ゼアミdeワールド

2023年6月 5日 (月)

TahahとDire-Gelt

ゼアミdeワールド362回目の放送、日曜夜10時にありました。7日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はTahahとDire-Geltのみです。

東欧系ユダヤ音楽の3回目になります。先週に続いて1989年に聞いたイディッシュ・ソングの「懐かしい2枚」の内の一枚、ドイツのプレーネから出ていたZupfgeigenhanselのJiddische Lieder(「私が耳にしたこと (`ch hob gehert sogn)」)からおかけします。メンバーがユダヤ系ではないツプフガイゲンハンゼルは、元々ドイツ民謡が専門のバンドですが、ドイツ人が共感を持って演奏するとこうなるという良い例だと思います。リリースが1979年ですから時期は近いですが、クレズマー曲でもアメリカのリヴァイヴァル・クレズマーのグループとは一味違い、「歌」に重心を置いた素晴らしい演奏を展開しています。イディッシュ語の歌唱も、ドイツ人なら歌いやすいのかなと思います。なお、ツプフガイゲンハンゼルのドイツ民謡の方も、またドイツに回って来たら取り上げる予定です。

シャガールが描いたクレズマーのフィドラーそっくりに見えるジャケットも秀逸なこの盤のプロデューサーは、ジャーマン・ロックのバンドCan(カン)やDAF、日本のPhewのLPもプロデュースしていたコニー・プランクです。80年代前半は大学オーケストラでヴァイオリンを弾きながらも、聞く方ではその辺のニューウェイヴ~インディーズにどっぷりだったので、コニー・プランクの名前だけでも飛びつくのに動機は十分でした。ライナーノーツに載ったゲットーのユダヤ人の写真そのもののようなユダヤ音楽の哀感とともに、躍動感のある演奏と音作りになっています。

この盤で思い出すのが、ジョン・ゾーン・マサダが演奏していた曲にそっくりな曲がありまして、そのことについてのエピソードです。私が六本木ウェイブの4階にあったアール・ヴィヴァンの支店のストアデイズの音楽担当をしていた94年の事ですが、当時よく店に来られていたジョン・ゾーンから、「この店は世界一ユダヤ音楽が充実してる」と褒められまして、今度出すマサダのCDのライナーノーツを書いて欲しいと直接依頼されました。ジョン・ゾーンと言えば、ニューヨーク・アヴァンギャルド・シーンの中心人物として大活躍の頃で、70年代には近藤等則さんともよく活動していたようです。94年頃はTzadikレーベルを立ち上げ、ユダヤ音楽を取り入れる方向に舵を切った頃でした。ディスクユニオンのDIWレコーズから1994年に出た「ジョン・ゾーン・マサダ/Alef」がその盤ですが、ライナーノーツの中に「5曲目のTahahが、ツプフガイゲンハンゼルも演奏していたDire-Geltと同じ曲」と書いたのですが、その件で編集者を通してジョン・ゾーンとやりとりした結果、Dire-Geltと言う曲を彼は知らないようでした。これは私の推測ですが、無意識にそっくりな旋律を演奏していたのかも知れないと思いました。

余談ですが、94年と言えば、FM東京の番組、トランスワールド・ミュージックウェイズの田中さんから出演依頼が来まして、1994年6月4日に「ユダヤの音楽」と言うタイトルで初めてラジオ番組に出演しました。ラヂバリで番組を持つ22年前で、ちょうど映画「シンドラーのリスト」が話題になっていた頃です。96年にゼアミを立ち上げる2年前でした。

前置きが長くなりました。マサダはまた改めて取り上げますが、そのジョン・ゾーン・マサダの1枚目、Alefから5曲目のTahahと、ツプフガイゲンハンゼルのDire-Geltを続けておかけします。

<5 John Zorn Masada / Alef ~Tahah 5分42秒>

<2 Dire-Gelt 2分12秒>

この2曲はそっくりに思いますが、いかがでしたでしょうか。
続いて、ZupfgeigenhanselのJiddische Liederから、Di Grine Kusine、Schtil, Di Nacht is Ojsgeschternt、Lomir Sich Iberbetn、Sog Nischt Kejnmolの4曲をピックアップしました。Di Grine Kusineはオープニングの躍動感あふれる曲、その後はしっとりと美しいバラード風なSchtil, Di Nacht is Ojsgeschterntと言う曲で、その次のLomir Sich Iberbetnはハシディックなノリが強く感じられる曲で色々なグループの演奏をよく聞きます。Sog Nischt Kejnmolは、前回かけた「パルティザンの歌」と同様、対独レジスタンスの中で生まれた歌です。では4曲続けます。

<1 Di Grine Kusine 2分38秒>
<4 Schtil, Di Nacht is Ojsgeschternt 3分36秒>
<6 Lomir Sich Iberbetn 3分30秒>
<10 Sog Nischt Kejnmol 2分21秒>

では最後に5曲目のArbetlosemarsch(失業者達の行進)を時間まで聞きながら今回はお別れです。イディッシュ民謡の名曲を数多く残したモルデハイ・ゲビルティグ作の歌です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<5 Arbetlosemarsch 2分36秒>

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2023年5月29日 (月)

Chansons Yiddish - Tendresses et Rage

ゼアミdeワールド361回目の放送、日曜夜10時にありました。31日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。「ドナ・ドナ」は、水曜以降に。

東欧系ユダヤ音楽の2回目になります。前回が1回目で「ブダペスト ドハーニ街シナゴーグの典礼」でした。このフンガロトン盤を1989年に聞いたことが、ユダヤの音楽を通して民族音楽に回帰するきっかけになりましたが、今日おかけするイディッシュ語の歌の音源は、その後すぐに聞いた懐かしい盤です。その2枚をおかけする前に、イディッシュの歌と言えば一番有名な「ドナ・ドナ」をジョーン・バエズでおかけしたいと思います。ジョーン・バエズはアメリカのベテランSSWで、ドナ・ドナを歌っていますがユダヤ系ではなく、メキシコ系の家系で、彼女の一家はクエーカー教徒だったそうです。

<Joan Baez / Donna Donna 3分15秒>

イディッシュ語と言うのは、東欧のユダヤ人の間で話されていた(いる)ドイツ語に近い言葉で、ドイツ語の一方言と言われる程、音はそっくりですが、語彙はユダヤの宗教語であるヘブライ語や、周囲のポーランドなどのスラヴ系言語の単語も入っています。バルカンの時に出てきたスペイン系ユダヤはヘブライ語でセファルディーでしたが、東欧系ユダヤはアシュケナジームと呼ばれます。
イディッシュ・ソングの「懐かしい2枚」と言うのは、フランスのオコラから89年に出ていたChansons Yiddish - Tendresses et Rage(優しさと怒り)と、ドイツのプレーネから出ていたZupfgeigenhanselのJiddische Liederです。どちらも購入してから30年以上経った盤で、先週のドハーニ街シナゴーグの盤が一部上手くトレースしなかったので、こちらも心配ではありますが、データも取ってあるので大丈夫です。オコラのChansons Yiddishは、2011年頃に再発されていました。この盤も1999年に音楽之友社から出た「ユーロルーツポップサーフィン」にレビューを書きました。ジャケットには戦中のクラクフ・ゲットーの有名な写真が使われていますが、切なく美しく物悲しい歌が多いイディッシュ・ソングのイメージ通りとも言えそうです。

オコラのChansons Yiddishの演奏者ですが、前にルーマニアの時にエネスコのヴァイオリン・ソナタ3番をかけたアミ・フラメールがヴァイオリンを弾いているのがまず注目です。ヘンリック・シェリングやナタン・ミルシタインにも師事した名手が、クラシックではない音楽を演奏するのも聞きものです。イディッシュ語のギター弾き語りはモシェ・ライサー、アコーディオンはジェラール・バローです。バロー以外の二人はユダヤ系で間違いないと思います。モシェ・ライサーはアントワープのシナゴーグの合唱団で幼少期から歌っていたという経歴があり、アミ・フラメールはルイ・マルの映画「さよなら子供たち」にも出ていました。フランスがナチス・ドイツの占領下にあった頃のカトリックの寄宿学校が舞台で、偽名でかくまわれていたユダヤ人の少年が連れ去られてしまうシーンで終わったと思います。
ではこの盤から、ラビが歌う時など、同じようなフレーズが繰り返されるところにハシディック・ソングの影響が見えるようなAz der rebbeと、戦時中のパルティザンの歌Partizanenliedの2曲を続けておかけします。

<Yiddish Songs (Chansons yiddish) Az der rebbe 4分46秒>

<Yiddish Songs (Chansons yiddish) Partizanenlied 3分17秒>

やはり同じようなフレーズを畳みかけるハシディック・ソングの系統に聞こえるLomir Alle !と、イスラエルのクラリネット奏者ギオラ・ファイドマンも演奏していたFraylekhがこの盤のラストに入っていますので、続けておかけします。どちらも旋律は一度耳にすると忘れられない印象を残します。

<Yiddish Songs (Chansons yiddish) Lomir Alle ! 3分47秒>
<Yiddish Songs (Chansons yiddish) Fraylekh 2分33秒>

では最後にオコラのChansons Yiddishのオープニングに入っているAvremlを時間まで聞きながら今回はお別れです。この曲は他のイディッシュの盤では見かけない曲ですが、このトリオらしい非常に印象的な歌です。今回ツプフガイゲンハンゼルは時間切れでかけられませんでしたので、次回取り上げたいと思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Yiddish Songs (Chansons yiddish) Avreml 5分50秒>

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2023年5月22日 (月)

ドハーニ街シナゴーグの典礼

ゼアミdeワールド360回目の放送、日曜夜10時にありました。24日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今回はハンガリー音楽の40回目最終回兼、東欧系ユダヤ音楽の1回目です。カディッシュ、コル・ニドレイから後は水曜以降に。

ハンガリー音楽の40回目になります。予告通りハンガリーの音楽のラストは、「ブダペスト ドハーニ街シナゴーグの典礼」で締めたいと思います。シナゴーグと言うのはユダヤ教の会堂のことです。
このフンガロトン盤を1989年に聞いたことが、ユダヤの音楽を通して民族音楽に回帰するきっかけになったことは、これまでにブログ等で何度も書いてきましたが、盤の紹介分として1999年に音楽之友社から出た「ユーロルーツポップサーフィン」に書いた拙稿を読み上げたいと思います。何度も拙稿を引用してきた「世界の民族音楽ディスクガイド」の3年前に出た本です。このムックでは沢山の専門家がヨーロッパ中のトラッド音楽の盤を紹介していますが、私はユダヤ音楽の記事を全て担当しました。その中から「ドハーニ街シナゴーグの典礼」のレビューを編集したものを読み上げます。

私事になって恐縮だが、1989年の六本木ウェイブ4階のクラシック担当時代に偶然この盤を聞き、カントールの悲愴なバリトンと混声合唱の切実で迫真力のある表現、ゴーと地響きのような音を鳴らすオルガンに鳥肌が立ってしまった。つまりこの盤がユダヤ音楽へ目を向けるきっかけになった訳だが、このヨーロッパ最大のシナゴーグでの典礼録音の壮麗さは今だに特筆に値すると思う。編成はクラシックと同じく歌とオルガンだけなのに雰囲気は余りにも違う。正統派ユダヤ教のように、歌は男性のみ、楽器は角笛ショファルのみ、と言うのとは違って、改革派の教会なので、混声合唱やオルガンも入るが、それでもヨーロッパの音楽文化の底流に流れていた古色溢れるユダヤ音楽の響きは十分に感じられる。カントールのシャーンドル・コヴァーチ氏はハンガリー動乱時にはプラハに滞在していたのか、56年録音のスプラフォン盤カントールの音源に彼の名が見いだされる。(音楽之友社「ユーロルーツポップサーフィン」の拙稿)

それでは最初の3曲を続けておかけします。タイトルの日本語訳は、アルファエンタープライズから国内発売された時の解説を参照しております。1曲目が大祭礼式入祭のオルガン独奏(ガーボル・リスニアイ編曲)、2曲目のウンサネ・タイケフ(ガーボル・リスニアイ編曲)は殉教したマインツ出身のラビ作とされる祈祷文によるカントールの独唱、3曲目は合唱が鮮烈に現れるエメス(サロモン・サルザー作曲)と続きます。エメスのように、最後のTの音のタヴの文字を、TではなくSの音で発音するのは、いかにもアシュケナジーム的です。

<1 Introduction - Organ 5分8秒>

<2 Unesaneh Tokef 1分41秒>

<3 Emes 2分7秒>

4曲目を飛ばして、5曲目のカディッシュと、6曲目のコル・ニドレイは非常に有名なユダヤ教の祈祷歌ですので、続けておかけします。カディッシュは、カドーシュなどと同根で聖なる意味合いを持ちます。フランスの作曲家モーリス・ラヴェルが「2つのヘブライの歌」の一曲としてカディッシュに基づく曲を書いています。コル・ニドレイは、ドイツの作曲家マックス・ブルッフが作曲したチェロのためのクラシック作品のコル・ニドライの原曲です。Kol Nidoreiの「ei」の部分がドイツ語の場合、通常「アイ」と発音するので、コル・ニドライと言う発音がよく知られていますが、ヘブライ語本来の発音はコル・ニドレイです。ユダヤ新年(ローシュ・ハシャナー)の贖罪日(ヨム・キプール)の初めに歌われる厳粛な祈祷歌で、ユダヤ旋律らしいエキゾチックな増二度音程が特徴的です。カディッシュ同様、通常はアラム語で唱えられます。コル・ニドレイとは「すべての誓い」のような意味です。

<5 Kaddish 3分45秒>
<6 Kol Nidrei 6分31秒>

ドハーニ街シナゴーグのウィキペディアのディスコグラフィーに『ブダペスト・シナゴーグの聖歌』がありましたが、そこに貼られていたリンクが私の店、ゼアミの旧サイトのURLだったので、リンク切れになっていて残念でした。キングレコードの「世界の祈り」シリーズの一枚として出た時の記事でしたが、このシリーズも廃盤になって久しいです。
それでは最後に旋律の美しい7曲目のYaaleと、時間が余れば12曲目の安息日シャバトの歌、Veshomruを時間まで聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<7 Yaale 2分56秒>
<12 Veshomru 5分48秒>

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2023年5月15日 (月)

プリズナー・ソングのRepülj Madár, Repülj

ゼアミdeワールド359回目の放送、日曜夜10時にありました。17日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はRepülj Madár, Repüljのみで、2本目は2018年のライブ映像です。お陰様で今日でゼアミは27周年になります。

ハンガリー音楽の39回目になります。次回で遂に40回になりますので、いよいよハンガリーの音楽も40回目のドハーニ街シナゴーグで最後にしたいと思います。ハンガリートラッドも、まだまだと言いますか、ダンスハウス後にはそれこそ星の数ほどグループが出来ていますが、きりがないのでマルタ・セバスチャンとムジカーシュの音源を持ってラストにしたいと思います。今回は80年代のワールドミュージック・ブームの少し後の91年に出たプリズナー・ソング(Muzsikás: Nem arról hajnallik, amerről hajnallott...)と、それより前の87年に出たDudoltamを中心におかけします。
プリズナー・ソングが出た前年の1990年前後だったと思いますが、確か渋谷のクラブクアトロで来日公演がありまして、聞きに行って来ました。ムジカーシュの活動開始はダンスハウス運動直後の1973年ですので、既に20年近いキャリアがあったと思いますが、西側で手に入るCDは、当時はプリズナー・ソングと、そのすぐ後で同じハンニバルから出たBlues for Transylvaniaだけだったように記憶しています。ベースギターやブズーキが入った若干ポップなアレンジも一部に施されていますが、聞き覚えのある民謡断片が随所に確認できます。初来日公演では生演奏ですので、アレンジの入ってない、生のままのトラッド音楽が展開されていたように思います。少し上体を前に乗り出し気味でヴァイオリンを弾くミハーイ・シポシュが、往年の俳優の大泉滉に似て見えて仕方なかったのも、よく覚えています(笑)

それではプリズナー・ソングから、5音音階のマジャール民謡の象徴のような「飛べよ孔雀よ」をもじったようにも思えるRepülj Madár, Repüljからおかけします。旋律も雰囲気もそっくりな曲です。因みに「飛べよ孔雀よ」の原題はRepülj páva repüljです。2007年にキングレコードから「世界のディーヴァたち」のシリーズの一枚として出た際には、「鳥よ、思いを伝えて」と言う邦題が付いていました。

<6 Repülj Madár, Repülj 3分38秒>

Muzsikás: Repülj madár / Fly Bird

それではプリズナー・ソングから続いて2,4,8曲目の3曲をおかけします。2曲目のEddig Vendégは、確かバルトークが編曲して作品に使っていた曲です。邦題は「今まではお客さんで」となっています。アグレッシブなビートが印象的な4曲目のHidegen Fújnak a Szelekは、「冷たい風」と言う邦題が付いています。8曲目のSzerelem, Szerelemの邦題は「恋」となっています。マルタ・セバスチャンの素晴らしいコブシ回しを堪能できる独唱です。

<2 Eddig Vendég 3分54秒>
<4 Hidegen Fújnak a Szelek 3分14秒>
<8 Szerelem, Szerelem 4分37秒>

もう一枚のDudoltamは、マルタ・セバスチャンとムジカーシュの1987年リリースのアルバムで、1993年に再発されています。彼女のCDの中でも特にシンプルで古典的な演奏が集まった一枚でした。この盤にも「飛べよ孔雀よ」の替え歌のような曲がありまして、その9曲目のFújnak a fellegek - Somogyと、度々これまでに出てきたカロタセグの曲を歌っている5曲目のHajnali nóta - Kalotaszegをおかけします。

<9 Fújnak a fellegek - Somogy 1分29秒>
<5 Hajnali nóta - Kalotaszeg 6分4秒>

では最後にMuzsikás Együttesと言う名義でストリーミングに出てきたMagyarországi Táncház Találkozó 1985. - IV.から、Vasvári vebunk és friss (Gömör)と言う曲を時間まで聞きながら今回はお別れです。これまでのムジカーシュの音源より前の、1985年のハンガリー本国での音源と思われます。85年ですからLPのみだったのかも知れません。都会のチャールダーシュっぽいヴェルブンクをムジカーシュで聞くことは珍しいので、こちらを選んでみました。他は一般的なハンガリー農村音楽系がほとんどです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<3 Vasvári vebunk és friss (Gömör) 2分45秒>

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2023年5月 8日 (月)

バルトーク・アルバム

ゼアミdeワールド358回目の放送、日曜夜10時にありました。10日20時半に再放送があります。7日夜は大雨情報のため、最初の5分余りと終わりの2分ほどが放送されませんでした。最初の解説の部分が全て流れなかったので、何の曲か分からなかったと思います。10日の再放送では問題なく放送されると思います。宜しければ是非お聞き下さい。今日の動画は5,6曲目のみです。

GW中のため、久々に宅録しております。ハンガリー音楽の38回目になります。今回はハンガリートラッド界で最もよく知られているグループ、ムジカーシュ Muzsikásの重要作の一つである「バルトーク・アルバム Bartók Album」を取り上げたいと思います。20世紀ハンガリーの大作曲家ベラ・バルトークの収集した民族音楽と、その曲に基づく彼の作品にムジカーシュが向き合った盤でした。

バルトークがトランシルヴァニアで現地録音した蝋管録音は4曲入っていますが、男性の歌うPejparipám Rézpatkójaと言う民謡と、この旋律を元にバルトーク自身が2本のヴァイオリンのために書いた二重奏曲の28番が5,6曲目に続けて入っていますので、続けておかけします。CDが残念ながら行方不明のため解説は参照できていませんが、ヴァイオリニストの一人はバラネスクSQのAlexander Balanescuです。もう一人がムジカーシュのミハーイ・シポシュかどうか未確認です。

<5 Pejparipám Rézpatkója 1分10秒>

<6 28. Duó (feat. Alexander Balanescu) [Bánkódás] 2分27秒>

8曲目のポロンドーシュと言う曲は、前にフォンティ・ムジカーリ盤の冒頭のファビアン・エヴァの歌唱でかけたのと同じ曲です。ここではマルタ・セバスチャンが独唱しています。エルデーイのフォークロアの雰囲気が満点のモルドヴァのハンガリー系少数民族チャンゴーの哀歌です。

<8 Porondos Víz Martján 3分13秒>

10、11曲目にはバルトークの蝋管録音によるJocul Bãrbãtescに続いて、この曲を原曲とするバルトークの2本のヴァイオリンのための二重奏曲の32番が入っています。ヴァイオリニストの一人はバラネスクSQのAlexander Balanescuです。続く12曲目のMáramarosi Táncok (feat. Sebestyén Márta)も、同じ旋律による演奏で、マルタ・セバスチャンの独唱に始まり、ムジカーシュの演奏に移ります。

<10 Jocul Bãrbãtesc 35秒>
<11 32. Duó (feat. Alexander Balanescu) [Máramarosi Tánc] 42秒>
<12 Máramarosi Táncok (feat. Sebestyén Márta) 3分27秒>

13曲目は原題がJocul cu bâtăとありまして、このタイトルでピンと来ましたが、これはバルトークの有名なルーマニア民族舞曲の1曲目の棒踊りの原曲に当たるようです。元の演奏はヴェルブンコシュ風、つまりハンガリーの勇壮な舞曲の影響があるロマの二人のヴァイオリニストによる演奏だったそうです。ムジカーシュの演奏がそのロマの演奏をそのまま再現しているのかどうかは不明ですが、バルトークのあの有名な旋律が途中から出てきます。バルトークがこの曲を採集した場所は、Voiniceniと言うムレシュ県の村です。ムレシュ県はクルージュ県の東側になりますから、トランシルヴァニアのど真ん中辺りです。

<13 Botos Tánc (Jocul Cu Bata) 5分16秒>

15曲目のバルトークの蝋管録音は縦笛フルヤの独奏だと思いますが、16曲目にはこの曲に基づく44. Duó (feat. Alexander Balanescu) [Erdélyi Tánc]が入っています。やはりアレクサンダー・バラネスク他の演奏です。二つのヴァイオリンの44の二重奏曲のフィナーレを華やかに締め括るトランシルヴァニアの踊りです。2曲続けます。

<15 Ardeleana 38秒>
<16 44. Duó (feat. Alexander Balanescu) [Erdélyi Tánc] 1分46秒>

18曲目Pe Locはルーマニア民族舞曲の3曲目の足踏み踊りの原曲です。エキゾチックな増2度音程が大変印象的な曲です。ここでは原曲におそらくそっくりなスタイルの、牧笛とステップの音で表現しています。

<18 Pe Loc 1分22秒>

では最後に20曲目のDunántúli Ugrósokを時間まで聞きながら今回はお別れです。いかにもトランシルヴァニア(エルデーイ)のハンガリー音楽らしい5音音階の旋律です。これはバルトークが録音してきたHej, Dunáról Fúj A Szél(ドナウから風が吹いてくる)が原曲です。この旋律は、バルトークのピアノのための即興曲の第4曲目に使われています。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<20 Dunántúli Ugrósok 3分32秒>

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2023年5月 1日 (月)

トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽 再び

ゼアミdeワールド357回目の放送、日曜夜10時にありました。3日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。今日はChasid lakodalmi táncokの映像だけにしておきます。1本目は何度も上げていますが、ムジカーシュとジプシーの老楽士ゲオルゲ・コヴァーチとのセッション、2本目は番組でかけた音源ですが、ハンガリーでの再発盤のジャケットが映像に出ています。

ハンガリー音楽の37回目になります。今回はハンガリートラッド界で最もよく知られているグループ、ムジカーシュの重要作の一つである「トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽」を再度取り上げますが、内容は去年の4月24日の306回目の放送のルーマニア音楽の18回目に少し手を加えたものになります。

米Hannibalから1993年に出た「ムジカーシュ/トランシルヴァニアの失われたユダヤ音楽」(Muzsikás / Maramoros - The Lost Jewish Music of Transylvania)は、ハンガリー・トラッド界の雄、ムジカーシュの代表作の一つで、名歌手マルタ・セバスチャンが歌で参加して華を添えています。ホロコーストでユダヤ人楽士のほとんどが亡くなり、忘れ去られていたトランシルヴァニアのユダヤ人の音楽を、ハンガリーのユダヤ人音楽学者のZoltan Simonとムジカーシュが協力して再現した盤です。戦前にユダヤ人の結婚式で演奏していたジプシーの老フィドラーGheorghe Covaciが記憶していて、取材したムジカーシュによって現代に蘇った曲も収録されています。音楽の印象は、一般的なクレズマーではなく、ムジカーシュが普段演奏するハンガリーのヴィレッジ音楽とも少し違っていて、当時のハンガリーのユダヤ音楽を忠実に再現しているという評価が高い演奏です。基本編成は、リーダーのMihály Siposのヴァイオリンと、伴奏は3弦のヴィオラ奏者が二人、コントラバスが一人です。
タイトルに「トランシルヴァニア」とありますが、本題はマラマロシュと言いまして、ルーマニア北部のマラムレシュ地方のハンガリー語読みですので、トランシルヴァニアでも最北部になります。狭義ではマラムレシュはトランシルヴァニアに入れない場合もあります。

まずは1曲目のChasid lakodalmi táncokですが、英語ではKhosid Wedding Dancesですので、ハシッド派ユダヤ教徒の結婚式のダンスと訳せると思います。ハシディック・ダンスのマラムレシュ版と言うことになりますが、一般のハシディックの音楽とは少し違うと思います。ムジカーシュの面々が現地取材の際にジプシーの老楽士Gheorghe Covaci(愛称Cioata)とセッションしているYouTubeもありました。満面の笑みを浮かべて弾いていたのを思い出しますが、この録音にもゲスト参加しています。

<1 Chasid lakodalmi táncok 4分33秒>
Muzsikas: Chasid Dances with Cioata

01 Chaszid lakodalmi táncok Khosid Wedding Dances

2曲目の物悲しく凄絶なまでに美しい旋律のSzól A Kakas Márは、この盤の白眉でしょう。英訳ではThe Rooster is crowingですから、「雄鶏は鳴く」となるでしょうか。ハンガリー系ユダヤ人のみならず一般のハンガリー人の間でも有名な旋律で、ハンガリー語の歌詞ですがユダヤの歌らしくヘブライ語の行が挿入されています。言い伝えでは、ある羊飼いが歌っていた旋律をハシディズムの指導者ツァディク(義人)のReib Eizikがいたく気に入って覚えていた旋律だそうで、後には宗教や民族を分け隔てなく寛容に統治した17世紀のトランシルヴァニア公Gabor Bethlenのお気に入りの歌だったという記録もあるそうです。

<2 Szól A Kakas Már 3分7秒>

3曲目のMáramarosszigeti tánc(マラマロシュシゲティの踊り)は、ゾルタン・シモンの採譜で知られていて、ツィンバロム奏者のアルパド・トニをフィーチャーした、これもトランシルヴァニアとハシディックが入り混じった感じの曲です。Máramarosszigetiの地名は、マラマロシュとシゲティに分離できると思いますが、ヴァイオリニストのヨーゼフ・シゲティを思い出す曲名だと思ったら、この国境の町でシゲティは少年時代を過ごしたそうです。因みにハンガリー語のszigetiは「小島」の意味でした。

<3 Máramarosszigeti tánc 3分36秒>

次は1曲飛びまして、5曲目のアニ・マアミンです。アニ・マアミンとは、ヘブライ語で"私は信じる" を意味する一節ですが、それを元とする楽曲でもあります。ここで聞かれるのは、東欧系ユダヤで最も有名なアニ・マアミンの旋律です。Gheorghe Covaciは、アウシュヴィッツから生き残って帰ったユダヤ人たちは、この歌をいつも泣きながら歌っていたと回想しています。出典は中世スペインのユダヤ教徒の哲学者、マイモニデス(モーシェ・ベン=マイモーン)が記した『ミシュネー・トーラー』に出てくるユダヤ教の信仰箇条の中の一節です。歌詞がある曲ですが、ムジカーシュの演奏はインストのみです。

<5 Áni Máámin 2分56秒>

7曲目はZoltan Simonがマルタ・セバスチャンに見せて歌うように勧めたユダヤ教の安息日(シャバト)の祈りの独唱で、シナゴーグでは男性が唱えるアハヴォ・ラボ旋法の曲を女性に歌わせているのがユニークです。

<7 Szombateste Búcsúztató 3分15秒>

では最後に年末の重要なユダヤ人の祭り、ハヌカーのための13曲目Chanukka gyertyagyújtásを時間まで聞きながら今回はお別れです。ヘブライ語ではHaneros Haleluとなっているこの曲は、ムジカーシュのメンバーがKlezmer Music; Early Yiddish Instrumental Musicと言う1910年のヒストリカル音源を聞いていて知ったそうです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<13 Chanukka gyertyagyújtás 3分11秒>

11曲目は時間が余れば、と思いましたが、入りませんでした。データだけ上げておきます。
タイトルからすぐにユダヤ・メロディと分る曲が幾つかありますが、11曲目のChosid tancもその一つで、結婚式のダンスのためのハシディック・メロディです。これもGheorghe Covaciが踊り方やその様子をよく覚えていたようです。

<11 Chosid tanc 1分39秒>

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2023年4月24日 (月)

フォドル・シャーンドル<ネッティ>の芸

ゼアミdeワールド356回目の放送、日曜夜10時にありました。26日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。ポッタ・ゲザは、また後日。

ハンガリー音楽の36回目になります。そろそろ現代ハンガリー・トラッドのシリーズは、ムジカーシュをトリにして終えようかと思いますが、その前にムジカーシュにも影響を与えたと思しきジプシー(ロマ)の名フィドラー、Fodor Sánfor(Netti) フォドル・シャーンドル<ネッティ>の音源から始めたいと思います。エルデーイのハンガリー農村音楽の文化が色濃く残るカロタセグの中でも、特に有名なフィドラーです。帽子を小粋に被ってムジカーシュのメンバーと演奏している写真が、フンガロトン原盤でアルファエンタープライズから1989年に国内盤も出ていた第7回ダンスハウス編集盤のジャケットを飾っていました。法悦あるいは愉悦の表情を湛えたこの写真が余りに印象的で、この盤に彼の演奏はありませんでしたが、この1枚の写真だけでも長く記憶に残っていました。泉が湧き出るように装飾豊かなフィドルを奏でる人で、これからおかけする曲でもよく分かります。フンガロトンから出ていたHungarian Folk Music from Transylvaniaは手元には残っていませんでしたが、ストリーミングにありましたので、3,4,5曲目を続けて出来るだけノーカットでおかけしたいと思います。ムジカーシュのコントラ奏者が伴奏で参加しています。この盤でも帽子を被った彼の4枚の写真がジャケットになっています。

<3 A Couple of Dances from Kalotaszeg 9分42秒>

<4 Lament, Morning Dance and Swift 8分24秒>

<5 Verbunk from Bodonkút 4分49秒>

曲名は、カロタセグのカップルダンス、哀歌と朝のダンスとスイフト、ボドンクートのヴェルブンクでした。

では最後に、フォドル・シャーンドル<ネティ>とは対照的な、都会のジプシー音楽のルーツを聞くようなポッタ・ゲザの演奏を聞きながら今回はお別れです。ハンガリーFolk Europaから出ていたSzulettem mint primasのラストに入っていましたが、この曲はヘルツク・アーグネシュがフォノー・ゼネカルとのMixtvra Cvltivalisの最初に歌っていたチャールダーシュ「Ej, A Titkos Szerelem 秘密の愛」と同じ曲で、原曲はかつてハンガリー北部で今はスロヴァキア領になっているMagyarbőd(スロヴァキア語ではBidovce)のポリフォニックな民謡です。
ポッタ・ゲザはスロヴァキアの国境に近い村に1933年に生まれたジプシー・ヴァイオリニストで、田舎の小編成のチャールダーシュやヴェルブンクが聞ける貴重盤でした。現在はスロヴァキアに入る辺りに都会のジプシー音楽のルーツがあるようですので、その古いスタイルの生き証人と言えるのではと思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Pimasz Emlékére 2分48秒>

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2023年4月17日 (月)

Uj Patriaのマラムレシュ(マラマロシュ)

ゼアミdeワールド355回目の放送、日曜夜10時にありました。19日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。予想通りUj PatriaシリーズはYouTubeには上がってないようです。代わりに、前にルーマニアのマラムレシュの時に見たようなイエウドでの民謡の映像ですが、一本入れておきます。

ハンガリー音楽の35回目になります。今回は現代ハンガリー・トラッドと言うよりも、トラッドシーンの活動の源になったトランシルヴァニア各地の村々での現地録音を特集したハンガリーFonoのUj Patriaシリーズから、手元に資料の残っていた2枚を中心におかけします。ウイ・パトリアは「新しい祖国」の意味になります。

このシリーズは、把握しているだけで17枚は出ていた地方別ハンガリー伝統音楽集で、CDサイズの50ページほどのブックレットにCDが入った装丁で、英文解説も付いて、現地取材は97~98年ですから録音も良いものが多く、正に一大アーカイヴになっています。20世紀の終わりに録音されたとは思えない新鮮な驚きに満ちたシリーズでした。エルデーイ(トランシルヴァニア)地方の録音場所は、度々名前の上がっているセーク、カロタセグ、マジャールパラトカ、マジャールソヴァート、ジメシュ、サースチャーヴァーシュなどがあります。セーク、マジャールパラトカ、マジャールソヴァートの3つは、トランシルヴァニアの中心都市クルージュ・ナポカの東側にあり、北東の方にある小説「吸血鬼ドラキュラ」で有名なビストリツァの間に点在しています。カロタセグは、逆にクルージュの西側に位置し、かなり広いエリアを指すようです。サースチャーヴァーシュはクルージュからは南東方向のシギショアラに近い辺りで、ジメシュは東のモルドヴァの一地方です。

手元にあるのは7枚目のJod - Ieud(マラマロシュ/マラムレシュの農村音楽)と14枚目のSzasztancs (ムレシュ地方北部の農村音楽)ですので、まずマラムレシュの方から6曲抜粋しました。ルーマニア北部に位置するマラムレシュの音源は、前にルーマニアの時にオコラ盤などをかけましたが、明らかに類似の音楽に聞こえますので、ハンガリー系ではなくルーマニア系の音楽になります。タイトルもルーマニア語のマラムレシュ方言のようですし、フィドルの音もルーマニア南部のタラフ・ドゥ・ハイドゥークスなどのワラキアジプシーの音楽に似ているので、ハンガリー系の多い北トランシルヴァニアと南のワラキアでは大分離れているのに、ルーマニア系と言うことだけで似て来るので不思議です。では2,4,6曲目を3曲続けておかけします。

<2 De Petrecere (Asztali Nota) Es Amikor Atoltozik A Menyasszony 2分48秒>
<4 De Petrecere (Cigany, Roman Asztali Nota) 3分59秒>
<6 Hore A Mortului (Cigany Virraszto Enekek) 1分5秒>

Gabi Covaci de la Ieud tri patru pretini mi-as fa.mpg

7枚目のJod - Ieud(マラマロシュ/マラムレシュの農村音楽)から続けますが、11曲目はジプシーの哀歌で、14曲目はジプシーとマジャールのクリスマス・キャロルです。この盤の最後19曲目には、ほとんど唯一のハンガリー音楽Hosszumezei Magyar Csardasが入っています。3曲続けます。

<11 Cigany Keservesek 3分59秒>
<14 Cigany Es Magyar Karacsonyi Enek 2分32秒>
<19 Hosszumezei Magyar Csardas 1分57秒>

次に15枚目のMagyarszovat(トランシルヴァニアの荒れ野の農村音楽)は唯一在庫が残っていまして、ストリーミングにも上がっていますので、確か前にゼアミブログの方で取り上げたのと同じ曲の女性独唱を1曲おかけしておきます。日本の追分に似た、コブシ豊かな節回しがとても味わい深いです。

<6 Édesanyám Megátkozott... 1分44秒>

では最後に14枚目のSzasztancs (ムレシュ地方北部の農村音楽)から、6曲目のForduló, Csárdás, Korcsos És Cigánycsárdás. Four dance cycleを時間まで聞きながら今回はお別れです。ムレシュ地方北部と言うのは、ビストリツァの東、マラムレシュの南方に位置する場所で、音楽は素朴なハンガリー系になってきます。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<6 Forduló, Csárdás, Korcsos És Cigánycsárdás. Four dance cycle 11分41秒>

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2023年4月10日 (月)

テーカとメータ

ゼアミdeワールド354回目の放送、日曜夜10時にありました。12日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。番組はFMラヂオバリバリのホームページ、http://www.baribari789.com/から、どこででもお聞き頂けます。

ハンガリー音楽の34回目になります。そして、現代ハンガリー・トラッドの11回目になります。今回は、ダンスハウス運動の初期から活動している老舗グループ2つの音源をご紹介したいと思います。テーカが1976年、メータが1983年に活動開始しています。
テーカは結成された1976年の翌年からバルトーク舞踊団専属の楽団として活動し、ハンガリー農村音楽を追及してきましたが、縦に構える伴奏ヴィオラの特徴的な演奏風景をジャケットに持ってきたŐskelet (Ancient East)には、ルーマニア北西部に位置しハンガリーと接するアラド県とビハール県のルーマニア民俗音楽と言う曲が入っていて、曲名通りハンガリー系音楽ではないのだとしたら、彼らとしては稀な曲だと思います。様々な楽器をトップに据えたスピード感溢れる5曲で組曲のようになっていますので、5曲続けておかけします。

<Arad és bihar megyei román népzene (Cimpoi) 3分6秒>

<Arad és bihar megyei román népzene (Roata) 2分37秒>

<Arad és bihar megyei román népzene (Poarga) 1分25秒>

<Arad és bihar megyei román népzene (Ardeleana) 2分13秒>

<Arad és bihar megyei román népzene (Minintalu) 3分16秒>

次にテーカと似た名前にも思えるメータの音源ですが、ハンガリー盤のライセンスリリースかも知れないイギリスARCの2枚が手元にありますので、Traditional Hungaryと言う盤から、エルデーイの中でも古いハンガリー音楽が色濃く残るカロタセグの曲でFekete Gyász, Fehér Ürömと言う曲をおかけします。曲名は「黒い嘆きと白い苦味」と訳せるようです。

<8 Fekete Gyász, Fehér Üröm 7分36秒>

では最後に、メータのもう一枚Gypsy Music from Hugaryから、Lajos Kossuth Wanted You To Know...と言う、ハンガリーの国民的英雄になっている独立運動の指導者コッシュートをテーマにした曲を時間まで聞きながら今回はお別れです。この盤はツィンバロムの名手カールマン・バログとの共演盤で、彼のツィンバロムをフィーチャーしています。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<6 Lajos Kossuth Wanted You To Know 5分8秒>

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2023年4月 3日 (月)

ベラ・ハルモーシュとフェレンツ・シェベー

ゼアミdeワールド353回目の放送、日曜夜10時にありました。5日20時半に再放送があります。宜しければ是非お聞き下さい。Táncházi MuzsikaそのもののYouTubeが見つかりませんので、当時の写真の入った映像を代わりに貼っておきます。ここではクラシックをハンガリー風に弾いていますが。左がベラ・ハルモーシュ、右がフェレンツ・シェベー、真ん中は若い頃のマルタ・セバスチャンでしょうか。これは貴重なショットだと思います。

Sebő együttes - 1976 Szilveszter

ハンガリー音楽の33回目になります。そして、現代ハンガリー・トラッドの10回目になります。前々回、ダンスハウス運動の仕掛け人ながら、現在は余り知られてないかも知れないベラ・ハルモシュの音源をかけました。ハンガリーのトラッドでは最重要人物の一人ですので、今回取り上げるとゼアミブログで予告していました。90年代頃にフンガロトン盤Hungarian Folk Music From Transylvaniaを見たくらいで余り知らなかったので、調べてみましたが、1946年生まれで、2013年に67歳で亡くなられていました。
実験音楽の活動から伝統音楽と出会い、エルデーイの農村をフィールドワークし、各村々の老人からヴァイオリンの演奏法や曲を習得し、後にバルトーク舞踊団専属の演奏家として活動するようになりました。1972年からブダペストで開催されるようになったダンスハウスで初めて演奏した内の一人です。
ベラ・ハルモシュ(あるいはハルモーシュ・ベラ)名義で出た先ほどのHungarian Folk Music From Transylvaniaが出たのは、1989年のようですが、ダンスハウスのムーヴメントが始まった1972年頃の音源を調べてみますと、相方のシェベー・フェレンツと組んでいたシェベー・アンサンブル(ハンガリー語ではSebő együttes)名義のものが沢山ありました。CDでは見た記憶がないので、当時出ていたLP音源だと思います。ストリーミングには夥しい数の音源が上がっています。
その内の一枚、同じくフンガロトンから1978年に出ていたTáncházi Muzsika(ダンスハウスの音楽)を聞いてみると、選曲に困るほど面白い演奏がひしめいていました。ルーツである実験的な要素も感じさせますが、見た目で言うと当時のベラ・ハルモシュは長髪で、いかにも70年代初めらしい、ヒッピー的な一面も感じられるように思いました。とにかく熱いムーヴメントの最盛期の音を聞く思いです。
ハンガリーに入ってから度々登場している「エチェル村の結婚式」のセークの音楽の演奏もありましたので、その10曲目から何曲か続けます。軽快な12曲目のGyülekező tánc Zalából (Szignál)と、サトマール地方のヴェルブンクとチャールダーシュ、ウグローシュと続く、Szatmári táncrend (Verbunk, Csárdás, Ugrós)の3曲を続けておかけします。

<10 Széki lakodalmas dallamok (Rákóczi induló - Szerelem, szerelem - A menyasszony szép virág - A kapuba a szekér) 5分35秒>
<12 Gyülekező tánc Zalából (Szignál) 1分28秒>
<14 Szatmári táncrend (Verbunk, Csárdás, Ugrós) 2分11秒>

8曲目に戻りまして、「エチェル村の結婚式」で聞いたような女性合唱の賑やかなタイプの曲もありますので、8,9曲目を続けておかけします。Palóc táncok (Leánykarikázó, Friss csárdás)とSomogyi táncok (Karikázó, Ugrós, Lassú és friss csárdás)の2曲です。

<8 Palóc táncok (Leánykarikázó, Friss csárdás) 5分4秒>
<9 Somogyi táncok (Karikázó, Ugrós, Lassú és friss csárdás) 5分42秒>

1989年のHungarian Folk Music From Transylvaniaからも、ラストを飾っている"Our House Is Thatched"と言う曲をおかけします。ベラ・ハルモシュの伴奏で歌っている女性歌手がマルタ・セバスチャンなのかどうか気になりますが、現物は手元にないので、残念ながら不明です。この曲を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<7 Our House Is Thatched 8分25秒>

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