムレシュと言えば、写真家でエッセイストの、みやこうせいさんを思い出します。ルーマニアのフォークロアの宝庫のようなマラムレシュ地方に魅せられて度々現地に赴き、紀行エッセイや写真集を何冊も出されています。「森のかなたのミューズたち」は、特に魅了された一冊です。

90年代前半だったと思いますが、UNESCO世界遺産に登録されているマラムレシュの木造聖堂群や、埋葬者の人生に関わるレリーフと墓碑文が刻まれた色彩豊かな墓碑が並ぶことで知られるサプンツァ村の墓地(Merry Cemetery of Săpânţa)の特集番組を見た記憶があります。青が基調のカラフルな墓碑のため「陽気な墓」と呼ばれるそうで、埋葬者の生前の姿が生き生きと描かれています。ピンポイントの内容だったので、みやこうせいさんが制作に関わっていたのかも知れません。

次に5曲目のグリッサンドを伴うダンスから、ダンス・ソング、ローカル・ソングの3曲を続けます。グリッサンドとは音をずり上げまたはずり下げる奏法で、弦楽器の場合ポルタメントと言うことが多いと思いますが、鍵盤に使われる用語が使われている所が目を引きます。続く2曲も、前半より短いですが多様さが目立つ曲です。

<5 Musiques De Mariage De Maramureș ~Dance With Glissandi 2分32秒>
<6 Musiques De Mariage De Maramureș ~Dance Song 3分57秒>
<7 Musiques De Mariage De Maramureș ~Local Song 5分52秒>

では最後に、この盤のラスト8曲目のDancesを時間まで聞きながら今回はお別れです。この盤は3つの村の楽士の演奏を収めていますが、この曲はベルベシュティ村での録音です。マラムレシュの結婚式の音源はフランスのBudaからも出ていますが、現物とデータ共に行方不明ですので、オコラ盤のみにしておきます。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<8 Musiques De Mariage De Maramureș ~Dances 9分39秒>

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2022年5月 2日 (月)

エネスコのシャコンヌ

ゼアミdeワールド307回目の放送、日曜夜10時にありました。4日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。エネスコのこの演奏は晩年の録音ですから荒い部分もありますが、バッハの音楽の核心に到達していると言われます。テクニック的には今はもっと完璧な演奏がたくさんありますが、核心に迫る「何か」が欠けているのかも知れません。余談ですが、1983年頃よくバッハのシャコンヌを練習していて、大学オケの仲間からシャコンドーとあだ名されたことがありました(笑) 当時は全て暗譜していましたが、今ではもうさっぱり。しかし、大変思い出深い曲なので、また少しずつさらおうかと思っている所です。今日のYouTubeは、エネスコのシャコンヌのみです。
 

今回はルーマニアの音楽の19回目になります。前々回の放送の最後にエネスコのヴァイオリン独奏で、バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ1番のフーガをかけましたが、フェイドアウトになっておりましたので、今回はこの曲と、一番有名なパルティータ2番のシャコンヌをノーカットでおかけしたいと思います。

ジョルジュ・エネスコは、作曲家としてはルーマニアの伝統音楽を常に重視していましたが、演奏家としてはフリッツ・クライスラーやジャック・ティボーと共に20世紀前半の三大ヴァイオリニストの一人とされています。1920年代半ばからはヴァイオリン教師としても知られ、門下生にはユーディ・メニューイン、アルテュール・グリュミオー、クリスチャン・フェラス、イヴリー・ギトリスなど錚々たる名手がいます。
バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」については、ヴァイオリニストとしておそらく最も早い時期から注目し、実演・録音ともに語り継がれる名演を残しています。1948年頃の全曲録音の2枚組から、ソナタ1番の2曲目のフーガをまずおかけします。1985年頃にアイダ・カヴァフィアンの生演奏で聞いてから、特に忘れられない曲の一つです。メシアンを得意にしていたアンサンブル・タッシの来日公演のアンコール演奏だったと思います。

<1-2 Violin Sonata No. 1 in G minor, BWV 1001: II. Fuga (Allegro) 5分12秒>

次に無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ2番のフィナーレを飾る、余りにも有名なシャコンヌです。14分近いこの曲はニ短調で荘重に始まり、感動的なアルペジオの部分を経て、明るい部分に移行し、オルガンのような重音も聞かせます。最後は再びニ短調に戻り枯淡の境地で曲を締めくくっています。

<2-5 Violin Partita No. 2 in D minor, BWV 1004: V. Ciaccona 14分7秒>

では最後に、室内オーケストラのための交響詩「自然の声」(Voix de la Nature)を時間まで聞きながら今回はお別れです。この曲は1931~39年に作曲されていますが、エネスコの遺作だそうです。こちらも若い頃に書かれたルーマニア狂詩曲とは打って変わって、枯淡の境地の印象です。
音源は1989年のルーマニア革命の翌年にルーマニアElectrecordから出たRecord for Rumaniaと言う盤です。この中から前々回にルーマニア狂詩曲第1番をかけましたが、ルーマニア狂詩曲第2番と、「自然の声」、「ルーマニアの詩」の4曲が入っています。演奏はティミショアラ・フィルハーモニー管弦楽団です。因みに「ルーマニアの詩」は男声合唱つきの交響組曲で、1889年の時に僅か8歳のエネスコが書いた作品1の処女作でした。ルーマニア狂詩曲は、二十歳の頃の作品です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<3 Record for Rumania ~Voix de la Nature 8分35秒>

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2022年4月25日 (月)

トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽

ゼアミdeワールド306回目の放送、日曜夜10時にありました。27日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。重要盤だと思いますが、2000年前後に執筆参加したディスクガイドでは、何故か漏れていたThe Lost Jewish Music of Transylvania。93年のリリース頃、六本木の店で随分売った記憶があります。今日は3本目までにしておきますが、このジャケットはハンニバル盤ではなく、ハンガリーからの再発盤です。

ルーマニアの音楽の18回目になります。今回は米Hannibalから1993年に出た「ムジカーシュ/トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽」(Muzsikás / Maramoros - The Lost Jewish Music of Transylvania)を特集します。ハンガリー・トラッド界の雄、ムジカーシュの代表作の一つで、名歌手マルタ・セバスチャンが歌で参加して華を添えています。ホロコーストでユダヤ人楽士の全てが亡くなり、忘れ去られていたトランシルヴァニアのユダヤ人の音楽を、ハンガリーのユダヤ人音楽学者のZoltan Simonとムジカーシュが協力して再現した盤です。戦前にユダヤ人の結婚式で演奏していたジプシーの老フィドラーGheorghe Covaciが記憶していて、取材したムジカーシュによって現代に蘇った曲も収録されています。音楽の印象は、一般的なクレズマーではなく、ムジカーシュが普段演奏するハンガリーのヴィレッジ音楽とも少し違っていて、当時のハンガリーのユダヤ音楽を忠実に再現しているという評価が高い演奏です。基本編成は、リーダーのMihály Siposのヴァイオリンと、伴奏は3弦のヴィオラ奏者が二人、コントラバスが一人です。
タイトルに「トランシルヴァニア」とありますが、本題はマラマロシュと言いまして、ルーマニア北部のマラムレシュ地方のハンガリー語読みですので、トランシルヴァニアでも最北部になります。狭義ではマラムレシュはトランシルヴァニアに入れない場合もあります。

まずは1曲目のChasid lakodalmi táncokですが、英語ではKhosid Wedding Dancesですので、ハシッド派ユダヤ教徒の結婚式のダンスと訳せると思います。ハシディック・ダンスのマラムレシュ版と言うことになりますが、一般のハシディックの音楽とは少し違うと思います。ムジカーシュの面々が現地取材の際にジプシーの老楽士Gheorghe Covaci(愛称Cioata)とセッションしているYouTubeもありました。満面の笑みを浮かべて弾いていたのを思い出しますが、この録音にもゲスト参加しています。

<1 Chasid lakodalmi táncok 4分33秒>
01 Chaszid lakodalmi táncok Khosid Wedding Dances

2曲目の物悲しく凄絶な程に美しい旋律のSzól A Kakas Márは、この盤の白眉でしょう。英訳ではThe Rooster is crowingですから、「雄鶏は鳴く」となるでしょうか。ハンガリー系ユダヤ人のみならず一般のハンガリー人の間でも有名な旋律で、ハンガリー語の歌詞ですがユダヤの歌らしくヘブライ語の行が挿入されています。言い伝えでは、ある羊飼いが歌っていた旋律をハシディズムの指導者ツァディク(義人)のReib Eizikがいたく気に入って覚えていた旋律だそうで、後には宗教や民族を分け隔てなく寛容に統治した17世紀のトランシルヴァニア公Gabor Bethlenのお気に入りの歌だったという記録もあるそうです。

<2 Szól A Kakas Már 3分7秒>

3曲目のMáramarosszigeti tánc(マラマロシュシゲティの踊り)は、ゾルタン・シモンの採譜で知られていて、ツィンバロム奏者のアルパド・トニをフィーチャーした、これもトランシルヴァニアとハシディックが入り混じった感じの曲です。Máramarosszigetiの地名は、マラマロシュとシゲティに分離できると思いますが、ヴァイオリニストのヨーゼフ・シゲティを思い出す曲名だと思ったら、この国境の町でシゲティは少年時代を過ごしたそうです。因みにハンガリー語のszigetiは「小島」の意味でした。

<3 Máramarosszigeti tánc 3分36秒>

次は1曲飛びまして、5曲目のアニ・マアミンです。アニ・マアミンとは、ヘブライ語で"私は信じる" を意味する一節ですが、それを元とする楽曲でもあります。ここで聞かれるのは、東欧系ユダヤでは最も有名なアニ・マアミンの旋律です。Gheorghe Covaciは、アウシュヴィッツから生き残って帰ったユダヤ人たちは、この歌をいつも泣きながら歌っていたと回想しています。出典は中世スペインのユダヤ教徒の哲学者、マイモニデス(モーシェ・ベン=マイモーン)が記した『ミシュネー・トーラー』に出てくるユダヤ教の信仰箇条の中の一節です。歌詞がある曲ですが、ムジカーシュの演奏はインストのみです。

<5 Áni Máámin 2分56秒>

7曲目はZoltan Simonがマルタ・セバスチャンに見せて歌うように勧めたユダヤ教の安息日(シャバト)の祈りの独唱で、シナゴーグでは男性が唱えるアハヴォ・ラボ旋法の曲を女性に歌わせているのがユニークです。

<7 Szombateste Búcsúztató 3分15秒>

8曲目はツィンバロム奏者のアルパド・トニが覚えていた曲で、トランシルヴァニアのSzaszregenのユダヤ・コミュニティで好まれていて、男女入り混じったジューイッシュ・ダンス・パーティーでは、いつもこの曲から始まるそうです。有名なイディッシュ民謡のBelzが元になっているようです。

<8 Szászrégeni szidó tánc 3分7秒>

では最後に年末の重要なユダヤ人の祭り、ハヌカーのための13曲目Chanukka gyertyagyújtásを時間まで聞きながら今回はお別れです。ヘブライ語ではHaneros Haleluとなっているこの曲は、ムジカーシュのメンバーがKlezmer Music; Early Yiddish Instrumental Musicと言う1910年のヒストリカル音源を聞いていて知ったそうです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<13 Chanukka gyertyagyújtás 3分11秒>

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2022年4月18日 (月)

イヴァノヴィッチ エネスコ

ゼアミdeワールド305回目の放送、日曜夜10時にありました。20日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日の動画は『ドナウ川のさざなみ』のみです。

今回はルーマニアの音楽の17回目になります。前回に続きましてルーマニアのクラシック作品をいくつかご紹介したいと思います。
まずはヨシフ・イヴァノヴィチが1880年に作曲したワルツ『ドナウ川のさざなみ』です。この曲は1889年に開催されたパリ万国博覧会で演奏され、その哀愁を帯びた旋律などから、東ヨーロッパの作曲家のワルツ作品としては世界的に有名になりました。エリック・サティも聞いていたのかも知れません。
音源は前々回にポルムベスクのバラーダをかけたルーマニアElectrecordのA romanian prom concertと言う盤で、演奏はEmil Simion指揮のCluj-Napoca Philharmonic Orchestraです。

<3 Iosif Ivanovici / The Waves of the Danube 9分48秒>
Iosif Ivanovici - Donauwellen Walzer (Waves of the Danube Waltz)

次に、やはり前々回に同じ盤からチプリアン・ポルムベスクのルーマニア狂詩曲の冒頭をかけましたが、同じタイトルの曲がルーマニア出身の大作曲家ジョルジュ・エネスコにありまして、ルーマニアのクラシックでは一番有名な曲ですので、ここでおかけしておきます。2曲ありますが、第1番では有名な「ひばり」が登場することで知られています。
音源は1989年のルーマニア革命の翌年にルーマニアElectrecordから出たRecord for Rumaniaと言う盤で、ルーマニア狂詩曲の2曲と、「自然の声」、「ルーマニアの詩」の4曲が入っています。演奏は「自然の声」のティミショアラ・フィルハーモニー管弦楽団以外は、ルーマニア放送管弦楽団です。

<1 George Enescu / Rumanian Rhapsody No.1 12分12秒>

ジョルジュ・エネスコは、作曲家としてはルーマニアの伝統音楽を常に重視していましたが、演奏家としてはフリッツ・クライスラーやジャック・ティボーと共に20世紀前半の三大ヴァイオリニストの一人とされています。1920年代半ばからはヴァイオリン教師としても知られ、門下にユーディ・メニューイン、アルテュール・グリュミオー、クリスチャン・フェラス、イヴリー・ギトリスなどがいます。
バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」については、ヴァイオリニストとしておそらく最も早い時期から注目し、実演・録音ともに語り継がれる名演を残しています。1948年頃の全曲録音の2枚組から、一番有名なパルティータ2番のシャコンヌは時間がかかりますので、番組の残り時間で出来るだけ長くかけられるソナタ1番のフーガを時間まで聞きながら今回はお別れです。80年代にアイダ・カヴァフィアンの生演奏で聞いてから、特に忘れられない曲の一つです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<1-2 Violin Sonata No. 1 in G minor, BWV 1001: II. Fuga (Allegro) 5分5秒>

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2022年4月11日 (月)

ルーマニア民族舞曲と44のヴァイオリンの二重奏曲集から

ゼアミdeワールド304回目の放送、日曜夜10時にありました。13日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はミシェル・ベロフのみです。

今回はルーマニアの音楽の16回目になります。297回目の放送で予告しておりましたが、ハンガリーの大作曲家バルトークが1915年に作曲したルーマニア民族舞曲から始めます。1977年に初めてこの曲をフランスのピアニスト、ミシェル・ベロフのLPで聞いたことがルーマニア音楽や民族音楽全般に目が向くきっかけになったので、個人的に非常に思い入れの深い曲です。「ルーマニア」と付いていますが、作曲当時にはハンガリー王国の一部だったトランシルヴァニア各地の民謡を題材にしていて、今でもハンガリー系住民も多い地方ですから、ハンガリーの影響が見られる曲が大半になっています。冒頭から親しみ易い旋律で、昔からバルトーク作品の中で特によく知られている曲です。ミシェル・ベロフ(Michel Béroff)のピアノでまずおかけします。

<6 Romanian Folk Dances, Sz. 56, BB 68: I. Joc cu bata (Allegro moderato) 1分8秒>

<6 Romanian Folk Dances, Sz. 56, BB 68: II. Braul (Allegro) 27秒>

<6 Romanian Folk Dances, Sz. 56, BB 68: III. Pê-loc (Andante) 59秒>

<6 Romanian Folk Dances, Sz. 56, BB 68: IV. Buciumeana (Moderato) 45秒>

<6 Romanian Folk Dances, Sz. 56, BB 68: V. Poarga romaneasca (Allegro) 29秒>

<6 Romanian Folk Dances, Sz. 56, BB 68: VI. Maruntel (Allegro) 54秒>

この曲は6曲からなっていますが、その素材は1910年と1912年にバルトーク自身が現地で農民と共に暮らしながら採集した民謡の録音が元になっていて、1912~14年にかけては採集した旋律の分析作業に没頭、そして何と3500もの録音から選び抜かれたのが、この6曲です。第一次世界大戦が勃発して後の1915年にはトランシルヴァニアを含むルーマニアも戦場になり、再び採集旅行に出ることは不可能になりましたが、その1915年にこの曲が生まれています。

1曲目の棒踊りは二人のジプシー・フィドラーの演奏が元になっています。2曲目は帯踊りで、これはタラフ・ドゥ・ハイドゥークスなどの演奏で度々登場しているブルウのトランシルヴァニア版です。3曲目の「足踏み踊り」は、弦楽器ではフラジオレットで演奏され、増2度音程が妖しくメランコリックに響きます。4曲目のアルペンホルンあるいは角笛の踊りですが、バルトークが採集した音源はジプシーのヴァイオリン独奏でした。この後2曲はエキゾチックな前半と打って変わって快活な曲に変わります。5曲目はルーマニア風ポルカと言うことで、タイトルからはチェコの影響を感じさせるリズム的に面白い楽章で、オリジナルは村の青年によるヴァイオリン演奏です。6曲目の「速い踊り」は、トランシルヴァニアの別々の場所で採譜された、相互に関係のない2つの舞曲のメドレーと言うことで、華々しくこの曲を締めています。

では、297回目の放送でかけたタラフ・ドゥ・ハイドゥークスの2007年の「仮面舞踏会」に入っているルーマニア民族舞曲を再度おかけします。この名曲をタラフがどう料理しているかが聞きものですが、生粋のジプシーが現代のジプシー音楽にアレンジし直した陽気な音楽に様変わりしています。私はこの演奏を大変楽しく聞きました。

<7 Maškaradă ~Romanian Folk Dances 7分34秒>

この後は、バルトークが1931年に作曲したヴァイオリンのための二重奏曲集からおかけします。演奏は、ポーランドの名女流ヴァイオリニストのワンダ・ウィウコミルスカと、ハンガリーのミハーイ・シュックスです。ハンガリーのHungarotonからの3枚組で、バルトークのピアノ曲集ミクロコスモスとのカップリングです。どちらの曲集もピアノやヴァイオリンの初学者向きの曲から順々に難度が増し、終わりの方は聞きごたえ十分な作品になっています。
ルーマニア各地の曲を中心に選びましたが、バルトーク作品の中でも特に多くの国で採集された曲が網羅されています。一番の変わり種は、42曲目の「アラビアの踊り」で、アルジェリアのビスクラで採集された旋律が使われています。1分程の曲が7曲続きますが、ルーマニアの旋舞、ワラキアの踊り、アラビアの踊り、トランシルヴァニアの踊り、マラマロシュの踊り、ルテニアのコロメイカ、バグパイプの順です。トランシルヴァニアはハンガリー語でエルデーイとも呼ばれますので、「エルデーイの踊り」となっています。このラスト44曲目は、ジプシーのヴァイオリン弾きの旋律が使われています。マラマロシュとは、ルーマニア最北部のマラムレシュのことです。ルテニアとはルーシから来ていて、現在のウクライナ西部です。

<9-2 38 Forgatós(ルーマニアの旋舞)>
<9-4 40 Oláh Tánc(ワラキアの踊り)>
<10-2 42 Arab Dal(アラビアの踊り)>
<10-4 44 "Erdélyi" Tánc(トランシルヴァニアの踊り)>
<8-1 32 Máramarosi Tánc(マラマロシュの踊り)>
<8-4 35 Rutén Kolomejka(ルテニアのコロメイカ)>
<8-5 36 Szól a Duda(バグパイプ)A 36 Sz. Változata(36番の変形)>

難度の高い第4巻から始まって、マラマロシュから後は第3巻までの7曲でした。では最後に第2巻にさかのぼりまして、確かバルトーク作品の何かに使わた26曲目の「からかいの歌」から、ルーマニアのクリスマスの旋律コリンダ(あるいは「新年のあいさつ」)まで、もし入れば続けて聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<7-1 26 "Ugyan Édes Komámasszony..."(からかいの歌)>
<7-2 27 Sánta-Tánc(びっこひきの踊り)>
<7-3 28 Bánkódás(悲しみ)>
<7-4 29 Újévköszöntő(新年のあいさつ) >
<7-5 30 Újévköszöntő(新年のあいさつ) >
<7-6 31 Újévköszöntő(新年のあいさつ) >

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2022年4月 4日 (月)

ポルムベスク / 望郷のバラード

ゼアミdeワールド303回目の放送、日曜夜10時にありました。6日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。Electrecord盤の方は、また水曜以降に。

前回は緊急ウクライナ特集でしたが、今回はルーマニアの音楽の方に戻りまして、15回目になります。
今回はポルンベスクのバラーダの特集です。日本では一般に『望郷のバラード』と呼ばれています。19世紀末に29歳の若さで薄幸の生涯を閉じたチプリアン・ポルムベスク(1854~1883)は、オーストリア・ハンガリー帝国に支配されていた母国ルーマニアの独立運動に参加して投獄されてしまいますが、獄中で故郷を偲び、恋人に思いを馳せながら書いたのが、このバラーダと言うヴァイオリンの名曲です。
日本の女流ヴァイオリニストの天満敦子さんが1992年に文化使節としてルーマニアを訪問した際、ポルムベスクのバラーダの楽譜を托されますが、日本で初演すると大評判になり、1993年発売のアルバム『望郷のバラード』はクラシックとしては異例の5万枚を超える大ヒットになりました。東欧革命前夜のルーマニアを舞台に、この曲をめぐる謎とヴァイオリニストの恋愛を描いた高樹のぶ子の小説『百年の預言』のヒロインは、天満さんをモデルとしています。
バラーダはヴァイオリンとオーケストラによる哀歌で、ルーマニアの愛国歌のような位置にある曲です。その哀切極まりない美しさは格別です。まずは天満さんの2003年の演奏でおかけします。

<11 天満敦子 ポルムベスク / 望郷のバラード 8分36秒>
天満敦子 / Ballad (C.Porumbescu)

バラーダは日本では天満敦子さんの演奏で知られていますが、曲自体の日本初演はルーマニアの女流ヴァイオリニスト、シルヴィア・マルコヴィッチにより、1980年5月10日、NHK教育TVの午後7時30分からのコンサートで行われています。実は私はこの番組を見ておりまして、更にTVから録音もしていて、42年間そのカセットテープを保存してあります。その録音をiPhoneから音出しすることも可能ですが、著作権問題に抵触するようですので控えておきます。
代わりに本場ルーマニアの演奏家の録音がありますので、そちらをおかけします。天満さんの演奏より長く、伴奏はピアノではなく本来のオーケストラです。音源はルーマニアElectrecordのA romanian prom concertと言う盤で、演奏はEmil Simion指揮のCluj-Napoca Philharmonic OrchestraとヴァイオリニストはStefan Ruhaです。録音は1977年とあります。

<Cluj-Napoca Philharmonic Orchestra, Emil Simion, Orchestra simfonică a Filarmonicii din Cluj-Napoca / Ballad for violin and orchestra 11分16秒>

バラーダのエレクトレコードの音源は、他に「チプリアン・ポルムベスク作品集」と言う盤がありましてバラーダも別音源かも知れませんが、現物が残ってないので、A romanian prom concertからポルムベスクのルーマニア狂詩曲を時間まで聞きながら今回はお別れです。同じタイトルの曲はジョルジュ・エネスコにもありますが、全く別の曲です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<6 Romanian Radiotelevision Orchestra, Paul Popescu, Orchestra simfonică a Radioteleviziunii Române / Romanian rhapsody for orchestra 11分43秒>

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2022年3月28日 (月)

Реве та стогне Дніпр широкий

ゼアミdeワールド302回目の放送、日曜夜10時にありました。30日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日のタイトルは「ドニエプルは轟き呻く」のウクライナ語表記です。同じキリル文字系ですが、iの文字があるのがロシア語と大きく違う点です。レベ・タ・ストーネ・ドニプル・シローキーとカタカナ表記するのが近いと思います。プラヤ盤で聞いたのは30年近く前ですが、今も鮮烈に覚えていた曲でした。名曲ですから、色々動画もあります。CDと同じ音源は無さそうですが、今日の一本目は近い感じです。ナターシャ・グジーさんも歌ってないか、後日探してみます。

ルーマニアの音楽の15回目として、フランスHarmonia Mundi系のQuintanaから1991年に出ていた「カルパチアの伝統音楽」を考えておりました。カルパチア山脈と言えば、ルーマニア、ウクライナ、スロヴァキア、ポーランドにまたがっていますが、この盤に入っているのは、ほとんどが西ウクライナの録音でした。

この盤の前に、痛ましい戦火が一日も早く終わることを願って、また亡くなった方々への鎮魂歌として、ウクライナの合唱などを先におかけしたいと思います。いずれもペレストロイカ後だからリリース出来た盤だと思います。
東スラヴ系のロシア、ウクライナ、ベラルーシの音楽をこの番組で取り上げたのは、5年程前になります。その時にもかけた音源ですが、フランスPlaya Soundから出ていたウクライニアン・ヴォイスから、「ドニエプルは轟き呻く」と言う合唱曲からおかけします。抑圧されたウクライナ人の悲しみを表現した19世紀の詩人シェフチェンコの詩に作曲されています。キエフの中心を流れる大河ドニエプルの轟く様が目に浮かぶような、とりわけ感動的な一曲です。

<8 Ukrainian Voices ~Le Large Dniepr Hurle Et Gemit 4分12秒>
Хор ім. Верьовки - Реве та стогне Дніпр широкий

Reve ta stohne Dnipr shyrokyy

同じ曲をソ連時代の赤軍合唱団も「ウクライナの詩」と言う曲名で歌っています。1960年のパリでのライヴ録音で、指揮はボリス・アレクサンドロフです。ソ連時代はグルジアのスリコ、アルメニアのつばめと同様に各国の名歌が歌われることがあったので、これはそのウクライナ版だと思います。こちらもドラマティックな悲愴美溢れる歌唱です。

<4 Les choeurs de l'armée Rouge a Paris ~Poème à l'Ukraine 5分44秒>

日本で活動しているバンドゥーラ弾き語りの女性歌手ナターシャ・グジーの歌は、5年前にはウクライナ民謡「バンドゥーラを手にすれば」をかけましたので、今回は同じく2002年の盤「セルツェ」から「我がキエフ」をおかけします。透き通った物悲しい歌声が余りに美しいです。バンドゥーラはウクライナの吟遊詩人が弾き語って来た小型ハープのような弦楽器です。

<1 Nataliya Gudziy 我がキエフ 4分5秒>

この後は、Quintanaの「カルパチアの伝統音楽」からおかけしますが、5年前にも取り上げた曲を今回も選んでいました。その時の解説を読み上げます。

ウクライナは広大なので、地方によって音楽もかなり違いますが、ハンガリーやルーマニアに近い西ウクライナの音楽は、これらの国の伝統音楽にかなり似通っています。フランスのQuintanaから出ていた「カルパチアの伝統音楽」から、結婚式のチャールダッシュのヴァイオリン演奏をおかけします。演奏者と曲目共にハンガリー語ですが、西ウクライナのブコヴィナ地方での録音のようです。

<5 カルパチア山脈の伝統音楽 ~Lakodalmi csardasok 4分24秒>

結婚式のチャールダッシュのヴァイオリン独奏以外のチャールダッシュやその前進の舞曲ヴェルブンコシュをかけてみたいと思いますが、その中からマジャール・ヴェルブンクという曲をどうぞ。

<15 Quintana「カルパチアの伝統音楽」 / Magyar Verbunk 2分4秒>

ヴェルブンクと言うのは、19世紀前半のハンガリー独立戦争の頃に募兵活動の中で生まれた男性の踊りで、これが基礎になってヴェルブンコシュが生まれ、更にそれが居酒屋(チャールダ)で洗練されてチャールダッシュが生まれたという経緯があります。ヴェルブンクにはヴェルブンコシュになる前の、男性の荒削りな踊りの印象が強く残っているように思います。

この盤にはユダヤの音楽も入っていましたので、次にマゼルトーフやホラなどのダンス曲をかけてみます。ハンガリー音楽のスタイルに乗せて、特徴的な哀感溢れるユダヤ・メロディがメドレーで出てきます。この曲を時間まで聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<24 Quintana「カルパチアの伝統音楽」 / Mazeltof 2分37秒>

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2022年3月21日 (月)

コマネチの床運動の2曲 Sanie Cu ZurgălăiとCălușul

ゼアミdeワールド301回目の本放送、日曜夜22時にありました。23日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はマリア・ラタレツのサニエ・ク・ズルガライだけにしておきますが、何種類も別テイクのYouTubeがあって迷いました。

ルーマニアの音楽の14回目になります。今回は何度かこの番組やゼアミブログで曲名が出てきた、コマネチの床運動の2曲を特集したいと思います。この2曲を知ったのは、1977年頃のアメリカで制作された体操選手ナディア・コマネチのドキュメンタリーで、日本語吹き替えされてNHKで放映されまして、テレビから録音したカセットをずっと保存してありました。その番組自体を流すことも可能ですが、1980年のシルヴィア・マルコヴィッチによるポルムベスクのバラーダ同様、著作権問題に抵触するようですので、控えておきます。

その2曲とは、前にトニ・イオルダッケの演奏でかけた、コミカルな味わいもあるルーマニアン・ダンスの典型のようなイメージのカルシュルとサニエ・ク・ズルガライですが、特にサニエ・ク・ズルガライ(Sanie cu zurgălăi 鐘のあるそり)は、45年以上ずっと耳に残っていた美しい短調の名旋律でした。ルーマニア民謡と書かれていることもありますが、1936年にルーマニアのユダヤ系作曲家Richard Steinによって名歌手MariaTănaseのために作曲され、ルーマニア語の歌詞はLiviu Deleanuによって書かれた当時の流行り歌と見ていいように思います。MariaTănaseはこの曲を低俗と判断したのか歌わず、1937年にSilvian FlorinとPetre Alexandruによって録音されたそうです。
最もよく知られているこの曲のオーソドックスな歌唱は、1949年に出た民謡歌手のMaria Lătărețuの歌唱ですので、まずはその音源からおかけします。

<Maria Lataretu / Sanie Cu Zurgălăi 2分18秒>
Maria Lataretu - Sanie cu zurgalai ( 1937 )

曲名で検索すると20種類近くの音源が見つかりましたが、その中からより民謡的な味わいの歌唱をもう一曲おかけします。

<Anne Nicolas / Sanie Cu Zurgalai (feat. Paul Toscano et son orchestre) 2分8秒>

この曲は、英訳でJohnnie is the boy for meとも呼ばれますが、これはエレキギターのレス・ポールを開発したレス・ポールとメアリー・フォード夫妻の1953年のカヴァーバージョンのタイトルで、歌詞内容はすっかりオリジナルとは変わっていますが、先ほどのマリア・ラタレツの歌唱を元にしているようです。このレスポール版を聞いたシャンソンの大歌手エディット・ピアフがカヴァーし、80年代にはピアフの録音を聞いたヴァイア・コン・ディオスもカヴァーしています。
この歌は、盗作疑惑で作曲者のスタインとレスポールの間で法廷闘争になりましたが、スタインが最終的に勝ったそうです。これが音楽の盗作についての最初の訴訟の1つとされています。その3つの音源を続けておかけします。

<Les Paul & Mary Ford / Johnny is the Boy for Me 2分3秒>
<Édith Piaf / Johnny tu n'es pas un ange 2分11秒>
<Vaya Con Dios / Johnny 2分19秒>

私はルーマニア音楽の音源より先に、イスラエル・ゾハルのクレズマー・クラリネットの演奏で90年頃に偶然聞いた曲でした。タイトルはレスポール版と同じでした。その音源を次におかけします。

<6 Israel Zohar / Nigunim of Gold ~Johnny is the Boy for Me 1分39秒>

フランスのジプシー~クレズマー音楽グループ、レ・ズュー・ノワール(黒い瞳)がサニエ・ク・ズルガライとカルシュルを演奏していますので、続けておかけします。

<Les Yeux Noirs / Sanie cu Zurgalai 7分30から4分>
<Les Yeux Noirs / Calusul 3分>

最近YouTubeで確認しましたが、サニエ・ク・ズルガライはコマネチのチームメイトだったテオドラ・ウングレアヌの床運動に使われている映像がありましたが、カルシュルの方はどちらも見つからずでした。1976年のモントリオール五輪でコマネチが使っていたのはアメリカのチャールストンでしたが、カルシュルも五輪後に確かにあったように思います。
Ro-Maniaと言うグループのポップなカルシュルを時間まで聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Ro-Mania / Călușul 3分46秒>

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