ゼアミdeワールド

2022年10月 3日 (月)

Scenes de la Csarda シゲティの3番

ゼアミdeワールド329回目の放送、日曜夜10時にありました。5日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。シゲティの3番が大変素晴らしいので、今日はこの映像のみ上げておきます。これを見て、バッハの無伴奏ヴァイオリンやバルトークとのベートーヴェンのクロイツェルソナタの謹厳実直なイメージが崩壊しました。もっとシゲティを聞かねばと思いました。2本目が番組でかけたピアノ伴奏版です。

ハンガリー音楽の10回目になります。前回19~20世紀初頭のハンガリーのクラシック音楽のヴァイオリニストのイェネー・フバイの音楽を取り上げまして、ジプシー楽団もよく演奏している「バラトン湖の波の上で」が5曲目に入っている「Scenes de la Csarda(酒場の情景)」から、自作自演の歴史的録音を2曲かけましたが、その後「Hubay, J.: Violin Music」と言うMusic & Artsの2枚組音源がストリーミングに見つかりまして、とても面白い曲が多かったので、今回はこちらからご紹介したいと思います。2005年にリリースされているようですが、CDは現在入手困難なようです。

フランス語のScenes de la Csardaと言うタイトルですが、しばしば『チャールダーシュの情景』と訳されているのを見かけますが、チャールダーシュの最後のsがなく、チャールダ本来の意味は「酒場」あるいは「居酒屋」ですので、「酒場の情景」と取る方が自然だと思います。もちろん音楽的には、ゆったりしたラッサンと急速なフリスカから成る、チャールダーシュ的な作品と見て良いと思います。

フバイは門下生にヨーゼフ・シゲティ、ヨハンナ・マルツィ、後に指揮者になったユージン・オーマンディなど、20世紀の偉大なヴァイオリニストが並び、クラシックの近代ヴァイオリン奏法の開祖ともいえる存在ですが、ルーツはハンガリーのジプシー音楽だったということを証明している曲集だと思います。

14曲目まではあることが、この音源から分かりますが、まずは最初に入っている8曲目をおかけします。冒頭を飾るにふさわしく、とても華やかな曲です。

<Charles Castleman, Mendi Rohan & Eastman Chamber Orchestra / Scenes de la Csarda No. 8, Op. 60, "Azt mondjak" (So they say) [arr. for violin and orchestra] 9分59秒>

3番ではサラサーテのツィゴイネルワイゼンで聞ける奏法やフレーズ、そして中間部にそっくりの旋律も出て来ます。ツィゴイネルワイゼンが1878年、Scène de la csárda No. 3が1882-3年の作曲と言うことですので、フバイはサラサーテの曲を聞いていたのかも知れませんし、フバイのこの曲集は1879年に1番が書かれていますので、最初から影響があったのかも知れません。最後の14番が書かれたのは1920年ですから、何と21歳から62歳まで41年間の長きにわたって書き続けられたことになります。喩えて言えばツィゴイネルワイゼンが14曲あるようなもので、いずれも技術的に高度なため、余り知られてなかったのではと思います。3番は他の曲と同じくオーケストラ伴奏でCharles Castlemanの演奏もありますが、2枚目にフバイの弟子のヨゼフ・シゲティの演奏が入っていますので、こちらでおかけします。

Joseph Szigeti - HUBAY Czardas No. 3

<ヨゼフ・シゲティ & アンドール・フォルデス / Scenes de la Csarda No. 3, Op. 18, "Maros vize folyik csendesen" (Maros is flowing peacefully) 6分48秒>
Scenes de la Csarda, No. 3, Op. 18, "Maros vize"

一番有名な5番の「バラトン湖の波の上で」は、前回フバイ自身の演奏でかけましたので、それ以外の13曲からですが、いずれも5~7分前後以上と結構長くて、この後1曲しかかけられません。2枚目に2番が入っていますが、この曲の冒頭は明らかにツィゴイネルワイゼン中間部の「ジプシーの月」あるいはCsak egy szép lány van a világonの旋律です。後半は一転して非常に難度の高そうな展開になります。
ハンガリーの国民的英雄になっている独立運動の指導者コッシュートをテーマにした7番も気になりますが、楽譜も出版されていて、おそらく「バラトン湖の波の上で」と並んで最もポピュラーな一曲と思われる、明るく朗らかな4番のヘイレ・カティを聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Charles Castleman, Mendi Rohan & Eastman Chamber Orchestra / Scenes de la Csarda No. 4, Op. 32, "Hejre Kati" (Hey Katie) 5分58秒>

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2022年9月26日 (月)

イェネー・フバイとダヴィッド・ポッパー

ゼアミdeワールド328回目の放送、日曜夜10時にありました。28日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日の動画はフバイの「バラトン湖の波の上で」の自作自演とジェルジ・ラカトシュ&ジプシー楽団の2本です。記憶違いでロビー・ラカトシュの叔父はシャーンドル・ラカトシュだったので、ジェルジとロビーの続柄を調べておきます。

ハンガリー音楽の9回目になります。今回はハンガリーのクラシック音楽のヴァイオリニストのイェネー・フバイ(1858-1937)とチェリストのダヴィッド・ポッパーの曲を取り上げます。

イェネー・フバイと言えば、ブラームスとの関係が深かった19世紀の大ヴァイオリニスト、ヨーゼフ・ヨアヒムから教えを受けたこととか、20世紀前半の大ヴァイオリニスト、ヨゼフ・シゲティや、後に指揮者に転向したユージン・オーマンディにヴァイオリンを教えたこと、チェリストのダヴィッド・ポッパーが室内楽演奏のパートナーだったことなどが有名です。ヴァイオリニストとしてのフバイは、ブラームスやフランコ・ベルギー派ヴァイオリンの巨匠ヴュータンから称賛を受けていました。
このようにクラシック音楽の中心にいながらも、フバイの作品にはハンガリーの民族色を出した曲もありまして、6年ほど前にライコー・ヤング・ジプシー楽団の演奏で、ハンガリーで一番大きなバラトン湖をテーマにした「バラトン湖の波の上で」と言う曲をかけました。この曲もジプシー楽団がよく取り上げる曲で、ラッサンの部分に当る哀愁の名旋律に始まり、後半はフリスカの急速な部分に当たりますから、これもチャールダーシュ的な作品と見て良いと思います。
今回はこの曲をクラシックの演奏とジプシー楽団の演奏の2つを続けておかけします。最初はイェネー・フバイの自作自演でピアノ伴奏はオットー・ヘルツ、2曲目はロビー・ラカトシュの叔父に当たるジェルジ・ラカトシュと彼のジプシー楽団による演奏です。Souvenir from the Hortobágyに入っています。

<イェネー・フバイ & Otto Herz  Scènes de la csárda No. 5 "Hullámzó Balaton", Op. 33 (Version for Violin & Piano) 5分41秒>

<György Lakatos and His Gipsy Band / Souvenir from the Hortobágy ~On the waves of lake Balaton 6分12秒>

フバイの室内楽演奏のパートナーであるチェリストのダヴィッド・ポッパー(1843-1913)は作曲家としても有名で、チェロの優れた難度の高いエチュードを沢山残していて、私もいくつか取り組んだことがあります。彼の一番有名な作品と言えば、リストの曲と同じ曲名ですが、やはりハンガリー狂詩曲でしょう。彼はユダヤ系チェコ人のオーストリア=ハンガリー二重帝国のチェロ奏者・作曲家で、このプロフィール自体が当時の複雑な国際情勢を表していると思います。演奏は日本の歌手、欧陽菲菲の姪に当たる欧陽娜娜(Nana)のチェロと、ピアノ伴奏はティエンリン・チャンです。

<11 Nana & T.L 藍子庭 / ハンガリー狂詩曲 作品68 8分23秒>

SymposiumのGreat Violinists, Vol. 1と言う1903-1944年の歴史的録音の中に、ヨーゼフ・ヨアヒム, サラサーテ, レオポルド・アウアー, ウジェーヌ・イザイ, イェネー・フバイ, カール・フレッシュ, フリッツ・クライスラーなど19世紀のヴァイオリンの巨匠達の演奏が入っていまして、その中に先ほどの「バラトン湖の波の上で」と組曲を成しているScenes de la Csarda(酒場の情景) No. 12, Op. 83, "Pici tubiczam" (My Little Pigeon 私の小さな鳩) (version for violin and orchestra)と言う曲が入っています。「バラトン湖の波の上で」がこの組曲の5番です。Symposium Recordsの現物が手元にないため、確かではありませんが、おそらくイェネー・フバイ自身の録音のようです。この曲を時間まで聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Scenes de la Csarda No. 12, Op. 83, "Pici tubiczam" (My Little Pigeon) (version for violin and orchestra) 8分14秒>

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2022年9月19日 (月)

チャールダーシュの女王 1962

ゼアミdeワールド327回目の放送、日曜夜10時にありました。21日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日は1962年のフンガロトン音源の2曲で、2曲目は当時のライヴ映像がありました。

ハンガリー音楽の8回目になります。今回はチャールダーシュ名曲集のクラシック編の2回目です。
まずは、エメリッヒ・カールマンが20世紀初頭に作曲したオペレッタ「チャールダーシュの女王」から冒頭の2曲をおかけします。ウィンナ・ワルツと19世紀にウィーンで大流行したハンガリーのチャールダーシュを組み合わせた音楽ですが、第一次大戦中の1915年に初演されたこともあり、ハプスブルク帝国の終焉の頃の退廃的な雰囲気が見え隠れする点で、同時代のレハールの甘美な音楽とも共通した響きがあると思います。

<Németh Marika, Gyenes Magda, Baksay Árpád & Operettszínház Zenekara / Csárdáskirálynő - Előjáték az I. felvonásból 2分33秒>

<Németh Marika, Gyenes Magda, Baksay Árpád, Operettszínház Zenekara, Bródy Tamás, Honthy Hanna, Rátonyi Róbert, Homm Pál & Feleky Kamill / Csárdáskirálynő - Szilvia belépője 2分39秒>

次に、ヨハン・シュトラウス2世のオペラ『騎士パズマン』から チャールダーシュをおかけします。このオペラは冗長で余り上演される機会がないそうですが、第3幕で演奏されるチャールダーシュは傑作と評価され、オペラとは別の作品番号が付されています。音楽の印象は、ハンガリーと言うより少しロシア的な部分も感じられるように思いました。

<クリスティアン・ティーレマン & ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 / Ritter Pásmán, Op. 441: Csárdás 4分23秒>

チャールダーシュは、ハンガリー語で「酒場」という意味のチャールダ csárdaに由来しますが、この言葉は直接にはハンガリー音楽に大きな貢献をしたユダヤ系作曲家ロージャヴェルジ・マールクの作った楽曲の名前から広まったという事ですので、この人の英語のウィキペディアに載っていたフンガロトンの音源Rózsavölgyi: Ballroom Dances (17 dances and dance -sequences)を当たって見ました。チャールダーシュと言う曲名では見当たりませんでしたが、2曲目のStinning Tune, for stringsが他のサイトにはSerkento (Stimulating Csardas)と出ていて、どうやらチャールダーシュに当たるようです。この曲を含むハンガリー的な曲調が感じられるヴェルブンコシュ他4曲を続けておかけします。

<First Hungarian Round Dance - Halljuk! - Hear! Hear! 2分36秒>
<Serkento (Stimulating Csardas) 2分32秒>
<First Hungarian Round Dance - III. Toborzó - Verbunkos 1分15秒>
<Sound of Hope from the East - III. Toborzó - Verbunkos 2分4秒>

では最後に「チャールダーシュの女王」のもう一つの演奏、アンネリーゼ・ローテンベルガー, オリヴェラ・ミリャコヴィチ, ニコライ・ゲッダ, ウィリー・マッテス指揮グラウンケ交響楽団&バイエルン国立歌劇場合唱団の演奏から、最初にかけた曲を再度聞きながら今回はお別れです。先ほどのハンガリー盤程には泥臭くなく、すっきりしたウィーン的な演奏のように思います。時間が余りましたら、ハンガリー盤から他の一曲Csárdáskirálynő - Az asszony összetörをおかけします。
気になるのは、エメリッヒ・カールマンとロージャヴェルジ・マールクは、二人ともユダヤ系の作曲家と言う点です。チャールダーシュにも特徴的なジプシー音楽由来のエキゾチックな増二度音程は東欧系ユダヤの音楽に頻繁に出て来ますので、その関係性をまた探れそうならゼアミブログで取り上げてみたいと思っています。次回はイェネー・フバイとダヴィッド・ポッパーの音楽を取り上げる予定です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Die Csárdásfürstin · Operette in 3 Akten (Highlights): Heia, heia, in den Bergen ist mein Heimatland (Sylva & Chor - Boni - Feri, 1.Akt) 3分17秒>
<Csárdáskirálynő - Az asszony összetör 5分11秒>

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2022年9月12日 (月)

ツィゴイネルワイゼンとハンガリー狂詩曲13番

ゼアミdeワールド326回目の放送、日曜夜10時にありました。14日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はツィゴイネルワイゼンのみです。ハイフェッツの演奏は放送でかけたのとは別音源です。

ハンガリー音楽の7回目になります。今回はチャールダーシュ名曲集のクラシック編です。ブラームスのハンガリー舞曲とモンティのチャールダッシュは、320回目にかけましたので、今回は他の曲を取り上げます。曲が多いので、2回になると思います。最初に320回目に入れた解説を少し繰り返しておきます。
チャールダッシュと言うのは、19世紀前半のハンガリー独立戦争の頃に募兵活動の中で生まれた男性の踊りヴェルブンクが基礎になってヴェルブンコシュが生まれ、更にそれが居酒屋(チャールダ)で洗練されてチャールダーシュが生まれたとされています。ゆったりとした哀愁漂うラッサンの部分と、急速なフリスカの部分からなる舞曲で、ハンガリーのジプシー楽団が盛んに演奏し妙技を披露、19世紀にはヨーロッパ中で大流行し、ウィーン宮廷は一時チャールダーシュ禁止の法律を公布したほどだったそうです。
そんなムーヴメントの中で、ドイツの大作曲家ブラームスのハンガリー舞曲や、サラサーテのツィゴイネルワイゼン、リストのハンガリー狂詩曲、モンティのチャールダッシュなどが生まれています。ハンガリーから遠く離れたスペインの作曲家サラサーテが、自国にフラメンコと言うジプシー由来の音楽があるのに、何故チャールダッシュを書いたのか?と長年疑問に思っていましたが、そういう背景があったことを後で知りました。
まずはツィゴイネルワイゼンを、往年の大ヴァイオリニスト、ヤッシャ・ハイフェッツとジョン・バルビローリ指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏でおかけします。

<Zigeunerweisen, Op. 20 8分45秒>

ツィゴイネルワイゼンは、3部からなっていて、いくつかのハンガリー民謡・大衆音楽の旋律を組み合わせて作曲されています。弱音器を付けて演奏される中間部のもの哀しく美しいメロディは、「ジプシーの月」というタイトルでポピュラー・ソングとしてもヒットしていますが、19世紀ハンガリーの作曲家Elemér Szentirmayの曲の引用(あるいは盗用?)と言う説もあるようです。曲名はCsak egy szép lány van a világonと言う曲で、翻訳にかけると「世界にたった一人の美少女」と出て来ました。この曲をパンフルートとヴァイオリン他の編成で演奏しているVDE-Galloの音源がありますので、次におかけします。

<Patrick Kersalé, Bernard Darmon & Claude Aylestock / Folk Songs of Central Europe for Pan Flute ~Csak egy szép lány van a világon 1分53秒>

ツィゴイネルワイゼンのラストの急速なAllegro molto vivaceでは、フランツ・リストの『ハンガリー狂詩曲第13番』から引用されています。この曲は8分33秒ありますが、終わり2分位がその箇所です。超絶技巧で名高く「リストの再来」と呼ばれた、本国ハンガリーの名ピアニスト、ジェルジ・シフラの演奏です。シフラの両親はジプシーの家系で、父親はパリでピアノやツィンバロムを弾いていた音楽家だったそうです。

<Hungarian Rhapsody No. 13 in A minor, S. 244 (Remastered 2021) 8分33秒>

チャールダーシュの前身のヴェルブンコシュに影響されている、フランツ・リストのハンガリー狂詩曲は全部で19曲ありますが、管弦楽編曲もされ飛び抜けて有名なのが第2番です。ジェルジ・シフラのピアノで、この曲を時間まで聞きながら今回はお別れです。
第2番はアメリカのアニメ『トムとジェリー』などにも引用されていました。第15番では有名なハンガリー民謡《ラコッツィ行進曲》が引用されていますので、またかけることがあるかも知れません。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Hungarian Rhapsody No. 2 in C sharp minor, S. 244 (Remastered 2021) 10分12秒>

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2022年9月 5日 (月)

チャールダーシュ名曲集(「暗い日曜日」含む)

ゼアミdeワールド325回目の放送、日曜夜10時にありました。7日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日の動画は1曲目のみです。

ハンガリー音楽の6回目になります。今回はチャールダーシュ名曲集にしたいと思います。ブダペストのレストランでの実況録音などのチャールダーシュの手持ち音源はLPがほとんどで、いずれもメドレーで数曲を演奏している長い録音が多く、番組でかけるには不向きのため、アップルミュージックでCsardasと原文を入れて検索したら、出てきたのは見事に「モンティのチャールダーシュ」のみでした(笑) この傾向は日本で特に顕著なようで、音楽好きの数人に聞いてみたところ、ほぼ100%の確率で、チャルダッシュは「モンティのチャルダッシュ」の固有名詞と思っていたようです。繰り返しますが、チャールダーシュはハンガリーの舞曲の名前です。

アップルミュージックでたまたま見つけたCsardasklänge - Zigeunermusikと言う音源ですが、メドレーではなく色々いい曲が個別に入っていましたので、こちらを中心におかけします。

まずは前回の最後にかけて途中までになっていた曲から始めます。ビハリの作ったチャールダーシュ「無一文になって」として前々回かけた曲の後半と同じ曲が、Janos Szalay mit seiner Zigeuner-Kapelleの演奏に、A-Dur-Csardas(イ長調のチャールダーシュ)と言うタイトルで入っていますので、こちらを再度おかけします。この明朗で美しい旋律は、耳について離れない名調子です。

<5 A-Dur-Csardas 3分4秒>

次はCsardasklänge - Zigeunermusikではなく、私が1977年頃に録ったFM番組の音源です。ハンガリー音楽の専門家だった谷本一之さんが担当された「世界の民族音楽」の時間にかかったチャールダーシュで、演奏者等詳細は不明ですが、私の中では前にかけた「エチェル村の結婚式」の作者不詳のチャールダーシュハ短調と並んで、典型的なタイプとして記憶していた曲です。

<谷本一之氏のFM番組の音源 1分30秒>

Csardasklänge - Zigeunermusikに戻りまして、Hirtenlied (Bercsenyi dal es csardas)と言う曲の後半は、先ほど出てきた「エチェル村の結婚式」のチャールダーシュハ短調の旋律が登場します。こちらもJanos Szalay mit seiner Zigeuner-Kapelleの演奏です。

<Hirtenlied (Bercsenyi dal es csardas) 3分32秒>

次は1933年にシェレシュ・レジェーが書いたハンガリーの歌「暗い日曜日」(ハンガリー語: Szomorú vasárnap ソモルー・ヴァシャールナプ, 英語: Gloomy Sunday, フランス語: Sombre Dimanche)も入っていますので、Janos Szalayの楽団の演奏と、オリジナルのSebo Miklosのハンガリー語歌唱、日本の淡谷のり子の歌唱の3曲を続けます。チャールダーシュのジプシー楽団もよく取り上げていた曲です。「自殺者の出る曲」と言う都市伝説があることで有名で、1936年にフランスのダミアがカヴァーしてから、シャンソンの作品と誤解されることが多かった曲です。おそらく1936年のオリジナルと思われる淡谷のり子の録音には、他にもシャンソン、タンゴ、ラテンなどの名唱が多いので、またそれぞれの機会に取り上げるかも知れません。

<Trauriger Sonntag (Szomoru vasarnap) 2分23秒>
<Sebo Miklos / Szomorú Vasárnap 3分14秒>
<淡谷のり子 / 暗い日曜日 3分>

「暗い日曜日」の陰鬱なムードを一掃するために、Csardasklänge - Zigeunermusikから、明るいチャールダーシュ3曲を続けます。3曲目だけOriginal ungarische Zigeunerkappel Kalman Lendvayで、他の2曲は前と同じでJanos Szalayの楽団の演奏です。曲名の、Über die Theissが「ティサ川を越えて」、Die Stadt ist voll von Akazienblütenは「街はアカシアの花でいっぱい」、Gelbes Amselnestは「黄色いクロウタドリの巣」と訳せると思います。2曲目などは、オーストリア風な印象が強いように思いました。これらを聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Über die Theiss (Tiszan innen dunan tui) 2分40秒>
<Die Stadt ist voll von Akazienblüten (Tele van a varos akacfa viragal) 1分12秒>
<Gelbes Amselnest (Sarga Rigo Feszek) 2分55秒>

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2022年8月29日 (月)

ヴェルブンコシュ特集 +大人の部室 第1部

ゼアミdeワールド324回目の放送、日曜夜10時にありました。31日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はロビー・ラカトシュの「ビハリの想い出」のみにしておきます。
もう一つお知らせですが、今週と来週のラヂバリの「大人の部室」に出ます。お相手は、俳句チャンネルのすずめさんです。とても楽しい収録でしたが、終わってから言い忘れたことを次々思い出しました(笑) 放送は30日19:45と再放送が1日17:15(答える側)、6日19:45と再放送が8日17:15(聞き手)です。パーソナリティ間の15分のトーク番組です。宜しければ是非お聞き下さい。

ハンガリー音楽の5回目になります。今回は予告していましたヴェルブンコシュ特集にしたいと思います。チャールダーシュの前身に当たるハンガリーの舞曲です。
ヴェルブンコシュは18世紀の終わりから19世紀の中頃にかけ、ハンガリーで展開したダンス音楽の一スタイルで、募兵活動で使われた男性の踊り、ヴェルブンクを基礎とし、語源も募兵を意味するドイツ語のWerbungに由来しています。
ヴェルブンコシュに使われている旋律要素の起源を辿って行くと、ハンガリー民俗器楽の伝統的要素の他、イスラム世界・中近東諸民族・バルカンの要素、スラヴ諸民族の要素、ルーマニアの要素、更にウィーン、イタリアの要素などを見い出せるようです。
音楽的にはいかにも募兵らしい勇壮な曲調から、洗練された優美な音楽まで色々と聞き取れます。まずは優美な方の曲として、前に「エチェル村の結婚式」からかけた「ビハリの想い出」を、ロビー・ラカトシュも演奏していますので、こちらをおかけしますが、その前に先日の解説を再度入れておきます。

「エチェル村の結婚式」の7曲目に入っているのは、自身の楽団を率いて世界的に活躍したジプシーの名ヴァイオリニストで、チャールダッシュの前進の後期ヴェルブンコシュ音楽の代表的作曲家だった19世紀初頭のビハリ・ヤーノシュを偲ぶ「ビハリの想い出」と言う曲です。彼は古い大衆歌曲をヴェルブンコシュの旋律として取り入れた大衆的な作曲家でしたが、ウィーン風なロマンティックな旋律の作曲家でもあったそうです。「ビハリの想い出」の中には彼の作品から5曲が取り上げられています。ラカトシュの演奏には、「エチェル村の結婚式」にはなかった曲も入っています。

<Roby Lakatos Ensemble  Medley: Memory of Bihari / Hejre Kati 7分2秒>

勇壮な趣のあるヴェルブンクの例としては、ハンガリー東部サトゥマール地方のヴェルブンコシュやチャールダーシュから、ハンガリーのクレズマー音楽家がかつて演奏していたユダヤ音楽まで取り上げたフンガロトンのSzatmári Bandák(サトゥマール地方のハンガリー民族音楽)が秀逸で2曲目のヴェルブンクをおかけします。

<Hungarian Verbunk, Slow & Quick Csárdáses (Progress) 6分54秒>

もう一曲ヴェルブンクの例として、1988年のハンガリアン・ダンス・ハウス・フェスティヴァル第7回のフンガロトン盤(国内盤はアルファエンタープライズ)から、ヘゲドゥーシュ・アンサンブルの演奏でおかけします。こちらは70年代のダンスハウス以降の傾向で、トランシルヴァニア(エルデーイ)色が強い演奏です。

<Hegedős  Maros Menti Verbunk 3分15秒>

クラシック作品にヴェルブンコシュが使われた例としては、コダーイのハーリ・ヤーノシュの間奏曲や、前回の終わりに名前の出たガランタ舞曲が有名です。ハーリ・ヤーノシュは元はオペラですが、管弦楽組曲版の間奏曲は、放送内でかけられますので、今回はこちらをおかけしておきます。勇壮さと優美さとエキゾチックな哀愁が複雑に入り混じる魅力的な曲だと思います。

<管弦楽組曲「ハーリ・ヤーノシュ」 Op.15 - V. Kozjatek (Intermezzo) ネーメ・ヤルヴィ指揮シカゴ交響楽団 5分2秒>

では最後に、ビハリの作ったチャールダーシュ「無一文になって」として前回かけた曲の後半と同じ曲が、Janos Szalay mit seiner Zigeuner-KapelleのCsardasklänge - Zigeunermusikと言う録音にA-Dur-Csardas(イ長調のチャールダーシュ)と言うタイトルで入っていますので、時間まで聞きながら今回はお別れです。この明朗で美しい旋律は、耳について離れない名調子です。ビハリはヴェルブンコシュからチャールダーシュへの過渡期の作曲家なのが、この曲からも見て取れます。次回はこの録音からジプシー楽団の演奏するチャールダーシュ名曲集に移る予定です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<5 A-Dur-Csardas 3分4秒>

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2022年8月22日 (月)

ジプシー風ハイドン

ゼアミdeワールド323回目の放送、日曜夜10時にありました。24日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日は取り合えずジェレム・ジェレムと鳥のみです。

ハンガリー音楽の4回目になります。今回はM大学のK先生から教えて頂いたHaydn alla Zingareseと言う盤をおかけします。タイトルはイタリア語で、ジプシー風ハイドンと訳せるでしょうか。これまでに19世紀のチャールダーシュなどは少しおかけしましたが、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが活躍した18世紀にもジプシー音楽家から影響を受けた音楽があって、何とハイドンの有名な作品の主に終楽章のロンドに出てきていることを明らかにしています。19世紀のブラームスやリストなどの作品のように、ほとんどジプシー音楽そのものではありませんが、よく聞くとハイドンなりに作品に織り込まれています。
当時はハプスブルク家の神聖ローマ帝国からオーストリア帝国の時代で、1867年にはオーストリア=ハンガリー帝国に至ります。首都のウィーンは今でいえば、ニューヨークのような多民族の住む国際的な都市でした。ドイツ・オーストリア系の音楽を中心に、周辺のハンガリー、スロヴァキアや、もちろんジプシーなどの音楽も近くに存在していた時代で、それらが複雑に交じり合う状況もあったようです。そんな中で生まれたのがチャールダーシュの前身のヴェルブンコシュで、ハイドンが活躍した時代はその前後と言うことになるようで、既にジプシーの楽士が魅力的な調べを奏でていたようです。
この盤は、ジプシーの音楽に魅了されていたと言う当時のハイドンの視点に立って、今はスロヴァキアですが昔はハンガリー領だったブラティスラヴァのジプシー音楽家と、現代オーストリアのクラシック音楽家が共演した盤で、クラシック側の中心は、鬼才フリードリッヒ・グルダの息子のパウル・グルダです。父と同じくピアニストですが、この刺激的で型破りな姿勢は父譲りと言えるでしょう。演奏者はピアノのPaul Guldaのバックは弦楽四重奏で、ヴァイオリンがアレクサンダー・ホーエンタール、カルステン・ノイマン、ヴィオラがイェンセン・ラム、チェロはマルガレーテ・デッペです。ジプシー楽団の方はRobo Gaspar Banda(ロボ・ガシュパル楽団)です。打弦楽器ツィンバロムの音色がやはり特徴的です。

まずは2曲目のジェレム・ジェレムをおかけしますが、これまでにマケドニアのエスマの歌唱などで何度か登場したジプシーのアンセムのような曲です。「長い長い道を歩いていた」と言う邦題が付いています。

<2 Gelem, gelem lungone dromeja (I Have Gone A Long Way) (arr. R. Gaspar) 5分58秒>

ハンガリーのジプシー音楽を先にかけようかと思いますが、8曲目はビハリの作ったチャールダーシュ「無一文になって」と言う曲です。

<8 Mikor a penze elfogyott (All the Money Spent) 4分40秒>

面白いサンプルとして5,6曲目では「ピアノのためのモデラートとアレグロ」を言う曲をピアノ独奏の原曲に続いて、ガシュパルの楽団がジプシー音楽風に演奏しています。2曲続けておかけします。

<5 Moderato-allegro (arr. F.P. Rigler for piano) 2分11秒>
<6 Moderato-allegro (arr. F.P. Rigler for chamber ensemble)  2分7秒>

ハイドンの曲そのものは17曲中6曲ほど入っていますが、ジプシー音楽の影響の垣間見える部分が短調の部分に聞き取れる弦楽四重奏曲第39番「鳥」の終楽章が、放送時間にも収まってコンパクトで分かり易いので、こちらをおかけします。ハンガリー舞曲風のロンドで、途中にトルコ行進曲風の部分も現れると言うことですので、長調の部分がハンガリー舞曲、短調の部分はトルコ行進曲風かも知れません。

<13 String Quartet No. 32 in C major, Op. 33, No. 3, Hob.III:39, "The Bird": IV. Rondo: Presto 2分48秒>

では最後に11曲目の「ガランタ地方の踊りを4つ」と言う曲を聞きながら今回はお別れです。ガランタと言えば、コダーイのガランタ舞曲をすぐさま思い出します。
「ブダペスト・フィルハーモニー協会創立80周年を記念して作曲。コダーイはここで、ほとんど忘れられていた古いマジャール人の新兵募集の踊り「ヴェルブンコシュ」(Verbunkos)を復活させた。」と言う曲でした。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<11 Galantai Tancok (4 Dances from Galanta) (arr. P. Gulda) 8分1秒>

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2022年8月17日 (水)

今年の阿波踊りから

ゼアミdeワールド322回目の放送、日曜夜10時にありました。今晩20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。かけた音源そのものは、おそらくYouTubeにはないと思いますので、とりあえず今年の阿波踊りを貼っておきます。明日、明後日は苔作やねぶたとねぷたの映像を探ってみます。

【2022】なぜか涙が止まらない阿波おどり 総踊り - Awaodori in 8K UHD

ハンガリー音楽巡りの途中ですが、今回は放送されるのが14日と17日で、ジャストお盆ですので、夏祭りと盆踊りの音楽をおかけしたいと思います。
これまでお盆には、阿波踊り、越中富山のおわら節~風の盆、郡上八幡の民謡などをかけました。依然として続くコロナの大変な状況ですので、出来るだけ喋りは少なくして、夏祭りの雰囲気を耳で感じて頂けるサウンドスケープ的な音源を出来るだけ長くおかけします。

まずは阿波踊りの苔作からおかけしますが、この演奏は人気の「ぞめき」シリーズの第三集「路上派」に入っています。このグループは前にTVのドキュメンタリーで見たことがあります。路上派の方では旋律楽器は影を潜め、ひたすらパーカッシヴに打楽器が炸裂する演奏が入っています。

<4 苔作 8分54秒>

苔作などの久保田麻琴さんの阿波踊り音源は数年前にもかけましたから、今年は97年にコロムビアから出ていた阿波踊りの1978年の現地録音からも少しおかけしておきます。演奏は蜂須賀連です。

<1 阿波踊り 踊り専科 26分18秒 5分ほど>

次は、東北三大祭りの一つ、青森市のねぶたと弘前市のねぷたの実況録音盤が手元にありますので、ねぶたとねぷたそれぞれ5分程聞きながら今回はお別れです。起源としてよく知られていたのは「のちに征夷大将軍となる坂上田村麻呂が陸奥国の蝦夷征討(あるいは征伐)の戦場において敵を油断させておびき寄せるために大燈籠・笛・太鼓ではやし立てたことを由来とする」とあります。ねぶたとねぷたで、燈籠だけでなく音色や雰囲気が少し違うことも音から分かるかと思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<1 青森ねぶた 28分57秒 10分余り>
<2 弘前ねぷた 29分58秒 5分余り>

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2022年8月 8日 (月)

カーロー民族舞曲、ビハリ・ヤーノシュの思い出 他

ゼアミdeワールド321回目の放送、日曜夜10時にありました。10日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。スタッフの方から7日の本放送は無いと聞いていたので、放送では以下のように言いましたが、予定が変わったようで7日22時に放送されました。おんまく花火の帰りに車の中でかかって、あれ?!と思いました(笑) 1本目はカーロー民族舞曲のライヴ映像、他は番組でかけた音源です。

ハンガリーの音楽の3回目になります。今回は7日の本放送枠が今治の祭り、おんまくの特番があるため、放送は10日の再放送枠のみになります。

2回にわたって「エチェル村の結婚式」からおかけしてきましたが、過去の放送原稿を辿ってみますと、5年前の54、56回目にウクライナ西部のハンガリー系音楽の関連でこの盤を取り上げています。今回はその5年前に書いた解説を入れながら進めます。

まず一曲目のゾルタン・コダーイ作曲のカーロー民族舞曲ですが、この曲は1951年にコダーイがこのアンサンブルのために作曲した曲で、ジプシー楽団の演奏スタイルを念頭におきながら、それを一回り大きくしたアンサンブルと混声合唱のために書かれた舞踊曲です。使われている民謡はコダーイが1938年にハンガリー東部のサボーチ・サツマール県のノジュカーロで収集したもので、曲名はこの地方名から来ています。

Kállai kettős - Magyar Állami Népi Együttes

<1 エチェル村の結婚式~カーロー民族舞曲 6分27秒>

7曲目に入っているのが、自身の楽団を率いて世界的に活躍したジプシーの名ヴァイオリニストで、チャールダッシュの前進の後期ヴェルブンコシュ音楽の代表的作曲家だった19世紀初頭のビハリ・ヤーノシュを偲ぶ「ビハリの想い出」と言う曲です。彼は古い大衆歌曲をヴェルブンコシュの旋律として取り入れた大衆的な作曲家でしたが、ウィーン風なロマンティックな旋律の作曲家でもあったそうです。「ビハリの想い出」の中には彼の作品から5曲が取り上げられています。

<7 エチェル村の結婚式~ビハリの想い出 4分38秒>

このアルバムのラストを飾っているのが、アルバムタイトル曲の「エチェル村の結婚式」です。この曲を聞きながら今回はお別れです。ブダペストに近いエチェル村に伝わる結婚式の風習を基に人生を描いたマロシュ・ルドルフ作曲の創作舞踊の音楽です。ヴェルブンコシュやチャールダッシュなどが鏤められて紙芝居のように出てきます。
時間が余りましたら、8曲目の「3つの跳躍の踊り」までおかけします。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<9 エチェル村の結婚式~エチェル村の結婚式 12分22秒>

<8 エチェル村の結婚式~3つの跳躍の踊り 4分16秒>

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2022年8月 1日 (月)

チャールダーシュ特集~作者不詳、モンティ、ブラームス

ゼアミdeワールド320回目の放送、日曜夜10時にありました。3日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日の動画はチャールダッシュハ短調のみです。モンティ、ブラームスはまた後日。

320回目の放送になりました。ハンガリーの音楽の2回目になります。前回「セークの音楽」をかけたハンガリーHungarotonの「エチェル村の結婚式」に入っているチャールダッシュから始めて、クラシックのチャールダッシュ名曲を幾つか聞いてみます。

「エチェル村の結婚式」ですが、過去の放送原稿を辿ってみますと、5年前の54、56回目にウクライナ西部のハンガリー系音楽の関連でこの盤を取り上げていました。その5年前に書いたチャールダッシュについての解説を再度入れておきます。
チャールダッシュと言うのは、19世紀前半のハンガリー独立戦争の頃に募兵活動の中で生まれた男性の踊りヴェルブンクが基礎になってヴェルブンコシュが生まれ、更にそれが居酒屋(チャールダ)で洗練されてチャールダッシュ(より正確にはチャールダーシュ)が生まれたとされています。ゆったりとした哀愁漂うラッサンの部分と、急速なフリスカの部分からなる舞曲で、ハンガリーのジプシー楽団が盛んに演奏し妙技を披露、19世紀にはヨーロッパ中で大流行し、ウィーン宮廷は一時チャールダーシュ禁止の法律を公布したほどだったそうです。
そんなムーヴメントの中で、ドイツの大作曲家ブラームスのハンガリー舞曲や、サラサーテのツィゴイネルワイゼン、モンティのチャールダッシュなどが生まれています。ハンガリーから遠く離れたスペインの作曲家サラサーテが、何故チャールダッシュを書いたのか?と長年疑問に思っていましたが、そういう背景があったことを後で知りました。

それでは「エチェル村の結婚式」から、作者不詳のチャールダッシュハ短調をおかけします。これは非常に印象的でメランコリックな名旋律だと思います。演奏はハンガリー国立民族アンサンブルです。この作者不詳のチャールダッシュは今でも親しまれているようで、youtubeで結構見ることが出来ます。冒頭のメランコリックな旋律と、速い部分での火花を散らすようなジプシー・ヴァイオリンの名人芸が聞きものです。

<3 エチェル村の結婚式~チャールダッシュハ短調 2分44秒>
Csárdás in c-moll

次に、特に日本ではチャールダッシュの代名詞になっている(あるいは、なってしまっている)「モンティのチャルダッシュ」をおかけします。イタリアの作曲家ヴィットーリオ・モンティが元々マンドリンのために書いた曲です。モンティ自身はジプシーでもユダヤ人でもないようです。演奏は2007年のチャイコフスキー国際コンクールで優勝された神尾真由子さんです。

<神尾真由子  モンティ / チャールダーシュ 4分22秒>

次にチャールダッシュ由来の音楽で、おそらくモンティの曲に次いで知られていると思われるブラームスのハンガリー舞曲集から、何曲かおかけしたいと思います。
5年前にもかけましたが、有名な第1番と第5番で、音源はカラヤン指揮ベルリン・フィルの定番です。個人的にはメランコリックな旋律美を極めている1番が、1980年にチェリビダッケ指揮の名演を聞いてから一番のお気に入りでした。第5番は、80年代頃にモンティの曲が広く知られるまでは、サラサーテのツィゴイネルワイゼンと並んで最も有名なチャールダッシュだったと思います。

<5 ブラームス / ハンガリー舞曲 第1番 2分52秒>
<1 ブラームス / ハンガリー舞曲 第5番 2分35秒>

ブラームスのハンガリー舞曲集は、全部で21曲ありまして、原曲はピアノ連弾のために書かれていますが、ブラームス他沢山の音楽家がオーケストラやヴァイオリンとピアノの二重奏などに編曲しています。
1850年代の前半に、ハンガリーのユダヤ系ヴァイオリニスト、エドゥアルト・レメーニの伴奏者としてドイツの各地で演奏旅行を行い、その時にレメーニからジプシー音楽を教えられて魅了され、それ以来ブラームスは、それをハンガリーの民族音楽と信じて採譜を続けています。ほとんどが自作曲ではなく、伝統音楽の編曲ですが、第7曲、第11曲、第14曲、第16曲の主題は、完全にブラームスの創作だそうです。
逆に言えば、それ以外の17曲にはジプシーの原曲があったはずですが、楽譜に記す習慣のなかったジプシーの間では現在は知られていないようですから、ブラームスの採譜は19世紀のジプシー音楽を記録しているという意味でも貴重なのだろうと思います。
ジプシー音楽風のブラームスの自作曲には、5年前にかけたピアノ四重奏曲第1番の第4楽章や、ヴァイオリン協奏曲の終楽章がありまして、いずれも彼の重要曲ですから、ブラームス自身の音楽表現の必須の素材の一つになっているように思います。

ヴァイオリンとピアノの二重奏への編曲では、ヨーゼフ・ヨアヒムの版がよく知られていますが、17番だけ大ヴァイオリニストのフリッツ・クライスラーも編曲しているようです。メランコリックな名旋律の、17番を次におかけします。同じくカラヤンとベルリンフィルの演奏です。

<3 Brahms: Hungarian Dance #17, WoO 1/17 3分20秒>

次にヴァイオリンとピアノの二重奏への編曲でよく弾かれる曲ですが、ハンガリー舞曲の第2番をおかけします。アルメニアと日本の血を引くカナダの女流ヴァイオリニスト、カテリーナ・マヌーキアンの演奏です。ピアノ伴奏は江口玲です。

<5 Hungarian Dance No. 2 3分15秒>

それでは最後に、天満敦子さんのヴァイオリンで、先ほどオーケストラ版でかけたハンガリー舞曲の第1番を聞きながら今回はお別れです。ルーマニアの時にポルンベスクのバラーダをかけたヴァイオリニストです。93年の大ヒット盤「望郷のバラード」にハンガリー舞曲の1,2,17番が入っています。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<16 Brahms (Arr. Joachim) / Hungarian Dances Nr.1 3分28秒>

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