ゼアミdeワールド

2017年11月13日 (月)

グルジアの東部と北西部の歌

ゼアミdeワールド82回目の放送、日曜夕方に終りました。15日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。ビクター盤の映像はやはりありませんでした。代わりにオマー・シャリフに似た男らしい容貌の名歌手ハムレット・ゴナシヴィリ(Hamlet Gonashvili)の名唱を交えて上げておきます。素晴らしい節回しに耳が釘付けです。

先日5日はラヂオバリバリ15周年の交流会がハーバリーでありまして、各パーソナリティが色々な出し物をされましたが、私もバッハの無伴奏チェロ組曲から、お祝いの席に相応しい晴れやかな3曲を弾かせて頂きました。曲は組曲1番のサラバンドとプレリュード、3番のサラバンドの3曲でしたが、3曲目の解説で、ど忘れしていたローゼン師匠の名文句を思い出しましたので、今回まず初めにここで言っておきたいと思います。後半の辺りで、先生が弾きながら遠い目で一言つぶやいたのは、Old day was gone.と言う文句でしたが、それがいつまでも忘れられない名文句として記憶に残っています。最初聞き間違えてAll day was gone.と覚えてしまっていまして(笑)、卑近な譬えですが、まるでヤマトの沖田艦長が帰還直前に久々に地球を見届けてから亡くなる時のような、走馬燈を見るようなイメージなのかと早合点しました。過ぎ去った昔を回想しているところまでは一致していて、確かにそんなイメージのある曲調なので、それを噛みしめながら弾くようにしています。サラバンドは静かな曲調ながら一曲に起承転結が感じられ、単独で弾かれることも比較的多いように思いますが、この3番のサラバンドを弾く際の一般的な心掛けとして、You must be actor.という師匠のコメントも印象に残っています。

さてグルジアに戻ります。前回からユネスコの世界無形遺産にも指定されているグルジアの多声合唱を聞いておりますが、ビクターJVCワールドサウンズシリーズの「サカルトベロ 奇蹟のポリフォニー」はやはり見つからないので、今回はこのシリーズ第3集の「カヘチア 奇蹟のポリフォニー」と、フランスのレーベルIneditの「スヴァネチのポリフォニー」を比較しながら聞いて行きたいと思います。グルジアの合唱はロシア正教聖歌の元になったとも言われ、グルジアは日本の5分の1ほどの面積にも関わらず国の東と西でかなり印象が違っています。
「カヘチア 奇蹟のポリフォニー」は、シリーズ3枚の中では最も美しく滑らかで輝かしい大人の男声合唱を聞ける盤ではないかと思います。カヘチアと言うのはグルジア東部の地方の名前で、この辺りは海に面してないけど、クロアチアのアドリア海沿岸部ダルマチア地方の男声合唱クラパ歌謡にも通じるような、ヒロイックかつダンディで幾分地中海的な感じもある歌を聞けるように思います。

まずは一曲目のディアンベゴという曲です。ティナという美しい娘を持つディアンベゴという男性を称える歌とのことで、持続低音のドローンをバックに朗々と響き渡る独唱が非常に美しいです。カヘチア王国の首都であったテラビにある5つの合唱団の中で最も高い評価を受けていたツィナンダリ合唱団の1989年の録音です。

<カヘチア 奇蹟のポリフォニー~ディアンベゴ 4分>

2曲目のアリロという曲はグルジア正教の祈りの歌で、クリスマス・イヴに村の家々を行列して訪問する際に歌われます。この歌の響きの中で人々は心安らかにクリスマスを迎える、という歌です。

<カヘチア 奇蹟のポリフォニー~アリロ 3分27秒>
Alilo-Georgia


Alilo-Georgian Folk


次は4曲目に飛んで、オロヴェラという曲ですが、前回のマルトゥベでも聞けたような深遠な静謐さを湛えた曲です。豪快なポリフォニーだけでなく、こういう静かで深い表現も聞きものです。独唱とドローン共に、きわめて柔らかく静かに歌われる一種の哀歌ですが、農作業の時に歌う歌のようで、畑を耕しながら自分の悩みや苦しみを土や牛や鋤(すき)に歌いかける内容とのことです。

<カヘチア 奇蹟のポリフォニー~オロヴェラ 4分54秒>
Georgian Folk Song Orovela by Hamlet Gonashvili

Hamlet Gonashvili他の生演奏

Hamlet Gonashvili - Orovela

Hamlet Gonashviliのスタジオ録音

次にフランスIneditの「スヴァネチのポリフォニー」を比較でかけてみます。スヴァネチまたはスワネティは、グルジア北西部に位置し、険しい自然環境のため、独自の言語と文化を継承して来ている地方です。滑らかな東部のカヘチアの歌に比べて、不協和音を多用した曲が多く聞けます。歌っているのはリホ・アンサンブルというグループです。

4世紀のキリスト教導入以前からのグルジア最古の歌とされる2曲目の太陽賛歌リーレと、いかにもグルジアらしい旋律の3曲目の宗教歌Lazhgvazhと続けてかけます。3曲目では擦弦楽器チュニリと素朴な竪琴チャンギの伴奏が入ります。

<Georgia - Vocal Polyphonies from Svaneti / Lile 2分45秒>
<Georgia - Vocal Polyphonies from Svaneti / Lazhgvazh 3分40秒>
4000 year old svaneti song


グルジアと言えば、長寿の国として知られていて、1970年前後に放映された人形劇サンダーバードの、確か明治屋のCMで、乳製品を沢山摂る長寿国としてグルジアのモンタージュが出てきたのを覚えています。長寿の秘訣は美味しい料理とヨーグルト、世界最高とも言われるグルジア・ワイン、そして合唱とも言われます。カヘチアの合唱に戻って、宴会の席で長寿の老人を讃える歌、ベリ・カツィを聞きながら今回はお別れです。次回にするかどうかまだ未定ですが、大人気の女性トリオTrio Mandiliも取り上げたいと思っております。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<カヘチア 奇蹟のポリフォニー~ベリ・カツィ 3分38秒>
Hamlet Gonashvili - Berikaci Var

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2017年11月 6日 (月)

アブハジアからグルジアへ

ゼアミdeワールド81回目の放送、日曜夕方に終りました。8日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。ビクター盤の映像はやはりありませんでした。

今回からグルジアの音楽巡りの予定ですが、前回メロディア盤ラストの11分を越える婚礼の歌が、冒頭の2分ほどしかかけられなかったので、まずこの曲を全曲かけてからにしたいと思います。アブハジアの男声合唱が出てきますので、後でかけるグルジアの男声合唱との比較にもなると思います。曲名はApsua charaです。そのものの動画はありませんでしたが、10年ほど前にアップした「山岳部のリズム」とロシア語で出ているカフカス太鼓四重奏など関連映像が色々ありました。おそらくApsuaと言うのが婚礼の意味ではと思います。

<Abkhazian Music - Abkhazian State Folk Song Ensemble / Apsua chara (Abkhazian Wedding Song 11分21秒>

Apsua a chara a koshara


APSUA AKUASHARA


グルジアの伝統音楽のCDですが、私が把握しているだけでも欧米盤中心に20枚余りはありますが、コーカサスや中央アジアの音楽はよく売れるもので、私の手元に現在残っているのは8点ほどです。その中からご紹介していきます。
グルジアの音楽では、何といっても男声合唱が有名で、その歴史は非常に古く、紀元前4世紀のギリシアの歴史家クセノフォンがグルジアの歌について、紀元前1世紀には地理学者のストラボンが、グルジアの合唱団は交互に歌うことを書き残しています。
また特筆すべきエピソードとして、ロシア20世紀の大作曲家ストラヴィンスキーは、ハッサンベグラという曲を聴いて「人類の作った最高の音楽」と称賛したそうです。深遠な美しさだけでなく、その中でヨーデルのような裏声パート「クリマンチュリ」の暴れ方が一種のバーバリズムを醸し出し、歌以外にも、喋り、叫びなどの発声も交えた複雑なリズムとハーモニーのポリフォニーになっていて、いかにも「春の祭典」などで知られるストラヴィンスキーの心を捉えそうに思います。
そのハッサンベグラという曲をまず聞いて頂きましょう。アメリカのTraditional Crossroadsから出ている「グルジア共和国での最初の録音 1902-1914 Drinking Horns & Gramophones」に収録されているSP音源で、20世紀初頭のソヴィエト以前の、まだ帝政ロシア時代のグルジア録音です。正にストラヴィンスキーが聞いた頃の録音でしょう。

<グルジア共和国での最初の録音 Drinking Horns & Gramophones~Khasanbegura 3分40秒>
The first recordings in the Georgian Republic Khasanbegura 1907


同じハッサンベグラを、ビクターJVCワールドサウンズシリーズの「サカルトベロ 奇蹟のポリフォニー」の新しい演奏でも聞いて頂きたいと思いましたが、この盤が行方不明で今回はかけられませんので、今回はその続編の「マルトゥベ 奇蹟のポリフォニー」から数曲ご紹介します。サカルトベロとは、グルジア語での自称です。この盤について音楽之友社の「世界の民族音楽ディスク・ガイド」に書いた拙稿を読み上げてみます。

1978年に結成された少年と若者達による合唱団。マルトゥベとはひな鳥の意味で、このサカルトベロの合唱シリーズ3枚は老若男女のグルジア合唱を網羅している。シリーズ1に収録の平均年齢75歳のグループと合唱のスタイルはほとんど同じである。この込み入ったポリフォニーを少年がやってしまうのだから凄い。特にドローンの深々とした音色がいい。この若年にしてこの表現、驚きである。自身著名な歌い手である指揮者エルコマイシビリの育て上げた、青年からボーイソプラノまでの広い音域を誇る合唱団で、首都トビリシのグループだからだろう、グルジア各地の民謡を歌っている。レパートリーは仕事歌、旅の歌、恋愛歌、戦争の歌など。

このように書きました。何度か言いましたが、この本は10年ほど前に今治中央図書館に寄贈してありますので、宜しければ是非ご覧下さい。音楽の棚に並んでいます。

この盤から、まず一曲「シャイレビ・カフリ」という曲をかけてみます。少年達がお互いをからかい合っている冗談歌ですが、グルジアらしいハーモニーが聞ける親しみやすい曲です。

<マルトゥベ 奇蹟のポリフォニー~シャイレビ・カフリ 2分30秒>

2曲目には、戦争で死んだ兵士についての歌「ワラド・アプハズリ」という曲が入っていて、グルジアの合唱の静謐で神秘的な一面が表れた印象的な曲です。

<マルトゥベ 奇蹟のポリフォニー~ワラド・アプハズリ 2分19秒>

次は17曲目に飛びまして、ツィンツハロという恋愛の歌です。泉のほとりで男が美女に出会い、彼女に求愛するが、かなわず失恋するという物語が歌われています。サカルトベロの代表的な名曲の一つです。

<マルトゥベ 奇蹟のポリフォニー~ツィンツハロ 3分41秒>

最初のアブハジアの盤の終曲が音飛びして最後までかからなかったので、時間が余ってしまいました。予定を変更してマルトゥベのラストを飾っているナドゥリという曲を聞きながら今回はお別れです。最後にふさわしい華やかな曲で、節の中で音を下げるような歌い方には度肝を抜かれました。これは驚愕の唱法だと思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<マルトゥベ 奇蹟のポリフォニー~ナドゥリ 3分15秒 抜粋>

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2017年10月30日 (月)

アブハジアの伝統音楽

ゼアミdeワールド80回目の放送、日曜夕方に終りました。1日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。

今回はグルジアの北西部の黒海沿岸に位置するアブハジアと、見つかればチェチェンの兄弟民族イングーシの音源も考えておりましたが、イングーシの方が見つからず、あっても古い録音が1,2曲だけですので、アブハジアの音源をご紹介します。
アブハジアは、コーカサス山脈の南に位置しますが、アブハズ語は言語的にはグルジアよりも、山脈の北側のアディゲ、チェルケス、カバルドなど北西コーカサス諸族に近く、アルメニアと並んで世界最古のキリスト教国として知られるグルジアの中では、イスラム教徒も割と多く、16パーセントほどいるようです。ソ連崩壊後のアブハジア紛争の後も、国際的にはジョージア(或いはグルジア)の一部とされますが、実質的には独立状態にある国です。余談ですが「ジョージア」という現在の正式な呼び名については、昔から「グルジア」と言い慣らして来た者にとっては、アメリカの州の名前か、缶コーヒーのようで非常に違和感がありますので(笑)、今後もグルジアで通します(笑)
これまでにチェチェンやサーカシアの音源をご紹介してきましたロシアのレーベルMelodiyaのAnthology of folk musicのシリーズには、旧ソ連各国のソ連時代の貴重音源が網羅されていまして、アブハジアだけで1枚当てられています。今回はその盤を取り上げます。国内仕様盤では副題が「黒海の真珠」となっております。黒海に面した温暖な気候により、ロシア帝国・ソビエト連邦時代には「黒海の真珠」と称され、リゾート地としても栄えた地方で、アブハズ人、アルメニア人、ロシア人などにより構成されています。伝統音楽には、コーカサスらしい幽玄な美しさのポリフォニーを聞かせる男声合唱と、伴奏にはアコーディオンや数種類の笛や太鼓が用いられます。この盤の録音は1970年-1987年のようです。

まずは一曲、冒頭のアフィルティン・アンサンブルの男声合唱による民族舞踊曲をどうぞ。やはりグルジアの男声合唱にそっくりですが、違いがどこかにあるはず。それを見つけるのも一興でしょう。

<Abkhazian Music - Ensemble Song and Dance Afyrtyn / Auraash`a 2分6秒>

次も同じアフィルティン・アンサンブルの男声合唱による婚礼の歌唱です。花嫁が初めて花婿の家を訪れた場面で歌われるようですが、こんな壮麗な歌を歌われたらどんな気分でしょうか。

<Abkhazian Music - Ensemble Song and Dance Afyrtyn / Radeda 2分52秒>
Didgori Choir•Radeda•(Abkhazia region)


次は7曲目で、やはり同じ男声合唱によるオブズバクについての歌とあります。この盤は解説が簡略なため詳細が不明ですが、アブハズ人、アディゲ人、チェルケス人、オセット人、ウビフ人などの北コーカサス諸民族には、ナルト叙事詩という古い語り物がありまして、ギリシア神話やイギリスの『アーサー王伝説』との関連も議論されてきましたが、オブズバクと言うのはその登場人物の一人かも知れないと思いましたが、どうでしょうか。常々気になっていますが、日本のアニメのナルトとも関係があったりするのでしょうか?
アーサー王の話は、イギリスとコーカサスでは場所が飛び過ぎの気もしますが、この伝説が形成された時代に北フランスに移住した、オセット人の祖先にあたるアラン人が伝えたという説があるようです。

<Abkhazian Music - Ensemble Song and Dance Afyrtyn / Ozbak iashva ( Song about Obzbak) 1st version 2分10秒>
Ozbak - Abkhazian folk song - Abkhazian Ensemble


続く8曲目も同じ男声合唱ですが、太鼓(おそらくナガラ)と手拍子で賑やかに伴奏しています。このサマフアというのもナルト叙事詩かもと見ましたが、どうでしょうか。また調べてみてブログで報告したいと思います。今回はかけませんが、16曲めにはグループ名がNartaaという、いかにもナルト叙事詩を思わせる団体がありました。

<Abkhazian Music - Ensemble Song and Dance Afyrtyn / Samakh`khuaa iashva ( Song about Samakhua) 1st version 1分9秒>

9曲目は、先ほどのSong about Obzbakの2nd versionとありまして、歌っているフェルズバ・ファミリーは、女性と子供と思われます。男声以外でも同様のコーカサス特有のすばらしいポリフォニーを聞かせます。

<Abkhazian Music - Ferzba Family / Ozbak iashva (Song about Obzbak) 2nd version 1分37秒>

10曲目には羊飼いの歌となっていますが、笛の独奏で、ここで吹かれている牧笛Acharpyn pipeは、声との二重音声になっていて、同様の笛は、東欧各地やコーカサスの北のバシコルトスタンなど方々で見られます。

<Abkhazian Music - E.Bagatelia / Auasarkhviga (Shepherd`s Song) 1分15秒>

11曲目は女性のアンサンブル、グンダの演奏で、グルジアの大人気女性トリオTrio Mandiliを思わせるようなチャーミングなコーラスを聞かせます。

<Abkhazian Music - Girls` Ensemble Gunda / Azamat 1分55秒>
Abkhaz Folk Song "AZAMAT" (Азамат)


少し飛んで15曲目には「ヒブラについてのユーモラスな韻」と題が付いていまして、コーカサスらしい男声合唱と西洋の古楽が融合したようなユニークな音楽になっています。ラストの11分を越える婚礼の歌と並んでこの盤の白眉だと思います。

<Abkhazian Music - Folk VIA Ertsakhu / Alaf iashva Khibla (Humorous Rhymes about Khibla 3分5秒>

では最後に、そのラストの11分を越える婚礼の歌を時間までかけて今回はお別れです。男声合唱や独唱、器楽も多彩で、盛り沢山なステージが髣髴とされる曲です。次回からグルジアの色々な音楽を聞いて行く予定です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Abkhazian Music - Abkhazian State Folk Song Ensemble / Apsua chara (Abkhazian Wedding Song 11分21秒 抜粋>
Abkhazian Wedding Song

同じ曲ではないようですが、こんなノリがあります。自然に湧いて出るような男声合唱。素晴らしいです。Apsua charaは放送で2分弱しかかけられなかったので、次回全曲かけます。

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2017年10月23日 (月)

アヴァールとラクの歌

ゼアミdeワールド79回目の放送、日曜夕方に終りました。25日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。蘭Panの音源はyoutubeに上がっていたようですが、ブロックされて見れなくなっておりましたので、1曲目のアイラザットを再度アップしておきます。

Ay Lazzat


今回もオランダPanのCD「Songs and Melodies from Dagestan」からご紹介します。この盤の後半の、コーカサス系のアヴァールとラクの歌が中心です。
まずコーカソイドについて、前回少し説明が足りず、コーカサス的=西洋的のような誤解を招く間違いもありましたので、補足しておきます。コーカソイドとは一般に白人を指す用語で、コーカサスに由来しておりまして、主要な居住地はヨーロッパ、西アジア(中近東)、北アフリカ、西北インドです。
以下ウィキペディアから少し引用しておきます。「人類学が成立したヨーロッパはキリスト教圏であり、ユダヤ・キリスト教に由来する価値観が重んじられていた。ヨーロッパのキリスト教徒にとって、『創世記』のノアの方舟でアララト山にたどり着いたノアの息子たちは現在の人類の始祖であった。人類学の父とされるドイツのブルーメンバッハをはじめとするヨーロッパ人学者たちは、アララト山のあるコーカサスに関心を抱いていた。~ コーカソイドとはヨーロッパ人がキリスト教的価値観に基づいて自己を定義するために創出された概念である。」以上のようにありました。
何度か言いましたが、コーカサス諸語はヨーロッパの主要言語が属するインド・ヨーロッパ語族とは全く別系統ですが、人種的には同じコーカソイドというくくりになるようです。チェチェンとイングーシが属するコーカサス諸語の中のヴァイナフ語派の「ナフ」というのが創世記のノアに由来しているらしく、チェチェンの自称ノフチーは「ノアの子孫」を意味する点などは、ヨーロッパ側からの視点ではなくても聖書に由来している興味深い事例として上げられると思います。
さてオランダPanのCD「Songs and Melodies from Dagestan」から聞いていきましょう。

11曲目 Hiramunikha(Lovely Girl)
コーカサス系のラク語の歌で、この言葉の歌は男性歌手のアリ・オマル・アリエフが担当しています。ヒラムニハと言うのは、愛しい少女と訳せるようですが、内容は「君は立ち去り、私に残されたのは月の無い夜と、からっぽの家だけ」という、何とも切ない愛の歌です。

<Songs and Melodies from Dagestan - Hiramunikha(Lovely Girl) 2分37秒>

12曲目 Heychali(Talisman)
この「お守り」と言う曲もアリ・オマル・アリエフのアコーディオン弾き語りによるラク語の歌で、戦争で夫を失った女性の悲しい歌です。他の曲ではパンドゥールとクムーズを弾いていたムタイ・ハッドゥラーエフがここでは擦弦のチャガナを弾いています。「私がこんなに不幸な訳を教えて。誰が悪いの? 私?それともお守り?」というこれまた切ない歌です。

<Songs and Melodies from Dagestan - Heychali(Talisman) 2分25秒>

14曲目 Kh'uwativ sh'ai qu'at'azav (Where are you?)
非常に読みづらい長いタイトルに見えますが、訳すと「あなたはどこにいるの?」と至ってシンプルです。サニジャト・スタノヴァによるアヴァール語の歌で、ダゲスタンの古典的な詩人の「コハブロソのマフムード」による詩です。「愛する人との逢瀬を辛抱強く待っている女の子の愛の歌で、彼女の心は切れた糸から外れたビーズのように粉砕されている」という切ない女心を歌ったラブソングです。

<Songs and Melodies from Dagestan - Kh`uwativ sh`ai qu`at`azav 2分45秒>

15曲目 Kiv vughiv mun kiv vughiv (Where are you, Hero of my Dreams?)
綴りはかなり違いますが、この曲も「あなたはどこにいるの?」と訳せるようです。後半には「私の夢の英雄よ」と付いています。やはり愛する人を辛抱強く待っている若い女性の愛の歌です。サニジャト・スタノヴァによるアヴァール語の歌で、若い女性歌手が歌うのが常のようです。

<Songs and Melodies from Dagestan - Kiv vughiv mun, kiv vughiv 2分56秒>

16曲目 K`aydar
再びアリ・オマル・アリエフのアコーディオン弾き語りによるラク語の歌で、グカルの要塞の防衛のリーダーだった17世紀ラクの英雄カイダールについて歌われています。「もしそれが山々と谷を襲ったら、祖国のためにカイダールが正に鷲のように立ち上がるだろう」こんな内容の歌です。

<Songs and Melodies from Dagestan - K`aydar 3分>

18曲目 Ak'lu tle ebel (Ask your Mother for Advice)
サニジャト・スタノヴァによるアヴァール語の歌で、母に捧げられた古いアヴァールの歌です。「あなたの母に尋ねて、アドバイスをもらって」というような内容のようです。この後3曲はライブ音源のようです。

<Songs and Melodies from Dagestan - Ak`lu tle ebel 4分9秒>

19曲目 Chiyak rod'kli kogegi (Hopeless Love)
英訳に「希望のない愛」とあるアヴァールの愛の歌で、結婚した男性に決して愛を打ち明けられない若い女性の苦しい胸の内を歌っているようです。解説には以上のようにありましたが、18曲目と同じ旋律に聞こえます。

<Songs and Melodies from Dagestan - Chiyak Rod`kli Kogegi 4分6秒>

20曲目 Farewell Song
ラストの曲のタイトルは「お別れの歌」とありまして、タイトル曲のアイラザットと同じく、アヴァール人女性歌手サニジット・スルタノヴァと、ノガイ人女性歌手ズーラ・シャンディエヴァが最後に一緒に出てきて軽快に歌っています。 この曲を聞きながら今回はお別れです。ダゲスタンにはアヴァール、ラク、クムイク、ノガイ以外にも主要民族だけで6つはいますが、伝統音楽のyoutube映像は見つかっても、CD音源は見当たらないので、ダゲスタンは今回で最後にしまして、次回はグルジアの北西部に位置するアブハジアと、見つかればチェチェンと北オセチアの間のイングーシの音源も聞いて行く予定です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Songs and Melodies from Dagestan - Farewell Song 2分20秒>

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2017年10月16日 (月)

アヴァールの器楽 Shamil Imam等

ゼアミdeワールド78回目の放送、日曜夕方に終りました。18日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。youtubeが見つかったのは、Shamil Imamのみでした。

先週に続いてオランダPanのCD「Songs and Melodies from Dagestan」からご紹介します。後半はコーカサス系のアヴァールの音楽が中心ですが、コーカサス系のラクやテュルク系のクムイクの音楽も若干入っております。ノガイから聞いてくると、アヴァールからがらっと変るような印象も受けます。

8曲目「シャミル・イマーム」は、コーカサス系のアヴァールの歌で、いかにもコーカソイド(白人を指す用語で、コーカサスに由来)の風貌の、つまり西洋的な顔立ちの女性歌手サニジャト・スルタノヴァの歌唱です。ロシアと戦った19世紀の伝説的なアヴァールの戦士シャミル・イマームについての歌で、伴奏はノガイと同じで、擦弦楽器チャガナ、打楽器ナガラ、アコーディオンです。

<Songs and Melodies from Dagestan - Shamil Imam 3分36秒>
Shamil imam -Daghestanian Avar music with "pandur" enstrument.

同名曲のパンドゥール独奏は幾つかありましたが、歌では今の所見つかっておりません。同じ曲かどうか、今の所不明です。ダゲスタンのアヴァールで非常に名高いテーマであることは確かなようです。

9曲目「ニッティハッサ・バレイ」という曲は、この盤の中に数曲入っているラク語の歌で、アヴァール語と同じコーカサス諸語ですが、ダゲスタンの中では多数派のアヴァールに比べると少数派の言語です。この言葉について調べていて、初めてパーロチカというロシア文字(あるいはキリル文字)にはないコーカサス諸語に特有の文字の名称を知りました。パーロチカは、ローマ字のアイかエルのように見えますが、通常独立した音価は持たず、前の子音が放出音であることを表すようです。この音があるのは、世界で他にはエチオピアのアムハラ語やナイジェリアのハウサ語、南部アフリカのブッシュマンなどのコイサン語族があるくらいで、珍しい発音と言えると思います。パーロチカは、チェチェン語、イングーシ語では喉頭蓋破裂音を表すそうです。これもコーカサスの言葉特有の音です。
この曲は母についての歌で、テュルク系のノガイだけでなく母への尊敬と思慕の強さはコーカサスの諸民族に共通のようです。

<Songs and Melodies from Dagestan - Nittikhassa baley (Song about Mother) 2分59秒>

10曲目は「二つのアヴァールの旋律」というタイトルの弦楽器パンドゥールの独奏曲です。ZeAmiブログの方では弾き語りでyoutubeを色々見ていた楽器ですが、ここでは素朴な音色のソロが聞けます。演奏は先のラクの曲で伴奏をしていたMutay Khadullaevです。

<Songs and Melodies from Dagestan - Two Avar Melodies 4分25秒>

13曲目には「クムイクの旋律とチェチェンの踊り」という曲が入っておりまして、こちらはクムイクのクムーズで演奏されています。アヴァールのパンドゥールとの聞き比べと言う事で、2曲続けてかけてみます。柔らかいパンドゥールの音と、おそらくスチール弦と思われるクムーズのクリアな音色と躍動的なコーカサスのリズムは好対照のように思います。こちらも演奏は同じくMutay Khadullaevです。アヴァール、クムイク、ラクの曲まで、系統の異なる民族の音楽もダゲスタン内なら何でもこなす弦楽器奏者ですが、このクムイクとチェチェンの曲が最も鮮烈な印象があります。彼はアルバム・タイトル曲のアイラザットとノガイの曲では、擦弦楽器チャガナを弾いていました。

<Songs and Melodies from Dagestan - Kumyk Melody and Chechen Dance 3分32秒>

お知らせ

9月14日木曜夜から4回、5時にゼアミ実店舗兼のカフェ、トーク・トークを閉めた後、初の弦楽ナイト(仮称)を開催しました。今治市民弦楽合奏団のメンバー4、5人が集まり、大体は近々の11/12の文化祭に向けての補講になっておりますが、構想としては、弦楽四重奏や管楽器などの人も入っての様々なセッションも出来ればと思っています。
毎木曜日、時間は5時から6時か6:30まで、見学自由、入場無料、閉店後なのでドリンクは各自持ち込み、ゴミは各自持ち帰りと言うことで、お待ちしております。宜しければ見学にお越し下さい。メンバーが集まらない時は私が無伴奏チェロでも弾きます。駐車場は店の右手に数台あります。

場所
今治市北高下町2-1-7 ハイツ近藤2の1階
Cafe トーク・トーク マスター  ゼアミ店主
兼 今治市民弦楽合奏団 代表 近藤博隆

因みに演奏曲目ですが、11月12日の今治文化協会の文化祭(音楽祭)では、チャイコフスキーのアンダンテ・カンタービレと、ジブリ映画の「天空の城ラピュタ」の主題歌「君をのせて」の2曲です。

大分先ですが、来年2月4日には第11回今治総合芸能祭がありまして、こちらでは琴と尺八の葉風会との共演で森岡章作曲の「月に寄する三章」という曲を弾きます。作曲された昭和40年代の雰囲気が色濃く感じられる、ロシア民謡とナツメロ、琴の曲の入り混じったような印象の静謐な曲です。唯一快活な2曲目は、ペルシアの舞曲レングに似た感じにも聞こえます。11月、2月とも今治中央公民館での催しで、どちらもヴァイオリンで出ます。宜しければ是非お越し下さい。


ダゲスタンのアルバムに戻りまして、今回は撥弦のパンドゥールとクムーズだけでなく、擦弦のチャガナまでこなすMutay Khadullaevの演奏に焦点を当てております。17曲目のAvar Dance Melodiesでは、ナガラとアコーディオンの伴奏でチャガナのソロを聞かせています。ダゲスタンの南に隣接するアゼルバイジャンのケマンチェ演奏と聞き比べたいような独奏です。
この曲を聞きながら今回はお別れです。次回はこの盤の後半のアヴァールとラクの、歌の方を聞いて行く予定です。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Songs and Melodies from Dagestan - Avar Dance Melodies 5分33秒>

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2017年10月 9日 (月)

テュルク系 ノガイの音楽

ゼアミdeワールド77回目の放送、日曜夕方に終りました。11日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。ノガイについては、簡単には見つかりそうにないので、また水曜以降に調べてみます。

今回はもう一つのダゲスタンの音源であるオランダPanのCDから聞いて行きたいと思います。
1曲目は、ダブルリードのズルナ、打楽器ナガラ、アコーディオンによる古いアヴァールの旋律という短かい曲に始まりまして、続く2曲目はアルバムタイトルでもあるアイ・ラザット(Ay Lazzat=Oh Pleasure)という曲です。アヴァールとノガイに共通の歌で、今風に訳すなら「いいね」となるでしょうか。西洋的な典型的コーカソイドの顔立ちのアヴァール人女性歌手サニジット・スルタノヴァと、日本人と見紛うようなアジア的な顔立ちのノガイ人女性歌手ズーラ・シャンディエヴァが一緒に歌っています。ダゲスタンには元々両方が住んでいるのが面白いところです。アイ・ラザットは、この民族混成のグループ名にもなっていて、弦楽器も同系統ですがアヴァールのパンドゥールとノガイのクムーズの両方が出てくるようです。

<Songs and Melodies from Dagestan - Old Avar Melody、Ay Lazzat (Oh Pleasure) 42秒、3分25秒>
Folk Song from Dagestan - Ay, Lazzat


3曲目は「父の家」と訳せるノガイの歌で、子供たちに馬の乗り方を教えているほのぼのする3拍子の歌です。擦弦楽器チャガナ、打楽器ナガラ、アコーディオンの伴奏です。

<Songs and Melodies from Dagestan - Ata yurtum (Father's House) 3分22秒>

4曲目は「鶴」というタイトルのノガイの歌で、アヴァールとノガイの違いはありますが、前回ご紹介しましたガムザトフの「鶴」をすぐ様思い出してしまいます。「秋には鶴が無限の草原を離れ、私たちは遠くなる彼らを眺める。さようなら、鶴よ」このような内容の歌です。ガムザトフの詩のような絶唱ではなくても、とてもノスタルジー溢れる一曲です。

<Songs and Melodies from Dagestan - Turnalar (Cranes) 3分14秒>

5曲目は、ノガイの宗教的な歌で、穀物が束に縛られる最初の祝日のための歌です。

<Songs and Melodies from Dagestan - Sabantuy (Spring Celebration) 3分46秒>

6曲目は、母に捧げるノガイの歌で、「母によって我が人生の道が開かれた。私の星は母によって照らされ、昼も夜も母は私の心にいる。」 こんな内容です。

<Songs and Melodies from Dagestan - Anama (To Mother) 3分57秒>

7曲目Khastugan (Born)は、16世紀ノガイの詩人Dosiambet Azov-ulyが書いたスピリチュアルな叙事詩で、常にアカペラで歌われるそうです。16世紀のノガイとヴォルガ河口付近に住むモンゴル系のカルムイクの間の戦闘で、カスピ海の北東側にあったノガイの国が亡ぼされ、南のコーカサスと一部はクリミアとルーマニアにまで追放されるという悲劇の始まりを歌っているようです。
ここまではノガイの歌で、擦弦楽器チャガナ、打楽器ナガラ、アコーディオンの伴奏でした。いずれもズーラ・シャンディエヴァの歌唱で、キルギスの民謡にも通じるようなノスタルジックな曲が多く、全てご紹介しました。ノガイは、かつてキプチャク・ハン国を構成した遊牧民族の末裔であるとされ、言語系統はテュルク系に分類される民族です。
この曲を聞きながら今回はお別れです。次回はこの盤の後半のアヴァールの音楽の方を聞いていきます。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Songs and Melodies from Dagestan - Khastugan (Born) 3分52秒>

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2017年10月 2日 (月)

Folk Melodies of Daghestan B面とЖуравли

ゼアミdeワールド76回目の放送、日曜夕方に終りました。4日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。露MelodiyaのダゲスタンB面に入っているイラン北西部の音楽に近い感じのクムーズ演奏がなかなか見当たらないので、コーカサス音楽ど真ん中のような演奏ですが、Гьажимурат Абдуллаев(ガジムラート・アブドゥッラーエフ)の演奏を上げておきます。こちらも味わい深い演奏です。агъач-къомуз(アガチ・コムズ)と言うのがクムイク人のクムーズと全く同じものか、演奏地域が異なるのか、その辺りがまだ不明です。

ダゲスタンの音楽の2回目は、ロシアのメロディア盤B面から行きたいと思います。先週はクムイクの弦楽器クムーズの合奏を中心にかけましたが、B面では「山並みに沿って」という曲に始まり、古いアヴァールの旋律が4曲、「兵士の手紙」というタイトルのクムイクの歌、古いダルギンの旋律、レズギンの旋律、ラクの旋律と入っておりまして、前回のラストは1曲目の後のクムーズソロの一曲目で終りました。一曲目は短かい曲なので、今日はもう一度最初から18分通しでかけたいと思います。テュルク系民族クムイクの弦楽器クムーズは、いかにも中央アジア、キルギスタンのコムズなどに繋がる音色でしたが、B面では同じクムーズを使っていてもイラン北西部の音楽にかなり似通った感じから始まります。こちらのクムーズ演奏はRamazan Magomedovという人です。ぐぐってみましたが、ベラルーシのボクサーが出てきただけで、プロフィールは解らずじまいでした。典型的コーカサス音楽のA面とは対照的に、イラン北西部アゼルバイジャン地方辺りの弦楽器独奏を聞いているのかと錯覚してしまう音楽です。太鼓Doholと擦弦楽器Chaganaも出てくる冒頭の華々しさの後は、ソロで地味ではありますが、貴重なロシアのレーベルMelodyaの貴重なアナログ音源ですので、全て通しでかけます。

<Folk Melodies of Daghestan B面 18分4秒>


前回、チェチェンは四国より少し小さく、ダゲスタンは大体九州くらいの広さと言いましたが、後者は間違っておりましたので、訂正します。正確に調べてみましたら、チェチェンは15,300km2、四国は18,800km2、ダゲスタンは50,300km2、九州は36,750km2でしたから、最初の比較は大体合っていますが、ダゲスタンは九州の1.4倍位ありました。北コーカサスの他の国を全て合わせた位の広さがある国でした。

ダゲスタンと言えば、是非ご紹介したい曲があります。一般にはロシア歌謡として知られている「鶴」という曲ですが、ダゲスタンのアヴァール語の詩人ラスル・ガムザトフ(1923-2003)が歌詞を書いていて、その内容は、死者たちの魂が鶴の群れとなって地上の生者たちと交感する様を歌っています。コーカサスらしい叙情性と死生観も感じさせる1969年の名歌で、日本でもダークダックスが歌って広く知られるようになりました。この詩はガムザトフが1965年に来日した際に広島の原爆資料館で受けた強い衝撃をモチーフに書かれています。ロシア民謡の歌手として有名な山之内重美さんの訳詩と歌唱でどうぞ。せりふは岸田今日子さんで、ここでは恋人を戦争に奪われた女性の歌として歌われています。
この曲を聞きながら今回はお別れです。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<山之内重美 / つる 5分15秒>
【ソ連音楽】Журавли / 鶴【日本語字幕】

ジュラーヴリ(鶴)は、手持ち音源には多分山之内さんの盤だけでしたが、youtubeには色々現地音源が出ています。字幕で原詩の意味がよく分かります。

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2017年9月28日 (木)

コムズ対ドンブラ

ダゲスタンのクムーズとキルギスのコムズなど名前が上がったところで、先回りしてコムズとカザフのドンブラの競演を見てみましょう。タイトルの「コムズ・プローティヴ・ドンブルィ(комуз против домбры)」とは、コムズ対ドンブラのような意味。ここまでやるか、という曲芸弾き合戦が繰り広げられていて、唖然呆然の名人芸映像です。3弦のコムズと2弦のドンブラ。弦の数は、多ければ良い訳ではないことを証明しているかのようです。
これから先のゼアミdeワールドの放送の予定&予測では、ダゲスタンの後はコーカサス系繋がりでグルジア、アブハジアに回って、その後はアルメニアからアゼルバイジャンまで来たらコーカサスは終わり。ここまでで半年後くらいでしょうか。(番外編にクルド)その後はアゼルバイジャンからトルコ系繋がりでカザフ、キルギス、トルクメン、ウズベク、タジク(タジクだけイラン系ですが)、ウイグルと来て、トルコ系繋がりでトルコに飛んで、対岸のギリシアからバルカン半島を北上。東欧西部、中欧、北欧、西欧、南欧、スペインと来て、再び北アフリカ(マグレブ)のモロッコ、アルジェリア、チュニジアからエジプト南部に戻り、ジプシー繋がりでインド西部に飛ぶ予定ですが、そこまでで何年経っているか見当がつきません。インドの後はチベット、東南アジア、中国など回って、オセアニア、北米・中南米、その後でブラック・アフリカ・・。一通りでも周り終えるのは、10年~30年コースになると思います。それまで元気でいられれば良いですが。
日本を忘れていました(笑) 地元は適宜、季節ごとにでも入れて行くつもりです。

комуз против домбры

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2017年9月25日 (月)

Folk Melodies of Daghestan A面

ゼアミdeワールド75回目の放送、日曜夕方に終りました。27日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。メロディアの下記アナログ盤は確かCD化はされてないので、youtubeもなさそうです。とりあえず、クムイクと思われる人々のクムーズの演奏を確認できる動画を上げておきます。トルコ系のクムイク人が何故コーカサス系の曲を中心に弾いているのか、そこも今後の解明したいポイントになります。音楽はコーカサスそのものですが、揃って弾いている様は、イランのクルド人のタンブール合奏にそっくりに見えます。

今回からダゲスタンの音楽を聞いて行きたいと思います。ダゲスタンと言っても、どこにあるのか分からない方が多いかと思いますが、ロシア連邦に属する北コーカサス諸国の中では一番東のカスピ海側に位置し、90年代初頭のソ連崩壊後に独立したアゼルバイジャンの北側になります。北コーカサス諸国の中では「大国」と言っていい面積を持っています。ダゲスタンの名は、トルコ語で山を意味する"dag"(発音はダーとなりG音は入らない)にペルシア語の地名の接尾辞である"-stan"(スターン)が付いて「山が多い場所(あるいは国)」を意味します。
何回か前にも言いましたが、ダゲスタン国民を構成する主たる10の民族は、コーカサス諸語の民族であるアグール人、アヴァール人、ダルギン人、ラク人、レズギン人、ルトゥル人、タバサラン人、ツァフル人、そしてテュルク(トルコ)系民族はクムイク人とノガイ人になります。
この国の音源は古くはロシアのMelodyaのLP盤がありまして、CD時代になってオランダのPanから一枚出ておりました。欧米盤で出回っているのは、おそらく今でもこの位だと思います。今回はメロディアの貴重音源から、A面の20分余りの数曲をノンストップでかけてみたいと思います。後半のレズギンカのリズムに乗って段々早くなる演奏は特に素晴らしく、スリリングでもあります。ペルシア音楽の影響が強い南のアゼルバイジャンとは異なり、やはりグルジアやチェチェンなどの近隣のコーカサス系の音楽に近い系統になります。
収録曲は、順に古いクムイクの旋律2曲、ダルギンの旋律、クムイクの旋律、古いラクの旋律、チェチェンの旋律、カバルディニアン・レズギンカとなっておりまして、演奏はクムイクの弦楽器クムーズのアンサンブルにカフカス・ドラムが入る編成です。M.Ilyasov率いるグループの演奏です。

<Folk Melodies of Daghestan A面 20分45秒>
Агъач-къумуз


では最後にこのメロディア盤のB面を聞きながら今回はお別れです。B面には「山並みに沿って」という曲に始まり、古いアヴァールの旋律が4曲、「兵士の手紙」というタイトルのクムイクの歌、古いダルギンの旋律、レズギンの旋律、ラクの旋律と入っております。テュルク系民族クムイクの弦楽器クムーズは、いかにもキルギスタンのコムズなどに繋がる音色でしたが、B面は同じクムーズを使っていてもイラン北西部の音楽にかなり似通った感じから始まります。こちらのクムーズ演奏はRamazan Magomedovという人です。今回は時間までかけて、次回はその続きを聞いてから、PanのCDの方に移りたいと思います。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Folk Melodies of Daghestan B面 18分4秒 抜粋>

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2017年9月18日 (月)

「チェチェンと北コーカサスの音楽」の最後に

ゼアミdeワールド74回目の放送、日曜夕方に終りました。20日20時半に再放送があります。よろしければ是非お聞き下さい。<>内がかけた音源です。
17日18時は台風18号で大変な時で、台風情報がラヂバリでも頻繁に流れていましたが、奇跡的に?30分間は出なかったです。かのこさん、ナナさん、台風情報の放送では、大変大変お疲れ様でした。

今回はとことん英Topic Recordsの「チェチェンと北コーカサスの音楽」からご紹介したいと思います。まずは、チェチェンの歌姫マッカ・サガイーポヴァの父で著名なアコーディオン奏者のウマル・サガイーポフの伴奏で、女性歌手タマラ・ダダシェヴァが歌う一曲です。タマラ・ダダシェヴァは多くのチェチェン人がスターリンによって強制移住させられた中央アジアのキルギスタン生まれで、30年以上に亘ってチェチェンで最も愛された歌手とのことです。原題のノフチチヨー・ソ・カン・ヨー・ユとは、「チェチニャよ、私はあなたの娘」という内容の望郷の歌です。

<Tamara Dadasheva / Nokhchiychiyo, so khan yoh yu 1分58秒>
Nokhchiychyo, So Khan Yo Yu


中央アジアへの強制移住は実質は「追放」で、これからかけます男声合唱の歌は、多数の死者を出した中央アジアでの過酷な生活の中で生き抜いた母親たちに捧げる曲です。大量追放の恐ろしさや窮状の中で子供を育てた母親を称える熱い調べは、伝統的な三声の男声合唱のスタイルになっております。この曲もトピック盤に入っていて、2002年のまだまだ戦火の最中の首都グロズヌイで自主製作されています。タイトルのSan Nana, san Nanaとは、「母へ」という意味になります。

<IIli Male-Voice Ensemble / San Nana, san Nana 4分53秒>

次はサーカシアの西から2番目の国のカラチャイ・チェルケスから、トルコ系のカラチャイの女性独唱です。作曲者自身でもあるリディア・バチャエヴァによるコミカルなラヴ・ソングとのことです。トルコ系的な部分は余り感じられませんが、カラチャイの音源というのはyoutubeはいくらかあっても、CDでは私はこちらしか知りません。ですので貴重な音源ということにはなろうかと思います。

<Lydia Bachaeva / Djuldouz 2分52秒>

次も独唱ですが、次回に予定しているダゲスタンの民謡が一曲だけトピック盤に入っておりますので、その曲をかけてみます。こちらも男性歌手による独唱で、この一種演劇的な歌唱は、ダゲスタン民謡としては異色な曲のようにも思います。

<Shirvani Chalaev / Barkhaldal Doldiban 2分38秒>

この盤にはカバルダの弦楽器の曲も一曲入っておりますので、序にかけておきます。ギリシアのリラにも似た細長い擦弦楽器shichepshinと笛のデュオで、Kurashaというカバルド民謡に基づいているそうです。言うまでもなく、カバルド或いはカバルダは、アディゲのエスニック・サブ・グループです。

<Zuber Ivazov etc. / Kabardian Dance Tune 3分12秒>
Zuber Ivazov - Kabardian dance tune


では最後にトピック盤の最後を飾っている女性独唱を聞きながら今回はお別れです。1986年生まれで録音当時二十歳とは思えない若い女性歌手によって歌われるこの歌も、切ない望郷の絶唱として聞ける一曲です。彼女はダイモク・アンサンブルのソロ歌手なので、この切実さも納得です。
1分程の短い曲ですので、時間が余りましたらその後には、まだかけてなかったアンサンブル・アズナシのダイモクで締めたいと思います。チェチェン語のダイモクとは「祖国」の意味で、同じタイトルの歌をこれまで何人かの歌手でかけましたが、遂に真打登場と言った所です。次回は本格的にダゲスタンに向かいます。

ゼアミdeワールド お相手は、ほまーゆんでした。有難うございました。ではまた来週

<Aminat Akhmadova / Daimokuam Biezam (Love for the fatherland)  1分21秒>
Love for the Fatherland


<Aznach Ensemble / Daimohk 2分46秒>

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