ゼアミdeワールド

2018年1月15日 (月)

つばめ 哀愁のアルメニア

ゼアミdeワールド91回目の放送、日曜夕方に終りました。17日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。有名なアルメニア民謡「つばめ」以外の曲は、探すのに少しかかると思いますので(あるいは無いと思います)、また後日にします。

今回から南コーカサスの国の一つ、アルメニアの音楽を聞いて行きたいと思います。グルジア、アルメニア、アゼルバイジャンの3カ国は、ロシアから見てカフカスの向こうと言う意味で、ロシア語で「向こう」の意味のザを頭に付けたザカフカスと言う言い方があることをコーカサスの最初でご説明しました。グルジアで8回でしたから、アルメニアも最低6,7回は予定しております。アゼルバイジャンも同じ位にはなると思います。欧米盤で把握しているだけでグルジアが20枚余り、アルメニアについては少なくとも33枚はありますが、アゼルバイジャンは更に多いです。ただし、コーカサスの音楽は回転がいいもので、大体が売れてしまって手元に残っている盤が限られているため、その中からのご紹介になります。
アルメニアとグルジアは、ローマ帝国より先にキリスト教を国教にしたことも前にお話しました。共に彫りの深い端整な顔立ちに比較的黒い髪のコーカソイドという点では共通しますが、言語においては、グルジアが非印欧語族のコーカサス系に属するのに対し、アルメニアは印欧(インド・ヨーロッパ)語族に属します。ヨーロッパのギリシア語やラテン語と、インドのサンスクリットの繋がりを研究する際に、間に位置するアルメニア語と比較対照することで見えてくることが多いと、ある本で読んだことがあります。
ロシア、ペルシア、オスマン・トルコ、モンゴルなどの大国の間にあって、数々の悲劇と離散を経験した国として知られ、中でも第一次大戦中のオスマン・トルコ末期に起きた国民の半数を失うというアルメニア人大虐殺の悲劇はよく知られています。
音楽の大まかな特徴としては、グルジアはポリフォニックな多声音楽が多いのに対し、アルメニアではモノフォニックな単旋律の語りものの性格を強く持っています。その語り部はアシュグと呼ばれ、この名から容易に類推できますが、おそらく周囲のペルシアやトルコの吟遊詩人アシュクの影響が強いように思われます。
アルメニアの最も特徴的な楽器に、もの悲しく柔かい音色のダブルリード管楽器ドゥドゥクがありまして、その一番の名手ジヴァン・ガスパリアンは最も広く知られるアルメニア人音楽家です。彼の音楽はまた後日取り上げます。その他に、中東の代表的な楽器として知られる、琴やツィターに似たカーヌーンや、擦弦楽器のカマンチャも、アルメニア音楽でよく使われます。
まず今回は、ソ連崩壊後にアルメニアが独立する数年前のペレストロイカの頃にリリースされたArt & Electronicsというレーベルの「つばめ 哀愁のアルメニア」という盤からご紹介します。廃盤音源のためゼアミHPには載せてないアイテムで、1988年当時起きて間もなかったアルメニア大地震の犠牲者救済のためのアルメニア民謡集です。ソ連時代末期の録音ですから、現在は余り聞けないような大編成の民族アンサンブルの演奏になっていて、それが今では新鮮でもあります。作曲家アラム・マレングリアンの名を冠したマレングリアン民俗アンサンブルの演奏で、18世紀の代表的なアシュクであるサヤト・ノヴァの曲などが演じられています。間で曲名を入れながら最初の5曲をご紹介します。

まずは柔かい音色のドゥドゥクがフィーチャーされた1曲目の「エレジーと舞曲」からどうぞ。

<1 つばめ 哀愁のアルメニア~エレジーと舞曲 2分47秒>

2曲目のタイトルはカノンのコンチェルティーノとありますが、カノンとはカーヌーンのことで、この楽器の華やかな音色と技巧をクローズアップしている曲です。

<2 つばめ 哀愁のアルメニア~カノンのコンチェルティーノ 6分36秒>

3曲目の「シャト・マルド・カッセ」という曲には、中東の名高い恋物語「ライラとマジュヌーン」が出てくるようです。吟遊詩人アシュクの本来の特徴は、第1に愛に関する歌を歌う歌手であること、第2に放浪芸人であること、第3にイスラムの托鉢僧デルヴィーシュやファキールであること、とされますが、少なくとも第1の要素を満たしたロマンティックな歌のようです。この曲はペルシアの8分の6拍子の舞曲レングにそっくりです。

<3 つばめ 哀愁のアルメニア~シャト・マルド・カッセ 3分32秒>

4曲目の「アリ・インズ・アンガチ」という曲には、代表的アシュグであるサヤト・ノヴァの名が登場します。この曲の曲調は、アゼルバイジャンの伝統音楽のムガームに似て聞こえます。

<4 つばめ 哀愁のアルメニア~アリ・インズ・アンガチ 3分1秒>

アルバムタイトルにもなっている5曲目の「つばめ」は、ロシア民謡に入ってロシア語でも歌われているので、最も広く知られたアルメニアの歌だと思います。この曲を聴きながら今回はお別れです。ドルハニヤン作曲のこの歌は「つばめよ、どうしてそんなに空高く飛べるのか、私の故郷の老いた母の許へ飛んで行って、私のことを伝えておくれ。そこにはお前のための巣が待っていることだろう。」と、明るい旋律の内に、民族流亡の悲しみの感情が切々と歌い込まれています。

今後の予定として、アルメニア伝統音楽以外にも、
イランのペルシア古典音楽の巨匠ホセイン・アリザーデ&ジヴァン・ガスパリアン/Endless Vision
アルメニア出身の神秘思想家グルジェフのピアノ曲
アメリカ現代のアルメニア系作曲家アラン・ホヴァネス
これらの音楽を予定しております。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<5 つばめ 哀愁のアルメニア~つばめ 3分19秒>
(Swallow) - Armenian Folk Song for Children

Dzidzernag-Vartuhi Khachatrian Swallows are an important part in Armenian iconography and nature, among eagles, storks, swallows are very precious to Armenians.と解説にありました。Dzidzernag-Vartuhi Khachatrianが女性歌手でしょうか?

The Swollow - "Tzizernak"

現地のオーケストラとピアノによる器楽演奏。

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2018年1月 8日 (月)

今年も「春の海」から

ゼアミdeワールド90回目の放送、日曜夕方に終りました。10日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。今回の放送はFMでは無事流れましたが、サイマルラジオとTuneinのネットラジオ環境では、ネットワークトラブルのため流れませんでした。時々こういうことがありますが、新年の一回目がネットで流れなかったのは残念です。原因を聞いておきます。黒柳さんの父と天満さんのヴァイオリン版は、さすがにyoutubeにはないと思いますので、去年も上げましたが、ルネ・シュメーのヴァイオリンに宮城道雄の自作自演の定番演奏を上げておきます。

宮城道雄:春の海 シュメー Chemet


明けましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い致します。と新年のご挨拶をしましたが、ラヂオバリバリが30日から5日までお正月休みですので、実は12月27日に収録しております。選曲のために一足早いお正月気分を味わっておりました(笑) 放送されるのは本放送が7日と言うことで、辛うじて松の内です。

お正月と言えば、宮城道雄の「春の海」を思い出す方が多いのでは、と去年も始めましたが、去年かけてない音源を選んでご紹介します。1930年の宮中歌会始の勅題として公示されていた「海辺巌(かいへんのいわお)」に因んで、前年の暮れに作曲した筝と尺八の二重奏曲で、宮城道雄の父の出身地である広島県の鞆の浦を訪れた際の、瀬戸内海の印象を三部形式に乗せて標題音楽風に作曲したこの曲は、今では彼の代表作として親しまれています。正月中はどこに行っても耳にする曲ですが、この曲だけの色々な編成の録音を集めた「春の海 大響演」という2枚組が出ておりまして、その盤からのご紹介です。

まず宮城道雄の自作自演ですが、尺八は広門伶風(ひろかどれいふう)という人で、宮城道雄の肉声と、奈良岡朋子による宮城道雄の随筆からの朗読、更に露木茂の解説が入ります。尺八の広門伶風は、この曲の初演を勤めた吉田晴風の弟子とのことです。

<2-6 春の海(朗読入り) 9分14秒>

宮城道雄の筝とヴァイオリンでの演奏は、喝采を博したルネ・シュメーとの録音の他に、黒柳徹子の父である黒柳守綱との演奏も入っておりまして、この方はN響などでコンサートマスターを勤めた人です。ルネ・シュメーのような時代がかった派手さはないですが、堅実な演奏をされる方です。

<1-5 春の海(箏とヴァイオリンによる) 6分53秒>

変り種として、南米のフォルクローレに使われる縦笛ケーナと琴による演奏も入っております。アルゼンチンのケーナの名手ウニャ・ラモスが1978年に来日した際の録音で、琴は当時宮城合奏団のプリマ奏者だった砂崎知子です。少しフォルクローレ風になっている部分もありますが、元々この曲とフォルクローレの音階は結構近いと思います。

<2-1 春の海(箏とケーナによる) 4分13秒>
春の海 ケーナ演奏 Haru No Umi (The Sea In Spring)

やはりウニャ・ラモスでは無いので、他のケーナ奏者の演奏ですが。

ここで、少し宣伝を入れたいと思います。
2月4日に今治中央公民館で第11回今治総合芸能祭がありまして、今年はヴァイオリンで出ます。時間は1時からで3番目です。琴と尺八の葉風会とヴァイオリン、ダンスのコラボで、編成は似ていますが、「春の海」が邦楽の枠内だったのに対して、森岡章作曲の「月に寄する三章」という曲は、昭和40年代の雰囲気が色濃く感じられるナツメロのような、昔のラジオドラマの音楽のような曲調です。2曲目はペルシアの舞曲レングに似た感じにも聞こえます。宜しければ是非お越し下さい。

では、最後にポルンベスクのバラーダ(「望郷のバラード」のタイトルで日本では知られます)の名演で知られる天満敦子のヴァイオリンと、砂崎知子門下の遠藤千晶の2011年10月のライブ録音を聞きながら今回はお別れです。天満さんの1993年発売のアルバム『望郷のバラード』は、クラシックとしては異例の5万枚を超える大ヒットとなり、東欧革命前夜のルーマニアを舞台に、この曲をめぐる謎とヴァイオリニストの恋愛を描いた高樹のぶ子の小説『百年の預言』のヒロインは、天満さんをモデルとしています。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<2-4 春の海(箏とヴァイオリンによる) 7分38秒>

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2018年1月 4日 (木)

ベートーヴェンのSQ15番と高砂の千秋楽

明けましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い致します。
ゼアミdeワールド89回目の放送、大晦日の夕方にありました。年は明けておりますが、いつも通り放送内容をアップしておきます。あと20秒ほどがどうしても入らなかったので、やむを得ず、オープニング曲の頭と、3楽章の解説の一部を削りました。以下の放送原稿には全て載っております。また、何とか時間内に収めようと慌てていたものですから、付祝言の所で、観世流宗家を宗曲と間違って言っておりました。ベートーヴェンの方は、ブダペストSQのyoutubeでは5楽章までの全曲のみのようでした。

放送されるのは31日大晦日の夕方のみで再放送は無しと言うことで、相応しい音楽を色々考えておりました。紅白の前に例えばナツメロとかを聞いて頂くのが良いか、ベートーヴェンの第九か、迷いましたが、前者は今一つ選曲が絞れないので、また来年にでも回すことにしまして、今回はベートーヴェンの音楽にしたいと思います。

今日おかけするのは、交響曲第九番に近い時期に作曲されて、似た感じのテーマ性を感じさせる後期の弦楽四重奏曲から第15番の第3楽章と第5楽章です。民族音楽を中心に聞きながらも、バッハの音楽やベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲などは、昔から変わらず聞き続けている西洋クラシック音楽です。ヌーヴェルヴァーグの監督J.L.ゴダールの映画にも絶妙に引用されていたことは、好事家の方はよくご存知かと思います。

この15番のカルテットは、全部で5楽章から成っていますが、その中でゆったりとした第3楽章は白眉の部分とされています。第九のラストを飾る歓喜の合唱と共通するものを感じる、ベートーヴェン晩年の深い音楽です。

以下ウィキペディアの解説を読み上げてみます。

第3楽章 "Heiliger Dankgesang eines Genesenen an die Gottheit, in der lydischen Tonart" Molto Adagio - Andante
ヘ調のリディア旋法、五部形式
「リディア旋法による、病より癒えたる者の神への聖なる感謝の歌」と題された、最も長い楽章。全体のクライマックスに位置している。ゆっくりとしたヘ調の教会旋法による部分と、より速めの「新しい力を得た」ニ長調の部分の交替で構成される。この楽章は、ベートーヴェンが恐れていた重病から快復した後に作曲されたため、上記のような題名が付された。

<3 Beethoven String Quartet No.15 In A Minor, Op.132 - 3. Molto Adagio 16分18秒>
Beethoven - String quartet n°15 op.132 - Budapest


続きまして4楽章を飛ばして終楽章の第5楽章ですが、「失われた時を求めて」で知られるフランスの小説家マルセル・プルーストが、「ベートーヴェンでは、後期のピアノソナタや弦楽四重奏曲第15番の最終楽章を好み、真夜中に自室に楽団を呼んで演奏させたこともある」というエピソードを読んだことがあります。当時の有名なカペー弦楽四重奏団だったのかも知れません。この楽章の主題にはもの凄い秘話がありまして、実は第九の終楽章の主題として予定されていたそうです。それがあの合唱付に差し替えられました。もしこの曲が採用されていたら、憂いを含みながら素晴らしく情熱的で力動感溢れる名旋律ではあっても、器楽曲ですから、年末に第九が恒例になるようなことはなかったのではと思います。ブダペスト弦楽四重奏団の60年代の演奏でどうぞ。

<5 Beethoven String Quartet No.15 In A Minor, Op.132 - 5. Allegro Appassionato 6分33秒>

では、最後にゼアミらしく謡曲「高砂」の有名な部分を聞きながら、今回はお別れです。
世阿弥作のお能の名曲「高砂」と言えば、結婚式に謡われる「高砂やこの浦舟に帆を上げて」の祝言の小謡でよく知られますが、ラストの「千秋楽は民を撫で」の部分が大晦日に相応しいように思いました。謡うのは観世流宗家の観世清和氏です。私が95年に習ったのは喜多流謡曲ですが、観世流の謡いは5流の中では一番近く感じます。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。皆様どうぞ良いお年をお迎え下さい。

<3 観世流初心小謡集 高砂~千秋楽は民を撫で 37秒>
DVD実践編3 謡「千秋楽」

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2017年12月25日 (月)

Ensemble Basiani

ゼアミdeワールド88回目の放送、日曜夕方に終りました。27日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。放送でかけたバシアニの宗教歌は、45分の映像にかなり含まれています。彼らのハッサンベグラはライブ映像がありました。

グルジア音楽の8回目です。今回でグルジア音楽巡りは最後にしようかと思いますが、手元にあるグルジア音源の最後の一枚、OcoraのBasianiアンサンブルを中心にご紹介します。グルジアと並ぶコーカサスのキリスト教国アルメニアの宗教歌と比較しながらにしようかとも考えましたが、次回以降2回は年末年始のプログラムを考えておりますので、アルメニア音楽は年明け後に回すことにしました。収録は20日にしておりますが、本放送が流れるのはちょうどクリスマス・イブですので、グルジア正教関連の曲をまとめてかけようかと思います。
その前に世俗曲ですが何度か取り上げましたハッサンベグラをバシアニ・アンサンブルも歌っておりますので、そちらからどうぞ。ロシアの大作曲家ストラヴィンスキーが「人類の作った最高の音楽」と絶賛した曲です。バシアニはイタリア風にも聞こえるグループ名ですが、youtubeでも頻繁に目にするグループで、現代では最高のグルジア合唱を聞かせていると思います。

<12 Ensemble Basiani / Khasanbegura 3分2秒>
Ensemble Basiani - Khasanbegura


バシアニの盤は24曲入っていて、前半14曲が世俗的な民謡、後半10曲が宗教歌になっております。その後半をまとめて時間近くまで続けてかけます。東部のカヘチア、西部のグリアの、同じ聖母マリア賛歌のShen Khar Venakhiから始まりますが、最初から聖なる雰囲気が色濃く感じられます。終わり近くなりましたら、また出てきます。

<15 Ensemble Basiani / Shen Khar Venakhi 3分18秒>
<16 Ensemble Basiani / Shen Khar Venakhi 2分47秒>
<17 Ensemble Basiani / Jvarsa Shensa 1分35秒> 十字架
<18 Ensemble Basiani / Shen, Romelman Gananatle 2分42秒>
  <19 Ensemble Basiani / Angelosi Ghaghadebs 1分52秒> 天使は泣いていた
<20 Ensemble Basiani / Ganatldi, Ganatldi 2分13秒> 輝け輝け、新しいエルサレム
<21 Ensemble Basiani / Kvertkhi leses Dzirisagan 1分39秒>

Basiani Ensemble: Georgian Polyphony Singing - Religious Songs


では最後にグルジア音楽シリーズの最初にかけました100年前の録音から、アリロを聴きながら今回はお別れです。グルジア版のハレルヤとして、これまで何度かかけた曲です。録音は1907年ですから110年前になります。グリア地方のMakvaneti合唱団の歌唱で、現代の最高峰と謡われたルスタヴィ合唱団のリーダーのアンゾール・エルコマイシヴィリの祖父に当るジゴ・エルコマイシヴィリが率いていたグループの非常に貴重な録音です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<24 グルジア共和国での最初の録音 Drinking Horns & Gramophones~Alilo 3分14秒>

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2017年12月18日 (月)

グルジア正教の宗教歌

ゼアミdeワールド87回目の放送、日曜夕方に終りました。20日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。youtubeは見つかった該当(あるいは関連)音源のみです。

グルジア音楽の7回目です。クリスマスが近いので、今回も2007年リリースの英Topic Recordsの2枚組「グルジアの伝統音楽 (2CD) SONGS OF SURVIVAL: Traditional Music of Georgia」から、2枚目のグルジア正教の宗教歌を抜粋して聞いて行きたいと思います。

この盤で非常に気になった一曲からまずかけてみます。最後の方でラテン語のキリエ・エレイソンが出てきまして、グルジア正教にカトリックの聖歌であるはずのキリエがあるのだろうか?と、先日ゼアミブログに書きましたが、後で調べましたら「主よ憐れみ給え」の意味の「キリエ・エレイソン」の文句は、元はギリシア語で、この祈りの文言はグルジア正教などの東方教会にも入っているそうです。ですからキリエに関してはグルジア語ではなく、ギリシア語で歌われています。グレゴリオ聖歌はもちろん、モーツァルトのレクイエムなどにも必ず出てくるキリエですから、このグルジアのキリエと聞き比べると、とても興味深いと思います。歌唱はSioni Cathedral Choirで、首都トビリシでの2002年の録音です。

<23 Sioni Cathedral Choir / Kyrie Eleison 4分11秒>
Kyrie Eleison

youtubeで聞けたのは、この旋律のみで、英Topic Records盤の旋律は見当たらずでした。

続いて、やはり何回か前の放送でかけた後、ゼアミブログで調べていて、カトリックのアレルヤと同じルーツの文言と分かったアリロと言う曲です。これまでにビクター盤などで色々かけて来ました。元はヘブライ語の「賛美せよ」の意味のハレルーで、後ろに「神を」の意味の「ヤー」が付いたハレルヤの文句でよく知られています。ラテン語ではHが取れてアレルヤになっていますが、グルジア語でもHが取れた形になっているようです。2枚目の7曲目に出てくるアリロは、Racha地方のクリスマス・キャロルとのことで、歌唱はDetsishi Ensembleです。

<7 Detsishi Ensemble / Alilo 1分51秒>

何度かこれまでに登場しましたムティエビ合唱団でもアリロが入っていますので、続けてかけます。こちらは西グルジアのImereti地方のクリスマスの歌で、1999年ロンドンでの録音です。曲名はNabakeuri Aliloとなっております。

<8 Mtiebi Choir / Nabakeuri Alilo 2分25秒>

声楽が続きますので、一曲器楽曲を入れます。前回も取り上げましたKesane Quartetですが、グルジア北東部の山岳地帯の旋律をパンドゥリ、チョングリ、アコーディオンで演奏しています。

<6 Kesane Quartet / Mtis Melodiebi 2分12秒>

3曲目は、クリスマスではなくイースターの歌のようですが、前回の後半でかけましたジョージアン・ヴォイスの歌唱でChonaという東グルジアの曲です。イースター・エッグを村の家々に配りながら歌われる歌だそうですが、この歌のルーツは4世紀のグルジアのキリスト教国教化以前に溯るようです。

<3 Georgian Voices / Chona 4分24秒>
Georgian song - Chona

ジョージアン・ヴォイスではなく、ルスタヴィ・アンサンブルの歌唱です。

17曲目にはジョージアン・ヴォイスの歌唱で、西グルジアのグリア地方の宗教歌が入っていますが、通常の教会歌では出てこないクリマンチュリのパートが入っているのがグリア地方らしく特徴的です。

<17 Georgian Voices / Utsinares Mas Vadidebt 2分19秒>
Ensemble IMERI - Ucinares Mas Vadidebt


22曲目に飛びまして、長いドローン(持続音)の上で極めて美しく瞑想的に歌われるUpalo Shegvitskale(神は許したもう)という曲ですが、2曲目の同じ曲とは別の団体、シオニ・カテドラルの混声合唱が歌っています。後で2曲目をかけますが、まずは22曲目をどうぞ。

<22 Mixed Choir of Sioni Cathedral / Upalo Shegvitskale 3分30秒>

では最後に2枚目の2曲目を聴きながら今回はお別れです。同じくUpalo Shegvitskale(神は許したもう)という曲ですが、歌っているのはSt.Panteleimon Chantersというグループで、グランダ・グリカシヴィリという人が女性パートを歌っています。中世の曲が多いグルジア正教の歌の中で、この曲はソビエト後にジェマル・アダマシヴィリによって作曲されています。しかし、瞑想的な曲調はグルジア正教の歌そのもののように思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<2 St.Panteleimon Chanters / Upalo Shegvitskale 3分30秒>
wminda panteleimonis tadzris mgalobelta gundi ufalo shegviwyalen

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2017年12月11日 (月)

SONGS OF SURVIVAL: Traditional Music of Georgia -1

ゼアミdeワールド86回目の放送、日曜夕方に終りました。13日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。今日は動画の見つかった2曲だけアップしました。ギター伴奏の曲は、また後日探してみます。

グルジア音楽の6回目です。今回は、数年前に売り切ってしまってからは廃盤との情報がありました2007年リリースの英Topic Recordsの2枚組「グルジアの伝統音楽 (2CD) SONGS OF SURVIVAL: Traditional Music of Georgia」を何とか再び手に入れましたので、この中からかいつまんでご紹介したいと思います。
多声の男声合唱は勿論、名曲「スリコ」、ヴェテラン女性歌手レラ・タタライゼの歌から、グルジア正教の宗教歌まで、多様なグルジアの歌を多角的に追った内容で、1枚目には.仕事歌、哀歌、祝い歌が入っております。演奏はSoinari Ensemble, Kesane Quartet, Mzetamze Ensemble, Tsinandali Ensemble, Georgian Voices, Lela Tataraidze, New Mtiebi Ensemble etc. となっております。
2枚目は、季節の歌、宗教歌、家族の生活の歌となっておりまして、演奏はSt.Panteleimon Chanters, Georgian Voices, Mtiebi Choir, Jokia Gugava, Kesane Quartet, Detsishi Ensemble, Zedashe Ensemble, Sioni Cathedral Choir, Soinari Ensemble etc. と、沢山のグループが登場します。
この盤には現代イギリスの二人の著名な作曲家が評を寄せておりまして、ギャヴィン・ブライヤーズは、「グルジア人はおそらく世界中で最も音楽的な人々である。ここでは、プロフェッショナルとアマチュアの差は無意味である。 結婚式の歌、子守歌、または不協和音の宗教的な歌であろうと、どこでも驚くほど美しい3パートのヴォーカル・ポリフォニーが見つかる。」このように語っています。
ミニマル・ミュージックの著名な作曲家マイケル・ナイマンは「録音・制作者のマイケル・チャーチは献身的な研究と社会的責任感を兼ね備えている」と賛辞を送っています。

この2枚組には実に色々な音楽が入っていますが、これまでかけてなかったようなタイプの曲を聞いて行きたいと思います。
ゼアミブログの方で一足先にかけましたベテラン女性歌手レラ・タタライゼの自作パンドゥリ弾き語り曲をまず一曲どうぞ。広いヴィブラートをかけた余韻を残す歌い方とリズムは、彼女の出身地であるグルジア東北部のトゥシェティ地方のスタイルを反映しているようです。歌詞内容は「彼女の恋人と結婚することで両親の希望に反することを敢えてしない女性の愚かな歌」と解説にありました。この人の演奏には、どこか中央アジア的な感じがあります。

<14 Lela Tataraidze / Vertskhlis Tasadamts Maktsia 2分47秒>
アップされていますが、本国で動画はブロックされているようです。

次もレラ・タタライゼの曲で「朝もや」というタイトルですが、演奏しているのは彼女の姉妹のエテル・タタライゼ率いるケサネ・カルテットです。トゥシェティ地方の春と景色の美しさにインスパイアされた曲とのことです。この曲もトゥシェティのすぐ近くの、ダゲスタンのアヴァールの歌などにそっくりに聞こえます。

<15 Kesane Quartet / Janghi (Morning Mist) 2分41秒>
Красиво поют! Lela tataraidze Jangi tushuri

先日アップしましたが、この曲にはこのライブ映像がありました。実に味わい深い演奏です。多分トピック盤の音源はやはりブロックされていると思います。

1枚目の14曲目からかけ始めましたが、2曲飛んで今度は18曲目です。南西部アチャラ、東北部トゥシェティの歌に続いて同じく女性アンサンブルのケサネ・カルテットの演奏ですが、ここで演奏されているのは東部ではなく黒海に面した西部グルジアのグリア地方の民謡で、4弦のチョングリ伴奏です。裏声のクリマンチュリの本場ですが、こういうしっとりした趣きもグリアの歌にはあります。メロディラインがいかにもグリアだ、と色々聞いてくると分かって来ます。

<18 Kesane Quartet / Mival Guriashi (I am going to Guria) 2分29秒>
The Rustavi Choir - Mival Guriashi (Going to Guria) 1989

ケサネ・カルテットでは無さそうですが、ルスタヴィ合唱団のアメリカNonesuch盤の音源がありました。この曲は他にも動画がたくさんありました。

19曲目もケサネ・カルテットの演奏ですが、ここではグリア地方の北に位置するグルジア西部ミングレリア地方の民謡で、ヨーロッパ的あるいは地中海的なハーモニーが聞こえてきて、すぐ隣なのにグリアの民謡とは全く対照的なように思います。

<19 Kesane Quartet / Pot-Pourri  2分39秒>

次は25曲目ですが、打って変わって、前々回かけたZamtariaのような、男性ポリフォニー歌手がギター伴奏で優しくファルセットで歌う、どこか地中海的ハーモニーにも聞こえるMepis Qaliという曲です。Theatre University Quartetの演奏です。

<25 Theatre University Quartet / Mepis Qali(The King`s Daughter) 3分31秒>

そして26曲目には、本格的なグルジアの男声合唱を聞かせるグループのジョージアン・ヴォイスが、ここではギター伴奏でスリコを歌っています。間違いなくグルジアで一番有名な歌で、1895年にグルジアの詩人Akaki Tsereteliによって書かれた愛の詩に、Varinka Tsereteliによってこの美しいメロディが付けられてから、ロシア~ソ連を越えて世界中で知られるようになりました。恐怖政治を敷いたスターリンも愛好していたそうです。

<26 Georgian Voices / Suliko 2分10秒>

1枚目のラスト、27曲目もジョージアン・ヴォイスの歌唱でSaqartvelo Lamazo(美しいグルジア)で締めています。この曲もギター伴奏の非常に美しい曲と歌唱です。

<27 Georgian Voices / Saqartvelo Lamazo 3分4秒>

では最後に24曲目に戻りまして、同じくジョージアン・ヴォイスの演奏ですが、今度はオーソドックスなグルジアの男性合唱を聴きながら今回はお別れです。ヨーデルのようなクリマンチュリの入った非常に難度の高いグリア地方の仕事歌のようです。
次回はクリスマスも近づきますので、英Topic Records盤2枚目のグルジア正教の宗教歌を中心に聞いて行きたいと思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<24 Georgian Voices / Shemoqmedura 4分39秒>

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2017年12月 4日 (月)

Trio Mandili

ゼアミdeワールド85回目の放送、日曜夕方に終りました。6日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。Cechnuri Poppuriはyoutube無しでしょうか、検索で出てきたのは違う曲のようですが、珍しいコンサート生映像ですので貼っておきます。今日の3本以外は、また後日探してみます。

グルジア音楽の5回目です。今回はいよいよyoutubeで大ブレークした女性3人組のトリオ・マンディリです。トリオ・マンディリは、2014年頃にyoutubeで火がついたそうですが、私は2年ほど前にフェイスブックの友達の書き込みで初めて知りました。何本か動画を見てみて、彼女らのチャーミングさに成る程と思いましたが、しっかりグルジア音楽の伝統に則っていることにも驚きました。3つの声の合せ方、独特な和声とコード進行とメロディライン、弦楽器パンドゥリやチョングリと打楽器ドリが弾(はじ)き出す躍動的な8分の6拍子のリズムなど、どれもグルジア音楽の特徴そのもので、そこへポップなアレンジが入ったりすると、却ってつまらなくなるように思いました。同じようなことを男性3人でやっているCDもありましたが、やはりキュートな女性トリオにはビジュアルで叶わないなと思いました(笑) しかし、ビジュアルだけでなく、確かな歌唱力とパンドゥリの演奏、共に本格的で大変素晴らしいです。メンバーが何度か変わっているようですが、現在のメンバーはIrina Midelauri, Tatia Mgeladze, Tako Tsiklauriの3人で、大体の曲でリードヴォーカルはタチア・ムゲラゼが取っています。youtubeで歩きながら自撮りしている一番前の女性です。

youtubeで視聴した魅力的な楽曲が2枚のアルバムに入っていますが、その中から、これまで放送でかけたことのある曲を彼女らが取り上げていましたので、まずその2曲からかけてみたいと思います。

2017年のセカンド最新アルバムEnguroに収録されているカルトゥリ・ポップリと題する曲は、首都トビリシ周辺のカルトゥリ地方の有名曲という意味だと思いますが、メドレーの50秒辺りから出てくるShatilis Asuloという曲は、前回ソイナリ・アンサンブルのドゥドゥキ演奏でかけたシャティリス・アスロと同じ曲でした。まだ耳に残っている方もいらっしゃるかと思いますので、こちらをかけてみます。彼女らの溌剌とした歌唱もとても良いです。

<9 Trio Mandili / Enguro - Kartuli Poppuri 2分57秒>
Trio Mandili - Kartuli Poppuri


他に以前かけた曲が含まれている例としまして、チェチェンの時にかけましたマッカ・サガイーポヴァの代表曲の一つPretty Boyが、2015年のアルバムWith Loveのチェチヌリ・ポップリと題するチェチェンの有名曲メドレーの1分50秒辺りに出てきます。北隣に位置するチェチェンの音楽というのも、グルジアで広く知られているということでしょうか。

<9 Trio Mandili / With Love - Cechnuri Poppuri 3分12秒>
Trio Mandili / Трио мандили. Москва 27.04.2016. Концерт.


それでは、2014年にyoutubeでいきなり300万件を越えるアクセスがあって大注目を浴びたグルジア民謡のAparekaを続いてかけてみます。何気なく歩きながら3人で撮ったこの演奏の映像が、彼女らの生活を劇的に変えました。この曲が2015年のファースト・アルバムWith Loveの一曲目を飾っています。

<1 Trio Mandili / With Love - Apareka 2分38秒>
Trio Mandili - Apareka (The CD-album is available on http://triomandili.com/)


2曲目のQrizantemebiという曲もメロディの綺麗な印象的な曲で、意味は英語(chrysanthemum)で推測できるように菊の花のことではと思いましたが、どうでしょうか?(実は「菊」のグルジア語単語は他に見つかりましたが、このタイトルは余りに似ているので、もしかしたらラテン語かロシア語からの外来語かと思いまして) 日本の菊のイメージと似通う、ロシア歌謡のフリザンテマや、プッチーニの弦楽四重奏曲「菊」を思い出させる、美しくしめやかな曲です。

<2 Trio Mandili / With Love - Qrizantemebi 2分55秒>

ファーストアルバムWith Loveから、もう一曲聞いて頂きましょう。Mokhwel Mshvidobit! (You Are Welcome!)という曲は、パンドゥリのリズムパターンが変わる辺りがスリリングで、コーカサス音楽のわくわく感が伝わってきます。

<8 Trio Mandili / With Love - Mokhwel Mshvidobit! (You Are Welcome!) 2分14秒>

2017年リリースのEnguroからも、もう4曲続けて時間まで聞いて頂きましょう。コーカサス音楽らしい旋律美と躍動的なリズムが溢れた4曲ですが、特に最初のSvanuriと言う曲は素晴らしいです。Erti Nakhvitがアルバム1曲目で、続くNislebiはチェチェンの音楽にそっくりに聞こえます。
彼女らの盤ですが、1stアルバムは完売(初回プレス分?)のようですが、DLでも手に入ります。LPも出ているようです。セカンドは最初からDLのみのようです。
Trio Mandili で検索すると、youtubeやitunesで見つかります。

これらの曲を聴きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<5 Trio Mandili / Enguro - Svanuri 2分46秒>
<6 Trio Mandili / Enguro - Kapia 3分10秒>
 <1 Trio Mandili / Enguro - Erti Nakhvit 1分56秒> この曲だけ時間が足りず、かけられずでした。
<2 Trio Mandili / Enguro - Nislebi 1分51秒>

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2017年11月27日 (月)

Soinari / Folk Music from Georgia Today

ゼアミdeワールド84回目の放送、日曜夕方に終りました。29日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。忘れられない名曲、Zamtariaがあったので、これ一本で満足してしまいました(笑) 他の曲はまた後日探してみます。ムティエビについては、先週から少し見ておりました。いつ頃の映像か不明ですが、生映像を一本上げておきます。

グルジア音楽の4回目です。今回は1993年リリースのドイツWergoの「ソイナリ~グルジアの今日の民族音楽」からご紹介したいと思います。先週のオコラ盤は廃盤でしたが、この盤は辛うじて現役盤かと思います。しかし、リリースから既に24年も経っていることに驚きました。「今日の」と言うのも、現在では変わってきているかも知れませんが、秀逸なコンピレーションですから、まずは曲順にしばらくご紹介したいと思います。

1曲目は、アルバムタイトル通りのSoinariアンサンブルの演奏で、Akh Mezurnevという曲です。Mezurnevというのがズルナ奏者を指すようですので、チャルメラやオーボエと同族のダブルリード系管楽器ズルナが主役かと思いきや、ここで吹かれているのは同族のドゥドゥキのようです。歌とカフカス・ドラム(ドリ)の伴奏が入ったアンサンブルです。

<1 Soinari / Folk Music from Georgia Today - Akh Mezurnev 2分13秒>

2曲目は東部グルジア、カルトリ地方の仕事歌Gutnuriという曲で、Mtiebiアンサンブルの男声合唱です。この後かけます同じグループのフォーク的な歌唱とは対照的な伝統的ポリフォニーです。

<2 Soinari / Folk Music from Georgia Today - Gutnuri 5分9秒>

3曲目も同じMtiebiアンサンブルの演奏ですが、ギター伴奏の哀愁漂うグルジアらしい佳曲で、曲名はZamtariaとありまして、「冬」の意味になるようです。正にその通りの蕭々としたもの寂しいイメージで、個人的に最初から非常に惹かれていた歌唱です。伝統的なポリフォニーと、こういうフォーク的な歌唱の両方をこなす素晴らしいグループだと思います。

<3 Soinari / Folk Music from Georgia Today - Zamtaria 2分36秒>
Ensemble Mtiebi - Zamtaria (from Soinari: Folk Music From Georgia Today)


MUSIQUES DE TBILISI • ENSEMBLE MTIEBI


4曲目は再びソイナリ・アンサンブルのドゥドゥキ中心の演奏でIdzhasiという都会の伝統曲とのことです。このアンサンブルで吹かれているのは、けたたましい音のズルナではなく、ドゥドゥキという、もっと柔らかい音の出るダブルリード管楽器です。同族のダブルリード管楽器にはアルメニアのドゥドゥクやトルコのメイなどがありますが、アルメニアのドゥドゥクは特に有名です。アルメニアの曲を思わせる哀愁味を帯びた瞑想的な旋律を、ドローン(持続音)のドゥドゥキ伴奏で演奏しています。

<4 Soinari / Folk Music from Georgia Today - Idzhasi 2分41秒>

1曲飛んで6曲目もソイナリ・アンサンブルですが、ムティエビ・アンサンブルの男声合唱のメンバーが入っての演奏です。Shatilis Asulo(私の娘シャティリス)という曲ですが、現代の都市の歌とありました。8分の6拍子のカフカスらしい快活な旋律です。

<6 Soinari / Folk Music from Georgia Today - Shatilis Asulo 2分23秒>

この盤には以上2グループの他に、Mzetamzeアンサンブルという女性のグループも入っておりまして、時折パンドゥリなどの弦楽器も伴ってグルジアらしい和声の清澄なコーラスを聞かせています。まずはロシア民謡のレパートリーとしても有名な25曲目のグルジア民謡のスリコをどうぞ。

<25 Soinari / Folk Music from Georgia Today - Suliko 1分57秒>

ムゼタムゼ・アンサンブルの歌唱で、もう一曲、7曲目のDzhamataというダンス・ソングで、山岳地帯のRacha地方の伝統的な合唱曲です。男声合唱をそのまま女声に置き換えたようなグルジアらしい合唱を聞かせます。

<7 Soinari / Folk Music from Georgia Today - Dzhamata 1分50秒>

では最後に21曲目のShustariというソイナリ・アンサンブルのドゥドゥキ演奏を聴きながら今回はお別れです。この曲も伝統的な都市部の旋律と解説があります。シューシタリーと言えば、すぐさまペルシア音楽のホマーユン旋法に属する艶美なシューシタリーを思い出します。北コーカサスと共通する伝統的な多声合唱と、この曲のような南のペルシア音楽など西アジアの音楽の影響の共存するグルジア音楽の色々な楽曲を聞くと、やはりパラジャーノフの映画を思い出させます。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<21 Soinari / Folk Music from Georgia Today - Shustari 6分4秒>

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2017年11月20日 (月)

Georgie - Chants de travail / Chants religieux

ゼアミdeワールド83回目の放送、日曜夕方に終りました。22日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。今回は50年前の録音の古い廃盤音源で、動画はやはり皆無でしたから、同じ曲あるいは同じ地方の演奏者でアップしておきました。(オロヴェラとアリロは先日取り上げましたので省略しました)

グルジア音楽の3回目です。今回はリリースが1989年と言うフランスOcoraの古い盤で「グルジアの仕事歌と宗教歌」と、ドイツWergoの「ソイナリ~グルジアの今日の民族音楽」からご紹介したいと思います。ヴェルゴの方は辛うじて現役盤かと思いますが、オコラの方は既に廃盤の音源で、こちらは録音が1967年頃ですから、グルジア各地のより古い伝承が聞けるように思います。(Chants de travailの部分は、「労働歌」という訳もたまに見かけましたが、当時グルジアが属していたソ連の場合、全く違った意味合いになりますので、「仕事の歌」としております)
まずは、オコラの「グルジアの仕事歌と宗教歌」から、前回農作業の際の仕事歌としてカヘチアの男声合唱版でかけたオロヴェラという曲をかけてみます。こちらは同じくカヘチアの女性の独唱で、録音は1967年です。深い瞑想的な哀歌の類という点では共通していますが、男声ポリフォニーとはかなり異なる旋律です。日本の民謡にも元歌というのが残っている場合があって、一般によく知られたメロディとかなり違っていたりもしますが、それと同じようなパターンなのかも知れません。

<2 Georgie - Chants de travail / Chants religieux    Orovela 2分50秒>

裏声パート、クリマンチュリが自由奔放に出てくるハッサンベグラは、前々回に100年前の録音でかけまして、ゼアミブログの方ではルスタヴィ合唱団などの動画を上げて、かなり人気があったようです。このオコラ盤のラスト26曲目に入っているDedoplis Maqrouliと言う曲も、同じタイプの華やかな曲ですので、そちらをかけてみます。クリマンチュリの本場、黒海に面するグルジア南西部グリア地方の婚礼の聖歌の一種で、旧約聖書の詩篇(44編10節?)の「女王は素晴らしい金を纏っている」という詩句に基づいています。クリマンチュリの自由闊達な歌唱入りで詩篇を表現するとは、驚きです。

<26 Georgie - Chants de travail / Chants religieux    Dedoplis Maqrouli 2分7秒>

前回カヘチアの男声合唱でかけましたアリロというグルジア正教のクリスマスの歌も、カヘチア他、違う地方の歌が3曲オコラ盤には入っておりますので、続けてかけます。アリロとは、ラテン語ならアレルヤに当るようです。やはりいずれも1967年録音です。クリスマス・イヴに村の家々を行列して訪問する際に歌われ、この歌の響きの中で人々は心安らかにクリスマスを迎える、という歌です。

<18 Georgie - Chants de travail / Chants religieux    Alilo of Letjkhoumi Male Polyphonic Chorus 2分47秒>
<19 Georgie - Chants de travail / Chants religieux    Alilo of Mingelie. Vocal Quartet 1分18秒>
<20 Georgie - Chants de travail / Chants religieux    Alilo of Kakhetie.Male Polyphonic Chorus 2分9秒>

クリスマスの歌が出たところで、鐘の音も入っておりますので、併せてかけてみます。タイトルはGoudani Sanctuary Bellとなっております。

<22 Georgie - Chants de travail / Chants religieux    Goudani Sanctuary Bell 35秒>

グリア地方のイースター(復活祭)の合唱と、旧約聖書のイザヤ書に基づいていると思しき曲もありましたので、続けてかけてみます。やはりグリアでは最もグルジアらしいイメージの歌声が聞けるように思います。

<15 Georgie - Chants de travail / Chants religieux    Forthy Resurrection 1分2秒>
<17 Georgie - Chants de travail / Chants religieux    Isaiah`s Joy 1分26秒>

4世紀のキリスト教導入以前からのグルジア最古の歌とされる太陽賛歌リーレは、前回イネディの「スヴァネチのポリフォニー」の録音をかけましたが、オコラ盤にもスヴァネチの録音で入っておりますので、かけてみましょう。オコラとイネディでは、同じスヴァネチでも30年ほど録音時期が違うと思います。

<10 Georgie - Chants de travail / Chants religieux    Lile-Hymn of the Sun or Supreme Divinity 2分23秒>
Lile


同じスヴァネチの歌で、ザリ(鐘)という葬式の嘆き歌がありまして、その録音が太陽賛歌リーレに続いて入っておりますので、そちらをかけます。その音楽的起源は有史以前に溯るとも言われています。

<12 Georgie - Chants de travail / Chants religieux    Zari - Lamentation of Balskvemo 3分29秒>
Polyphonies vocales de Svanétie (Géorgie)

ザリは入ってないようですが、貴重なスヴァネチの男声合唱の生映像で、後半弦楽器が入る部分は、12日の放送でかけた宗教歌Lazhgvazhです。

オコラ盤「グルジアの仕事歌と宗教歌」のみで今回は終りましたが、このように古い伝承歌の宝庫のような一枚で、廃盤になっているのが惜しまれます。ムスリムが多く、現在はグルジア内の自治共和国になっている南西部のアジャリアの仕事歌ナドゥリの音源は、この盤の中では比較的長尺で入っておりまして、段々エキサイトして速くなるところなどは、スーフィーの宗教歌ジクルに似た感じにも聞こえます。クリマンチュリと思われる高音パートが派手に出てきます。時間までその一曲Kali Viqav Aznaouri(私は乙女だった)を聴きながら、今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<7 Georgie - Chants de travail / Chants religieux    Kali Viqav Aznaouri (I was a damsel) 6分12秒 抜粋>

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2017年11月13日 (月)

グルジアの東部と北西部の歌

ゼアミdeワールド82回目の放送、日曜夕方に終りました。15日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。ビクター盤の映像はやはりありませんでした。代わりにオマー・シャリフに似た男らしい容貌の名歌手ハムレット・ゴナシヴィリ(Hamlet Gonashvili)の名唱を交えて上げておきます。素晴らしい節回しに耳が釘付けです。

先日5日はラヂオバリバリ15周年の交流会がハーバリーでありまして、各パーソナリティが色々な出し物をされましたが、私もバッハの無伴奏チェロ組曲から、お祝いの席に相応しい晴れやかな3曲を弾かせて頂きました。曲は組曲1番のサラバンドとプレリュード、3番のサラバンドの3曲でしたが、3曲目の解説で、ど忘れしていたローゼン師匠の名文句を思い出しましたので、今回まず初めにここで言っておきたいと思います。後半の辺りで、先生が弾きながら遠い目で一言つぶやいたのは、Old day was gone.と言う文句でしたが、それがいつまでも忘れられない名文句として記憶に残っています。最初聞き間違えてAll day was gone.と覚えてしまっていまして(笑)、卑近な譬えですが、まるでヤマトの沖田艦長が帰還直前に久々に地球を見届けてから亡くなる時のような、走馬燈を見るようなイメージなのかと早合点しました。過ぎ去った昔を回想しているところまでは一致していて、確かにそんなイメージのある曲調なので、それを噛みしめながら弾くようにしています。サラバンドは静かな曲調ながら一曲に起承転結が感じられ、単独で弾かれることも比較的多いように思いますが、この3番のサラバンドを弾く際の一般的な心掛けとして、You must be actor.という師匠のコメントも印象に残っています。

さてグルジアに戻ります。前回からユネスコの世界無形遺産にも指定されているグルジアの多声合唱を聞いておりますが、ビクターJVCワールドサウンズシリーズの「サカルトベロ 奇蹟のポリフォニー」はやはり見つからないので、今回はこのシリーズ第3集の「カヘチア 奇蹟のポリフォニー」と、フランスのレーベルIneditの「スヴァネチのポリフォニー」を比較しながら聞いて行きたいと思います。グルジアの合唱はロシア正教聖歌の元になったとも言われ、グルジアは日本の5分の1ほどの面積にも関わらず国の東と西でかなり印象が違っています。
「カヘチア 奇蹟のポリフォニー」は、シリーズ3枚の中では最も美しく滑らかで輝かしい大人の男声合唱を聞ける盤ではないかと思います。カヘチアと言うのはグルジア東部の地方の名前で、この辺りは海に面してないけど、クロアチアのアドリア海沿岸部ダルマチア地方の男声合唱クラパ歌謡にも通じるような、ヒロイックかつダンディで幾分地中海的な感じもある歌を聞けるように思います。

まずは一曲目のディアンベゴという曲です。ティナという美しい娘を持つディアンベゴという男性を称える歌とのことで、持続低音のドローンをバックに朗々と響き渡る独唱が非常に美しいです。カヘチア王国の首都であったテラビにある5つの合唱団の中で最も高い評価を受けていたツィナンダリ合唱団の1989年の録音です。

<カヘチア 奇蹟のポリフォニー~ディアンベゴ 4分>

2曲目のアリロという曲はグルジア正教の祈りの歌で、クリスマス・イヴに村の家々を行列して訪問する際に歌われます。この歌の響きの中で人々は心安らかにクリスマスを迎える、という歌です。

<カヘチア 奇蹟のポリフォニー~アリロ 3分27秒>
Alilo-Georgia


Alilo-Georgian Folk


次は4曲目に飛んで、オロヴェラという曲ですが、前回のマルトゥベでも聞けたような深遠な静謐さを湛えた曲です。豪快なポリフォニーだけでなく、こういう静かで深い表現も聞きものです。独唱とドローン共に、きわめて柔らかく静かに歌われる一種の哀歌ですが、農作業の時に歌う歌のようで、畑を耕しながら自分の悩みや苦しみを土や牛や鋤(すき)に歌いかける内容とのことです。

<カヘチア 奇蹟のポリフォニー~オロヴェラ 4分54秒>
Georgian Folk Song Orovela by Hamlet Gonashvili

Hamlet Gonashvili他の生演奏

Hamlet Gonashvili - Orovela

Hamlet Gonashviliのスタジオ録音

次にフランスIneditの「スヴァネチのポリフォニー」を比較でかけてみます。スヴァネチまたはスワネティは、グルジア北西部に位置し、険しい自然環境のため、独自の言語と文化を継承して来ている地方です。滑らかな東部のカヘチアの歌に比べて、不協和音を多用した曲が多く聞けます。歌っているのはリホ・アンサンブルというグループです。

4世紀のキリスト教導入以前からのグルジア最古の歌とされる2曲目の太陽賛歌リーレと、いかにもグルジアらしい旋律の3曲目の宗教歌Lazhgvazhと続けてかけます。3曲目では擦弦楽器チュニリと素朴な竪琴チャンギの伴奏が入ります。

<Georgia - Vocal Polyphonies from Svaneti / Lile 2分45秒>
<Georgia - Vocal Polyphonies from Svaneti / Lazhgvazh 3分40秒>
4000 year old svaneti song


グルジアと言えば、長寿の国として知られていて、1970年前後に放映された人形劇サンダーバードの、確か明治屋のCMで、乳製品を沢山摂る長寿国としてグルジアのモンタージュが出てきたのを覚えています。長寿の秘訣は美味しい料理とヨーグルト、世界最高とも言われるグルジア・ワイン、そして合唱とも言われます。カヘチアの合唱に戻って、宴会の席で長寿の老人を讃える歌、ベリ・カツィを聞きながら今回はお別れです。次回にするかどうかまだ未定ですが、大人気の女性トリオTrio Mandiliも取り上げたいと思っております。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<カヘチア 奇蹟のポリフォニー~ベリ・カツィ 3分38秒>
Hamlet Gonashvili - Berikaci Var

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