ゼアミdeワールド

2021年1月11日 (月)

アル・スールのChristos Zotos & Skaros / Continental Greek Music

ゼアミdeワールド242回目の放送、日曜夜10時にありました。13日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日の動画はエピルスの方だけにしておきます。ルメリアは水曜以降に。
ラヂバリスタジオが感染拡大防止のため、今週からしばらく使用不可になります。また宅録する予定です。音質は落ちると思いますが、ご了承ください。

ギリシアのシリーズは一応昨年末で終える予定でしたが、久々に取り出したギリシア北部エピルス地方の一枚がとても面白かったので、是非おかけしておきたいと思いました。ですので、ギリシアのシリーズも22回になります。キングやアルバトロス盤のエピルスの曲とは一味違う演奏になっています。
それはフランスのAl Surから1993年に出ていた「ギリシア本土の音楽 エピルスとルメリア」という盤で、アル・スールは90年代の内に活動停止してしまいましたが、中東~地中海世界の音楽の名盤が数多くありました。ラウート弾き語りを聞かせるエピルス出身のクリストス・ゾトスを中心に、彼の弟子の女性ラウート奏者イオアンナ・アンゲルー、クルド系のヴァイオリン奏者バルザン・ヤッシン、クラリネットの名手ジル・トレントの4人編成です。ギターとウードとレバノンのブズクの重厚感と躍動感の全てを備えたようなラウートの音色が特に素晴らしく、ラウートのリズムとクラリネットが描く北ギリシアの旋律は、曲によってどこか演歌的だったり、特にクラリネットはやっぱりユダヤのクレズマーに似ていたり、バルカンは北ギリシアから始まるという印象を強めながらも、部分的には地中海的な明るさも感じられたり、色々な側面が聞こえて実に興味深いです。ラウートの独奏の素晴らしさも、伴奏に徹していた他の盤にはなかったものです。解説が簡素ですので各曲の詳細は不明ですが、まずはエピルスの方から、5,6曲目のEpire-I KleftesとEpire - Kondula Lemoniaを続けてどうぞ。

<5 Christos Zotos & Skaros / Continental Greek Music ~Epire-I Kleftes 5分15秒>
I kleftes

<6 Christos Zotos & Skaros / Continental Greek Music ~Epire - Kondula Lemonia 4分4秒>
Kondula lemonia

ルメリアの方に行く前に、前にかけられなかったエピルスと北ギリシアのアルバトロス盤の5曲目をおかけしておきます。ギリシアにはまず見られない多声音楽で、かつビザンツの流れを汲むギリシアの民謡では稀なペンタトニック(5音音階)になっていて、多声合唱の盛んなアルバニアに近いことが歌からも分かります。

<5 Folk Music Of Northern Greece ~Song From Pogoniani 1分37秒>

アル・スール盤に戻ります。まずルメリアという地名ですが、位置を確認しますと、ギリシア本土のエピルスをおそらく含めて、テッサリア、マケドニア、トラキアまでを指すようですが、オスマン帝国統治下の南バルカン地域の「ローマ人の土地」を意味するトルコ語の名称ですので、実際は現在のギリシア中央部とトルコのヨーロッパ部分、ブルガリア、北マケドニア共和国などかなり広域になるようです。この盤の後半はルメリアの曲が集められていますが、その中から10,11曲目を続けておかけします。10曲目はルーマニア風な旋律と、演歌っぽいリズムが組み合わさった面白い曲です。11曲目もどこかで聞いたような懐かし気な旋律とリズムに聞こえて仕方ありません。

<10 Christos Zotos & Skaros / Continental Greek Music ~Roumelie - Poulia Mou Diavatarika 5分2秒>
<11 Christos Zotos & Skaros / Continental Greek Music ~Itia 4分15秒>

ストレートにクレズマーに似ているインストの1曲目をかけられなかったのが残念ですが、最後に7曲目のエピルスのミロロイを聞きながら今回はお別れです。何と言ってもクリストス・ゾトスの芸を聞くのが主眼ですから。ミロロイとは挽歌あるいは哀歌と言うことでしたが、明るく演歌っぽい曲調でラウートの技巧を聞かせる独奏です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<7 Christos Zotos & Skaros / Continental Greek Music ~Epire - Miroloï [Lamentations] 5分11秒>

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2021年1月 7日 (木)

「春の海」自作自演、謡曲「高砂」、民謡、瞽女唄、新内

ゼアミdeワールド241回目の放送、水曜夜8時半にありました。今回の放送は6日のみです。
明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い致します。

お正月と言えば、どこに行っても宮城道雄の「春の海」が聞こえてきますが、この曲だけの色々な編成の録音を集めた「春の海 大響演」という2枚組から4年連続でご紹介してきました。今年はさすがにまだかけてない音源は減ってきましたが、今回も宮城道雄の自作自演をまずおかけしたいと思います。尺八は初演を勤めた吉田晴風です。(放送では、瞽女唄まで入らないので、後半の再現部分をカットしフェイドアウトしました。分かった方は、「春の海」の通だと思います(笑))

<春の海 宮城道雄自作自演 6分25秒>
春の海 宮城道雄自作自演

今回の「春の海」は宮城道雄の自作自演だけにしておきまして、後は他の邦楽曲をご紹介します。
正月がテーマではありませんが、結婚式でよく歌われる世阿弥作のお能「高砂」の、高砂やこの浦船に帆を上げて、の部分と、四海波静かにて、千秋楽は民を撫で、の3か所は祝言の謡いとして非常に有名ですので、今回取り上げておきます。この番組を始めた時にお話ししましたが、謡曲を26年前に少し習ったことが大きな転機になりまして、25年前の開店時にゼアミと言う店名にしました。私が習っていた喜多流の往年の大名人・喜多実の独吟です。能の5流それぞれの小謡集も手元にありますが、今年はこちらをおかけしておきます。

<2 喜多流 祝言小謡集 喜多実  高砂 四海波静かにて 1分13秒>
<4 喜多流 祝言小謡集 喜多実  高砂 高砂やこの浦船に 1分27秒>
<30 喜多流 祝言小謡集 喜多実  高砂 千秋楽は民を撫で 30秒>
大島輝久_小謡「高砂や」

民謡でも何か正月らしい曲はないかなと探していましたが、個人的にとても好きな秋田民謡の喜代節を今回おかけしてみます。歌、三味線共に憂いのある美しい旋律ですが、祝言的な内容の民謡です。(川崎千恵子さんではないようですが、唄、三味線共に素晴らしく、踊りも見れます)

<16 秋田民謡 喜代節 川崎千恵子 3分18秒>
喜代節(秋田県民謡)

次は、江戸の浄瑠璃の一つ、新内の曲で「廓七草」という曲をおかけします。新内も謡曲の後で私が東京にいる頃に習っていた音曲で、ちょうど放送されるのが七草がゆの頃ですので、この曲を選びました。廓(遊里)で流行った新内らしい哀切な曲調は、最も有名な蘭蝶や明烏以来のもので、艶美な節回しは古賀メロディなど、昔のナツメロ演歌のルーツにもなっているようです。歌っているのは、新内志寿さんで、往年の名人・新内志賀大掾中心のカセット「新内名曲選 子宝三番叟、広重八景」に入っていました。おそらく90年前後の録音で、新内志寿さんはその後、三味線弾き語りで重森三果のお名前で活動されていたと思います。(「新内 廓七草」は見当たらないので、新内流しの二挺三味線を上げておきます。私も昔色々な所で弾きました)

<新内 廓七草 9分34秒>
新内流し.mp4

最後に民謡に戻りますが、新潟や日本海側中心に盲目の女性だけで組織を作り、唄をうたい歩いた芸能集団、瞽女(ごぜ)の杉本キクイさん他の三味線で、金毘羅船々です。四国では正月に参ることも多い金毘羅山の有名な民謡で、キングの「名人による日本の伝統芸」シリーズの瞽女編に三味線練習曲として入っています。長調と短調が入り混じるのが、面白いところです。

時間が余りましたら、同じくキングの「名人による日本の伝統芸」シリーズの瞽女編から祝い唄「春駒」までおかけします。春駒と言えば、今治の寿太鼓の定番曲としても知られていますが、瞽女の曲も正月にふさわしい祝言的な内容です。初春に訪れる養蚕祝言の門付芸で、高田瞽女は木製の春駒を手に持って唄うそうです。この曲を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<4 瞽女歌 杉本キクイ 金毘羅船々 1分35秒>
<6 瞽女歌 杉本キクイ 祝い唄 春駒 6分29秒 ~2,3分>
杉本キクエ - 金毘羅船々

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2020年12月28日 (月)

黒海南東岸ポントス、エピルス、トラキアのディオニュソス信仰 他

ゼアミdeワールド240回目の放送、日曜夜10時にありました。30日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はポントスの映像だけ上げておきます。1本目はキング盤と同じ音源です。オマルはバグパイプではなく、カラデニズ・ケメンチェでの演奏です。

ギリシアの21回目になります。今回はキングのワールドルーツミュージックライブラリー盤を中心に、アルバトロスのエピルスの音源も入れてギリシア北部のエピルス、マケドニア、トラキアと、黒海南部のポントスの音源でギリシア・シリーズを締めくくる予定です。
まず絶対外したくない黒海南部のポントスの音源ですが、場所としてはトルコ領内になります。ポントスとはギリシア語で「海」を意味し、ここでは黒海を指しています。トルコ北東部、黒海南岸のトラブゾン辺りから、最大版図ではクリミア半島にかけて存在した紀元前のポントス王国以来ギリシア人が住んでいて、オスマン帝国滅亡後の1923年のギリシアとトルコの住民交換で多数はギリシアに移住させられましたが、まだ一部ポントスに住み続けていて、1965年の時点で、トラブゾンなどの各県に合計4千人余りのギリシア語ポントス方言話者が記録されているそうです。キング盤の音源がギリシアに移住したポントス人か、トルコに残っているポントス人かは不明ですが、ギリシアでもまだまだ伝統を保っているようです。

ポントスの音楽では、何と言っても細長いカラデニズ・ケメンチェ(黒海のケメンチェの意)の鋭い音色が特徴的で、キング盤に入っているセラニツァ・ダンスは2+2+3の7拍子の速く激しい踊りを伴い、動画で見るとまた強烈なインパクトがあります。またゼアミブログで取り上げます。

<18 Seranitsa :黒海岸のギリシア人居住地区ポントス地方のガラッサリのダンス 2分37秒>
Seranitsa (Pontos)

SERANITSA ΣΕΡΑΝΙΤΣΑ

1曲戻って17曲目にはポントスのバグパイプ演奏が入っています。2+2+2+3の9拍子のオマルという比較的ゆったりと回るダンスの音楽です。大型の太鼓ダウルの伴奏が付きます。

<17 Omal :黒海岸のギリシア人居住地区ポントス地方のガラッサリのダンス 2分44秒>
Πόντος - Ομάλ, Ούτσαϊ

ギリシアの次はブルガリアに入る予定ですので、トラキアを終わりに持ってくることにして、北ギリシアでは西に位置するエピルスの音楽ですが、印象としては北のアルバニアの音楽との繋がりを感じます。エピルスと言えば何と言ってもクラリネットの音色が独特で、エーゲ海の音楽とは違って寒い場所の音色に聞こえます。バルカンやユダヤのクレズマーのクラリネットと少し似ていると思います。ギリシアではクラリネットの前にフルート(おそらくフロゲラ)を吹いていて、その後でクラリネットに持ち帰る奏者が多いようです。ベースとリズムを担当するラウートは全土に共通していますが、旋律楽器は島嶼部ではリラかヴァイオリンが好まれ、本土ではクラリネットがもてはやされる傾向があるようです。
挽歌あるいは哀歌のミロロイと言う笛の即興的な独奏が、キングとアルバトロスの両方に入っていますので、続けておかけします。キングの方はいかにもエピルス風なクラリネットの音色ですが、アルバトロスの方は、まるで日本の尺八のようにも聞こえます。それもそのはず、ここで吹かれているのはツァマラと言う80センチくらいの金属製の笛で、発音原理が似ているためと思われますが、東欧のカヴァルに近く聞こえる楽器です。

<11 Dirge :ギリシア北西部・エビルスの哀悼歌 3分7秒>

<2 Folk Music Of Northern Greece ~Lament 4分47秒>

同じくアルバトロスのギリシア北部の音楽の3曲目には、エピルスらしいクラリネットのソロが続いた後で、前回かけられなかった本土のツァミコスという舞曲が出てきますが、枠太鼓デフィのオリエンタルなリズムを伴っています。北と南がブレンドした印象の曲です。

<3 Folk Music Of Northern Greece ~Pastoral Melody オ・スカロス 3分15秒>

中北部のマケドニアと言えば、古代のアレクサンダー大王以来のギリシア人の土地と言うイメージがありますが、旧ユーゴ側の北マケドニア共和国の言葉は南スラヴ系のマケドニア語で、ギリシア側マケドニアとは全く別の民族です。ギリシア側マケドニアの曲はキング盤に3曲、アルバトロス盤に3曲入っています。今回はキングの方から西マケドニアのシルトスをおかけします。通常のシルトスは2拍子ですが、マケドニアのシルトスは3+2+2の7拍子で、変拍子では旧ユーゴ側のマケドニアと共通しています。

<16 If Mountains Could Lower Down :西マケドニアのシルトス・ダンス 3分8秒>

ブルガリアの南に位置するトラキアの音源は、キング盤に2曲、アルバトロス盤に3曲入っていまして、現在の居住地はマケドニアのテッサロニキの近くのようです。彼らはオスマン帝国時代はブルガリア南東部のトラキア地方のコスティにいたトラキア系ギリシア人のグループで、アルバトロスの方に彼らのディオニュソス信仰に由来すると言う火踊りの珍しい録音「小さなコンスタンティン ~アナステナーリア祭礼より」がありますので、時間まで聞きながら今回はお別れです。時間が余りましたら、14曲目の「修道士のコロス(合唱)」までおかけします。この仮面劇もディオニュソス信仰の痕跡を残しているそうです。
ディオニュソスと言うと、どうしてもニーチェを思い出してしまいますが、ディオニュソス信仰は、ギリシアがキリスト教化する以前からの伝統ですが、現在はギリシア正教の教義に置き換えられ、聖コンスタンティンと聖エレナの聖画イコンの前で踊り、ため息や啜り泣き、唸り声や呻き声と共に、宗教的法悦に達していくという祭りです。火の上を裸足で踊り回っても何故か火傷はせず、その理由は医学的に説明がつかないそうです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。
この番組の新年の初放送は、6日の再放送枠からになります。
それでは皆さまよいお年をお迎えください。

<12 Folk Music Of Northern Greece ~Little Constantine 2分37秒>
<14 Folk Music Of Northern Greece ~Monk's Dance 2分13秒>

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2020年12月21日 (月)

ナクソス島、ペロポネソス、テッサリア、コルフ島 等

ゼアミdeワールド239回目の放送、日曜夜10時にありました。23日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今回はナクソス島のバロスのみ上げておきます。バロスの旋律は幾つかあるようで、ギリシア民謡研究家で歌手のドムナ・サミウの映像もありました。ドムナ・サミウの音源もありましたが、長くなるので番組ではかけられませんでした。今日の一本は、キング盤と同曲異演です。写真はナクソス市にある神殿です。

ギリシアの20回目になります。エーゲ海の島ごとの音楽は、ドデカネス諸島とクレタ、キプロスが一通り終わったので、今回はギリシア本土に近いキクラデス諸島から始め、ギリシア本土中央部に移りたいと思います。
キクラデスの音源は、知っている範囲ではキングのワールドミュージックライブラリー150枚の一枚、「神々の宴~ギリシアの民族音楽」のみで、しかも島の名前がはっきり分かるのはナクソス島のみです。ナクソス島も、レーベルのナクソスや、リヒャルト・シュトラウスの歌劇「ナクソス島のアリアドネ」で一般に知られている位だと思いますが、ギリシア神話では、幼いゼウスがキクラデス諸島最高峰のナクソス島のザス山の洞穴で育てられたという話や、ホメロスは、女神の聖なる島として文学的に『ディア』と記した等の逸話があるように、神話で知られている島です。
そのナクソス島のカップルダンス、バロスという曲がキング盤に入っていますので、この曲からおかけします。

<6 Balos :キクラデス諸島のカップル・ダンス 3分3秒>
Balos (Mi Matzore)

キクラデス諸島の音源は、一曲戻って5曲目のシルトスと2曲だけです。キクラデスは、サントリーニ島やヴィーナスで有名なミロス島など、観光地としては有名ですが、民謡的な音楽は余り残ってないのかも知れません。

<5 The Gardener :キクラデス諸島のシルトス・ダンス 3分7秒>

小アジア(トルコ)のエーゲ海側から帰還したギリシア人が伝えていたハサピコの音源も入っていますので、次におかけします。ユダヤのクレズマーに似た独特な雰囲気は、そのままこの音源にも感じられます。

<8 Hassapikos :カト・パギアナの小アジア出身のギリシア人に伝わる男性ダンス 3分35秒>

このキング盤で最も興味深い曲の一つが、次の9曲目の縦笛フロゲラとラウートの演奏で、羊飼いが伝えていた音楽になります。こういう伝統的なギリシア音楽は、ビザンティンの教会音楽に極めて近く、羊が草を食んでいる退屈な時間をつぶすために生まれた音楽ですが、平均律では割り切れない、ビザンツ聖歌のあの精妙なオクトエコスの音律を残しているそうです。ラウートは、正にドローンの音を刻んでいます。

<9 Shepherd's Flute Tune :ギリシア本土の即興曲 2分36秒>

ギリシア北西部のエピルス地方と中北部のマケドニア、北東部のトラキアは、それぞれアルバニア、旧ユーゴ側のマケドニア、ブルガリアの音楽に近い感じになってきますが、中央部の南に突き出たペロポネソス半島の音源が一曲あります。ペロポネソスと言えば、オリンピア、スパルタ、コリントなど、オリンピックや新約聖書関係の名所が点在している半島です。
3+2+2の特徴的な7拍子の舞曲カラマティアノスは、本土のいたるところで見ることが出来るようですが、クラリネットの特徴的な音色は北ギリシア風にも聞こえます。

<14 I Am Withering Away :ギリシア本土のペロポネソスのカラマティアノス・ダンス 2分52秒>

ギリシア本土の中央部に位置するテッサリアの音源が、この盤の終わり2曲で入っていまして、今回はかけられませんでしたが、本土南部ルーメリ地方のツァミコスという4+2の6拍子の舞曲がありまして、それと少し似た6拍子ながら拍の分割が2+2+2になっているテッサリアのクリストス・ダンスの音源をおかけします。後半は2+2+2+2の8拍子に変わります。

<20 When You Go Abroad :中央部テッサリアのクリストス・ダンス 4分>

では最後に、ギリシア北西部のアルバニアや南イタリアに近いコルフ島(あるいはケルキラ島)のセレナードを聞きながら今回はお別れです。ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の出身地レフカダ島の北に位置する島で、ギリシア北部のエピルスに近い訳ですが、北ギリシアと言うより、地中海の南国ムード溢れる曲調です。次回はキング盤を中心にアルバトロス盤も入れてギリシア北部のエピルス、マケドニア、トラキアと、黒海南部のポントスの音源でギリシア・シリーズを締める予定です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<7 Serenade Medley :コルフ島のカンタダ 2分56秒>

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2020年12月14日 (月)

ロス・ダリ~キプロス

ゼアミdeワールド238回目の放送、日曜夜10時にありました。16日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。4曲目だけは無さそうですが、6曲目はありました。もう一本はRoss Daly & Labyrinth, Niki Tramba / At The Cafe Amanの丸々音源です。おそらくCDは入手難になっているように思います。キプロスはまた後日。

ギリシアの19回目になります。エーゲ海の島ごとの音楽の3回目は、クレタの2回目とキプロスの音楽を取り上げます。クレタは割と注目度が高いようで、ツイッターでリアクションがありましたが、ギリシアのシリーズも結構長くなりまして、今年中に一応終えようと思いますので、まだクレタの音源はありますが、この辺で切り上げたいと思います。

まずは、アイルランド系でイギリス生まれでありながら、中東、中央アジア、インドの偉大な旋法音楽の伝統へ向かい、1975年以降はクレタ島を拠点に演奏と作曲の活動をしているロス・ダリの曲を2曲かけておきます。英語風に発音するとロス・デイリーになると思います。彼によると「私が神聖であると感じるものとの対話の言語」としての音楽を探し求めた結果、中東、中央アジア、インドの音楽に辿り着いたということですから、グルジェフの伝記映画「注目すべき人々との出会い」を地で行くようなエピソードだと思います。
彼も最初は西洋音楽(チェロ、クラシック・ギター)から始めたようですが、その後インド、アフガニスタンの音楽に移り、1975年にはクレタに渡り、この地のリラの名手コスタス・ムンダキスに師事。以後40年以上に亘ってクレタ音楽のリラ演奏を中心に、マルチインストゥルメンタリストとしても活躍している鬼才です。クレタでラビリンス(迷宮の意)と言う一種の東地中海音楽の音楽院を結成し、クレタ音楽を交えた東地中海の音楽を様々に組み合わせて演奏しています。そのままグループ名にもなっているラビリンスのメンバーは卒業生も多いのでしょうか。彼ら以外にもアテネ五輪の際には古楽界の大御所Jordi Savall、アゼルバイジャンのケマンチェ奏者Habil Aliyev、アフガニスタンのラバーブ奏者Mohammad Rahim Khushnawaz、イランのトンバク・トリオChemirani Trio、パレスチナのウード奏者Adel Selamehなど、各国の名だたる演奏家と共演しています。
独Network Medienから2,3枚アルバムがありまして、92年リリースのユーラシア:ロス・ダリ&ラビリンスのミトスと言う盤と、98年リリースの女性歌手Niki Trambaを迎えてのAt The Cafe Amanで、今回は後者から2曲おかけします。「レベティコの生まれた場所」の副題通り、どちらもレベティカ的な曲です。

<4 Ross Daly & Labyrinth, Niki Tramba / At The Cafe Aman ~Zoúla - Zoúla 6分28秒>

<6 Ross Daly & Labyrinth, Niki Tramba / At The Cafe Aman ~Ah Poú'Nai 'Kéinos O Kairós 4分28秒>
Daly Ross & Niki Trampa - At the Café Aman

ΝΙΚΗ ΤΡΑΜΠΑ / ROSS DALY & LABYRINTH - ΣΤΟ ΚΑΦΕ ΑΜΑΝ

キプロスはギリシアとは別の国ですが、ギリシア系とトルコ系の住民が同居する東地中海の島国として知られています。キプロスの音源は数枚あったと思いますが、現在手元にあるのがアルバトロス盤のみですので、こちらからギリシア系とトルコ系の曲をそれぞれ2曲ずつおかけしますが、その前にキプロスの政治状況は現在以下のようになっていますので、ウィキペディアから引いておきます。

1974年以来、南北に分断されており、島の北部約37%を、国際的にはトルコ共和国のみが承認する「独立国家」であるトルコ系住民による北キプロス・トルコ共和国が占めている。一方のキプロス共和国は国際連合加盟国193か国のうち、トルコを除く192か国が国家承認をしている。公用語はトルコ語とギリシャ語である。

まずギリシア系の方ですが、1曲目のト・マエリと言う曲は、短剣を持って芸術的に踊る男性の踊りとのことですが、映画「ヴェニスに死す」で白塗りの辻楽師が弾いていた曲(おそらくナポリターナ)にそっくりに聞こえました。

<1 ト・マエリ 2分29秒>

ギリシア系の音源は12曲ありますが、この後の比較の意味でも、ギリシアの踊りで最古のもので、最もよく知られているキプロスのシルトスをおかけしておきます。伝承によれば、このダンスはアテネの王テセウスが、クノッソス宮殿の迷宮から苦労して出てきたことを表しているそうです。

<4 シルトス 2分28秒>

結婚祝いのパーティーで録音されたと言うトルコ系の一曲目「カザンジュ(いかけ屋のダンス) 」は、ロシア民謡のカチューシャに似て聞こえましたが、いかがでしょうか。他国の有名曲に酷似した曲がこの盤では幾つか聞こえてきました。

<13 カザンジュ(いかけ屋のダンス) 1分6秒>

トルコ系の2曲目「アジゼ:オユン・ハワス」ですが、解説にはアナトリアのラヴ・ソングとありますが、これはもう明らかにエジプトの大作曲家アブデルワハブが書いたラクス・アジザそのもので、ベリーダンスでも盛んに踊られ、アラブ音楽では5本指に入るほどポピュラーな曲だと思います。ウードを初めて手にした97年頃、弾いた記憶があります。

<14 アジゼ:オユン・ハワス 2分50秒>

では最後にキプロスのギリシア系の音源から、三つのカルツィラマデス・ダンスのメドレーを時間まで聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<7 三つのカルツィラマデス・ダンスのメドレーa 1分30秒>

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2020年12月 7日 (月)

クレタのペントザリス

ゼアミdeワールド237回目の放送、日曜夜10時にありました。9日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。やはりキングとアルバトロス盤のYouTubeは無さそうですので、プサランドニスのペントザリスのみ上げておきました。強靭なラウートの掻き鳴らしの上で暴れるリラを聞いた時、最初に思い出したのは、ジミヘンと言うよりヴェルヴェット・アンダーグラウンドでした。

ギリシアの18回目になります。エーゲ海の島ごとの音楽の2回目で、今回はギリシア最大の島、クレタ島の音楽です。ギリシア本土の南方に浮かぶクレタ島は、古代にミノア文明が栄え、クノッソス宮殿を初めとする多くの遺跡で知られます。今回もキングのワールドルーツミュージックライブラリー150枚の一枚、「神々の宴~ギリシアの民族音楽」から始めたいと思います。この盤にクレタの音源が2曲入っていますので、こちらから最初におかけします。
前回のカルパトスでも出てきたクレタ島起源で「5つのステップ」を意味する舞曲ペントザリスと、マレヴィツィティス・ダンスの2曲です。続けておかけします。

<3 When I Remember The Old Times :クレタ島のペントツァリス・ダンス 2分50秒>
<4 I Dont' Speak To You :クレタ島のマレヴィツィティス・ダンス 2分57秒>

ペントツァリスについては「5つのステップ」がどういうものか気になりますので、またゼアミブログでYouTubeを探す予定です。
ペントツァリスのおそらく現代的な発展形のような演奏をしているのが、クレタのリラ奏者プサランドニスで、90年代に出ていたドイツのNetwork Medienの盤が割と知られていましたが、現在売り切れで手元にないので、2007年リリースと思われるNogoという盤からPentozaliaとなっている曲をおかけします。通常のペントツァリスよりも強烈な畳みかけるようなラウートのかき鳴らしと太鼓のリズムに乗せて、リラが力強い独奏を聞かせています。「クレタのジミ・ヘンドリックス」の異名を取る人です。

<3 Psarantonis / Nogo(I Reckon) 6分44秒>
Psarantonis - Pentozalia (1998. Greece)

前回ドデカネス諸島の盤をかけたイタリアのアルバトロス30選には、クレタ島だけで一枚ありますので、後はこの盤からかけていきます。この盤では擦弦楽器はリラではなくヴァイオリンで、クレタのフィドラー(ヴァイオリニスト)に焦点を当てています。

まずは、クレタ舞踊のトレードマークのようなペントザリスですが、元々は戦いの踊りなので、確かに勇壮な側面が聞こえるように思います。段々早くなるのが大きな特徴で、アクロバティックな男性の踊りも挿まれるようです。4拍子系に聞こえますが、「5つのステップ」とはどういう事か、またゼアミブログの方で動画を交えて探ってみたいと思います。
この音源は18世紀のペントザリスの曲を、1930年前後生まれのクレタの3人の農夫が演奏しています。ヴァイオリン、ラウート、歌のトリオで、1977年の現地録音です。

<4 Folk Music of Crete / Pentozalis 4分24秒>

古代ギリシアに由来し、ドデカネス諸島を中心にエーゲ海一帯で結婚式に踊られる舞踊スースタは、シルトスに次いでギリシアで一般的な舞踊で、島ごとに独自のバージョンがあるそうです。演奏者は前のペントザリスと同じです。

<5 Folk Music of Crete / Sousta 3分37秒>

ペントザリスとスースタ、そして最も代表的なシルトスのいずれも偶数拍子で、元・戦いの踊りとか、結婚式の求愛の音楽の側面を知らないと、聞き分けるのは難しいように思います。
シルトスは、ギリシアの民俗舞踊のある種の複数の踊りを指す包括的な呼び名で、言葉の起源は「引きずる(様な踊り)」を指すシロ(syro)(ギリシア語: σύρω)とのことです。
この盤の冒頭を飾っているSirtosi Galouvianosを聞きながら今回はお別れです。先ほどのペントザリスを書いた18世紀のステファノス・トリアンダフィラーキス“キョーロス”の作曲です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<1 Folk Music of Crete / Sirtosi Galouvianos 1分51秒>

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2020年11月30日 (月)

カルパトスとロードスから

ゼアミdeワールド236回目の放送、日曜夜10時にありました。2日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。ペントザリスと言えばクレタでしょ?と言うことなのですが、カルパトスとロードスから始めました。動画にはキングとアルバトロスと同じ音源はないと思いますので、ペントザリスではなくスースタですが、カルパトスのリラとラウートの激しいデュオを一本上げておきました。こんなに両楽器がよく見える映像は、意外になさそうです。

sousta karpathos

ギリシアの17回目になります。今回からエーゲ海の島ごとを中心にギリシアの地方音楽に移ろうと思います。キングのワールドルーツミュージックライブラリー150枚の一枚、「神々の宴~ギリシアの民族音楽」をベースにする予定ですが、この盤はエーゲ海だけでなく北部のエピルス地方やマケドニア、トラキア、更には黒海沿岸のトルコ北東部のギリシア人居住地区のポントスまで、非常に広域の音楽が入っています。イタリアのアルバトロス30選には、クレタ島、ドデカネス諸島、キプロス、ギリシア北部の4枚がありますので、これらと組み合わせていく予定です。
まずはクレタ島とトルコの間に点在するドデカネス諸島の音楽から見ていきます。エーゲ海と言えば、青い海と高台の白い建物のサントリーニ島の風景を真っ先にイメージする人が多いかと思いますが、サントリーニ島はギリシア本土に近いキクラデス諸島の島で、キクラデス諸島の音源はキングの盤のシルトスとナクソス島のバロスの2曲位で、意外に少ないです。ドデカネス諸島は、その南東方向に位置する列島です。ドデカネスとはギリシア語で「12の島」を意味しますが、実際には主要12島のほか約150の小島が含まれます。
個人的にはエーゲ海の音楽では、クレタ島のリラとラウートの激しい掛け合いが最も好みですが、かなり似通った音楽がクレタと東のロードス島の間に位置するカルパトス島でも聞けますので、キング盤の最初の2曲を続けておかけします。

<1 Monemvassia :カルパトス島の酒飲み歌 2分29秒>
<2 Maritsa's Tune :カルパトス島のカト・コロス・ダンス 2分57秒>

カルパトスだけの音源が、フランスのブダからありましたが、20年ほど前に廃盤になってしまったようです。イタリアのアルバトロス30選のドデカネス諸島の盤にはカルパトスは5曲入っていますので、その中からクレタ島起源で「5つのステップ」を意味する舞曲ペントザリスと、パノ・コロスを続けておかけします。ヴァイオリンで代用されず擦弦楽器リラが活躍するところは、クレタ音楽と共通しています。ラウートのかき鳴らしもそっくりです。ラウートとは、フレットのあるウードのような弦楽器で、ウードとリュートの中間のような楽器です。

<11 ペントザリス 2分21秒>
<15 パノ・コロス 4分9秒>

トルコに近いロードス島の音源はアルバトロス盤に3曲入っています。ロードスと言うと、日本では男性化粧品のイメージが強いかも知れませんが、古代にはギリシアの文明が花開き、中世以降はイスラム世界に対してキリスト教世界の最前線に位置し、十字軍以降は聖ヨハネ騎士団ゆかりの島として知られています。前回言いましたようにセファルディも住んでいたようです。
ドデカネス諸島を代表する舞踊スーストの中でも、特に知られているのがこの明るいスースタと言う曲です。

<8 スースタ 3分18秒>

次の打弦楽器サントゥーリで独奏されるアマネス ケ・ジンベキコスと言う曲は、タイトルからギリシアのアマーンとトルコの8分の9拍子のゼイベクを連想させる曲で、ロードスだけでなくドデカネス全域でよく演奏されるそうです。

<9 アマネス ケ・ジンベキコス 2分31秒>

ドデカネス諸島には、他に「医学の父」ヒポクラテスの出生地であるコス島、使徒ヨハネが『ヨハネの黙示録』を記したとされるパトモス島などがありますが、このアルバトロス盤には他にコス島、シミ島、ニシロス島の音源が入っています。
コス島の音源は5曲も入っていて、この盤の冒頭を飾っているアンティマヒティコス シガノスを時間まで聞きながら今回はお別れです。通常結婚式で踊られる舞曲とのことです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<1 アンティマヒティコス シガノス 5分2秒>

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2020年11月23日 (月)

サヴィナ・ヤナトゥと「サロニカの春」

ゼアミdeワールド235回目の放送、日曜夜10時にありました。25日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今日の動画はロス・ビルビリコスのみにしておきます。

ギリシアの16回目になります。前回サロニカ(テッサロニキ)のセファルディの歌のDavid Saltielの盤を取り上げて、重要なセファルディの音源を思い出しまして、ここで取り上げないとこの後は良い機会がないと思いましたので、もう一回ギリシアのセファルディ音源をご紹介します。
前にハジダキスの曲をかけた女性歌手サヴィナ・ヤナトゥの「サロニカの春」Ανοιξη στη Σαλονίκη ( Anixi Sti Salonici 1995年)というギリシアLyraの盤で、テッサロニキ(サロニカ)で歌われていたセファルディムの伝承曲を研究していたテッサロニキ大学のクセノフォン・ココリス教授の委嘱により、セファルディ音楽の復元プロジェクトに取り組み、1995年にリリース。この時のレコーディングメンバーによりプリマヴェーラ・エン・サルニコ(サロニカの春) Primavera En Salonico が結成されています。後にサヴィナ・ヤナトゥとサロニカの春で、ユダヤの音楽に限らず、主に東地中海各地の歌を集めた素晴らしい注目作が何枚も続けてリリースされました。
サヴィナ・ヤナトゥ自身はスペイン系ユダヤ人(セファルディ)ではないと思いますが、セファルディの歌の非常に美しい旋律と節回しを、リリカルな歌声で見事に表現しています。セファルディの歌が特に注目を浴び始めたのは、1492年のスペインからの追放から500周年に当たる1992年前後だったと思います。この頃セファルディの歌のCDリリースが相次ぎ、サヴィナ・ヤナトゥの盤もそれから間もない時期でした。1996年のゼアミ開店当時かなり売れていた盤で、まだカタログ販売のみでHPを作っていない頃でしたので、その後入荷が不安定になったこの盤はHPには載せていませんでした。
セファルディの歌の中でも特に有名な曲が5曲程ありますので、間に短く解説を入れながら続けておかけします。

3曲目のロス・ビルビリコスという曲は、ペルシア語のBolbolに似た綴りにピンとくる人もいらっしゃるのではと思いますが、ナイチンゲール(小夜鳴鳥)のことで、Global Villageから2枚セファルディの歌のCDを出していたジュディ・フランケルの解説では、この歌をギリシアのロードス島出身のセファルディの婦人の歌で聞いたとありました。一聴で忘れられない印象を覚えるセファルディらしい歌です。

<3 Savina Yannatou / Primavera En Salonico ~Los Bilbilicos 4分11秒>
Σαβίνα Γιαννάτου - Los Bilbilicos - Τα Aηδονάκια | Official Audio Release

前回時間が余ればかけようと思っていたLa llamada de la morenaという曲は、一般にMorenicaというタイトルで良く知られているセファルディ民謡で、サヴィナ・ヤナトゥの盤にも入っていますので、おかけしておきます。モレニカとはDark Beautyの意味だそうです。

<4 Savina Yannatou / Primavera En Salonico ~Morenica 3分>

セファルディの歌の名盤であるホアキン・ディアスやジュディ・フランケルのCDにも入っていたトレ・ゼルマニカス・エラン(三姉妹、あるいは3人の妹)という曲は、ジュディ・フランケルはスペインで聞いたそうですが、やはり歌詞の中にギリシアのロードス島が出て来ます。これも非常に美しい曲ですが、ジュディ・フランケルの方と旋律が異なっていますので、二人の音源を続けてかけてみます。歌詞はどちらもイサーク・レヴィの「ユダヤ・スペインの歌」から取られています。

<5 Savina Yannatou / Primavera En Salonico ~Tres Hermanicas Eran 3分42秒>
<2 Judy Frankel / Sephardic Songs of Love and Hope ~Tres Hermanicas 4分50秒>

ウナ・マティカ・デ・ルーダ(ヘンルーダの一株)は、有名な婚礼のロマンセで、ロマンセというのは、セファルディの歌では物語り歌を指し、叙事詩、バラッドなどの四行詩を同じ旋律を繰り返しながら歌うジャンルです。ヘンルーダとは芸香(うんこう)のことで、セファルディの言い伝えでは新婚夫婦に吉をもたらすものとされています。

<8 Savina Yannatou / Primavera En Salonico ~Una Matica de Ruda 2分52秒>

オスマン帝国に住んでいたセファルディの子守歌で、エキゾチックなヒジャーズ旋法の曲です。妻が子供を寝かしつけながら、愛人のところから帰ってきた夫をなじっている部分があるとのことです。
もし時間が余りましたら、テッサロニキに伝わる古いセファルディの歌、ジャコも聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<11 Savina Yannatou / Primavera En Salonico ~Nani Nani 4分31秒>

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2020年11月16日 (月)

不断に流れる雲

ゼアミdeワールド234回目の放送、日曜夜10時にありました。18日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今日の動画はアリストファネスの『雲』のみにしておきます。ヴァンゲリスとイレーネ・パパスは水曜に、セファルディの2枚は木金の予定です。

ギリシアの15回目になります。次回からエーゲ海の島ごとの地方音楽に移ろうと思いますが、その前に今回はこれまで漏れていた音源から拾って行きたいと思います。まずはパニアグアの古代ギリシアの音源から、謎めいたタイトルの曲がずっと気になっていましたので、この一曲だけかけておきます。アエナオイ・ネフェライ(不断に流れる雲)という曲ですが、ソクラテスに仮託する形でソフィストを風刺した古代アテナイの喜劇詩人、風刺詩人アリストファネスの代表作『雲』に関する曲と思われます。

<10 Aenaoi Nefelai(アエナオイ・ネフェライ(不断に流れる雲)) 1分28秒>
Ancient Greek Music - Aristophanes: Aenaoi Nefelai (from comedy The Clouds)

次は映画「ブレードランナー」のサントラなどで有名なギリシアのシンセサイザー奏者ヴァンゲリスが、ギリシアの名女優兼歌手のイレーネ・パパスと組んで1986年にリリースしたアルバム「ラプソディー」から、O! Gliki Mou Earという曲です。ギリシア正教の音楽やギリシア民謡を素材に自身のルーツに迫った大作で、"Oh, My Sweet Springtime"「ああ、私の甘い春」と訳せるこの曲は、明るい曲調からは想像が付き難いですが、亡くなった息子イエスの亡骸を見た聖母マリアの嘆きであり、イースターの前の金曜日によく歌われるそうです。ヴァンゲリスの本名はエヴァンゲロス・オディセアス・パパサナスィウとのことです。

<2 Vangelis / Rhapsodies ~O! Gliki Mou Ear 8分42秒>

次はギリシアのセファルディ(スペイン系ユダヤ人)の歌ですが、ギリシア北東部のサロニカ(テッサロニキ)のセファルディの音源がありますが、その前にスペイン(あるいはモロッコのセファルディ)の女性歌手ですが、アウロラ・モレーノが1990年にリリースしたセファルディ・アルバムにギリシアっぽい曲がありますので、ここでかけておきたいと思います。ヤ・ファティン(若者)という曲で、後半のナツメロのような部分は、往年のギリシア歌謡を聞くような感じがあります。

<6 Aurora Moreno / Aynadamar ~Ya Fatin 3分55秒>

ギリシア北東部のサロニカ(テッサロニキ)のセファルディの歌ですが、ドイツのOriente MusikからDavid Saltielの盤が98年に出ていますので、こちらからLa serenaをおかけします。6月頃にビエンベニーダ・ベルタ・アグアドとVoice of the Turtleの歌唱でかけた曲です。
アテネが古代ギリシアを象徴する街なのに対して、中世の東ローマ帝国時代のギリシアを象徴する街で、初期キリスト教とビザンチン様式の建造物が点在するテッサロニキは、首都アテネに次いでギリシアで2番目に大きな都市です。使徒パウロが書いたとされる、新約聖書の「テサロニケの信徒への手紙」にその名が見えるように、キリスト教の拡大の中心として重要で、古くからユダヤ人のコミュニティーがありました。テッサロニキは近世以降セファルディ系ユダヤ人の最大の中心となり、「バルカンのエルサレム」と言う愛称が町に付けられていた程だそうです。
La serena(セイレーン)とは「サイレン」の語源ですが、ホメロスのオデュッセイアやギリシア神話では、海の航路上の岩礁から美しい歌声で航行中の人を惑わし、遭難や難破に遭わせる、上半身が人間の美しい女性で、下半身は鳥の姿の海の怪物を指しますが、Voice of the Turtleの対訳歌詞では「もし海がミルクで出来ていて、私が漁師だったら、私は愛の言葉で不幸を釣るだろう」と、匂わせる所で終わっていました。この歌のルーツはボスニアのサライェヴォにあるそうですが、ここではギリシアのセファルディがセイレーンを歌ったと言うことで、最もルーツの地に近いということになるでしょうか。他の歌唱では短調でしたが、ここでは部分的に長調の旋律になっていて、オスマン風な伴奏が付いています。

<2 David Saltiel / Canciones Judeo Espanoles de Tesalonica ~La serena 7分11秒>

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

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2020年11月 9日 (月)

デルフィの讃歌

ゼアミdeワールド233回目の放送、日曜夜10時にありました。11日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今日の動画は肝になる曲「デルフィの讃歌」だけにしておきます。デルフィの讃歌の第1と第2は、紀元前138年と紀元前128年に書かれた最も古い西洋の音楽と言われています。放送でかけた音源では第2でしたが、ここでは第1になっています。旋律は同じものです。アップルミュージックでは曲の表示が入れ替わっていることが時々あるので、YouTubeが正しいのでしょうか。この旋律はパニアグヮの方にはなかったと思います。

ギリシアの14回目になります。今回はビザンティン世俗音楽シリーズで有名なフリストドゥーロス・ハラリスの演奏をメインに、古代ギリシアの音楽の音源2枚からご紹介したいと思いますが、まずは前回グレゴリオ・パニアグヮとアトリウム・ムジケーの演奏でかけられなかった3曲からご紹介します。タイトルを見るだけで興味深い、06:太陽神への讃歌、11:セイキロスの墓碑銘の2曲からどうぞ。

<6 Hymne Au Soleil 1分58秒>
<11 Epitaphe de Seikilos 1分54秒>

この盤は曲によってはスペイン語で語っている部分もありますが、9曲目のパピルス・ミシガンという曲は古代ギリシア語で語るように歌っています。アメリカのミシガン州に関係があるパピルスのようです。解読された場所がミシガンということでしょうか?

<9 Papyrus Michigan 4分8秒>

前回も言いましたが、古代ギリシアの時代にもちろん五線譜はありませんので、パピルスや大理石に残された音楽の断片から想像力豊かに展開している音楽と言えると思います。12平均律的には外れて聞こえる音もありますので、ピタゴラス音律の観点から聞いても面白いと思います。古代の音楽は、洋の東西を問わず、どこか遠くで繋がっているのかと思うくらい、日本の一部の伝統音楽や復元された縄文音楽などとも共通する響きがあるように思います。

そんな古代音楽風な印象の強いパニアグアの演奏と比較すると、フリストドゥーロス・ハラリスの古代ギリシアの音楽の方は、結構ビザンティン音楽寄りの伴奏が付いているように思います。この盤は売り切れで資料が手元に残ってないので、アップルミュージックから音出ししておりまして、解説は参照できておりません。
ギリシア悲劇の三大詩人の一人、エウリピデスの代表作「オレステス」の最初の合唱という曲が2曲目にありますので、こちらからおかけします。

<2 Music of Ancient Greece ~First Chorus from the €œOrestes†Tragedy of Euripides 3分37秒>

ハラリス盤にはパニアグア盤と共通の曲もありまして、第1と第2の「デルフィの讃歌」は、パニアグア盤の方では「デルフォイのアポロン讃歌」となっていた曲と同じパピルスなどの資料から復元された曲かと思います。3曲目に入っている第2のデルフィの讃歌を次におかけします。この曲はハルモニア・ムンディ・フランスからリリースされパニアグア盤と並んで話題になった「旧約聖書の音楽」と似た哀歌風な音調にも聞こえまして、どちらの旋法が先にあったのか分かりませんが、似通って聞こえる部分もあります。西洋文明の2大源泉であるヘレニズムとヘブライズムが重なってイメージされる曲です。

<3 Second Delphic Hymn 6分19秒>

First Delphic Hymn - Christodoulos Halaris (Music of Ancient Greece)


最初にパニアグア盤でかけました「太陽神への讃歌」と「セイキロスの墓碑銘」や、先週かけた「ミューズへの讃歌」も、ハラリス盤にも入っていますので、「セイキロスの墓碑銘」「ミューズへの讃歌」「太陽神への讃歌」の順におかけします。これらの曲を聞きながら今回はお別れです。もし入れば「太陽神への讃歌」を時間までおかけします。「ミューズ(ムーサ)への讃歌」については、「英語のmusicの語源はゼウスの娘、女神ムーサに由来していて、ムーサは創造神であり、知の守護神でした。」と、前回コメントを入れました。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<7 Epitaph of Sikelos 2分14秒>
<9 Hymn to the Muse 2分33秒>
<8 Hymn to the Sun 5分36秒>

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