ゼアミdeワールド

2020年4月 6日 (月)

アリフ・サーのバーラマ

【重要なお知らせ】3日に通知がありまして、FMラヂオバリバリでも感染拡大防止のため4/6(月)からスタジオを閉鎖することになりました。再開予定は4/20(月)とのことですが、状況をみながら延期になるかも知れないようです。このため、ゼアミdeワールドも12日(再放送15日)と19日(再放送22日)放送分はお休みになります。代わりにミュージックバードの番組が流れます。ブログは番組と連動させてきましたので、飛び飛びになると思います。自前のミキサーがあれば、データをメールで送って放送することも可能ですが、急な話ですので、今の所スタジオ再開まで待機する予定です。生放送の帯番組とデータ搬入番組は、上記期間中も放送されます。

ゼアミdeワールド207回目の放送、日曜夜10時にありました。8日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今日はバーラマの独奏だけにして、他の曲は、また後日探します。アリフ・サー、サウスポーだったのですね。動画を見て分かりました。

トルコの24回目になります。今回からトルコの民謡の方を取り上げていきます。トルコの伝統的な民謡と器楽で最も有名な盤は、ウスクダラの入った「トルコの民謡~ウミット・トクジャン、アリフ・サー、メフメット・オズベック」だと思いますが、私が持っているのは88年に出た「黒海吟遊 トルコ音紀行」です。現在のキングWRMLのシリーズと音源は同じです。ウスクダラを歌うウミット・トクジャンと、サズの名手アリフ・サーは特に有名で、アリフ・サーはハルク伴奏のトルコ盤でも何点か手元にあります。
まずはトルコ軍楽のジェッディン・デデンと並んで、おそらくトルコの曲で最も有名なイスタンブール民謡のウスクダラからおかけします。80年代頃はウシュクダラと呼ばれることが多かったので、この盤でもその表記になっています。アリフ・サーのバーラマ伴奏です。前回言いましたように、サズは小さいものから順にジュラ、バーラマ、ディヴァンと呼ばれます。撥弦楽器ですが、古典音楽ではウードやタンブールが中心でしたが、民謡ではほとんどがサズです。

<1 Üskdara 3分2秒>

2曲目はアリフ・サーのバーラマ独奏による13分近いメドレーです。自由なリズムのゆっくりした即興から一転して速い名人芸的な部分に入って行きます。アンカラの4拍子の踊りの曲、アンカラの9拍子の民謡「私のアリー、バザールに行かないで」、デニズリ地方の2拍子の踊りの曲と移っていきます。名人芸とサズの音色をたっぷりご堪能下さい。

<2 Bağlama Solo 12分47秒>

Arif Sağ - Bağlama Solo [ Reis Çelik Arşivi © 1986 Tüplü TV ]


一曲飛ばしまして、4曲目の「チェチェンの娘」と言う曲ですが、タンブーリ・ジェミル・ベイの同名の曲とは別で、トルコ東北部、黒海沿岸のトラブゾン地方の民謡です。馬の扱いが上手く、美人が多いことでも有名なトルコに住むチェチェン人を描写した民謡です。

<4 The Girl Of The Çeçen Tribe 2分48秒>

では最後に、3曲目の「鶴は寂しく空を飛ぶ」と言う曲を聞きながら今回はお別れです。クルシェヒル地方の民謡で、異郷から飛来した鶴に、失った愛を訴えていると言う内容で、歌詞のメジュヌーンとは中東の名高い悲恋物語「ライラとマジュヌーン」のマジュヌーンを指していて、恋に狂い沙漠を彷徨った主人公をモデルにしています。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<3 "Garip Turnalar (Foreign Cranes)" 6分7秒>

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2020年3月30日 (月)

ドニゼッティ・パシャ、アルバトロス盤

ゼアミdeワールド206回目の放送、日曜夜10時にありました。1日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。アルバトロスの方は、同じ音源はおそらく見当たらないと思います。女性音楽家ディルハヤット・カルファはまた後日と言うことで、今日はドニゼッティ・パシャのみにします。

トルコの23回目になります。オスマン音楽が長くなりましたので、そろそろトルコの民謡の方に移ろうかと思いますが、その前に2曲ほどまだ取り上げてなかったオスマン古典音楽の音源をご紹介します。

「愛の妙薬」や「ランメルモールのルチア」など、イタリア・オペラの作曲家として有名なガエターノ・ドニゼッティの兄であるドニゼッティ・パシャは、オスマン朝に招かれて西洋音楽を本格的に導入した人として知られています。イェニチェリ軍楽隊の廃止の後、新たに宮廷軍楽隊を指導するため、在イスタンブールのサルディニア大使館を通してスルタンに招かれ、1828年から68歳で亡くなるまで28年間をイスタンブールで過ごしました。本名はジュゼッペ・ドニゼッティですが、パシャの称号を付けて呼ばれるのが常になっています。後にオスマン帝国の事実上の国歌となったマーチなどを作曲し、その功によりパシャの称号を与えられたとのことです。
ドニゼッティ・パシャの名前は知っていても、音源は聞いたことがなかったのですが、未入荷アイテムのデータをアップルミュージックで一曲見つけましたので、その曲をおかけします。Ensemble Bîrûn & Kudsi Ergünerの演奏で、曲名はŞevk-efza Peşrevです。いかにもオスマン軍楽らしい一曲です。アルバムタイトルはCompositori alla corte ottomanaというイタリア盤です。

<Ensemble Bîrûn & Kudsi Ergüner / Şevk-efza Peşrev 3分19秒>

Şevk-efza Peşrev


オスマン古典音楽には、これまでにかけてない音源に土Sonyの「トルコ古典音楽作曲家シリーズ」や「オスマンのモザイク」シリーズなど、色々ありますが、きりがないので、ユダヤ系、アルメニア系、ギリシア系、女性作曲家作品集が出ている「オスマンのモザイク」シリーズの中から、女性作曲家作品集の一曲をおかけしておきます。前回「ハーレムの歌」という盤を取り上げましたが、関係がある作曲家もいるのではと思います。セリム3世の時代に王宮で活躍した18世紀の女性音楽家ディルハヤット・カルファが最も有名な人で、混声合唱付きのサバー旋法のベステ「Yek Be Yek Gerci Merami Dil-I」がありますのでおかけします。

<2 The Government Chorus Of Ministry Culture / Yek Be Yek Gerci Merami Dil-I 7分33秒から3分位>

この後はトルコの民謡と地方音楽に移ります。最初におかけするのは、2002年にキングレコードから出たイタリアのアルバトロス名盤復刻30選の一枚「トルコの歌と音楽」です。まだ関東にいた頃に、プロデューサーの星川京児さんとキングの担当者から依頼を受けまして、私がこの盤とユダヤ音楽の盤、2枚のライナーノーツの翻訳を担当しました。原盤は1978年のイタリア盤で、解説はイタリア語から英語に翻訳されていましたが、ラテン系の言葉からの少々癖のある英訳で、なかなか手強かったのを覚えています。このシリーズは現在は全て廃盤ですが、サンプル盤で30枚全て手元にあります。オスマン音楽や軍楽も入っていますが、民謡と民俗音楽(フォークミュージック)のみおかけします。

まずは周辺部の変わり種の音楽ですが、トルコの後で取り掛かるギリシアの音楽とも繋がりのあるトルコ東北部のグルジアに近い黒海沿岸のホロン・ダンスの音楽です。この地に住むギリシア系のポントス人の伝統的な8分の7拍子の踊りで、アルメニアのドゥドゥクに似た柔らかい音色のダブルリード管楽器メイと、バスドラムのような大型両面太鼓ダウルによる演奏です。ホロン・ダンスは、細長い「黒海のケメンチェ」 (カラデニス・ケメンチェ)で演奏されることが多いので、メイによる演奏は珍しいように思います。

<9 サディ・テルネズ / アルドヴンのホロン・ダンス 1分41秒>

次は一つ戻って8曲目の「ギリシアのチフテテッリ・ダンス」です。ホロン・ダンスと似ているのは、管楽器とダウルという編成ですが、ジプシー音楽家らしく管楽器がここではクラリネットに変わります。ベリーダンスのレパートリーとしても知られるチフテテリの原義は「二重の弦」という意味です。トルコ中部カッパドキアのユルギュプには1923年までギリシア人が多く住んでいて、この曲はその頃演奏されていた旋律に基づくので、「ギリシアの」の意味のルーメリの名が付いています。

<8 ハイダル・チェヴィク / ギリシアのチフテテッリ・ダンス 3分6秒>

これまで放送とブログ共に何度か出てきたカルシラマは、チフテテリと同じでトルコ中西部辺りの踊りですが、ゼイベクはエーゲ海に近い西部の方に特徴的な舞踊曲になります。「古いアラブのゼイベク・ダンス」という曲が入っていますので、こちらをおかけします。瓢箪を共鳴胴にしたフィドル、カバク・ケマンと、一番小さいサイズのサズのジュラの組み合わせの珍しい演奏です。

<13 イドリズ・ケスキン / 古いアラブのゼイベク・ダンス 1分22秒>

ラストの14曲目はアルハヴィ地方の踊りというケメンチェ独奏の曲です。トルコ東部と言うことで、音の印象はホロンと同じくギリシアやクレタの音楽に近い感じもありますが、民族的にはトルコに住む南カフカス系のラズ族との関係が深いようです。

<14 ハサン・トゥルナ / アルハヴィ地方の踊り 3分54秒>

踊りの曲が続きましたので、サズ弾き語りの民謡「ダマスカスのピスタチオ」をおかけして、最後はトルコ西部の羊飼いの笛を聞きながら今回はお別れです。サズは小さいものから順にジュラ、バーラマ、ディヴァンと呼ばれ、ここで弾かれているのはバーラマ・サズです。羊飼いの笛の名前はカヴァルで、バルカン半島でも愛好されている歌口のない素朴な縦笛です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<12 イブラヒム・ケペトチオール / 民謡「ダマスカスのピスタチオ」 2分21秒>

<10 レシャト・ウイサル / アフシャルの遊牧民の旋律「羊のために」 2分40秒>

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2020年3月23日 (月)

「ハーレムの歌」Ensemble des Femmes d'Istanbul

ゼアミdeワールド205回目の放送、日曜夜にありました。25日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。「ハーレムの歌」からEnsemble des Femmes d'Istanbulの演奏で1曲目と、放送でかけられなかった2曲目が見つかりました。

トルコの22回目になります。今回はトルコの古典音楽の範疇になりますが、90年代にフランスのAl Surから「ハーレムの歌」という音源が出ていましたので、こちらをご紹介したいと思います。演奏しているのは、イスタンブール女性アンサンブルというオスマン音楽の器楽と声楽のグループです。カーヌーン2台、ウード、タンブール、ケメンチェ各1本に、女性歌手4人という編成です。

ハーレムと言うと官能的なイメージがありますが、元々はイスラム社会における女性の居室のことで、その場所にいる女性の夫・子や親族以外の男性は、立ち入りが禁じられた場所を指します。ほぼ同じ意味の「後宮」は世界中に存在し、皇帝や王などの后妃が住まう場所を指し、日本なら江戸城の大奥や平安京内裏の七殿五舎が該当します。

ハーレムはトルコ語に近い音で発音すればハレムとなります。トルコ語のハレムは、アラビア語のハリーム、ないしはアラビア語では聖地を指す語であるハラームがなまった言葉です。ハリーム、ハラームとも原義は「禁じられた(場所)」という意味があります。オスマン帝国のハレムについてのウィキペディアの記事を引用してみます。興味深い情報が色々書かれています。

「オスマン帝国の君主は4代バヤズィト1世以来、キリスト教徒出身の女奴隷を母として生まれたものが多く、そもそも君主権が絶頂化して有力者との婚姻が不要となった15世紀以降には、ほとんど正規の結婚を行う君主はいなかった。オスマン帝国のハレムには美人として有名なコーカサス出身の女性を中心とする多くの女奴隷が集められ、その数は最盛期には1,000人を越えたとされる。
戦争捕虜や、貧困家庭からの売却によって奴隷身分となった女性たちはイスタンブールで購入されると、イスタンブールの各所に置かれた君主の宮廷のひとつに配属され、黒人の宦官によって生活を監督されながら、歌舞音曲のみならず、礼儀作法や料理、裁縫、さらにアラビア文字の読み書きから詩などの文学に至るまで様々な教養を身につけさせられた後、侍女として皇帝の住まうトプカプ宮殿のハレムに移された。ムラト3世の治世では本だけ絶対に持ち込むことができなかった。
ジャーリヤ(女奴隷)と呼ばれる彼女らの中から皇帝の「お手つき」になったものはイクバル(İkbal、幸運な者)、ギョズデ(Gözde、お目をかけられた者)と称され、私室を与えられて側室の格となる。やがて寵愛を高めたものはハセキ(Haseki、寵姫)、カドゥン(Kadın、夫人)などの尊称を与えられ、もっとも高い地位にある者はバシュ・カドゥン(Baş Kadın、主席夫人)の称号をもった。さらに後継者となりうる男子を産めばハセキ・スルタンと呼ばれるが、皇帝は原則として彼女らと法的な婚姻を結ぶことはなく、建前上は君主の奴隷身分のままであった。スレイマン1世の夫人ヒュッレム・スルタン(ロクセラーナ)は元キリスト教徒の奴隷から皇帝の正式な妻にまで取り立てられた稀有な例である。」

この盤は作者不詳の曲がほとんどで、たおやかで優美な音楽が続きます。全10曲入っていますが、ウードのタクシームに続いて有名なウスクダラが出てくる8曲目からまずおかけしたいと思います。トルコでの例を知ると、日本の後宮である大奥でどんな音楽が奏でられたのかも気になってきますが、おそらくトプカプ宮殿などのハレムで演奏されたのだろうと想像しながら、聞いてみて下さい。

<8 Ud Taksim [Ille de Mavili / Üsküdar'a Gider İken Aldı da Bir Yağmur] 6分43秒>

このグループは何と18世紀に結成されたという女性のみのアンサンブルで、ハレム内でオスマン古典音楽のファスルを演奏してきたようです。伝統保護のため、ほとんど門外不出と思われ、そのようにおそらく今も男子禁制の音楽が、中東や地中海世界の伝統音楽に強いアル・スールのおかげでなされた録音だったと思います。

こちらも現物が売り切れているので取り上げていませんが、米Traditional Crossroadsからは「スルタン、スーフィー、ハーレムの音楽」という4枚のシリーズがありまして、オスマン音楽には歴代スルタンの作曲家が多いのと、ハレムもオスマン音楽の重要な場所だったことが窺えます。ハレムや後宮は、欧文ではSeraglioという語が当てられることも多いです。余談ですが、モーツァルトのオペラ「後宮からの誘拐」もセラリオが舞台でした。

次の9曲目はケメンチェのタクシームに始まり、女性のたおやかな独唱が続きます。

<9 Kemençe Taksim [Dönülmez Akşamın Ufkunda] 6分25秒>

ラストを飾っている10曲目「私の愛に微笑むためにこの世界に来た」という曲では、4人の歌手が揃い、華やかに盛り上げています。

<10 Dünyaya Geldim Gülmek Için 4分29秒>

この後は、1曲目に戻ってかけてみますが、アルバム全体の雰囲気は最初の曲に表れているように思います。英訳を邦訳すれば「あなたの魅力は、まだ私の心の中にあります。私の師よ」と言う曲です。

<1 Çikmaz Derunu Dilden Efendim Muhabbetin 3分25秒>

Ensemble des Femmes d'Istanbul - Cikmaz Derunu Efendim Muhabbettin


2曲目の「来てこれらの薔薇の顔(かんばせ)を楽しみ、そのワインを味わって下さい」では、4人の歌唱で始まった後で、メリスマを効かせたとても美しい独唱が続きます。
この曲を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<2 Gül Yüzlülerin Sevkine Gel Nus Edelim Mey 6分26秒>

Ensemble des Femmes d'Istanbul - Gül Yüzlülerin Sevkins Gel Nus Edelim Mey

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2020年3月16日 (月)

サフィイェ・アイラとネスリン・シパヒ

ゼアミdeワールド204回目の放送、日曜夜にありました。18日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今日はサフィイェ・アイラのみにしまして、ネスリン・スィパヒはまた後日。

トルコの21回目になります。今回はトルコの古典音楽からサナートの女性歌手二人、サフィイェ・アイラとネスリン・シパヒの音源をご紹介したいと思います。
まずは1910年前後の生まれで98年に亡くなった、トルコの名女性歌手サフィイェ・アイラですが、この人の音源は土Kalan Muzik Yapimの「トルコ歌謡の伝説」2枚組を初め、トルコCoskun(ジョシュクン)のCile BulBulum CileとYanik Omerなどがありますが、ヤヌク・オメルだけ手元に残っていますので、こちらからご紹介します。
サフィイェ・アイラはトルコ現代歌謡の元祖的な歌手の一人で、トルコ共和国の初代大統領ケマル・アタテュルクのお気に入り歌手だったエピソードは有名です。妖艶で繊細極まりない歌声の持ち主で、この盤はウッシャーク、ムハッイェル、ヒュセイニ等の旋法で書かれたシャルク(歌曲)を中心に、ウード、カーヌーン、ケマンのタクシームも挿まれています。
最初のウードのタクシームから始まる数曲が非常に美しいので、続けておかけします。彼女はウード奏者のシェリフ・ムヒッディン・タルガン(Şerif Muhiddin Targan)と1950年に結婚して1967年まで一緒に活動していたそうですので、このウード・ソロは彼女の夫かも知れません。彼はイラクに招かれた1930年代にはバグダッド音楽院の学部長になり、ここからは後にウード名人のムニール・バシールが出ています。夫の死後はハルクやポップスも歌ったということですので、これまでに何度かかけたウスクダラは、この頃の録音になるでしょうか。この盤のジャケットには若くて美しいサフィイェ・アイラが写っています。

<1 Safiye Ayla / Yanik Ömer ~Ud Taksimi 2分7秒>

<2 Safiye Ayla / Yanik Ömer ~Aşkından Sen Nasıl Bıktın 3分23秒>

Safiye Ayla - Aşıkından sen nasıl bıktın



<3 Safiye Ayla / Yanik Ömer ~Kanun Taksimi 1分8秒>

<4 Safiye Ayla / Yanik Ömer ~Titrer Yüreğim 2分56秒>

もう一曲、この盤からタイトル曲のヤヌク・オメルもおかけしておきます。オスマン音楽の歌と器楽の素晴らしさが凝縮された一曲と言えると思います。

<7 Safiye Ayla / Yanik Ömer ~Yanık Ömer 3分39秒>

Safiye Ayla - Yanık Ömer


もう一人の女性歌手ネスリン・シパヒですが、クドゥシ・エルグネルのアンサンブルとの共演盤がドイツのCMPから91年に出ておりまして手元にありますので、こちらからご紹介します。シャルクからサナート、更には軽古典的な歌唱を聞かせるこの人の活動全盛期は50年位前になると思いますので、ベテランの域に達してから、洗練されたエルグネルのアンサンブルと共演した話題盤だったと思います。オスマン音楽の格調高さと「艶」を感じさせる歌唱を味わえる一枚です。因みに、彼女はクリミア・タタールの血を引く家系とのことです。一曲目のシェヴキ・ベイ作曲のウッシャーク旋法のシャルク「誰もあなたの絶望的な叫びを聞くことができない」をまずどうぞ。

<1 Nesrin Siphahi & The Kudsi Erguner Ensemble / Sharki: Love Songs Of Istanbul ~Kimseler Gelmez Senin Feryadi Ates Barina 4分6秒>

5曲目の3拍子の曲も印象的で、オズベハン作曲のサバー旋法のシャルク「おお、風よ、私はいつ愛する人と一緒になれる?」という曲です。

<5 Nesrin Siphahi & The Kudsi Erguner Ensemble / Sharki: Love Songs Of Istanbul ~Ey Bad-I-Saba Yar Ile Vuslat Ne Zamandir 4分3秒>

では最後に、ラストを飾っているサーデッティン・カイナク作曲のセガー旋法のシャルク「それは風のように儚いと思った」という曲をおかけします。タンブールのタクシームに始まるセガー旋法のデリケートで移ろいやすい感じは、とてもオスマン音楽らしく思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<13 Nesrin Siphahi & The Kudsi Erguner Ensemble / Sharki: Love Songs Of Istanbul ~Bir Ruzgardir Gelir Gecer Sanmistim 5分9秒>

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2020年3月 9日 (月)

オスマン・トルコのセファルディー系カントール

ゼアミdeワールド203回目の放送、日曜夜にありました。11日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今日はイサーク・アルガズィのみにします。シュクリュ・トゥナルはまた後日。放送でガザルのことを「恋愛を主題にしたペルシアの定型抒情詩」と原稿を書いてあったのに、間違えて叙事詩と読んでいました。お詫びして訂正いたします。

トルコの20回目になります。今回もトルコの古い録音ですが、まず米Rounderの「トルコ音楽の巨匠たち」の1枚目から抜粋しておかけします。
まずは、ZeAmiブログで予告しておりましたトルコのスペイン系ユダヤ人のカントールの録音からおかけします。1枚目に2曲収録されているイサーク・アルガズィ・エフェンディは、1889年トルコのイズミールで生まれ、1950年ウルグアイで客死したラビでありカントール(ユダヤ教の礼拝堂シナゴーグでの合唱長)でした。オスマン帝国崩壊の1920年代にはセファルディー系カントールとして右に出る者がないと言われていた存在で、ヘブライ語でネイーム・ズミロット・イスラエル(Sweet Singer of Israel)と呼ばれた人です。独Wergoと土Kalan Muzik Yapimの音源に入っているユダヤ教の歌でもウードやカーヌーン伴奏のいかにもオスマン・トルコ的なマカームに則った見事な歌唱を聞かせますが、ラウンダーの1枚目に入っている曲はオスマン音楽のガゼルとシャルクになるようです。ガゼルとは、恋愛を主題にしたペルシアの定型抒情詩ガザルから来ています。トルコ語の曲名は長くて読みが難しいので省きますが、ガゼルとシャルクを続けておかけします。

<4 Isak el-Gazi / Bî-karar olmaktı sevmekten murâdı gönlümün (gazel) 2分50秒>

Isak El-Gazi - Bî-karâr olmaktı sevmekten murâdı gönlümün (Hicâz Gazel)


<10 Isak el-Gazi / Bir katre içen çeşme-i pür-hün-i fenâdan (şarkı) 3分48秒>

この盤には、他にサフィイェ・アイラの歌唱が2曲、ミュニール・ヌーレッティン・セルチュクの歌唱が1曲、ギュリスタン・ハヌムの歌唱が1曲、Hafız Burhan Sesyilmazもクルドの山歌ではないオスマン古典曲が1曲、タンブーリ・ジェミル・ベイのヤイリ・タンブールのタクシームやウーディ・マルコ・メルコンのタクシームなどが入っていますが、いずれも今回は省きまして、前回のラストにかけましたシュクリュ・トゥナルのクラリネットをフィーチャーしたチフテテリもありますので、こちらをおかけしたいと思います。まず前回10秒ほどしかかけられなかった第2集の素晴らしいTaksim: Makam Rastを全てかけてから、1枚目のチフテテリまで続けておかけします。

クラリネットはベリーダンスやトルコのジプシー音楽などに盛んに用いられますが、微分音をコントロールした驚異的な超絶技巧を披露していると思います。

<23 Şükrü Tunar / Taksim: Makam Rast 3分16秒>

<11 Şükrü Tunar / Klarnet Çiftetelli 2分43秒>

もう一枚予定しておりました米Traditional Crossroadsからの「イスタンブール1925」もシュクリュ・トゥナルのクラリネットで始まります。この人の生没年は1907-62年で、ジプシーの出身とのことです。サナートの有名な歌手ゼキ・ミュレンのバンドリーダーをしていたそうです。一曲目のヒュッザム旋法のタクシームをおかけします。

<1 Şükrü Tunar / Huzzam Taksim 3分20秒>

主にジプシーの踊りのリズムであるチフテテリを、前に取り上げました盲目のアルメニア系ウード名人ウーディ・フラントが弾いているトラックがありますので、そちらをどうぞ。

<4 Udi Hrant / Cifte Telli 3分11秒>
 

米Rounderの「トルコ音楽の巨匠たち」の1枚目は、歌ものに比重が置かれていますが、Traditional Crossroadsからの「イスタンブール1925」は、器楽が多く収録されていて、とりわけシュクリュ・トゥナルのクラリネットが最初と最後を飾った上に、合計4曲も入っています。Suzinak旋法のタクシームとKarslamaを時間まで聞きながら今回はお別れです。
カルシラマは2+2+2+3の9拍子ですが、ゼイベクやゼイベキコとは別で、トラキアの土地と関係が深い舞踊のリズムです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<10 Şükrü Tunar / Suzinak taksim 3分18秒>

<11 Şükrü Tunar / Karslama 3分9秒>

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2020年3月 2日 (月)

Rounder「トルコ音楽の巨匠たち」Vol.2

ゼアミdeワールド202回目の放送、日曜夜にありました。4日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今日の動画はHamiyet Yücesesだけにしておきます。

トルコの19回目になります。今回もトルコの古い録音ですが、米Rounderの「トルコ音楽の巨匠たち」の2枚目から抜粋しておかけします。
ラウンダーの「トルコ音楽の巨匠たち」の2枚は、個人的には先に入手したのもありまして、96年に出たVol.2の方が印象が強いのですが、この盤には、前にウスクダラをかけましたサフィイェ・アイラに始まり、タンブーリ・ジェミル・ベイとメスード・ジェミルの親子、アルメニア系ウード奏者のウディ・マルコ・メルコン、大歌手ミュニール・ヌーレッティン・セルチュク等、SP時代の貴重音源がたっぷり入っています。

最もポピュラーなサフィイェ・アイラの歌うイスタンブール民謡ウスクダラから再度おかけしたいと思います。日本でも江利チエミが50年代にカバーしたので、年配の方はご存知かと思います。

<1 Safiye Ayla / 'Kâtıbim' Türkü. Makam Buslik or Nihavend 3分21秒>

これまでに度々名前が出てきたイスマイル・ハック・ベイ自身の貴重な音源も一曲入っております。ケマン(ヴァイオリン)、カーヌーン、ウードの伴奏でネヴァー旋法のガゼルを歌っています。イスマイル・ハック・ベイは1866年生まれで1927年に亡くなっているので晩年の録音だと思いますが、ハーフズらしい輝かしい歌声を聞かせています。

<2 Hafız İsmail Hakkı Bey / 'Ey melek rahi hayatta' Gazel. Makam Neva 3分9秒>

次の3曲目に入っている曲は、どこかモロッコやアルジェリアなどマグレブのアラブ・アンダルシア風に聞こえる旋律ですが、アナトリア方言のトルコ民謡だそうです。もしかしたらシリア辺りにあったアンダルシア音楽が流れて行ったのでしょうか? ステージの上で歌う民謡と言うことで、アーバン・テュルキュという表現がされています。これも驚きの一曲です。

<3 Muzaffer Akgün / 'Ha bu diyar' Türkü. 3分12秒>

この盤で特に強烈な印象を受けたのが10曲目の女性歌手ハミイェト・ユジェセスの歌声で、驚異のロングトーンを聞かせています。ハジ・アリフ・ベイ作曲のシャルクとありますので、オスマン古典音楽の歌唱になります。

<10 Hamiyet Yüceses / 'Bakmıyor çeşmi siyah' Şarkı. (Hacı Alif Bey) Makam Nihavend 3分34秒>

Hamiyet Yüceses - Bakmıyor çeşmi siyah (Taş plak)


11、12曲目と、オスマン音楽らしいサナートの艶美な歌唱が続きますが、似た路線ですので、前回オコラ盤のズルナとナッカーレだけの伴奏でおかけしました女性歌手グリスタン・ハニムの歌唱が入っていますので、こちらをおかけしておきます。こういうタイプがオスマン古典音楽に入るのだとしたら、どういう場で演奏されたのか、気になるところです。

<13 Gülistan Hanım / 'Seni gördükçe titriyor yüreğim' Şarkı. Makam Hicaz 3分33秒>

ウードやネイの独奏もありますが、古典音楽の楽器の中で、カーヌーンは余り取り上げたことがないので、Kanuni Ahmet Beyの独奏を一曲おかけしておきます。関東にいた頃、90年代にウードを世話してくれた知人がやっていたので見せてもらったことがありまして、琴のような音ですが、各弦にトルコ音楽の微分音を出すためのアジャスターがびっしりついていたのを覚えています。

<18 Kanuni Ahmet Bey / Taksim: Makam Şehnaz 2分47秒>

古典音楽が多い中で、ウスクダラや3曲目と並んでトルコの民謡(ハルク)の音源も若干ありますので、おかけてしおきます。Darülelhanという女性歌手が、ケマン(ヴァイオリン)の伴奏で歌っています。フリーリズムでたっぷりコブシを効かせています。

<17 Darülelhan / 'Turnalar' Halk mûsıîsi 2分44秒>

では最後にラストを飾っているシュクリュ・トゥナルのクラリネットの独奏を時間まで聞きながら、今回はお別れです。クラリネットはベリーダンスやトルコのジプシー音楽などに盛んに用いられます。管楽器のことはよくは分かりませんが、微分音をコントロールした驚異的な超絶技巧を披露しているのではと思います。

何度もかけているタンブーリ・ジェミル・ベイとメスード・ジェミル親子の音源などは外しましたが、それでも注目音源が多いので今回は2枚目からの抜粋だけで終わってしまいました。米Rounderの「トルコ音楽の巨匠たち」の1枚目と、米Traditional Crossroadsからの「イスタンブール1925」は、次回に回したいと思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<23 Şükrü Tunar / Taksim: Makam Rast 3分16秒>

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2020年2月24日 (月)

オコラのArchives de la musique turqueから

ゼアミdeワールド201回目の放送、日曜夜にありました。26日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。Ocora盤そのものの音源は見つからず、Gulistan Hanimのみ該当曲がありました。

トルコの18回目になります。今回は何枚かのトルコの古い録音から抜粋しておかけしますが、音源は仏OcoraからのSP復刻の「トルコ音楽の記録」の2枚、米Rounderからの「トルコ音楽の巨匠たち」の2枚、米Traditional Crossroadsからの「イスタンブール1925」辺りです。割と最近にHONEST JON'S RECORDSから出た「To Scratch Your Heart  Early Recordings From Istanbul」の2枚組は現物が手元にないので、今回は見送るかも知れません。

オコラの「トルコ音楽の記録」に入っているのは、ハーフズ・メフメト・ベイ、アブラハム・カラカフ(あるいはジャラジャフ)・エフェンディ、メスード・ジェミル・ベイ、グリスタン・ハニム、カーヌーニ・ハジ・アリフ・ベイ、ヴィクトリア・ハニム、フェルヤディ・ハーフズ・ハック・ベイ他で、オスマン朝の古典音楽から、軍楽、クルドの歌などがあります。録音は1904~30年頃です。

まずは1曲目で、コーラン朗誦者ハーフズの称号を持つ男性歌手メフメト・ベイの歌唱で、サバー旋法のガゼルをどうぞ。最初を飾る素晴らしい歌声です。

<1 Hâfiz Mehmet Bey / Gazel, Makam Saba 2分57秒>

多くのオスマン音楽家がそうですが、ハーフズ・メフメト・ベイも、まず軍楽の中で鍛えられたようです。次は3曲目のオスマン軍楽のファンファーレですが、管楽器のみで打楽器抜きの演奏は、現代では珍しいように思います。演奏はゴールドベルク・オーケストラです。

<3 Orchestre Goldberg / Kanto 3分1秒>

7曲目で歌っているハーフズ・ブルハン・セスィイルマズは、ジプシーの血を引く歌手で、宗教歌から世俗音楽に転向し、イスマイル・ハック・ベイにもついたそうですが、ここで歌われるのは、ヒュセイニ旋法のクルドの山歌(Daghi Song)です。クルドの歌らしいフリーリズムから始まる高く張った歌声を聞かせます。この人は1943年演奏中に心臓発作を起こし、46歳の若さでなくなりました。

<7 Hâfiz Burhân Sesyiklmaz / Chant Populaire Daghi, Makam Huseyni 2分6秒>

10曲目はズルナとナッカーレだけの伴奏で女性歌手グリスタン・ハニムが歌っていますが、こういうタイプは現在は聞けない珍しい音楽のようです。地方の大衆歌謡になるようです。(エロティックな猥歌の類かも)

<11 Gulistan Hanim / Kanto【粉屋さん粉屋さん、ほら私の黒髪、あなたにあげる】(Gulistan hanim/ 1905) 3分7秒>

Gulistan Hanım - Değirmenci Kantosu [ Kantolar © 1998 Kalan Müzik ]


主にオリエンタル・ダンス(あるいはベリーダンス)の伴奏に使われるチフテテリもありまして、100年前の音源と言うのは貴重だと思います。クラリネット奏者を初め、演奏者名は伏せられています。

<15 Anonyme / Cifte Telli 3分11秒>

このオコラの2枚シリーズが出た95年頃は、まだ珍しかったメスード・ジェミルのタンブール独奏の音源も一曲入っています。タクシームの旋法はスズナークで、敬称の「ベイ」が名前の後に付いています。

<18 Mes'ud Cemi Bey Tel / Taksim Au Tanbur, Makam Suznak 2分44秒>

1集の音源が続きましたが、このArchives de la musique turqueの2集からも2曲ほどかけたいと思います。ギリシア系の女性歌手には、スミルナ派のレベティカと区別がつかないような歌唱もありますが、特に珍しいのがラストを飾っている「ペリヴァンの踊り」という曲で、ズルナとケトルドラムのナッカーレがレスラー(ペリヴァン)を鼓舞する曲とのことです。歌っているヤクーミ・エフェンディは、ジプシーの血を引くそうです。トラキアとルメリアのグレコ・ローマンのレスリングとありますので、もしかしたらギリシアとローマの文化が混交しているこの辺りがレスリングの発祥地でしょうか? グレコ・ローマンと言うのは、現在のオリンピックなどでも普通に聞く用語です。同じトルコでも東アナトリアのイランの近くになると、この種の音楽もイランのズルハネに近くなるようです。

<21 Yakumi Efendi - Pehlivan havasi (1903) 1分57秒>

では最後にユダヤ系の男性歌手アブラハム・ジャラジャフ・エフェンディの歌唱を時間まで聞きながら、今回はお別れです。この人の歌は1集にも入っていましたが、2集の8曲目が少しトルコのカントール風にも聞こえ、興味深いものがありました。8分の9拍子のアクサクのリズムで書かれた、ラスト旋法のシャルクです。
アメリカ盤の3枚の古い録音は、次回に取り上げたいと思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<8 Abraham Caracach Efendi / Şarkı, Makam Rast 3分59秒>

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2020年2月17日 (月)

トラキアの伝統音楽(THRACE - Sunday Morning Sessions)

ゼアミdeワールド200回目の放送、日曜夜にありました。19日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今日はとりあえずプロモーション映像(だと思います)だけ上げておきます。

トルコの17回目になります。記念すべき200回目と言うことで、今回はトルコ周辺の音楽で最近特に驚いた一枚をご紹介したいと思います。
世界的名チェリスト、ジャン=ギアン・ケラスがイランやギリシアの音楽家と共演した「トラキアの伝統音楽(THRACE - Sunday Morning Sessions)」と言う盤ですが、似たようなアプローチで思い出すのは、NHKの新シルクロードでお馴染みのヨーヨー・マとシルクロード・アンサンブルで、クラシックの音楽家で非西洋の音楽に目を向けるのは、今回もチェリストだったという印象を強く持ちました。

ジャン=ギアン・ケラス(Jean-Guihen Queyras)は、カナダのモントリオール出身でフランスのチェリストです。フランスの現代作曲家ピエール・ブーレーズが創設したアンサンブル・アンテルコンタンポランの首席チェロ奏者を1990年から2001年まで務め、バッハなどバロックの作品から現代作品までの名演を数多く残しています。

共演しているのは、ペルシア音楽だけでなく東地中海諸国の伝統音楽とコラボを重ねている、イランのトンバクとダフの奏者ケイヴァン・シェミラーニ、ビジャン・シェミラーニの兄弟と、偶然にも前回取り上げたギリシアのリラ奏者ソクラテス・シノプーロスも参加しています。

まずは、チェロとトンバクの重厚な音色がよくマッチしている2曲目のNihavent Semaiをおかけします。旋法名になっているニハーヴェントは、ササン朝ペルシアがアラブに敗れた古代イランの地名として名高く、それがオスマン古典音楽の楽曲形式サズ・セマーイと結びついた、悲しくも美しい旋律を聞かせる曲です。

<2 Nihavent Semai 7分9秒>

Thrace - Sunday Morning Sessions inaugura temporada musical 2016/17 na Gulbenkian


トラキアと言うのは、バルカン半島南東部の歴史的地域名で、現在は3か国に分断され、西トラキアがブルガリアの南東部とギリシア北東部の一部に、東トラキアがトルコのヨーロッパ部分になっています。いずれもオスマン帝国の版図に入っていましたから、今回取り上げるのはとてもタイムリーなように思います。

ユダヤのクレズマーに似ているギリシアの舞踊ハサピコは今回初登場ですが、ギリシアのカルシラマースと関係のあるトルコのカルシラーマの話は先週出たばかりです。こういう舞曲がトラキアの土地ととても関係が深いため、アルバムタイトルが「トラキア」になったようです。その2曲ハサピコとカルシラーマという曲がありますので、続けておかけします。

<10 Hasapiko 5分57秒>

<11 Karsilama 3分15秒>

トラキア周辺は古代においてはギリシアとペルシアが争っていた辺りで、現在もヨーロッパとアジアの接点に位置します。世界でも稀なほど複雑で洗練された奏法と重厚な音色が特徴のトンバクは、現代トンバク奏法の父、ホセイン・テヘラーニの意思を継ぐ一人、ジャムシド・シェミラーニとその息子ケイヴァン・シェミラーニ、ビジャン・シェミラーニの二人がメインストリームにいると言っていいと思います。少し和太鼓にも似て聞こえるこの片面太鼓の音は、東地中海諸国の様々な伝統音楽に上手く溶け込み、この盤以外にも注目作を連発してきました。

余談ですが、ゼアミdeワールドのテーマ曲として最初にかけているアブドルワハブ・シャヒーディーの曲の冒頭に出てくるのが、ホセイン・テヘラーニのトンバクです。実は95年にイラン人の先生から少し教わったことがあるので、トンバクの難しさと素晴らしさはよく知っているつもりです。

4曲目のZarbi é Shustariではトンバクが華々しく古典的フレーズで伴奏しますが、サントゥールとセタールの名人のモハマド・レザ・ロトフィが書いたと思しきこの曲は、往年のセタールとヴァイオリンの名人アボルハサン・サバーの音楽を思わせるものがあり、ヴァイオリン(ここではリラですが)の演奏は、イランと言うよりトラキア風に聞こえる、と解説にはあります。

<4 Zarbi é Shustari 6分14秒>

では最後にトンバク(あるいはザルブとも)の妙技をじっくり聞ける8曲目のDast é Kyanを時間まで聞きながら、今回はお別れです。「トンバクの神様」ホセイン・テヘラーニの意思を受け継ぐシェミラーニ兄弟による超絶のトンバク・デュオです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<8 Dast é Kyan 7分7秒>

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2020年2月10日 (月)

ゼイベクとゼイベキコ

ゼアミdeワールド199回目の放送、日曜夜にありました。12日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。

トルコの16回目になります。今回はオスマン音楽の曲名によく出てくるゼイベクと、ギリシアの舞踊ゼイベキコの関係を探ってみたいと思います。今日の2本以外は、また後日。

オスマン古典音楽を聞いていて、曲名にギリシアの舞踊と関連のあるゼイベク(あるいあはゼイベキ)とか、ベリーダンスと関連する舞踊チフテテリの名が出てくるのが、少々意外に思われる方もいらっしゃるのではと思います。

ギリシアのZeibekiko(ギリシア語:Ζεϊμπέκικο)は、オスマン大衆音楽の影響を強く受けたギリシアにおける貧民層のサブカルチャーだった音楽、レベティカとともに踊られた踊りと言われます。

一方、ゼイベクはトルコの西アナトリアに特有の踊りで、ギリシアのゼイベキコはトルコ・アナトリア西部のゼイベクに由来する踊りです。リズムが特徴的で、ゆっくりとした9拍のリズム・パターンが多く、多くは4分の9拍子=2+2+2+3拍ですが、3+2+2+2拍の変化形も見られます。

これは推測ですが、今のトルコの場所が「トルコ化」するのは、オスマン朝以前のセルジュク朝が興った11世紀頃からで、セルジュク朝以前のトルコの場所は、長らくビザンツ帝国でしたからギリシア系住民が多かったはずなので、ゼイベクもその頃のギリシア系舞踊にルーツを辿れるのかも知れません。

まずは、タンブーリ・ジェミル・ベイのTraditional Crossroadsからの1枚目に入っているZeibek Havasiからおかけします。2+2+2+3の9拍子がはっきり分かる踊りの曲です。

<7 Zeibek Havasi 3分39秒>

Tanburi Cemil Bey - Zeybek Havası - Kemençe – Ud [ Külliyat © 2016 Kalan Müzik ]


タンブーリ・ジェミル・ベイがケメンチェで弾いていたZeibek Havasiと全く同じ旋律を、現代ギリシアの歌姫ハリス・アレクシーウが歌っていますので、続いておかけします。伴奏のギリシアの代表的弦楽器は、明るい音色のブズーキで、トルコのサズ、レバノンやシリアのブズクと兄弟楽器になります。

<1 Xaris Alexiou / 23 Tragoudia ~Μαntalio (Mantalena) 3分>

Μανταλιώ ( Μανταλένα ) Χάρις Αλεξίου


ハリス・アレクシーウがレベティカやライカを歌った名盤タ・ツィリカには、2+2+2+3の9拍子とはっきり分かるカモマトゥと言う曲がありますので、併せておかけしておきます。これもゼイベキコになるのかと思いましたが、アレクシーウのベスト盤の中村とうようさんの解説によると、トルコのカルシュラーマがギリシアに根付いたカルシラマスの踊りのリズムのようです。

<1-2 ハリス・アレクシーウ / カモマトゥ 2分56秒>

タンブーリ・ジェミル・ベイの息子メスード・ジェミルの2枚組にも、ゼイベクと付く曲がありますので、2曲続けておかけします。最初がタンブールの独奏で、2曲目は民謡歌唱のような合唱で、どちらも1932年録音です。2曲とも2+2+2+3の9拍子とはっきり分かります。

<1-8 Nikriz Taksim Nikriz Zeybek (1932 Kahire Arap Musıkisi Kongresi Kayıtları) 2分45秒>

<1-10 Muhayyer Aksak Zeybek - Sarı Zeybek (1932 Kahire Arap Musıkisi Kongresi Kayıtları) 3分19秒>

1938年生まれのサズやタンブールの名手タリプ・オズカンのオコラ盤にもゼイベクがありましたので、一曲おかけします。タリプ・オズカンと言えば、サズの名人の印象が強いので、古典楽器のタンブールを弾いてもどうしても民謡系のニュアンスを感じてしまいますが、そこが面白い点でもあります。

<13 Talip Özkan / Makam Nikris: Taksim / Kordon Zeybeği (Açış) 6分3秒>

では最後に東地中海各国の擦弦楽器(フィドル)を集めたギリシアFMのコンピレーション盤から、ソクラテス・シノプーロスのリラ演奏でゼイベキコを時間まで聞きながら、今回はお別れです。リラは音と形共にトルコのケメンチェにそっくりの楽器です。

もし時間が余りましたら、ギリシア南部に浮かぶクレタ島のリラもおかけします。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<10 Sokratis Sinopoulos / Zeibekikos 3分>

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2020年2月 3日 (月)

Sama'i Nahawandとメスード・ジェミル

ゼアミdeワールド198回目の放送、日曜夜にありました。5日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。Gilles Andrieux & Kudsi Ergunerのサマーイ・ナハーヴァンドは見当たらないので、今日は一本だけにしておきます。

トルコの15回目になります。今回はトルコ音楽史上最高のタンブールの名手と言われるタンブーリ・ジェミル・ベイ(Tanburi Cemil Bey)の息子のメスード・ジェミル(Mesut Cemil)が書いたSama'i Nahawandから始めたいと思います。190回目の最後に少しだけかけたアラブ音楽の音源です。

演奏はパレスティナのウード名手シモン・シャヘーンで、90年代にドイツのCMPから出ていました。前にも言いましたが、シャヘーンは、シモンという名前の通り、パレスティナのキリスト教徒と思われます。

<6 Simon Shaheen / Turath - Masterworks of the Middle East Sama'i Nahawand 8分16秒>

Simon Shaheen - Sama'i Nahawand (Turath)


メスード・ジェミルのSama'i Nahawandはアラブ音楽でよく演奏される名曲で、トルコ音楽としての楽譜は持っていますが、何故かオリジナルのトルコ音楽の音源は余り聞いた記憶がありません。

一つだけ手元にあったのが、ネイのクドゥシ・エルグネルとフランス人のタンブール奏者ジル・アンドリューが共演した1992年のフランスAlSurのオスマン音楽の盤で、ネイとタンブールによるしっとりとしたオスマン音楽らしい好演ですので、こちらをおかけします。70年代からパリに拠点を置いていたクドゥシ・エルグネルと、Ocoraなどから音源のある巨匠タリプ・オズカンからサズ、バーラマやタンブールを教わったフランスの名手の共演です。

<3 Gilles Andrieux & Kudsi Erguner / Ottoman Classical Music  Nihavend Saz Semai 8分>

タンブールとチェロの名手にして作曲家でもあったメスード・ジェミル(1902-63)の音源は、20世紀に入って1930年代以降ですから意外にありまして、米Golden Horn Recordsの2枚や、30~50年代録音をセレクションした土Kalan Muzikからの2枚組などがあります。後者だけ手元に残っていますので、こちらからおかけしていきます。

タンブールの演奏では、父タンブーリ・ジェミル・ベイのヒジャズカルのサズ・セマーイがありますので、こちらをおかけします。

<1-6 Hicazkar Saz Semaisi Tanburi Cemil Bey (1932 Kahire Arap Musıkisi Kongresi Kayıtları) 3分9秒>

ここで催しの告知を入れます。

2017年の12月から毎偶数月に開催し、13回続きました終活カフェ@Cafe トーク・トークですが、セミナー担当者の多忙のため、今後は12月のみになりました。

今後は木曜公開練習の本来の目的に立ち戻って、弦楽四重奏の研鑽の場にしたいと思います。早速、第一回目の発表会を2月20日の同じ17時から開催致します。こちらでは私は主にヴァイオリンを担当しております。(毎偶数月にするかどうかは検討中です)

宜しければ是非お越し下さい。入場無料ですが、駐車場に限りがありますので、ご一報頂けましたら幸いです。

Cafe トーク・トーク
今治市北高下町2-1-7ハイツ近藤2の1階

以上、催しのお知らせでした。

では最後にメスード・ジェミルのチェロと、ヴィオラ奏者、ケメンチェ奏者がトリオで演奏している2枚目のイスファハン旋法のペシュレヴを時間まで聞きながら、今回はお別れです。チェロとヴィオラに高音のケメンチェが合わさることで、冒頭で特に女性が歌っているかのような不思議な音響が生まれています。このペシュレヴを書いたのも、メスード・ジェミルの父タンブーリ・ジェミル・ベイで、録音は1952年です。トルコ音楽特有のメリスマをチェロでどうやって弾いているのか、映像で確認したくなる演奏です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<2-2 Isfahan Peşrev: Tanburi Cemil (30 Eylül 1952 Kayıdı) 14分26秒>

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