ゼアミdeワールド

2018年4月16日 (月)

アシュクとアイリリク

ゼアミdeワールド104回目の放送、日曜夕方に終りました。18日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。

アゼルバイジャンの音楽の5回目になります。前回アリム・カシモフの歌唱をかけましたスイスVDE盤の前半に入っているイラン北西部タブリーズのアゼルバイジャン系アシュクの演奏から、まず聞いてみたいと思います。長棹リュート系弦楽器のサズ(アゼルバイジャンではチョグールと呼ばれることが多い)の弾き語りに、枠太鼓ダフとダブルリード管楽器のバラバンやメイの伴奏が付くのが典型的なスタイルです。
一曲目のDoyma chayaを歌っているアーシュク・ハサンと2曲目のエムラーン・ヘイダリは、いずれもイラン北西部のタブリーズ出身で、ハッサンは1980年まで地元のチャイハナ(茶店)で流しをやっていた正真正銘のアシュクです。その2曲を続けておかけします。リズミカルなハッサンの演奏と、もっぱらチョグールを巧みに操るヘイダリのスタイルは対照的です。ストイックなヘイダリのチョグール独奏は、どこかイラン西部のクルド系のタンブール名人オスタッド・エラーヒを思わせる所もあります。この番組は2年前にイランの音楽巡りから始めましたが、クルドの音楽はまだだったと思いますので、またトルコ東部のクルド音楽と一緒にエラーヒも取り上げたいと思っております。

<1 Ashiq Hasan / Doyma chaya 5分1秒>
<2 Emran Heydari / Yaniq Karami 5分16秒>
Ashigh Imran Heydari, Qopuz,Saz

二人とも幾つかありましたが、動画はヘイダリの方だけのようです。違う曲ですが一本上げておきます。アシュク・ハッサンはまた探してみます。

アゼルバイジャンの非常に印象的な歌に「アイリリク」という曲がありまして、私が最初に聞いたのは、タール奏者のアリ・サリミのMahoor Institut盤の演奏でした。この人は、往年のアゼルバイジャンのタール名人(1922-97)で、首都バクーに生まれ、少年時代にスターリンの圧政から逃れ家族ごとイランに移住し、イラン北西部アザルバイジャン地方のタブリーズで、亡くなるまで活躍しました。同時代タブリーズのアゼリ系タール名人ビグジェーハーニ(1918-87)などとも親交があり、アゼルバイジャンとペルシア古典の折衷的なユニークな演奏を披露している人です。アリ・サリミが作曲したAiriliqは、Tasnif-E Bayat-E Shirazと解説があるように、バヤーテ・シーラーズのタスニーフ(歌曲の一種)の一つになるようです。彼のプロフィールから推測しますと、再び帰ることが叶わなくなってしまった故郷への望郷の哀切な調べのように聞こえまして、何年か前にゼアミブログで特集したことがありました。カザルスのチェロ演奏で有名なカタロニアの「鳥の歌」や、アルメニアのサリ・ゲリンなどと並ぶような、肺腑を衝く望郷の哀歌と言っていいのではと常々思っておりました。アイリリクを訳すと「分断」となりますが、正に南北に分断されたアゼルバイジャン民族の悲しみを表現した曲です。まずは、そのアリ・サリミのタール独奏でどうぞ。

<6 Ostad Ali Salimi / Airiliq (Tasnif-E Bayat-E Shiraz) Reng-E Bayat-E Shiraz 4分20秒>
Flora Kərimova - "Ayrılıq". mus: Ali Salimi söz: Fərhad İbrahimi.

アゼルバイジャン文字入りでƏli Səlimiと検索すれば色々出てきますが、アリ・サリミがアイリリクを弾いているのは、この女性歌手の伴奏のみのようです。

この曲をイランのアゼルバイジャン系女性歌手グーグーシュもアゼルバイジャン語で歌っておりますので、併せておかけしたいと思います。アメリカ西部のイラン人コミュニティーの間で主に出回っていたタラネーというレーベルからの一枚に入っております。グーグーシュは1979年のイラン革命前から活躍するペルシアン・ポップスの歌姫として有名ですが、実は父方はイラン側のアザルバイジャン州出身で、母方はアゼルバイジャン共和国の家系であることは、ほとんど知られていないことかも知れません。グーグーシュの歌うアイリリクは、祖国への思いの深さが伝わってくる歌唱です。更には、イラン国内の人口に占めるアゼルバイジャン人の割合は25%を占め、アゼルバイジャン共和国内のアゼルバイジャン人の人口をはるかに上回ることも、ほとんど知られていないと思います。あのペルシア音楽の巨匠ホセイン・アリザーデも、父方はイラン北西部のアゼリ人です。

<10 Googoosh / Ayriligh 5分36秒>
Googoosh, Ayrılıq

グーグーシュの先日とは別音源。これは放送でかけたものと同じかも知れません。この人の表記で「ググーシュ」と言うのもよく見かけますが、گوگوشとあるようにGの後にそれぞれ長母音が入っているので、グーグーシュの方が近いと思いますが。

では最後にアリ・サリミのタール独奏でBayate-E Shirazを時間まで聞きながら今回はお別れです。このムガームは放送やブログで度々取り上げましたので、ハビル・アリエフのケマンチェ演奏などで既にお馴染みになったかと思いますが、アイリリクをこの旋法で書いたアリ・サリミの演奏は、また一味違う深い味わいがあります。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<9 Ostad Ali Salimi / Bayate-E Shiraz 19分31秒 途中まで>
Əli Səlimi -Təbrizim

タブリズィームというのが曲名のようですが、旋法はおそらくバヤーテ・シーラーズでしょう。彼の弾き語りは初めて聞くような気がします。

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2018年4月 9日 (月)

ハビル・アリエフ、エルカン・マンスロフ、VDEのカシモフ

ゼアミdeワールド103回目の放送、日曜夕方に終りました。日曜は松山に出ていてラヂバリは聞けず、更にiPhoneが絶不調でネットラジオでも聞けず(今日は復旧しました)、私は未確認ですが無事聞けたでしょうか? 11日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。カシモフのVDE録音とマンスーリは上がっていないようです。

アゼルバイジャンの音楽も4回目になりました。前回もし時間が余ったらと思って考えていたシャン・デュ・モンド盤の器楽演奏の方を少しかけておきたいと思います。まず、ハビル・アリエフのケマンチェ独奏で8曲目のディルキャシュという曲ですが、まるで人が歌っているかのような、熟練の極みの哀切な演奏を聞かせています。

<8 Azerbayjan Traditional Music - Habil Aliev / Dilkash 4分15秒>
Habil Aliyev: Dilkesh

同じ旋法ですが、こちらは太鼓伴奏付き

バーラム・マンスロフの息子のエルカン・マンスロフのタール独奏の音源も2曲入っておりまして、いかにもペルシア風に聞こえるけど、出てくる音が異なるエスファハーンと、明るく美しい旋法のマーフール・エ・ヒンディの2曲ですが、その名からインド風を連想させる後者を聞いてみたいと思います。インド風というのは名前だけのようで、ペルシアやコーカサスのエキゾチックな微分音もありませんが、とにかく美しい旋律が爽やかに流れる旋法です。10分近くありますので、抜粋でおかけします。

<3 Elkhan Mansurov / Mahur-e Hindi 9分38秒 から5分ほど>
Elkhan Mansurov - "Mahur-hindi" (1991)


次にスイスのVDE-Galloの「アシュクの音楽と歌」からもアリム・カシモフの1989年の歌声をまとめて聞いておきたいと思います。95年に日本のクラウンからVDEの民族音楽シリーズのライセンス国内盤が出まして、その内の一枚です。この盤は前半のアシュクのイメージが強く、後半でカシモフの歌が20分余り聞けることは余り知られていないかも知れません。イラン北西部タブリーズのアシュクでは、長棹リュート系弦楽器のサズ(アゼルバイジャンではチョグールと呼ばれることが多い)の弾き語りに、枠太鼓ダフとダブルリード管楽器のバラバンやメイの伴奏が付きますが、ムガームではタールとケマンチェ、ダフの伴奏になっているのが最大の違いで、アゼリのアシュクはトルコのアシュクとも繋がるいかにも吟遊詩人的な演奏スタイルです。一方ムガームの方は、古典音楽のスタイルと言って良いのだろうと思います。カシモフがここで取り上げているのは、2,3分の色々な小曲の寄せ集めのように聞こえますが、非常に魅力的な曲が並んでいて、個人的には一番好きな演奏です。4曲続けてお聞き下さい。クラウン盤では原題が出てこないので、カタカナ表記とその訳文になりますが、以下のようになっております。

<12 アリム・カシモフ / カスマーシカステシ(愛するバラバンよ) 3分25秒>
<13 アリム・カシモフ / ナーズリ・ヤーリム・カーラー・ギョズ(黒き瞳の我が恋人よ) 2分15秒>
<14 アリム・カシモフ / カーラー・ギラ(私は君を目覚めさせるために君の部屋にやって来た) 2分59秒>
<15 アリム・カシモフ / カーラー・クズ(若い娘よ、君に話をしよう) 3分35秒>

VDE盤の前半に入っているイラン北西部タブリーズのアゼルバイジャン系アシュクの演奏は次回以降に取り上げることにしまして、再度Chant du monde盤から、甲高いハイトーンが印象的なザビオッラー・クリエフの歌唱がもう一曲入っておりますので、この曲を聞きながら今回はお別れです。もう一曲と同じく「カスピ海の旋律」のバヤーテ・シーラーズの名演が素晴らしかったハビル・アリエフのケマンチェ伴奏で、マンスーリという曲です。カシモフの最初におかけしましたムガーム・チャハールガーの系統になるようです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<7 Azerbayjan Traditional Music - Zabiollah Kuliev / Mansuri 4分16秒>

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2018年4月 2日 (月)

アリム・カシモフの1980年頃の歌声

ゼアミdeワールド102回目の放送、日曜夕方に終りました。4日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。1985年没のバーラム・マンスロフがご存命中なので、アリム・カシモフのおそらく80年代初頭前後辺りと思われる歌唱です。

今回から新年度に入りました。この番組が始まって2年経って「世界の音楽」の10分の1も回れてないなと思う昨今です。今年度もお付き合い頂けましたら嬉しい限りです。これまでは中東のイランから始めてエジプト北部まで進み、その後ロシア、ウクライナ、ベラルーシ、バルト三国、コーカサスというルートでした。ここまでで2年ということです。今後しばらくの予定としましては、アゼルバイジャンの後は、トルコ系繋がりで中央アジア諸国を巡り、その後トルコに飛んで、続いてヨーロッパに入り、ギリシアからバルカン半島を北上し、東欧、中欧、北欧などを回って、クラシックも交えながら西ヨーロッパ諸国を回り、スペインから再び北アフリカのマグレブ諸国に入り、東に進んでエジプト南部からインド西部のラジャスタンに飛んで、インド亜大陸に入りますが、そこまででも何年経っているか見当がつきません。その後は、東南アジア、日本を含む東アジア、チベットなど内陸アジア含めモンゴルやシベリアなどの北アジア、ブラック・アフリカ、南北アメリカ、オセアニアの順になるかと思います。数年では到底終わらないと思います。

アゼルバイジャンの音楽の3回目は、タール聞き比べの際に往年の巨匠バーラム・マンスロフの独奏をかけましたフランスのレーベル、シャン・デュ・モンド(Le chant du monde)盤からご紹介したいと思います。この盤には1985年にバーラム・マンスロフが亡くなる前の、まだソ連時代のバーラム・マンスロフ周辺の正統派ムガーム音楽がたっぷり収録されています。バーラムの息子のエルカン・マンスロフのタール独奏や、99回目のケマンチェ聞き比べでバヤーテ・シーラーズをかけましたケマンチェ名人のハビル・アリエフも独奏や歌の伴奏で度々登場します。
まずは、まだ若手だった頃のアリム・カシモフと、師匠のタール奏者バーラム・マンスロフが共演した演奏からおかけしたいと思います。ケマンチェはエルマン・バダーロフという人です。4~6分の共演が3曲ありまして、まずArazbareという曲からです。どこかウズベク辺りの中央アジア的な感じのある曲調です。師匠との共演はyoutubeでは幾つか上がっていますが、CDではおそらくこの3曲のみかも知れません。古い時期のカシモフの歌唱を確認できる貴重な録音です。

<6 Azerbayjan Traditional Music - Alim Kasimov / Arazbare 6分10秒>
Alim Qasımov - Arazbarı (Kürdəxanı, 03/03/1985)

伴奏者にバーラム・マンスロフはいませんが、同じ曲です。

先ほどの曲もオスマン朝時代の古い曲に繋がるムガームだったようですが、次におかけるする曲はストレートにオスマンルというタイトルになっております。原曲は、オスマン時代のクルド系軍人のイェニチェリ(歩兵軍団)の軍隊行進曲に遡るかも知れないようです。オスマンの軍楽と言えば、70年代にテレビドラマ「阿修羅のごとく」で使われて以来、民族音楽のロングセラーのジャンルです。メンバーはアリム・カシモフ、バーラム・マンスロフ、エルマン・バダーロフですから、前の曲と同じ3人です。

<10 Azerbayjan Traditional Music - Alim Kasimov / Osmanli 6分54秒>
"Mani" - Alim Gasimov, Bahram Mansurov, Talat Bakikhanov

オスマンルはマニとも言うようです。真ん中でライフルのようにタールを高く構えているのがバーラム・マンスロフ御大。しかし、アリム・カシモフ、若い! この時20台だと思います。

次の曲も同じ3人の演奏で、曲名はオフシャールとなっています。イラン中部のトルコ系民族に由来するペルシア音楽のアフシャーリー旋法をすぐ様思い出させるタイトルですが、音楽的にはアフシャーリーとは無関係で、むしろシューシタールやフマーユンを想起させるエキゾチックな短調系の旋律です。

<11 Azerbayjan Traditional Music - Alim Kasimov / Ovshar 4分22秒>

シャン・デュ・モンド盤の6、10、11曲目のアリム・カシモフの歌唱をおかけしましたが、最後に1曲目に戻ってカラバフ・シェカステスィという曲を聞きながら今回はお別れです。この盤は冒頭の男声の甲高い歌唱で一般に知られることが多かったように記憶していますが、こちらはザビオッラー・クリエフという他の若手男性歌手です。男声とは思えないようなハイテンションの高音で出てくるので、度肝を抜かれる感じがあります。古典音楽ですが、曲調がアシュク(吟遊詩人)系なのが面白い一曲です。そしてケマンチェ伴奏をしているのは、あのハビル・アリエフです。実に味わい深く素晴らしい伴奏を聞かせています。1989年のリリース当時アルメニアとの間でもめていた場所、ナゴルノ・カラバフをすぐ様思い出させる曲名なので、最初に持って来たのかも知れません。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<1 Azerbayjan Traditional Music - Zabiollah Kuliev / Karabagh Shekastesi 6分13秒>
Sakine Ismailova - Zarbi mugam Karabagh Shikastesi

Zabiollah Kulievでは見当たりませんが、イネディのムガームシリーズ第5集の女性歌手サキーネ・イスマイロヴァの歌唱で同じ曲がありました。

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2018年3月26日 (月)

アリム・カシモフのイネディ盤

ゼアミdeワールド101回目の放送、日曜夕方に終りました。28日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。イネディと同じyoutubeは多分ないと思いますので、2曲目と同じバヤーテ・シーラーズのライブ映像を上げておきます。娘ファリガナ・カシモヴァとのデュエットです。伴奏者については、放送で話した内容も間違っておりましたが、収録の後先日ブログで訂正しましたので、今回は放送内容のまま上げております。

アゼルバイジャンの音楽の2回目は、アゼルバイジャンの人間国宝ともいえるアリム・カシモフの奇跡の歌声を聞いてみたいと思います。ユネスコ国際音楽賞を受賞し、「20世紀の最も偉大な歌手の一人」とも称えられる大歌手です。2004年NHKの新シルクロードでタイトル曲を歌っていたので聞き覚えのある方もいらっしゃると思います。2008年には娘のファルガナ・カシモヴァと来日もして素晴らしい歌唱を聞かせました。ペルシア音楽が本家の、細かい節回しのタハリール唱法の入った、高い張りのある歌声がとにかく凄いです。
彼の録音は沢山ありますが、世界的に知られるようになったのは1989年頃だったでしょうか。フランスのイネディやChant du monde、オコラ、スイスのVDE-Galloから相次いでCDが出まして、最近では娘のファリガナ・カシモヴァとの録音がドイツのWorld Network、アメリカのSmithsonian Folkways、ドイツのDreyer Gaidoから出ています。イランのBarbadからは、ペルシアの名タスニーフMorqe Saharも歌ってこの曲をタイトルにしたTabriz ConcertのDVD付き2枚組も出ています。やはりどんどん売れて手元に残っているのは初期の盤のみという状態ですので(笑)、今回はイネディの第1集から、ムガーム・チャハールガーとムガーム・バヤーテ・シーラーズを抜粋しておかけしたいと思います。チャハールガーが41分、バヤーテ・シーラーズが30分ありますので、本当にかいつまんでになります。苗字については「カシモフ」と長らく呼ばれて来ましたが、原語に近いと思われるガスィモフとかガスモフという表記も多くなっています。
伴奏者について、前回の解説に訂正を入れる必要が出てきましたので、お知らせしておきます。
「バーラム・マンスロフは1911年生まれで1985年に亡くなっているので、1962年生まれのタール奏者のマリク・マンスロフとは祖父と孫位の年の差になります。同じ苗字なので息子と思われがちですが、どうやらそうではないようです。」このように前回言いましたが、調べましたら同姓同名のマリク・マンスロフというケマンチェ奏者がいまして、エルカン・マンスロフという年配のタール奏者も確かに確認できました。この二人はおそらくバーラム・マンスロフの息子だと思われます。これからおかけするイネディ盤はこの二人の伴奏という表記になっていますが、アーティスト写真は、当時若手のタール奏者のマリク・マンスロフと、ケマンチェ奏者のエルシャン・マンスロフに差し換わっています。VDE-Gallo盤では、若手の二人で名前とアーティスト写真が一致していますので、イネディの表示が間違いで実はこの二人なのかも知れません。エルカンとエルシャンの違いも微妙で非常にややこしいですが、そういうことのようです。
まずは冒頭のタールとケマンチェの演奏から鮮烈に始まるチャハールガーの方からどうぞ。パラジャーノフのシュールな映画を思い出させるような始まり方です。

<1 Alim Kassimov 1 ~Mugam Chargah 41分36秒 抜粋>

次のバヤーテ・シーラーズですが、ハビル・アリエフのケマンチェ演奏をどうしても思い出してしまう旋法ですが、やはり別なメロディから始まります。しかし哀愁味溢れる美しく官能的な旋律は、聞く者を捉えて離さないものがあります。ムガームでは、歌い手をハナンデ、タール、ケマンチェ、枠太鼓ダフの伴奏陣をサーザンデと呼びますが、大体歌手がダフを叩き歌うことが多いようです。各曲とも、インド音楽ならアーラープに当るバルダシュトという即興的な前奏に始まり、テスニーフ(ペルシアのタスニーフと同じく歌曲の一種と思われます)、舞曲レング、ティリンガなどが組曲風に演じられます。この構成を見てもペルシアとコーカサスの音楽が入り混じっていることがよく見て取れますが、アゼルバイジャンは言語面では中央アジア諸国やトルコと繋がるテュルク(トルコ)系になります。 アリム・カシモフのバヤーテ・シーラーズを聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<2 Alim Kassimov 1 ~Bayati Shiraz 30分33秒 抜粋>
Alim & Fargana Qasimov Ensemble, Bayati Shiraz

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2018年3月22日 (木)

バーラム・マンスロフの二人の息子

21日は101回目の収録をしてきましたが、大事な訂正がありましたので、放送前にお知らせして、関連動画を見ておきたいと思います。アリム・カシモフの伴奏者について、前回の解説に訂正を入れる必要が出てきて、以下のようにお話ししました。

「バーラム・マンスロフは1911年生まれで1985年に亡くなっているので、1962年生まれのタール奏者のマリク・マンスロフとは祖父と孫位の年の差になります。同じ苗字なので息子と思われがちですが、どうやらそうではないようです。」このように前回言いましたが、調べましたら同姓同名のマリク・マンスロフというケマンチェ奏者がいまして、エルカン・マンスロフという年配のタール奏者も確かに確認できました。この二人はおそらくバーラム・マンスロフの息子だと思われます。25日の放送でおかけするイネディ盤の第1集ではこの二人の伴奏という表記になっていますが、アーティスト写真は、当時若手のタール奏者のマリク・マンスロフと、ケマンチェ奏者のエルシャン・マンスロフに差し換わっています。VDE-Gallo盤では、若手の二人で名前とアーティスト写真が一致していますので、イネディの表示が間違いで、実はこの二人なのかも知れません。エルカンとエルシャンの違いも微妙で非常にややこしいですが、そういうことのようです。

以上のように101回目の収録で言いましたが、Malik Mansurovで検索して出てきたケマンチェ奏者の写真は、よく調べたらエルシャン・マンスロフでした。80年代の写真とはすっかり変わって、坂上二郎さんのようになられていて、分かりませんでしたm(__)m(笑) と言うわけで、放送の前に再度訂正しておきます。m(__)m
とにかくイネディ盤の表記ではケマンチェ奏者がマリク・マンスロフ、タール奏者がエルカン・マンスロフとなっていますが、実際アリム・カシモフの伴奏をしているのは、VDEの写真通りでマリク・マンスロフのタールとエルシャン・マンスロフのケマンチェなのでしょう。リリースは1989年ですから、その頃はまだ情報がちゃんと出揃ってなくて、さすがのIneditも間違っていたということではないかと思いました。民族音楽の名門レーベルでもこんなことがあるのですね。結果、イネディ盤表記の二人がバーラム・マンスロフの息子だと、江波戸先生始めどの解説にも書かれていました。本当のバーラム・マンスロフの二人の息子は、エルダール・マンスロフ(ピアニスト)とエルカン・マンスロフでした。この二人の映像を上げておきます。今回は調べていて頭の中に?が5つくらい立ちましたが、ようやく難問が解明できてすっきりしました(笑)

Elkhan Mansurov - "Bayati-Shiraz"

Eldar Mansurov - "Melody" (music: Eldar Mansurov)

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2018年3月19日 (月)

放送100回目はアゼルバイジャンのタール

ゼアミdeワールド100回目の放送、日曜夕方に終りました。21日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。

今回からアゼルバイジャンの音楽です。記念すべき100回目と言うことで、華々しく始めたいと思います。
アゼルバイジャンの伝統音楽に、ムガームと言うジャンルがありまして、その名から容易に推測できるように、アラブのマカームの流れを汲むので、もちろん旋法体系を表しますが、同時にその音楽体系や楽曲自体も指すようです。ムガームの典型的な編成は、ケマンチェとタールが両脇を固め、間で歌い手がダフを叩き歌うというトリオ編成のスタイルになります。歌手の有名所では、2004年のNHKの新シルクロードでタイトル曲を歌っていたアリム・カシモフがいまして、私は残念ながら聞きに行けなかったのですが、2008年には娘ファルガナ・カシモヴァと来日もして素晴らしい歌唱を聞かせました。彼の録音はオコラやイネディなどから沢山出ていまして、それらもいずれご紹介しますが、まずは彼の伴奏を受け持つことの多いタール奏者のマリク・マンスロフのソロ・アルバムから一曲たっぷりお聞き下さい。
タールは、イランでは3コース複弦なので6弦ですが、アゼルバイジャンのタールは弦の数が多いようです。Guitarの綴りの中にもペルシア語で弦を意味するtarが入っているように、セタールと並んでギターやシタールなどの洋の東西の棹の長い同属弦楽器のルーツ(名前のみ?)に当る楽器です。マリク・マンスロフはアリム・カシモフも師事した往年のタール名人バーラム・マンスロフなどから強く影響を受けているようです。まるでロックを聴いているかのような強烈な高揚感を持って始まり、火花の散るようなスリリングな即興演奏を聞かせています。旋法はコルド・シャーナズで、演奏時間は20分ほどですから途中までになるかも知れません。コルドと言うのはペルシア語でクルドのことです。シャーナーズというのもアラブの方では度々出てきたマカームですが、アゼルバイジャンの旋律と同系統になるのかどうかは、調査が必要です。
この録音は元はフランスのレーベルBudaから出ていましたが、後にイランのMahoor Institutからもリリースされています。現在はおそらく廃盤のブダ盤は非常によく売れて手元に残ってないので、イラン盤の方でおかけします。真ん中辺りでは、グレゴリオ聖歌でお馴染みのディエス・イレ(怒りの日)の旋律が登場してびっくりさせますが、西洋音楽も色々知っている人なのかも知れません。

<1 Malik Mansurov / Tar - Music of Azerbaijan 20分1秒 抜粋>
Shahnaz tar solo

彼のシャーナーズの動画がありました!

ヨーヨー・マが主役で2004年に放送されたNHKの新シルクロードで初めてアリム・カシモフの歌を聞いた方も多いかも知れません。彼の鮮烈な歌唱は次回以降におかけすることにしまして、今回はマリク・マンスロフの大先輩のバーラム・マンスロフのタール独奏を比較でかけたいと思います。こちらも現在は廃盤のフランスChant du mondeの「アゼルバイジャンの伝統音楽」に収録された演奏です。彼は1911年生まれで1985年に亡くなっているので、1962年生まれのマリク・マンスロフとは祖父と孫位の年の差になります。同じ苗字なので息子と思われがちですが、どうやらそうではないようです。ここで演奏されているのはシューシタールで、この旋法はペルシアではホマーユン旋法系列の哀感に溢れながらも、艶っぽく官能的なイメージもありますが、この演奏は時折長調的にも聞こえるのが面白いです。この曲を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<9  Bahram Mansurov / Shushtar 7分20秒 抜粋>
"Heyrati" - Alim Gasimov, Bahram Mansurov, Talat Bakikhanov

シューシタリーではありませんが、バーラム・マンスロフの動画も色々あります。ライフルを構えるように高く掲げるスタイルが、アゼルバイジャン流のタール奏法の特徴。左のアリム・カシモフが若い!

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2018年3月12日 (月)

ケマンチェ聞き比べ アルメニア、アゼルバイジャン、イラン

ゼアミdeワールド99回目の放送、日曜夕方に終りました。14日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。先週はばたばたで結局ブログアップは月曜だけになりましたm(. .)m 今週はもう少しアップ出来ると思いますが。

アルメニア音楽をまとまった形で取り上げるのは一応前回で最後で、民謡的な音楽や若手ドゥドゥク奏者の音源などが最近は結構リリースされていましたが、売り切れて手元に残ってないので、ほとんどかけることは出来ませんでした。
今回はケマンチェの系統の擦弦楽器の聞き比べということで、アルメニア、アゼルバイジャン、イランの音源を並べてみたいと思います。この楽器の名前ですが、ケマンチェ、キャマンチェ、カマンチェ、カマンチャ、ケマンチャなど国によって色々ですが、トルコやマグレブの方などでは末尾のチェが取れて、ケマンとかカマンと言ったりもします。これらの国ではヴァイオリンをそう呼んだりもします。因みにカマンというのは、今治など伊予の方言では「結構です」とか「良いですか?」の意味になるので、ちょっとくすっと笑ってしまう感じがあります(笑)
まず、アルメニアですが、フランスのArionからのLP盤でアンドラニク・アルスタミアンという人のカマンチェ独奏です。この盤は1982年リリースで、CD化はされてなかったと思います。1918年生まれの名手の絶品の演奏をお聞き下さい。
一曲目は、Dunen Gulkenという曲で、訳は「あなたの魂は強い」となると思います。18世紀アルメニアのアシュグ(吟遊詩人)、サヤト・ノヴァの曲です。冒頭から非常にインパクトのある音をヒットしている演奏です。

<A1 Le Kamancheh d`Armenie / Andranik Aroustamian  Dunen Gulken4分16秒>
Sayat Nova - Kamancha || Music of Armenia

Andranik Aroustamianでは見当たらないので、他の奏者ですが。

続いて、アゼルバイジャンのケマンチャは、一昨年の5月の15分枠の頃に、以前大変お世話になった音楽プロデューサーの星川京児さんの追悼でもかけました。キングWRMLシリーズのバヤーティ・シーラーズの音源です。90年代前半のNHKFM「世界の民族音楽」の星川さんの回のオープニング曲でした。演奏者名の表記は、ハビル・アリエフ・ムスタファ・オグリとか、アリエフ・ガビリ・ムストファ・オグリとか、幾つかに分かれます。以前のキングのシリーズでは「カスピ海の旋律」、現在のシリーズでは「アゼルバイジャンの音楽」に収録されております。

<1 ハビル・アリエフ・ムスタファ・オグリ / バヤーティ・シーラーズ 7分5秒>
Habil Aliyev - Bayatı Şiraz

ハビル・アリエフ自身の動画もあります。神業としか思えない名演。

3番目ですが、ペルシア音楽界最高のケマンチェ奏者と言えばこの人、1905年生まれの大御所アスガール・バハーリーです。当番組のオープニング曲は、イランの歌手兼ウード奏者のアブドゥルワハブ・シャヒーディーのNegah Garm Toという曲ですが、この曲の別テイクのように聞けるマーフール旋法の美しく明朗な演奏です。当番組テーマ曲は、フランスの民族音楽の名門レーベル、オコラのCD化第1弾の一曲目でした。今では考えられないようなオールスターキャストですが、中でもケマンチェのアスガール・バハーリーやトンバクのホセイン・テヘラーニは特に光っています。これからおかけする音源は、イランのSedaというレーベルから2枚出ている内の一枚ですが、ややこしいことにペルシア語の曲目クレジットと、実際に録音されている内容がVol.1と2で逆になっています。曲目クレジットではVol.1がアーヴァーズ・アブアターとアーヴァーズ・バヤーテ・エスファハーン、Vol.2がダストガー・マーフールとダストガー・チャハールガーになっています。バヤーテ・エスファハーンのバヤーテとは、グルジェフの曲でも出てきたバヤーティの元になったと思われるペルシア語で、「詩句」を意味する言葉です。曲名ではその後にシーラーズとかエスファハーンと来るので、それぞれの町の詩とか歌というような意味になるようです。
序奏のダルアーマドに始まり、シャヒーディー作のピシュダルアーマド(前奏曲)が続きます。その後は別なダルアーマドからトンバク伴奏付きの速いチャハールメズラブの部分に入ります。マーフールの演奏はまだまだ続きますが、おかけする9分程では、チャハールメズラブまでになります。

<Asghar Bahari / Kamancheh solo-2  Dastgah Mahur 9分位>
Singer:Ali Rostamian Kamanche:Asghar Bahari (2\2)

ここでバハーリーが歌伴で弾いている旋法は、ホマーユンかバヤーテ・エスファハーンだと思います。マーフールの演奏がすぐに見つからないので今日はとりあえずこちらを。

ここでちょっと催しのお知らせを入れます。
3月18日の今治中央公民館での文化祭の洋楽の部に、今治市民弦楽合奏団で出ます。私はファースト・ヴァイオリン担当で、曲目はモーツァルトのアヴェ・ヴェルム・コルプスと、J.S.バッハの小フーガト短調です。時間は朝9時半からの4番目ですから、10時前後位だと思います。宜しければ是非お越し下さい。
それと、私の店トーク・トークでクリスマスとヴァレンタインの辺りで行いました終活カフェは、好評につき毎偶数月に行うことになりました。次回は4月26日で、セミナーが3時半から、演奏は5時からの30分ほどです。ご予約をゼアミのメール等でお受けしております。アドレスはVYG06251@nifty.ne.jpです。この番組へのご感想もこちらでお受けします。

では最後に再度アンドラニク・アルスタミアンのアルメニアのケマンチェを聞きながら今回はお別れです。A面の2曲目からは、アルメニア民謡、ヒジャーズ旋法のアルメニアの即興と続きますが、その後のヴァラヤティ・デルキャシュというペルシア古典の旋律をおかけします。確かにペルシア音楽の感じが色濃く出ている演奏です。この人の演奏はB面にアゼルバイジャン絡みの曲もありますので、アゼルバイジャンに入ってからも、ケマンチェの聞き比べでまた出すかも知れません。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<A4 12分50秒から Le Kamancheh d`Armenie / Andranik Aroustamian  Valayati Delkash 5分16秒>

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2018年3月 5日 (月)

ホヴァネスのエチミアジン交響曲 アルメニア中世の聖歌

ゼアミdeワールド98回目の放送、日曜夕方に終りました。7日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。イースターの歌は、また後日探してみます。

アルメニア音楽の8回目になります。今回は現代アメリカのアルメニア系作曲家アラン・ホヴァネスの音楽をメインに、先週取り上げましたオコラ盤のアルメニア教会宗教歌を併せてご紹介したいと思います。
アラン・ホヴァネスと言えば、私が90年頃に勤めていた池袋の店で、アルメニア教会の三角屋根のジャケットのLPがとても気になり、社販で購入したのが最初の出会いでした。それはアメリカのクリスタル・レコーズというレーベルのポセイドン・ソサエティー・シリーズで、ホヴァネスの作品集の一枚でした。彼は1911年生まれ2000年没ですから、前衛作曲家のジョン・ケージと変わらない世代ですが、前衛には向かわず、自身のアルメニアのルーツを初め、インド音楽や日本の雅楽などの世界中の伝統音楽からの影響を作品に反映させた独自の作風で知られています。1940年から10年間、マサチューセッツ州のアルメニア教会のオルガニストを務めたそうで、そういう経験も彼の芳醇なアルメニア的な旋律の秘密ではと思います。変り種では、中世イランの詩人オマル・ハイヤームの四行詩、ルバイヤートに付けた曲などもありました。余談ですが、ホヴァネスという名前は、「ヨハネス」のアルメニア語読みというのをどこかで読んだ記憶があります。
今回はアルメニア教会の総本山であるエチミアジンを主題にした交響曲第21番「エチミアジン」から、まず第1楽章のアンダンテ・マエストーソをお聞き下さい。ティンパニと鐘の音が神聖な雰囲気を醸し出し、アルメニアらしいエキゾチックな旋律がその上で奏でられます。ポセイドン・ソサエティーと同じ録音で、ホヴァネス自身の指揮、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏です。

<1 Symphony No.21 Etchmiadzin / Andante Maestoso 5分46秒>
Alan Hovhaness : Symphony No. 21 'Etchmiadzin' Op. 234 (1968)


この曲は3楽章構成で、第2楽章を飛ばして第3楽章の途中までになりますが、聞いて頂きましょう。前にDivine Liturgyというコミタスの宗教歌の盤で聞いたのと似たエキゾチックな旋律が出てきます。後半は「ノアの箱舟伝説」で有名なアルメニアのシンボルのアララト山をイメージしているようです。

<3 Symphony No.21 Etchmiadzin / Introduction 8分59秒 抜粋 5分位>

では、後半は前回も取り上げましたオコラの「アルメニアの中世の宗教歌と器楽」から、冒頭の3曲以外の中から抜粋してご紹介します。まずはイースター(復活祭)の聖歌を4曲続けてお聞き下さい。何と8世紀頃にStepannos Sunetziという人によって作曲された曲とのことです。千年以上前の曲を歌うのは、冒頭の3曲と同じくEmma Dzadourian指揮の男声合唱です。

Armenie 1:Chants Liturgiques du Moyen Age et Musique Instrumentaleから

<4 Zor Intreats (And Having Eaten - Maundy Thursday Canticle) 1分48秒>
<5 Orhneszuk Zter (Praise The Lord!) 主を讃えよ 1分46秒>
<6 Sa E Bann Astuats (It Is God Himself) それは神自身 1分6秒>
<7 Ognagan Induneli Egher (Accept My Prayer, Oh God) 私の祈りを受け入れて下さい、神よ 1分35秒>

アルメニアには古くから独唱の伝統もあって、グルジェフの伝記映画「注目すべき人々との出会い」の中では東欧系ユダヤのイディッシュ・ソングの歌い手として有名なBen Zimetが歌っていましたが、オコラ盤には女性歌手ルシネ・ザカリアンの印象的な歌唱が入っておりますので、その中からHavoun, Havounという曲をおかけします。この歌も非常に古く、10世紀のGrigor Narekatsiという人が作曲したそうです。

<11 Loussine Zakarian / Havoun, Havoun 4分8秒>
NAREGATSI " HAVOUN HAVOUN"/ LUSINE ZAKARYAN

こちらはオーケストラ伴奏付き

では最後にAman, Hayr Sourp (Amen, The Father Is Holy)という曲を聞きながら今回はお別れです。この曲はNerces le Gracieux(1856-1905)という、おそらくフランス語圏のアルメニア人作曲家と思われる人の書いた曲で、19世紀末頃の美しい聖歌です。歌唱はEmma Dzadourian指揮の男声合唱です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<15 Aman, Hayr Sourp (Amen, The Father Is Holy) 5分36秒>
  Lusine Zakaryan, Amen Hayr Yev Sourp

ルシネ・ザカリアンの歌唱でこの曲がありました。

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2018年2月26日 (月)

グルジェフのオリジナル曲とグルジェフ・アンサンブル

ゼアミdeワールド97回目の放送、日曜夕方に終りました。28日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。オコラ盤からは、先日最初だけしかかけられなかった絶品のタール独奏Bayati shirazだけすぐ見つかりました。他はまた後日探してみます。バヤーティは、グルジェフ・アンサンブルでは動画は見当たりませんでした。彼らの演奏するカマンチャと言う曲がかなり似て聞こえましたが、別の曲のようです。これもまた比較してみます。

アルメニア音楽の7回目になります。今回はグルジェフのオリジナルのピアノ曲とグルジェフ・アンサンブルの演奏の比較を2曲と、後半はフランスのオコラから1988年に出た「アルメニア中世の宗教歌と器楽」からの数曲を予定しております。
グルジェフ・アンサンブルのECMからの2枚も聞いてみましたが、デ・ハルトマンのオリジナルのピアノ曲と同じ曲がいくつかありましたので、2月4日の放送でアラブの旋法と同じ名前と言うことで一度デ・ハルトマンの演奏でかけましたバヤーティという曲からまず聞き比べてみたいと思います。先にグルジェフの弟子のトマス・デ・ハルトマンのピアノ独奏、後でグルジェフ・アンサンブルの演奏をおかけします。ウードの即興演奏タクシームに始まり、カーヌーン、ナイなどによる中東色溢れる演奏です。

<1-14 Music of Gurdjieff and De Hartmann / Thomas De Hartmann ~Bayaty 3分35秒>
14 - Bayaty


<7 Gurdjieff Folk Instruments Ensemble / Music of G.I.Gurdjieff ~Bayaty 3分54秒>

もう一曲はコーカシアン・ダンスという曲で、和訳すれば「コーカサスの踊り」となりますが、音楽的にはアゼルバイジャンのムガームに似て聞こえます。

<2-10 Music of Gurdjieff and De Hartmann / Thomas De Hartmann ~Caucasian Dance 3分35秒>
10 - Caucasian Dance


<10 Gurdjieff Folk Instruments Ensemble / Music of G.I.Gurdjieff ~Caucasian Dance 3分47秒>
Gurdjieff's music -Caucasian Dance/ Gurdjieff Ensemble/ duduk, kamancha, tar, dhol, santur, oud...


次に、フランスのオコラから1988年に出た「アルメニアの中世の宗教歌と器楽」です。この盤は廃盤ですが、改めて聞き直してみて、ソ連時代の古い音源が色々入っていることを再確認しました。作曲されたのが8世紀から10世紀位という、ヨーロッパの古楽にはほとんどないのではと思うような古い伝承のアルメニア正教会の歌が入っています。ローマ帝国より先にキリスト教を国教にしたアルメニアですが、千年も前の聖歌が現在も変わらず残っているのかどうか分かりませんが、最近の録音は見たことがないので、これは本当に貴重な記録だろうと思います。これまで幾つかかけましたように、ポリフォニックなグルジアの聖歌と違って、持続低音のドローンをバックにしたモノフォニックなアカペラの歌です。
この盤の最初の3曲はこのドローンバックの男性合唱で歌われていますが、あの独特なアルメニア文字を創った聖人メスロプ・マシュトツに由来するという、おそらく最も重要なアルメニア教会の聖歌ではと思います。一曲目がAnganim aratchi Koで和訳は「私はあなたの前に膝まづく」、2,3曲目はVoghormia Intzで和訳は「我を憐れみ給え」となりまして、後者は同名で2曲続きます。同名曲ですが3曲目では増2度音程が目立ったエキゾチックな節になっています。歌唱はEmma Dzadourian conducts Male Choirです。

<1 Armenie 1:Chants Liturgiques du Moyen Age et Musique Instrumentale ~Anganim aratchi Ko 2分8秒>
<2 Armenie 1:Chants Liturgiques du Moyen Age et Musique Instrumentale ~Voghormia Intz 1分51秒>
<3 Armenie 1:Chants Liturgiques du Moyen Age et Musique Instrumentale ~Voghormia Intz 1分56秒>

この盤のアルメニア教会の聖歌はまだまだ続きますが、次回はアルメニア教会の聖地をテーマにしたアラン・ホヴァネスのエチミアジン交響曲を予定しておりますので、次回また併せて抜粋して取り上げることにしまして、このオコラ盤後半の器楽曲からHratchik Nigoghossian (kamantcha), Djivan Kasparian (duduk)の演奏でSayat-Novaと言う曲、時間が余りましたら、Salomon Seyranian (tar)でPayati Chirazをおかけします。ドゥドゥク奏者はカスパリアンとありますが、ジヴァン・ガスパリアンだと思います。彼が西側に知られる前の貴重音源ではと思います。タールによるパヤーティ・シーラーズというのも、哀感溢れるアゼルバイジャンのバヤーティ・シーラーズをすぐさま連想させます。
これらの曲を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<17 Armenie 1:Chants Liturgiques du Moyen Age et Musique Instrumentale ~Sayat-Nova 3分30秒>

<18 Armenie 1:Chants Liturgiques du Moyen Age et Musique Instrumentale ~Payati Chiraz 6分38秒>
Sogomon Seyranyan(Сейранов) - Bayati shiraz(tar)

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2018年2月19日 (月)

サヤト・ノヴァ、ヴィオラによる鶴、アルメニアン・ダンス他

ゼアミdeワールド96回目の放送、日曜夕方に終りました。21日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。アルメニアン・ダンスの演奏者名を放送では言いそびれておりました。東京佼成ウィンドオーケストラです。カーヌーンの音源は、コミタスの曲同様そのもののyoutubeはなさそうです。また別音源で後日探してみます。

アルメニア音楽の6回目になります。前回エリア・ペーリヴァニアンのカーヌーン演奏でコミタスの曲を聞いて頂きましたが、この盤には18世紀アルメニアの吟遊詩人サヤト・ノヴァの曲も4曲入っておりますので、続けておかけします。コミタスの曲とは対照的にメランコリックな美しさに溢れるアルメニアらしい曲が並んでいます。サヤト・ノヴァと言えば、パラジャーノフ監督が「ざくろの色」でエキゾチックな映像詩に仕立て上げたことを思い出します。
では、まず「愛に捧げる」という曲からどうぞ。

<2 Musique traditionnelle d`Armenie - Elia Pehlivanian / Echkhemed (Ode A L'Amour) 3分55秒>

次はケマンチャと言う曲で、擦弦楽器のケマンチャについての元は歌詞のある曲かも知れません。イランやアゼルバイジャンのケマンチェとは一味違うアルメニアのケマンチャはLP音源で手元にありますので、次回以降かけられるかも知れません。

<5 Musique traditionnelle d`Armenie - Elia Pehlivanian / Kemancha (Le Violon) 2分18秒>

次は仏訳に「鶯の歌」とありますので、隣のイランの文化の影響や繋がりを感じさせるテーマです。

<9 Musique traditionnelle d`Armenie - Elia Pehlivanian / Boulbouli Hid (Le Chant Du Rossignol) 3分13秒>

次は仏訳が「私はあなた」となっていますので、やはり愛の歌でしょうか。

<11 Musique traditionnelle d`Armenie - Elia Pehlivanian / Kani VourDJan (Je Suis A Toi) 2分15秒>

Sayat Nova (El color de la granada) / Subtitulada al español

何とサヤト・ノヴァの生涯を描いたパラジャーノフの映画「ざくろの色」がそのまま上がっていました。あるいは編集前の元の映画「サヤト・ノヴァ」でしょうか。

続きまして、前回カテリーナ・マヌーキアンのヴァイオリン演奏でおかけしましたコミタス作曲の鶴という曲ですが、現代音楽やクラシックで大活躍のアルメニア系女流ヴィオラ奏者キム・カシュカシアンも弾いておりますので、そちらもおかけします。吟遊詩人の嘆きを聴くかのような「鶴(クレイン)」ですが、ここではKrunkというタイトルになっております。未確認ですが、このタイトルはアルメニア語でしょうか?

<5 Kim Kashkashian / Hayren - Krunk 2分28秒>
KROONK by KOMITAS,processed by S.ASLAMAZIAN,SIRARPI SAMVELYAN-viola,ADA MINASYAN-piano

やはりカシュカシアンでは見当たらないので、他のヴィオラ奏者の演奏ですが。

前回の最後にアルメニア正教の歌をDivine Liturgyという盤からかけまして、途中から出てくるエキゾチックで印象的な旋律がユネスコ盤のアルメニア正教音楽にも入っていて、またかけますと予告していましたが、確認しましたらこの盤ではなく他で聞いたようです。今回はそのユネスコ盤から、極めてオーソドックスなアルメニア正教の歌をおかけしてみます。この盤に限らずアルメニア音楽はディアスポラ(離散)先での録音が多く、アルメニア本国の録音は非常に少ないように思います。この盤もイタリア、ヴェニスのアルメニア教会での録音です。この盤を聞くとよく分かりますが、楽器などでは周辺のペルシアやトルコの系統が多いのに対し、宗教音楽では周辺国の影響は全く感じられません。持続低音のドローンをバックにしたモノフォニックな歌は、同じ正教系でもポリフォニックなグルジアの教会歌とは対照的です。

<1 アルメニアの宗教音楽(ユネスコ・コレクション) ~三位一体の光への頌栄 5分45秒>

では最後にアメリカの作曲家アルフレッド・リードが作曲した吹奏楽曲アルメニアン・ダンス パート1を聞きながら今回はお別れです。ジャンル的にはラヂバリでは、ございま鈴木さんのテリトリーですが、この曲はアルメニアの比較音楽学者であるコミタス・ヴァルダペット(これがコミタスのフルネーム)の収集したアルメニア民謡を素材として作曲されていまして、5つのアルメニア民謡が続けて演奏される単一楽章の曲です。それぞれのコミタスの原曲を探してみましたが、手持ちの音源には見当たりませんでした。私は吹奏楽はやらないので知りませんでしたが、この曲は華やかな吹奏楽曲の代表とされているようです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<アルメニアン・ダンス (リード) 東京佼成ウィンドオーケストラ 11分18秒 抜粋>
アルメニアン・ダンス パート1

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