ゼアミdeワールド

2017年5月24日 (水)

「春の祭典」とベラルーシやリトアニアのペイガニズム

ゼアミdeワールド58回目の放送、水曜夜に終りました。21日には前々回の放送(56回目)が流れてしまいましたが、今回はちゃんと58回目が流れました。<>内がかけた音源です。今回もイネディやメロディアの盤と全く同じ音源のyoutubeはおそらくないのではと思いますので、今日は「春の祭典」のみ上げておきます。民謡はもし見つかったら、また取り上げます。

今回はベラルーシと、北側に隣接するバルト三国の一つ、リトアニアの歌を聞いてみたいと思います。ZeAmiブログの方でベラルーシやリトアニアの伝統音楽を見ていると、結構Pagan Songというタイトルが目立つことに気がつきました。キリスト教化する前のペイガン(異教的)な雰囲気を感じさせる映像がありましたが、そこで出てくる民謡は、正に前回かけたユネスコ盤に入っているようなタイプでした。
ここで思い出したのがストラヴィンスキーの「春の祭典」で、この曲の冒頭に出てくる旋律がリトアニア民謡でしたから、今回はベラルーシからリトアニアにかけて、ペイガンな曲を探してみようかと思いました。そうは言いましても、一曲一曲詳細に吟味するのも難しいので、前回一曲かけましたロシアのメロディア盤2枚組の「ベラルーシの民族音楽アンソロジー」の中から、決まったテーマの部分を続けてかけてみます。今回じっくり聞いてみて、ユネスコ盤と音源が数曲ダブっていることにも気がつきました。ここにどうもペイガンな歌が有りそうだと言うことで、「春の祭典」を想起させる「春の歌」4曲を続けてどうぞ。

<ベラルーシの民族音楽アンソロジー~春の歌 56秒、38秒、1分5秒、50秒>

続いて、ストラヴィンスキーの「春の祭典」の冒頭部分をかけてみます。ストラヴィンスキーの自作自演です。リトアニア民謡をベースにしたファゴットから始まる序奏から、弦楽器を中心に同時に力強く鳴らされる同じ和音の連続とアクセントの変化による音楽に始まる乙女達の踊り「春のきざし」の辺りまでです。80年代にピナ・バウシュのバレエで「春の祭典」を見たことがありますが、どうもペイガンなyoutubeの映像と印象がダブります。

<ストラヴィンスキー / 春の祭典 ストラヴィンスキー指揮ニューヨーク・フィル 2分53秒、3分14秒>
Igor Stravinsky Le Sacre du Printemps Vaslav Nijinsky Version 1913 Ballett Mariinski Theater

自作自演はおそらく上がってないので、ニジンスキー・ヴァージョンのマリインスキー劇場管弦楽団とバレエ団の演奏で。何と言ってもあのニジンスキーですから、これが正調なのでしょう。指揮はもちろんヴァレリー・ゲルギエフ

露Melodiyaの2枚組は、春の歌、三位一体の日曜と聖ヨハネの生誕前夜の歌、収穫の歌、秋の収穫の歌、キャロルと祭りの歌、結婚式と出生の歌、非儀礼の叙情歌、器楽と言う風に分れています。異教的という観点で見れば、当然三位一体とかキャロルのようなキリスト教関連の歌は外れるのだろうと思います。
言語的には、ベラルーシはロシアやウクライナと同じ東スラヴ系ですが リトアニアとその北のラトヴィアはバルト語派で、共にインド・ヨーロッパ語族ではありますが、全く系統の異なるグループです。エストニアだけ、フィンランドと兄弟関係に当るウラル系のフィン・ウゴル語派になります。この辺りでベラルーシとリトアニアだけに共通するような異教的なイメージの曲があり、それがストラヴィンスキーにもインスピレーションを与えたのだとすれば、これはとても興味深い事実だと思います。
次にリトアニアの曲をかけてみます。フランスのIneditから出ている「バルトの歌声」には、ラトヴィア、リトアニア、エストニアの順に伝統音楽が入っていますが、その中からリトアニアの収穫の歌、結婚式の哀歌、ホイッスル、2声のカノンでのスタルティネなどの一部古い録音も聞けますが、キリスト教以前の儀礼歌も入っているようです。異教的だとしても、ベラルーシよりは穏やかな印象の曲が多いように思います。

これらの曲を聞きながら今回はお別れです。多分結婚式の歌の辺りで時間切れになると思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Baltic Voices~Lithuania 4分28秒、2分11秒、36秒、46秒、1分28秒、2分30秒>

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年5月15日 (月)

ベラルーシの伝統音楽

ゼアミdeワールド57回目の放送、日曜夕方に終りました。17日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。今回もユネスコ盤の現地録音が中心ですので、youtube捜索は困難、もしくは多分データ自体無いと思いますので、似たイメージの曲をアップしておきます。

今回はベラルーシの音楽を聞いてみたいと思います。
ロシア、ウクライナと東スラヴの一角をなし、昔は「白ロシア」と呼ばれました。昨今はヨーロッパ最後の独裁者の話題が記憶に残り、戦中のパルチザンやチェルノブイリの原発事故など、悲劇的な印象も強い国ですが、地方色豊かな民謡や民話の宝庫として知られています。ベラルーシ語は、言語的にはロシア語とウクライナ語の中間に位置づけられます。
昔から日本ではベロルシアを訳した白ロシアとも呼ばれ、ソ連崩壊から20年以上経った今も、ほぼその名前通りのベラルーシと呼ばれています。国名の由来は、13~16世紀のモンゴルによる支配の、所謂「タタールのくびき」の頃に、モンゴル人が中国から学んだ文化である「方角を色で呼ぶ方法(五行思想)」をルーシ(ロシア)に持ち込んだため、赤ルーシ(南部ルーシすなわち現在のウクライナ西部)、白ルーシ(西部ルーシすなわち現在のベラルーシ)、黒ルーシ(北部ルーシすなわち現在のモスクワ周辺)という名称が生まれ、そのうちの白ルーシ(ベラルーシ)が国名として残った、とされています。ウクライナには小ロシアという一種の蔑称もありました。
ウクライナの北に位置し、東はロシア、西はポーランド、北はバルト三国のリトアニアとラトヴィアに接するこの内陸国で私がまず思い出すのは、第二次大戦中に東進するナチスドイツに相対し、全ベロルシアが一枚のパルチザン部隊となって戦い、国民の4人に1人が命を落としたと言われる、熾烈を極めた対独レジスタンスについてです。タイトルを忘れてしまいましたが、ナチスとの死闘を描いた映画が80年代にありました。
ベラルーシの音源は、ウクライナと同じくフランスのユネスコ・コレクションから一枚ありまして、最近になってロシアのメロディアからソ連時代の1962年~1986年録音の2枚組も登場しました。

GUDA: Belarusian Spring folk song "Oh, you white birch!" (белорусская народная песня)

ストラヴィンスキーの「春の祭典」のような、キリスト教化以前のペイガン(異教的)な雰囲気を感じさせる映像ですが、ここで出てくる民謡は、正にユネスコ盤に入っているようなタイプです。

ユネスコ・コレクションの方には、その第二次大戦中のパルティザンの歌が2曲入っておりますので、まずそれをかけてみます。女性達の合唱は「兵士の帰還の喜び」を歌っていますが、やはりこのトラックがこの盤の白眉のように思います。

<ベラルーシの伝統音楽~第二次大戦中のパルティザンの歌 6分52秒>

ベラルーシのユネスコ・コレクション盤は、南部のポレシエ地方の民謡が集成されていて、この地方はプリピャチ川の流域にあたる森林に覆われた地方で、伝統的な色彩の強い素朴で美しい歌が残っていた所です。ベラルーシ統一以前の古い歌や、コサックの多声歌なども収録されています。この盤の最初を飾っているクリスマス・キャロルと新年の歌を次にかけてみましょう。プリピャチと聞くと、チェルノブイリに近いというイメージがありますが、原発事故以前のこの録音からはその影響は当然感じられず、この長閑さには"伝説・昔話と歌の国"といわれた詩情豊かな国民性が確かに表われているように思います。

<ベラルーシの伝統音楽~クリスマス・キャロルと新年の歌 4分10秒>

バラードと題する歌唱では、コサック歌謡を思わせるポリフォニックな合唱を聞かせています。

<ベラルーシの伝統音楽~バラード 3分58秒>

露Melodiyaの2枚組からも特徴的な重唱を一曲かけておきましょう。ユネスコ盤にも似たタイプのロンドがありますが、近い音程で2つの声を合わせる歌声がとてもインパクト大です。曲名は和訳するなら「谷は深く、霧は広がっている」となると思います。歌唱はAnna KulakovskayaとAnton Makhnachという事ですので、男女の重唱でしょうか。Gomel地方の歌とあります。

<Anthology of folk music. Spirit of folk ~ BELARUS The Valley is wide, the Mist is spreading. 1分55秒>

最後に、スクリプカというヴァイオリンの独奏と、器楽演奏も多い「祭の歌と踊り」5曲をかけてみますが、歌では東スラヴそのものなのに対して、器楽の響きはロシアと言うより、どこかポーランドかスカンジナヴィアの音楽に近いものすら感じさせます。因みに、ロシア語でもヴァイオリンはスクリプカと言います。これらの曲を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<ベラルーシの伝統音楽~スクリプカの小曲 43秒>
<ベラルーシの伝統音楽~祭の歌と踊り 7分46秒>

Belarus Folk Music

器楽も同じ曲はないと思われますので、とりあえずこちらを。途中3分前辺りから打弦のツィンバロムが弾いている耳馴染みの旋律は、ロシアの「行商人」です。他は大体ベラルーシの音楽だと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年5月 8日 (月)

エチェル村の結婚式

ゼアミdeワールド56回目の放送、日曜夕方に終りました。10日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。

前々回に作者不詳のチャールダッシュハ短調という曲をかけまして、ZeAmiブログでこの曲のyoutubeを何本か取り上げました。とても印象的なメランコリックな名旋律だったと思います。
ウクライナの次はベラルーシを予定していますが、その前に今回はチャールダッシュハ短調の入っていた「エチェル村の結婚式」(Ecseri Lakodalmas)を特集してみたいと思います。演奏はハンガリー国立民族アンサンブルで、彼らは1977年頃来日して、その舞台が当時テレビで放映されました。私はTVからカセットに録音しまして、今でも手元にあります。いつもこの番組のオープニングにかけているペルシア音楽の、ほぼ同じパーソネルの盤で初めて聞いたのが79年、その前の1977年に初めてハンガリー音楽を聞いたのがこの「エチェル村の結婚式」という事で、どちらも甲乙付けがたい程とても思い出深い一枚です。この録音は1996年にハンガリーHungarotonからCD化されております。今回はハンガリー音楽やアイヌ音楽の専門家として知られる谷本一之さんの名解説を参考にしながら進めたいと思います。77年リリースのビクターのLP解説を参照しております。
まず一曲目のゾルタン・コダーイ作曲のカーロー民族舞曲からどうぞ。解説は曲が終ってから入れます。

<エチェル村の結婚式~カーロー民族舞曲 6分27秒>
The Kálló Double Dance


この曲は1951年にコダーイがこのアンサンブルのために作曲した曲で、ジプシー楽団の演奏スタイルを念頭におきながら、それを一回り大きくしたアンサンブルと混声合唱のために書かれた舞踊曲です。使われている民謡はコダーイが1938年にハンガリー東部のサボーチ・サツマール県のノジュカーロで収集したもので、曲名はこの地方名から来ています。

次は2曲目に入っている「セークの音楽」です。セークというのは、今はルーマニア領になっているエルデーイ地方のコロジュヴァールに近い村ですが、このトランシルヴァニアのエルデーイ地方というのは、三方を山に囲まれて交通が不便なことが手伝って、最も古く伝統的なハンガリーの民族伝統が豊かに受け継がれている所として知られています。原曲はライタ・ラースローが1940年頃に収集し1954年に出版したセーク・コレクションから選ばれていて、この楽団の音楽監督グヤーシュ・ラースローが編曲を手掛けています。

<エチェル村の結婚式~セークの音楽 6分48秒>
Music from Szék


そして続けて出てくるのが、作者不詳のチャールダッシュハ短調でした。冒頭のメランコリックな旋律と、速い部分での火花を散らすようなジプシー・ヴァイオリンの名人芸が聞き所ですが、先の2曲のような素朴な民族音楽と比べると、その洗練具合がよく分るかと思います。再度かけてみます。

<エチェル村の結婚式~チャールダッシュハ短調 2分44秒>
Csárdás in c-moll


この後、ビンの踊り、糸つむぎ部屋の夜、リストのハンガリー狂詩曲2番(96年のCDではイムレ・チェンキのハンガリーのジプシーの踊り)と続きますが、時間の関係で割愛しまして、その次に入っているのが、自身の楽団を率いて世界的に活躍したジプシーの名ヴァイオリニストで、チャールダッシュの前進の後期ヴェルブンコシュ音楽の代表的作曲家だった19世紀初頭のビハリ・ヤーノシュを偲ぶ「ビハリの想い出」と言う曲です。彼は古い大衆歌曲をヴェルブンコシュの旋律として取り入れた大衆的な作曲家でしたが、ウィーン風なロマンティックな旋律の作曲家でもあったそうです。「ビハリの想い出」の中には彼の作品から5曲が取り上げられています。

<エチェル村の結婚式~ビハリの想い出 4分38秒>
In Memory of Bihari


8曲目には「3つの跳躍の踊り」が入っていますが、こちらも時間の関係で割愛しまして、その次にこのアルバムのラストを飾っているのが、アルバムタイトル曲の「エチェル村の結婚式」です。この曲を聞きながら今回はお別れです。ブダペストに近いエチェル村に伝わる結婚式の風習を基に人生を描いたマロシュ・ルドルフ作曲の創作舞踊の音楽です。ヴェルブンコシュやチャールダッシュなどが鏤められて紙芝居のように出てきます。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<エチェル村の結婚式~エチェル村の結婚式 12分22秒>
Wedding at Ecser

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年5月 1日 (月)

веснянка ヴェスニアンカ

ゼアミdeワールド55回目の放送、日曜夕方に終りました。3日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。今回はさすがにyoutubeはおそらくほとんど無いだろうと思いますので、見つかった曲だけ今週中に上げられればと思います。ヴェスニアンカも、放送でかけたような民謡原曲ではなく、アレンジが入って耳当りが良くなっています。2本ともアップした曲とは別です。

前々回に西ウクライナの音楽を取り上げましたので、今回はウクライナ音楽の4回目として、東部と北部を中心にクローズアップしてみたいと思っておりましたが、日本の倍近い面積の大きな国ですので、地方によって音楽も少なからず違っていて、その中では前々回のルーマニアやハンガリーの音楽に近い西ウクライナのブコヴィナやイヴァノ・フランキフスケ地方辺りの音楽が特に異彩を放っていました。何度か取り上げましたユネスコ・コレクションの「ウクライナの伝統音楽」では、各地方の音楽が混在していまして、それぞれがどの方面に当るか調べてみましたが、西ウクライナだけでも、他にポーランドに近い音楽があったり、かなり地方色が豊かなことが浮き彫りになってきました。

ユネスコ盤では、季節ごとの歌もまとめられていますので、順に取り上げてみたいと思います。ベラルーシやポーランドに近い北西部のリヴネ地方のヴェニスアンカと呼ばれる「春の歌」を4曲続けてかけてみます。

<ウクライナの伝統音楽~春の歌1 38秒>
<ウクライナの伝統音楽~春の歌2 1分12秒>

Веснянка - Ukrainian Dance


Веснянка - Побреду


次は中西部のジトミール地方の合唱で、南スラヴ系にかけてよく聞かれる独特の叫び声がつきます。

<ウクライナの伝統音楽~あの山の上に 58秒>

次はリヴネ地方のヴェスニアンカの合唱です。

<ウクライナの伝統音楽~牧人 1分35秒>

続きまして、「夏の歌」ですが、中西部のフメルニツキ地方の祭り歌の合唱です。

<ウクライナの伝統音楽~柳の近くの小川で 1分52秒>

次は中西部ジトミール地方の合唱で、聖ペテロの祭日(6月24日)の歌です。男も女もリボンや花で飾り立てて歌う求婚の歌でもあります。

<ウクライナの伝統音楽~今日は聖ペテロの日だ 1分21秒>

次は北部のチェルニヒヴ地方の収穫の歌で、畑で仕事をしながら歌われる昔からの形式を残した合唱です。

<ウクライナの伝統音楽~草を刈る人 1分41秒>

次は中西部ジトミール地方の合唱で、こちらも古風な儀礼的な歌の一つです。各節ごとに独特な裏声が入ります。

<ウクライナの伝統音楽~日没 1分15秒>

続きまして、結婚の歌も数曲入っております。まずは北部チェルニヒヴ地方の合唱で、花で飾られた式用の木を捧げての花嫁の行列のメンバーによって、東北ウクライナに典型的なスタイルで歌われています。

<ウクライナの伝統音楽~花飾りのために 1分22秒>

次は中西部フメルニツキ地方の女性合唱で、花嫁の髪をときほぐしながら歌われる儀式歌です。花嫁は生家を離れる悲しみに泣いていると言う内容で、日本の、金襴緞子の帯締めながら花嫁御寮は何故泣くの、と始まる「花嫁人形」をすぐさま思い出させます。

<ウクライナの伝統音楽~どうして嘆き悲しむの 2分16秒>

コサックの歌も入っておりまして、手回しヴァイオリンのハーディーガーディーを弾き語っています。ふくろうが戦場で死んだ一人のコサックについての知らせを彼の妻子に伝えるという歌です。

<ウクライナの伝統音楽~ふくろうよ、もう不吉を告げないで 3分35秒>

次は東北部のハルキフ地方に伝わる無伴奏の合唱による若い女性の嘆き歌で、コサック起源の旋律のようです。ウクライナ草原地帯の典型的な節回しです。

<ウクライナの伝統音楽~夜明けの母さん 1分31秒>

次はリイイ地方の野外での歌と踊りの曲で、ポーランド系のテンポ・ルバート風なポルカ・リズムが特徴的です。

<ウクライナの伝統音楽~広い流れのドナウで 1分18秒>

では、最後にウクライナ盤のヴェスニアンカを聞きながら今回はお別れです。女性のみの「春の歌」ヴェスニアンカをレパートリーの中心にしている、リヴネ地方のおそらく同名の合唱グループですが、これからかけます「オイ・ナ・ゴーリェ・イ・スーヒー・ドゥーブ」という曲はパブートヴァという別なジャンルになるようです。とても印象的な曲です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<ヴェスニアンカ/オイ・ナ・ゴーリェ・イ・スーヒー・ドゥーブ 3分>

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年4月24日 (月)

ハンガリーのチャールダッシュ

ゼアミdeワールド54回目の放送、日曜夕方に終りました。26日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。

前回ウクライナ西部のハンガリー系音楽としてチャールダッシュが出てきましたが、先日ラヂバリのパーソナリティTさんとやりとりしていて、チャールダッシュと言うのは、「モンティのチャールダッシュ」のみを指す固有名詞のように思われていて非常に驚いたことがありました。90年代に葉加瀬太郎さん他のクライズラー&カンパニー辺りが弾いてからでしょうか、日本で非常にポピュラーになりまして、チャールダッシュと言うとこのイタリアの作曲家モンティの書いた曲のみを指すように思われ勝ちのようにも思います。ですので、いつかチャールダッシュだけでやりたいと思っておりました。ハンガリーに回ってきたら、また改めて大きく取り上げたいと思いますが、今回はウクライナ音楽めぐりの途中でちょっと寄り道します。
チャールダッシュと言うのは、前回少しお話しましたが、19世紀前半のハンガリー独立戦争の頃に募兵活動の中で生まれた男性の踊りヴェルブンクが基礎になってヴェルブンコシュが生まれ、更にそれが居酒屋(チャールダ)で洗練されてチャールダッシュが生まれたとされています。ゆったりとした哀愁漂うラッサンの部分と、急速なフリスカの部分からなる舞曲で、ハンガリーのジプシー楽団が盛んに演奏し妙技を披露、19世紀にはヨーロッパ中で大流行し、ウィーン宮廷は一時チャールダーシュ禁止の法律を公布したほどだったそうです。そんなムーヴメントの中でドイツの大作曲家ブラームスのハンガリー舞曲や、サラサーテのツィゴイネルワイゼンが生まれています。ハンガリーから遠く離れたスペインの作曲家サラサーテが、何故チャールダッシュを書いたのか?と長年疑問に思っていましたが、そういう背景があったことを後で知りました。
まずは、ブラームスのハンガリー舞曲から有名な第5番と第1番を続けてかけてみましょう。カラヤン指揮ベルリン・フィルの定番です。個人的にはメランコリックな旋律美を極めている1番が、特にチェリビダッケ指揮の名演を聞いてから一番のお気に入りでした。

<ブラームス / ハンガリー舞曲 第5番 2分35秒>
Maxim Vengerov Brahms:Hungarian Dance No.5

現在のトップヴァイオリニストと言われるマキシム・ヴェンゲーロフの演奏。

<ブラームス / ハンガリー舞曲 第1番 2分52秒>
Khatia Buniatishvili, Yuja Wang - Brahms, Hungarian Dance No. 1

最近ホットな二人の女流ピアニストによるピアノ連弾版

第5番の曲自体はケーレル・ベーラのチャールダーシュ "Bartfai emlek" が原曲とされています。私の所属している弦楽合奏団でも5番は既に何度か舞台で弾きましたし、1番も猛練習しましたが、こちらはかなり難しくまだ舞台にはかけられておりません。
ジプシー楽団が演奏してきたチャールダッシュは、それこそ星の数ほどあるようで、ジプシーは通常楽譜に記録しないので、昔のチャールダッシュは忘れられているのかも知れません。ハンガリー舞曲の原曲もおそらく全ては分らないのではと思います。

次に作者不詳のチャールダッシュハ短調をかけてみましょう。こちらも非常に印象的なメランコリックな名旋律だと思います。演奏はハンガリー国立民族アンサンブルで、彼らは1977年頃来日して、その舞台が当時テレビで放映されました。この作者不詳のチャールダッシュは今でも親しまれているようで、youtubeで結構見ることが出来ます。それらはまたZeAmiブログで取り上げたいと思います。

<エチェル村の結婚式~チャールダッシュハ短調 2分44秒>
c-moll csárdás


モンティのチャールダッシュは、CDでは持ってなかったので、ツィゴイネルワイゼンを次にかけてみましょう。この曲も19世紀ヨーロッパでのチャールダッシュ大流行の中で生まれた一曲です。ロン=ティボー国際コンクールのヴァイオリン部門で日本人として初めて優勝した小林美恵さんのヴァイオリン独奏です。彼女の弾くヴォーン・ウィリアムズの「揚げひばり」目当てで入手した盤ですが、ツィゴイネルワイゼンやイザイの曲なども素晴らしい演奏です。

<サラサーテ / ツィゴイネルワイゼン  小林美恵 8分41秒 抜粋>
Csárdás - Vittorio Monti (Violin & Piano)

ツィゴイネルワイゼンはまた後日にして、放送でかけられなかったモンティのチャールダッシュをどうぞ。

次にライコー・ヤング・ジプシー楽団の演奏で、ハンガリーで一番大きなバラトン湖をテーマにしたイェネー・フバイ作曲の名曲「バラトン湖の波の上で」と言う曲をかけてみましょう。この曲もジプシー楽団がよく取り上げる曲で、チャールダッシュのラッサンの部分に当るような哀愁の名旋律です。ヴァイオリニストとしてのフバイはヴュータンやブラームスから称賛を受け、また彼の室内楽演奏のパートナーであるチェリストのダヴィッド・ポッパーは作曲家としても有名で、チェロの優れた難度の高いエチュードを沢山残していて、私もいくつか取り組んだことがあります。フバイの弟子にはヴァイオリンの巨匠ヨゼフ・シゲティや後に指揮者に転向したユージン・オーマンディがいます。

<チャールダッシュ・ラプソディー~Jeno Hubay / On the wave of the Balaton 6分50秒 抜粋>
Jenö Hubay "Hullámzó Balaton" Scènes de la csárda No.5 - "The waves of Lake Balaton"


では、最後にブラームスのピアノ四重奏曲第1番のラスト、第4楽章を聞きながら今回はお別れです。ジプシー風のロンドとブラームス自身によって銘打たれたこの情熱的な楽章故に、この曲は渋い室内楽の中では人気があります。ピアノがマルタ・アルゲリッチ、ヴァイオリンがギドン・クレーメル、ヴィオラはユーリ・バシュメト、チェロがミッシャ・マイスキーというオールスター級のメンバーが揃った名盤です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<ブラームス / ピアノ四重奏曲第1番 第4楽章 8分10秒 抜粋>
Brahms - piano quartet no 1 g-minor op 25 - Fauré Quartett

ピアノ四重奏専門の若手実力派、フォーレ四重奏団の演奏で、この曲の全曲。32分位からが第4楽章です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年4月17日 (月)

西ウクライナの音楽

ゼアミdeワールド53回目の放送、日曜夕方に終りました。私は16日夜のローゼン先生のクラスコンサートの打ち上げのため聞けておりませんが、いかがでしたでしょうか。19日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。youtubeは、フツルのトレンビータ、フツルカ、アルカンを中心に、カルパチアの方はハンガリー側の映像ですが、いくつか上げておきました。

ウクライナ音楽の3回目ですが、今回は西ウクライナの音楽をクローズアップしてみたいと思います。フランスのQuintanaから出ていた「カルパチアの伝統音楽」はタイトル通りで西ウクライナ音楽そのものですが、ユネスコ・コレクションの「ウクライナの伝統音楽」も、聞き返してみると西ウクライナの音源も多く、その華やかさから目立っています。
前々回にかけました美しい合唱音楽がどこで盛んなのかよく分りませんが、おそらく首都のキエフなどウクライナ中部辺りなのかなと思います。東の方ではコサックの音楽がよく知られますが、ポーランド、スロヴァキア、ハンガリーと接する西ウクライナの、特にブコヴィナ地方では、ハンガリーやルーマニアの音楽との類似が見られ、更にユダヤ音楽も少し出て来たり、とても魅力的な音楽の多い所だと思います。
まずは、ユネスコ・コレクションの「ウクライナの伝統音楽」から、「トレンビータの序曲」という曲をどうぞ。

<ユネスコ・コレクション「ウクライナの伝統音楽」 / トレンビータの序曲 54秒>
Hutsul trembitas (alphorns): greeting the shepherds from the highland


強烈な音でびっくりされた方も多いのではと思いますが、この笛は、カルパチア山脈の夏の牧草地ポロニーナに羊を移動させる時に吹き鳴らされてきた長いトレンビータと言うアルペンホルンの一種でした。家畜集めや村人へのシグナル、祭りなどに使われるようです。

次はトランスカルパチア地方の山人たちの舞曲で、打弦楽器のツィンバロム、ヴァイオリン、ソピルカ、トレンビータ、アコーディオンに鞭の音まで入ります。後半の速い踊りはアルカンとかドロボティアンカと呼ばれるものです。ルーマニアのジプシー楽団タラフ・ドゥ・ハイドゥークスの音楽に近い印象も受けます。

<ユネスコ・コレクション「ウクライナの伝統音楽」 / 羊飼いが出かける 6分32秒>

次はカルパチア山脈のトロイスタ・ムジカによる民族舞曲で、ヴァイオリン、ツィンバロム、バス・ドラムで演じられています。タイトルのフツルカのフツルと言うのは、ウクライナ西部山地のウクライナ系少数民族の名で、地方名でもありまして、フツル人という表記も見かけます。この曲は、フツルに多いルーマニア風のラプソディです。

<ユネスコ・コレクション「ウクライナの伝統音楽」 / フツルカ 4分21秒>
ПЕЧЕНІЖИНСЬКА ГУЦУЛКА. HUTSULKA from PECHENIZHYN.


ユネスコ・コレクション「ウクライナの伝統音楽」の西ウクライナ音源の最後は、アルカンと呼ばれる投げ縄の踊りの曲です。イヴァノ・フランキフスケ地方の民族アンサンブル“ヴェッセルカ”の演奏によるフツル舞曲です。これもルーマニアのジプシー楽団タラフ・ドゥ・ハイドゥークスの音楽を思い出させます。

<ユネスコ・コレクション「ウクライナの伝統音楽」 / アルカン 3分5秒>
Arkan | Hutsul circle dance | Initiation into warriors | Hutsuls | Ukrainian highlanders


次にQuintanaの「カルパチアの伝統音楽」ですが、この盤では西ウクライナのハンガリー系の音楽が中心になっています。前々回に結婚式のチャールダッシュのヴァイオリン独奏はかけましたので、他のチャールダッシュやその前進の舞曲ヴェルブンコシュをかけてみたいと思います。まずは、マジャール・ヴェルブンクという曲をどうぞ。

<Quintana「カルパチアの伝統音楽」 / Magyar Verbunk 2分4秒>
Szólótánc Gála - Magyar verbunk


ヴェルブンクと言うのは、19世紀前半のハンガリー独立戦争の頃に募兵活動の中で生まれた男性の踊りで、これが基礎になってヴェルブンコシュが生まれ、更にそれが居酒屋(チャールダ)で洗練されてチャールダッシュが生まれたという経緯があります。ヴェルブンクにはヴェルブンコシュになる前の、男性の荒削りな踊りの印象が強く残っているように思います。
次にマジャール・ヴェルブンクに続いてこの盤に入っているジプシーのチャールダッシュをかけてみたいと思います。ほとんど同じ旋律に聞こえますが、こちらではチャールダッシュになっています。

<Quintana「カルパチアの伝統音楽」 / Ciganycsardas 3分22秒>
Zurali Banda- Ciganycsardas


この盤にはユダヤの音楽も入っていましたので、次にマゼルトーフやホラなどのダンス曲をかけてみます。ハンガリー音楽のスタイルに乗せて、特徴的な哀感溢れるユダヤ・メロディがメドレーで出てきます。

<Quintana「カルパチアの伝統音楽」 / Mazeltof 2分37秒>

では、最後にQuintanaの「カルパチアの伝統音楽」のラストを飾っているチャールダッシュを聞きながら今回はお別れです。ヴァイオリン2本、アコーディオンとサックスの四重奏ですが、サックスがハンガリーのクラリネット系管楽器タロガトーのような柔らかく不思議な音色を出しています。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Quintana「カルパチアの伝統音楽」 / Csardasok 2分25秒>

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年4月10日 (月)

ドゥムキー、ドゥムカ、ドゥーマ

ゼアミdeワールド52回目の放送、日曜夕方に終りました。12日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。バンドゥーラ関係は原語で検索すればあるかも知れませんが、一番アップしたかったF.Jarko / Duma for Marussia of Bohuslavがありましたので、今日はこちらのみにしておきます。ウクライナの「心の歌」という印象です。

ウクライナ音楽の2回目ですが、今回はこの国を中心に一部のスラヴ民族の世界で民族歌謡として有名なドゥーマ、あるいはドゥムカを取り上げてみたいと思います。複数形のドゥムキーというタイトルでチェコの作曲家ドヴォルザークがピアノ三重奏曲を書いていますので、一般にはそれで知られているように思います。ドゥムカとは、ウクライナを中心に広まった民謡の一種で、日本では「哀歌」と訳されています。ドゥムキーと聞くと、深い表情のエレジー的な曲調が多いという印象があります。ですから先週かけましたナターシャ・グジーさんのバンドゥーラ弾き語りのウクライナ民謡「バンドゥーラを手にすれば」などは、典型的なドゥムカになると思います。
今日はフランスのOpus111から2000年に出ていた2枚組「ウクライナのドゥムキー」と、フランスのAuvidisの頃のユネスコ・コレクションの「ウクライナの伝統音楽」、ドヴォルザークのピアノトリオ「ドゥムキー」の順にかけてみますが、最初に「ウクライナのドゥムキー」からドゥムカを数曲続けてかけてみましょう。この盤では、1枚目がソプラノ歌手とピアノ伴奏でクラシックになったドゥムカが歌われていて、2枚目は民族音楽のドゥムカが色々と入っておりまして、2枚目を中心にかけます。

まずはバンドゥーラの甘く切ない音色が堪能できるウクライナ民謡変奏曲からです。演奏はKostyantyn Novytskyという人です。

<Kostyantyn Novytsky / Variations on Ukrainian Folk Themes 3分26秒>

次はElizabeta Sobchenkoという女性バンドゥーラ奏者のソロですが、Verkhovynaという、やはりエレジー的な曲で、The World of oursという英訳になっております。

<Elizabeta Sobchenko / Verkhovyna 3分11秒>

「ウクライナのドゥムキー」の2枚目からもう一曲、男性歌手の独唱とバンドゥーラ合唱団の演奏で「風は吹いている」という曲です。バンドゥーラ弾き語りの男性合唱と思われます。哀歌風な曲調が、いかにもドゥムカのイメージです。Valentyn Pyvovarovとウクライナ国立バンドゥーラ合唱団の演奏です。

<Valentyn Pyvovarovとウクライナ国立バンドゥーラ合唱団 / The wind is blowing 4分40秒>

1枚目のソプラノ独唱からも一曲かけておきましょう。オーソドックスなドゥムカを聞いた後なら、クラシックになっていてもドゥムカ本来の哀切さが感じ取れると思います。

<Olga Pasichnyk / Oh,Little Moon, You`d better not shine 3分>
Olga and Natalia Pasichnyk - There Stands A High Mountain - Ukrainian Song

他の曲ですが、同じ歌手のyoutubeがありました。

では次に、髭を蓄えたコサックの男性歌手が歌う渋い哀歌風なドゥムカのイメージの曲として、ユネスコ・コレクションの「ウクライナの伝統音楽」から、ボフスラフのマルーシャのドゥーマという曲をかけてみましょう。バンドゥーラの弾き語りでしみじみと歌われる、トルコに捕われたコサックの苦悩を歌った古い悲劇的なドゥーマです。

<F.Jarko / Duma for Marussia of Bohuslav 6分52秒>
Дума про Марусю Богуславку (Старовинна українська дума, XVIIст.)


では、最後にドヴォルザークのドゥムキーを聞きながら今回はお別れです。この曲はピアノ三重奏のスタイルで書かれています。ピアノトリオの編成は、ピアノとヴァイオリン、チェロの三重奏になります。スーク・トリオの名演で、ヴァイオリンはヨゼフ・スーク、チェロはヨゼフ・フッフロ、ピアノはヤン・パネンカです。この曲は6楽章まであって、全てドゥムカとして作曲されています。全曲は30分を越えますが、今回は第1楽章のみかけます。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<スーク・トリオ / ドヴォルザーク ピアノ三重奏曲第4番ホ短調「ドゥムキー」第1楽章 4分5秒>
Beaux Arts Trio plays Dvorak "Dumky" Trio, i

スーク・トリオのは見当たらないので、ボザールトリオで。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年4月 3日 (月)

ウクライナの伝統音楽

ゼアミdeワールド51回目の放送、日曜夕方に終りました。5日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。今日はウクライナの合唱曲「ドニエプルは轟き悲しむ」と、ナターシャ・グジーの「バンドゥーラをてにすれば」を目立たせたいので、この2本だけにしました。

今回からこの番組も2年目に入りました。本年度もどうぞ宜しくお願いします。
寒い間は寒い国の音楽と言うことでロシアの音楽を色々廻ってきました。大分暖かくなって来ましたが、まだまだ旧ソ連圏の音楽巡りは続けようと思います。ロシア、ウクライナ、ベラルーシの東スラヴ系の後は中央アジアやコーカサスの方に向かう予定です。ロシアの音楽も、先週のウラル・アルタイ関係もまだまだ音源は膨大にありますが、とりあえず今回はウクライナに廻ってみようかと思います。ロシアと同じ東スラヴ系で、やはり合唱の素晴らしさが目立ちます。ロシア音楽と少し違う独特な叙情性があって、それが聞きものです。吟遊詩人が弾き語る小型ハープのような弦楽器バンドゥーラや、スラブ人の伝統のバラッド形式の民族歌謡ドゥーマ、あるいはドヴォルザークの作品にもなっているドゥムキーでも有名です。
まずは、フランスのPLAYA SOUNDから出ていた名盤「ウクライナの声」というアルバムから3曲続けてかけたいと思います。ブルガリアン・ヴォイスとも少し似た女声合唱中心の一曲目に始まり、さかまくドニエプル川を描いた最後の曲は、とりわけ感動的な一曲です。タイトルがフランス語訳のみですので、曲名詳細は3曲目しか分りません。

<Ukrainian Voices~ 3分9秒、4分3秒、4分15秒>
Mighty Dnieper roars and bellows - English /Ukrainian/中文 subtitles

別団体だと思いますが、同じ曲がありました。

同じドニエプルの曲を、往年の赤軍合唱団も歌っていますので、次にかけてみます。ここでは「ウクライナの詩」と言うフランス語訳になっていました。こちらもドラマティックな悲愴美溢れる歌唱です。

<赤軍合唱団 / ライヴ・イン・パリ1960 ~ウクライナの詩 5分41秒>

次に日本でもお馴染みのウクライナ生まれの女性歌手・バンドゥーラ奏者、ナターシャ・グジーの歌唱で、有名なウクライナ民謡「バンドゥーラを手にすれば」です。哀愁を帯びたバンドゥーラの響きと、美しい歌声に魅了される一曲です。

<ナターシャ・グジー / セルツェ ~バンドゥーラを手にすれば>
バンドゥーラを手にすれば ナターシャ・グジー


ウクライナは広大なので、地方によって音楽もかなり違いますが、ハンガリーやルーマニアに近い西ウクライナの音楽は、これらの国の伝統音楽にかなり似通っています。フランスのQuintanaから出ていた「カルパチアの伝統音楽」から、結婚式のチャールダッシュのヴァイオリン演奏をどうぞ。演奏者と曲目共にハンガリー語ですが、西ウクライナのブコヴィナ地方での録音のようです。

<カルパチア山脈の伝統音楽 ~En kismadar letemre, Lakodalmi csardasok 1分13秒、4分24秒>

同じく西ウクライナのブコヴィナの音楽ですが、打弦楽器のツィンバロム伴奏で、女性歌手オクサーナ・サヴチュクが歌っている「You are a Green Land, Bukovina」は、タイトル通りブコヴィナ民謡のようです。音階などが東欧系ユダヤのクレズマーにかなり似てきます。この曲を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Oksana Savchuk and Ivan Kavatsyuk / Pysanka ~You are a Green Land, Bukovina 4分4秒>

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年3月28日 (火)

ヴォルガ中流域のウラル・アルタイ系少数民族

ゼアミdeワールド50回目の放送、日曜夕方に終りました。3月29日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。youtubeには、まず同じ音源はないと思いますので、近いものをまず一本アップしておきます。そもそも、2007年に当ブログを始めたのも、ヴォルガ中流域から北コーカサスにかけての調査が最初のきっかけでしたから、「ウラル・アルタイ」のキーワードでは大分前に色々書いております。先週後半以降、またもやトラブルでほとんどまともにPCを使えない状況でしたが、諸悪の根源のマ◎フィーを遂に卒業し、PC動作は劇的に軽くなりました。
 
今回はロシアの少数民族の音楽を少し聞いてみたいと思います。モスクワから東に1000キロ程行った辺りのヴォルガ河中流域は、ウラル・アルタイ系民族の自治共和国が幾つかありまして、インド・ヨーロッパ語族に属するスラヴ系のロシア人とは全く異なる少数民族が多く住んでいるのは余り知られていないことだと思います。ウラル山脈から東側のシベリアなら容易にイメージ出来ると思いますが、西側のヨーロッパ・ロシア内にもこれらのアジア系などの民族が沢山います。古代の民族大移動やモンゴル帝国の征服の痕跡が今も生々しく残っています。アルタイ系のタタールなどでは、5音音階の東洋的な旋律も多く、中国かモンゴルの音楽と聞き間違えるほどです。ウラル系では、日本の民謡にそっくりな歌もあります。

最初にかけますハンガリーのHungarotonから出ていた「ヴォルガ-カマ地域のフィン・ウゴルとトルコ系諸族の伝統歌」について、何度かこれまでにも出てきました音楽之友社の「世界の民族音楽ディスクガイド」に書いた拙稿を読み上げてみます。

ヴォルガ中流域やウラルはもはやヨーロッパではなくアジアである。アルタイ語族のトルコ系や、ウラル語族のフィン・ウゴル系の言葉を話す少数民族が沢山いる地域だが、これは1958~79年にコダーイの弟子であるLaszlo VikarとGabor Bereczkiの2人のハンガリー人研究者によってタタールやマリ、チュヴァシ、ウドムルトの各自治共和国で収集された録音集。
Votyak,Cheremis,Chuvash,Tatarの諸族の民謡や踊りの曲等。さすがマジャール民謡のルーツをこの地に探ったバルトークの頃からの伝統で、録音も良いのでこの地域に興味を持つ人には貴重な資料になるだろう。住民の服装はロシア風ながら、節はマジャールに近い。日本人からも遠くない印象を受ける東洋風な歌も多い。

非常に興味深いエリアですが、音楽的にはかなり地味でもありますので、この放送ではごくごくかいつまんで取り上げることにします。まずは、ハンガリーやフィンランド、エストニアなどのルーツに当るウラル系民族のエリアから始めます。
ハンガリーの民族的ルーツを辿るとヴォルガ中流域のチェレミス(現在はマリ共和国)や西シベリアのハンティ・マンシに当るとされますが、チェレミスの民謡で結婚式の歌を2曲続けてどうぞ。

<チェレミスの結婚式の歌 2分27秒、34秒>
Ансамбль народной песни «Эренер» отметил 20-летний юбилей - Вести Марий Эл

同じ曲ではありませんが、マリ・エル(チェレミス)の民謡の現在を垣間見れる一本。

次に現在はウドムルトと呼ばれているヴォチャークの民謡ですが、イースターの歌をどうぞ。

<ヴォチャークのイースターの歌 1分3秒>

同じ盤から、アルタイ系になりますが、チュヴァシのパンケーキ・デイの歌をどうぞ。パンケーキ・デイとは、四旬節の初日である灰の水曜日の前日の火曜だそうです。

<チュヴァシのパンケーキ・デイの歌 1分9秒>

同じ盤から、やはりアルタイ系ですが、タタールのティン・ホイッスルと、クライと呼ばれる倍音豊かな縦笛の吹奏を2曲続けてかけてみます。東洋的な旋律で、民謡の尺八に似て聞こえます。

<タタールのティン・ホイッスルとクライ 1分43秒、2分1秒>

続いて、オランダのレーベルPanから出ていたMother Volgaにもヴォルガ・フィン語派の音源がありますので、その中から再度チェレミス(マリ)の民謡でAn old slow songと言う女性の重唱をどうぞ。アコーディオンと打楽器の伴奏で歌われています。この辺の人々の風貌共々、やはり東洋か西洋か、判別の難しい音楽です。

<Mother Volga - Music of the Volga Ugrians ~An old slow song 3分37秒>

同じMother Volgaにはアルタイ系のチュヴァシの音源も入っておりまして、その中からグースリ独奏で「古いマーチ」と言う曲をどうぞ。グースリは一般にはロシアの伝統楽器として知られるツィター系弦楽器です。この曲はアルタイ~トルコ的な感じは全くしない曲です。

<Mother Volga - Music of the Volga Ugrians ~An old march 2分50秒>

同じくチュヴァシのグースリ演奏ですが、次の結婚式の曲では対照的にアルタイ~トルコ的な感じが強く感じられます。この旋律はどこかで聞いたことがありますが、思い出せません。何か懐かしい感じのメロディです。歌入りヴァージョンと続けてどうぞ。

<Mother Volga - Music of the Volga Ugrians ~Lyrical Wedding Melody, Lyrical Wedding Song 2分5秒、1分32秒>

では、最後にアルタイ系のタタールスタンの女性歌手F.スレイマノヴァの独唱を聞きながら今回はお別れです。露Melodiyaから最近出たヴォルガ・タタールの民謡2枚組の冒頭を飾る東洋的な美しい旋律です。タイトルのSahralardaは、英訳ではIn the fieldsとありました。スレイマノヴァの名前の通りでタタールではイスラム教徒が多く、一方それ以外のアルタイ系とウラル系ではキリスト教徒が多いようです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Folk Songs of Volga Tatars ~F.Suleymanova / Sahralarda(In the fields) >

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年3月20日 (月)

ヴィソーツキーの「大地の歌」

ゼアミdeワールド49回目の放送、日曜夕方に終りました。3月22日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。先週後半はPCのトラブルでほとんどブログにはタッチ出来ませんでしたm(_ _)m 「大地の歌」の「奴は戦闘から戻らなかった」以外は、また後日探してみます。

前回ロシアのバルド(吟遊詩人)の音楽特集として、ウラディーミル・ヴィソーツキーとブラート・オクジャワを中心に、エレナ・カンブローヴァの歌もかけました。日本では80年代に新星堂オーマガトキから出ていたヴィソーツキーの「大地の歌」が一番知られていると思いますので、その音源もかけたかったのですが、手元にはレコードのみで、CDで再発された時に手に入れてなかったので前回は外しました。CDも既に大分前に廃盤のようですが、LP音源をMP3にしてアイフォンに入れてありましたので、今回はその中から数曲かけてみます。
まずは、一曲目の「奴は戦闘から戻らなかった」からです。針を落として聞いた時の、この歌のインパクトがまず第一にあります。詩の一、二連目は以下のようになっております。翻訳は宮沢俊一氏です。口語調が上手くヴィソーツキーの世界を捉えていると思います。

なぜどこが違うのか、大体はいつもの通りなのに
空も同じ、また晴れている
森も同じ、空気も同じ、水も同じなのに
ただ奴だけが戦闘から戻らなかった

俺には今や分らない、俺たちのどっちが正しかったのか
よく夜を徹して論じ合ったものだったが
俺は初めて奴の存在を感じている
奴が戦闘から戻らなかった今になって

<ウラディーミル・ヴィソーツキー / 大地の歌~奴は戦闘から戻らなかった 3分14秒>
Владимир Высоцкий - Он не вернулся из боя (Текст)


次は「黒マント隊」という曲です。詩の一連目は以下のようになっております。

俺達が残してきたのは崩落と日没だけ
ああ、せめて僅かでいい
目に見えなくていいから飛翔が欲しい!
信じたいものだ、わが黒マント隊の面々が
俺に今日、日の出を見る可能性を与えてくれることを

<ウラディーミル・ヴィソーツキー / 大地の歌~黒マント隊 3分31秒>

次は「愛し切れなかった」という曲です。大事な箇所と思われる詩の一、七連目は以下のようになっております。

誰かが果実を見つけた
それは熟れていない、熟していない
木をゆすると、それは落ちてしまった、こぼれてしまった・・・
これはある人についての歌、
その人は熟せなかった、歌えなかった
声を持っていたのに、気付かなかった、気付かなかった

彼は何でもかんでも知ろうとした
だが、何もかも中途半端
何事も底まで行かない
深さにまで達し切れない
しかも唯一の彼女をも
愛し切れなかった、愛し切れなかった

<ウラディーミル・ヴィソーツキー / 大地の歌~愛し切れなかった 4分48秒>

次は「俺はマガダンに行ったぜ」という歌です。カムチャツカ半島に近いシベリア極東の流刑者の強制収容所があったことで知られる町ですが、やはり過酷な北の果てのイメージで歌われています。余談ですが、ロシア・ジプシーの名歌手ワヂム・コージン(1903-94)は、スターリンの時代にシベリア流刑されてマガダンで亡くなっています。新宿ゴールデン街の店、ガルガンチュアの女主人兼歌手の石橋幸(みゆき)さんの自主制作レーベルはマガダンという名前で、彼女はワヂム・コージンの歌もよく歌われています。
詩の一、二連目は以下のようになっております。

お前、俺が齢にふさわしくねぇってか
俺はめったに心を打ち明けねぇが
お前にはマガダンの話をしてやるぜ。よく聞けよ!
俺はながーい湾を見たんだ、道もな
ただ何となく行った訳じゃねぇぜ

ある日、俺はマガダンに行った訳よ
自分を忘れたかった、病気を忘れるように
だからすぐとことん飲んだぜ。 ウォトカを!
でも俺はながーい湾を見たんだ、道もな
ただ何となく行った訳じゃねぇぜ

<ウラディーミル・ヴィソーツキー / 大地の歌~俺はマガダンに行ったぜ 1分55秒>

youtube音源ですがヴィソーツキーの歌の最後にgori-gori-moya-zvezdaをかけてみたいと思います。前にドン・コサック合唱団の歌唱でかけた古いロマンス(語り歌)で、和訳は「輝け、私の星よ」となります。この曲の歌詞ですが、「君は私にとって、胸に秘めた、たった一つの輝ける星。もし私が死んでも、私の墓の上でいつまでも輝き続けておくれ」という内容でした。ヴィソーツキーの弾き語りも実に心に沁みる歌唱です。

<ウラディーミル・ヴィソーツキー / gori-gori-moya-zvezda 1分22秒>
Высоцкий "Гори, гори моя звезда..."


ブラート・オクジャワの歌唱も少し聞いておきたいと思います。これからかけますのは、「ヴォロージャ・ヴィソーツキーについて」と言う曲で、14歳年長のオクジャワよりずっと早くに若くして亡くなった後輩ヴィソーツキーへの追悼曲です。妻のマリナ・ヴラディに捧げられています。タイトルのヴォロージャと言うのはウラディーミルの愛称形です。

<ブラート・オクジャワ / Sur Volodia Vissotski 2分30秒>
Булат Окуджава - О Володе Высоцком


では、最後に女性歌手エレナ・カンブローヴァの歌を聞きながら今回はお別れです。3曲目の「手品」という曲だけ前回かけられなかったので、今回は5曲目のマレンキー・プリンツと併せてかけたいと思います。こちらも繊細でリリカルな良い曲です。マレンキー・プリンツは、英訳はLittle Princeですから、サン=テグジュペリの「星の王子さま」のことだと思われます。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<エレナ・カンブローヴァ / 「手品」2分19秒、「マレンキー・プリンツ」3分27秒>
Елена Камбурова Маленький принц

「マレンキー・プリンツ」は放送ではほとんどイントロだけで終ってしまいましたので。これがフルバージョン。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

その他のカテゴリー

J.S.バッハ | New Wave-Indies | アイヌ | アメリカ | アラブ | アラブ・マグレブ | アルゼンチン | イギリス | イスラエル | イスラム教 | イタリア | イディッシュ | イラン地方音楽 | インディアン、インディオ | インド | インドネシア | インド音楽 | ウイグル | ウラル・アルタイ | エジプト | エチオピア | オペラ | オーストラリア | オーストリア | キリスト教 | ギリシア | クルド | クレズマー | ケルト | コンサート情報 | コーカサス (カフカス) | サハラ | シベリア | シャンソン | ジャズ | スイス | スペイン | スポーツ | スーダン | セファルディー | ゼアミdeワールド | チェロ | トルコ音楽 | ドイツ | ナイル・サハラ | ナツメロ | ニュース | ハシディック | ハンガリー | バルカン | バルト語派 | バロック | パキスタン | ビザンツ音楽 | フランス | フランス近代 | ブラジル | ペルシア音楽 | ペルシア音楽 トンバク | ユダヤ | ユダヤ音楽 | ルーマニア | レビュー | ロシア | ロシア・マイナー | ロマン派 | ヴァイオリン | 中南米 | 中国 | 中央アジア | 仏教 | 仏教音楽 | 北コーカサス(カフカス) | 北欧 | 南アジア | 南インド古典音楽 | 古楽 | 地中海 | 室内楽 | 弦楽合奏 | 弦楽四重奏 | 後期ロマン派 | 文化・芸術 | 新ウィーン楽派 | 旅行・地域 | 日記・コラム・つぶやき | 映画・テレビ | 東アフリカ | 東南アジア | 東方教会 | 東欧 | 歌謡曲・演歌 | 民謡 | 独墺 | 猫・犬 | 現代音楽 | 童謡、わらべうた | 筝曲 | 純邦楽 | 西アフリカ | 西スラヴ | 韓国