ゼアミdeワールド

2018年10月15日 (月)

Salamat Sadikova / The Voice of Kyrgyzstan

ゼアミdeワールド130回目の放送、日曜夕方に終りました。17日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今日の動画は、番組のラストで15秒ほどしかかけられなかったKirgiz jeri (Kyrgyz Land)のみ上げておきます。他はまた後日探してみます。

キルギスタンの音楽も7回目になりました。キルギスの音源で、他にリリースを把握しているのは、仏Ineditの「キルギスタンの音楽」、英ARCの「キルギスの音楽 カンバルカン民族アンサンブル」、仏Budaの「キルギスタンの音楽」、仏Ocoraの「トルキスタン キルギスのコムズとカザフのドンブラ」、日本口琴協会の「Tak-Teke 踊る岩山羊:中央アジア キルギスの口琴・コムズ・歌」位ですが、在庫が残っているのは、日本口琴協会の盤のみです。今回はアップルミュージックからイネディの「キルギスタンの音楽」と、現物は手にしたことはありませんがキルギスのディーヴァのソロ・アルバム、Salamat Sadikova / The Voice of Kyrgyzstanからご紹介します。

まずは、前回キング盤の口琴独奏でかけましたKer Ozon(「広大な谷」)を、再度バクトゥベク・シャテノフのコムズ独奏をかけた後で、イネディ盤収録のBakit Chitirbaevによるクル・クヤクの独奏版を続けておかけします。ケル・オゾンとは「広大な谷」という意味で、「澄んだ新鮮な風が、広くて美しいキルギスの谷を吹き抜ける様子を表現している。」と解説がありました。元を辿るとダブルリード管楽器スルナイの曲に溯るようです。同じ曲を口琴と他の楽器でも聞ける例は初めてのように思いました。

<16 草原のキュ キルギスの器楽 ~Ker Ozon 2分12秒>

<1 Music of Kyrgyzstan Bakit Chitirbaev / Ker ozon 2分42秒>

イネディ盤からはまたご紹介するかも知れませんが、長くなりましたので今回でキルギスを終わりにするかも知れません。
どうしてもかけておきたいのは、キルギス・シリーズの最初にキングの「草原のウル」からご紹介しました女性歌手サラマト・サディコヴァの歌唱です。「キルギスのディーヴァ」とも讃えられる人で、優美で繊細な歌声とコムズの爪弾きには堪らない魅力があります。

まずは、キング盤にも入っていた明るい曲調の「赤い花」という曲です。「娘が自分を赤い花にたとえ、好きな青年を夜鶯にたとえて、密やかな愛を育みたいと思い焦がれている。」という内容した。

<3 Salamat Sadikova / The Voice of Kyrgyzstan Qizil Gul(Red Flower) 3:47>

次のParizat(Angel)はエキゾチックな旋律で耳に止まりましたが、こういうメロディはキルギスには珍しいように思いました。キルギス西部はウズベキスタンと入り組んだ土地ですから、音楽も入り組んでいるのかもと思ったりしますが、もしかしたら西の方から来た旋律でしょうか。

<4 Salamat Sadikova / The Voice of Kyrgyzstan Parizat(Angel)  5:31>

1曲飛んで6曲目のSagindim tuulgan jer seni(I miss you,My Birthplace 私は生まれ故郷が恋しい)は、タイトル通ひりひりするようなノスタルジーの感じられるこれもキルギスらしい美しい憂い節です。

<6 Salamat Sadikova / The Voice of Kyrgyzstan Sagindim tuulgan jer seni(I miss you,My Birthplace) 3:36>

12曲目のSuyuu jazi (Spring of Love)は、例のアフターディナーのハコさんが歌っていた曲にかなり似ていました。もしかしたらハコさんがアレンジして歌っていたのかもと思いましたが、どうでしょうか。

<12 Salamat Sadikova / The Voice of Kyrgyzstan Suyuu jazi (Spring of Love) 2:56>

では最後にKirgiz jeri (Kyrgyz Land)を聞きながら今回はお別れです。「キルギスの地」を意味するこの曲は、民族オーケストラをバックにしたノスタルジックな歌唱です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<19 Salamat Sadikova / The Voice of Kyrgyzstan Kirgiz jeri (Kyrgyz Land) 3:35>
Salamat Sadikova ‎– Kïrgïz Jeri (Kyrgyz Land) [ Kyrgyz Traditional Music ]

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2018年10月 8日 (月)

最近のテンギル・トー

ゼアミdeワールド129回目の放送、日曜夕方に終りました。10日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。今回の放送曲の動画は、まず見つからないと思いますので、最初から諦めていました。耳馴染みの曲もある今日の一本は、テンギル・トーの最近のステージのようです。2005年とはメンバーがかなり変わっているようです。11分過ぎからチョールと口琴に始まる合奏、20分頃には口琴アンサンブルが出てきますが、最初と23分辺りに出てくる女性の叙情的なウルがやっぱり最高で、耳が釘付けです(笑)

Çelpez.tv:Kırgız Müzik Grubu:Tengir Too(Tanrı Dağları)Doğanın Sesleri-2-Antalya


キルギスタンの音楽の6回目です。今回は先月16日の放送でかけてなかったキングの「草原のキュ キルギスの器楽」の、笛と口琴をご紹介します。この盤は8曲目から18曲目までは、コムズ以外の楽器の独奏が入っておりまして、10~13曲目は、尺八に似た音色のチョールと、オカリナに似たチョポ・チョールの演奏が入っております。
まずチョールの演奏ですが、ゼアミブログで先に書きましたが、管楽器の口の構え=アンブシュアを映像で確認すると、まずチョールは尺八のような歌口が付いてなくて、おそらくただの筒状のようでした。チョールの先を上の犬歯辺りに当てて、口を半開きにして舌で息をコントロールして吹くようですので、イランのネイやバシコルトスタンのクライと同じ発音原理のように見えました。キング盤の録音は割と音が大人しめですが、オムルベク・サケエフの詫び寂びの吹奏が入っておりますので、3曲続けておかけしたいと思います。

まず10曲目は「牧童のメロディ」と言う曲です。伊藤広宜氏の解説には以下のようにありました。「最初は長い縦笛チョゴイノ・チョールの独奏。雄大なキルギスの自然を描写した曲。小川、風の音、高山の花、雪で覆われた山頂、放牧地、谷などのキルギスの自然の素晴らしさを賛美した牧童のメロディ」

<10 草原のキュ キルギスの器楽 ~Koychulardin Kongur Kuusu 3分7秒>

12曲目に飛んで、「女の哀歌」という曲になります。「親しい人、偉大な人の死への哀歌。葬儀の際、故人の功績を讃える歌を故人の妻や娘と共に歌う哀歌専門の女性がやってくる。本来歌がついているが、ここではメロディの演奏だけで、チョールならではの哀感がよく出ている。」

<12 草原のキュ キルギスの器楽 ~Koshok 1分43秒>

13曲目もチョールの独奏で、曲名は「ムラタルのメロディ」です。「女性に本来備わっている優しさ、美しさ、繊細さ、強さを表現した若い女性賛美の叙情歌。作曲者の名前をそのまま曲名にしたもの。」とのことです。

<13 草原のキュ キルギスの器楽 ~Murataalinin Kayriktar 1分27秒>

飛ばした11曲目は、土笛のチョポ・チョールの独奏で「愉快なメロディ」です。「自然と人生を楽しんでいる若者の心地よい気分を表現した曲。鳥のさえずり、鶴の声、木の葉の音を模倣した愉快な曲。」とのことです。

<11 草原のキュ キルギスの器楽 ~Vyesyolyi Naigrysh 1分34秒>

この盤の口琴の演奏は、14曲目のシルクロードという曲だけ16日にかけておりました。他に4曲入っておりますので、順にご紹介します。
15曲目は「民族の旋律 1」とありまして、ヌラック・アブドゥラフマノフの木製口琴オーズ・コムズ独奏です。「キルギスの自然の美しさ、人々の生活、また祖国の大地への愛を表現したもの。」

<15 草原のキュ キルギスの器楽 ~Eldik Kairiktar 1分36秒>

16曲目は「広大な谷」というタイトルで、バクトゥベク・シャテノフのコムズ独奏です。「澄んだ新鮮な風が、広くて美しいキルギスの谷を吹き抜ける様子を表現している。」

<16 草原のキュ キルギスの器楽 ~Ker Ozon 2分12秒>

17曲目は「民族の旋律 2」というタイトルで、オムルベク・サケエフのオーズ・コムズ独奏です。「キルギスの熱烈で、明解な独創的メロディを表現」

<17 草原のキュ キルギスの器楽 ~Eldik Kairiktar 1分40秒>

ラストの18曲目は「二つの旋律」という曲で、こちらは3人の奏者による口琴トリオです。口琴の演奏技術が高度に発達したキルギスでは、基本となる低音と倍音の旋律の高音が出せるので、「二つの旋律」とも呼ばれるそうで、それがそのまま曲名になっています。
シャテノフ、カンゲルディエヴァ、オロズベコヴァの3人によるオーズ・コムズの演奏で、この曲は3部からなっていて、第1部は女性たちが山のふもとで純真に遊ぶ風景を、第2部は速いテンポで山々の美しさを、第3部は女性の美しさと不思議さを表現。」

<18 草原のキュ キルギスの器楽 ~Kosh Kairik 2分30秒>

では最後に2弦の擦弦楽器クル・クヤクの独奏曲「馬の群れ」を聞きながら今回はお別れです。クル・クヤクは、16日に8曲目のBek Arstanをかけましたが、この楽器はカザフやウズベク西部カラカルパクのクル・コブズと同種の弓奏楽器です。「夏山の遊牧地の馬の群れのゆったりと静かな様子を描いたもの。馬の群れが軽快に駆け、その音が山に響き渡る情景を模写している。」

もし時間が余りましたら、8曲目のBek Arstanをおかけします。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<9 草原のキュ キルギスの器楽 ~Top Zhilki 3分13秒>

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2018年10月 1日 (月)

テンギル=トー/キルギスの山岳音楽 後半

ゼアミdeワールド128回目の放送、日曜夕方に終りました。3日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。動画で見つかったのは、1本のみでした。また後日探してみます。

キルギスタンの音楽の5回目です。前回に続いてアメリカの民族音楽の名門レーベル、Smithsonian Folkways(スミソニアン・フォークウェイズ)から出ている「テンギル=トー/キルギスの山岳音楽」ですが、時間が余ったらということで予定していて、かけられなかった曲からおかけします。

女性歌手と笛中心の爽やかな合奏の7曲目Kyiylyp turam (I’m Sad to Say Goodbye)ですが、キルギス人にとっては、往年の高山での遊牧生活を連想させるノスタルジックなイメージがあるようです。山岳部では、婚礼などにおいてよく通る高い声で歌うことが多かったそうです。1978年に43歳の若さで世を去ったKanymgul Dosmanbetova作曲の曲です。

<7 テンギル=トー/キルギスの山岳音楽 ~Kyiylyp turam (I’m Sad to Say Goodbye) 2分33秒>

管楽器の方では、オカリナに似た土笛のチョポ・チョールと、尺八に似た音色の縦笛チョールの目立つ曲もありまして、9曲目のAk Satkyn menen Kulmyrza(アク・サトキンとクルミルザ)ではチョールの渋いソロから始まります。9分を越える曲で、コムズが出てきてから後半は男女かけあいの叙事詩語りに変わります。この悲劇的なダスタン、あるいは短かい叙事詩は、アメリカの南部アパラチアの殺人者のバラードに比せられるのは妥当ではないとの興味深いコメントがありました。解説にはこの長い詩のキルギス語原文と英訳が全て載っています。

<9 テンギル=トー/キルギスの山岳音楽 ~Ak Satkyn menen Kulmyrza 9分9秒>

10曲目はチョポ・チョールの独奏曲で、土笛の暖かい音ですが、オカリナでイメージするようなほのぼのとした印象よりは、ファンタジーという曲名通りの神秘的な音色を聞かせます。キルギスでは子供だけでなく大人もよく演奏し、特に南キルギスでは夜の森を馬に乗って行く際の信号音にもなるそうです。

<10 テンギル=トー/キルギスの山岳音楽 ~Fantasy on the Chopo Choor 2分>

12曲目の「路上で(Jol Jurush)」という曲は、騎馬民族の躍動的なリズムがコムズで巧みに描写されている曲だと思います。コムズの音色と技巧の妙が聞ける器楽曲です。演奏者の一人、ヌルランベク・ニシャーノフが、2つの伝統的なモチーフから一曲に仕立て上げた曲です。

<12 テンギル=トー/キルギスの山岳音楽 ~Jol Jurush 2分27秒>

14曲目の「私は覚えている (Esimde)」は、アタイ・オゴンバエフが1930年代に作曲した曲で、キルギスらしい憂い節になっていると思います。

<14 テンギル=トー/キルギスの山岳音楽 ~Esimde 5分4秒>

16曲目には、女性の短音階のウルが入っていて、これがまた絶品ですので、最後にこのSagynam (I miss you)という曲を聞きながら今回はお別れです。「歌詞は特筆するほどではないが、旋律は美しく、そこには愛とメランコリー、ノスタルジーがある」というヌルランベク・ニシャーノフの解説のイメージ通りだと思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<16 テンギル=トー/キルギスの山岳音楽 ~Sagynam 3分31秒>
Sagynam (I Miss You)

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2018年9月24日 (月)

テンギル=トー/キルギスの山岳音楽

ゼアミdeワールド127回目の放送、日曜夕方に終りました。26日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。一本目はテンギル=トーのDVDから。口琴、チョポ・チョール、マナス、コムズなど、ほぼ一通り出てきます。他の曲は後日探してみます。
Tengir-Too: Mountain Music of Kyrgyzstan


キルギスタンの音楽の4回目です。今回は世界で最も豊富なカタログを持つアメリカの民族音楽の名門レーベル、Smithsonian Folkways(スミソニアン・フォークウェイズ)から出ている「テンギル=トー/キルギスの山岳音楽(Music of Central Asia Vol. 1: Tengir-Too: Mountain Music from Kyrgyzstan)」からご紹介したいと思います。この盤はSmithsonian FolkwaysからのDVD付の中央アジア音楽シリーズの第一作で、演奏はテンギル=トーという若手中心のグループですが、ゲストでキング盤に90年代の録音があったベテランのヌラック・アブドゥラフマノフも参加しています。2005年リリースですから、キング盤からちょうど10年経って出た盤です。冒頭いきなり口琴の演奏から始まりますが、もちろん口琴だけでなく、コムズやその他伝統楽器が沢山登場します。キング盤の「草原のキュ」ではデモ演奏程度でしたが、コムズと口琴以外の楽器も多彩な音色を聞かせます。

まず1曲目のJangylyk (Novelty)というエクスペリメンタルな曲ですが、倍音とベース音がはっきり聞き取れる3人の口琴奏者のトリオから始まります。金属製のテミル・コムズと木製のオーズ・コムズの音色の違いがよく分かります。冒頭の音は木製のオーズ・コムズだと思います。演奏者の一人のNurlanbek Nyshanovの作曲です。

<1 テンギル=トー/キルギスの山岳音楽 ~Jangylyk (Novelty) 3分14秒>

2曲目のErke kyz (The Spoiled Girl 甘やかされて育った少女?)という曲は、本来コムズだけで演奏される器楽曲キュを、2弦の擦弦楽器クル・クヤク、縦笛のチョール、オカリナに似た土笛のチョポチョールを加えた合奏で、きれいにユニゾン(同音)で合奏していて、その点では解説にあるようにアイリッシュのダンス音楽を連想させるものがあります。

<2 テンギル=トー/キルギスの山岳音楽 ~Erke kyz (The Spoiled Girl) 2分7秒>

3曲目のKuidum chok (I Burn, I Smoulder like Charcoal)は、キルギスの有名な吟遊詩人のアタイ・オゴンバエフ(1900-49)作の自伝的な曲で、オーソドックスなコムズ弾き語りです。Zainidin Imanalievが詩人の若き日の叶わぬ恋話を切々と聞かせます。このCDのジャケットで、上下逆さに構えてコムズを弾き語っているのは、彼です。英訳を訳すなら「私は燃える、私は木炭のようにくすぶる」となるでしょうか。

<3 テンギル=トー/キルギスの山岳音楽 ~Kuidum chok (I Burn, I Smoulder like Charcoal) 3分26秒>
Küidüm chok (I Burn, I Smoulder like Charcoal)


続く4曲目のEpisode from the Manas: Kokotoidun Ashy (Kokotoi’s Memorial Feast) は、Tengir-Tooのメンバーの荘厳な合奏で始まりますが、その後で語り出されるのは、前に出てきました英雄叙事詩マナスの一節です。語り手のRysbek Jumabaevは写真では若そうに見えますが、堂々たる語りを聞かせています。「草原のウル」のマナスは無伴奏でしたが、このテンギル=トーの演奏は、とても語りに合った伴奏を付けていると思います。

<4 テンギル=トー/キルギスの山岳音楽 ~Episode from the Manas 6分26秒>

少し飛びまして8曲目のアッティラ・ハーンという曲は、曲名でびびっと来まして、是非ともフェイドアウト無しでかけておきたいと思いました。5世紀にヨーロッパ東部にまで及ぶ大帝国を打ち立てたテュルク(あるいはモンゴル)系民族の大王、フン族のアッティラの偉業を讃えた曲です。キング盤でお馴染み、ベテランのヌラック・アブドゥラフマノフの自作コムズ独奏曲です。

<8 テンギル=トー/キルギスの山岳音楽 ~Attila Khan 3分27秒>

この盤にはヌラック・アブドゥラフマノフのコムズ独奏がもう一曲入っておりまして、それは17曲目のカンバルカンという曲です。キング盤や英ARC盤のカンバルカン・アンサンブルをすぐに思い出しますが、コムズを作ったのが、この「キルギス音楽の父」カンバルカンとされています。このKaramoldo Orozov(1883-1960)の曲は、カンバルカンを讃えたコムズ独奏のキュです。
この曲を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<17 テンギル=トー/キルギスの山岳音楽 ~Kambarkan 4分52秒>

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2018年9月17日 (月)

草原のキュ~ヌラック・アブドゥラフマノフ

ゼアミdeワールド126回目の放送、日曜夕方に終りました。19日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。Нурак Абдырахманов(ヌラック・アブドゥラフマノフ)の3曲はすぐに見つかりました。他は多分無さそうですが、また後日探してみます。

キルギスタンの音楽の3回目です。キングの「草原のウル」の姉妹編の「草原のキュ」からご紹介したいと思います。前々回に解説しましたように、キルギスの伝統音楽は、歌謡のウルと器楽のキュに大別されます。
まずは国民的弦楽器のコムズの独奏ですが、この楽器はオールのような形をした木製でフレットレスの撥弦楽器で、3度や6度の和音がとても美しく響いています。抒情的なウルでもその柔らかい響きが最大限に生かされていたと思います。興味深いのは、3本の弦の内、真ん中の弦が一番高い音に調律されることで、イランのセタールの3番弦のように、一番下の弦のオクターブ上に合わせることもあるようです。調弦例で言えば、レ、レ、ソか、ソ、レ、ラがCDの解説に上がっていました。
奏法には指先で弦をはじく奏法(テリプ・チェルテット)と、手首を使って弦を打ち付ける打楽器的な技法(ウルプ・チェルテット)があって、それらが次々交替する名人芸(コル・オイノトット)では、コムズを頭上や背中の後ろで演奏したり、上下、左右を逆にして演奏したりして、耳だけでなく目も楽しませます。
「キルギス人はコムズと共に生まれ、コムズと共に死ぬ」という諺があるほどに、彼らにとって重要な楽器です。

1曲目はウルの方でも出てきた男性歌手ヌラック・アブドゥラフマノフがコムズの独奏を聞かせています。この人はコムズの名人でもあります。Ak Tamak, Kok Tamakという曲は、お互いに自分の故郷を自慢することに夢中になってピーチクパーチク騒いでいる2羽の鳥をユーモラスに表現しています。

<1 草原のキュ キルギスの器楽 ~Ak Tamak, Kok Tamak 3分15秒>
Нурак Абдырахманов комуз куулору | KG MEDIA Красивая игра на комузе

7曲目がAk Tamak, Kok Tamakです。

3曲目までヌラック・アブドゥラフマノフのコムズの独奏ですが、どれも素晴らしいので続けます。2曲目はUluu Toolorという曲は「偉大な山々」と邦題が付いています。キルギスに高く聳え立つ山々への崇拝、何物にも代えられない山々の美しさやそこに住んでいる動物の生き生きとした世界を描写した曲です。

<2 草原のキュ キルギスの器楽 ~Uluu Toolor 3分41秒>
Улуу тоолор (машыгуу)


3曲目のO Mur Kochuという曲は、「キャラバンの人生」と言う邦題になっています。キルギス民族の過去を振り返り、希望に満ちた将来を表現したペレストロイカ時代の大作とのことです。抒情的なウルのような曲調です。

<3 草原のキュ キルギスの器楽 ~O Mur Kochu 6分16秒>
Өмүр көчү (машыгуу)


7曲目に飛んで、4人のコムズ奏者によるParavozと言う曲の邦題は「蒸気機関車」になっております。これは先ほど出てきました名人芸(コル・オイノトット)の演奏例と言うことになります。蒸気機関車が動き出し、速度を上げて走り抜け、停車するまでをコムズで描写した曲です。名人芸では、隣の演奏者のコムズを弾いたり、楽器を回したり等のパフォーマンスも披露されます。

<7 草原のキュ キルギスの器楽 ~Paravoz 2分57秒>

8曲目から18曲目までは、コムズ以外の楽器の独奏が入っておりますが、まず8曲目の2弦の擦弦楽器クル・クヤクの独奏です。この楽器はカザフやウズベク西部カラカルパクのクル・コブズと同種の弓奏楽器です。この曲の内容は、敵方の娘に恋をしたベク・アルスタンという兵士が、愛を貫こうとするが娘の兄弟から猛反対を受け、最後は不幸な結末に終わるという話を題材にした民謡、とのことです。

<8 草原のキュ キルギスの器楽 ~Bek Arstan 3分27秒>

では最後に、キルギスの口琴、オーズ・コムズの演奏を聞きながら今回はお別れです。口琴の演奏技術が高度に発達したキルギスでは、基本となる低音と倍音の旋律の高音が出せるので、「二つの旋律」とも呼ばれるそうです。演奏しているのは、歌とコムズでも出てきたヌラック・アブドゥラフマノフで、彼の自作自演によるシルクロードという曲です。原題はZhibek Zholuで、これはシルクロードという意味になるのでしょうか? 遠い昔のシルクロードの情緒を髣髴とさせる曲で、果てしなく辛い苦しい道を、希望を持って進んで行くキャラバンの様子を模写した演奏です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<14 草原のキュ キルギスの器楽 ~Zhibek Zholu 2分7秒>

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2018年9月10日 (月)

「草原のウル」の2回目

ゼアミdeワールド125回目の放送、日曜夕方に終りました。(最初5分は大雨関連の防災情報になりました) 12日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。youtubeは日本語タイトルで検索しても出てこないので、CDにある原語のローマ字表記で検索しましたが、1本だけでした。キリル文字で検索すればあるかも知れませんが。

キルギスタンの音楽の2回目です。先週に続きまして、キングの「草原のウル」から続けたいと思います。
前回15曲目のサラマト・サディコヴァのコムズ弾き語り「花咲く青春」という曲をかけられずに終わりましたので、この曲から行きます。「娘に恋をした若者が恋人を夜空に輝く星と芳しい花にたとえ、幸せを運んでくる人と讃えている。更に娘の知恵を清い泉に、美しい目を灯の点る灯籠に、その姿を山に広がる花にたとえ、彼女と共に歩み、船に乗り、青春の金の湖から、幸福という金の魚を釣り上げたいと熱く願う歌」という内容で、前回かけたような哀愁味を帯びた曲とは対照的な一曲です。

<15 草原のウル キルギスの歌 ~花咲く青春 3分43秒>

17曲目には、カンバルカン・アンサンブルのもう一人の女性歌手ディルシャト・カンゲルディエヴァのコムズ弾き語りが出て来ますが、再び哀調を帯びたウルになります。「あなたを思ったら」という曲で、キング盤「草原のウル」の伊藤広宣氏の解説には以下のようにあります。「愛する男から遠く離れて一目でも会いたいと願う娘の恋愛歌。もしも男が自分のことを忘れても、自分は彼のことを忘れない。一生自分の心の中に彼は生きて行くという内容。」

<17 草原のウル キルギスの歌 ~あなたを思ったら 3分38秒>
The Kambarkan Folk Ensemble - Seni Oylosom


次の18曲目ではサラマト・サディコヴァを中心に、3人の女性歌手が見事な重唱を聞かせます。こういうコムズ弾き語りのソロではないスタイルは元々は無くて、ソ連時代に始まったようです。「愛と言うためらいがある」という曲で「ある青年に愛を打ち明けた娘が、彼が自分の愛を恥ずかしいから他人に言わないように、また自分の愛に答えて欲しい、と願った歌」と解説にありました。

<18 草原のウル キルギスの歌 ~愛と言うためらいがある 3分5秒>

続く19曲目は、コムズだけでなく、口琴のオーズ・コムズと、オカリナに似たチョポチョールも加わった賑やかな演奏で、「心より」という曲です。「愛するあなたに手紙を書きます。私の話を聞いて下さい。私の心を手紙に込めてあなたに送ります。私の暗い心は、あなたを思って明るくなりました。これからの人生を花咲かせましょう。あなたへ綴る熱い愛の言葉。あなたが遠くに行ってしまって、私の悲しみは募るばかりです、と歌った歌。」と解説にありました。

<19 草原のウル キルギスの歌 ~心より 1分31秒>

前回は8曲目から始めて14曲目までのサラマト・サディコヴァの歌唱でした。ここで1曲目に戻りますが、前半は男性歌手のコムズ弾き語りが中心に入っておりまして、特に1曲目のマナスという無伴奏の独唱は、これまで多かった短調の叙情歌とは対照的に、雄々しく明るい歌です。英雄叙事詩「マナス」は、キルギス人の始祖とされるマナスとその子孫の生涯を、何十万行にも亘って、即興で韻を踏まえて語りあげる叙事詩ということですから、キルギス人のアイデンティティに関わる重要なレパートリーと思われます。歌っているヌラック・アブドゥラマノフはキルギスを代表する最も有名な男性歌手です。キルギス民族の統一と侵略者から祖国を守る英雄マナスの勇猛さを伝える語りが聞けます。

<1 草原のウル キルギスの歌 ~マナス 2分20秒>

英雄叙事詩の豪快な語りでしたが、やはり男性の歌にもやるせない短調の曲がありまして、どちらかと言えば、そういうタイプが目立っているようです。しかし、2曲目に入っているヌラック・アブドゥラマノフのケルベスというコムズ弾き語りの曲は、偉大なアクン(キルギスの即興詩人)トクトグルの、歌の内容とは対照的とも思える明るい歌になっています。人生はとても短く、一瞬にして過ぎて行くという愛惜を歌っていて、なぜ人は永遠に青春の25歳の年齢で止まっていないのか、という内容です。

<2 草原のウル キルギスの歌 ~ケルベス 2分15秒>

3曲目も同じくヌラック・アブドゥラマノフのコムズ弾き語りですが、やるせない短調のタイプの歌に変わります。内容は以下の通りです。「恋人の顔、姿の美しさ、また彼女の優しさをよく夢で見、自分の愛が成就することを望んでいる詩人の切ない恋心を表現した内容。」

<3 草原のウル キルギスの歌 ~思索 2分44秒>

4曲目から4曲はバクトゥベク・シャテノフのコムズ弾き語りが続きますが、4曲目のアイナグルという曲は、これまたやるせなく切ない歌です。「アイナグルという女性に恋した青年の歌。彼は彼女を辺り一面を照らすような宵の明星にたとえ、一目彼女を見た瞬間、彼女に恋し切なくなった。彼女以外何も目に入らない、何も考えられない」という内容の歌です。

この曲を聴きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<4 草原のウル キルギスの歌 ~アイナグル 4分44秒>

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2018年9月 3日 (月)

キルギスのディーヴァ Salamat Sadikovaの歌声

ゼアミdeワールド124回目の放送、日曜夕方に終りました。5日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。サラマト・サディコヴァの該当曲のYouTube、2本ありました。

今回からキルギスタンの音楽を聞いて行きたいと思います。カザフスタンの南東、新疆ウイグルの北西に隣接している中央アジアの山岳国です。旧ソ連の中央アジアには、カザフスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタンとキルギスタンがありますが、カザフとキルギス、トルクメンは、他の2国と異なり遊牧民の要素を色濃く残しており、カザフやキルギスで聞かれる7音の短音階の旋律は、長く続いた遊牧の生活と無関係ではないように思いますが、どうでしょうか? ウズベクやタジクの音楽のようなシルクロードのエキゾチックさよりも、ロシア民謡に近いような懐かしさを覚える曲が多く聞けます。中央アジアでは異色な、7音の短音階の秘密は、解明はされてないようです。
カザフの時に少しお話しましたが、80年代ニューウェーブのグループ、アフターディナーのハコさんが歌っていたキルギス民謡も、正にそういうタイプでした。国民的弦楽器は、カザフではドンブラでしたが、キルギスではコムズという3弦でフレットレスの弦楽器になります。カザフと同様に曲芸のような超絶技巧も盛んなようですが、7音短音階の歌では、しっとりと叙情的に演奏されます。
キルギスの伝統音楽は、歌謡のウルと器楽のキュに大別されますが、その懐かしいイメージの叙情歌はウルということになります。アフターディナーの歌っていた曲は30年程経っても見つからずですが、似た感じの心に沁み入る曲を何曲か続けておかけしたいと思います。音源はキングの90年代のワールドミュージックライブラリーの「草原のウル」です。2008年に再編された現在のWRMLシリーズの「キルギスの音楽」では、旧シリーズのもう一枚の「草原のキュ」と合わせた2枚組になっておりましたが、新盤の方も現在では残念ながらメーカー切れで、ほぼ廃盤状態になってしまっているようです。

まずは、アフターディナーの曲を思い出させる女性歌手によるコムズ弾き語りです。グループはカンバルカン民族アンサンブルで、女性歌手は「キルギスのディーヴァ」とも讃えられるサラマト・サディコヴァです。曲名は「愛の詩(うた)」で、キング盤の伊藤広宣氏の解説を読み上げます。
「サラマトカン・サドゥコヴァはキルギスで最も人気のある女性歌手の一人。人生には色々困難なことがあるが、愛は永遠のものであってほしいと願う娘の恋心を歌った歌。」

<8 草原のウル キルギスの歌 ~愛の詩 2分46秒>
Salamat Sadïkova: Makhabat ïrï


同じくサラマト・サディコヴァのコムズ弾き語りで、コーカサス辺りで多く見られた鶴をテーマにした「私の鶴よ、帰って来て」です。解説には以下のようにあります。
「今は喧嘩して離れてしまったが、春暖かい所に鶴が舞い戻って来るように、もう一度初恋の相手が自分の許に帰って来て欲しいと願う乙女の恋歌。」

<9 草原のウル キルギスの歌 ~私の鶴よ、帰って来て 3分12秒>

10曲目は対照的に明るい曲調の「赤い花」という曲です。「娘が自分を赤い花にたとえ、好きな青年を夜鶯にたとえて、密やかな愛を育みたいと思い焦がれている。」という内容です。

<10 草原のウル キルギスの歌 ~赤い花 2分58秒>
Salamat Sadikova ‎– Qïzïl Gül (Red Flower) [ Kyrgyz Traditional Music ]


サラマト・サディコヴァの歌唱は素晴らしいので、続けます。11曲目は「乙女の歌」で、「娘が思いを寄せる若者が蝶のようにあっちの花、こっちの花と移るように、女性の所に行かずに自分だけを愛してほしい。」という内容です。

<11 草原のウル キルギスの歌 ~乙女の歌 2分42秒>

12曲目の「思い出してよ、あなた」も似たような内容で、「愛を誓った恋人と別れた娘の思いを歌った歌。別れてしまっても、いつも彼のことを思い出しては寂しがり、夢にまでも彼が現われてくる。」という歌です。

<12 草原のウル キルギスの歌 ~思い出してよ、あなた 3分1秒>

13曲目は極めつけのような「別れ」というタイトルで、「どうしたらよいのか分からない悲しい恋をした娘の歌。彼女は彼のことを思って、自分より美しく聡明な女性と結ばれるようにと願っている。」という内容です。

<13 草原のウル キルギスの歌 ~別れ 3分18秒>

この盤にサラマト・サディコヴァの歌唱は11曲入っておりまして、14曲目の「幸せの賛歌」もキルギスの美しい旋律の恋歌です。「手を取り合って花園へ行こうよ。月明かりの下で語り合おうよ。運命の贈り物でこうして一緒にいられるのだから、と恋人に夢中で話しかける乙女の歌。」こういう内容です。
この曲を聴きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<14 草原のウル キルギスの歌 ~幸せの賛歌 3分37秒>

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2018年8月27日 (月)

ロシアのモンゴル系の国、カルムイクの音楽

ゼアミdeワールド123回目の放送、日曜夕方に終りました。29日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。動画は、とりあえずカルムイクのドンブル(dombura or topshur)のデュエットを上げておきます。CDと同じ音源は無さそうです。ドンブル奏者は女性のみと解説にありましたが、これは男性が踊る時は、という注釈付きだったのかも知れません。

Kalmyk topshur dueling (Viktor Batyrovich Okchayev and Dmitriy Sharayev)


今回はカスピ海北西岸のヴォルガ河下流西部に位置するロシア連邦内のモンゴル系の国、カルムイクの音楽をご紹介します。ヨーロッパ唯一の仏教国です。モスクワからそれ程離れてないヨーロッパ・ロシアにありながら、モンゴル系でチベット仏教を信奉する仏教国の存在は、一般にはほとんど知られてないかも知れません。
カルムイク人(Kalmyk)とは、オイラート人のロシアでの呼称で、ではオイラートとは何かと言うと、モンゴル高原の西部から新疆ウイグルの北部にかけて居住する民族で、15世紀から18世紀にモンゴルと並ぶモンゴル高原の有力部族連合であった、オイラト族連合に属した諸部族の民族で、中華人民共和国、モンゴル国の一部になった後、モンゴル民族の一員とみなされていますが、元来はテュルク系だったようです。
この場所でのモンゴル系ということで、ダッタン人の末裔のイメージを強く持っていましたが、いわゆる「タタールのくびき」は、13世紀前半に始まったモンゴルのロシア侵攻と、それにつづくモンゴル人によるルーシ(現在のロシア・ウクライナ・ベラルーシ)支配を、ロシア側から表現した用語ですから、時期的にはずれます。

この場所に居住していることについて、ウィキペディアには以下のように解説がありました。
「1755年から1759年にかけて、清の乾隆帝がジュンガル・ホンタイジ国を征服、清・ジュンガル戦争が終結。疫病(天然痘)の蔓延でカルムイク人の父祖の地が空き地になる。1771年、ヴォルガ・カルムイク人の指導者ウバシは、父祖の地である東トルキスタンのイリ地方への帰還を決定したが、その年は暖冬で、ヴォルガ川が凍結しなかったためヴォルガ西岸にいた半数は取り残されることになった。この取り残された人々こそがカルムイキア自治共和国のカルムイキア人の祖先である。
また、このときみすみすカルムイク人たちを逃がしたロシア政府の辺境守備での無能振りと権威の失墜(ウラル・コサックの蜂起 (1772年))が、2年後の1773年にドン・コサックが蜂起したプガチョフの大乱を招くきっかけとなった。」
このようにありましたが、更に興味深い一例として
「ロシアの革命家、政治家レーニンは、父方の祖母を通じてカルムイク人の血を引いている。」
とありました。レーニン以外にも、作曲家ならグバイドゥーリナなど、タタールやカルムイクなどのアジア系の血を引くロシアの有名人は枚挙に暇ないと思います。

解説はこの位にしまして、ロシアのKailasから2001年に出ましたCD「Tsahan - Masterpieces of Kalmyk Traditional Music (1990-1997)」から聞いて行きたいと思います。解説が簡略なので、私の感想中心になります。

2曲目はTakin Biという弦楽器の独奏曲です。ドンブラをすぐさま思い出す音ですが、カルムイクではドンブルと言うようです。弾き手は女性のみだそうです。

<2 Tsahan - Masterpieces of Kalmyk Traditional Music  Takin Bi 2分10秒>

6曲目のTuula Biもドンブルの曲ですが、沖縄音階にも聞こえる旋律で、こんなメロディがカスピ海の北部から聞こえる不思議を感じます。ドンブルは女性が弾いて、男性が踊ることが多いようですが、この曲は「野うさぎの踊り」とのことです。

<6 Tsahan - Masterpieces of Kalmyk Traditional Music  Tuula Bi 3分40秒>

22曲目にも同じTuula Biが入っていて、違う演奏者ですので、比較でかけてみます。

<22 Tsahan - Masterpieces of Kalmyk Traditional Music  Tuula Bi 1分46秒>

9曲目のTohrun Aisという曲は、南隣のコーカサス各地で幾つか見られた「鶴」をテーマにした歌のカルムイク版で、ドンブルの弾き語りです。

<9 Tsahan - Masterpieces of Kalmyk Traditional Music  Tohrun Ais 1分36秒>

モンゴルにオルティンドーという「長い歌」と訳される歌唱のジャンルがありまして、その定義は「非拍節的な自由リズムにもとづく旋律で歌い演奏される」となります。日本の追分や馬子唄のようなコブシを利かせたフリーリズムの歌ですが、同じモンゴル系ということで、カルムイクにも「長い歌」の伝統があり、この盤にも何曲か入っています。モンゴルのオルティンドーのような高度な技術ではないようですが、ロシアの茫洋とした本物の民謡との中間のようにも聞こえて、興味深いものがあります。
10曲目のAlta Gidg Hazrはその「長い歌」で、ラマ教(チベット仏教)関連の民謡のようです。

<10 Tsahan - Masterpieces of Kalmyk Traditional Music  Alta Gidg Hazr 3分35秒>

21曲目の「長い歌」Tsahan Tolhata Bornは、この盤のタイトルのツァハンという語が入っている曲で、その意味は不明ですが、正にロシアの女性の地声民謡と、モンゴルのオルティンドーのあいのこのようにも聞こえます。「幸運な歌」とだけ解説がありました。

<21 Tsahan - Masterpieces of Kalmyk Traditional Music  Tsahan Tolhata Born 4分37秒>

では最後に、25曲目のドンブル弾き語りのAakin Kkukn Kotushを聴きながら今回はお別れです。3分過ぎてから歌が出てきます。踊り手を囃し立てる賑やかな曲です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<25 Tsahan - Masterpieces of Kalmyk Traditional Music  Aakin Kkukn Kotush 6分37秒>

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2018年8月20日 (月)

バシコルトスタンの伝統音楽

ゼアミdeワールド122回目の放送、日曜夕方に終りました。22日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。放送でかけたのと同じ音源は見当たりませんので、国紹介のような2本を上げておきました。口琴、クライなど、伝統楽器の音も出てきます。

今回はウラル山脈南部に位置し、カザフスタン北西部に近いバシコルトスタンの音源をご紹介します。バシコルトスタンと言っても、どこにあるのか分からない人が多いかと思いますが、カザフの位置が分かれば少しはイメージ出来るでしょうか。ロシア連邦を構成する沿ヴォルガ連邦管区に含まれる共和国で、ヴォルガ中流域巡りの時に回ったタタールスタンやウドムルト(旧称ヴォチャーク)は、北西部に隣接しています。言語はテュルク系のキプチャク語群に属し、人種的には、モンゴロイドをベースにしながらも、コーカソイドの血もかなり混じっているそうです。確かに日本人そっくりな顔立ちと、ロシアなどの白人に近い風貌と両方がいる所のようです。
民族名と言語ではバシキールと呼ばれますが、その語源について大変に興味深い記述がウィキペディアにありました。「ミハイル・アルタモノフは、バシキール人はもともとスキタイの一部族「Busxk'」であり、紀元前1000年紀にテュルク族の西進に際してテュルク語に言語交替したものと推測した。いっぽうバシュキールの名は10世紀のアラブ資料に現れ、「マジャガル」という表記もみられることから、ソ連のS.トカレフ(1958年)は西遷しなかったマジャル人がマジャル→マジャガル→バジャガル→バシュクルトと名称を変えていったと考えた。」このようにありました。
音楽では、アジア的な5音音階が目立ち、トルクメンにもあったようなダブルトーンの縦笛や、倍音唱法と口琴も盛んな所です。音源は、私の知っている限りでは、オランダPanから2枚ありました。その内、Ural - Traditional Music of Bashkortostanだけ手元にありますので、こちらからご紹介して行きます。
まずは、一曲目のHandugasという女性の独唱曲ですが、日本の民謡にも似た音階で歌われています。これがモスクワに近い所の民謡とは信じられないのではと思います。曲名はナイチンゲール(サヨナキドリ)の意味です。

<1 Alfia Suleymanova / Handugas 4分49秒>

次は3曲目のGyulnaziraという曲ですが、Jocular Song(顎骨の歌)と英訳があります。同じアルフィア・スレイマノヴァの歌唱です。

<3 Alfia Suleymanova / Gyulnazira 56秒>

4曲目のIlyasという曲はKurayというダブルトーンの縦笛の吹奏ですが、これがトルクメンのカルグイ・テュイデュクに似た楽器と以前引き合いに出した笛です。東欧のカヴァルや日本の尺八にも似ているように思います。

<4 Abdulla Sultanov / Ilyas 2分39秒>

10~12曲目はバシキールの倍音唱法ウズリアウのスタイルで歌われています。一人で同時に二つの音を出すのが倍音唱法で、モンゴルのホーミー、トゥヴァのホーメイなどがよく知られています。オランダPanからのもう一枚のタイトルは、Uzlyauでした。フリー・スタイル、スロー・スタイル、ダンス・スタイルの3曲続けてどうぞ。

<10 Mausur Uzyanbayev / Uzlyau in free style 1分31秒>
<11 Mausur Uzyanbayev / Uzlyau in slow style 1分14秒>
<12 Mausur Uzyanbayev / Uzlyau in dance style 1分25秒>

13曲目もウズリアウですが、チベット仏教の聲明に似て聞こえます。バシコルトスタンではイスラムが多いようなので、意外にも思えます。Suleymanovaという名前なので、低い声ですが女性のようです。

<13 Bibizada Suleymanova / Gaysa Khun 1分48秒>

15、16、24曲目ではクライを吹きながらウズリアウをやっているようです。笛がメロディを奏で、声がリズムを刻んでいるのがはっきり分かる16曲目をどうぞ。

<16 Hasan Akhmetshin / Kara Yurga 1分38秒>

25、26、29、30曲目には口琴の独奏が入っておりますが、熟練の技が聞ける29曲目をおかけします。バシキールでは口琴をクブズ(Kubyz)と呼ぶようです。

<29 Ilsen Mirhaidarov / March of Salavat Yulayev 2分1秒>

終わりの辺りにバシキールのフィドル演奏が入っていますが、これが東洋的なメロディで実に面白いです。ヴァイオリン(フィドル)独奏はAbrar Argynbayevです。32曲目のShamsi,Igezakov,Tal Byugeliaという曲をどうぞ。

<32 Abrar Argynbayev / Shamsi,Igezakov,Tal Byugelia 2分28秒>

では最後に、34曲目の伝統楽器の合奏を聴きながら今回はお別れです。Potpourri of lyrical and dance melodiesと題するこの曲では、クライ、クブズ、バヤン(ロシアのボタン・アコーディオン)の賑やかな合奏になっています。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<34 Potpourri of lyrical and dance melodies 2分37秒>

Republic of Bashkortostan 1


Russian cities: Ufa, Bashkortostan, Уфа, Башкортостан + marathon, уфимский марафон

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2018年8月13日 (月)

阿波踊りと郡上節

ゼアミdeワールド121回目の放送、日曜夕方に終りました。15日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。

今回は放送されるのが12日と15日ということですので、お盆特集にしたいと思います。何年先になるか分かりませんが、東アジアの続きで日本の民謡などを取り上げたいと思っております。
盆踊りの民謡で有名な曲と言えば、徳島の阿波踊り、富山の越中おわら節、福島の会津磐梯山、岐阜の郡上節などがありますが、今回は久保田麻琴さんプロデュースの阿波踊りの現地録音「ぞめき」シリーズを中心におかけしたいと思います。60、70年頃には「裸のラリーズ」のような過激なロックバンドのメンバーでもあった久保田さんですが、その後はサンディー&サンセッツの活動も加わり、90年代以降はプロデューサー業が中心になっているようです。ここ数年は阿波踊りや沖縄各地(八重山、宮古)の民謡、郡上の民謡など、日本各地の伝統芸能にも目を向けられています。これまでにも阿波踊りの現地録音はありましたが、目の前で演奏しているかのような臨場感溢れる録音です。まずは蜂須賀連の演奏からどうぞ。

<1 ぞめき弐 徳島阿波踊り 蜂須賀連 9分45秒>
徳島阿波踊り 2017 0813 蜂須賀連 紺屋町演舞場 第1部


続きまして、津田の盆(ぼに)踊りですが、CDの解説に「海で亡くなった家族などを供養する踊りで「お父、もんてこい」と涙まじりの叫びが入ることもある。ゆっくりと奏でられる鳴り物の音色が鎮魂の思いを表現している」とありました。私もテレビのドキュメンタリーで、正にその「お父、もんてこい~」と海に向かって叫んでいるシーンを見たので、思い出して目頭が熱くなる一曲です。この素朴な踊りを阿波踊りの起源の一つと見る人も多いようです。

<2 ぞめき弐 徳島阿波踊り 津田の盆踊り 9分22秒>
津田の盆踊り 2017


次に、岐阜県中部、郡上の盆踊り歌の中で最も有名な川崎の古調の歴史的録音と、それよりは後の坪井三郎による歌唱を続けておかけします。古調の方は、寺田敬蔵の1956~72年現地録音で、土取利行と桃山晴衣の選曲、解説です。土取さんは87年に郡上八幡に活動の拠点として茅葺きの芸能堂「立光学舍」と「立光学舎レーベル」を奥さんの桃山さんと共同で設立しています。久保田さんの郡上の現地録音も去年出ましたが、川崎の部分は入ってないようです。

<2-9 郡上のうた 古調川崎 桝田耕三 2分20秒>

<2-8 決定版日本の民謡 郡上節(かわさき) 坪井三郎 3分19秒>
字幕入り『かわさき』完全版 郡上八幡・2012徹夜踊り最終日


では最後に「ぞめき」シリーズの第三集「路上派」から、苔作の演奏を聴きながら今回はお別れです。最初の2曲はシリーズ第二集で正調連でした。路上派の方では旋律楽器は影を潜め、ひたすらパーカッシヴに打楽器のみが炸裂する演奏が入っております。

<4 ぞめき参 徳島阿波踊り 苔作 8分54秒>
2018 苔作 ファーストイン 8月12日

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